タイフーンTb(ハセガワ1/48)製作記
キット評 かっちりした出来の好キット。アウトラインも細かい点を除くと良好。顎が張り、分厚い主翼のタイフーンがストレス無く組み上がる。 アウトラインは機首上面が少々痩せて直線的なのと、主翼端の厚みが気になる。主翼は、正しくは正面から見て翼端から1.5cmくらいまで分厚く、そこから翼端にかけて急激に厚みを絞り込んでいるが、キットではもっと内側からなだらかに薄くなっている。なお、前者は修正したが、後者は完成後気づいたので未修整のまま。 参考資料 |
1 | The Typhoon & Tempest Story | Arms and Armour Press |
2 | Typhoon in action | Squadron/Signal Publications |
3 | 世界の傑作機(新版) | 文林堂 |
4 | 世界の傑作機(旧版) | 文林堂 |
5 | スケールアビエーションvol.16(2000年11月) | 大日本絵画 |
<組み立て> 胴体組み立て 胴体左右を接着する前に、コックピット部の別パーツを先に胴体パーツに接着する。表面がツライチになるように注意。合わせは良いが、接着面近くに出っ張りがあって削りが十分にできない。塗装前に完璧と思っても塗装するとアラがわかってしまう。出っ張りを一旦切り取って十分にサンディングするのがベスト。 出来上がった胴体左右を貼り合わせる。コックピット部に比べ前後が幅広なので、風防パーツとの合わせを確認しながら接着面を削って合わせる。機首上面の直線的なラインを、上方に緩いカーブを描いて膨らむように修正する。こういう時はパテ盛りすると、後々表面仕上げが面倒である。そこで、パーツを曲げて修正する。つまり、最終的に表面がプラとなるようにするわけである。そのために膨らませたい部分を、プラが白くなるくらい指でしごいて曲げグセをつける。そのままでは接着面に隙間ができるので、0.3mmプラバンを貼っておく。胴体左右を接着し、裏から曲げた細切りプラバンでがっちり補強する。
その後、裏から上顎内側パーツを接着する。後広がり気味に曲げておくと、なじみがよい。下顎内側にはポリパテを盛る。このあとのペーパーがけが、場所が場所だけに少々難儀。歯ブラシの杖にペーパーを巻き付け対処する。
次にコックピットを組み込む。計器板は少し手前にし、胴体に直接接着するが、そのままではスロットルのパーツと干渉する。
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機首上面ラインを修正。 |
メーターには色味を加える。 照準器は側面から棒で支持されている。 |
顎の内側を丁寧に整形する。 |
翼厚の絞り込み具合が実機と異なる。 |
胴体と主翼の接合 外形の仕上げ 垂直尾翼、水平尾翼の前縁は尖らせる。これはタイフーンやハリケーンなどホーカー社の特徴なのでしっかり再現したい。コックピット後方の風防内部は、一旦削り飛ばす。面を出す必要のある部分は鉄やすりで削り、全体的に4〜600番のペーパーをかける。消えたスジ彫りをトライツールのエッチングノコで再生する。点検パネルのネジは真鍮パイプをピンバイスにくわえて打つ。 垂直尾翼の後縁は、ガンガン削って薄くする。ラダーのリブテープを、細切りデカールで再現する。キット付属のデカール(黒ベタ部分を使用)は厚みがあり、こういう時には都合がよい。 |
尾翼の前縁、翼端は尖っている。 |
デカールにより、リブテープを再現する。 |
サフェーサー 大体外形ができたので、サフェーサーを吹く。尾翼のリブテープがいい感じに仕上がってくれてうれしい。ここはサフを少し厚めに吹く。ほこりやざらつきを2000番のペーパーで落とす。吹いてみると見落としていた要修正個所がいくつかでてくる。特に接着部のヒケやペーパーのかけすぎ、かけ忘れ。 コックピット 風防内のディティールは見える範囲で手を入れる。仕切板は0.5mmプラ板から。航法燈はクリアーランナーで。上部窓枠から下がっているコードは、糸はんだ。アンテナ後方にはキャノピー内部に細いフレームがあるので、伸ばしランナーで再現する。
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英国機のシートベルトは穴が空いているのが特徴。 |
コクピット後方にはいろいろ手を加えている。 |
その他小物 プロペラ周りでは、スピナーの切り欠きの形状が異なるが修正せず。ポリキャップが少々緩いがそのまま。作品は仕方なく両面テープで固定している。
着陸燈ライトは、アルミ板を適当な穴に押しつけ凹ませ、彫刻刀で押し切り抜く。キラキラ光っていい感じ。翼端燈はクリアーランナー。車輪カバーの操作ロッドからヒンジ部を切り取りカバーの方に接着、ヒンジ断面をコの字型に削る。尾輪の正面部のモールドを掘る。ラダーのバランスタブ操作ロッドは0.35mm真鍮線。 全体塗装の前に、コクピット後方を塗装する。ここの塗色は今ひとつ確信がないが、機体内部色とする。実機写真を見ると、バブルキャノピーの機体では黒で塗られれているが、カードアタイプではそれほど暗い色ではない。キャノピーを接着し、胴体との合わせをパテで修正する。特にドアは1枚板に見えるように。
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モスキットの排気管は素晴らしい出来。 |
尾脚に彫刻を加える。 |
脚収容部はストレート |
主脚とタイヤ、脚カバーの間隔をつめる タイヤの角度にも注意 |
<塗装> マーキングの考証 当初エアロマスター48-490"Storms in the Sky, Pt. XI"のHH◎Wにするつもりだったが、Wの書体に悩み、写真のある機体にしようと資料をひっくり返す。世傑のカラーページにあるHH◎Nもいいが、国産デカールは全く使う気がせず、したがってパーソナルマーキングが再現困難。シリアルNo.が手持ちデカールからなんとか再現可能なものがないかと捜すと、資料1のThe Typhoon & Tempest Storyに同じ175スコードロンのHH◎T(JP577)の右後方からの写真があり、それに決定。右側はT◎HHである。細部塗装は同じスコードロンのHH◎Nを参考にする。 イギリス機の塗装は厳格な規格に準じてどの機も同じ、と思われがちだが実は細部の違いがある。例えば黄色の味方識別帯は、一般的には外側機銃まで塗られているが、175SQはこれが着陸燈までだし、内側機銃までのもある。下面の白黒帯は、現地塗装なのか位置に微妙なずれがあり、爆弾ラックも黒かったり下面色だったり。コードレターの書体、大きさ、太さは部隊ごとに個性的である。
色の調合 塗料はMrカラーを使用。黄色は黄橙色、スカイはダックエッググリーンに青みを加え明度を上げる。ダルブルーはサンダーバーズカラーの紺にオーシャングレーを混ぜる。ダルレッドは赤、黄、グレーの混色。比率は2:1:1ぐらいか。
塗装 ラウンデル、コードレターを含め全てのマーキングを塗装する。今回はマーキングを先にするので、吹きつけの順序は次のとおり。機体内部色→サフェーサ→銀→白→黄→スカイ→黒→青→赤→下面→上面グレー→グリーン。ひたすらマスキングをちまちまと繰り返す。 上面と下面との境界はテープでマスキング。上面2色の塗り分けはインストの拡大コピーを型紙に使用する。実機写真を見ながら境界線の微修正を行い、はさみで切って両面テープで貼っていく。縁をピンセットで2mmほど持ち上げてやる。以前は雲形迷彩に3Mのカバーテープを使っていたが、今回の方法も意外と作業性がよい。 迷彩塗装終了後全てのマスキングをはがすが、境目に軽くナイフを当てるとシャープな塗り分けとなる。苦労したマスキングの成果がやっと現れてうれしい。出来上がりが心配だった胴体ラウンデルの細かい塗り分けもまずまずの出来。 2000番のペーパーで境目の塗膜の段差を軽くならして、半光沢クリアー(スーパークリア半光沢と同つや消しを半々程度混ぜたもの)を少し厚めに吹く。再度2000番を全体にかけ、塗膜のざらつきをならすが、ついやりすぎて下の色が出てしまう。再度簡単にマスキングして部分的に吹き直したり面相筆でタッチアップし、また半光沢クリアーがけ。 |
ラウンデル、コードレターは手描き。黄色の色味などは手描きならでは。 ステンシルは自作インレタ。 |
ハイライトを入れると手描きの効果が現れる。 |
仕上げ シリアルNo.のデカールを貼る。JPはそのまま使えるが5は9を利用し、7はベタ部分を細切りして作る。生乾きのときに余白を完全に切り取り、クリアーがけ研ぎ出し。その後、半光沢クリアを全体にオーバースプレーする。 脚などの小物を取り付ける。モスキットの排気管は、無塗装でもいい色合いなのでメタルプライマーのみを塗る。ピトー管は真鍮帯金と0.6mm真鍮線をはんだ付け。 細部の墨入れには、今回リキテックスアクリル絵の具を使ってみる。エナメル溶剤はプラの強度が低下するので、私は使わない。その他にはスジ彫り周囲に面相筆での縁取りとパステル汚し。実機もあまり汚れておらず、ウェザリングはごく控えめ。 完成 以上で完成。無骨なタイフーンは好きな機体であり、コレクションに加わって満足である。完成後に注意書きのインレタを貼る。これはサンダーボルト用に自作した際、ついでに作ったもの。文字は一部でっちあげなので信用しないように。 |