P−51Dマスタング製作記 その2

 




 

<考証>

■ マーキング

 超メジャー機だけに、魅力的なマーキングが多く、迷う。結局、ブルー・ノーズ第352FGのジョン・メイヤー機とする。相変わらずのミーハー路線で、少々恥ずかしいが、派手な割りに塗装が簡単なのも大きな理由。

 メイヤーのデカールは、最近イーグルストライクから「PETIE 3rD」が発売されたが、人気のためか入手できず、古いAMD48−072を使用し「PETIE 2nD」とする。このデカール、HOのレターがかなりオーバー・スケールで、シリアルの文字間が狭い。メイヤーのマスタングは3機あるが、残るはB型の「LAMBIE II」。

 PETIE・・の文字は、スコア26機の状態では黄色だが、デカールは白。16機の状態の写真では白に見える。しかし、この状態ではスコアも白か?。写真は小さくて不鮮明。青鼻の塗り分けラインは個体差がある。当機はカーブの曲率が大きく、塗り分け線が上方寄り。モデルでは私の好みを優先して、プレディ機を参考にする。

 水平尾翼には15インチの黒帯。主翼、垂直尾翼にはない。インベイジョン・ストライプなし。3rdには主翼黒帯がある。フラップの歩行禁止赤塗装は、右舷側には記入されてない機も多いが、当機の右側の写真は未入手のため確認できず。

 本機の写真は、オスプレイ和訳「第8航空軍のP−51マスタングエース」や、スコードロンの「P-51 Mustang」などにある。また、こちらのサイトにもあるので、ぜひ参照されたい。PETIE・・の黄色や、機首横のエアフィルタ吸入口が無塗装の写真が確認できる。
 ところで、このサイトなどでは、メイヤーの撃墜数は23.5機となっているが、機体には26個のマーク。公認と自己申告の違いだろうか。


 

■ 機体の特徴

 本機はイングルウッド工場製P−51D−10NAシリアル44−14151で、キャノピは丸いタイプ、バックミラーなし。ガンサイトは、ガラスが縦に長いN−9。モデルはジャイロ式K−14Aで、間違いだが後の祭り。排気管はフェアリング付きで、残念ながらモスキットは使えない。増槽は75ガロン水滴型タイプ。タイヤは一般的な菱形パターン。

■ 脚庫

 脚庫内部の塗色を、手持ち写真で確認するが、あれだけ当時のカラー写真が残ってながら分からない。インターネットで教えを請う。
 結論は、オリジナル状態のD型の実機写真から、後方側壁となるメイン・スパーと両車輪間の隔壁がジンクロ・イエロー、天井等は銀色。

 車輪カバー内側は、いろんなカラー写真を穴のあくほど眺めたが、私の印象では無塗装。カバー中央に当て板があるが、B型でジンクロ黄の写真が確認できる。脚柱カバー外側にはリベットが見られるので、無塗装か。
 以上、私なりの脚庫の見解。写真や情報を提供いただいた諸氏に感謝申し上げる。

 と書いたところで、その後新たな事実が判明。詳しくはP−51Cの項をご覧いただきたい。


側壁はジンクロに塗っているが、写真ではよく分からない。当時のもこんな感じに写っている。

 

<塗装> 1/30追加

■ 試し塗り

 銀塗料は各種販売されており、迷ってしまう。不要パーツで、まず試し塗り。吹きっぱなしでの輝きは、アルクラッド(以下A)のクローム・シルバーが一番。次いでGISクレオス(以下G)の新色、クローム・シルバー。Aポリッシュド・アルミニウムもほとんど同一。これは粒子が粗く、ギラッとした輝き。Aは下地の状態に敏感。Gは鈍感。
 次いでGスーパー・ファイン・シルバーだが、厚吹き+ドライヤー強制乾燥でひび割れが生じるので注意。いずれもクリアー上掛けで輝きが低下。

 次にクリアーを混ぜて吹いてみる。クリアー上掛けと同程度の金属感。クリアにはGクロームが強く、Aクロームよりも金属感が残る。上からクリアーを重ねても輝きに変化なし。マーキング塗装や、デカールを考慮すると、この組み合わせが実用的と判断。

■ 調色

 機首のブルーは、インディーブルーに3割ほどシーブルーを混ぜ、微量の白で明度調整。Ethellの写真集に352FGのB型があるが、これはかなり紺に近いブルー。先のサイトのカラー写真でも、結構濃いめだが、モデルでは自分のイメージで、少し明るめ。まだ、おもちゃっぽいので、グレーをもっと多くすべきだったか。

■ 銀塗装

 窓枠に黒、下塗りに薄くサフ。下塗りを兼ね、#8銀+#46クリアを全体に吹く。主翼とラダーをマスクして全体にGクローム+#46クリア。エルロン、フラップはAクローム、エレベータはGクロームの吹きっぱなし。

 細部は、さながら銀塗料のカタログ。排気管、周囲のパネル:Gスーパー・ステンレス、車輪カバー表、ホイール表:Aホワイト・アルミニウム、車輪カバー裏、脚カバー両面:Aポリッシュド・アルミニウム、燃料タンク:Gスーパー・ファイン・シルバー、尾脚カバー:Gクローム・シルバー。いずれも吹きっぱなし。ホイール裏、脚柱:#8銀+クリア。


銀塗装の違いを見て頂きたい。今回使用の銀塗料、全部で5000円以上。

主翼と胴体はかなり輝きに差があるが、写真にすると、あまり違いが出ない。

 

■ マーキング

 銀塗装の後にマーキング塗装。機首の青、国籍マーク、レター、歩行禁止線はマスクして吹き付け。銀との境にはみ出すと修正不能だから、まずクリアを先に吹く。インシグニア・ブルーは、コルセア5Nのグロス・シーブルー。白は#1。若干下地が透けて見えるのは気のせい?。

 HOとMのレターは、ハセガワのデカールを下敷きにテープを切り出す。HOの上端は、丁度パネルラインにあるが、モデルでは高さ11mmにしたところ1mmはみ出し。白を3割ほど混ぜ、かなり明るく調合するが、周囲の銀の影響で真っ黒に見える。


星の位置決めは、こんな手順。

シリアルはテープをガイドに1つ1つ貼っていく。#8銀のアルミ・ドープの感じが気に入っている。

 

■ デカール

 機体全体の写真が残されているスコア16機状態とする。シリアルは、文字をバラバラにして、正しい間隔に貼る。
 デカールを貼り終えたら、アルクラッド部分を除き、スーパークリア+#2000ペーパー+コンパウンド。主翼タンクの丸い注意書きは、クリア厚吹きして研ぎ出し。ついついポリッシュマニアになって、ピカピカ。おもちゃのよう。なお、Aクロームはコンパウンドで曇るので注意。

 パーソナル・マーキングは研ぎ出し中にデカールが削れて、あわててストップ。デカール表面が凸凹で不満。相変わらずデカール貼りが下手くそでガッカリ。部隊マーク”little bastard”背景の青は、デジカメとの相性か、実際より相当明るく写っている。

■ 小物 2/7追加

 特記以外はタミヤを使用。脚柱は、省略されているディティールを再現。オレオ下方の出っ張りは、間を削って穴を開ける。湾曲部分は左右共通の部品で、トルク・リンク基部が両側に付いているわけ。Bのパーツには車軸部分に円盤状のものがあるが、これは地上牽引のバーを引っかける部品なので、穴を開けるとよい。ハセガワ主翼との相性は良い。

 脚カバーの縁を薄くするのは定番工作。脚柱カバーには切り欠きがあるので、前側だけは埋める。柱との結合リンクをプラバンで置き換え。タイヤはトレッドをスジ彫り。着陸灯は、裏にアルミホイルをクリアで接着。タミヤのはちょっと大きすぎ。排気管には穴を開ける。

 燃タンのヒケをきちんと処理しなかったら、目立つなあ。振れ止めのみハセガワ。実機とは少々形状が異なるが、雰囲気重視。燃料パイプをアルミパイプで追加。これは自由に曲がるので作業がしやすい。
 プロペラ・ブレードはハセガワ。デカールを貼ってクリアをぼってり吹いて研ぎ出し。


トルク・リンクは、穴を開けるより、片側をプラバンで置き換えるのが簡単。片方を残すのがミソ。

脚柱カバー固定のため、上部に真鍮線を差す。エッチング・ノコでトレッドを彫る。

燃料タンクのパイプはアルミパイプ。

足回りの出来上がり状態。

 

■ エレベータ他の考証

 エレベータは、D−20NA(s/n44−63560)、−25NA(s/n44−72627)以降、及びD-20NTから金属外皮に変更される、との指摘を頂いた。D−10−NAシリアル44−14272の写真を見せて頂いたが、これは確かに羽布張り。ただし、レトロフィットあり。

 もう一点。排気管のフェアリングは青色の可能性、とのご指摘。よく写真を見ると、ノーズのブルーと同じ明度。まあ、焼けた金属の色の可能性も無くは無く、その方がカッコいいから、そのままにしておこう。でも両面テープの固定だから、いつでも直せるのだ。

■ メッキ・シルバー

 クレオスのメッキ・シルバーを試す。驚異的な金属感。ただし表面は極めてデリケートで、こすっただけで曇る。当然クリアは×。結局、以前からあるメタルカラー(塗って磨くやつ)とよく似た使用感。飛行機模型には、限定的使用に留めるのがよいだろう。

■ 仕上げと完成

 ピカピカ仕上げなので、いつもの水溶きパステルでスミ入れするのみ。アルクラッドのクロームは、石けん水でも曇る。再度吹きなおし。

 予想外に時間がかかって出来上がり。今回は銀塗装の輝きが主題なので、磨き上げたが、実機ではこういう状態はあり得ず、ノーズの青やインシグニアは1/4艶消しぐらいがリアルだろう。銀塗装も、光線の状態ではクリア層に浮いた粒子がいかにも塗装っぽく見えることがあり、まだまだ満足のいくものでない。

 また、キャノピ回りの工作に不満が残る。胴体の切り離しは意味のない工作で、左右の接着面を削るだけで十分。ただ、ハセガワをベースに胴体幅を修正するというアプローチ自体は、現時点では総合的にベストなD型を手中にする方法であると思う。いつかそのうち、リベンジしたい。そう思ってお気に入りの塗装は残してあるのだよ。

 けどまあ、出来上がって写真を見ると、不満や苦労も忘れて至福の時。なお、考証面で完成後判明した事項があるが、P−51C、1/32タミヤP−51Dの項に記述しているので参照願う。
 最後に、資料提供その他ご支援いただいた方々に、改めて感謝申し上げる。

■ 参考資料

1 P-51 Mustang In Color Photos from World War II and Korea Motorbooks International
2 P-51 Mustang Nose Art Gallery Motorbooks International
3 North American P-51 Mustang A Photo Chronicle Schiffer Military History
4 P-51 Mustang Squadron/Signals
5 P-51 Mustang In Action Aircraft No.45 Squadron/Signals
6 The Spitfire, Mustang and Kittyhawk in Australian Service Aerospace Publications
7 Monografie Lotnicze 57 North American P-51 Mustang cz.3 AJ-Press
8 FIGHTER COMMAND American Fighters in Original WWII Color Motorbooks International
9 KOREAN AIR WAR Motorbooks International
10 WWII WAR EAGLES Global Air War in ORIGINAL COLOR Widewing Publications
11 WWII PACIFIC WAR EAGLES China/Pacific Aerial Conflict in ORIGINAL COLOR Widewing Publications
12 The Mighty Eighth In Color Specialty Press
13 The Ninth Air Force In Colour UK and The Continent - World War Two Arms and Armour Press
14 ACES OF THE EIGHTH Squadron/Signals
15 AIR FORCE COLORS Volume2 ETO&MTO 1942-1945 Squadron/Signals
16 AIR FORCE COLORS Volume3 Pacific and Home Front,1942-1945 Squadron/Signals
17 Checkertails The 325th Fighter Group in the Second World War Squadron/Signals
18 世界の傑作機(新版:A〜C型、D型以降の分冊) 文林堂
19 世界の傑作機(旧版:A〜C型、D型以降の分冊) 文林堂
20 航空ファンイラストレイテッドNo.52 P−51ムスタング 文林堂
21 モデルアート臨時増刊No.401 P−51マスタング モデルアート社
22 エアロ・ディティール 13 ノースアメリカンP−51Dマスタング 大日本絵画
23 世界の戦闘機エース 17
第8航空軍のP−51マスタングエース
大日本絵画
24 オスプレイ軍用機シリーズ 25
太平洋戦線のP−51マスタングとP−47サンダーボルトエース
大日本絵画
25 ミリタリーエアクラフト 92年1月 戦車マガジン
26 ミリタリーエアクラフト 94年3月  デルタ出版

 

 メイヤー機の写真は、「PETIE2」が、資料14にスコア18機の全体と26機のコクピット付近、23に16機の全体がある。「PETIE3」は2、「LAMBIE II」は3に。

 7は、工場製作中の写真や、蛇の目塗装機など見所が多いが、チェコ?語で読めない。12は、印刷が悪いのが残念だが、破損した垂直尾翼、B型の車輪カバーのジンクロ塗装、Bの機銃パネルの裏のジンクロ黄色の写真など、見所はそれなりにある。8〜11は素晴らしいカラー写真集。印刷も上質で、リアルな飛行機模型を目指す人は、必ず買うべし。8は「Carrier Air War」と合本になって「Air Command」となっている。

■ 関連サイト

 これ以外にも沢山あるはず。良いサイトをご存知の方、ぜひご一報を。

第352FG
OLD CROW
Airliners .Net

 




ということで、本項おしまい。




HOME