グラディエーター Mk.I エアフィックス 1/72 製作記

2014.8.22初出




完成画像






■ はじめに

 ちょいと、お気楽モデリングに何かやりたい気分。最近のエアフィックス攻勢で赤箱が増殖中。その中からあれこれ悩んで(これが楽しい)、当機を取り出す。ハリアーやタイガーモスも、そのうちやりたいな。さて、グラティエーター、翼や胴体の羽布モールドが素晴らしく、またパネルラインもシャープで、製作意欲をそそるよね。

 で、インアクションなど見ながら、どの塗装にするかしばし思案。No.1候補はFAAだけど、手持ちは、たまたま店頭にあったという理由のMk.I。わざわざ改造もどうかと却下。次なる候補は北アフリカの80スコードロン機。「単独飛行」のロアルド・ダール新任少尉が所属した部隊だ。でグラディエータに搭乗して不時着、炎上・・・。そんなストーリーに思いをはせつつ製作しよう。


■ 組み立て

 お気楽なので、ちゃっちゃと組み立てる。パーツの合わせは非常によい。胴体前上方パーツのみ、パーツを曲げて幅を合わせる。モールドを汚したくないので、接着は基本的に流し込み系を使う。段差や隙間は溶きパテ。これが、まったりお気楽モデリングの基本。4分割のエンジン・カウル(正しくはタウネンド・リングだっけ?)は、やや難儀←下手なだけかも?

 主輪の基部が細く、柔らかいプラ質とも相まって、後でへたりそう。1.0mm真鍮棒に置き換える。キットのタイヤは断面が角ばっている。現存機でこういうのもあるけど、当時の写真では普通の丸い断面。ペーパーで角を落とす。ヌルい凸フレームのキャノピパーツは、エアフィックス新金型シリーズ共通の短所。お気楽モデリングのつもりが、気づけばモールドを削り落とし・・・

 ワッツ2枚プロペラの形状がイマイチ。ブレードの基本的形状はスピットMk.I極初期のものと同じ。キットは根元のねじれが強い。根元に瞬間+プラ粉を盛って削る。完璧ではないが、何となくそれらしくなったところで良しとする。ハブにはピンバイスで穴をあけ、延ばしランナーを植える。ここだけは、別売りレジンパーツが欲しいな。修正の手間を避けるなら、3枚ペラのII型にするといいかも。もっとも、そのペラの出来は未確認。



サクサク組み立て、あっという間に十の字になる。

エンジンは、ややモールドが甘いがそのまま。正面の3本ステーのみ延ばしランナーで置き換える。

主脚の一部を真鍮線で置き換える。

キャノピの枠を削ってスジボリ。左はオリジナルの状態。(キットは2種類のキャノピがセットされる)

キットのプロペラ。正面からみて8の字になっている。

修正後。正面から見ると根本は太いのだ。


 次は塗装だ。


■ 塗装考証 9/1追加

 塗装&マーキングは、前述のとおり80スコードロン機で、その中からコードレターYK◎I、シリアルL8009を選ぶ。当機は文献-7のオン・ターゲットに4面塗装図があり、また左舷の写真が-2のエース本にある。迷彩スキームが悩ましく、写真では2色のコントラストがはっきりしており、RAF通常のダークグリーン/ダークアースには見えない。OT本では暗い方がダークグリーン、明るい方はライトアースあるいはミドルストーンの可能性としている。下面はOT本では白/黒とされる。

 上面の迷彩パターンがまた悩ましい。OT本の図がRAFの一般的なパターンらしくなく、「本当にあってるの?」という疑問が頭をよぎる。で、手持ち資料をあたると、この頃の上面迷彩パターンは機体によって様々。で、80スコードロン機で斜め後方からの写真に上面が写っていて、OTと同じパターン。そうか、これを見たんだね。ちなみに、胴体のパターンも機体(部隊)により様々で、おそらく銀塗装で完成した機体を現地部隊で迷彩塗装したのではないか。その際、RAFからパターンが示されず(あるいは無視して)、結果として様々なパターンが現れたと。

 その他、細部もよく分からない。プロペラの色が不明。キットのインストでは黒。資料本のイラスト等ではこげ茶。あと、車輪の内側も不明。迷彩色? コクピット内部は、インアクションの記述、現存機からして例のグレイグリーン(FS34226相当)で間違いない。シートは銀か? また、コクピット以外の機体内部も、スピットの例からすると銀かも?


■ 塗装作業

 ということで、基本はOT本そのままで塗る。上翼の一部をちょっとだけ変えているのは、写真が何となくそう見えるからで、それ以上の根拠はない。塗り終わって写真と比べると、細部が違う。ま、忘れることにしよう。以下画像で。



上翼はまだ接着しない。ストラットは下翼に接着しておく。この状態でサフェーサ。

キャノピは内外をマスキングして、両面テープで仮止め。胴体上面接着時に消えたファスナのモールドは、サフを点盛りして再現。

下面の白(黒を5%加える)、自作ナイト(スピットI参照)の順に塗る。上翼下面は銀。この後、上面にミドルストーンのビン生を塗る。

塗った感じがどうもしっくりこない。で、ライトアースを上塗り。これは、ハリケンの退色したダークアースを使用。

迷彩パターンはMr.ペタリ君。

ダークグリーンは#330ビン生。一通り塗装後に、その上からライトアースを混ぜて明るく調色したものを軽く吹く。


 さらに、動翼の境や翼前縁などに暗色のグラデーション。迷彩が終了した段階で、塗膜保護にフラットクリアを厚めに吹く。タウネンドリングの焼けた金属部は、自作焼鉄色に金を少々。なんか実物と違うなあ。排気管の片方が亜空間の彼方に。3万光年旅して次の引っ越しの時に戻ってくるんだろうな。


■ マーキング




マスキングしてラウンデルを塗っていく。主翼ラウンデルの青/赤と、胴体ラウンデルの黄と白までは塗装。

胴体ラウンデルの青丸、赤丸、フィンフラッシュはエアロマスターデカールの汎用ラウンデルのシート。

コードレターはカッティング・マシン。手抜きでOT本をそのままトレース。貼ると羽布モールドの凸凹でマスキング・シートが浮き上がる。

そこで、隙間から塗料がにじみ出さぬよう、ミディアム・シーグレイを濃いめに溶いて砂吹き。


 レターは、きちんと塗るなら、硬めのマスキング・シートをマシンで切り抜き、それを定規代わりにマスキング・テープを切り出す、というのがベストかな。でも、お気楽モデリングなので、そのままいっちゃう。シリアルがまだだが、一旦この段階でマーキング部分を中心にフラットクリアを厚めに吹き、翌日、塗装やデカールの段差を#1200ペーパーで均す。


■ ウェザリング 9/8追加

 上翼を取り付ける前にウェザリングをしておく。ファレホの黒を水で薄く溶いてスミ入れ。チッピングはミディアム・シーグレイ。ウェザマスの黒を軽く指に付けてリブなどの凸部に擦り付ける。



面相筆でチョンチョンとチッピング。銀を使わないのがミソ。

汚い手で触るだけでリブのウェザリングが出来上がり。



■ 上翼取り付け&張線

 その前に、上翼下面の張線を仕込む。やり方は下翼貫通方式。すなわち上翼下面に接着したナイロン糸を下翼(&胴体)に貫通した穴に通して接着。糸を切って下面表面を整形、タッチアップという算段。上翼下面の穴は貫通させない(アタリマエ)。なお、ナイロン糸は頂き物で(毎度感謝)、販売店とか不明。気になる方は手芸用品店などをあたってみては?

 上翼に糸を全部つけたら、棟上げ。溶剤系で上翼をストラットに接着する。次に糸を下翼の穴に通して固定。胴体に取り付く糸のみテンションがかけられず、一部弛んでしまう。残念。



上翼。糸の固定は、先を斜めに切った伸ばしランナーに瞬間をつけて突っ込む。固着後、余分なランナーをニッパーで切る。

下翼。穴に通し軽くテンションかけながら裏側から接着。これも伸ばしランナー突っ込み方式。一応、お約束で左右交互に張っていく。

ちょいピンボケだけど、張り上がり状態。ヒートン結び付け方式よりは、遥かに楽ちん。

下面の接着跡を整形したら、筆でタッチアップ。手抜きで完全に跡が消えてないけど、その気になれば、完全に消すことも可能(なはず)。


 この方式、下面が汚くなるという短所はあるが、容易で手間もかからず、お気楽モデリングには向いているといえる。さて、張線が出来上がってみると、使用したナイロン糸の細さもあって、繊細な味わい。実機のフライングワイヤ、ランディングワイヤ(正面から見て翼間にX字に張られる)は線というよりは板で、その存在感を出すのであれば、金属線の方がいいかも。


■ 細部

 亜空間旅行中の排気管、戻ってくる気配がないので自作する。1.2mm真鍮線(パイプは曲げづらい)を適当に曲げ、カウルに瞬間でイモ付け。え?、排気口の開口? 無理でしょ。主翼機銃は0.6mm真鍮パイプ。実物は先端がラッパ状だっけ? 尾脚はキットパーツ。軸のみ真鍮線に置き換え。



排気管、機銃、タイヤを取り付け。タイヤは前から見て、逆「ハ」の字に。

キャノピ(未接着)とペラをつけてみる。気分は完成。



■ 気付いたことあれこれ

 アンテナ線が悩ましい。張り方にはバリエーションがあるようで、当初は両主翼から尾翼にYの字形。後に主翼やや右寄りのアンテナ柱から尾翼に(1本?)。尾翼側も2種類で、初めは垂直安定板上端の柱で、後にラダー上端の柱となる。これらは概ねそれぞれMk.IとMk.IIに対応しているが、一部に例外もあるようで、要は時期の問題か。既存資料の図面や塗装図もどこまで正しいんだか・・・ その他、ピトー管も初期は先が2本、後に1本。風防も作品と同じタイプが多数だが、遅くなって側面窓に横枠が入るタイプが出てくる。

 下面白黒がはっきり分かる写真はほとんどなく、唯一クリアに捉えた写真では、水平尾翼下面は銀塗装と思われる明色。作品はオンターゲット本を信じて白黒で塗ってるけど、どうかな? いずれにせよ、現地塗装では機体(あるいは部隊)ごとのバラツキはあって当然だけど。


■ 最終作業 9/27追加

 シリアルは、いつも通り作り置きの自作インレタ。ばらばらな文字を裏返したマスキングテープの上に裏返して並べてから、モデルに転写する(意味不明な方は1/48スピットXIVe製作記を見てね)。集中力が足りなくて、揃ってないぞ。
 続いて、ウェザリングの仕上げ。80スコードロンは北アフリカの砂漠で活動した。しかし、作品はどうも砂埃感に乏しい。タミヤアクリルのサンド系をアクリル用シンナーで薄く希釈して全体に吹き付ける。

 細部工作。乗降ステップは真鍮線半田工作。実物は三つ又だが、普通のコの字形で手抜き。航法灯はクリアランナー。アンテナ線は、80スコードロンの場合Y字形のようだ。張線と同じナイロン糸を使用。でも、両者が同じ太さというのは、ちょいと違和感あるな。まあいいや。
 キャノピを接着し、これで完成!と思ったら、ピトー管を忘れている。これも真鍮半田工作。ちと太かったか。張線関係でやり残し(水平尾翼下側〜胴体、ラダー操作索)があるけど、もう忘れる。



シリアルはインレタ。これがあるから、好きなマーキングを選べ、重宝している。

砂埃感をプラス。キャノピはまだセロテープのマスキングを残している。ステップのアップはちとキツイか。



■ 完成

 以上で完成。お気楽モデリングを楽しんだ。出来上がって眺めると、外形イメージはばっちり。正にグラディエータそのもの。細かく見ればあるかも知れないけど、あえてアラ探しはしない。羽布張りモールドも感じ良い。とてもいいキットで、作っていても楽しい。ぜひ一作お奨めしたい。

















■ グラディエーター戦歴 10/8追加

 もう少しだけ引っ張る。本機の戦歴のうち地中海・中東のものをインアクション等から抄訳して紹介する。ギリシャでの80スコードロンのハリケーンの戦いぶりは、ロアルド・ダールの「単独飛行」に詳しく記述されているね。


 ハリケーンとスピットファイアの就役により、グラディエーターは海外部隊に回された。地中海方面では、1938年3月の33スコードロンを皮切りに、5月の80スコードロン、さらに94および112スコードロンと、1939年5月までに4つの飛行隊がエジプトに置かれた。
 1940年6月にイタリアの宣戦により各飛行隊は戦闘に巻き込まれた。1940年10月には、イタリア軍がギリシャに侵攻し、80スコードロンの16機と112スコードロンの12機のMk.IIがギリシャ支援に向けられた。33と80スコードロンにはハリケーンが割り当てられ、残るグラディエーターは112スコードロンに統合された。

 ドイツの侵攻により、112スコードロンは1941年3月にエジプトに戻されハリケーンを受領、グラディエーターはギリシャ空軍に引き渡されたが、4月にドイツ軍により全機地上で破壊された。1941年4月までに、地中海・中東にはRAFグラディエーター部隊は無くなった。ギリシャの英軍はクレタに撤退し、そこで戦ったが、ドイツ軍侵攻により、さらにエジプトに撤退した。


■ 80スコードロン概要

 1937年3月8日、ガーントレット装備の戦闘機隊として設立。2か月後にグラディエーターに転換(当初Mk.I、のちにII)。1938年4月の終わりにエジプトへ移動。1940年6月にリビアに移動。さらに11月にはギリシャへ。1941年2月からハリケーン(当初I、1942年1月からII)に転換。4月にギリシャから撤退した後はシリア、パレスチナ、キプロスに移る。

 10月に北アフリカ砂漠に戻り、エルアラメイン戦までは当地でのパトロール、ドイツ軍撤退後は英8軍の長い補給路の防衛に当たった。43年4月にスピットファイアに転換(当初V、1943年7月からIX)。1944年1月にイタリアに移動。4月に英本国に戻り、フランス周辺で活動した。8月にテンペストVに転換。9月には大陸に進出。終戦まで前線を越えてドイツ領内での武力偵察を任務とした。終戦後も占領軍としてドイツに留まり、1949年8月、香港へ移動。1951年12月、ホーネットに転換。1955年5月解隊。

 80スコードロンの高名なエースといえば、パット・パトル中尉(階級はグラディエーター搭乗当時:Flying Officer St.J.'Pat' Pattle, Mk.I YK*O s/n L8011)で、グラディエーターで15.5機撃墜を記録し、1941年4月20日に戦死するまでに、少なくとも50機以上を撃墜したとされる。この日の状況も前述の小説に描かれている。


■ 参考文献

 参考文献の数は、実績、人気からしてこんなもんか。和書のモノグラフがないのが淋しいところ。当機、本国ではRAFとFAA、それ以外にも13ヵ国で使われたので、探すともっとあるかも。

1 Gloster Gladiator In Action Aircraft No.187 0-89747-450-3 Squadron/Signal Publications
2 Aircraft Of The Aces 44 Gloster Gladiator Aces 1-84176-289-X Osprey
3 Aircraft Of The Aces 23 Finnish Aces of World War 2 1-85532-783-X Osprey
4 Warpaint Series No.37 Gloster Gladiator - Warpaint Books
5 Yellow Series 6104 Gloster Gladiator 83-91632709 Mushroom
6 Monografie Lotnicze 24 Gloster Gladiator 83-86208-34-1 AJ-Press
7 On Target Special No.2 Britain Alone 1-904643-06-X The Aviation Workshop Publication
8 Fleet Air Arm British Carrier Aviation, 1939-1945 0-89747-432-5 Squadron/Signal Publications
9 Finnish Air Force 1939-1945 0-89747-387-6 Squadron/Signal Publications
10 Britain's Fleet Air Arm In World War II 0-7643-2131-5 Schiffer Military Histor




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