グラマン F7F タイガーキャット 図面

2015.1.24初出



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■ はじめに

 これまで模型製作の「ため」に図面を描いてきた。あくまで模型が主で図面はおまけというスタンス。とはいえ、図面は描きだすとそれ自体が面白くて結構ハマる。マニュアルや実機写真を読み解き、形状寸法を解明していくのは、知的探究心をくすぐる作業なのだ。だから、模型製作予定はしばらくないけど、図面だけ先に作ってしまおう、となるわけ。また、まともなキットや図面がない機体について、「本当はこんな形なのだ!」と示すには、図面が最適なツール。というわけで、ペガサスの翼に新たに図面のページを作ることにする。

 で、今回のF7F、グラマン猫姉妹F4F、F6F、F8Fと続けば次はコレをやらずばなるまい。


■ 使用上の注意とお願い 

  • 本サイトの図面は、商用、私用にかかわらず、どなたでも無償で自由に使って頂いて結構である。むしろ機体によっては、私の図面を使って新金型キットを開発してほしい!!と願うくらいである(F6FとかF8Fとかね)。

  • とはいえ、細心の注意を払って描いているものの、間違い等多々あるはずで、そこは自己責任でお願いする。

  • 作図にあたっては、公式マニュアルと実機写真という一次資料のみをベースとして、既存図面等は使わないことを原則としている。

  • 一般的な手順は、次のとおり。まず、マニュアル等にあるステーション・ナンバーを図上にプロットし、そこに実機写真のリベットラインやパネルラインを重ね合わせ、外形をトレースする。細かいリブやストリンガーは、実機クローズアップ写真を読み取るほか、マニュアルの構造図等も参照する。

  • こうした手順で何機かの図面を描いている中で分かったことがある。既存資料にある全長や胴体幅などという数値データは信用できないものが多数。また、既存資料の図面も正確度の低いものが多い。

  • ミスや新事実の発見等により適時図面を修正・差し替えすることがある。軽微なものはとくにお知らせしないので、使用にあたってはver番号を確認いただきたい。

  • 今後当図面を使用するモデラーに資するべく、図面の間違い発見、新資料のご提供など、お気づきの点はメール等にてぜひお知らせくださるようお願いする。


■ 側面図

 それでは、まずは側面図から。無料HPの容量節約のため、大サイズ図面をそのまま縮小してページに表示するので、これまでより見づらい場合があるがご容赦を。図面をクリックすると別画面で大サイズ図面が開く。

  • -3の側面形状は、条件のよい現存機写真のトレースなので、精度は良い。双発機ゆえエンジンの陰になる部分があり、そこは別角度の写真で補正。
  • 全長は、文献-1のマニュアルのステーションナンバーに従う。胴体sta.00は機首でなく仮想点である。-3の機首はsta33で全長は546.5"(13,880mm)、-3Nは563.25"(14,310mm)である。全幅は618"(15,700mm)。
  • 右舷は-3Nとして作図。ただし、-3Nの細部の詳細は不明で、-3の右舷側面図に-3Nの機首、後席窓及び判明した限りの変更点を描き加えたものとして見ていただきたい。
  • -3Nの機首形状は条件のよい写真がなく、精度は甘い。レドーム下側のラインはバリエーションあるかも。
  • ナセル側面図は、翼基準面方向から見たものとして作図。 パネルライン、リベットラインは、実機クローズアップ写真から概ね解明。
  • 操縦席後方上部胴体フレームのリベットラインは写真で読めず、部品の互換性などを考慮すると-3N同様に斜め(後傾)かと推測。
  • 主尾翼および胴体前半は沈頭リベット、胴体後半は凸リベット。一応図面では区別したつもり。ただし、リベットのピッチは実機を正確に再現したものではない。リベットのダブルorシングル、パネルラインのどちら側にあるかなどは、できるだけ実機を再現したつもり。
  • 一部の小アクセスパネルのファスナは写真等で読めないため図示していない。当然あるはずで、模型製作にあたっては推測でもいいからファスナを打つが吉。
  • 凡例はいつものとおり。赤線:左舷のみ、緑線:右舷のみ、水色線:位置・形状または存在自体の確度が低いもの、紫線:バリエーション。
  • 今回のF7Fでは、各図面をA3サイズとしているので、そのままA3でプリントすると1/48図面になる(ハズ)。




■ 上面図

  • 主翼、ナセルは、翼基準面に対し直角な方向から見たものとして作図。したがって、本図の翼幅は実機の全幅より上反角コサインの逆数だけ長いことに注意。逆に言うと、模型の翼を図面の上に重ねればぴったり合うことになる。なお、この作図法とした理由はナセルがあるためで、これまでのF4F、F6F、F8Fとは異なることに注意(これまでは翼基準面に投影した図を水平面に対し鉛直方向から見たものとして作図)。
  • こういう作図法のため、主翼と胴体の取り合いは辻褄が合わない。本図においては、主翼と胴体の接合線のみ、実機を真上から見たときに見える形、その隣のパネルラインから翼基準面投影として図示。
  • ナセル中心(=プロペラ軸)はマニュアルでは胴体中心から115インチとされるが、上反角のついた翼から直角にナセルがぶら下がるため、実際には115インチより外側に位置する。
  • 主翼、水平尾翼のパネルライン、リベットラインは、マニュアル図、実機写真から読み取ってまあこんなもんか。
  • エルロンおよび外側フラップは羽布張りで、内側フラップは金属外皮。



 図面掲載後に-3N平面図の機首が尖り過ぎとのご意見を頂く。毎度ご指摘感謝。実は公式マニュアルの図をそのまま何も考えずにトレースしたもので、確かに中に入るレーダーのサイズなどを考えると尖り過ぎな気がしなくもない。さりとて-3Nの上方からの写真がなく、正しいラインは不明。ということで、上面図から削除しVer.1.1とする。その他、細部を若干描き足す。また、側面図も-3Nの機首長さが不正確で修正しVer.1.1として差し替える。

 下面図、正面図、胴体断面図は次回更新で。


■ 上面図再修正 2/3追加

 -3Nの機首幅について、斜め方向からの実機写真から何とか割り出す。機首、ナセル、尾翼の写り方からカメラの方向と距離を計算し、そこから写真の歪みを逆算すれば、まあまあの精度でレドーム後端の幅が出せる。改めて機首平面図を描き加え、Ver.1.2として掲載する。機首先端のカーブなどはかなり推測が入っている。


■ 下面図 

 続いて下面図。

  • 主翼下面の小丸アクセスパネルは、とりあえず存在と概ねの位置が確認できたものを図示。他にもまだある可能性大(特にナセル〜胴体間)。
  • 胴体〜ナセル間の赤細線は内翼増槽/爆弾懸架位置を示す。これに伴いラック基部等のディティールがあるはずだが、詳細不明につき図示していない。情報求む。
  • 外翼ロケットランチャー取付位置は、翼リブとの関係性にいまいち確度がない。概略の位置は旧世傑の真下からの写真よりこんなもの。
  • 下面のディティールは不明点が多い。図面の精度もかなり甘い。情報求む。
  • 後部胴体のストリンガーの数、配置は、マニュアル図や、実機胴体内部写真からこれで間違いないはず。後部胴体下部の2本のストリンガーは、着艦フック基部に向かってV字状に収束している。作図ミスではないので念のため(側面図も参照されたい)。着艦フックにかかる衝撃力をこのV字のストリンガーで受け止めるのだね。
  • 着艦フック部の外板パネルと胴体下部との分割ラインはバリエーションあるかも。
  • -3Pの下面パネルは実機写真の読み取り。ただし、普段はどれも金属パネルで塞がれているようである。




■ 正面図、断面図

 機首はややオムスビ形断面。やはりグラマン猫族の共通項である前下方視界を重視したためかな? 一方、後部胴体はF6Fのようなオムスビ形断面ではなく、両肩が張っている(断面図#7付近)。おそらく、当初から後席設置を意識して、胴体幅にゆとりを持たせていたのでは。これが尾翼に近づくと(断面図#10付近)F6Fのような断面形に近づく。

  • 主翼上反角(翼基準線)6゚、主翼取付角3゚、ねじり下げなし、翼厚比付け根(胴体中心)15%、翼端(sta303)12%、水平尾翼取付角2°、垂直尾翼オフセット0゚。左記データは文献2による。
  • 主翼取付高さの数値データは不明。図面は上面胴体境との位置関係より作図。
  • 胴体幅は実機をほぼ真下から撮影した写真によるので、精度はまずまず。
  • 断面形状も前方、後方からの実機写真のパネルラインをトレースしており、それなりの精度はある。
  • とくに後部胴体前端(断面図#7)の断面形は、外された後部胴体を前から撮影した写真から精度は高い。
  • また、風防&キャノピの幅、断面形状は、平面図、側面図、前後の胴体断面形から慎重に算出しているので、まずまずの精度だと思う。
  • 一部の-3N(後期生産型?)には、キャノピ幅が広くなっているものがある。風防後端フレームの形状に注意。世傑にも両者の写真がある。見比べられたし。キャノピ後端の胴体と接する部分(断面図#5)の断面形状は同じ。
  • 後期生産型の主翼端は前下方が斜めにカットされている。文献-5に分かりやすいイラストあり。折りたたんだ時の建築限界のクリアのためか?
  • 左舷翼内機銃外側の小丸はガンカメラ。
  • ロケットランチャは、写真より翼下面に垂直が確認できる。同様、増槽パイロン(ナセルと胴体の間、下面図では赤線で位置を図示)も翼面垂直。ちなみに、F8Fでも増槽パイロン、ロケットランチャは翼面垂直。



 次回-1、-2N側面図、キットレビューなど掲載予定。


■ 下面図修正 2/18追加

 主翼下面の追加情報を頂く。毎度感謝。胴体とナセルの間にアクセスパネルを追加して図面を差し替える。上面図も修正というほどではないが、ファスナなど描き加え、これも差し替え。


■ -1/-2N側面図

 続いて、-1と-2Nの側面図。-3より小振りな垂直尾翼は、こちらの方が見た目のバランスが良く感じるけど、方向安定性が悪かったのだろうか。

  • -1、-2Nも細部は不明部分が多く、既存図面などを参考にする。-2Nの後席〜上部胴体は-3Nをそのままトレースしているだけ。-1の操縦席後方上部胴体のラインは斜めからの写真のトレースで確度やや甘し。
  • -1操縦席後方上部胴体には燃料タンクアクセスパネルなどがあるはずだが、詳細不明で図示していない。
  • -1、-2Nの両者を見比べると分かるが、-1では後部胴体(ここでは胴体前後分割位置より後方の胴体をいう)もフレーム3つ分くらい-2以降の型と形状が異なる。既存図面ではここを同じ形状としているものもあり、注意が必要。
  • 垂直尾翼、ラダーのリブはマニュアルにステーションナンバーあり。ラダーのタブ上端より下は-3以降の大型垂直尾翼と共通。
  • 胴体尾部の半球状スキッドは-1のみ。




■ モノ1/72キット評

 手元にモノ1/72キット(レベル印)があるのでチェック。その他のキットは不所持につきノーコメント、悪しからず。このキット、同社ベアキャットに似ていて、全体として実機の雰囲気を良く再現している。胴体側面形、主尾翼平面形はほぼ完璧。機首からコクピットにかけての胴体幅、断面形、キャノピ、主翼の断面形も良い。上下一体物の水平尾翼はやや薄いか。

 ちょいと気になるのはカウリングで、エンジンまで一体で成型されているのはさておき、カウル先端が尖り過ぎて印象が悪い。カウル前半のボリュームを増し、先端を丸めるよう修正したいところだ。なお、クイックブーストのカウル&エンジンは、基本形状がキットのままでペケ。エンジンは使える。

 2つめの残念ポイントは後部胴体の幅で、キットは細すぎ。断面形状の雰囲気自体はさほど悪くないので、接着面にシムをかませるなどして拡幅するとよいだろう。細かいところでは、ナセル後端がやや短い。これは完成すると、あまり気にならないかも。細部に関しては、この時代のキットなので言うだけ野暮。



カウルを除けば、この角度から見た雰囲気は上々。キャノピ形状もOK。

図面と重ねると、側面形はピッタリ。全長も正確。さすがモノ、落下タンクも一体成型。

キットは水平尾翼付近の胴体幅が狭い。図面と比べられたし。

右、キット。左、クイックブーストは、形が違うしサイズも合わない。QBのエンジンの出来はF8F製作記を参照のこと。


 ところで、ウチの環境だとブラウザにGoogle Chromeを使うと、縮小図面もきれいに表示される。




■ 参考文献

 文献-1の公式マニュアルと-2の図面は頂きもの(感謝)。本図面は当マニュアルに負うところ非常に大。胴体、ナセル、主尾翼及び各動翼リブのステーション・ナンバー、外板分割図、骨組み図があり、基本的な骨格は精度よく判明する。文献-2の図面は、おそらく実機を取材したであろうデータがあり、-1を補完するものとして重要。ただし、図面そのものの精度(形状とか)はなぜか甘い。

1 Handbook of Structural Repair for F7F-1N F7F-2N F7F-3 F7F-3N F7F-4N - -
2 Model Airplane News Plan Book vol.3 - -
3 新版 世界の傑作機 No.94 F7F & F8F 978-4-89319-194-6 文林堂
4 旧版 世界の傑作機 - 文林堂
5 In Action No.79 F7F Tigercat 0-89747-188-1 Squadron/Signal
6 Monografie Lotnicze 1 Grumman F7F Tigercat cz.1 - AJ-Press
7 Monografie Lotnicze 2 Grumman F7F Tigercat cz.2 - AJ-Press





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