ソードフィッシュ エアフィックス 1/72 製作記

2015.6.22初出




完成画像






■ はじめに

 またか!のエア赤箱。発売時に買いそびれ、最近ようやく再販されて入手したのだ。このキット、雰囲気はとてもよいが、小物やモールドのキレはいつものとおりなので、真剣に手を入れようとすると結構大変。ということで、お手軽素組みで製作しよう(←またか)。以前タミヤ1/48を迷彩で作ったことがあり、今回は大戦前の銀塗装とする予定。


■ キット評

 外形のイメージは大変良好。羽布の表現も私好み。主翼は折り畳み状態でも組める。シリーズ通例の好キットである。上翼上面パーツに結構目立つヒケがあり、修正するならパテでも盛ることになる。リブのモールドを残しつつ凹みを埋めるのは難易度が高そう。羽布表現が良いだけにちょっと残念。 ←後日訂正。案外簡単に修正可能。  


■ 組み立て

 コクピットはよく再現されている。胴体側面の小窓はクリアパーツが用意されている。折角透明なのに取り付けをミスって、やむなくパテで埋める。あとで塗装で表現することにしよう。ところで、この小窓、初期のMk.Iは右舷側の形状が異なることに注意。単純な角丸長方形で横幅も少し広い。その他、排気管も時期により違いが見られる。



コクピットは素組みでも十分な再現度。

上翼。内部の補強パーツのため、上面部品に凹みがあって、これがヒケの原因。


 主翼は、インストと組み方を変え、下翼外側を先に胴体に取り付ける。そこに翼間支柱を立て、上翼を仮り止めして支柱を接着。塗装後に上翼を接着する算段。気になるヒケはとりあえず無視。



キットは前後支柱が一体化しているので、バラバラにする。

ラダー、エレベータを取り付け、表面の確認のため、軽くサフを吹く。エンジンと上翼は仮り止め。


 引き続き、細部を作っていく。


■ 続、組立 7/4追加

 塗装前に済ませておきたい細部を作る。排気管パーツが見当たらず、プラ丸棒から自作。ライターで炙って曲げる。着陸灯はキットパーツ。断面をグレーで塗り、乾く前にその塗料を接着剤がわりに翼に押し込み、固着後に面一に削って磨く。



細部を少々追加。

キットの支柱は曲がっていて、プラバンで置き換える。


 サフを吹くと主翼のヒケが気になり、溶きパテで埋める。完全に修復できていないが、案外お手軽にそこそこの仕上がりになる。



再度サフを吹いて表面を確認。


 本番塗装の前に、サフ面を#1200ペーパーで磨く。羽布の凸凹が面倒くさい。


■ 塗装開始

 セラックスグレイは♯325グレーFS26440のビン生。銀は、♯8銀(最近のもの)とクリアを混ぜる。塗ってみると自分の予想より金属感が強く、色調も暗くて、セラックスグレイとのコントラストが強い気がする。もっと白っぽく金属感を抑えた方がいいかと、ガイアのブライトシルバーに白20%とガイアのフラットクリアを混ぜる。こんどは金属感が無さ過ぎ。



セラックスグレイ塗装箇所は、とりあえずキットのインストに従うけど、いまいち自信なし。左上翼の四角いパネルも同色か。

マスキングして銀塗装。排気管は♯9金+♯41レッドブラウンの上から黒を薄く被せる。



■ 続、塗装 7/10追加

 金属感過剰で塗り直した銀、今度は金属感過小で気に入らず、もう一回やり直す。三度目の正直はブライトシルバーとセミグロスクリアを2:1程度、白は加えない。塗り直す度に表面を#1200ペーパーで整えるのが面倒。塗装中は頻繁にノズルが詰まり、その都度「うがい」をして取り除く。同じ塗料でも主翼と胴体では輝きが違って見え、胴体にはフラットクリア少々を加えて輝きを落とす。次のマーキング塗装に備え、セミグロスクリアを吹いておく。上からクリア系を吹いても、輝きの微妙な差はキープされる。

 マーキングは、キット指定と同じ820スコードロン所属機にする。手描きするので違ってもいいんだけど、デザイン的にこれが一番かなと。全く同じは嫌なので機番を648に変える。実機写真もあり、シリアルはK8880。主翼ラウンデルは、デカールでは上下同じ54インチサイズ。このサイズでマスキングテープを切り、モデルに貼ってみると少々違和感がある。確証はないけど上面55インチ、下面50インチとする。青白赤が5:3:1だからサイズも5の倍数ではないかという単なる憶測。位置はもうちょい外側だ。上翼下面の機番も多分デカールはサイズが違っていて、他機の例では、もっと幅が狭く翼間支柱の外側に収まる。胴体ラウンデルはキットの24インチで合っている。

 では塗装作業。機番の白以外の青と白は突合せで塗る。明るい青にしたくて#322フタロシアニンブルーとGX5スージーブルーを1:1。帯もラウンデルと同色。←根拠はない。シリアルはインレタを作ってある。機番はカッティングマシーンの出番。緑のマスキングシートが残り少なく、お試しでグラフテック塩ビカッティングフィルムCR09016を購入。使ってみると、あまり使用感がよろしくない。糊がかなり強くフィルムの伸縮性があるので、貼り直しているうち伸びて歪んでしまう。弱い塗膜だと剥がすときも心配。一方、表面の凸凹に追従性があるのは長所。場所で使い分けるといいかも。そもそもマスキングが目的のフィルムじゃないから仕方ない。



青塗装のためのマスキング。ラウンデルはドーナツ形のテープで位置決め。にじみ出し厳禁で、まずクリアを吹いてから青を吹く。

青を吹いて白のマスキング。クラフトロボが活躍だ。現在販売終了で、後継機はシルエットカメオという名称。

GX1クールホワイトを塗装。


上翼下面のマスキング。新規購入のカッティングフィルムを使ってみる。本来はフィルムそのものを装飾などに使うもの。

白のマスキングだけ剥がす。赤塗装があるので、全部は剥がさない。




■ 続々、塗装 7/26追加

 続いて主翼の赤丸。いつものGX3ハーマンレッドで塗る。一旦全てのマスキングを剥がし、クリア(削り過ぎと色移りを防ぐ)を吹いて塗装境の段差を軽く研ぎ、はみ出しをタッチアップ。



色つきセロテープをエッチング・テンプレートで切り抜いてマスキング。

銀の光り具合とセラックス・グレイとの明度差、青の色調には自己満足。デカールの青は赤味が強くて私好みでない。



■ デカール&インレタ

 胴体赤丸はシルク印刷の赤いデカールをポンチでくり抜いたもの。翼支柱が邪魔でどうにも塗りようのない胴体側面窓もデカール作戦。適当なデカールにグレイを吹いて窓の形に切る。支柱越しに見れば窓に見えるかな? 初期型の形状違いも解決。下翼の黒塗装(ベタと線)、部隊マーク、コーションステンシル、プロペラ警戒塗装はキットデカール。胴体とラダーのシリアルは自作インレタ。キットはラダーのがオーバーサイズ。貼り付け後に再度セミグロスクリア。



ラウンデルの赤、主翼の黒、胴体側面窓のデカールを貼る。


インレタは、台紙ごと切ってテープで位置決め。台紙を抜いて転写する。

部隊マークとステンシルのデカールも貼る。

インレタ、デカールの定着のためにセミグロスクリアを吹き、塗装&マーキングが概ね終了。



■ 張線 8/5追加

 塗装、デカールが終わり、これでようやく上翼を取り付け。張線はグラディエーターと同じく下翼貫通方式。技法の詳細は当該ページを参照されたい。今回は張線の存在感を出したくて、太めのテグス(直径0.185mm)を使用し、さらに銀色に塗る。ラダー、エレベータの操舵索はグラディエーターで使ったナイロン糸。下翼にはみ出たテグスとランナーを切り取り、エアブラシでタッチアップ。これでほとんど下翼は元通りになる。



下翼の穴に通して引っ張りながら楔形に切った延ばしランナーで止めていく。紙の上などに瞬間を1滴たらしておくとランナーに着けるのが楽。

できあがり。テグスは接着前に#8銀で塗っておき、接着後にタッチアップ。程よい存在感で満足。

テグスとランナーを切り取り、ペーパーかけて銀色を筆でタッチアップしたところ。まだ目立つのでこのあと銀を軽く吹く。

操舵索は細いナイロン糸。細すぎて存在感が薄いか。→あとで銀でタッチアップ。



■ ウェザリング

 タウネンドリングやパネルラインの一部などに極薄のダークグレイを吹きける。ウォッシングはいつもの水溶きウェザマス。






■ 細部 8/16追加

 小物を取り付ける。後方機銃はキットパーツを使う。銃身が折れて、延ばしランナーと細切りマスキングテープで再生。上翼中央の丸凸は航法灯。クリアランナーに置き換え。



ピトー管、ステップ、アンテナ柱は真鍮細工。ぬるいキットのモールド表現に合わせて、ワザとぬるく作る。(←大ウソ)

魚雷ラックはキットを利用。アーチ部を薄く削る(これでも半分の厚さ)。ロッド部は延ばしランナー。右はキット。残しておくと形を真似やすい。

溶剤系接着剤でまったりと組み立てる。フニャフニャでも1日経つと案外しっかりする。前後のロッドを接着すると、さらに強度が増す。

塗装して胴体に接着。完成後は脚の陰でよく見えない。残念。


 アンテナ線の張り方がよく分からない。Mk.Iでも迷彩の頃になると、中央翼の1本の柱から垂直尾翼に向けて張られる。銀塗装の頃は翼端部の柱から尾翼に向けV字というかY字に張られる。胴体後方の無線機からもアンテナ線が出ているハズだが、それがどのように主翼〜尾翼間のアンテナ線に結びつくのかが不明。作品は想像によるでっちあげ。

 また、エンジン後方の胴体上部にある小突起(用途不明)もMk.I初期と後期では異なる。エアやタミヤは後期のタイプ。作品は知らずに後期タイプの基部を作ってから差異に気付いて、中途半端な形状。初期は横から見るとT字形。


■ ほぼ完成

 ともあれ、概ね完成となる。完成後に写真を撮り直すつもり。



T字形アンテナ柱は真鍮パイプを使いたいところ在庫切れで真鍮棒。ナイロン糸の結び方を工夫して、横から見ればバーの中央から線が出ているように見せる。




ピトー管付け忘れ。雷撃用照準器もつけたいな。アンテナ線は操舵索と同じナイロン糸。魚雷架見えず。







■ 完成 9/3追加

 雷撃照準器は0.3mm真鍮線ハンダ細工。細い部品がゴチャゴチャあると複葉機っぽくなる。ちと曲がってるのは気付かないフリ。忘れてたピトー管を取り付け、目出度く完成。出来上がってみると、コクピットが手抜きとか、そのフチや翼後縁を薄くすべきとか、ファスナをもっと強調すれば良かったなとか、色々あるけどまあ楽しく作れたから良しとしよう。というか、それがこのシリーズの楽しみ方の王道といえる。私のエア攻略法は、ぼんやりスジボリをエッチングソーでクッキリ、目立つとこだけDアップ(他はスルー)。ともかく、ぬるい作りでも、それなりに見えてくれるのはキットの素性の良さゆえ。もちろん、手を入れれば、ちゃんと応えてくれる。



























■ 820スコードロン

 820スコードロンは1933年開隊の歴史ある部隊である。1937年9月、ブラックバーン・シャークからソードフィッシュMk.Iに転換、11月から空母アークロイヤルを母艦とし、大西洋方面にて対潜哨戒、索敵と雷撃を主任務とした。作品はこのときの姿。1940年4月にノルウェイと戦い、6月から地中海にてフランス艦隊攻撃やマルタ輸送隊の護衛、またビスマルク追撃戦では魚雷を命中させた。

 1941年6月にアークロイヤルを去り、フェアリー・アルバコアに転換。42年2月から空母フォーミダブルに搭載されインド洋に向かい、同年5月からのマダガスカルの戦いに加わる。地中海に戻り、11月のトーチ作戦、シシリー、サレルノ上陸を支援した。44年1月からフェアリー・バラクーダMk.IIに転換し、ティルピッツを攻撃。同年9月にグラマン・アヴェンジャーに転換、太平洋に移動。パレンバン、スマトラ、先島諸島の攻撃などを行い、終戦を迎えた。

 戦後は1951年7月からファイアフライMk.V、54年から再びアヴェンジャー、56年からガネットAS.1を使用。1958年からはヘリコプター部隊となり、ウェセックス、シーキングなどを機材とし、現在はアグスタウェストランド・マーリンHM.2を使用している。


■ 次は?

 さて、次回作。久しぶりに48、蛇の目、エア新金型を予定。P-38はまだ熟成の眠り。




■ 参考文献

 日本では人気がないのか、和書はほとんどない。文献-1はエズモンド少佐の伝記。-2から-4は定番。細部写真なら-5。-6、7も写真多数で有用。-11はソードフィッシュは少ししかないけど、1912-1950までの各国の水上機があり楽しめる。

1 航空ファン別冊・エアコンバット No.15 - 文林堂
2 Fairey Swordfish in action aircraft no.175 0-89747-421-X Squadron/Signal Publications
3 Fairey Swordfish and Albacore 1-86126-513-3 Crowood
4 Warpaint No.12 Fairey Swordfish - Hall Park Books
5 Aeroguide Classics 4 Swordfish Mk.I-III 0-946958-29-7 Linewrights
6 Swordfish Special 1-55068-052-8 Ian Allan
7 The Swordfish Story 0-304-35711-1 Cassell & Co
8 Fleet Air Arm British Carrier Aviation, 1939-1945 0-89747-432-5 Squadron/Signal
9 Britain's Fleet Air Arm In World War II 0-7643-2131-5 Schiffer
10 On Target Special 9 The Battle of Britain Comouflage & Markings 1940 97-81904-643364 The aviation Workshop Publications
11 Catapult Aircraft 1-84415-419-X Pen & Sword




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