九七式3号艦上攻撃機(ハセガワ1/48)製作記

 

<はじめに>

キット評

 プロポーションは、細かい点を除き良好である。主翼、水平、垂直尾翼の厚みや翼形もよい。これらは飛行機モデルではとても重要だと思う。モールドは、はやりの凸凹表現であるが、動翼布張り、主翼インテグラルタンクの凸表現が大げさで、私の好みでない。小物は、ハセガワの新作だから当然文句なし。

 良好なプロポーションであるが、若干気になる点がある。まず、スケビでも指摘されていた防火壁前後での胴体側面の不連続である。1号とコンバーチブルのため胴体前方が別パーツだが、そのままでは接合部が凹んでしまう。

 側面形ではカウリングから胴体へのラインが気になる。キットはカウリング上端が機軸に平行で、そこから風防に向かって上に折れ曲がるが、実機の写真を見ると、それほど極端でなく、割と直線的である。もっとも、写真によって違って見えるので悩ましいところである。

 製作にあたっては以上の点、すなわち機首のアウトライン、布張りモールドを修正することとする。

参考資料

世界の傑作機(新版) 文林堂
世界の傑作機(旧版) 文林堂
モデルアート臨時増刊 No.378
真珠湾攻撃隊
モデルアート社
モデルアート臨時増刊 No.406
日本海軍機の塗装とマーキング「爆撃機編」
モデルアート社
モデルアート臨時増刊 No.553
日本海軍艦上攻撃機
モデルアート社

 

<組み立て>

コックピット

 素晴らしい出来なので、全くのストレート組みである。インストと組み方を変えて、側壁を先に胴体パーツに接着する。ただし、前方1/3程度は胴体左右の接着時の都合上、接着剤を付けないでおく。Mrカラー#127の中島系機体内部色は、模型的に明るすぎる。そこで黒を混ぜるが、RLMグレイとほとんど同じ色になってしまう(後日追加:中島の機体内部色の考証は零戦52型製作記を参照されたし)。胴体側面の窓は、接着しろを切り取り、クリアパーツの接着面をブラックグレーで塗ってから流し込み系で慎重に接着する。

胴体ラインの修正

 胴体側面の凹みを修正するが、表面処理が後々面倒となるパテは使わない。胴体パーツの接着部の削り合わせで対処する。

 次に機首上面のラインの修正。これもパテを使わないために「切って、広げる」手法をとる。何でもポリパテが能ではない。カウリング頂部に、先端を少し残してカッターで切り込みを入れる。そこにくさび形に切ったプラ板をはさみ、後端で1mm弱ほど広げる(別図参照)。
 広げた分だけ上端ラインが上がるように、カウリングパーツを指でしごいて曲げる。カウリング下面も同様に0.5mm程広げる。胴体上部は、エンジン取り付け部分の胴体断面部に切り込みを入れ上方に曲げる。

 胴体左右を接着する。修正により接着面に隙間が生じる。プラ板を貼り十分に摺り合わせてから、パーツの弾性を利用して強引に接着する。このとき風防パーツと胴体パーツの合わせも確認しておく。曲げたパーツは元に戻ろうとする。その変形防止の補強のため、フリーにしていたコックピット側壁前方部と胴体とを接着。計器板は胴体にしっかり取り付ける。あとで外れると付け直すのが大変。床パーツは下からはめ込む。


切って広げ、スペーサーを入れて接着。


分かりづらいが白い部分がプラ板を貼った隙間。

修正された機首上面ライン。
(この時点では下面は未修整)

機首側面ラインが真っ直ぐになるように。

割れないようにプラ板で裏打ちする。

修正した機首のアウトライン。

 

モールドの修正

 インテグラルタンクは、まるで防弾板のようなので、目立つ上面だけは削ってツライチにする。給油口のモールドを再生するが、コツは中心部から先に彫っていく。同心円が特に難しいが、テンプレートを正しい位置にあてがい、けがき針を垂直にするとうまくいくようだ。下面は、凸リベットを削って凹リベットを新たに打つ。

 スジ彫りは、太さはいいのだが若干浅く、パステルでのスミ入れのため、エッチングノコで軽くさらう。


ツライチにしたタンク上面


できあがりはこのとおり

 

胴体と主翼の接着

 まず、胴体に主翼上面だけを先に接着する。使うのは流し込み系。こうすると翼とフィレットの微妙な段差を正確にできる。特に摺り合わせをしなくても、上反角が決まるのはさすが。フラップは上げ状態とするので、フラップを上面側に接着しておく。

 上面の接着強度が十分となったところで、下面を接着する。接合ピンは切り取っておく。後縁、フィレット付近、フラップ周辺を十分すりあわせる。下面で、フラップと翼に段差が生じるので十分削り合わせておく。ここは仮り組みを十分に行ってフラップの厚さで調整するのがベストであった。

 翼内部の強度確保用の梁は良いアイディアである。ヒケの問題がないよう、位置が考慮されている。この部分にはタミヤの白フタをたっぷり塗っておく。下面接着後に後縁を薄く削る。翼前縁と胴体、および胴体後部下面との接合に、若干パテが必要となる。


動翼布張り部分

 いつものとおりポリパテで埋め、フラットな状態とする。さらに溶きパテで細かい気泡などを埋める。どうせヤスリを使うので、遠慮なく後縁を薄く削る。平らになったところで、面相筆でサフェーサーのリブを描く。


ツライチにして、リブをサフェーサーで描く。

できあがりはこんな感じ。

 

小物のディティールアップ

 エンジンは非常に出来が良く、栄の特徴がよく出ている。黒+銀ドライブラシで塗装し、糸はんだでプラグコードを追加する。排気管は1.2mmのピンバイスで穴を深く開ける。

 座席の縁を薄く削り、操縦手席の軽め孔を、デカールを参考にピンバイスで開口する。シートベルトはファインモールドのエッチング製。後方機銃の支持架は薄く削る。ランナーに付けておくと作業が容易。コックピット内の雷撃用照準器は0.2mm真鍮線でDアップする。モデルは爆装であるが、見た目重視で。

 脚カバーは薄く削り、縁のリブを伸ばしランナーで作る。トルクリンクや尾脚は、型抜きの関係で表現されない正面方向のディティールを彫り込む。ブレーキパイプは糸はんだ。主脚は、横から見て機軸と直角になる。少し奥まった主脚の角度は、97艦攻の魅力の一つと思うが如何だろうか。

 扇形の脚出指示棒をプラバンで追加。ピトー管はファインモールドの真鍮パーツ。これは楽。爆弾フィンを0.3mmプラ板や鉄道模型用の帯板で、固定用のワイヤーを糸はんだで作る。


エンジンはプラグコードを追加したのみで、ご覧の出来ばえ。

脚カバーを薄くし、トルクリンクに彫刻を加える。

 

雷撃用照準器

 カウリング上の雷撃用照準器は、0.35mmと0.2mm真鍮線の組み合わせ。当初、瞬間で接着したが、簡単に取れてしまったのではんだ付けする。作業用の木板に真鍮線を長いままテープで仮止めし、はんだを乗せる。フラックスを塗布すると、うまく流れてくれる。以前は上手くいかず嫌になっていたが、それはフラックスを使わなかったから。固定後に正しい長さに切りそろえ、余分なはんだをペーパーで削り落とす。


窓の接着

 風防は閉状態とする。クリアパーツは特に後端部分をよく擦り合わせる。また偵察員席可動部風防の下端に隙間が生じるので、パーツの裏に延ばしランナーを接着して隙間をふさぐ。でないと塗料の霧が入り込んで窓が曇る。キャノピー先付け派の私としては慎重にも慎重を期すところ。
 窓のマスキングはセロテープで、デザインナイフで切り出す。一部スジ彫りの浅い部分はマスキングテープ切り貼り。


<塗装>

考証(2015.1一部修正)

 作品は、空母赤城の機番AT−322号機とする。モデルアートの別冊などを参考に、下面は灰色にする。j-aircraft.comのリサーチによると、現存する真珠湾の九七艦攻の機体破片の下面は、ジュラルミン地にプライマーなしの灰色である。

 風防内部の胴体外板部分の塗色で悩むが、当時の写真の明度から判断して機体内部色とする。細部では、脚柱、脚カバー内側、主車輪ホイール内側、着鑑フックを銀、主脚収用部、脚カバー外側、ホイール外側を下面色とする。これらも写真の明度の印象で、大した根拠がある訳ではない。爆弾はニュートラルグレー、先端を白と緑黒色、固定金具を銀。

 機首の紺の塗り分けラインは、インストの誤りではないだろうか。実機写真では不鮮明でよく分からないが、銀塗装機では風防前下部枠まで紺で塗装されており、迷彩機も同じ塗り分けと考えるのが自然だ。


紺の塗り分けラインに注意。
照準器は真鍮線をはんだ付け。


自作インレタのマーキング。
モールドにもよくなじむ。

 

調色

 機首のナス紺は、Mrカラー125番カウリング色の明度を若干上げたもの。濃緑黒色は、15番暗緑色をベースに71番ミッドナイトブルー(たまたま余っていたので使用)を大量に混ぜ、若干の白を加え、出来上がりとしては15番と同明度で彩度を下げ若干青みを強めた色とする。下面の灰色は11番ガルグレーをベースに適当に混ぜ、56番日本陸軍機用灰緑色よりさらに暗く緑がかった色(注:Mr.カラー56番の色調は製作当時の話。2008年現在の56番はこれよりさらに暗く緑が強い)

 日の丸の赤は114番RLM23レッドと327番サンダーバーズカラーの赤を同量程度混ぜ、さらにグレーで彩度を若干下げる。ハワイ攻撃の97艦攻で濃緑黒色より日の丸が明るく写っている写真があるが、そのイメージを狙って両色の明度を調整する。


塗装

 下準備として、まずサフを吹いてから、後の銀はがしの前工程と光の透け防止のため、全体にMrカラー8番銀を吹く。今回はマーキングを先に塗装するので、機首の紺、日の丸の赤、胴体帯の白と赤を吹き、マスキングする。続いて下面、テープでマスキングして上面を吹く。境目の段差をペーパーで消し、細く絞ったハンドピースで境目をぼかす。1500番のペーパーで色の境の段差やざらつきを整え、翼下面の数字をマスキングして塗装、最後にフラットクリアを吹く。


ウェザリング

 面相筆で各パネルの縁に沿って少し明るい色で縁取りする。墨入れはグレーのパステル。退色表現としてライトグレーのパステルを上面にのせる。パネルラインに沿っては黒のパステルをのせる。


インスタントレタリング自作

 キットのデカールは使いたくないので、赤のインレタを自作する。版下にはデカールのコピーを使う。他に真珠湾攻撃の九九艦爆、零戦の分も作っておく。東京出張を利用して銀座の伊東屋に注文する。インターネットで「マックスラボ」(今回私が使用したもの)、あるいは「クロマテック」で検索すると、他にも安くて郵送対応の所などがあるようだ。

 残念なことに、塗装した日の丸と色調が少々違ってしまう。注文するときに色見本を持たなかったのが原因。日の丸の赤をインレタに合わせた色調で塗り直すが、なかなかぴったりとはならない。胴体の赤帯も色調を合わせるためベタの部分のインレタをパネルごとに切り張りする。

 インレタの貼り付けは一発勝負でやり直しがきかない。そのため、貼り付け位置、角度の基準となるように、細切りマスキングテープをモデルに貼っておく。インレタは必要な部分を台紙ごとカッターで切り出し、小さく切ったマスキングテープでモデルにとめてからピンセットの背などでこすって貼り付ける。それでも失敗したら、デザインナイフで削ぎ落とし、新しいのを貼る。


完成

 以上でほぼ完成となる。細部パーツ、ウェザリングとマーキングに、もう少し手を入れたいところ。自分としてはカウリングから風防にかけてのラインとワンポイントの照準器が気に入っている。

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