マーダーIII M型(タミヤ1/48)製作記

2011.9.24初出




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■ はじめに 

 III号戦車が楽しめたので、もうちょい1/48戦車シリーズを続けよう。前回は砂漠で、今度は冬季迷彩をやってみたいところ。で、アイテム選択に頭を悩ます。本命は昔から好きなIV号戦車だが、ツィメリット・コーティングがハードル高い。H前期型を1/48でキット化してれば、砲身切り詰めG型改造の冬季迷彩で決まりなんだけど。パンサーも同様にコーティングがネック。タイガーはちょっとデカいかな。と、消去法でマーダーが残る。これも2種あるが、ナースホルン(←実はこれも好き)のミニみたいなM型にしよう。


■ 組み立て

 前作同様にほとんどストレート組み。前回の反省を踏まえ、起動輪、誘導輪前後の履帯を曲げ、自然なたるみにする(下画像赤矢印)。・・ちと曲げすぎか。ま、いいや。履帯の接地面となる長いパーツの前後に折れ曲がった2枚一体の履帯を取り付けるのだが、転輪等に組み合わせるのと同じパーツなので折れ曲がり角度が強い。接着前に角度を調整する(緑丸)。作品では右は調整せず。左は気づいて調整してある。その他は、合わせも完璧で、全くストレスなく工作を楽しめる。ごく一部の隙間にラッカーパテを擦り込む程度。



塗装しやすいように、足回りを取り外し可とする。主砲は左右の装甲板より先に取り付ける設計だが、ピンを短く切って後はめする。

履帯の曲がり具合を調整。赤矢印はたるませる。緑丸は伸ばす(右は未修正)。これらは起動輪側も同様に調整。



■ 追加工作&下塗り

 排気管の穴は、キットではデカール表現となっているが、あんまりなので、穴あきエッチング板を切り出して取り付ける。車体と一体化している取っ手を延ばしランナーに交換。フェンダー上の箱には、ピンバイスでちまちま穴開け。ここは、別売りエッチング・パーツが欲しいところ。その他、本来薄くあるべき箇所や、抜きの都合で一体化している箇所を削り込む。戦闘室(というのかな?)内部は、やりだすとキリがないので、一切いじらず。



排気管の穴あき板はABER社の「S17 Drilled Plate」を使用。ワンポイントの使用で全体が締まる。

トラベリング・クランプの肉抜き(赤)、箱の穴開け(青)、延ばしランナーの手すり(緑)、ジャッキハンドルの立体表現(黄)などなど。

組み立て終了、塗装直前の状態。


装甲板の透け防止に自作焼鉄色(黒+赤褐色+銀)を吹く。ここまで徹底的にしなくてもいいんだけど。

戦闘室上部のバーは0.7mm真鍮線。砲身脱着の邪魔になるので、取り外し式にしておく。

OVMクランプの留め金を0.2mm真鍮線でナンチャッテ再現。ピンセットの先につまんで折り曲げる。

折角の工作がよく見えるように外側に接着するが、後で実車写真を見ると、ことごとく内側にある(汗)。

押しピン跡が気になり、パテ埋め。



■ 三色塗装 9/28追加

 完成形は冬季迷彩だが、その下地に三色迷彩を施す。下塗りだから適当でいいんだけど、練習を兼ねて本番のつもりで塗ってみる。以下、画像で。



その前に追加工作。フェンダー内側に三角板を0.2mmプラバンで追加。自作ダークイエローで下塗り。

ジャッキ台の上に蝶ネジ。多分工作中に外れて飛んでいくだろうけど。

自作の色調が気に入らず、クレオス#39ダークイエローのビン生で全体塗装。

冬季迷彩の下地なので、暗い方がコントラストがあっていいだろうと考え、エッジにダークグレイのシャドウ吹き。

#70ダークグリーンのビン生で迷彩。パターンは適当。


0.2mm口径のハンドピースを使ってフリーハンド。

#41レッドブラウンのビン生で迷彩。ダークイエローで吹きすぎを修正。さらに極薄のグレイで暗色ぼかし塗り。

センスいまいちだなあ。太さが単調。もう少しボケ幅が狭い方がよかったな。迷彩パターンも勉強の余地あり。

転輪のゴムは自作タイヤブラック。OVMの金属部は自作ガンメタ+ダークイエローを1:1。木部はダークアース。いずれも筆塗り。

履帯は、下塗りと同じ自作焼鉄色。転輪周辺の塗り分けや予備履帯は筆で塗る。

ウェザリング・マスターのスス、サビでウォッシング。かなり暗調になる。三色迷彩が最終形ならこれでは暗すぎだ。

部分的に暗色シャドウ吹き、チッピングなど施す。履帯と砲身にはエンピツ粉を擦りつける。

クローズアップ。予備履帯やOVMにウェザマス@サビのウォッシング。おや、いつの間にか蝶ネジが消えてる。(早っ)

チッピングにはWEBで覚えたワザ、スポンジを使ってみる(後部ドアのエッジなど)。使用色はタイヤブラック。


 AFVのウェザリング技法には、ヒコーキ模型に応用可能なものがある。スポンジのチッピングは、含ませる塗料の濃度や量の加減に注意が必要だが、なかなか良い感じに仕上がる。これはかなり使えるぞ。銀ハゲチョロとか、チョーキング層が剥がれたチッピングとか、ウォークウェイの汚れ表現とか。


■ 考証メモ

  • 戦闘室内部は暗色の写真あり。砲架の明色と明らかに異なる。プライマーの赤茶色か?作品はインストどおり。
  • M型でも車体形状にバリエあり。操縦手クラッペ周囲の角が丸いとか、サイド張り出し部の先端が丸いとか。その場合、装甲板を止めるボルトにも相違あり。


■ ヘアスプレー塗り 10/1追加

 いよいよ冬季迷彩。最近雑誌等で流行りのヘアスプレー塗りに挑戦。これがやってみたくて、マーダーを作っているようなもの。一応解説すると、ラッカーの下地塗装の上にヘアスプレーを塗布し、その上に水性カラーを上塗りする。乾燥後に水をつけた歯ブラシ等で擦ると、水溶性であるヘアスプレーが溶けて水性塗料ともども剥がれる、というもの。

 ということで、近所の店で一番安いヘアスプレーを購入。その時点では情報がなかったのだけど、購入後に最新のMG誌を立ち読みしたら花王ケープ、無香料でハードがいいとか。早く言ってよ。で、缶スプレーの要領でモデルに満遍なくしっかり吹き付ける。乾燥したら、タミヤの水性アクリルのフラットホワイトをエアブラシ。水性塗料の扱い方はよく知らないので、希釈は水で。ところが、塗料が乾くと厚めに吹いたところにヒビ割れが発生!!こんなこと雑誌に書いてなかったぞ!!



ギャツビー・ヘアスプレー・スーパーハード・微香性。これが一番安かったけど、何か?

なんと、ヒビ割れがががが・・ (時間差で出るので、要注意)


 気を取り直して、白の剥がしだ。雑誌のとおり、水をつけた歯ブラシで擦る。初めのうちは剥がれないが、塗膜が水を含んでくると、「ぺろっ」と剥ける。ただ、そのあたりのコントロールは意外と難しく、剥がれないぞとゴシゴシ擦っているうち、ある瞬間にどばっと剥がれてしまう。水性塗料の塗膜厚と剥がれやすさも関係があり、薄いとこほど早く簡単に剥けるみたい。



剥がしは案外難しいぞ。防盾のあたり意図に反して剥がれすぎ。それはそれでドラマチックという見方もできるが。

国籍マークはキットデカール。ヘアスプレー、白塗装時にはマスキング。


 ということで、結果はいまいち不本意な出来。お風呂に入って出直していただく。ところが、これで白がきれいに落ちるかと思いきや、ヘアスプレーが十分に回っていないところなどは塗料が残る。まあ、どうせまた白を吹くから大きな問題はないけど。



石けん水につけてゴシゴシ。

雪解けの風景みたいだな。


 こんどはヘアスプレーをカップに取り、エアブラシで吹き付ける。希釈の必要は感じない。ヘアスプレーの薄い部分は剥がれづらいことが分かったので、剥がしたい部分にはしっかり吹く。ドライヤーで乾燥させ、タミヤ水性の白を吹く。注意して薄く吹いたつもりが、またもヒビ割れ発生(←学習しろよ)! 今度はそのまま続行。続いて剥がし。今度は歯ブラシでなく油絵用の腰の強い筆を主に使い、水をつけて時間を置き、ふやかしてから、慎重に筆で擦っていく。



2回目の挑戦。

あまり変わらないか。


 履帯、転輪周囲はマスキングをサボったため白塗料が飛び散っており、ざっとぬぐってから筆塗りでタッチアップ。その他、ウェザマスで雨で流れた汚れを加えたり、凹部にスミイレしたり。排気管には、乾いたパステル粉、エンピツ粉などまぶす。車体下部を中心に水溶きウェザマス各色で泥汚れ。部分的に、スポンジに付けて点々とはねた泥の表現。

 全体を見て、バランスの修正。白塗装のヒビ割れたところ、剥がれすぎたところを面相筆で水性白のタッチアップ。これでヒビ割れも随分修復できる。見方によっては、現地塗装作業の荒々しさが表現されたともいえるかな。また、塗装面を乾燥後に硬いもので引っ掻くと「ぱりっ」と塗膜が剥がれる。エッジや面の単調な箇所などに適宜施す。



最終形。白塗装面も微妙に変化しているのだ。

転輪のゴム、履帯は筆塗り。

こちら修復前。

修復後。


 車体後部のデカールがマスキングテープで剥がれたので、手描きする。このためにエアブラシをセッティングするのが面倒で筆塗り。後部のステップは、キットのプラパーツを引っかけて曲げてしまい、0.6×0.3mm真鍮帯金で作り直す。「コ」の字に曲げるには、ヤスリで溝を切って、曲げてハンダで補強。上部には接着用の足を付けるが、「廿」字形に帯金をハンダ付けして不要部を切り取り、横から見て「Γ」形にする。車体にはバイスで穴をあけて接着。イモ付けでなくなり、接着強度はばっちりだ。



国籍マークを手描き。

黒を塗り、次に白のマスキング。

後部のステップ。左は試作品(途中まで)。

できあがり。例により黒でなくタイヤブラック。でも白背景では黒に見える。デカールも同色でタッチアップ。



■ 完成

 以上で完成。ヘアスプレー塗りは、やや扱いづらいところはあるものの(慣れないだけ?)、剥がれたエッジのギザギザ感など非常にリアル。飛行機モデルにも十分応用可能だ。冬季迷彩だけでなく、銀地肌ハゲチョロにもいいんでないかな? 塗料のヒビ割れは、濃いめの塗料を塗装面が濡れないように粉っぽく、かつ薄く何度も吹き付けると防げるかも。ヘアスプレーの種類、塗布量の加減などは経験値不足でよくわからん。ともかく、以下細部クローズアップで、効果の程を確認されたし。








 完成したモデルを白いベースとグレイの背景(雪原と曇天のつもり)で撮影し、モノクロ変換してみる。当時の記録写真にあるようなトーンバランスになったかなと自画自賛。記録写真の冬季迷彩って、ジャーマン・グレイの上に白を被せたような明度バランスに見えるのだよね。今回3色迷彩の上の白だけど、ベースを暗めにしたこともあり、記録写真のように見えてくれて狙いどおり。

 さて戦車シリーズ、今回も楽しんだ。次は連合軍@西部戦線あたり行こうかな。おっと、しばらくF6Fに専念するか。










■ フィギュア 10/22追加

 折角なのでフィギュアと並べたいが、タミヤは身長が低い。そこでスクラッチに挑戦だ。キューベルワーゲン運転手のヘッド(これは他と較べてやや大きめ)、マーダー戦車兵の胴体、マルセイユの靴をつなげて、身長180cmの芯を作る。

 次に防寒服を着た胴体の形にファンドを盛る。翌日ほぼ固まったらナイフ、彫刻刀、ペーパー等で削る。ファンド盛りと翌日の削りの工程を2、3回繰り返し、途中で腕とフードを追加。さらに盛りと削りを何回か繰り返す。初めのうちは服のシワが上手くできないが、既製のフィギュアのシワ表現を真似たり、本物の写真を見ながら盛り削りするうち、コツも分かってきて、なんとかタミヤ製フィギュアのレベル程度にはなったかな。

 盛り重ねたところが剥がれやすく、陶芸教室で粘土を水で溶いて糊にしたのを思い出し、ファンドを水で溶いて、糊や溶きパテがわりに使う。ファンドはべとつかず、サクサク削れるのでこういう造形には使いやすい。反面細かい切削作業中にぽろっと割れたり、切削面が毛羽立ったりというところが不満。こういう点はエポパテの方が優れるか。



左、タミヤのアフリカ兵。身長158cm。右、スクラッチの芯。身長180cm。

盛り削りを3回ほど繰り返した状態。服の縫い目のディティールを入れると実感が増す。

記録写真と較べると、ちょっと膨らみが足りないかと、薄くファンドを盛る。キットは顔がのっぺりしてるので、切り出し刀で彫る。

大分それらしくなってきたかな。マーダーと並べてみる。上からベルトを締めていることが多いが、そうでないこともある。

ポケットのフラップ、フードとウエストの紐を追加。シワの形も整える。防寒服のディティールはバリエーションがあるようだ。

後から。お尻のだぼだぼ感がポイント。靴がいまいち不満。小振りな靴をラッカーパテで拡大。

膝の曲げ、背骨のS字カーブがポイント。

製作中にこんな画像を入手。背景はパンター戦車。この雰囲気を製作中のフィギュアにも盛り込む。




■ フィギュア塗装 10/29追加

 語るほどのものではなく、備忘メモ。今回も塗装はファレホ。肌の基本は70927ダーク・フレッシュ、シャドウは+70941バーント・アンバー、ハイライトに+70917ベージュ、唇や頬の赤味は基本+70929ライト・ブラウン。防寒服は70820オフホワイト。帽子用に70920ジャーマン・ユニフォームを購入するも、色調が不満(色名に偽りあり、怒)。

 仕方なく、ここだけタミヤ水性アクリル。XF-65フィールドグレイとXF-53ニュートラルグレイを1:2、ハイライトは+XF-2ホワイト。ズボンの裾などには、ウェザマスの茶系を軽く擦りつける。最後に、塗膜保護のためガイアのフラットクリアを厚く吹き、さらにクレオス#30フラットベースを薄く溶いて吹きつけ、完全な艶消しにする。



スクラッチ完成。初めてにしては、割と自己満足。防寒服は、やりやすいというのもあるけど。

こちら側からの姿が気に入っているのだが、ベースに配置すると車両の陰で見えない。残念。

最初にシャドウ(+ブラック・グレイ)をきつめに入れたら、白を塗り重ねてもなかなか明るくならない。反省。

肉眼では気にならないが、写真だと紐の太さが目立つ。ピンバイスで穴を開けて糸はんだを植えればよかったかも。

彫刻刀で顔を彫ったので、前回アフリカ兵より塗りやすく感じる。顔の左側はなぜか悪人面。

アップだと、お肌の荒れが目立つ。このあたり今後の課題。帽子のつばの内側も削るべきだな。



■ ベース

 ベースは行き当たりばったり。15×10cmの板に直接テクスチャー・ペイント粉雪を厚めに盛り、重曹をふりかける。白一色だと物足りなく感じ、水溶きウェザマスで泥を描き込んでみる。まだ実感に欠けるので、さらにコテコテと。



轍っぽく描き込むが、なんか実感不足。

さらにテクスペ粉雪を盛り付けたり、泥色を塗り込んだり。



■ 完成

 キャタピラや車体下部にテクスペ粉雪を擦りつけ、ベースに乗せて完成。相変わらず、ストーリー性のない構成だな。展示会的にはフィギュア立ち位置をもう少し前に出すといいんだけど、写真で車両とフィギュアの両方にピントを合わせたくて、3歩下がっていただく。さておき、今回はヘアスプレー塗りと、フィギュアのスクラッチを習得し、大いに満足である。雪の表現はもう少し勉強。

























■ ヘアスプレー塗り補足

 Web情報では、剥がす際にぬるま湯にしばらく浸け、塗膜が柔らかくなったところで歯ブラシで慎重に叩くという手法もあり。全体を浸すのは若干リスキーな気もするが、いずれにしてもいきなり歯ブラシでゴシゴシではなく、水を付けてしばらく置いて、慎重に剥がすのが正解のようだ。

 飛行機への応用。冬季迷彩や銀はがしが一般的な使い道だが、下塗りと上塗りをごく近い色調にして、一種のグラデーションのようにするというのもアリかな。下塗りをやや暗調にして、パネルラインシャドウ吹きのような感覚で剥がすとか、逆に下地をやや明調にして、剥がして退色風味にするとか。どなたかやってみない?


■ 雑感 戦車NG集

 蛇足。自分で戦車を作るようになって、人の戦車が気になる。本当に上手い人は、本物そっくり、センスばっちり、まさに神業。下手でも楽しんでる人には何も言うことない。ただ、「上手いんだけどちょっとね〜」的な作品もちらほら。自分のことは棚に上げて、NG作品言いたい放題いってみよう。

 まずは汚しのやりすぎ。「実物らしさの追求」から外れた「見た目のインパクト」方向って好きでない。明暗つけすぎのフィギュアも同類。お次は「きのこヴィネット」、戦車より小さいベースってどうよ。ネタの大きすぎる寿司みたいで品がない。空間に詰め込みすぎのジオラマ、詰めれば緊迫感ってもんでもないでしょ。見ていて落ち着かない不安定な建築物、ベース端でちょん切って屋根が浮いてる〜みたいな。

 以上、あくまで私の個人的嗜好。AFV界の常識(?)とは違うかも。


■ 実物画像

 マーダーVのLIFEオリジナルカラー画像。三色迷彩の色調や汚れ具合とか、参考度非常に大。これを見よ。周りを掘ればさらに多数。


■ おわりに

 Fi-156シュトルヒのインアクションなど見ながら、タミヤ1/48をD(救急)型改造で冬季迷彩、車両とフィギュアを絡めて・・と妄想中。



これで本当にF6Fに専心






■ 参考資料

 書籍は手持ちなし。WEBで拾った画像などを参考とする。ディティールに関しては、下記サイトでばっちり。




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