イリューシン Il-2 シュトルモヴィク タミヤ1/72 製作記
2016.3.15初出
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ところで、世傑ではシュ「ツ」ルモヴィクと表記してる。たしかに母音は「u」だけど日本語のツってtsの子音だし。どっちが正しいんだろう? と思ってロシア語発音サイトなど見ると、おそらくシュトゥルモヴィクかシュトゥルモヴィークが正解に近いのでは。ということで、本項では一般的なシュトルモヴィクでいく。なお、「ル」は巻き舌のrだそうだから、そのつもりで発音すると気分も盛り上がるぞ。
では製作再開。残るスジボリをさらう。キットのは繊細すぎて塗装で埋まる恐れ大。直線、緩曲線はエッチングソー、小アクセスパネルなどはケガキ針。面倒臭いから基本全部フリーハンドで、ケガキ針は左手親指を針先にあてがい、両手で動かすつもりで彫る。1回目はなぞるだけ。2回目以降で少しずつ力を入れていくと脱線が少ない。 キットの窓枠は凸表現。ここは数少ない不満点で、エッジが甘いこともありセロテープでのマスキングが難しい。私はハセガワの凹スジスタイルが好きだな。そっちの方がシャープに仕上がる。甘い窓枠の対処法として、ロボでマスクシートを切ることにする。各窓の寸法を定規で図り、inkscapeでデータを作る。数が多いから手切りより早くて簡単。パーツに貼ってみると、サイズが違う箇所がちらほら。モールドが甘いからうまく測れないのだよ(←言い訳かい)。ここでデータを補正して切りなおすと 完璧だが、面倒でスルー。 |
![]() シュトちゃんお目覚め。スジボリして脱線や段差を溶きパテで埋める。ラダーマスバランスはLaGGの余りに交換。 |
![]() このところロボがフル稼働。データ欲しい方はメールされたし。補正は自分でしてね。 |
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![]() 燃料タンクは見えるところを筆塗り。帯はマスキングテープを銀に塗って貼る。←これ真剣モードでは絶対しないけど。ハーネスは鉛板。 |
![]() 計器盤にはデカール。胴体を組んだ後で貼りづらいけど貼れないことはない。ニスをトリミングしてないけど結構見られるね。 |
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![]() 風防と胴体の合わせがやや甘く、塗装前に接着し隙間を埋める。その後にサフ吹き。補修→サフ再塗装のプロセスはいつもと同じ。 |
![]() フリーハンドで塗装。下面色との塗り分けのみMrペタリを使用。ただし吹きこぼし防止が主で、Mrペタリのすぐ脇をフリーハンドで塗るイメージ。 |
塗ってみた感じが実機写真や人の作品のイメージと随分離れている。サイトの記述をよく読むと、ブラックでなくダークグレイじゃんか。ブラウンもちょっと沈みすぎかな(画像は実物より鮮やか)。ということで、それぞれ#333エクストラダークシーグレイのビン生と自作ライトアースで上から塗り重ねる。 |
![]() 色調修正。折角?色違いの下地があるのだから、部分的に前の色を残す感じで。 |
![]() 下面はちょいとクドめのシャドウ吹き。 |
次はマーキング。
さて、シュトルモヴィクの型式名は、正式には単座も複座も直線翼も後退翼も全てIl-2とのこと。ただしそれでは混乱するので、後世になって複座の直線翼にIl-2M、複座の後退翼にIl-2M3(Il-2タイプ3またはIl-2 1944モデルとも)の通称がついた。タミヤキットはIl-2M3ということになる。 M3の製造はZ.1(Zavod 1)、Z.18、Z.30の3工場で行われ、各工場ごとに機体細部と迷彩パターンの特徴がある。主翼は木製と金属製があり、Z.1とZ.30では当初木製で途中から金属、Z.18は全て金属製。また、翼機銃フェアリング、尾脚取付部に違いがある。重箱の隅をつつけば、キットは金属翼、機銃フェアリングは各工場に対応してるが、尾部はZ.18のみ。指定マーキングでZ.18製は1つしかなく、他工場の尾部パーツも欲しかったところだ。ちなみに、機番07がZ.18製。ただしインストの迷彩パターンは違うようだし、左舷の矢印&スローガンなしが正のような・・・。機番1と12はZ.1である。まあ、気にせずおおらかに作るが吉ではある。 Il-2の3色迷彩スキームは2種類のテンプレートがあり、Z.1がテンプレート1、Z.18が同2、Z.30が両方とのこと。ただしZ.18では個体ごとにバターンのブレ幅が大きくまた境界のぼけ足が大きい。作品はこのうちZ.18製で、第144Gv.ShAP(親衛襲撃航空団)所属の機番6である。操縦者は不詳。左舷全体の写真がある。写真の印象で、件のサイトの塗装図と尾翼の塗り分けをちょっと変える。当工場は左舷ラダー全体がライトブラウン、左舷垂直安定板全体がグリーンというパターンが多く、作品の塗り分けは少ない。 ついでに、直線翼Il-2Mについて。銃手キャノピ後端が直に切り落とされた形(最後部窓は四角)であればこの型である。ただし、M3と同じ(上部がひさし状になって最後部窓は三角)タイプもあるので注意。この場合は主翼を見ないと判別できない。以上出典は先程来参照のsovietwarplanes.com。
機番、矢印などのマーキングはスピと一緒にインレタ。同じ工場製でも、赤星のサイズや位置が違ったり、少々傾いていたりとバリエーションがある。迷彩パターンもいろいろだし、ソ連機っておおらかに塗られているね。機首の照準用(?)細線は、インレタを作るものの、線が太いわ貼り付けでミスるわで、キットデカールに変更。下地をコンパウンドで磨き、貼り付け後に余分なニスを切り落とす。 |
![]() 矢印、6、=のインレタを貼り付ける。白帯は塗装。 |
![]() 貼り付け作業中にうっかりテープがデカールにはりつき、一部がはがれる。ちょうど気泡が生じた箇所で、モデル面に密着してなかったんだね。 |
![]() 別のデカールを切り取って貼る。隙間は塗装する。 |
![]() 機首の細線はデカール。ニスを切り取り、フラットクリアを塗装、研磨済み。 |
デカールの赤星、よく見ると網点で、上から面相筆で赤(P-40Lで使用)を塗り重ねる。スピナ先端も同色。このあとフラットクリアを全体に吹き、乾燥後にデカールの段差、タッチアップの筆ムラ、表面の柚子肌をラプロスで磨き落とす。 |
![]() 塗装&マーキング、一応終了。窓のマスクも剥がす。サイズの微妙な誤差は、ぬるいモールドのおかげで(?)目立たない。 |
![]() 下面。 |
もうちょい汚しを追加したいところ。
アンテナ柱は0.7×0.4mm帯金を使い、キャノピパーツの裏側にプラ小片を接着して基部補強。アンテナ線は極細テグス。後方機銃の銃身を折ってしまい0.5mm真鍮線で自作。上下間違えて、キャノピ接着後に改修したのは内緒だ。主翼機銃も0.5mm真鍮線。翼端灯はクリアランナー削り出し。 |
![]() WEBで拾った画像から、Z.1製尾脚フェアリング(たぶんオリジナル)。キットの指定塗装A、Cを作る人は参考にされたし。 |
![]() 同じ機体の主脚部。カバーはピアノヒンジ。ということはヒンジ部は一直線だ。 |
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![]() チッピングを少々。キャノピも接着。 |
![]() つうことで、完成。自作/修正などの面倒な手間一切なしで、ちゃっちゃと出来上がる。やっぱタミヤ印は楽でええなあ。ラグとは大違いだ。 |
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凸リベットの艶あり塗装について。私の場合塗装面が梨肌になり、最終的にラプロス等で磨いて仕上げるため、凸リベットや凸モールドは実に具合が悪いが、その方は凸リベットでも平滑な面に仕上がっており、かねてから不思議だった。秘密を尋ねるとクレオスのリターダーにシンナーを3割ほど混ぜたもので希釈して吹くとのこと。リターダーの方がシンナーより多いがこれでも乾くそう。薄く何回も吹くのではなく、濃く厚めに回数少なく(決まれば1回とか)。ゆっくり乾燥する間に表面が平滑になるとのこと。 これは別の方(車が専門)の話では、リターダー系(レべリングシンナー含む)の使用で、デカールやプラ(とくに透明プラ)の劣化、塗膜のヒケなど長期の経年変化で問題が発生した経験があり、色塗り、クリアコートともリターダー、レべリングシンナーは使わないとのこと。 同じ方から車のモール等のメッキ表現について。これは、メッキシルバーネオがいいとのこと。上からラッカー系のクリアによるコートも可能で、まず砂吹きしてから本番クリアをかける。クリアで曇るのは下地塗装までシンナーが及んで銀粒子が浮くためで、むしろ下地なしでメッキシルバーを吹いた方が、クリアへの耐性は強い。 相反する部分もあるが、要は何を目指すかにより手法が変わると捉えるべきだろう。ちなみに私の場合は、薄い塗料を低圧で吹く。塗料1に対しシンナーが3〜5くらいかなあ。この薄さで直にプラに塗ると表面張力でエッジに塗料が乗らない。このためサフによる下地は必須。もちろんサフも上記程度に希釈する。逆説的だがサフを吹いた方が、プラに直に塗料を吹くより結果的に薄い塗膜になる。嘘だと思うならやってみそ。 吹くたびドライヤーで強制乾燥させ(←いらちなもので)何回か塗り重ねる。重ねるごとに薄く希釈する。十分な発色が得られたら表面を磨く。場合により極薄のフラットクリア(単色塗装なら極薄の塗料)をかけて磨き目を消す。リターダーは使わず普通のシンナーか最近発売された速乾シンナー。これはモデラーズのピュアシンナーに似ていて、プラを若干溶かすので食いつきがよい。エアブラシでのグラデーションやウェザリングは磨いた後の作業。
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1 | 世界の傑作機 No.129 Il-2 シュツルモヴィク | 978-4-89319-169-4 | 文林堂 |
2 | Il-2 Stormovik in action aircraft no.155 | 0-89747-341-8 | Squadron/Signal Publications |
3 | Combat Aircraft 71 Il-2 Shturmovik Guards Units of World War 2 | 978-1-84603-296-7 | Osprey Pubsishing |
4 | Monografie Lotnicze 22 Il-2 Il-10 | 83-86208-33-3 | AJ press |
5 | Red Stars Soviet Air Force WWII | 951-95821-4-2 | Ar-Kustannus Oy |
6 | Red Stars In The Sky 2 Soviet Air Force In World War Two | 951-9035-59-1 | Tietoteos |
7 | 4+ No.22 Ilyushin Il-2 Shturmovik | 80-87045-00-9 | 4+ Publication |
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