マクダネル・ダグラス F-4E ファントムII ファインモールド 1/72 その1
2021.7.28初出
|
それ以外の胴体や主翼はEJと同じ。まあこれは営利企業としては仕方ないだろう。別パーツになっている胴体背中は、EJの初期ロットと比べて合わせが良くなっている。社長にお尋ねすると、パーツ幅を広げる金型改修をしたとのこと。これは現行EJにも適用されている。細かい所で目に見えない企業努力。素晴らしい。 いやもう、これは作るしかない。某誌作例でファントムは満腹気味ではあるけど、頑張って「おかわり」いってみよう。と、ここで思案。ショートノーズは作ったばっかり。EJとニコイチで「正しい形」のロングノーズを作る、っていうのがネタ的にも面白いかな。型式&塗装は、空自や独空軍も捨てがたいけど、やっぱりベトナム戦のE型withシャークマウス。これで決まり。
インテイクとインテイクベーンはEJのまま。そのため、後席付近の胴体幅はEJ同様に若干狭い。ここはしれっと新規パーツにして欲しかったが、ランナーのパーツ配置から難しかったのだろう。コクピット基本パーツ(床、バルクヘッド)もEJと同じ。胴体、主翼も同じ。これらはEJを再現したものなので、C/D、J型とはパネルラインが異なる部分がある。 まず、C/Dについては、胴体後部のパネルラインがかなり異なる。これは登場時期の差が現れる部分で、BはC/Dと近く、JはE/EJに近い。左舷のラムエアタービン(RAT)ドアにも注意。また、主翼前縁内側フラップが異なる。詳細は私のC型図面を見てくだされ。DのパネルラインはCと同じ。 JはRATドアとその後方のチャフランチャーのドア(左右)を追加する。胴体下面、補助インテイク前方のパネルラインはかなり違う。ここらは海軍型と空軍型の違いが現れる部分。センターパイロンのディテールも空と海で異なるが、まあ1/72では無視できるかな。胴体後部のパネルラインはビミョーに違う。これはEJも同様。垂直尾翼は、EJ、C/D、Jそれぞれアクセスパネルが異なるので、図面と比較されたし。 いいキットだが、今後のより良きキット開発を願い、不満箇所を述べる。風防の分割は、何度も書くがタミヤのように胴体と一体にしてほしい。キットのスジボリは繊細過ぎる。胴体はインテイクなどの接着後のパネルライン再生が必須だが、細すぎてケガキ針が脱線しやすく、また再生後は他のスジボリとの差が目立ってしまう。個人的にはタミヤファントムくらいの太さが嬉しいな。 繊細過ぎるスジボリに比べ、パーツ接合ラインには大きな凹溝ができてしまう。タミヤファントムでは、同じような接合ラインがほとんど目立たない。なぜだろう? 設計が違うのか、使っている金型業者が違うのか(私の予想は後者)。また、主翼前縁では、接合ラインが繊細なモールドが集中している箇所にあるのも問題。ここは単純な上下分割が正解。 |
ショートノーズの新規キャノピ。後席前端付近の広がりに注意。前端の幅は同じなので、ロングの風防にもフィットする。 |
ロングノーズのキャノピ。左画像と同じ縮尺なので、キャノピ幅の違いが分かるだろう。ハセやゾウケイによく似たイメージだ。 |
ランナー配置が似ているので、上記違いに気づかない人は多いかも。 |
キャノピ後方部分も異なる。右がショート、左がロング。 |
タミヤ1/48をお持ちの方は、キャノピパーツ形状を比較してみてほしい。ファインのショートとタミヤとは同じイメージなのが分かる。言うまでもなく、タミヤは完璧。 |
こちら実機。これもタミヤキットと比較されたし。インテイクの平面形にも注目。側面は結構平らなのだ。タミヤはちゃんと表現されている。 |
ファインのショートノーズ。レドーム、胴体、風防、キャノピ、インテイクベーン、インテイク内外など、主要なポイントはノギスで計測。キャノピが実機どおりなので、機首のイメージが良いのだ。インテイクが・・・←やめなはれ。 |
両者の重ね合わせ。キャノピはぴったんこ(まあ、細かい差異はあるかもしれないが、計測困難なので図には反映されてない)。 |
いろいろ書いたが、1/72ショートノーズのベストキットといっていいだろう。重箱の隅は、今後のキット開発の参考にして欲しいのもあるが「オレは気づいてるぞ」という単なる自慢なので、あまり気にせず素組みでどんどん作ろう。気になる所はちょこっと手を入れてウンチクを語る。それもまた楽しからずや。
では、機首の改造から。風防後端で切断してつなぐのが一番合理的だろう。この手の改造の常として、左右同時に切り離すのではなく、片方ずつとして、残るパーツを基準に整形、接着する。キットはコクピット床が前後のピンで機首パーツに接合されるので、このピンに合うように切断面を慎重に擦り合わせる。 |
切断ラインをカッターでけがく。 |
エッチングソーで切断。 |
セロテープで仮り止めして瞬間を流す。裏側は0.5mmプラバンで裏打ち。 |
コクピットと組む。右舷は切断前のパーツ。こうすることで、歪みや曲がりを防止する。 |
長くなったので、製作はとりあえずここまで。続きは次回で。Jの下面図は近日中にアップする予定。
|
計器類はキット(EJ)のデカール。マイクロゾルでモールドに密着させる。あとでフラットクリアを吹こう。 |
コクピットはスピットVの自作ダークシーグレイとミディアムシーグレイとを半々。 |
|
実機。機首側面が一直線。インテイク側面の平面形に注意。 |
キット。機首がやや太く、側面が湾曲している。キャノピの細さは前述のとおり。インテイク部分は丸みがある。 |
重ね合わせ。どこをどれだけ修正すればよいか、一目瞭然。風防前端付近の胴体を0.5mmほど狭めたい。キャノピに関しては、ショートノーズに交換することで問題解決。 |
ファインのロングとショートの重ね合わせ。胴体とインテイクに関しては、ロングとショートの差はあまりない。 |
|
実機。後席キャノピ前端より少し後ろのあたりの断面。 |
キット(ロングノーズ)の断面イメージ。各部の高さに関しては実機どおりとの仮定で作図。 |
キットは、胴体とインテイク内壁が内側寄り。インテイクリップも同様に内側寄り。インテク外壁は、この断面ではほぼ実機と同じ。 |
キットのロングとショートの比較。 |
では工作開始。まず、コクピットと前脚収納部を挟んで機首左右を接着する。風防付近の胴体を0.5mmずつ狭めるため、コクピット取り付けピン基部を加工し、機首パーツ自体は指でしごいて湾曲を矯正する。レドーム付近、インテイク付近の機首胴体の幅は変えない。胴体左右を狭めているので、当然機首上部は合わない。接合部を慎重かつ大胆にすり合わせる。 |
ピンの取付穴のフチを0.5mmカットする。 |
そこにコクピットパーツがはまる算段。画像は仮り組みの状態。 |
インテイク内側を白で塗装。 |
インテイクとベーンは0.5mm外側にずらして接着する。そのスペーサとして0.5mmプラバンを接着。 |
インテイクは、ベーン後端とインテイクリップが実機より0.5mmほど内側寄り。そこでベーンとインテイクを0.5mm外側にズラして接着するわけだが、そのままでは後部胴体にうまくつながらない。解決策として、インテイクのパーツを前後に二分割し、前側は0.5mm外側に平行移動し、後側はそのまま接着。平行移動でないと、境界層排出スリットが平行にならないのだ。段差は前側インテイクの側面を削って合わせる。 |
エッチングソーで前後にカット。 |
インテイク前半部は外側を削るので、内側を0.5mmプラバンで裏打ちする。段差は瞬間+プラ粉で埋める。 |
塗装。迷彩色の境界はよく分からず、とりあえずC/D型と同じとする。 |
ベーンは切り離して、後半部分をインテイクに接着。内側は白と迷彩色で塗っておく。 |
インテイクダクト、胴体後半を接着。そこにインテイク後半も接着する。 |
さらにインテイク前半も接着。 |
こんな具合に0.5mmの段差がある。 |
インテイク後半はそのままに、前半側面を最大で0.5mm削る。タミヤキットがイメージの参考になる。ベーンとキャノピは仮り置き。 |
全体のイメージを確認。機首の幅寄せは、ちょっと強引な手法なので、ラインを整えるため瞬間を盛ってゴリゴリ削るはめに。 |
インテイク側面の丸みを図面等と比較されたい。右、キットオリジナル。左、修正後。 |
補足。インテイクベーン先端は広げない。ベーンが前狭まりになるように、スペーサのプラバンの前半部分を斜めに削る。胴体とインテイクの間の凹部分は、インテイクパーツ切断部の前後で段差ができるから、後半部分を前半に合わせて広げる。インテイクを覗くと内壁外側の先端の段差が見えてしまう。内壁外側パーツの前半を外に広げれば解決するが、よく見えない部分なのでスルー。機首を狭める際には、機首下面パーツとの合わせにも注意。機首の下半分は幅を大きく変えないようにする。
|
下画像赤線の山折りを真っすぐに、青線を山折りにする。青線は裏側に深めのスジボリを入れておくと曲げやすい。 |
断面を図解するとこのとおり。図はややオーバーに描いている。ゾウケイも同じような断面。 |
折り曲げたら、戻らないように裏側にプラバンを瞬間で接着する。 |
胴体は余りパーツを利用して真ん中にバルクヘッドを足すことで、この部分のクビレを真っすぐにする。 |
いうまでもなく、胴体のクビレ修正により主翼とピッタリ合わなくなるから、主翼も接合部分を真っすぐに削る。
問題箇所その1は外翼。折り畳み部での翼厚は、正解1.7mmに対しキットは2.7mm、翼厚比だと4.0%のところが6.4%と、かなり厚い。翼面の湾曲が強く、超音速機の薄板感がなくて亜音速機みたいな感じ。胴体端での厚さはOK。コードは若干短く、胴体端で1mm弱不足。その2は垂直尾翼。外翼とは逆に薄く、下端の厚さは正解2.6mmのところキット1.6mm。主翼外翼より垂直尾翼の方が薄くなっている。スタビレータの厚さはOK。ただ、寸法は3%ほど小さめ。基にした図面が悪すぎたのだろうね。私の図面を・・←ヤメレ 気づいた以上、直さねばならぬ。外翼はひたすら薄く削る。内翼は、パーツ内側の外端のフチ(下画像赤)や前後フラップ際の凸(青)を削り、上下パーツを隙間なくピッタリ接着してから薄く削る。脚収容部の内壁もそれに合わせて削る。ただし、そのまま主翼上下を接着すると、前縁が外下がりになるので、上側パーツの前縁部分の外側をちょっと折り曲げる。コードは見た目に分からないので未修正。 |
上、切除前。下、切除後。赤のフチと青の凸部を切り落とす。 |
脚収容部は、内端をそのまま、外端(赤丸)を0.5mmほど削る。 |
上面パーツは手でしごいて曲げてから下面を接着する。上、修正前。下、接着してざっと削ったところ。 |
外翼も削る。上、切削途中(まだ厚い)。下、修正前。 |
これで、主翼のモールドはほぼ消える。胴体もかなり消えてしまって、結局全部のスジボリを新規に彫り直すことになる。これ、エアのブリファンと同じ流れだな。現状1/72で外形を忠実に再現するには、相応の苦労が伴うってことか。
次いで、1972年頃?からパネルライトが導入された。砲口が斜めでライト付きの機体もあれば、砲口が延びてライトなしの機体もある。主翼前縁スラットが導入されたのはブロック48の途中(71-0237)以降で、ベトナム戦のE型の多数はスラットなしである。ただし304機がレトロフィットされ、ベトナム戦でスラット付きもあり。 以下は、ベトナム戦E型に共通の特徴。スタビレータはスロット付きで補強板なし、垂直尾翼は、前縁のプローブが下側1本のみ、後端上部にRHAWフェアリング。背中のアンテナは、コクピット直後に棒状、中央に小台形ブレード。キャノピ上部の外付けバックミラーなし。 ここで一つ疑問。世傑No.86によると、ラムエアタービンが廃止されたのはブロック40とのこと。であれば39まではRATありか? 情報求む。⇒ 世傑の記述は間違い。Eは当初からRATなし。情報感謝。 ※参考文献-57によれば1970年途中、世傑No.86ではブロック48から、と記載されている。また、Midas IV ディフューザーの採用に合わせ砲口が長くなったものと思われ、それであればブロック43から改修となる、との情報を頂く。毎度感謝)
|
こんな具合にカッティングシートをガイドにケガキ針で彫る。 |
ほぼ、スジボリできあがり。 |
下面は胴体部分も含めて、彫り直す。ヒンジの膨らみは整形の邪魔なので削り落としている。再生をどうするかは考え中。 |
並行して、胴体をスジボリ。キットモールドもすべて彫り返す。 |
左舷はショートノーズ、右舷はロングノーズのパーツを使う。削るだけでなく、翼型に沿って湾曲させる。 |
垂直尾翼できあがり。上、キットオリジナル。下、修正後。 |
機首とノズル前の胴体を整形したらバルカン砲フェアリング、機首ラムインテイク、ジェットノズル直前の無塗装パネルを接着する。垂直尾翼は真鍮線のピンを刺してがっちり接着。キットは前述のとおり後部胴体(FS450付近)のクビレがやや強いのだが、そのせいもあってエンジン&テイルパイプ部分の肩がやや張り出し気味に見える。タミヤキットなど見ながら、少し丸めてやる。この部分のパネルラインは位置が違っており、併せてパネルラインを埋めて彫り直す。 |
フェアリングは後期タイプを選択する。 |
赤丸部分を少し削る。パネルラインがどう違うかは、拙図を参照くだされ。 |
十の字。うーん、かっこいい。機首にもざっとスジボリしてウェザマスでウォッシング。 |
このアングルは、外形改修の効果が現れる部分。え?大して違わない? ま、感受性は人それぞれで・・・ |
|
1/72 ファインモールド F-4E/J/EJ用 J79-GE-17ジェットノズル |
1/72 ファインモールド F-4C/D用 J79-GE-15ジェットノズル |
これでプリントすると、出来上がりは0.1mmラインチゼルの線幅と同じくらい。感覚的に、私の環境下(Mars2、エニキュレジン、0.025mm、2.4s)では0.03ミリ太る感じ。0.17mmが両側から0.03mm太ると出来上がり概ね0.1mmとなるわけだ。お持ち帰りは、RGB液晶機用に線幅0.25mmもオマケ。線が太い分だけヒンジラインをデフォルメしてある。お試しプリントはしていない。 |
下面側ヒンジできあがり。前後端は、ロフトが面倒で二方向の押し出しで単純化。ペーパーで丸めれば実用上問題ない。 |
|
表面状態確認のサフ。 |
彫り直した上面側スジボリ。削りカスは0.1mmラインチゼルでさらう。 |
下面側も全面彫り直し。 |
3Dのヒンジ。こんなの手彫りでは絶対無理。補強板はカッティングシート。 |
上面補強板も同様。カットはもちろんカッティングマシン。 |
尾翼上端に延ばしランナーを接着。RAHWアンテナ、アンチコライト、下端の補強板(0.14mmプラペーパー)も追加工作。 |
主翼端には、延ばしランナーを半円断面に削って貼りつける。 |
スタビレータは、補強板を削り落とし(EJキット使用のため)、スジボリを彫り直し、不足のリベットを打つ。 |
|
下面から打っていく。正確さは求めない。自分じゃ限界まで細かく打ってるんだけど、画像で見ると大味だなあ。 |
続いて機首。これでもキットよりは密なんだけど。コケてるように見えるスジボリは、瞬間で埋めた跡なので、ご安心を。 |
ファスナは続く。
|