F−102 デルタダガー(1/48モノグラム)製作記

2004.4.19初出




メコンデルタの短剣 (あるいは越南スルメ)



 

 はじめに


■ モノコン

 メッサーが何とか形になり、以前ちらっとアナウンスした”デュース”F−102に着手。とりさん&ダッズさん主催のコンペ「モノコン」開催と同時にエントリーを検討した訳だが、キットの出来が良く、タミヤ、ハセガワは未開発、かつ好きな機体、と自分勝手に条件をつけると、センチュリーシリーズの何点かに限られる。

 以前、ハセレベ・エアロマスター付きのデルタ姉妹を購入してたので、どっちにするか暫し思案。ちょっと「どんくさい」けど、垂直尾翼と主翼のシンメトリーが美しい「姉ちゃん」が私好み。彼女にベト迷を着てもらおう。

 さて、製作コンセプトは、スジ彫りのみ彫り直し、キャノピとウェポンベイは閉める。あとはモノグラムに敬意を表してキットなりにアッサリ、サッパリ。塗装&ウェザリングで存在感を出せれば成功。モノグラム臭のしないモノグラムを目指すぞ〜!?


箱にはレベルの表示だが、モノグラム1990年の刻印。

■ キット評

 プロポーションは、モノを信じアラ探しはしないつもりだが、早速ミスを発見。機首のコーンの形状が異なり、実機は3つの円錐が繋がった形。したがってシルエットは折れ曲がった直線となるが、キットはすらっとした曲線でまとめられている。でも、キットの方がカッコいいんだよね。どうしようかな。

 キット内容は、モノ通例で、特徴を巧みにとらえた外形と、ディティールたっぷりのコクピット&脚回り。ミサイル発射装置の再現がキットの売り。購入したキットは、主翼があぶったスルメの様に湾曲しており、この修正が心理的ストレス。
 主翼下面やインテイクなどには、でっかい隙間が発生。これらもモノ通例。パネルラインなどのモールドは、わざわざ残す必然性を感じず、合わせ目処理でどうせ消えるから、最初から凹に彫り直す方が楽。

■ 宇宙のカレイドスコープ

 キットを手にして驚くのが、パイロットの眼前にある妙な板。なぜ視界の妨げをわざわざ置くのか疑問に感じるが、これはスプリッターと呼ばれ、三角形状の前面風防ガラスが、万華鏡のように反射するのを防ぐもの。
 試作型など未装備で、こいつで宇宙の下辺を飛びつつロールなぞ打てば、さぞかし壮大な万華鏡の眺め、とは”やまい”氏。笑える。

■ ケースXXウイング

 デュースは初期型を除き、外形的な変化点は少ないが、翼端形状は2種類があり、塗装選択の際は注意が必要。キットは前縁のキャンバーが翼端までつながっているケースXXと呼ばれるタイプ。これはシリアル56−1317以降の機体に採用されている。
 パーツを見ると、この部分は差し替えコマになっている。当初、ケースXとして発売され、その後ケースXXとなったという情報をいただいた。ケースXが欲しい方は模型屋を探してみては?
 その他には、機首上面のIRシーカーの球状センサーの有無、背面ブレード・アンテナ、航法燈、前脚ホイルなど。

■ 出戻り構造力学講座

 キットの主翼上面パーツは、事後変形でかなり湾曲している。曲がった翼の修正には、昔学校で習った構造力学の知識が役立つ。ここで、おさらいしてみよう。ま、ベテランモデラーなら感覚的に理解されてる話なので、知らなくても問題ない。


キットの主翼はこんな具合に事後変形している。

 図−1は平らな板を曲げた断面図である。伸びた上面には引っ張り応力、縮んだ下面には圧縮応力が働いている。これが曲げのメカニズム。伸びたものは縮み、縮んだものは伸びようとするから、そのままでは、曲がりは元に戻ってしまう。

応力とは物体の内部に発生している力のことで、まあ単純に「力」と考えてよい。英語ではストレス。胃に穴の開くのも同じ。


図−1 平らな板を曲げた状態


 次に、図−2のように曲げたままの板を2枚、上下に接着する。そうすると接着面では引っ張りと圧縮の応力が相殺され、曲がったままの状態で固定される。

正確には最上面の引っ張りと最下面の圧縮は相殺されずに残るから、若干曲げが戻った状態が最終となる。なお、このとき端部にはズレ(赤丸)が生じる。「曲げ」が横方向の「ズレ」になり、曲げモーメントが接着面でのせん断力に変化するわけだ。なお、曲げてから貼るのと、貼ってから曲げるでは、根本的に違うことに留意。後者では図−1と同じことになる。


図−2 曲げた板を重ねて接着した状態

 読者諸兄はもうお気づきと思うが、「板」を「翼パーツ」に読み替え、「平らな」を「事後変形した」に、「曲げる」を「真っ直ぐに修正」に読み替えれば、そのまま模型製作講座となる。少々の変形なら、上記に留意しつつ翼上下パーツを接着すれば、簡単に修正できる。

真っ直ぐなものを曲げるのと、曲げたものを真っ直ぐにするのは同じ原理。図−1、2は真っ直ぐな状態に頭の中で描き変えていただきたい。パーツ内側にプラバンや金属の補強板を貼るのも原理は一緒。補強板の曲げ剛性で変形に耐えるのではなく、引っ張りor圧縮応力によって耐えるのだ。

■ 弾性変形と塑性変形

 以上は、まだ半分しか語っていない。物体の変形には次の2種類がある。弾性変形とは、バネに例えると引っ張っても元に戻る範囲の変形をいう。塑性変形とは、引っ張りすぎて元に戻らなくなった状態。

 前項の話は、弾性変形の場合で、これで直らない極端な変形は、塑性域に踏み込んだ修正作業の出番となる。プラモの場合、塑性変形は、熱を加えるか、プラが白化するまで変形させる。今回のデュースの主翼は、塑性変形させないと、直らないレベル。

熱の場合は、そのやり方が問題で、失敗の危険性も高い。ドライヤーか、お湯か、はたまた蒸気か。お湯なら温度も重要事項。変形方式も、ハセガワのような硬いプラだと割れてしまう。完全な塑性変形状態では内部の応力も開放されるので、弾性変形のような戻りはない。


 

 

 組み立て 4/26追加


■ スルメの姿煮

 こんな大きなパーツの修正は、未経験なので、事前に情報収集。結果はこちら、やまい氏のサイト。ドライヤーは良くないという意見があって、お湯でいく。フライパンに熱湯を入れ、ガスコンロにかけ、片翼ずつ浸し加熱し、引き上げて反りを直す。
 沸騰前の状態では、曲げても元に戻ってしまう。要するに弾性変形の状態。そこで、沸騰させ、かつ少し長めに浸したところ、今度は軟らかくなりすぎ、飴のようにフニャフニャでエッジが波打ってしまう。完全な塑性変形の状態で、一旦こうなると、修復はかなり困難。

 この中間の絶妙な状態が最適なのだが、それを見極めるのは難しい。左翼はフニャフニャ状態にしてしまい、結局、波打ちを局所的に手で曲げて修復し、それでも残った凸凹をヤスリで削る羽目に。
 その点、右翼は上手くいったが、それでも前縁を一直線にするのが精一杯で、翼全体の微妙な歪みは修正不可。今回ベト迷なので、こういった歪みを迷彩が巧く隠すことを期待。全面グロスのエアクラフト・グレーでは、こうはいかない。


裏から1.2mmプラ板を瞬間で接着して補強。これは胴体にぴったり仮止めした後に。

細かい凸凹が残るが、大まかな形としては真っ直ぐに。

 上面パーツの反りを直したら、下面パーツをがっちり接着。この時、上面パーツは胴体に仮止めしておく。さもないと、いざ胴体と接合の際に隙間が生じるのは必至。主脚収容部パーツは、車輪カバーのステーが邪魔なので、カッターで切り取っておく。

 前縁などに生じる隙間は、瞬間を垂らし、そこにアルテコ瞬着パテに付属のプラ粉をかけて埋める。このプラ粉、非常に使い勝手が良い。おすすめ。
 翼端部分も形状が甘いので、プラ板を貼っておく。しかる後、定規に貼った#280ペーパーで削る、削る・・・、ひたすら削る。


前後縁を直線にするのを最優先。作業に邪魔な突起は、真っ先に切り取っておく。後縁も1.5mm位の厚さだから、削るのが大変。

小さい白丸は、2mmバイスの穴にタミヤのプラ棒細を差し込んで補強したもの。

■ 加熱修正法おさらい

 要は、完全な塑性状態まで加熱しないこと。それはプラ内部の温度で決まり、お湯の温度と浸す時間の関数となる(当然、浸す前のプラの温度も影響する)が、結局勘に頼らざるを得ない。7〜80℃から、徐々に高めていけば安全である。100℃では完全な塑性状態だから、沸騰したお湯に長く漬けるのは禁物。ただし、プラの質によっても異なるかも。
 沸騰したお湯を流しで「ダーッ」とかける、なんていうのは随分乱暴な方法だと思えるが、関数という観点では一理あるかな。温度は一定だから、あとは回数で内部温度をコントロールできる。

 モノやタミヤのようなゴム質の多い軟質プラの場合、むしろ「曲げ」で塑性状態にする方が、安全な修正法。加熱は、その補助とするよいのでは。

■ エアインテイク

 インテイクは、表から目立つ部分のみ、キットなりに丁寧に仕上げて了とする。その後ろは筒抜けだが、ダクト自作なんかしない。 


スプリッター・ベーンは薄く削り、インテイク・リップと滑らかにつながるようプラの小片を接着。

内部の合わせ目にはポリパテを盛る。これより後方は特に手を加えない。

■ 胴体組み立て 6/26追加

 コクピットは、「モノらしさ」の部分。少ないパーツでそれなりの雰囲気。胴体への組み込みには若干のスリ合わせが必要だが、大騒ぎする程ではない。キャノピを閉めるので、外界との遮断に知恵を絞る。今回は、塗料の入り込みそうな隙間にサランラップを丸めて詰め込む。

 コクピットフロアと一体となる前脚収容部は、胴体パーツとの間に大きな隙間が生じる。これをきちんと処理するには、相当大掛かりな工作が必要なので、ここはあっさり「無視」。ジンクロ・グリーンで塗装されるので目立たないハズ・・と甘い期待。

 胴体下面のラインは、機首から主脚部まで一直線が正しい。キットは折れ曲がり、ウェポン・ドアを閉めた場合、極めてカッコ悪い。例により表にパテを出さない修正法。前脚後部あたりに突っかい棒を挟み、ラインを下にふくらませる。接着面が開くからプラ板を挟む。
 幸いなことに、垂直尾翼は歪みが無い。前後縁を超音速機らしく削る。


計器盤はミディアム・シー・グレーで塗り、エナメルの艶あり黒を垂らす。ちょっとコスると目盛りが現れる。レーダースコープは邪魔なので切り取ってある。

脚庫の隙間とコクピットとを遮断するため、機首側から穴を開け、サランラップを詰め込む。エンジン・インテイクは、内部を白で塗装、マスクしてから接着。

航法燈は色付き透明プラ材。裏に1/43カーのライトをテープ止めし、キラリと光らせる。

塗料の霧の入り込みそうな隙間はテープで塞ぐ。ランナーでつっかい棒&補強

■ スジ彫り

 主翼と胴体の接着の前に、主要なスジ彫りを済ませたほうが楽。普段、ちょっとしたスジ彫りにはエッチング・ノコを愛用しているが、今回のように凸を全面スジ彫りするような場合には、ケガキ針が一番。エッチングのテンプレートに両面テープを貼って使う。新版世傑の図面が頼り。1/100なので、近似値で2倍する。

■ 胴体、主翼の接合

 主翼と胴体の合わせは、それ程悪くない。隙間は瞬間で埋める。ウェポン・ドアを接着し、胴体下面が一直線になるようにガシガシ削る。ドアのパーツは湾曲しており、削り込むうち、真ん中が薄くなってペコペコ。プラ棒で補強する。バイスで穴を開けると、薄さ0.5mm。ここは裏打ちすべきであった。元々1.5mmぐらいあったんだけどなあ。百点満点ではないが、これ以上は削れず、ここらで妥協。

 主翼含め、ひたすら削ってばかりでウンザリ。ここまで何時間ぐらい削ったろうか。出来のいい72ならとっくに完成してる。仕上げに、3Mの研磨剤付きスポンジを使ってみる。胴体のような曲面には、力が均等にかかって具合がよろしい。おすすめ。

■ キャノピ

 このキット、キャノピ周りに難易度の高い工作が要求され、その仕上がり具合が、作品の完成度に直結すると心得える。可動部キャノピは枠が別パーツだが、窓部分との合わせが甘い。隙間埋めを兼ね瞬間で接着。

 削り合わせでモールドが消えるから、ケガキ針で彫り直す。モールドを信じて彫ったところ、左右でずれててトホホ・・・。内側を先に彫り、外側はそれに合わせてエッチング・テンプレートなどを定規とする。両面テープでズレないようにするのは必須。


ようやくここまで。国産最新キットなら3日でできるのに。胴体中央部の航法燈は色が不明。見栄えがするという理由だけで赤、青に。

接着、スジ彫りまで終了したところ。後半部だけコンパウンドで磨いてみた。シール部には目立つリベットがあるんだけど、どうしようかな。

■ ノーズコーン

 前述のとおり形状ミスがあり、シルエットは直線。ちょっと悩んだが、気づいた以上やはり直そう。削りだけでは細くなると考え、アルテコ瞬間パテを使ってみる。すぐに固まり、サクサク削れるので、せっかちな性分に合っている。粉と液との混合比で粘度を調整できるのもマル。ただしパテの宿命で気泡とは無縁でない。


コーンの先には、屈曲点を出すため一旦0.6mm真鍮線を丸めて接着。真鍮線からキャノピ前端までは一直線が正しく、キットは垂れている。

小四角形のようなスジ彫りは、プラ板でテンプレートを作る。

7/12追加
 ノーズコーンに仕込んだ真鍮線は、折れ線がくっきり目立ちすぎ、撤去し瞬間パテで埋める。ただ、真鍮線のおかげで正確な円錐形状に削れるので、あながち無駄な作業ではないといえよう。

■ 機体仕上げ

 整形の都合で切り飛ばした部分を作り直す。主翼のフェンスは、金属板にすべきところだが、作りやすさ優先で0.2mmプラ板。完成までの間に、引っ掛けて壊しそう。

 垂直尾翼のアンテナは0.3mmプラ板。実際はもう少し厚く、翼型断面をしているが、再現はパス。エレボン操作部のフェアリングは、キットパーツから切り取っておいたものを整形して接着。エレボンとラダーのヒンジ部には四角い凹部がある。極細のノミで彫ろうと、トライツール・ノミ(平細)を探したが、どこも品切れ。精密工作用ドライバー(幅1.8mm)の先を研いで代用する。

 塗装の都合を考え、燃料タンクとパイロンは切り離し、パイロンのみ翼に接着する。実機写真を見ると、パイロンは2種類あるようだが、使い分け等は不明。キットパーツ下端の半円状の凹みは、実機と異なるがそのまま。


スジ彫りの具合を見るため、薄くサフを吹く。翼端をぶつけて欠けたりしないよう、プラ板で保護しておく。

主翼にはエッチング・ノコで溝を切る。翼前縁の形にプラ板を切って合わせるのは至難の技だから、ノコで前縁から8mmくらいまで切り込みを入れる。

■ コクピットその2

 イジェクション・シートは3パーツから成る。ベルトのモールドが眠いので、鉛板と余りエッチングのバックルで、でっちあげ。ヘッドレストは、赤とミディアムシーグレーを半々に混ぜる。窓のシール部に○リベットを打つ。「たまぐり」なる彫金用の工具を、東急ハンズで購入し使用する。3千円也。これはおすすめ。ネット通販もあるようだ。↓

http://www.seaforce.co.jp/tool/engraving/beading-tool.htm


シートはベルト以外はキットそのまま。キットの前タイヤは断面形が三角形なので、トレッドをスジ彫ってから丸く削る。

○リベットは、マスキング・テープ2枚重ねを定規がわりに。

たまぐり。木の持ち手に針を刺して使うが、ピンバイスでも可。

■ ピトー管 7/16追加

 カジキマグロのようなピトー管は、この時代のジェット機の魅力の一つだ。これは格納庫の制約が緩い陸上運用機ならではで、艦載機ではあり得ない。模型の収納も考えてくれてない訳で、工夫が必要。真鍮棒とパイプで取り外し方式とする。


1.5mmの真鍮棒をテーパー状に削る。四角錘から円錐に削っていく。先端はもう少し複雑な形状だがパス。受けは内径1.5mmのメッキパイプ。

メッキパイプはぶつけて凹むと戻せない。そこでプラ棒を差し込んでストッパーとする。

■ 下塗り

 大まかな形ができたので、2度目のサフを吹く。不具合がいくつかあって、チマチマ直す。キャノピを汚すリスクを最大限排除するため、先に機体内部を塗装しておく。エアインテイクも先に迷彩色で塗り、ティッシュでマスク。

■ キャノピ接着

 前半戦の締め、キャノピ接着。その前にスプリッターをプラ板で作る。その後部には照準器のようなものがあるが、形状の詳細が不明で、キットパーツを切り取って付けるのみ。手持ち資料の中では、旧版世傑に割とよく分る写真がある。


脚収容部はジンクロ・グリーン。セロテープを貼ってナイフで切り抜きマスキング。漫然と吹くと、下面白の塗装が大変。

キャノピの合わせは大甘なので、プラ板、溶きパテ、瞬間パテを駆使して埋める。



 

 塗装 7/25追加


■ ベトナム迷彩

 最初にF−102部隊が南ベトナムに展開したのは、1962年3月(509FIS)で、その時はエアクラフト・グレー塗装であった。その後(65年頃?)SEA迷彩が導入されたが、尾翼にはテイル・コードが記入されずシリアルのみ。テイル・コードが記入されたのは68年からで、これを記したのは509FIS(PK)、82FIS(NV)、64FIS(PE)の3部隊。これらも70年夏までにはベトナムから撤退した。

 初期のシリアルのみの場合、右舷側はタン地に黒文字、左舷は緑地に白文字である。これも渋くて好みだが、手元に利用できるデカール、インレタの類がなく、レター付きにするつもり。ただし、PKはケースXを使用機としているので、NVかPEに限られる。

■ 調色・下塗り

 固有機体の特定は後に回すことにして、迷彩塗装に入る。ベトナム迷彩は、機体により微妙な違いがあるが、まあそこまでは凝らずに何となくそれっぽく。

 グリーン2色と白は特色ビン生。タンはビン生と、白を2割加えた退色バージョンを用意。サフを吹き、#1500ペーパーでしっかり磨き、下地をつくる。
 白から塗り始め、上面3色はエアブラシのノズルを絞ってフリーハンド。塗装図や写真を見ながら、下描きもせず、大まかなパターンを吹いていく。塗料は通常よりかなり薄く溶くが、これはサフの下地が出来ているからこそ可能なのだ。

 タンは側面にビン生、上面に退色と使い分ける。各色の境界には微かにダークグレーを細吹き。これはロービジ制空迷彩で使われるテクで、実機における境界での塗装面のざらつきに汚れが付着した状態を再現するものだが、それ以外の雲形迷彩でも、各色の境界をくっきりさせる効果があってオススメである。しかし、その後何度も吹き直して、途中写真ではほとんど分からない。


フリーハンドで下塗りしたところ。

全体を吹き終えたところで、再度#1500ペーパー。

■ 暗色ぼかし

 デュースは、主翼や胴体の外板ベコベコが特徴だが、これを怒涛の「暗色ぼかし」塗装によって表現する。これは、前作で思いっきり否定してるのに、節操がない。工作精度の低さを、塗装で誤魔化す魂胆といえなくもない。ただ、モノグラムは、濃厚な味付けが似合うキットではあると思う。

   まず下塗りとして、ベコベコの谷にグレーを吹いていく。次に迷彩色で周囲から攻めていく算段。当初、フリーハンドで吹いたところ、どうしても不揃いになる。そこで、鉛筆で薄く下描き。作品は5mmピッチで、実機より少々粗いが、まあ雰囲気ということで。そもそも、実機写真を見ても、ベコベコのとおりに塗装の濃淡がついている機体など皆無で、これは全くの「形而上モデリング」。


べこべこ塗装の下塗り。こんなんで大丈夫か、少々不安になる。

ベコベコできあがりの図。航法燈がキラリと光って、思った以上に効果的。

全体。このあと、部分的に境界のぼけ幅を締めて、全体塗装終了。

小物も合間をみて仕上げていく。脚柱、ホイールは、スーパー・ファイン・シルバー吹きっぱなし。

■ 小物 8/7追加

 胴体上部のアンテナの有無、航法燈の位置は機体により差異があるので、写真でのチェックが望ましい。2種類ある前車輪のホイールの使い分けには一貫性がないようで、補修時の交換によるものと推測するが、ベト迷にはキットでないタイプが多く見られる。

 小物類は基本的にキットをそのまま使い、目立つ部分のみディティールアップ。
 主脚カバーは、そのまま取り付けるとタイヤとの位置関係が狂い、カバーが下になりすぎる。カバー上部を2〜3mmカットし、収容口もカバーが収まるように広げ、カバーと脚の接合部を削る必要がある。実機写真を良く見て、カバーとタイヤとの関係をチェック。カバーには着陸燈が付くので1/43カーのライトを取り付ける。位置は適当なので悪しからず。

 前脚カバーは、キットでもなかなかのディティール。アレスティング・フックの棒は1.2mm真鍮線。パーツを整形するより早いが、胴体の微妙なカーブと合わずに隙間ができてトホホ。


脚とカバーの位置関係、角度、追加した着陸燈などに注目願う。

脚庫内は全くストレートだが、このとおり実感たっぷり。

スピードブレーキ、ジェットノズルも、全くストレート。

ロッドを真鍮棒、フック部の整流板?をプラ板で置き換える。簡単なことで作品がぐっと締まる。

■ マーキング

 実機の雲形迷彩のボケ幅はもう少しタイトで、作品の出来にはいまいち不満が残るが、自己の技術の限界と諦め、先に進む。マーキングの選定で頭を悩ます。できるならベトナム実戦参加機にしたいが、手持ち資料で前線基地で撮影されたものは、初期のレター無しかPKのケースXウイングのみ。

 仕方なく、後方基地で戦争期間中に撮影されたものから、64FIS所属F−102A−80−CO(s/n56−1450)を選ぶ。本機も多くのSEA迷彩機と同様、残念ながら前ホイルがキットと異なるタイプ。胴体背面のブレードアンテナは未装着。

■ デカール、細部塗装

 レターは手描きしようかと思い、マスキング・テープ切り出し用の下図をパソコンで作成したが、手元にAMDのレター用数字デカールのストックがあるのを思い出し、そちらに切り替える。ちなみに、サイズはPEが縦12.7mm(24インチ)、450が縦8.5mm(16インチ)、AF061が縦3.2mm(6インチ)である。

 細部のマーキングは、実機写真を見てキット付属のAMD・デカールから適当に選んで貼る。国籍マークの位置、コードレターとシリアルの位置関係、個々のコーションデータの有無、タイプ、位置は部隊により差異が見られる。
 ベト迷の場合、イジェクション・シートを示す三角マークは、モノクロ写真で存在がよく分からないが、赤色で枠のみの三角形が一般的なようである。機によっては黒色の枠のみ三角もある。詳細はよく判らないので、適当にでっち上げる。その他、国籍マークやAF061のレターは、手元のベト迷のシートから。

 シルバリングを防ぐため、余白は完全にトリミングする。周囲のものは貼る前に、Pや4などの内部のものは貼った後、生乾きの時にデザイン・ナイフで切り取る。


赤のタービン・ラインはRLM23で手描き。AF061が未だ貼られていない。

赤の三角は、手元に流用できるものがなく、デカールの細切り。窓枠は黄橙色+銀。

■ ベトナム雑感

 ここらで、つまらぬ随想を。模型とは全く関係ない。

北と南

 ベトナムは南北に長い国で、北と南では、気候風土や顔つき気質など違っていて面白い。

 北に位置する首都ハノイ、仕事柄政府の役人と接する機会があって感じるのは、戦争でアメリカを負かした唯一の民族である、という誇り。
 気温が相対的に低く、じとじと雨が多い。共産国家ベトナムの政治の中心、顔つきも目がつり上がってキツネ顔。

 南のベトナム最大の都市ホーチミン・シティ(旧サイゴン)、飲み屋の女の子に「一番好きな国は?」と訊くと「アメリカ」と返ってくる(実話)。
 暑く、快晴か土砂降り。ドイモイ(開放)経済の牽引車、「もうかりまっか」、小柄丸顔タヌキ顔。

クチのトンネル

 ホーチミン・シティ周辺での戦争関連観光スポットその2(その1は戦争犯罪博物館)。ベトコン・ゲリラの地下要塞である。訪れると赤錆びた戦車の残骸が出迎えてくれる。トンネル入り口は巧妙に隠され、しかも狭く、痩せたベトコンがやっと入れる大きさ。頑強な米兵には相当キツそう。

 中に入ると真っ暗で、幅は肩幅、高さは腰まで。閉所恐怖症の人は無理で、私も入った瞬間に心臓どきどき呼吸はあはあ。懐中電灯を持ったガイドが先に行ってしまうので、中腰で追いかけるのがまたツラい。

 このトンネル、作りもさることながら、驚くのはサイゴンからの近さ。タンソンニュットから目と鼻の先。これが米軍が必死になって潰そうとして潰れなかったのだ。空軍基地が夜な夜なゲリラの来襲に脅かされたのも分ろうというもの。

■ 小物その2 8/26追加

 胴体上部のライトは、色つきプラ材を直径2mmに削る。取り付けのため、胴体に穴を開けたところ、プラの厚みが0.5mmしかなくてビックリ。形状修正で削っているうち薄くなったのだ。主翼なども部分的に相当薄いところがあるのだろう。

 ピトー管の赤白スパイラルは塗装する。幅2mm程度の細切りテープでマスクするが、ピトー管が先細りテーパー状なため、先端でスパイラル幅が太くなってしまう。ここはテープもテーパー状にすべきところ。


前脚まわりもほとんどストレート。ライトを置き換え、ガードをプラ板にしたのみ。

キャノピまわりは苦労した割には、いまいちスッキリせず、気分もモヤモヤ。

■ 仕上げ

 今回、工作が手抜きなので、せめて塗装面だけでも美しく仕上げたいと思い、吹くたび#1500〜2000のペーパーで表面を研ぐ。デカールにも、軽くクリアー研ぎ出しをする。あまり厚吹きするとキレがなくなると思い、適当なところでやめる。
 ウェザリングに、軽くパステルと面相筆チッピングを施し、フラットクリアを吹いて完成。


面相筆チッピング。あくまで形而上ウェザリング。

米空軍ははしごで乗降するので、その跡を”らしく”チッピング。


 

 完成


■ ようやくゴール

 ウェポン・ドアには航法燈(白?)があるが付け忘れ。その他、スジ彫り忘れなど、どこがどうとは言わないが詰めの甘い部分あちこちだけど、まあこんなものかな。リベンジはエアクラフト・グレーのF−106のつもりだが、いつのことやら・・・

■ モノのデュース

 そうは言っても、出来たもん勝ちだ。完成した機体を、眺めまわすのは至福の時間。モノのキットは、外形の捉え方が巧みで、とにかくグッとくる。組み立ては相当歯応えがあるが、これだからこそ、その苦労に耐えられるというもの。特に、背中から腰にかけてのラインは、若干デフォルメ気味だが、美しく、色気がある。

 キャノピ回りもばっちりで、目鼻立ちクッキリ美人。不細工なハセガワ1/72とは大違い。一方で、肩のあたり、つまりインテイクから盛り上がっていく部分は肉太で、逞しい水泳選手を連想させる。実機写真では正確な形状が捉えづらく確証はないが、この断面は丸でなくオニギリ形と思われ、ここの贅肉を削ぎ落とすと、より美しいラインとなるだろう。

 さらに重箱の隅をつつくと、タービンライン付近において、主翼下面と一体になっている胴体下部の断面形が角張りすぎかな。修正は大仕事だし、応分の効果は期待できないので、お奨めしない。

■ 特撮セット

 ベトナムの前線基地を新造する。エプロンは板をポスターカラーで塗っただけ。空は白い厚紙に水色と白のポスターカラーで、ベランダで蚊に刺されながらエアブラシ。防護壁は、写真で機体や人物と対比し、高さ3m程度と推定。3mm角棒とプラ板で作る。小物類はハセガワの別売りセット。


■ ベトナム雑感 その2

 もう10年近く前になるが、仕事でベトナムに何度も行った。ホーチミン・シティー国際空港、かつてのサイゴン=タンソンニュット飛行場に降り立つと、南国特有のむっとする匂いに「ああ、また来たな」と思わされる。匂いの記憶は強烈なのだ。誘導路脇のミグの機影は、戦争の勝者が誰かを教えてくれる。

 40年近く前、同じ場所で、平和な現在からは想像もつかない緊張感の中、F−102クルー達はアラート任務に就いていたのだ。なにしろ基地のすぐ近くにもベトコン・ゲリラが潜み、ダナンでは、迫撃砲で機体が破壊されたのだから。


 ホーチミンから首都ハノイ=ノイバイ空港へ、VN(ベトナム航空)のエアバスA320で飛んだ。アオザイを着たスチュワーデスにコクピットの見学を頼むと、快くOKの返事。パイロットは初老のアメリカ人、コパイは若く精悍なベトナム人。

 サイゴンからハノイへ−−北爆と同じコースである。屈託のない機長は、案外ベトナム戦争経験者ではないかと思ったが、質問できずにコクピットを後にした。眼下ダナンの海が青かったのが、印象に残っている。



 

 参考資料


■ 参考文献

1 旧版世界の傑作機 文林堂
2 新版世界の傑作機 文林堂
3 航空ファン別冊イラストレイテッドNo.21 ベトナム航空戦 文林堂
4 航空ファン別冊イラストレイテッドNo.101 センチュリー・シリーズ 文林堂
5 航空ファン別冊エアコンバット No.15 文林堂


■ 参考サイト

 web検索していて、ジョージ・ブッシュ大統領はデュース乗りだった、という事実を知った。若き日のブッシュは結構ハンサム。

 写真
 写真
 写真とブッシュ大統領
 クローズアップ
 クローズアップ
 エアクラフトグレー時代の64FIS
 64FISの歴史






次はWWU最強ファイター。

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