スピットファイア\c(ハセガワ1/48)製作記


 

<はじめに>

 タミヤのUaと同時進行で、ハセガワ\も製作開始。こちらは、より素組みに近く作るつもり。1.5機分の時間で2機の完成を目指すが、果たして目論みどおりになるか。

 

キット評

   基本プロポーションはとても良い。胴体の全長が若干短いが、少なくとも形状的には極めて良い。古いエアフィックスやタミヤあたりのイメージに引きずられて、「細い」と感じる方もいると思うが、スピットは意外と頭でっかち尻すぼみ。斜め後方からの写真を見ると、良く分かる。

 と、褒めたところで、実は手放しではない。プロポーション上の問題点は3つ。
 まず、後部胴体下面の断面形。なぜか角張ってしまっている。ここはタミヤやハセガワXのように丸いのが正しい。キットの後部胴体は、上半分の断面形や、ラダー分割部の断面形、胴体下部後端が急激に絞り込まれている点などの再現は非常に良いのだが、惜しまれる。

 2つ目は、機首上部の幅が広い。単体で作るなら、さほど気にならないが、U型と並べると違和感があるし、タミヤのマスタングなどと比較すると、同じマーリンが入っているとは思えないほどヴォリューム感が違う。
 同じことはダイムラー・ベンツDB601系を装備したメッサーE、G、マッキ202、飛燕、彗星・・などにも当てはまる。みな共通したラインを持っているので、写真や模型で確認するのも面白い。

 3つ目は、本来平面であるべき風防側面ガラスが曲面となり、直線である側面フレームが微妙に湾曲している。なぜか、Xのパーツは正しい。スライドキャノピーは横方向にふくらみ不足だが、これはプラモデルの宿命。我慢しよう。ただ、もし今後ハセガワでグリフォン・スピットを開発してくれるなら、ぜひスライド金型で再現して欲しい部分。

 以上3点とも、少々の削りか、パーツのトレードで簡単に解決可能。気にしないのが一番の解決法だが。

 モールドに関しては、少々不満。胴体タンクなどが、浮き出しパネルとなっているが、これは止めて欲しい。エッジが甘くなって、モデルのキレがなくなるし、塗装後の研ぎ出しがやりづらい。
 ラダー等の布張り部は、凹みがなく平らな基本形状は高く評価できるが、リブテープの表現はオーバー。エルロンのリベットも止めて欲しい。実機ではエルロン含め機体全体にリベットがあるのに、模型ではエルロンだけ、というのはおかしい。

 

<組み立て>

胴体

 コクピット内部はサクッと素組み。機首、エンジンシリンダーヘッド部分の幅は、タミヤU型と並べた時に違和感がないよう、約17mmに修正する。正確にはもう少し狭く、16mm前後15mmだが、気付いたのは組み立て後。修正は上面の接着面を1.5mm削る。単純に削ったのではスピナー、キャノピーと合わなくなるので、それらと接する部分は削らない。

 すると、写真のように隙間が閉じないから、パーツ先端近くに横に切り込みを入れて接着。最後にスピナー接合面を平らに削る。こうすることで、シリンダーヘッド部の張り出しも穏やかになる。キャノピー側はパーツを曲げて強引に接着。

 後部胴体下部は、プラバンで裏打ちしてから削るが、フィレットまで影響するので要注意。断面方向にテープを貼るなどして、断面形を確認する。前後左右から見回して面のつながりに不自然さがないかチェック。フィレットの境はノミを使う。

 キャノピー後部の胴体には、タミヤほどではないが若干の面のくびれがある。ここはペーパーで目立たなく削っておしまい。
 排気管は、運良くモスキットが入手できたので、取り付け部の穴を貫通させる。


Xと\の側面形を比較。基本形は全く同じ。上から\、X、タミヤT。

ちょうどエンジン部分で接着面を削る。スピナー直後にエッチング・ノコで切り込みを入れる。

左右を強引にくっつける。機首の切り込みが開いてくる。

主翼上面を胴体に接着。胴体断面は修正済み。このようにテープを貼って断面形を確認。

 

コクピット

 胴体が出来た所で、下からコクピットをはめ込む。Dアップはシートベルトのみ。コクピットの出来は非常に良い。底面の湾曲断面がGood。組み立て上も、底面パーツが胴体強度の確保に有効。シートも秀逸。計器板のモールドだけはタミヤ式にして欲しい。

翼関係

 主翼に関しては、いつもの手順であるが、私の場合組み立て上の誤差が、翼上下の合わせに集約される。結果的に、機銃基部が上下でズレる。そこで、下側は一旦切り取り、後で付け直す。
 よく考えると、いずれ機銃と基部の摺り合わせは必要なので、ここは基部を完全に取り払い、機銃側にプラ棒などの基部を接着・整形、翼に2mm強の穴をあけて機銃を取り付ける、という手順が正解。

 脚収容部では、上下パーツ間に隙間が生じる。ここは下面パーツにプラバンで天井を貼り付けておくのがベスト。無理に隙間を接着すると、外形が歪む。
 今回は手抜きして、翼後端の厚みもそのまま。端部の絶対的厚みより、端部に至る「面の流れ」の方が重要。とはいえ、後方からの写真では、やはり気になる。大した手間じゃないから、内側から削っとけば良かったな。

 機銃パネルの合わせは非常に良い。他のパネルのモールドと整合させるならば、少々浮かして接着するとよいかも。
 尾翼は全くのストレート。リブのモールドもそのままだが、主翼エルロンのリベットだけはパテで埋める。

小物

 小物は総じて大変良い出来。スピナーは良い。脚柱がぐらつくのが残念。主脚が長い。タミヤに合わせ1mm短縮。修正は脚柱上部を細く削る。同時にぐらつきも解消。主脚とカバーが密着するように、削り合わせる。機首下面インテイクは、開孔。機首上面の小インテイクは、型抜きの関係でモールドが甘い。ノミ等で彫る。

 Uと\のカウリングのラインを比較すると、Uでは小バルジとなっているところが、\では包含するように脹らんでいる。この辺が機首のイメージの微妙な差となっている。一方、スピナーからエンジンに至るラインは、Uも\も同じ。モデルで異なるのはメーカーの解釈の違いによる。


機首のラインを比較されたい。

単純な長さの差だけではない。

 

キャノピー

 まず第3キャノピーを胴体に接着。後部胴体と面一に削り、磨き直す。第1、第2キャノピーは、当初Xのパーツを使おうと思っていたが、第3キャノピーとの合わせが上手くいかず、\純正を使用。ただし、事前に配慮しておけば問題ない。胴体との合わせは良いが、接着線は不可避。溶きパテで丹念に処理する。


<塗装>

考証

   イギリス機は、塗装バリエーションに乏しいのが難点。ナナニイの\はノーマル迷彩で完成しているので、同じのでは芸が無い。目先の変わったところで、以前からやりたかったインベイジョン・ストライプをフルに巻いたやつに決定。
 ところが、意外に使える実機写真がなく、悩ましい。候補その1は、インアクション表紙にもなっている第312スコードロンの「DU◎L」。不鮮明ながら実機写真もある。問題は、スカイの帯がないこと。モデルでは既に塗ってしまってるので、この案は却下。
 候補その2は、第453スコードロン「Z◎FU」。実機写真はモデルアート別冊「スピットファイア」にある。これは、数少ないフル・ストライプ機を鮮明に捉えた貴重な1枚。ところが、インターネットで部隊歴を調べていると、使用機が\b、\eとなっている。斜め左後方からの写真では武装までは分からない。それとシリアルの前半がストライプで塗りつぶされており、不明。これは右舷側のマーキングで困るのだ。

 結局、イーグルストライク#48060の塗装図を唯一の根拠に、第127スコードロン所属「EJ◎C」シリアルPT396とする。実機写真は手元に無いが、その方が気楽に作れるので、それも良かろう。コードレターの書体、大きさは塗装図まかせ。右側のレター配置はunknownということなので、左側を含め記入位置は自分好み。ストライプの位置もテキトー。規定では水平尾翼先端から18インチとされているが、実際はきわめていい加減でバラバラ。帯の塗り分けが乱雑な機体、コードレターやラウンデルの周囲を塗り残した機体も多い。


英軍機では、早々にストライプが消されたため、残された写真が少ない。

 

調色

 オーシャン・グレーの色調もまた、少々悩ましい。作品では、3色セットのオーシャン・グレーにインディーブルーを少量混ぜる。この青は変な雑味のない色なので、混色に適する。ミディアム・シー・グレーはタイフーンの残り。ダーク・グリーンはいつものビン生。この色はビン生で既にスケール・エフェクトが入っているかのようだ。ストライプの黒は白を1〜2割ほど混ぜる。塗料の状態で生の黒と比べると、相当明るいのだが、模型に塗ると、白との対比でコントラストがまだキツい。マーキングの色はU型と共通。

塗装

 下塗りでは、手抜きで透け防止に銀を使用。布張り部にも塗ったから、うっかりぶつけると銀はがしになってしまう。
 塗装の手順は、黄→スカイ(帯とスピナ)→白→黒→下面→上面、ここで一旦マスキングをはがして、マーキングの青→白→赤→スカイ。ラウンデル、コードレターなどのマスキング手法はUと同様。
 半つやクリア(46番+30番)を少々厚めに吹き、2000番ペーパーで、ざらつきやマスクの段差を削る。ついついやりすぎて下地が出てしまう。
 「J」が白帯に埋没して目立たない。実機は不明だが、周囲を地色で縁取る。面相筆で描き込んだが、いまいちキレがなく残念。「C」は縁取りしなくて済むように、塗装図とは少し変えて、黒帯の中に記入してある。胴体右ラウンデルの白と赤は、失敗して歪んでしまったため、以前購入したタイフーン用エアロマスター・デカールから、白と赤の部分を切り取って貼り付ける。両機、サイズは同じ。最初からそうしても良かったかな。


塗装前。サフを吹いてキズなどのチェック。

サフ→銀→黄まで吹き、翼前縁とラウンデル、プロペラ先端をマスクしてスカイまで。

白→黒→迷彩まで。床に落として右の機銃がポッキリ。ジグジョー。

マーキング、クリア研ぎ出しまで終了。

 

小物その2

 折れた機銃は、先端をキットの余りパーツと交換。ピトー管は、真鍮線はんだ細工。トルクリンクは幅を狭めて使用。先に脚柱とカバーを接着した後で、上手く納まらず、少々ウソをついてなんとか取り付ける。実機は、トルクリンクの有無により、脚カバーの断面形状が異なっているので注意。単に平面形状(三角部分の有無)だけでない。

 排気管はモスキット。これは相変わらず素晴らしい出来。手間もかからず、値段以上の価値がある。曲がりを慎重にピンセットで直し、両面テープで固定。バックミラーはキットパーツのイモ付け。とれたらまた付けるだけさ。
 プロペラと胴体の取り付けも、両面テープ。軸のセンター出しも不要で、簡単々々。

ウェザリングと仕上げ

 手法はUと同じ。Dデイ・ストライプの応急的な感じを出すべく、面相筆でちょぼちょぼ。上手くいったかどうか。シリアル、細部ステンシルは自作インレタ。


こういったアングルからも、キットのプロポーションの良さが解る。

右側のマーキングは全くの推定。白帯部分のシリアルは塗りつぶされていた可能性もある。

ここの窓枠をもっと細くするとイメージが良くなる。

モスキットは相変わらず素晴らしい出来。スピット用と書いてなくても、似たような形状ならOK。

 

完成

 スピットの中で、最も均整のとれた美しさの後期マーリン・シリーズ。キットの出来も良く、殆どストレート組みでその美しさを手中にできる。風防の形状ミスは、むしろレンズ状の歪みの方に気を取られ、出来上がるとあまり気にならない。浮きだしパネルも、無いに越したことはないが、出来てみればそれなりの効果。

 Uとの同時進行のメリットは、時間で20%削減ぐらい。当初目標の50%まではいかないが、考証時間、つまり手の止まっている時間の大幅減と、比較する楽しさもあり、感覚的には1機作る間に2機出来て得した気分。
 こうなると、ハセガワ製グリフォンが猛烈に欲しくなる!!!

補足(完成後気づいた事項)

 ハセガワのキットは主翼に考証ミスがあるので要注意。翼上面の車輪の位置にあるバルジは大戦中の機体では「なし」が正解。詳しくはスピットFR.XIVの項を参照されたい。そのほか、作品では脚の塗装も多分間違い。これはシーファイアF.XVを参照願う。マーキングも前述のとおり甘い考証。これは2nd Tactical Air Forceにインベイジョン・ストライプのIXの写真が多数掲載されている。


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