P−47Dサンダーボルト(ハセガワ1:48)製作記

 

<はじめに>

 タミヤから新しいキットが発売されたが、ハセガワキットもまだまだ捨てたものではない。

アウトライン

 胴体では、特にエンジン前端からコックピット後端まで一直線である平面形が正しく表現されており評価が高い。一方、下面の垂れ下がりが足りず、ずいぶんスマートな側面形となっている。また胴体下面が左右に膨らみ過ぎ。そのため胴体側面パーツの機首部とのラインがつながらない。タミヤの新キットと胴体形状を比較すれば、平面形はハセガワ、側面形はタミヤということになる。
 カウリングのイメージはとても良い。特に前端のカーブの具合が良い。タミヤは先がスマートすぎる感がある。たとえて言うとハセガワは零戦二一型でタミヤは五二型。ただし、細身の胴体の影響で、高さは足りない。また、胴体との位置関係を下げた方が実機に近い。合わせて胴体下面を垂れ下がらせると完璧。翼関係では上反角とねじり下げが不足。


カウリングのイメージはとても良い。ねじり下げは翼端の迎え角が0°となるように。

平面形は正しい。どうしてタミヤは・・・
側面が一直線となるよう、カウルフラップ後方胴体を広げる。

 

重箱の隅

 ハミルトン・ペラは、ハブとブレードが貧弱。モデルはタミヤに交換したが、こちらは逆に太すぎ。ハセガワのコルセア5Nがベスト。カウリング内部の吸気ダクトとの仕切りパーツの形状が異なる。胴体後部の排気口は、こんな状態には開かない。横に開くのは、もっと前進してからで、それまでは胴体と面一となる。
 右側エルロンにはバランスタブはなく、固定型のタブが後縁から飛び出している。垂直、水平尾翼の前縁が少々だるい。主翼前縁の形状も尖り気味にしてやるとよくなる。実機の胴体増加タンクのステーは断面が真円ではないが未修整。

<組み立て>

胴体

 主翼下面パーツと一体の胴体下面を、プラ板で裏打ちし左右から削り込む。その際に機首の補助排気口が邪魔になるので、パネルごと切り離し、後付けできるようにしておく。削った後のパネルラインの復元は、何枚か重ねたマスキングテープをパネルの幅に切り、それをガイドにエッチングノコを慎重にあてる。


補助排気管後方のパネルがほとんど湾曲しないのが正しい。

ハセガワは、カウリング前端のカーブの具合が良い。インテイク仕切りのパーツはこのように加工。

 

主翼関係

 上反角と翼端ねじり下げは絶対修正したい。翼下面パーツに車輪収容部パーツをしっかりと接着した後、その上にプラ板を渡し、正しい上反角を保つよう引っ張りながら接着する。余談ながらサンダーボルトの上反角は中翼機にしては強いが、サンダーボルトはワイルドキャットのような純粋な中翼機ではなく、低翼機に下腹が付け足されたと考えると理解しやすい。
 ねじり下げは、前縁を先に接着し、ねじりながら後縁に流し込みタイプの接着剤を流す。胴体とは摺り合わせを十分に。上反角とねじり下げ、これがないと締まりのないモデルとなる。上反角の修正で3点姿勢が低くなり、落下タンクが地面をこすりそうだが、逆に重量感があって気に入っている。

ディティールアップ

 脚周り、エンジンなどに若干のディティール・アップ。シートをコレクターズハイグレードシリーズに入っていたレジン製へ換装。後部風防は枠の部分をきれいに整形。また胴体との合わせに注意がいる。キャノピーの透明度を上げるため、コンパウンドで磨く。


タイヤのトレッドパターンをレザーソーで1本1本彫る。トルクリンク断面のディティールを掘る。キットの車輪カバーは薄くて貧弱なので、縁を削り落として0.2mmプラ板を張る。その他ちまちまと。

機銃(正確には銃身カバー)はメッキパイプに交換。前から見て水平に並んでいると俗に言われているが、実際には厳密な水平ではない。

 

<塗装と仕上げ>

考証

 エアロマスターデカール48−015を使用して、56FGのシリング機を再現する。本シートは現在入手困難だが、最近(2004年春)同じくAMDから発売された48−648に含まれている。サンダーボルトといえば56FG、というほど有名部隊でありながら、その現地迷彩パターンは各機ごとに異なるため、機体全体が把握できず、モデラー泣かせでもある。珍しく本機は、ほぼ全面が判明しており、鮮明なカラー写真もあって製作意欲をそそる。

 左側面はズバリ写真が残っている。時期により尾翼や機首のパターンが異なるので注意。この写真では、大型でジャイロ付きのK-14ガンサイトを装備している(作品は間違い)。右側面はシリング機のものとされるカラー写真を参考にする。シリアルNoが写ってないが、コードレターの「S」が確認できるので間違いないだろう。この写真では主翼下面に白黒ストライプが見られるが、左側の写真では無しに見える。これは撮影時期の違いと解釈する。
 上面のパターンが分かる写真が製作当時なく、全くの推定で塗装したが、製作後に刊行されたウォーペイントシリーズのP−47特集号に、左翼全てと右翼の一部がはっきりわかる写真があるではないか!!!。完成後に主翼上面のみ塗り直し。
 胴体左右含めて、迷彩パターンはできるだけ写真に近づくよう努力したつもり。これからシリング機を製作される方で、資料をお持ちでなければ参考にしていただきたい。


ウォーペイントシリーズの実機写真とほぼ同じアングル。

実機写真では、右側垂直尾翼は主翼の陰でよく見えない。よってパターンは一部推定。また3連バズーカを下げている。

 上面はカラー写真の色調を見ても、RAFのダークグリーン、ダークシーグレーで間違いない。下面では、主脚カバーは明確に無塗装だが、カウリングは下面までグレー。一方、主翼下面はグレーにも無塗装にも見える。結論として、実機は無塗装機を現地迷彩していること、尾翼下面に黒帯があるように見えることから、カウリング以外の下面は胴体も含め無塗装と判断する。主翼パイロンも無塗装としたが、写真ではグレーにも見える。パイロンのみ他の機体から流用したのかも知れない。56FG機の特徴として、味方対空砲の誤射を避けるために左翼下面にも国籍マークが描かれている。写真ではシリング機はかなり大きめで、モデルでは60インチサイズとするが、55インチかもしれない。

 細部では、風防内部の胴体後部上面をオリーブドラブ、ヘッドレスト部を含むコックピット内部はダル・ダーク・グリーンが正しいが、製作時はそんなことは知らずジンクログリーンで塗装。計器板、風防内アンチグレア、風防枠内側、ヘッドレストのパッドは黒。脚収容部、脚カバー内側、翼端燈断面、その他機体内部はジンクロイエロー、脚柱、プロペラハブ、カウリング内部は無塗装銀。主車輪ホイールは、縁を銀に残して赤で塗られている。


上面の迷彩パターンは、ウォーペイントの写真を載せるわけにはいかないので、これで我慢していただきたい。

 

使用色

ダークグリーンは特色のイギリス機用をビン生で使用。ダークシーグレーは特色のミディアムシーグレーを基本に、部分的に明度を下げて使用。銀は8番の銀にクリアーを加えたものを基本とし、パネルにより黒を加えて3段階程度に塗り分ける。目立たない下面なので、色調の差は強めに。
 写真のイメージから、機首は鮮やかな赤にしたかったので、特色のサンダーバーズカラーの赤を基本に、少量の黄色、微量のRLM23を加える。赤を明るくするには白でなく黄色を混ぜる。白だとピンクになってしまう。方向舵の黄色は黄橙色に少量の青を加え彩度を下げる。黄色に補色の紫を加えるのと同じである。国籍マークのインシグニアブルーだけは自作の色でないと満足できない。これは黒と紺を半々に白で明度調整したもの。

 タイヤはRLM66ブラックグレー。ちょうど土埃で汚れたゴムの色で、陸上機にはいつもこれを使う。艦載機はもう少し黒くする。このグレーは便利な色で、ダクトの奥とか、フラップ類の内側など「目立たなくごまかしたい」「何色か分からない」というあらゆる部分に使える。黒よりも目立たない。

塗装

 風防のマスキングは、スジボリが弱くセロテープ法では失敗しそうなので、細切りマスキングテープ法とする。後半部は曲面になるので、曲率を変えた細切りテープをつないでいく。

 下塗りとして、縁部等の色透け防止、窓枠内側色、銀塗装の下塗り(塗膜厚の確保)、尾翼の黒帯を兼ね、黒を吹く。方向舵部に発色のための白を吹いた後、黄色を吹きマスキングしておく。次いで上面グレー、下面と窓枠の銀、窓枠マスキング、上面グレー、上面グリーン、と吹いていくとマスキングを最少にできる。迷彩色の境はハンドピースを最少に絞ってフリーハンド。1回で仕上げるのではなく、境のぼやけを反対の色で再度攻めるという行程を繰り返す。実機写真では機首部が暗いので、ごく薄く溶いた黒をオーバースプレーする。


国籍マークの白はデカールを使用している。シルクスクリーンのデカールを使用すれば、塗装とほとんど遜色ない仕上がりとできる。

60インチのマークはデカールがなかったのでマスキングして白塗装。

 

デカール貼り

 下準備としてシルバリング防止のため、クリアーを吹いておく。できるだけ余白のニスをカットし、マイクロのゾル、セットを併用して貼っていく。エアロマスターのデカールは、コードレターが若干大きめで、撃墜マークの黒が無視されている。HAIRLESS JOE(ノーズアートの原始人:当時のコミックのキャラクターらしい)の色使いには、一部ミスがあるが気にするほどのものではない。バックの白丸は下地を白で塗装しておく。

ウェザリング

 いつものパステルと面相筆。墨入れにエナメルシンナーを使わないのは、それによってプラの強度が低下したり、ラッカー塗料が拭き取られ、せっかくのグラデーション塗装が消えることを嫌ってである。
 その後、ツヤを整えるためフラットクリアを吹くが、機首の赤と方向舵の黄色、下面はツヤ有りのまま残す。


パネルエッジを明るくすると、外板に段差があるように見える。前部風防は、胴体となだらかにつながっているのでパテを盛る。

迷彩のぼかしの部分に、面相筆で塗料のかすれた感じを描き込む。境界が不連続になり、自分では結構気に入っている。

 

完成

 以上で完成。タミヤと並べると胴体側面形が少々スマートだが、単体で見ればなかなかのフォルム。特に斜め上方からの視点、つまり最も一般的に模型を見る視点からは、タミヤより実機のイメージをよく表している部分もあると思う。

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