タミヤ ファントム B型 製作上の注意点

2021.7.14初出


■ はじめに 

 タミヤから待望の1/48ファントムB型が発売された。決定版である。既に完成させた人間が言うのだから間違いない。外形プロポーションの正確度、ディテール、パーツ勘合、その全てにおいて、従前のキットとは完全にレベルが違う(タミヤ48以外で外形プロポーションが正確なのは、唯一エアのブリティッシュファントムのみ)。ただし、残念ながら100%完璧ではなく、マイナーなミス(?)がいくつかある。逆に言うと、ここさえ直せば完璧なファントムになるわけだ。

 外形に関しては、マクダネル社の製造図面に基づいて設計されているのは確実。なぜなら、当該製造図に基づき作成した拙図面とピッタンコで合うから。従って、どのアングルから完成品を見ても、写真で見る実物のファントムそのもの。逆に、旧来キットが刷り込まれているオールド・ファンには、タミヤの外形に違和感を覚える人も多いだろう。ま、好みは人それぞれなので、「俺はやっぱりハセガワが一番」とかは全く否定しない。

 部品分割を見ると、C型、J型を予定していることは間違いない。ただし、タミヤのことなので、いつになることやら。待つよりタミヤBを改造する方が早いぞ。既存C/Jキットを使えば、改造はそれほど難しくない。ロングノーズまでバリエーション展開するかは、部品分割を見ただけでは分からない。現状で正しい外形のロングノーズはまだないから、出すべきだと思うけど。


■ その1 風防窓枠

 キットは風防側面ガラスの下辺に三日月形の窓枠がある。これ、現存機にはあるので、そういう意味では間違いとはいえないが、ベトナム戦当時の機体(B、C、D、J、ついでにいうと就役当初のK、Mも)にはない。だから、このままでベトナム戦時の塗装にするなら「間違い」となる。幸い、キットは凸モールドの窓枠なので、削り落として磨いてやればよい。風防&キャノピはエアモデルの顔。ここはファントム愛が試される場所なのだ。



キットは、赤丸部分に三日月形の窓枠がある。

ベトナム戦当時のC型。三日月形のフレームはない。


 これ、発売前に気づいてタミヤにメールしたんだけど、製品版では改修されていない。メールが4月上旬頃だったので間に合わなかったのかな。今後発売されるCやJではぜひ改修してほしいものだ。読者諸兄もタミヤに改修要望のメールを出そう。


■ その2 内側前縁フラップ(7/25内容訂正)

 キットは、当該フラップが固定されたF-4B-26以降(通算617号機以降)およびJ型のモールドとなっている(EやEJもJと同じ)。F-4BおよびRF-4Bの初期、F-4C/D/RF-4Cは可動なので、パネルラインが異なる。下面は可動も固定もパネルラインには違いがない模様(当該部の資料が少なくて確信はない)。B型の内側前縁フラップ固定については、航空ファン別冊イラストレイテッドNo.19に記述があるとのこと。情報感謝



キットの前縁内側フラップはこのとおり。拙作では、この後で気付いて修正。

初期B型はこの図のようになっている。図はC型だがフラップは同じ。

現存C型。マニュアルの可動タイプの図と同じ。キットとは違うというのも確認できる。

現存J型。分かりづらいけど、翼境のクランク状パネルラインやファスナの配置に注目。

B/C/D型タイプの骨組図。出典はA/B型のマニュアル。

こちらJ/E/EJ型タイプのパネル図。リブの配置が異なるのが分かる。



■ その3 胴体後部アクセスパネル(7/25内容訂正)

 後部胴体の部品番号L3、L4のアクセスパネルは初期のB型にはない。B型でもShoehorn改修を受けた機体にはある。N型にはある。コクピットについては、S9、S16は少なくともB型の当初にはない(マニュアルのB型コクピット図にはこの2つの機器がなく、N型図にはある)。参考サイトはこちら。情報感謝。



キットインストから。右舷胴体後部。

左舷胴体後部。

後席コクピット。




■ その4 前脚オレオ

 キットは前脚オレオが短い。まあしかし、かなりマイナーなミスなので、気になる人だけ直せばいいのでは? 長くするついでに金属パイプかなんかに交換すれば一石二鳥。ただし、延長した分だけ脚柱上部を切り詰めないと、三点姿勢が変わってしまう。さらに、前脚ドアも1回り小さくしないと、ドア下端とオレオの位置関係がおかしくなる。キットの前脚ドアはちょっと過大。足元が重たく見える。



ベトナム戦当時のC型。B型もオレオの長さは同じ(アタリマエじゃ!)。

キットのオレオは半分の長さ。



■ その他の要注意点

 以下は、ミスではないが、製作中に気づいた要注意点。
  • 機首レドームは、後端から5mmくらいのところがゴツゴツしている。滑らかな曲面になるように、写真など見ながらサンディングしてやろう。その際、風防と一体のクリアパーツ部分も、一連の面として削った方がよい。同じようなゴツゴツは、ノズル後方上部の胴体部分にもある。むろん実機はこんなになってない。

  • 主翼上面にはヒケがあるので、ペーパーで十分に均すべし。外翼上面の下面別パーツ部分の境界にあるヒケは、見落としがちなので要注意だぞ。

  • インテイクベーンは、前半の穴なし部分と後半の穴あり部分の境に段差が生じる。また、後の塗装を考えるとベーンは切り落として後付けする方がよい。

  • ノズル後方胴体の別パーツ部分(フック後端付近)は、やや段差が生じる。


■ 初期B型の要注意点

  • 初期のB型では、レドーム下側にあるセンサーのフェアリング形状が異なる機体がある。キットにもバリエーションパーツがセットされているが、それとは異なり、先端部分がやや短いタイプが2種類ほどある。これは、これまでの既存文献では指摘されたことがない(多分)。特定機を作るときは、写真でよく確認するのが吉。改修はパーツを削ればOK。

  • 初期のB/C型は、Mk.H5エジェクションシートを装着している。これは頭部後方のパラシュートパック部に金属製の覆いがついている。キットにはセットされない。

  • 初期のB/C型はレドーム後端の塗り分け線も、後のタイプとは異なる。キットの分割線の1mmほど前方に、パネルラインと塗り分け線があるタイプ、3、4mm前方にあるタイプなどが見られる。その場合もキットの分割線のパネルラインは残る。



レドーム塗り分け、レドーム下のフェアリング形状に注意。

これなどは、見過ごしてしまいそう。ラムエアインテイクとの関係に注意。


マーチンベイカーMk.H5。おや? ドッグハウスの窓が無い??



■ タミヤへの要望

 タミヤの開発関係者が、これを読んでくれるかどうか分からないが、今後C/Jを出す際の要望と現Bの不満点をいくつか。キットでは、主翼落下タンク、内側パイロンは「なし」で組むことも可能。しかし、センタータンクは「なし」にできない。というのは、取付部が再現されず、かわりに巨大なタンク接着ベロがあるため。これは改善してほしい。まあ、どっかからパイロンのアフターパーツが出れば解決されるが。なお、空軍型と海軍型では、センターパイロンのディテール(穴の形状、配置など)が異なる。

 エルロンが別パーツになっているため、エルロン非作動位置で組む場合、段差が生じるなどで接着部分がきれいにならず、その修復に多大な労力が必要となる。垂直尾翼上端は、前端にAN/APR-30アンテナがついたタイプのみ。B型でもセンサーなしの機体は多いのになあ。他社のパーツは断面が合わないから、キットのアンテナを削るしかない。あと、ベトナム戦C型にはサイドワインダーAIM-9Bが欲しいところ。


■ 図面

 J型の側/上/下面図面を準備中掲載。これら図面はブリファン製作記で。






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