ベル P-400 エアラコブラ 1/72 アルマホビー 製作記

2024.4.11初出




最終更新日 3DPファイル




■ はじめに

 F4U-5Nの完成が見えてきたところで、新たなキットに着手する。お題はアルマホビーのベルP-400。P-39の英軍向けモデルの米軍版だ(←ややこしい)。キットはアルマからの頂き物。疾風での「縁」があるのでね(疾風製作記参照)。ありがとう、グジェゴシさん。折角の贈呈品だから、作らねば失礼にあたる。というわけで。

 製作コンセプトは、基本素組みで、コルセアとサンダーの箸休めに、ゆるゆるまったり作る。マーキングは、キット指定から選ぶ。とはいえ、完全素組みでは面白くないので、ワンポイント手を加え、ささやかに個性を主張したい。

 今回、図面は作成しない。キットのアウトラインがいいときは、図面を描く必要がない、というスタンスなので(例外あるけど)。3DPは、ベルト付きシートくらいかな。


■ キット評 

 一言でいえば、同社通例の、非常に高水準のキットだ。仮組みして実機写真と見比べると、アウトラインのイメージばっちり、実機そのもの。小物の出来もいい。コクピットは細かく再現される。表面モールドも、極めて私好み。パネルラインは太過ぎず細過ぎず、かつ深くてハッキリだし、余計なリベットがないのもいい(私はエデュアルドのアレが嫌いなのだ)。

 さらに、美点として強調したいのは、主翼の部品分割だ。キットは、単純な上下分割で、それなのに後縁が非常にシャープ。よくあるように、エルロンを上下一体として下面のエルロン境で分割されると、そこがキレイに工作できず、余計な手間がかかって困るのだ。厚くなったエルロンにはヒケも出来るしな。タミヤには、早くその分割方法を止めてもらいたいものだ(翼端別パーツもね)。

 あと、P-400では機首の機銃口付近が3Dパーツとなっている。この合わせが驚異的に良い。「同じデータだから」というが、単純に同じデータなら、プリント時の痩せ、太りでこうはピッタリ合わないはず。慎重な調整がされているものと推測する。

 以上、貰ったからという訳ではないが褒めちぎったところで、私の好みでは「できればこうしてほしかった」も書いておこう。同社のいつものスタイルで、凸に盛り上がるキャノピのフレームが、ややごつい。私は、ハセガワのような表面がフラットで凹スジボリが好み。いつもお願いしてるのだが、なかなか実現しない。ひょっとして、ポーランドの金型事情でハセガワ的表現が難しいのかな?

 それと、別パーツとなっているエレベーターとラダーは、接着シロが少なく、強度的に弱い。粗忽な私は、製作中に破損してしまうだろう。ここは無理せず一体パーツでよいと思う。また、エレベーターとラダーのリブ表現が、ちょいオーバー。一方、同じ羽布貼りのエルロンではリブがなく、バランスを欠く。ここは、どちらも疾風のような表現でよいと思う。

 ということで、あれこれ書いたが、結論は「買い」だ。(って、お前はアルマの回し者か→はい、その通り)


■ 製作開始

 ではいよいよ製作。まず、キャノピから始める。というのは、ここが「ワンポイント」だからだ。凸のフレームを削り落とし、新たにフレームをスジボリする。これで私好みの仕上がりになるはず。

 完全にモールドを削り落としてからスジボリすると、フレームの位置決めが厄介。モールドのあるうちに、フレームの隅をスジボリすれば、位置は決まる。ただし、それだとフレームの幅が太くなる。そこで一考。片側のみスジボリしてからフレームを削り落とし、もう片側はそのスジボリをガイドにすれば、問題解決だ。以下画像で。



キットのキャノピ。画像はネットで拾ったもの。フレームの表現に注目。

フレームをガイドにエッチングソーでスジボリ。後半上部は機体中心線に合わせるため左右ともスジボリ。

スジボリを一旦セロテープに写し取って、その形にカッティングシートを切り、それをガイドとしてダブル針でケガく。

コンパウンドで磨いて出来上がり。正面窓下方の防弾板は、邪魔なので削り落とし、あとでプラバンで再生する。


 補足。スジボリを写し取るには、セロテープを貼って、ケガキ針でスジボリをなぞる。それを黒いカッティングシートの上に貼ると、ラインがクッキリ見える。これ今回の新たな発見。これまでは、マステに細ペンで描いていた。これだと正確さ、精密さに欠けるのだよね。

 胴体およびドアとの境のフレームは、上記方式ではなく、ダブル針の片側をパーツのエッジに引っ掛けて彫る。以下個人的メモ。胴体境:0.8mm、ドア境:0.6mm、正面上:0.4mm、正面左右および天頂:0.3mm。


■ ドア問題

 製作開始時点で決めておくべきことが一つある。それはドア。キットは左右の乗降ドアが別パーツとなっている。これを開けるか閉じるかで、組み立ての手順が変わってくるのだ(←少なくとも私は)。当キットの合わせは非常によいが、それでも左右とも閉じて作ると、難易度は非常に高くなる(ハズ)。

 つまり、普通にコクピットを挟んで胴体左右を接着し、キャノピを乗せ、ドアを外からはめると、たぶんドアと胴体とキャノピの3つを段差無くキレイに接着するのが難しくなる。(やってみると杞憂かもしれんが。でも、うっかりドアを中に押し込んだら、どうやって外に戻す?)

 そこで、左舷は閉じ、右舷は開くことにする。これなら、左舷ドアを押し込んでも、中から押し出してやればいい。片方開くことで、モデルに動きが出て、見栄えもいいだろう。人様の作品もこのパターンが多い。考えることは一緒だね。ただ、もし左右とも閉じて作って、かつ段差ゼロの作品があったら、その作者は「凄腕」。一見地味だが、実は超高難易度工作をキメてることを覚えておこう。

 ついでに、左右閉じるなら私はこう作る、という方法を思いついたのでご紹介。ドアの窓部分を切り離し、先にキャノピパーツに接着する。ドアの下半分は先に胴体に接着/段差修正する。あとは普通の飛行機キットのように、胴体にキャノピを乗せ、合わせ目を処理する。このとき、ドアの窓の境ギリギリでカットすると、切断面が窓越しに見えてしまうから、0.5mmほど離してカットする。内側に切断線が見えてしまうが、キャノピ越しならあまり目立たないだろう。

 方法その2:コクピットパーツを胴体左右接着後に下から後はめ出来るように加工しておき、胴体左右、キャノピ、左右ドアを接着。合わせの調整、段差消しの後、コクピットを組み込む。ただし、後はめ可能かどうかは未確認。少なくとも前脚収容部と一体に組んでしまうと無理だろう。床、後方フレーム、後方デッキを別にしておいて、後ろからはめればいけるかも。

 方法その3:片側(両側でもいいけど)のドアの窓をくり抜いて「窓開け」状態にする、って手もあるな。


 製作はもうちょい進んでいるが、初回ここまで。


■ コクピット 4/27追加

 キャノピの目処が立ったところで、通常の飛行機モデルの初手、コクピットを製作する。まず、機体内部色の考察。ものの本には、「エアラコブラのコクピットはベルグリーンで塗られた」とあるけど、肝心のその色調が分からない。いつも頼りにしているIPMSストックホルムのページでは、ミディアムグリーンに近いとか。

 この色は、コクピットだけでなく、脚柱や脚カバー内側にも塗られたそうな。そこで、当時のカラー写真を眺め、「えいやっ」とC340フィールドグリーンFS34097のビン生に決める。→その後発見したカラー写真だと、もっとオリーブドラブに近いかも。ま、いいや。

 組み立ては、キットそのままストレート。とてもよく出来ている。照準器、操縦桿、座席は後で取り付ける。



コクピット出来上がり。内部色はぺぺっと筆塗り。計器盤はキットデカールの貼りっぱなし。

コクピットと前脚収容部とオモリが一体となる。鉄球もキットに含まれる。素晴らしい。



■ 胴体組み立て

 コクピットを組み込んで、胴体左右を接着する。パーツの合わせは非常に良いので、全くノーケアで組み上がる。コツは、接着せずに臓物を組み込み、左右を合わせてからサラサラ系セメントを流す。先に瞬間などで片側胴体に接着すると、合わせが良すぎて、かえってぴったりとならない。

 コクピット後部のデッキは、このとき一緒に組み込むことになっているが、取付ガイドを切り落とすと、あとで下からはめ込むことが可能となる。窓掃除できるように、あとはめにする。



胴体左右接着。ヒケないように上面のみ瞬間を流して接着。その他は流し込み系で。デッキは後付けする。

一体の水平尾翼と3DPのガンカバーも接着。


 水平安定板とエレベーターは別パーツ。これは0.3mmの真鍮線を左右2箇所ずつ打って、瞬間でしっかり接着する。それを避けるなら、塗装まで別パーツのままにしておいて、最後に接着するしかないかな。ガンカバーの合わせは驚異的に良い。ごく少量の瞬間で接着する。


■ キャノピ接着

 キャノピと左舷ドアを接着する。この接着はノーケアという訳にはいかない。十分にすり合わせて調整する。窓枠を削り落としてキャノピの幅が狭くなったためか、胴体接着部に段差が出来る。そこで、胴体を少し狭めるように、胴体内側をコクピットのバルクヘッドに接着する。キャノピとドアは溶剤系でゆっくり調整しながら接着。ドアは、内側を内部色で塗装しておく。胴体前方には隙間と段差が出来る。これはプラ材と瞬間で埋める。



キャノピとドアを接着し、それらと胴体をツライチに削り合わせる。そこで気付く。ドアの窓枠が少々太い。無視するか・・

やはり気になるので、ドアの窓枠を削り落として、新たにスジボリすることに。

スジボリには、カッティングシートをマシンでカットしたガイドを使う。

スジボリ終了。少々ガタガタしてるのは技術の限界。気にしないことにする。


 アルマのキットは、キャノピが鬼門だな。


■ 実機に関する蘊蓄

 マニュアルを読んでいると、いろいろ分かって面白い。主翼翼型は、付け根NACA0015、翼端NACA23008。付け根は上下対称翼である。キットもよく再現されている。取付角は2°。ねじり下げの記述はなく、たぶんなし。ただし、そうであっても翼型の変化によって、見た目には若干のねじり下げがあるように見えるはずだ。上反角は、30%コードにおいて上面が4°。翼基準面だと6°程度になるはずで、極めて一般的な値。前縁後退角は4°35'9"。

 エルロンのタブは、内側がトリムタブ、外側はサーボタブ(エルロンと反対に曲がり、操舵力を軽減する。バランスタブとも)。このサーボタブを装備した型式は、エレクション&メンテナンスマニュアルに限定列挙されており、その中にP-400は含まれない。なお、一部資料は、左右でタブの数が異なるものがあるが、それはない。両側2つか両側1つのどちらか。

 水平安定板、垂直安定板の断面は、参考文献-4の補修マニュアルに図がある。図中にスケールがあって、それで測ると、水平安定板は内寄りのヒンジの断面で厚さ3.6インチ程度。1/72なら1.3mmで意外と薄い。キットの厚さは正しい。垂直安定板は下側のヒンジの断面で厚さ5インチ程度。1/72なら1.8mm。こちらもキットは正しい厚さ。先端はP-47ほどではないが、尖り気味。同時代の米陸軍機には、他にも尾翼先端が尖っている機体がある(P-40、P-47)。流行ってたのかな?



E&Mマニュアルの記述。エルロンのリブ配置も分かるね。タブはラミネートされたフェノール樹脂製だって。

垂直安定板の図。リブの配置も分かる。実機写真を見ても、先端は尖り気味。



■ 主翼接着 5/5追加

 キャノピと左ドアを接着、整形し、窓の内側を掃除したら、コクピット後方のデッキを取り付け、主翼を接着する。主翼の合わせは大変良い。胴体を狭めたせいかもしれないが、フィレットとの隙間が0.2mm程度できる。そこで、まず翼下面と左翼上面とを先に接着し、それを胴体に接着してから、接合ピンを切り落とした右翼上面を接着する。これで隙間ピッタリ。接着剤はいずれも流し込み系。下面の胴体との隙間には、パテがわりの瞬間。



デッキを接着。先にはめ込み、要所に白フタを流す。サラサラ系は思わぬところに流れるので、ちょっと怖い。

1mmプラバンの補強桁を接着しておく。上反角を保持し上下の潰れを防ぐ。脚庫の筒抜け防止にもなる。

主翼を接着。垂直安定板とラダーも接着。早くも士の字。

話は前後するが、キャノピは磨いてある(写真撮ってなかったのじゃ)。内側には汚れ防止のスポンジ。

キットのファスナの凹穴は、#3たまぐりを打って〇モールドに。スジボリは、ケガキ針とエッチングソーを使い分けて深く彫る。

ラダーは、2カ所(矢印)に0.3mm真鍮線のピンを打って接着。リブのモールドは削り落とす。垂直尾翼前縁を尖らせる。

エレベータもピンを2カ所。薄いので上面にピンが見えないように、少し下に打つ。同様に、リブのモールドは削り落とす。

P-400のエルロンのタブは、左右とも1つだけ。外側のモールドは瞬間で埋める。


 重箱の隅。主翼フィレットの主翼との境、尾翼フィレットの垂直/水平尾翼との境にもリベット(というか取り付けネジ)がある。キットでは抜きの都合で省略されているので、たまぐりで追加する。


■ 実機に関する蘊蓄2

 英軍に供与されたエアラコブラIおよび米軍使用のP-400は、胴体の乗降ドアの後方に青い編隊灯がある。キットにモールドはないが、再現するためのデカールがセットされるので問題ない。←この段落5/21訂正

 実機写真では、防弾ガラスが無いように見える。しかし、マニュアルにはちゃんと明記されている。イラストやフライトマニュアルのコクピット内部の写真を見る限り、正面ガラスを兼ねた湾曲した防弾ガラスに思えるがどうだろう? また、パイロット後方にもカマボコ形の防弾ガラスが取り付けられる。1/48以上なら、再現するといいかも。



これがその編隊灯。色は青。RAF601Sqn所属(レターUF)のエアラコブラMk.Iである。排気管が他型と違う。

マニュアルの防弾板および防弾ガラスの図。これはP-400のもの。


 面白いことに、主翼、フラップ、水平安定板、エレベータは、型式により面積が異なる。例を挙げれば、フラップは、P-400などは26.2sqftで、NとQでは24.94sqft。エレベータは、P-400で16.14sqftなのが、NとQで16.89sqft。平面形としても変化してるのだろうが、このあたりは確認するのも困難。模型においても、そっとしておくのが吉。

 一方で、全長は全ての型式で30'2"。添付の図は機銃先端からラダー後端までとなっており、型式によって機銃の長さが違うことは無視されている。スパンは34'0"、水平尾翼スパンは13'。これらは変化なし。

 プロペラに関するメモ。P-400やP-39Dは、エアロプロダクツ製10ft4in。Lはカーチスエレクトリック製直径不明。Mはエアロプロダクツ製11ft1in。Nは、エアロプロダクツ製10ft4in。Nの途中からエアロプロダクツ製11ft7in。Q-21、25は4枚ブレード。出典はwiki。


■ 塗装前の作業 5/21追加

 削り飛ばした風防前方の防弾板を取り付ける。一旦サフを吹き、表面のキズやスジボリの不具合などをチェック。そののち、動翼リブのインレタを貼る。



再掲。防弾板工作前の状態。キットのモールドを削り落している。

0.3mmプラバンで防弾板を追加。後付けにより、エッジもシャープになるし、隙間の処理も簡単。

リブテープはインレタ。F4U-5Nの黄色版の余りスペースを活用。

P-400のエルロンのリブは、こんな配置。


 キャノピをセロテープでマスクして、本番塗装の準備完了。


■ 調色

 この頃の英軍向け米国機は、みな米軍規格の近似色(たいがいはデュポン社製)で迷彩塗装された。それがどのような色調だったか、推測するのもまた模型の楽しみ。他機種では、ダークグリーンをオリーブドラブで代用、なんて例もざら。エアラコブラについては、英軍塗装のカラー写真が残っており、P-400も基本的に同じ塗料であったと考えられる。なお、機体内部は、米軍向けと同じだったろう。RAF向けだからといってエアクラフトグリーングレイでは塗られてないはずだ。



上面2色と赤、青は、英軍規格色に近い。一方下面のスカイは、ほとんど白といっていい明るさ。


 上写真が退色したところをイメージして調色する。ダークグリーンは、C17 RLM71ダークグリーンに白3割程度。ダークアースは、C22ダークアースと黄と白が5:2:3程度。スカイは、カラー写真は相当白に近いが、67FSなどのモノクロ写真ではそこまで明るくないような気がして、C311グレーFS36622(ベト迷の下面)とニュートラルグレイが2:1程度とする。インシグニアブルーは、自作シーブルーにC13を加え、前作P-47Dよりやや明るめにする。


■ 塗装

 リブのインレタの上にサフを薄く吹き、本番塗装。マーキングは、キットデカールを使用し、67FS/347FG所属「HELLSBELL」、ロバート・ファーガスン機(Lt. Robert M. Ferguson)にする。実機写真は手元になく、インストのカラー図が頼り。これによると、垂直安定板のフィンフラッシュは、ダークグリーンの上塗りで消されている。



最初に下面色を吹き、軽くシェーディングを施す。基本色に白または黒を加えた2色を使い、基本色でやり過ぎを補正。

マステで境界をマスクし、ダークアース。この段階でシェーディング。下面同様に明暗2色と基本色。

Mrペタリでマスク。迷彩パターンはインストに従う。

ダークグリーンを吹き、同様にシェーディング。右ドアも仮止めして同時に塗装する。

マスクを剥がし、境界を面相筆でぼかす。さらに極薄の暗灰色でシェーディングを追加したり、基本色で戻したり。

国籍マークと垂直尾翼のタッチアップのマスキング。キャノピはマスクを剥がしたのではなく、塗料のみ剥がしたもの。

インシグニアブルーとタッチアップのオリーブドラブを吹き、さらに翼端の白とウォークウェイのタイヤブラックを塗装。

下面はこんな具合。このあと、脚庫をセロテープでマスクしてジンクロを吹く。


 上面2色の境界は、ペタリのマスクを剥がした状態ではクッキリしている。そこで、2色を1:1に混ぜて、面相筆で境界に細い線を描く。塗るというよりは、シンナーで混ぜる感覚。遠目にはボカシに見える。実機も、ボカシはほとんどない。


■ 塗装考証

 なぜ、ここで塗装考証? 塗装の前にするんでないかい? との疑問はごもっとも。いやぁ、塗った後で気になったもので。

 さて、P-400とは、英軍向けに作られたものの低性能で引き取りを拒否された機体を、米軍で使用したもの。英軍向けにダークグリーン/ダークアース/スカイを模した迷彩塗装がなされた。この国籍マークがどうだったかが、どうにも気になって仕方がない。

 というのも、インストでは尾翼フィンフラッシュを塗り潰している。であれば、主翼も同じように塗り潰されたのでは? 例えば、AVGフライングタイガースのH81(P-40Bの輸出版)は、胴体・主翼のラウンデルとフィンフラッシュを迷彩色で塗り潰し、新たに青天白日マークを記入してるのだ。



拙作ホークH-81。ラウンデルはダークアースのみ、フィンフラッシュは加えてダークグリーンの2色で塗りつぶし。


 これは気になるよねぇー。で、検索すると主翼上面が写ったP-400の写真を発見。これだと、主翼の塗りつぶしはないように見える。ひと安心。では尾翼は?



ニューギニアの80FSのP-400。尾翼は塗り潰したようにも、元の迷彩のようにも見え、悩ましい。上面は、退色と汚れが著しい。

HELLSBELLと同じ67FSのP-400。尾翼は暗くてハッキリしない・・ 主翼下面インシグニアの位置、サイズも参考になる。

所属部隊不明のP-400 s/n BW157。米軍マークの英軍迷彩なのに、フィンフラッシュの塗り潰しがない。

「HELLSBELL」の写真も発見。残念ながら、尾翼の写真はない。けっこう退色風味だね。


 以上の画像より、確信までは至らないが、英軍ラウンデルとフィンフラッシュは、記入されてなく真っさらな迷彩の上に米軍インシグニアを記入した、あるいは、ベル社の製造ラインで同じ塗料でキッチリ塗り直されたのではないかな。

 改めて写真で確認すると、インシグニアのサイズは、キットデカールで合っているようだ。胴体は30インチで間違いない。主翼は37インチと半端だが、写真の印象には合っている。記入位置もインスト指示でよい。


■ 再塗装

 てなわけで、折角マスクして塗装した上塗りを、迷彩色で塗り直す。ま、大した手戻りではない。



ここだけマスクしてダークアースとダークグリーンを吹く。

右舷も終了。このあとのデカールに備え、クリアを吹いておく。


 塗装はここまで。これ以降はデカール。インシグニアは、デカールの白星のみ切り出して貼る。こうすれば、退色したインシグニアブルーの色調を自分好みにできるわけ。


■ デカール 5/28追加

 デカールは、キット付属のテクモド製を使う。フィルムが厚いのが難点だが、発色がよく貼りやすい。タミヤのマークフィットスーパーハードでスジボリにも馴染む。インクも厚いので(その分発色はよい)重ね塗りの部分はかなり盛り上がる。厚い分だけ丈夫なので、AMDなどのカルトグラフ製別売りデカールのように、クリアでブツブツができたりしない。なお、別売りデカールとして売られているテクモドも同じかどうかは、買ったことがないので知らない(カルトグラフの場合、キットに付属するものは、別売りと質が異なる場合がある)。

 デカールの貼り方メモ。まず全体にクリアを吹く。デカール部分だけだと、あとでフラットクリアを薄く吹いたときに艶が均一になりづらい。貼り付け部にクレオスのマークセッター(旧版の角ビン)を塗布し、デカールを置く。湿らせた筆で余分な水分を除去する。ある程度乾燥して動かなくなったら、タミヤのマークフィットスーパーハードを塗布し放置する。

 翌日、デカールの上にクリアをたっぷり吹く。さらに翌日、ラプロス#4000で段差を軽く均す。完全に段差が消えるほどクリアを吹いてないので、程々で止める。最後にガイアのフラットクリアにフラットベースを3割程度混ぜ、極薄く希釈して吹き、全体の艶を整える。



デカールを貼り、クリアを吹いて軽く研いだ状態。胴体後部のスジボリに研いだカスが白く溜まってる。

下面のU.S.ARMYもデカール。原色の黒なので、研ぎ出し後に下面色を薄く吹き、退色した色味にする。


 白星などで、クリアの前にスジボリ部にナイフで切れ目を入れたところ、クリアで切れ目が拡がり下地が露出する。カルトだと、クリアでスジボリのデカールが浮いてくるのを、これで抑えられるのだが、テクモドの場合はスジボリ部も浮かないので、余計な作業であった。下地が見えた箇所は、面相筆でタッチアップする。

 スジボリに馴染むとはいえ、デカールの部分のスジボリは浅く甘くなる。十分にクリアが乾燥したのち、エッチングソーでスジボリを慎重にさらって深くする。脱線、オーバーランは厳禁なので、深追いはしない。

 迷彩塗装が退色風味なので、デカールの原色が浮いている。適宜ライトグレイやダークグレイを薄く上掛けする。マスクはせずフリーハンドで。細かいコーション類は省略。


■ 3DP

 プロペラブレードは、キットパーツも十分使えるが、好みで自作3DPに交換する。キットのシートも問題ないが、シートベルトを取り付けるのが面倒なので、3DP。考証は甘い。



Fusion360のフォームモードはクセが強くて、先端の形が、いまいち思い通りになってくれない。

P-47で作ったシートのフレームを取り去り、ベルトの形をそれに合わせたもの。


 プロペラの先端は、出力後にペーパーで形を整える。この方が早い。


■ プロペラ、ドア

 スピナをスッキリ仕上げたいので、キットのプロペラをスピナに接着してから、ブレードを切り落として整形する。ピンバイスで穴を開け、3DPのブレードには真鍮線のピンを打ち、スピナに差し込んで接着。スピナとブレードの境は、ケガキ針で溝を掘る。



塗装まで終了。ブレードはプリビアスシルバーにクリアを混ぜたもの。このあとブレードにデカールを貼る。

ドアには0.2mm洋白線を打つ。



■ ウェザリング

 イメージソースは、ズバリ下画像。排気汚れが著しい。主翼前縁や一部のパネルライン沿いも黒く汚れている。一方で、翼端や尾翼、胴体上面などはほとんど汚れていない。



再掲。ウェザリングは、この写真をイメージする。

主翼上面のリベットラインは、マニュアル(パーツカタログ)の図を参考にする。


 まず、水溶きウェザマスでウォッシング。星の生の白はこれでトーンが落ちる。さらに、チッピングを追加する。これは、いつものように面相筆でミディアムシーグレイをちょんちょんと点描。外皮の下のリブを意識する。巷の図面のリベットラインは不正確。マニュアルの図を参照する。タイヤハウス上部は前後方向に細かくリブが入る。

 排気汚れはタミヤエナメル。2色を使い分ける。ベースに黒+茶を広く吹き、中心にバフを重ねる。そのあと、エナメルシンナーをつけた筆を上から下にサッと撫で付け、雨で流れた状態を表現する。黒+茶は翼の前縁や付け根にも吹く。最後にフラットベース混のフラットクリアで、表面保護(エナメルは触ると落ちる←P-51Aでの教訓)と艶調整。

 その他、乾いたウェザマスを筆につけ、パネルラインやリベットライン(←仮想のね)沿いにこすりつけたり。動翼リブは、ウェザマスをつけた指で撫でる。十円玉に紙を乗せ鉛筆で擦ると模様が浮き出る。あれと同じ。スポンジチッピングもやろうと思ってたけど、十分汚れたのでパス。



汚すところと、汚さないところのメリハリをつける。汚さない部分があると、汚しがさらに際立つ気がする。組み立ての項で触れてなかったが、P-400は鮫口の上部に小穴が2つある模様(小さい方は凸かも)。これは右舷のみ。


 あとは足回りと機銃等の小物で完成だ。


■ 細部工作 6/7追加

 主翼機銃は、0.6mm真鍮パイプ。ピトー管は、0.6mm真鍮線に真鍮帯金をはんだ付け。方法は、P-47Dレイザーバック製作記その4を参照。

 アンテナ線の固定方法は、クサビ形に切った伸ばしランナーに瞬間をつけて、テグスを差した穴に突っ込む。垂直尾翼とキャノピ頂部の両方に0.2mmの穴を開け、まず尾翼側を固定。次に、キャノピの穴に通したテグスを引っ張りながら固定する。



ブローニング7.62mm機関銃とピトー管は真鍮細工。接着は木工ボンド。瞬間のように、はみ出して汚くならないのがよい。

アンテナ線は、0.2号(直径0.07mm)の透明ナイロンテグスをマッキーで着色。碍子は白い塗料。


 3DPのシートを塗装して取り付ける。ショルダーハーネスは、正しくは後方のバーから垂れ下がるが、3DPの都合上そこはスルー。照準器を後付けしようと思ったら、ドアの開口部が小さすぎてうまく取り付けられない。無理して窓の内側を汚したら嫌だなと思い、取り付けを断念。キャノピ接着前に取り付けておくべきであった。猛省。

 胴体ドア後方の航法灯は、とりあえず直径1mmの円のスジボリだけしてある。このあとの工作法に悩む。ミラーフィニッシュを、ポンチで抜いて貼ろうと思ったが上手くいかず、結局、中心に0.6mmのバイスで凹みを掘り、クリアーブルーを塗る。



シート側面の固定金具が、開けたドアからよく見えて効果的。ドア後方の航法灯は、1/72ならこれで十分でないかい?

ドロップタンクはキットパーツ。伸ばしランナーで、V字状の振れ止めを追加する。


 プロペラは、キットではプーリー形の回転子を胴体左右パーツで挟み、そこにスピナを接着するようになっている。この回転子に遊びがあって、スピナを接着したらスピナがお辞儀する。

 仕方なく、接着を剥がし(←それに備えて木工ボンドを使用)、回転子を切り飛ばし、中心に真鍮線を打つ。泥縄の軸工作なので、精度が低い。展示の際は両面テープでスピナを機首に固定する。別に回らなくともよいのだ。プロペラ中心軸の20mm機銃はキットパーツ。



キットオリジナルの設計はこのような構造になっている。ブレード一枚切断済み。

回転子の前半を切り飛ばし、中心に真鍮線を打つ。


 脚とカバーはキットパーツ。塗装が悩ましい。車輪ホイルは、機体により銀色のものがある。P-400も、もしかすると主車輪ホイルは銀かも。前輪ホイルはベルグリーンで間違いない。脚柱とカバー内側もベルグリーン。コクピットはC340で塗ったが、オリーブドラブに寄せるため、C12と半々程度に混ぜる。タイヤはいつもの自作タイヤブラック。色味はC333エキストラダークシーグレイよりやや暗い程度。

 キットの脚の長さは適切で、エアラコブラのお尻の下がった駐機姿勢がきちんと再現される。ただし、前脚は、斜め部材の長さが合わず、そのままだと脚柱の後傾が強くなる。現物合わせで斜め部材の先端を少々削る。主脚関係の合わせは問題ない。



前脚の取り付け角度は、実機写真に合わせる。オレオにはミラーフィニッシュ。

主脚カバーのフチはノミで薄く削る。主脚オレオはSM06スーパークロームシルバーを筆塗り。最近これが気に入っている。

脚庫側も合わせがきつい。斜め部材の取り付け部側面を少々削る。

車輪カバーのロッドもキットパーツ。庫内はウェザマスで汚す。



■ 完成

 以上で完成。前半はコルセアとP-47の箸休めでユルユル。後半は一点集中で1カ月半で完成する。余計なことをしないと、早いのだ。

 凸モールドを削り落とした窓枠は、大正解。スッキリした仕上がりになる。左舷乗降ドアについては、キャノピと合わせると胴体と合わず、胴体を少し狭めたが、よく考えてみると、キャノピの窓枠を削り落として、そこに凸窓枠のドアをつければ、合わないのは当たり前。ドアの窓枠も削り落とせば、おそらく問題は発生しないだろう。

 キットの出来がよく、組み立てカロリーが低いから、その分ウェザリングに力を注ぐ。今回は上面2色に白を多めに混ぜ、退色が進んだ状態とする。これは、白を混ぜすぎると、別の迷彩色(ライトアース/ミディアムグリーンとか)に見えてしまうので、加減が難しいところ。部分的に退色してない色を残すといいのかな?

 排気など暗色の汚しも、今回はかなりキツめ。これはイメージソースの実機写真の存在が大きい。頭の中の想像だけでここまで汚すと、嘘っぽくなる。チッピングは、クローズアップだと筆跡が分かってしまうな。まだまだ精進が必要だ。

 コンデジに写真用電球で完成写真を撮る。今までのスマホ画像と色味が違うのは、カメラと照明のせいかな。私のモニタだと、実物よりやや黄色味が強い。スマホは逆に黄色味が不足。画像ソフトで補正したいんだけど、RGB調整だと黄色の補正って難しいね。←どなたかご存じ?


































 ともあれ、楽しんで作ることができた。次もこの路線(お手軽素組みにちょい足し)でいこう。




■ 3Dデータファイル



プロペラブレード  ●DL

座席  ●DL




■ For foreigners who use machine translation

This article is written in colloquial Japanese, therefore it cannot be correctly translated into English by machine translation such as Google Chrome. In particular, a subject is often omitted in Japanese, so "I" may be mistranslated into "you", "we" or "it", and vice versa. Also, there is no distinction between the singular and the plural in Japanese, so the two may be confused in translation. Sometimes affirmative and negative sentences may be translated in reverse.


■ 参考文献

 実績と人気を反映してか、数は多くない。とりあえず、モノグラフのみリストアップ。それ以外の「ごった煮」本はP-47やP-38あたりとほぼカブるので、そちらを参照されたし。3から6はオフィシャルマニュアル。

1 新版 世界の傑作機 No.36 ベルP-39エアラコブラ 文林堂
2 旧版 世界の傑作機 No.34 1973年2月 ベルP-39エアラコブラ 文林堂
3 Handbook of Erection and Maintenance P-39 Series Airplanes Bell Aircraft Corporation
4 Instructions for Repair of Airacobra I Airplanes Air MInistry
5 Parts Catalog P-400, P-39D, D-1, D-2 and K-1 Airplanes Army Air Forces
6 Pilot's Flight Operating Instructions P-39N-0 and P-39N-1 Army Air Forces
7 P-39 Airacobra in Action Aircraft No.43 Squadron/Signal Publications
8 D&S 63 P-39 Airacobra Squadron/Signal Publications
9 Aircraft of the Aces 36 P-39 Airacobra Aces of World War 2 Osprey Publishing
10 Duel 87 P-39/P-400 Airacobra vs A6M2/3 Zero-sen New Guinea 1942 Osprey Publishing
11 Bell P-39 Airacobra Crowood
12 Warbird Tech 17 Bell P-39/P-63 Airacobra & Kingcobra Specialty Press
13 Yellow series 6106 Bell P-39 Airacobra Mushroom Model Publications
14 Monografie Lotnicze 58 P-39 Airacobra cz1 Aj-Press
15 Monografie Lotnicze 59 P-63 Kingcobra, XFL-1, P-39 cz2 Aj-Press









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