零戦五二型 裏ページ その2

2008.7.24初出

●前ページ


●最終更新日へジャンプ






■ 塗装 12/2追加

 裏ページもいよいよ塗装編。まずは迷彩色から。零戦に限らず、旧日本陸海軍の暗緑色の色調は、とても難しいテーマである。現存する部品に残る塗料片からのアプローチもあるが、コクピットで触れたように、塗料の変質(顔料よりはニス部分の黄変が原因だと想像するが)という問題がある。そこは専門家にお任せして(?)、私としては、いつものように写真の分析で。

 当然、カラー写真では、そもそもの撮影条件の違いに加え、フィルムの経年劣化による色調の変化、印刷やモニタ画面により、本物の色にバイアス(偏差)がかかるので、そこは割り引いて考える必要がある。ただし、同じコダックのポジフィルムなら同じような劣化をすると考え、一方で英米軍のオリーブドラブやダークグリーン(これらの正確な色調は大体分かっている)が当時のオリジナルカラー写真でどう見えるかを差し引けば、日本機の色調についても大まかな傾向は分かるのではないだろうか。



三菱製と思われる零戦。ことオリジナルカラー写真に関しては、中島製より三菱製の方がソースが豊富。三菱暗緑色は、通説や市販プラモデル塗料より青黒い。背景や日の丸と比較して、色調のバイアスは少ないと思われる。以下同じサイトのWEB画像。

この暗緑色もかなり青く左画像の色調に近似している。赤や黄色もちゃんと発色している。他にも見所多数でカウルなどの下面色(無彩色に近い灰色)、黄橙色(赤味が強い)、プロペラの赤褐色等の色調に注意。スピナは緑。車輪カバー内側は無塗装?

三菱雷電と中島零戦が同じ画面にある貴重な画像。上2枚と見比べたときに中島の色調を考える材料となる。三菱は明るい緑、中島は暗く青い緑という通説(文献-13や-16)とは異なる。出展を失念したが中島の暗緑色は劣化すると褐色味を帯びるという記述があったが、まさにそれ。でも模型に塗るには勇気がいるなあ。Ethell著写真集(※)より。

これも同じ画面に雷電と零戦が写っている。両者の暗緑色の色調は似ているが、零戦は三菱か中島か。雷電は上と同じ機体。

参考までに晴嵐。Ethell著の写真集から。この写真の発色も大変良好。ビンからそのまま塗ったプラモデルの暗緑色、黄橙色とはかなり違うでしょ。

もいっちょ紫電。俗に川西は青いと言われているけど、川西「も」青いのであって、川西だけが青いのではない、と私は思う。

中島と三菱が一枚の写真に並んで写っている。三菱の暗緑色は明るく、中島は暗いが・・・・。 文献-4、16など 

こっちの写真では、三菱が暗く、中島は明るいぞ。一体どういう訳なんだい? 文献-16


 以上見てきたように、旧日本軍の暗緑色は世間一般のイメージより青黒いと私は考える。「中島が暗く三菱が明るい」というのもウソっぽい。陸軍も同じで、カラー写真で見るベタ塗りの疾風、蛇行迷彩の飛燕などの暗緑色は青黒い。「海軍と陸軍では陸軍の方が茶が強い」というのは、後期の暗褐色(=黄緑七号)との混同によるものと推測する。

(※)Ethell写真集
FIGHTER COMMAND American Fighters in Original WWII Color / Motorbooks International
WWII WAR EAGLES Global Air War in ORIGINAL COLOR / Widewing Publications
WWII PACIFIC WAR EAGLES China/Pacific Aerial Conflict in ORIGINAL COLOR / Widewing Publications  など


■ スピナ

 このページで、中島製零戦のスピナは緑である可能性もある(※)と記述したが、写真でこの仮説を検証してみよう。

(※)再掲

 零戦は52型になると、プロペラブレードが茶色で塗装された。その時、スピナは銀色(おそらく無塗装)のものが多数見られるが、これが工場出荷時の標準だったのではないか。とすれば、暗色で塗られたスピナは、部隊にて塗装されたのではないか。そうであれば、スピナは茶色とは限らず、暗緑色もあったのではないか。モノクロ写真では、暗緑色と赤褐色は同じ明度に写る。

 傍証。雷電では暗緑色のスピナあり。反証。隼などはスピナ、ブレードとも茶色。同じ中島であればスピナも工場塗装で茶色に塗り、ある時期から工程省略で無塗装になった、とも考えられないか?





戦後グアムで発見された三菱製。色調が分かりづらい画像だが、スピナは茶色と言っていいだろう。頂き物画像。

時期、場所不明。味方識別帯の幅から、おそらく中島製。スピナは、私には銀の上に粗雑に塗装した暗緑色のように見える。

三菱製52型。スピナの明度と、プロペラブレードや胴体とを比較すれば、やはりスピナは茶色と見るのが自然かな。文献-20

サイパンの中島製52型。スピナと胴体とプロペラがほぼ同じ明度。まあしかし、あえて言えばプロペラに近いかな? 文献-4など


 ということで、結論は分からず。


■ 現地塗装の暗緑色

 さて、仮にスピナが暗緑色だとして、どんな色調だろうか。以下、推論。もし現地塗装だとすれば、現地部隊がストックしている暗緑色で塗られることになる。それが中島暗緑色なのか三菱暗緑色なのか、どちらでもないのか。自然に考えれば、三菱の工場と中島の工場には、別々の塗料工場から供給され、それが両社の色調の違いになったのだろうが、現地部隊にはまた別の供給ルートがあってもおかしくないだろう。

 そうだとすれば、色調には微妙な違いがあって当然。これ、日の丸の白縁を塗りつぶした塗料についても全く同じ事が言えるだろう。いずれにしても、現地部隊に中島色と三菱色の二種類のペンキ缶が供給されていて、機体によって塗り分けていた、とは考えにくい。ちなみに、上画像でいえば、晴嵐の暗緑色は現地塗装ではないかと私は考えている。

 ついでに陸軍機。最近の説(学研の「疾風」など)によれば、隼から疾風の途中までは、工場では無塗装で完成し、現地部隊で迷彩が施されたとのこと。そうだとすれば、飛燕が茶色の強い川崎暗緑色で斑迷彩され、隼は中島陸軍暗緑色で迷彩され・・・というのはナンセンス。いずれも現地部隊がストックしている暗緑色で迷彩され、もし色調の違いがあったとしてもそれは機体製造メーカーの差異ではなく、現地部隊の保有塗料の差異によるもの。こう考えれば、カラー写真で陸軍機の暗緑色が青黒いのも説明がつく。


■ 参考文献



1 世界の傑作機 No.5 零式艦上戦闘機11-21型 文林堂
2 世界の傑作機 No.9 零式艦上戦闘機22-63型 文林堂
3 世界の傑作機 No.55 零式艦上戦闘機11-21型 文林堂
4 世界の傑作機 No.56 零式艦上戦闘機22-63型 文林堂
5 旧版世界の傑作機1974年6月号 零式艦上戦闘機一一型〜二二型 文林堂
6 旧版世界の傑作機1974年10月号 零式艦上戦闘機五二型〜六三型 文林堂
7 航空ファンイラストレイテッド No.42 日本陸海軍機カラー&マーキング 文林堂
8 航空ファンイラストレイテッド No.53 零式艦上戦闘機 文林堂
9 航空ファンイラストレイテッド No.93 Veterans 文林堂
10 航空ファンイラストレイテッド No.96 写真史三〇二空 第三〇二海軍航空隊写真史 文林堂
11 航空ファンイラストレイテッド No.109 海鷲とともに 文林堂
12 航空ファン2008年8月号 文林堂
13 モデルアート別冊 No.272 日本海軍機の塗装とマーキング戦闘機編 モデルアート
14 モデルアート別冊 No.323 零式艦上戦闘機一一型/二一型 モデルアート
15 モデルアート別冊 No.378 真珠湾攻撃隊 モデルアート
16 モデルアート別冊 No.510 日本海軍機の塗装とマーキング戦闘機編 新版 モデルアート
17 モデルアート別冊 No.518 零式艦上戦闘機モデリングガイド モデルアート
18 エアロ・ディティール7 三菱零式艦上戦闘機 大日本絵画
19 日本海軍航空隊戦場写真集 大日本絵画
20 闘う零戦 隊員達の写真集 文芸春秋
21 日本軍用機写真総集 光人社
22 軍用機メカ・シリーズ5 零戦 光人社
23 太平洋戦争日本海軍機写真集U デルタ出版
24 A6M ZERO in action Aircraft Number 59 Squadron/Signal Publications
25 WARBIRD Legends MBI Publishing Company
26 U.S.NAVY FIGHTERS OF WWII MBI Publishing Company
27 現存零戦図鑑U (えい)出版社
28 零戦52新撮ハイビジョン・マスター版 ワック
29 不滅の零戦 生きつづける名戦闘機 光人社






前ページへ戻る

裏HOME

HOME