隼T型(1/48ハセガワ)製作記
キット評 アウトラインは、スケビで指摘のように側面形において胴体中央部が垂れ下がって太い。カウリング下面は機軸とほぼ平行となるのが正しく、翼下面も湾曲が強すぎる。組み立てはこの修正がポイントとなる。スケビには胴体上面ラインも違うとあるが、実機写真と照合してみると基本的には正しい。 参考資料 |
@ | 世界の傑作機(新版) | 文林堂 |
A | 世界の傑作機(旧版) | 文林堂 |
B | モデルアート臨時増刊 No.395 隼の塗装とマーキング | モデルアート社 |
C | モデルアート臨時増刊 No.329 日本陸軍機の塗装とマーキング戦闘機編 | モデルアート社 |
D | エアロディティール29 中島一式戦闘機「隼」 | 大日本絵画 |
コックピット 素晴らしい出来のコックピットである。ほんの少しだけ手を入れる。開口部の両サイド、シート背板を薄く削る。シート座面は側面と前方部をプラ板で作り換え、後部に穴を開ける。シートベルトは鉛板で、ベルトの穴を打ち、バックルはファインモールドのエッチング。肩越しのベルトは、取り付け位置が不明だし、締めていては望遠鏡式の照準器が覗けないだろうと考え、取り付けない。フットペダルは細く削るが完成後はよく見えない。 塗色はよく分からないのでインストどおり中島系機体内部色(注)とし、97艦攻のときに作ったRLMグレイのような色で塗る。シート位置が低いのでプラ板でかさ上げ。計器板も少々低いが、床板に強固に接着した後に気付いたのでそのまま。胴体機銃のガス抜き穴を開け、コックピット開口部の縁に軽め穴を開ける。 (注)製作時には出版されてなかったが、コクピットの塗装については「一式戦闘機「隼」 [歴史群像]太平洋戦史シリーズ52 学研」によれば、昭和15年にそれまでの灰藍色から青竹色になり、昭和18年中頃から陸軍機の機体内部塗装が変わり、胴体内部などは無塗装、コクピットは灰緑色になったらしい、とのこと。 |
計器板はドライブラシでモールドを浮き上がらせる |
中島系機体内部色で塗装 |
機首アウトラインの修正 胴体上面ラインは、厳密には防火壁の前後で折れ曲がっているので、機銃の出っ張り部に注意して胴体上部を削る。カウリング下面は、空気ダクトとの境目をくさび形(後端で0.5mmほど。前方5mm程は残す。)にカットし、カウリング側面を正しい形に指でしごいて再接着する。ダクトは裏打ちして削る。カウリング平面形は正しいので、修正の際に変わらないように注意する。
主翼下面アウトラインの修正 翼下面パーツは素晴らしいモールドなので、損なわないようにするため工夫が必要だ。そこで機体中心線に沿って前後に切り込みを入れ、手でしごいて湾曲を直す。切り込みは主桁のモールドの直前までにすれば、モールドをつぶさずに済む。裏側の補強リブは妨げになるので取る。湾曲を直すと切り込みが開いてくるから、プラ板などをはさんで埋める。胴体と仮合わせしてラインをチェックしながら進める。 主翼の取り付け カウリングが細くなった分だけ、翼の取り付け位置を上げる。脚収用部とフィレットが干渉するので削る。フラップ収納状態とするので、フラップ内部の部分を切り取りフラップパーツを接着する。 何度も仮組みしてアウトラインを確認したら翼上下を接着する。後縁の接着面は十分すりあわせ、まず前縁のみ接着する。曲げた影響で下面パーツが翼端下がりに変形しているので、上面パーツで矯正しながらとなる。その後、ねじり下げに注意して後縁を接着する。左右の車輪収用部の上に1.2mmプラ板を渡し、上反角を保持する補強部材とする。 後縁を薄く削り、胴体と接着する。結果的に翼の取り付け位置は前縁で1mm、後縁で0.5mm程度上になり、この段差をフィレット部のパテ盛りで修正する。余計なところにパテがつかないようマスキングしてポリパテを盛り、乾燥後、彫刻刀、金ヤスリ、ペーパーと仕上げていく。ポリパテにはどうしても気泡が生じるので、溶きパテなどで表面を整えるが、この作業が面倒。 |
修正したアウトライン。 |
アウトライン修正の総括 この一連の作業を総括すると、カウリング下面と翼下面のラインを「切って曲げる」ことで修正し、さらに翼の取り付け位置を上げ、そのつじつまをフィレットで合わせるというものである。 後から思うと翼下面は中心線で左右に切り離し、納得いくまで曲がりを直して再接着してもよかった。また、キットのフィレットを活かすなら、胴体前半部を胴体の真ん中で上下に切り離す方法もある。 表面仕上げ フィレットのパテの気泡がなかなか消えない。サフェーサー&ペーパーを繰り返す。だからパテは嫌い。スジ彫りは、いつものとおりエッチングノコでさらう。各部の浮き出しモールドは平滑にしてスジ彫りに替える。 |
動翼はサフェーサーでリブを再現 |
フィレットの峰をペーパーで丸める |
小物など 脚カバーは0.2mmプラバンから自作。内側には細切りプラバンを貼ってリブとする。位置は適当で雰囲気重視。出来てみると若干大きかったか。キットの脚カバーは形状に誤りがあり、下部がバチ型に広がっているが、実際は湾曲によってそう見えるだけである。 プロペラはスピナーの整形の都合から、一旦切り離して再接着。排気管はピンバイスやノミ等で穴を深くする。アンテナ柱は真鍮棒を削る。カウリングを修正したせいか、エンジンとカウリングの中心がずれるので、十分に調整する。 |
脚カバーのリンクを真鍮線で追加 |
キャノピー内部のフレームは伸ばしランナー 修正したフィレットはポリパテ |
風防取り付け 後部風防内側の細い枠を伸ばしランナーで作る。色は機体内部色とする。接着は白フタで表面から見えない部分で点付けする。風防は先に前後を接着すると段差ができない。 塗装考証 マーキングは第11戦隊で、資料Bに実機写真がある。尾翼に白の電光マーク、胴体に2本の白帯、アンチグレアの紺が確認できる。胴体日の丸は縁ありで、主翼にも細い縁がある。前方からの写真はないが、時期的に身方識別帯つきだろう。スピナーとプロペラは資料から赤褐色、下面も灰緑色(注)とする。 (注)前述学研本を参照すると、下面は無塗装の可能性あり。 細部は確証がないが、脚柱、内側ホイール、尾脚が銀、主脚収容部、脚カバー内側、外側ホイールは下面色、アンテナ柱は上面色とする。 (注)後日追記。細部塗装考証は間違いだらけ。正解は1/72隼製作記を参照されたい。 緑黒色は97艦攻で自作したもの。15番暗緑色と71番ミッドナイトブルーを2〜3:1程度に混ぜ、若干の白を加える。上面のみを退色させ、側面はそのままとしてメリハリをつける。 塗装 デカール貼りの下手な私は、デカールを使用せずマーキングを含めすべて塗装する。いつものようにサフェーサーで下地づくり。本塗装の手順は、銀(布張り部はマスキング)→下面灰色→マスクして上面緑→上下境ぼかし→マスクして紺→マーキング用のマスク→白→黄橙→赤。 ぼかしは、きっちり塗り分けてから、境を2色を混ぜた色で面相筆線書きした上で、エアブラシをフリーハンドで吹く。 |
リベットを面相筆で描く フィレットなどに銀はがしを施す |
尾燈はクリアーランナーを削る タブの注意書きは遊び心 |
ウェザリング 面相筆でパネルの縁取りやリベットを描き込む。そのほか、銀はがし、パステルと、いつものとおり。下面のみパネルラインに沿って暗色を吹いている。下面にリベットを描く際は、下面色より少し暗く調色するが、グレイの塗料は乾くと濃くなるから、色調に注意する。ガンダムウェザリンクカラーを購入したので使ってみる。使い勝手は良いのだが、色調が不満。グレーが欲しい。 |
下面のモールドは素晴らしい 翼の中央は峰が立っている |
リベットの色調が濃くなりがちである |
最後のDアップ エルロンの操作ロッドカバーを削り取ったままだったので、0.3mmプラバンで後付する。できるだけ塗装面を汚さないよう接着し、慎重に色合わせした緑黒色をタッチアップする。 航法燈をクリアー化。これはクリアーランナーで水滴型断面の棒を作り、ペーパーで丸く仕上げる。これをデザインナイフで切り取り、所定の位置に接着後、緑フタでひと撫ですると表面が透明になる。さらにクリアーを塗ればぴかぴかでコンパウンドは不要である。同じ断面の棒から作ることで大きさが揃う。 ブレーキパイプを糸はんだで追加。脚柱と脚カバーのリンク、脚出視示棒を真鍮線で追加。最後にフラットクリアを吹いて全体の艶を調整し、プロペラの黄色帯と細かい注意書きを、自作インレタから貼りつける。 完成 完成した機体をあちこちから眺める。環状オイルクーラーの銅色がよいアクセント。胴体下面は、欲を言えばあと1mm程度削りたいところだが、他とのバランスがありこの辺が限界。 |