ファイアフライVC(タミヤ1/48)製作記
2012.1.21初出
![]() |
さてタイトルを見て「あれ?」と思った人は相当の(でもないか)シャーマン通。タミヤのキットはファイアフライICと呼ばれるタイプ。当初はこれを素組みで作り始めたんだけど、ネットで写真を確認すると、素組みでは若干問題があることが分かり、さらに写真を集めて眺めてるとVCが無性に作りたくなって、急遽方針変更する。VCって、延長された車体が長砲身にマッチして、やたらカッコイイんだよね。これ見ちゃうとICは寸詰まりに見えちゃって・・・。3ピース・デファレンシャル・カバーもいい味だし。 |
![]() |
もっとも、これらはM4A1シャーマン(鋳造車体)にセットされているので、これを買ってくれば即解決。これ、メーカーの販売戦略かな。でも、もともと安いキットだし、残り部品でちゃんとM4A1も作れるし、気にならない人は素組みで十分だし、問題点とまでは言えないだろう。メーカーが潤って新規キットを開発してくれるなら許してあげる。 |
![]() M4A1シャーマン。タミヤのHPから画像拝借。 |
ついでに、若干の不満を。M4の鋼板溶接車体の前面装甲板はバリエーションがあるので、ここは差し替え式にして欲しかったな。とくに円筒状のハッチ前方に直視バイザーがついたタイプはポピュラーなのでね。履帯もゴム平板タイプと鋼製V字滑り止めタイプが欲しいが、これはアフターパーツメーカーの仕事か。
この一部がイギリスで17ポンド砲を搭載してファイアフライとなるが、それは当初 M4A4 = シャーマンV から改造され、これが生産終了となると次に M4 = シャーマンI から改造となった。末尾の「C」は17ポンド砲搭載を表し、「なし」は75mm砲、Aは105mm砲、Bは76mm砲となる。したがって、ファイアフライは IC と VC の2タイプしかない。ところで、車体の型式をローマ数字、武装をアルファベットで表すのはRAFの戦闘機と同じだね。頭に「Mk.」を付ければ完璧だ。 シャーマンV すなわち M4A4 は、自動車用V6エンジンを5基星状に結合した30気筒という、考えただけで整備が大変そうな化け物エンジンを搭載、そのため車体が3〜40cm延長されているという他形式にない特徴を持つ。デフ・カバーは3ピースタイプのみ。車体後上面や後面も他とディティールが異なり、この改造が今回製作のキモとなる。 ついでにシャーマンI (= M4)は、初期シャーマンの最もポピュラーな型で航空機用空冷星形エンジンを搭載する。当初は鋼板溶接車体だが、後期には前面のみ丸っこい鋳造となったハイブリッド、もしくはコンポジットと呼ばれるタイプが出現し、ファイアフライICも鋼板溶接とハイブリッドの両方が存在する。記録写真ではハイブリッドの方が多数派かな。 |
![]() 現存するシャーマンVCファイアフライ。延長された車体がカッコイイのだ。 |
お次はファイアフライの車体、サスペンション、デフカバー、履帯の違いなど、バリエーションの解説を延々と続けたいとこだが、読む方もツライだろうから後に回そう。これらの詳細と実車写真は、裏庭の物置きにしまっておくので、鍵をお持ちの方は覗いてみてくだされ。持ってない方はメールいただきたい。
では製作開始。まず車体下部を延長する。ネットで入手した寸法入り図面では1/48で7mm延長することになるが、模型では履帯半枚の整数倍でないと組み立て式履帯がぴったり収まらない。近いところで8mm = 履帯2.5枚分延長する。つまり一周で5枚増やすわけ。これに伴い、2番目のサスは3.5mm、3番目は7mm後退させる。←ここは図面どおり。厄介なのがダイキャストのシャシーだ。ホントこれは止めて欲しいよ。 |
![]() でもまあ、その気になれば切れる。なまくらなエッチングソー(厚手)でも片側10分で終了。サス基部を削るのに片側10分で、合計40分。 |
![]() エバーグリーンの0.8mm厚プラバンなどで7mm延長。後端の装甲板はI型より角度が寝ているのに注意。VCは後端に荷物箱がある。 |
履帯はキットを使い、M4A1キットの余り履帯から5枚追加する。シャーマンの履帯はピンと張っているが、それでも上側では若干の弛みがあるので、指で曲げる。起動輪、誘導輪の下方も同様曲げてやる。起動輪はギザギザタイプを選択。転輪、誘導輪は穴なしだ。 |
![]() 溶きパテをなすりつけて鋳造肌を表現。おや、吊り下げリングが折れている(泣)。 |
![]() タミヤM4A1にはこれら全部が入っている。ぎざぎざ起動輪も2種類ある。 |
|
![]() T48履帯装着タイプは、車体前面に斜めの追加装甲板がある。画像では未装着。 |
![]() 延長された車体、サスペンションの間隔、追加荷物箱を見ていただきたい。 |
引き続き、ディティールを作り込んでいく。とりあえず形になって満足したので、またヘルキャットに専心しよう。
|
![]() 上記特徴がよく分かる。車体ハッチ前方(追加装甲板の背後)はキットと異なり直視バイザー付きだが、これが大多数だ。 |
![]() 車体後端の装甲板がI型とV型の識別点。鋼製履帯はVの谷が広いT54E1にダックビルつき。 |
![]() 少数派の穴あき転輪。VVSSサスも珍しい初期型。起動輪は丸形。誘導輪は不明。履帯は鋼製か。 |
![]() これまた非常に珍しい前期型ワンピース・デフカバー(シャクル基部の形で判別可)だ。履帯は接地面が平らなゴムのT51。 |
|
![]() キットと同じゴムV字ブロックのT48履帯。スカートがまだ残っている。予備履帯の装着方法にはバリエーションがある。 |
![]() 砲塔右の追加装甲板「なし」が確認できる。履帯はT48。 |
![]() 装備品や偽装で特徴がよく分からないね。砲塔後部に小さい追加荷物箱がある。履帯は鋼製? |
![]() 砲塔両脇にタイフーンと同型のロケットランチャーを装備している。車体前方は見えないが文献によるとハイブリットとのこと。 |
私が製作してるのは、少数派の第2グループ。特徴は、砲塔右と車体側面の追加装甲板あり、車体前方に斜め追加装甲板あり(その背後の形状はバリエーションがあるようだ)、履帯はT48が主流。他の特徴は第1グループと同じ。本ページでも画像掲載しているPrime Portalの現存VCも第2グループだ。 |
![]() 第1グループの特徴がよく分かる。このように砲塔後部に追加荷物箱がある車両も多い。履帯はVの谷が狭いT54E2か? |
![]() 現地製作?の砲身留めが目を引く。これも履帯はT54E2か。T54E1を履いた車両も多数ある。 |
![]() 砲塔左側の砲手ハッチでファイアフライと確認できる。履帯は小さな丸突起が3つあるT62かな? |
![]() IWMアーカイブ唯一の第2グループの写真。車体ハッチ前方は直視バイザーつき。追加装甲板が不明だが「あり」と推測。 |
|
![]() 円筒形の出っ張りを、プラバンとパテで、ナンチャッテ修正。機銃防水カバー取り付け部の細枠は、ファイアフライにはない。削り取る。 |
|
![]() 0.1mmアルミ板を3mm鉄球でぐりぐり。レンズは薄い塩ビ板。ともに2mmポンチで抜き、2mmバイスの穴にはめ込む。 |
![]() 車体に乗せるとこんな具合。 |
|
![]() まず、実車のリサーチ。IWMアーカイブから、ノーマル・V型。ファイアフライVCも当然同じ形。 |
![]() 回転ノコなどで不要部をカット。車体ハッチ接着後の泥縄作業なので、ハッチ前方のフチを残す。 |
![]() まず、向かって左の状態にプラ板とプラパイプで工作。次に直視バイザーを凹形に切ったプラバン、1mmプラ棒で。 |
![]() 追加装甲板を乗せてみる。グレーのプラ板はタミヤ製フィギュアのベース。吊り下げリング基部に0.3mmプラバンを接着。 |
せっかく作っても追加装甲板をつけるとほとんど見えない。
|
![]() ライトガードはホビボのM4A1(76mm)に付属。これでこのキットを買った意味があったというもの。予備履帯と予備転輪は仮置き。 |
![]() 後ろはこんな感じ。車体が伸びた分、車外装備品の配置もシャーマン I とは微妙に異なる。 |
それぞれのパーツの接着位置を写真でチェックすると、車体により微妙に差異がある。とくに、砲身クランプとハンマーの配置は違いが大きいが、斜め追加装甲板グループのVCでどうなのかは不明で、作品ではテキトー。テールライトとそのガードの位置も細かく違ってたり。ま、細かいことは・・・
|
![]() 冬季迷彩みたい? 足回りは取り外せるようにしてるので、未塗装。 |
![]() 車長ハッチは可動にしてみる。ちと開きすぎで、後ほど軸を太い真鍮線に交換して改善する。 |
塗装までには、もう少し細部を作り込む。
|
![]() ほとんど素組み。ハッチは可動。ライトガードなどD-up。部分的にサフを油絵用の筆でたたきつけて鋳造肌表現。 |
![]() キットパーツの形をテープに写し取り、焼き鈍した0.6×0.3mm真鍮帯金を曲げて半田づけ。 |
|
![]() 模型では、明るく調色したオリーブドラブの作品が多いけど、実物はもっと暗い。自由フランス軍のM5軽戦車。 |
![]() 撮り方のせいもあるが、これなど相当暗調。こんな感じに仕上げられた作品って、あまり見ないね。 |
![]() このM8装甲車の汚れ方も参考になる。人物や背景の色調と車両とを比較すれば、画像の色調の再現性はかなり高いといえる。 |
![]() 埃まみれでも、下地のODはそれほど明るくない。逆にタイヤの明るさにも注目したい。ヘルメットがまた黒光り。 |
![]() 次にシャーマンを何点か。このODもかなり暗く、緑味をあまり感じない。 |
![]() 何故かわからないが、鋳造車体のM4A1では泥と埃の汚れが著しい。 |
![]() 白っぽい泥と埃の下に暗いODが顔を出す。砲身だけは黒光りしている。 |
![]() M4A1の模型では、この画像あるいは上のイメージで塗ってみたい。 |
次に、英軍車両を見ていこう。これらに塗られた塗料の正確な色調は知らないが、手元のカラー写真から自分なりにイメージしてみる。以下IWMのアーカイブから |
![]() 英本土で訓練中のクルセイダー。あまり汚れてないので、本来の色に近いだろう。 |
![]() こちらも訓練中のチャーチル戦車。これらの塗色はわりと明るめ、かつ黄色味が強い。 |
![]() 英軍のシャーマン戦車。明るい土埃の下に暗い色が顔を出すのは米軍シャーマンと同じ。 |
![]() 写真の印象ではオリーブドラブと呼んでもおかしくないが、米軍のそれとはちょい印象が違う。ちなみにこの女性はとてもとても高貴なお方。 |
さて、ファイアフライの塗装がどうだったのか?が問題。 残念なことに手元にオリジナルのカラー写真はないので、想像するしかない。米国で生産されたM4A4はおそらくオリーブドラブで塗られた(飛行機を例に類推すれば、その色調は工場によりばらばらだった可能性はあるが)。それが英国に送られ、主砲が換装されるなどの改造を受ける。 改造部分にもペンキは塗られ、それは英軍使用色と考えるのが自然。で、それにあわせて車体もリペイントされたかどうだか。モノクロ写真を見ると改造部分と既存部分との色調差は見られない。なお、英軍車両の塗装色は、44年4月にSCC No.15 オリーブドラブと指定されたとのこと。ネットなどで調べると、米軍のODと色調は似ているらしい。
|
![]() まず、クレオス#361のRAFダークグリーンで全体を下塗り。足回りはそれに#22ダークアースと黒を加える。 |
![]() タミヤアクリルのダークグリーンとデザートイエローを混ぜ、軽く吹き付ける。 |
![]() アルコール落とし。燃料用アルコールが手元になく、無水アルコールを使ったところ、ちょいと落ちすぎ。 |
![]() ウェザリング・マスターのマッドを水溶きしてウォッシング。 |
![]() さらに埃色のパステル粉をまぶしたり、エッジに鉛筆粉を擦りつけたりして出来上がり。 |
![]() クローズアップ。砲塔のサフェーサの鋳造表現が効果的。車体の肩はキットそのままなので、比較されたし。 |
|
![]() ちゃらちゃらっと塗っただけだが、画像ソフトで明度を落とすと、なかなか迫力だ。さらに埃色を軽くオーバースプレーすると実車画像の雰囲気に近づくかな。 |
結果として、汚しの大部分はウェザマス水溶きで、アルコール落とし技法は仕上がりにあまり寄与してない。もう少し練習が必要だね。燃料用アルコールにも期待しよう。全体のトーンもまだまだ「大人しめ」で、もう少し大胆にいきたいところ。
|
![]() 下塗りはM4A1と全く同じ。クレオス#361のRAFダークグリーンで全体を、足回りはそれにダークアースと黒を加える。 |
![]() タミヤアクリルのダークグリーンとダークイエローを混ぜ、軽く吹き付ける。 |
![]() アルコール落とし。こんどは燃料用アルコールで。落ち方のコントロールができず、汚らしい仕上がり。これはこれで面白いという気もするが。 |
![]() タミヤアクリルのダークグリーン+ダークイエローを、再度軽く吹き付け、トーンを抑える。今度は大人しすぎか。 |
アルコール落とし補足。東急ハンズでコーヒーのサイフォン用というやつを買ってくる。成分はメタノールがほとんど。こちらはエタノール(無水アルコール)よりマイルドな落ち方だが、やはりコントロールが難しい。何故だか分からないが、初めはよく落ちて、だんだん落ちが悪くなり、そのうち全く落ちなくなる。適宜エタノールを追加していくが、狙い通りにいかない。 模型誌など見ると、上手な人の作品は本当に上手で、やり方が根本的に違うのかも。試しに、エアブラシで表面が塗れるぐらいたっぷりアルコールを吹いてみると、乾いてから表面が粉をふいたようになる。上画像はそんな状態。ということで、アルコール落とし塗装、大いなる可能性は秘めているものの、いまだモノに出来ず。残念。
|
![]() 「ロボ、出動だ!」「ムワッ(←意味不明)」 ハルナンバー「13」とスコードロン・マーク「□」は、カッティング・マシーンで。 |
![]() マーキングと細部塗装終了。シリアルNo.はインレタ。黄色は吹きつけの色味を失敗して面相筆で塗り重ねる。 |
![]() 軽くフラットクリアを吹いてから、水溶きウェザマスのマッドとサンドでウォッシング。凸部には鉛筆粉をすりつける。 |
![]() さらに錆色を中心に、汚しを加える。ペリスコープガードを延ばしランナーで追加。 |
車両本体はこれにて一応の完成とする。取り急ぎ完成報告、いざ静岡へ。
|
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
補足。ペリスコープ・ガードは、写真を見るといくつかのタイプがあるようだ。延ばしランナーをいきなりモデルに接着すると汚くなるので、プラ板の上で組み立て、1日置いてから切り取ってモデルに載せる。プラ用接着剤だが、固まればそれなりの強度にはなる。 水溶きウェザマスは、お手軽な割には実感のある汚れ方になるので気に入っている。やり方は極めて簡単で、水で薄く溶いてモデルに塗りたくり、乾いてから綿棒や筆などで拭き取るだけ。定着に難があるが、気になるならフラットクリアでも吹いてやる。それでトーンが落ちるが、再度水溶きウォッシングすればよい。水なので、プラや塗料を痛めない。シンナー吹く前は何度でもやり直しがきく。 ところで、埃や退色といった明色方向のウェザリングにおいては、暗色による「締め」が重要だと感じる。これは飛行機も同じ。本作の場合、鉛筆粉を凸部に擦りつけたり、錆色ウェザマスを適宜加えたり。それだけでは足りず、ダークグレイをドライブラシしたり。 シャーマンの塗装&汚しにおいては、車体側面の広い平面をいかに見せるかが一つのポイント。雨だれや錆汁など暗色ウェザマスで描き込む。やり過ぎは禁物。適度な「間」、「乱れ」を意識する。太さとか間隔とかのパターンが均一になると下手くそに見える。「1/f ゆらぎ」の理論だ。ゆらぎがあると、本物らしく見える(ハズ)。黒と白の碁石をよく混ぜてばらまく。白黒均一に散らばるかというと実は違い、黒いところと白いところが出来る。これもゆらぎ。 ということで、車両単体としては完成。それだけでなく、車載物資、フィギュア、ベース、軽車両まで仕上げて最終としたいところだが、あとはゆっくりまったりと。
シャーマン系は荷物を満載していないと「らしく」ない。当初は別売りレジンを買ってきて色を塗るだけのつもりが中々入手できず、それならとエポパテで自作する。記録写真を見ると、シート類を丸めて後部にドンと積んでいる車両が多い。ということでメイン料理はこのシートの塊。付け合わせにジェリカンや小シートなどを周囲に配置する。さてそのシート、布の感じを出すのに一苦労で、記録写真の中からシートが写ってるのを何枚もピックアップして手元に置き、それを見ながらディティールのイメージを切り取っては手元のパテの塊に投影していく。 今回初めてWAVEのミリプット・エポパテを使うが、なかなか使いやすい。気に入った。粘土細工のように柔らかい間に形を作るのでなく、固まってから彫刻刀で削る。ミリプットはサクサク削れるので実に気持ちがいい。ほとんど平刀一本で彫りあがる。考えてみれば、布は2次元なわけで、しわの寄った布は2次曲面の集合体と見ることができる。平刀で彫る曲面は2次曲面となるので、論理的には合っている。 |
![]() 一作目のシート。頭の中のイメージだけで彫刻したので、出来上がりがイマイチ。厚手の布らしく見えない。 |
![]() 二作目のシート。今度は自己満足。モデル上に置いてバランスのチェック。奥の茶色いのはタミヤ・エポパテ。 |
![]() 使用素材はコレ。右側のB剤は古いのか?周囲が茶色で切ると中が灰色。この配色、宇和島名産じゃこてんそっくり。 |
![]() 前側はまだアタリをつけている段階。 |
このシート、休憩中に車両の肩から天幕のように張ってる例もあり、結構大きなサイズのようだ。ところで、ドイツ軍はこの手の物資をあまり載せていないが(アフリカを除く)どうしてるんだろう? 小物はゲペックカステンに入れるとして、シート類は入りきらない。別途支援車両が随行するのだろうか。どなたかご存知?
さらに、ジープ。ファイアフライに添える小型車両としては、ティリーやユニバーサル・キャリアもありうるが、ずーっと昔のお手つきジープ(おっとタミヤは小型車両っていうんだっけ)を成仏させる。記録写真を見ると、英軍のジープには米軍とは違った「文法」がある。そのとおりに正しいクィーンズ・イングリッシュならぬクィーンズ・ジープにしてやろう。イタリア戦線のニュージーランド部隊でどうだったかは、この際考えない。 |
![]() 右、キットオリジナルと比較。縦だけでなく、横にも拡大。左は八頭身でハンサム。右のオヤジはちんちくりん。凸凹漫才か。 |
![]() 短いバンパー、その上のタイヤが1つの文法。片眼は灯火管制ライト、もう片眼は黄色い「A」というのも慣用句。 |
シャーマンとジープ、どちらもアメリカ製を蛇の目仕様にモディファイしているわけで、それを模型で並べるのもまた一興。
記録写真を見ると、イギリス戦車兵のユニフォームは、基本的なデザインは統一感があるが、細かく見ると様々なバリエーションがある。ウールの冬服、綿の夏服、オーバーオールのようなだぶっとした防寒服、さらに地中海戦域では半袖半ズボンもあり。膝のポケットも左のみ、左右両方、右はフラップのみ、といったバリエ。ズボンの裾は、絞った形が一般的だが、普通のずんどう形もあり。 当初は、上記バリエを意識せずに漠然と彫るが、「シワの神様」が降りてこない。やっぱ実物を見なきゃダメだな、ということで手持ち写真と見比べる。そうすると素材によってシワが全然違うことが分かり、戦車がイタリア戦線のマーキングなので綿の夏服にする。また、膝のあたりがゆったり太いのが英軍というかあの頃のズボンの特徴。こうなると、街を歩いていても人のズボンのシワのディティールを観察してしまう。そういう目でズボンを見ている人間って、一体世の中に何人・・・ |
![]() 再掲。前回更新時。タミヤキットは、ウール素材の感じだね。 |
![]() 何度か盛りと削りを繰り返した状態。プラとパテのまだら模様で、自分でも訳が分からなくなるので、溶きパテを塗って形を確認する。 |
ジープと運転手にも手を加える。米兵の下半身にはパテを盛って英軍支給服に。ヘッドもイギリス戦車兵に交換。ベレー帽になったとたん全てがイギリスっぽく見えるから不思議。上半身は別のイギリス兵で、前に伸ばした右腕との相性が悪く、肩のラインが不自然。腕につられて右肩が自然に前に出るように盛り削りするが、まだ不十分か。ここも針金を芯にムクのパテで作った方がよかったな。 |
![]() 右、車長は、さらにズボンを中心に手を加え、だいぶ「らしく」なってくる。シワの神様が半分くらい降りてきたかな。 |
![]() ズボンは太くする。細かいシワが綿の特徴。ウールはもっと大まかで柔らか。戦車に乗せると見えなくなるが。 |
英軍ジープ、車体前方の予備タイヤは空挺部隊独自のお作法らしいとの指摘を頂く。また、改めて記録写真を眺めると、イタリア方面の英軍ジープは米軍式をそのまま無変更で使っている例が多い。とはいえ、バンパーも短く切った後だし、模型的面白さを優先して当初予定通り英国スタイルでいくつもり。
|
![]() これにて組み立て終了、あとは塗装だ。ハンドルはフィギュアと一体化させる予定。 |
![]() 車体後方の文法はよく分からないので米式で。左側に予備タイヤをつけた車両も見られる。後方の荷物はもう少し彫刻を加える予定。 |
盛りながらヘラなどで形を作るか、削りながら形を作るかは、多分人それぞれの好み。私は削り派。削り過ぎたらちょっと盛ってまた削る。その他のコツとしては、普通の平刀より、刃先が緩くカーブした平刀がいい具合。端部や縫い目などのディティール表現が効果的。布の下にある物体を意識したり。
|
![]() 再掲。今回はこのイメージを狙う。白い埃の下にある暗い塗装がポイント。 |
![]() もう一つLIFEアーカイブから。全体のトーンは土埃色だが、ジェリカンや予備タイヤは暗色が顔を出す。反射板の赤が印象的。 |
イメトレを踏まえて(どこまで再現できるかはさておき)、本番塗装。基本はファイアフライと同じだが、細部を変更。 |
![]() ベースは#23ダークグリーン(英空軍機用)に黒を加える。ちなみに最近の#23はかなり明るく、RAFのダークグリーンとは相当色調が異なる。 |
![]() それにタミヤアクリルのXF59デザートイエローを極々薄く希釈して軽くオーバースプレー。 |
![]() 続いてアルコール落とし。このあとベース色でエッジにドライブラシ、水溶きウェザマスでウォッシング。 |
![]() 途中省略して車両ほぼ完成。後部のお荷物は仮置き。ハンドルは運転手の手と一体化してるので、ここには無い。 |
![]() 布はタミヤのXF59デザートイエロー+XF81ダークグリーンのベースにファレホのカーキ。黄色いAはミンシと一緒に作ったインレタ。 |
![]() 後から。LIFE写真に近づいたかどうだか。 |
|
![]() 茶色いのはファレホのカーキ、緑は同318米陸軍戦車兵、中間はそのブレンド。 |
![]() 荷物は接着してないので、気分で並べ替える。板切れは0.8mmプラバンにエッチング・ソーで木目をつける。黄色いジェリカンがアクセント。 |
![]() 下からの目線で。もう少しごちゃごちゃ感が出るといいのだが。 |
![]() ジープの荷物も紐かけして塗装。使用色はファイアフライと同じ。残るはフィギュアの塗装(とベース)だ。 |
![]() ポーズといい表情といい、上流階級出身の士官って感じ。ベースのフィギュアのポーズが曲がってて、随分直したんだけど。 |
![]() 左側。休憩中のリラックスポーズ。 |
![]() キザったらしいポーズだな。ズボンの太さと綿特有の細かいシワがアピールポイント。 |
![]() ベースフィギュアが日本人扁平頭なので、後頭部にもパテを盛っている。 |
![]() アップは、このあたりが限界。右目が腫れぼったいのは負のスパイラルのせい。右目側は筆先がすんなり入らないから塗りづらいのだ。 |
![]() ジープのドライバーは骨太豪腕軍曹タイプ。こっちは少々手抜き。ハンドルが邪魔で上手く塗れないし。 |
樹木は、ベースに直接植えるのでなく、モジュール式として、茶色く塗ったスチレンボードに穴を開けて差し込む。ベースに車両と並べてバランスを確認。車両が負けるので、少し低くする。このモジュールをベースに接着。段差はファンドで埋め、地面はテクスチャーペイント粉雪。どうせ塗装するから白でもいいのだ。アクリルのバフをベースにテキトーに混色して吹き付け、仕上げにウェザマスのアクリルシンナー溶きを軽くオーバースプレー。 |
![]() JOEFIX STUDIO製のドライフラワー。1/35ならこのままでいいかも。左下の小さいのが、上記加工済みの枝。緑色ラッカーで軽く着色。 |
![]() 草は鉄道模型用の細かい繊維(左)。これに薄茶色の繊維(中)を適当に切って混ぜ、ボンドで地面に接着。右は樹木の葉に使用。 |
![]() できあがり。イタリアの埃っぽい田舎道という設定。ベースは汎用として、今後も欧州舞台の車両達に使うつもり。 |
![]() 樹木と草のクローズアップ。車両とのスケール感のバランスを見ていただきたい。 |
|
![]() 展示会的配置はこう。相変わらずストーリー性の無い配置。ま、ベース外に誰かいるっている想定で。 |
![]() 写真にするならこの配置。ベースが小さいので、別の背景を用意しないと戦車の全体をフレームに収めるにはツライかな。自然光だから質感がリアル。下手な模型も上手に見える。模型撮影の教科書から外れるが、正面でなく横から光を当て、わざと一部が影でつぶれるようにすると、リアルっぽく見えるようだ。 |
![]() このベース、写真用背景としてはジープぐらいが丁度いい。アップだと布の表現がイマイチだなあ。まだ修行が足りない。 |
|