彩雲(ハセガワ1/48)製作記

2003.8.3初出

 

はじめに

 発売と同時に購入し、タミヤのサンダーボルトと並行して作り始める。サンダーボルトに気合いが入り過ぎ、息抜きに彩雲を作る感じ。したがって製作コンセプトは肩がこらないこと。同時に、手抜きがどれほど仕上がりに影響するかをテストする。

 だいぶ出来上がった頃、スケビの彩雲特集号が発売。知らなかった事実てんこ盛り。フラップエルロン?水平尾翼可動?翼端削ぎ上がり?なんだそれは。まあ、知らなかったが故に楽しんで作れた面もある。
 それにしてもスケビの作例は素晴らしい出来。特に凹みリベットの美しさにはため息。こんな硬いプラでよく打てるものと感心してしまう。

キット評

 プロポーションは、特に厳密なチェックをしてないが、私の彩雲のイメージどおり。自分でいいと思ったときはアラ探しはしない。垂直尾翼がずいぶん薄く感じるが、実機も結構薄く、先端は尖っている。
 モールドで特筆すべきは布張り部で、少々リブテープがごついが、実機を正確に表現しており、大歓迎である。クリアパーツは、薄さ、歪みの無さ、窓枠モールドなど最高の出来。窓閉め派モデラーへの配慮も嬉しい。ただし後述するように一部配慮が足りない所があり残念。
 プラは、ゴム質の少ないハセガワ特有の硬いもの。タミヤなどの柔らかいプラに比べると、作業性が悪いので換えて欲しいが、これはこれで強度、モールドの再現性、ヒケの少なさ等で有利な面があるのだろうか?

コクピット

 私にとっては十分過ぎるディティール。合わせも良いのでストレス無く作業できる。ただし、窓を閉める場合、中の仕切り窓パーツを少々かさ上げする必要がある。97艦攻と同じ自作中島系機内色(注)で塗装。シートクッションは、ダークアースに黒を混ぜるといい感じの色になる。帰投方位装置は、基部のみ取り付ける。資料Aの実機写真でも、訓練中なのか、取り付けられてない機が見られる。

(注)この色は間違い。本ページ末尾参照のこと。

クリアパーツ

 別パーツの風防上部は合わせが悪く、ペーパーとコンパウンドの出番となる。また、前部風防下部の凹みは、表から見えてしまう。ここは胴体に凹みをつけて欲しかったところ。胴体後部との合わせも悪い。下面の小窓の合わせも同様にいまいち。


風防上部の合わせに注意。赤丸部の凹みはマイナス。

パイロットシートのみフチを薄くして軽め穴を開口。

 

胴体組み立て

 後部胴体はクリアパーツより狭いので、プラ板を間に挟んで接着する。風防からカウリングにかけてのアウトラインがS字状に曲がっているので削って直線にする。垂直尾翼前縁を尖らせる。
 アンテナ柱の基部が薄く、支持力に欠けるので、対策が必要。モデルは塗装後に気付いてプラ材を埋め込んだので、汚い仕上がりとなる。胴体右前下の小エアインテイクは整形の邪魔なので一旦切り取って再接着。大まかなスジ彫りはエッチングノコで軽くさらう。

カウルフラップ

 実機写真を見ると、762空13号機のカウルフラップは、インストで不使用に指定されているタイプ。パーツは開きすぎて、スマートな彩雲に似合わないので、少し閉める。各フラップ間をエッチングノコで切り離し、1枚ずつ折り曲げる。


カウルフラップを少し閉める。

 

主翼組み立て

 主翼上面パーツをまず胴体に接着し、次に主翼下面を接着する。フラップ裏の段差がうまくかみ合うように注意。翼端が垂れ下がっていたので曲げて修正したところ、プラが硬く割れてしまう。お湯を使うとよいかも。彩雲のねじり下げのデータが不明だが、日本機の常で多少はついてるだろうとの思い込みで、少々ねじる(製作後に出版された新版世傑によると、ねじり下げなし)。前縁スラットのステーの太さも、出来上がってしまうと気にならない。
 フラップの上部に位置する主翼上面は、布張りのようにも見える。資料@に根拠となる121空101号機の写真がある。構造的に応力のかからない場所だから、納得できる。この部分が金属だったことを示唆する資料もあり、私としては製造工場または時期の違いで両方存在したのではないかと勝手に思っている。


脚庫のフチを削り、その分収容部をプラ板でかさ上げ。境目は伸ばしランナーのパイピングでごまかす。
できあがってみると、あまり効果なし。

翼端燈は東急ハンズで購入した色つきアクリル板。
電球に見立てた小穴には銀色を流し込んだが、色なしの方がリアル。

 

脚回り

 3枚の主脚カバーのうち「上」と「中」は0.2mmプラ板を切り出す。「上」は「中」の内側に取り付くので注意。「中」の上端は主翼下面にぴったりつく。薄くすることで脚との取り付け位置関係が狂ってくるから、適宜プラ板などを挟んで修正する。「下」と胴体につく1枚は表から薄く削る。リベットはオーバーなので切り取る。
 オレオのトルクリンクが寸詰まりな形をしているが、実際はもっとスマート。  


ブレーキパイプは、流行の太さ2段階。

前方側は、薄フチ加工していないが、これで十分。

 

その他細部

 オイルクーラーのパーツは2種類あるが、インストの部品番号は間違い。箱絵が正しい。何も考えず作ってしまい、完成後に気付いて付け直す。筆塗りでタッチアップしてフラットクリアを吹いたら、そこそこ見られるようになる。
 スピナー後端の凹凸が目立つので、丁寧にサンディングするとよい。作品は未処理。

塗装考証

 第762航空隊偵察第11飛行隊13号機とする。ほかに20、22、26、34、50の機番が確認できる。34号機は操縦席右前方に桜のマーク1つがある。大きさは4mm程度。
 資料Aでフラップの上面の緑黒色、主翼上面に歩行禁止線と「ノルナ」の文字が確認できる。歩行禁止線が三角の突起にかかるが、実機はそうではない。その他細部は不詳だが、脚カバー内側、脚柱、ホイル、主脚とフラップ収容部は銀とする。

 日の丸は、最初からフチなしではなく、塗りつぶされている。資料Aに白フチつきの762−13号機の写真がある。しかし主翼のフチの幅は不明。資料@の試作機では細い白フチなので、量産機も同じだろうと推測。そういえば零戦、隼など、中島製機の主翼白フチは細いものが多い。

塗装

 上下面の塗色は97艦攻や隼で使用した自作カラー。今回の赤はサンダーバーズ・カラーにグレーを3割混ぜたもの。日の丸の塗装手順は、写真のとおり。全体にフラットクリアを吹いてから塗料の段差をペーパーでならす。
 今回はあえてクリアパーツの断面を着色しなかったが、風防ではシルバリングもなく、案外神経質にならずとも良いようだ。ただし尾燈は接着面が目立つ結果に。


全体に銀を塗装。
味方識別帯のみ先に塗装しマスキング。

マスクして下面を吹いたところ。
パネルライン沿いには、控えめに暗色を吹く。

まず右翼のように位置決めにテープを貼る。次に、胴体のように一旦全部貼り、左翼のよう枠をはがす。

胴体部のクローズアップ。
フチの部分は環を切ると貼りやすい。

フチを塗装し、再度テープを貼り、今度は中央部をはがして赤を塗装。歩行禁止線もマスクして塗装。

出来上がってスミ入れも済んだところ。

 

ウェザリング

 下面でリキテックス水性アクリル絵の具を使ったところ、乾燥すると拭き取れない。モデル表面のつや消しが強すぎたのも一因。そこで、上面はガンダム・ウェザリング・カラーを使う。黒とサンドを適当に混ぜ、せっけん水で薄めて筆塗り。

小物

 アンテナ柱、ピトー管、脚出視示棒、機銃は真鍮棒。機銃の一段太い部分は紙を巻き瞬間で固める。「の」の字状に巻くのでなく、「Ω」状にピンセットで挟むと楽。アンテナ線は、テグスをマーカーで着色。アンテナ柱は金属でも強度が低く、ほとんどテンションはかけられない。


自作インレタを貼る。
彩雲の動翼布貼り表現は適切。大歓迎。

ファインモールドの照準環で手軽に精密感が向上。

 

完成

 機番、フムナ、プロペラ警戒線は自作インレタ。この仕上がりはインレタならでは。一度使うとデカールは使う気になれない程。ただ、尾翼の機番は気持ち小さめであった。汚しのふき取れなかった分は地色をドライブラシ。
 以上で完成。サクサク作ってあっという間に出来上がり。素組こそ模型の王道と再認識した次第。

追記:製作時は新版世傑は未発売。このカラーページにあるスミソニアンの現存機を見れば、コクピット内部色はもっと緑が強い。

参考資料

@ 旧版世界の傑作機 文林堂
A 航空ファンイラストレイテッドNo.109
 海鷲とともに 日本海軍機4年間の残像
文林堂
B 航空ファンイラストレイテッド 三〇二空 文林堂

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