F86Dセイバー(ハセガワ1/72)製作記

 

 

はじめに

 ハセガワの秀作セイバードッグを、銀塗装を中心に紹介する。製作当時、アルクラッドはまだ発売されてなく、Mrカラーのメタルカラーを使っている。キットの出来は「素晴らしい」の一言。組み立ては全くのストレートで、リベットだけ打っている。

下塗り

 Mrカラーの8番銀で通常の銀塗装を行う。塗膜を強固にするためにクリアーを加えて吹く。さらにコンパウンドで磨くのも有効である。逆につや消しにする手法もある。つやの状態に比べ、色調は仕上がりにほとんど影響しない。銀以外の塗装もこの段階までに済ませ、マスキングしておく。

磨き

 乾いて粉になった状態のメタルカラーをティッシュなどにつけて磨く。底に溜まったものをティッシュなどに取り、乾かしてもよい。シンナー分が残ると塗装表面を侵すので注意。
 パネルごとに、磨き具合に差をつけたり、メタルカラー各色を使い分けトーンの違いを表現することもできる。マスキングは紙を使う。わざとムラにして下地の銀とのコントラストを生かしてもよい。作品の場合、基本はクロームシルバーを使い、フラップ、エルロンは念入りに磨き込んである。主翼中央部は下地の銀塗装をそのまま残してある。

表面保護

 これでキンキラキンの状態になる。このままでは触ると銀粉がはがれ、マーキングなどに付着するので、表面のコートが必要である。問題はその材料。ラッカーのクリアでは表面が溶け、銀磨きの効果がゼロになる。エナメル系など試してみたが、溶剤系のものは全て同じ結果となる。

 最後に行きついたのが、アクリル水性カラーのクリアを水で薄く溶いて筆塗りするというものである。ただし、これでも輝きの低下は避けられない。その分を見込んで、おもちゃのようなキンキラ状態に磨いておく。これがクリアーがけで落ち着いた輝きとなる。
 水での希釈度は説明しづらいが、「数倍」とほとんど水に近い。この状態ではエアブラシは使えない。希釈度が高いほど輝きの低下は少ないが、塗布が難しくなる。この辺は試行錯誤が必要。

 1回塗ってはドライヤーで乾かし、何回か塗り重ねる。つや消し部分も含めモデル全体に塗らないと、マスキング境の段差が生じる。乾燥中は表面張力や重力で凹部や下面に溜るので筆で吸い取る。
 最後につや消しの部分にフラットクリアを吹く。水性クリアの皮膜は非常に弱いので、マスキングはテープの糊を極限まで落として行う。

 水性クリアは、乾燥後も表面が粘着質でほこりが付着しやすく、塗膜も弱いという欠点がある。これさえ無ければ最高の銀塗装法なのだが。コーティング・ポリマーを塗布すると、多少改善されるかも。

デカール、スミ入れ

 エアロマスター72−144からヌードアートを機首に飾った那覇駐留の25thFIS所属機を選択。実機のカラー写真が資料Cにあるが、製作後に入手したため、機首の赤部分の位置が少々異なる。実際はもう少し上まで塗られている。

 デカールはクリアの後に貼る。つやを整えるため、デカールの上からさらに水性クリアを塗る。スミ入れは、水溶きのパステル粉。

おわりに

 アルクラッドなど良質の銀塗料が発売され、自分でもこの手法は過去のものという気がするが、この金属感は捨てがたいものがある。

後日追記。コーティングは水性クリアよりフューチャーワックスの方がよい。詳細はF-104製作記を参照。

参考資料

@ 世界の傑作機(新版、旧版) 文林堂
A 航空ファンイラストレイテッド(各種) 文林堂
B PLANES,NAMES & DAMES vol.II 1946-1960 Squadron/Signal Publications
C PLANES,NAMES & DAMES vol.III 1955-1975 Squadron/Signal Publications
D 56th Fighter Group Squadron/Signal Publications
E SHARK'S TEETH Nose Art Motorbooks International

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