F4U−1aコルセア(1/48タミヤ)製作記

 

<塗装>

脚関係の塗色の考察 ※2023/4追記、以下の考察は間違いが多々ある。バードケージコルセア製作記参照のこと。

これが悩ましい。主車輪カバー内側は間違いなく白だし、脚柱も白く「見える」ので、当初は漠然と全部白かと思っていたが、疑い出すときりがなく、手持ちのありとあらゆる資料を確認するが、決定打がない。脚柱とホイルは、写真によっては白よりは銀に見える。収容部は分からずじまい。結局、尾脚も含め、脚、ホイルは銀、収容部はジンクロ(緑)、カバー内側は白と決める。
 なお、後期のシーブルー単色の機体では、ホイルや脚柱が銀と機体色と混在している。トライカラーも同様に、白でオーバーペイントされている機体と混在していた可能性もある。こうして調べていると、トライカラーのコルセアは、意外にカラー写真が残っていないということに気づく。


塗装・マーキングの考察

 トライカラーが使い込まれて退色と汚れが激しいところを再現したいので、手持ちのエアロマスター・デカールから、海兵隊第321航空隊ヘルスエンジェルス042号機とする。
 本機の写真は、資料Dに飛行甲板上で横後方から写した1枚のみがある(資料Hにも同じものがあるが小さくて不鮮明)。他に甲板上で同部隊の他機を写したものがあり(資料D)、これは同時期の撮影と考えられる。ほかに陸上基地でのもの(資料G)などがあるが、これらは撮影時期が異なる可能性もある。

 全体塗装は2色迷彩のようにも見えるが、他機の写真とも見比べ、トライカラーの極度に退色したものと判断する。シリアルNo.からも2色迷彩とは考えづらい。国籍マークは鮮やかだが、塗り直されたと考えられる。
 カウリング先端は、デカールや資料B、Dの塗装図では白となっている。しかし実機写真では、折りたたんだ主翼の陰で分かりづらいが、白くないのが確認できる。甲板上の他機も同様。ただし、陸上のは、機体差があり、たしかに白い機も存在する。もちろん、時期によって042号機が白塗装された可能性は否定できない。垂直尾翼と尾端の白塗装は写真ではっきり確認できる。

 プロペラ付け根とスピナーも同様に個体差がある。042号機は写真で確認できないが、同じ甲板上の他機の例に従う。コルセアの特徴の1つである胴体燃料タンクの白テープは、貼られていないがその跡がかなり汚くなっている。なお、同部隊の他機ではばらばらである。
 カウリング右側面には、パーソナルマークらしき文字(末尾がYと読める)があるようだが、既出の資料では触れられていない。同様のものは他機にも見られる。今後新資料が出てくれば明らかになるだろうが、そのときは自作デカールか自作インレタで対応することにして、それまでは無視する。


プロペラ付け根は白く塗装されている
カウル先端の白塗装はない

尾部と垂直安定板上部も白


機体細部の考察

 さらに、042号機の細部について触れておく。前方のアンテナ柱は撤去されているが、後方は残されている。アンテナ線は垂直尾翼上端から右胴体と右水平尾翼端に張られている。後者は前端から出ている棒の先に付けられている。
 この機体は、−1aでありながら、尾輪柱が延長されている(おかげで作り直すはめになった)。着艦フックは撤去されている。空母甲板上なので、疑問に感じるところだが、写真のキャプションでは、空母から出撃した後は陸上基地に帰投した、と書かれている。

 プロペラはおそらく−1aに一般的な根元の細いタイプ。ただし、甲板上の別写真では(資料G)1機だけ幅広タイプを付けている。ついでに言うと、海賊旗で有名なVF-17のケプフォード機は幅広タイプである(陸上での写真を参照されたい。)。
 右翼下面の着陸燈は、−1と−1aのかなり初期の機体のみに存在する。042号機は、シリアルNo.から判断すると着陸燈はない。布張り部なので、埋めてモールドを再生するのも大変だから、気づかなかったふりをする。


マスキング

 前部風防は、枠モールドが甘いので、細切りマスキングテープ法とする。1mm程度の幅に切ったテープを適当な長さにカットして貼る。下端のカーブは、パーツに貼ったテープの上からナイフでなぞり、はがしてから切り出す。
 後部キャノピーは曲線部が多いのと、比較的モールドがはっきりしているので、セロテープ切り出し法。これはセロテープを貼り、窓枠のモールドに沿ってデザインナイフで切り出すもの。若干モールドが甘いので、テープを貼る前にナイフでなぞっておく。


下塗り

 窓枠内側に機体内部色、金属部にプライマーを吹く。窓枠、翼端などに光が透けないように暗色を吹く。サフェーサーを吹き、1500番程度のペーパーで磨く。これで基本的な塗膜ができる。次に、主翼付け根などに銀を吹く。後で堅いものでガリッとやると、いい感じで塗料のはがれが表現できるのだ。布張り部はマスキングしておく。主、尾脚、ホイルなどもついでに銀を吹く。このように段取りを考え、まとめると楽。


下面塗装

 下面と、手描きする国籍マークの白部分を、Mrカラーのスーパーホワイトとつや消し白を半々に混ぜ塗装する。下地に白いサフェーサーを使ってみる。隠蔽力は強いが、結果的に失敗。本塗装に薄い塗料をたっぷり吹くと、溶け出し凸凹になってしまう。その後、国籍マークの星と袖をマスキングテープから切りだし貼り付ける。


上面塗装

 使用色は自分で混色する。インターミディエイトブルーは、ブルーグレイ(これのみSDEカラー)とミディアムシーグレイを半々程度に混ぜる。退色したシーブルーは、ミディアムシーグレイに自作のインシグニアブルーを若干混ぜる。留意点は、極力青味を少なく、彩度を落とす(グレイを多くする)。色を混ぜている状態と、塗って乾いた状態とでは、色味がかなり違うので注意が必要だ。立体色見本として不要モデルに塗装して調子をみるとよい。
 インシグニアブルーはサンダーバーズカラーの紺と黒を半々程度に、若干の白を加える。ほとんど青味を感じず、紺というよりは黒に近い。市販のデカールのインシグニアブルーは青味(ものによっては赤味も)が強すぎて使う気がしない。ブルーの部分のみ手書きし、白い部分はデカールを切り貼りするのも一法。

 塗ってみると2色の差が思ったより強く、実機写真のイメージから遠い。シャブシャブに薄めたインターミディエイトブルーを遠くからオーバースプレーする。翼の布張り部は金属部より明度を上げて、構造の特徴を強調する。
 退色は全ての部分で同じ程度に進行しないから、さらに明るい色を部分的に吹いたり、逆に一部のパネルラインには、暗い色を吹いて締める。全てのパネルラインが同じ調子だとわざとらしいので、実機の写真をよく見て感じをつかむ。特に大戦中のカラー写真は非常に参考になる。コルセアでなくても、塗装の参考になるものはある。
 下面との境はフリーハンドのほうがいい感じ。はみ出た上面色を白で修正し、その際の白の飛沫を再度上面色で修正する。


上面はシーブルーが極度に退色した色である

国籍マークは縁が塗り直されているのを再現
機銃パネルの縁などのはがれを面相筆で描く

 

国籍マーク手書き

 白星は先に塗ってあるので、紺の部分を塗る。枠と中とで若干トーンが違うので、塗り分けたが、色の差があまりなくよく見ないと分からない。
 手順は、マーク全体の外枠の形にマスキングして内丸の色を吹き、中丸をマスクし、外枠色を吹く。全体をマスクするとき、まず中丸のテープを仮に貼って、それを位置決めの基準とする。


細部塗装

 プロペラ先端のオレンジイエローは黄橙色。ブレードはチャコールグレー。黒の塗装指定の所には、いつもビン生の黒のかわりにチャコールグレーを使うことにしている。
 タイヤはRLM66程度の明度のダークグレー。エンジンのクランクケースもダークグレー。チャコールグレーやダークグレーなど明度の違うグレー各種を、常にストックしておくと便利。
 翼のライトは銀の下地にエナメルのクリアーカラー。


ウェザリング

 黒のパステルをペーパー上でこすって粉にして、乾いた筆などでモデルになすりつける。つきすぎたら指やティッシュなどで、少し拭ってやる。濡らした筆やティッシュを使うと、エナメルのウォッシングに近い感覚となる。
 塗装面のつやの状態によってパステルの乗り具合が異なり、つや消しだとグラデーションが容易。墨入れ的に使うならつや有りがよい。定着はMrカラーのシンナーを吹くだけでよい。

 極薄のエナメルカラーをエアブラシで吹いて、仕上げの汚しをする。胴体燃料タンクから燃料が流れた跡はダークアースで。面相筆も使い、流れた感じも併せて表現。排気の煤は黒と茶で。何色か使うことで深みが出る。翼前縁やパネルライン沿いに黒を吹いて締める。


胴体タンクの燃料汚れやテープの跡を描き込む

下に銀を塗り、ピンセットなどではがす
実機写真をよく見るのが最大のコツ

 

面相筆による汚れの描き込み

 面相筆で、外板の浮き上がり、リベットなどを描き込んでいく。塗料は特別なものではなく、Mrカラーをリターダーで溶いて使っている。パネルラインに沿って、周りより少し明るいグレイを細く入れ、外板の縁が浮いて塗料がはがれた感じを表現する。
 また、同色でリベットを部分的に描き込む。実機写真では、トライカラーのコルセアはリベットはほとんど感じられないから、ごく限られた部分にとどめる。また少し暗いグレイを使って、オイルのにじみによる汚れを表現する。肝心なのは要所に絞り、やりすぎないこと。
 胴体燃料タンクの周囲の、テープを貼ってはがした跡は、ダークグレーを筆で乱雑っぽく塗って表現する。


銀はがし

 使い込まれた機体は、オイルクーラー上部などが、整備兵に踏まれて塗装がはがれているので、これを再現する。実機写真でパターンをよく把握する。リベットを面相筆で描き、銀はがしの位置の目安とする。ピンセットの先などで、ガリッと表面塗装をはがし、下地の銀を出す。
 実は銀の上にジンクロイエローを塗ってあるのだが、全く効果なしである。



<デカールと仕上げ>

デカールの考証

 スーパースケールでは昔から指摘されていたが、実はエアロマスターも結構いい加減である。作品の機体の場合、旧版インアクションの裏表紙のイラストをそのまま起こしただけとしか思えない。

 胴体横の数字は大きすぎ。国籍マークとの大きさの対比では高さ6.5mm程度。別売の数字セットから高さ6mmのステンシルタイプを使用するが、実機の字体は少し横長なので印象が異なる。苦肉の策で多少字間を開けて貼る。
 コックピット横のパイロット名も同様大きすぎる。1/72のセットも持っているので、そちらを使おうとも考えたが、こちらは小さすぎ。両者の中間が正しい大きさ(横幅約12mm)。1/48版を使い、少し間をつめて貼ることにする。左側は不明。作品では貼ってない。
 主脚カバーの数字は写真がなく推定となるが、同部隊の他機は0を除いた2桁または1桁となっている。別売数字セットから高さ4mmのものを用いて「42」とする。デカールは「042」で、大きさも異なる。
 ヘルスエンジェルスのマークは下地が暗色である。周囲より少し暗いブルーで塗っておく。


数字とヘルスエンジェルスはデカール

 

デカール貼り

 シルバリングを抑えるため、あの手この手で防止策を講じる。まず、貼る面にはクリアーを吹いておく。デカールは事前に周囲の余白を完全にトリミングする。0や2などの数字は、生乾きのときにデザインナイフで内部の余白も切り取る。それでも生じたシルバリングは、マイクロのゾルを塗り、針などで上からつついて浸透させると、ある程度消すことができる。
 十分乾燥させ、仕上げにフラットクリアで艶を整える。垂直尾翼のBu.No.などは目立ちすぎるので、上から周囲の色を軽く吹いて抑えたいところ。


完成

 最後に黒色のテグスでアンテナ線を張る。製作開始から4ヶ月でようやく完成となる。
 この作品、春日部市のkey’stoneさんにおいてもらったので、実物を目にされた方もいらっしゃるのでは?

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