F4U−1aコルセア(1/48タミヤ)製作記
<キット概観> アウトライン 言わずと知れた傑作キットで、アウトラインに関しても大変よい出来である。実機の遠方真横からの写真(資料Gの後ろ表紙にあるのが、多少ボケているが最も条件の良いもの)と比較をしても、その正確さがわかる。 モールド、小物 モールドは好みの問題だが、私はもう少し繊細な方がよい。布張り表現は許容範囲だが、できれば真っ平らなところにリブテープのみ僅かに盛り上がった表現がよかった。点検口のヒンジなど、凸モールドの表現は最高。小物パーツは、全体に太めだが、ディティールは申し分ない。 <資料> 我ながらよく集めたものである。このうち、入手しやすいのは@C。ABは絶版だが、神田の古本屋(岩波ホール近くの文華堂など)をこまめにチェックすると入手できる可能性がある。そのほか文林堂から出版されていた航空ファン別冊各種がある。Iはディティール写真集。これよりも大日本絵画の「エアロディティール」が入手しやすいが私は未所有。
その他、現存する機体の空撮写真集は、大戦中の記録写真にはないアングルで撮られていて、アウトラインの新たな発見など思わぬ価値があるし、見ているだけでも楽しい。 <組み立て> コックピット 手を入れてもキャノピーを閉めればよく見えないし、取り外し式にすれば接合ラインがきれいにならない。というわけで、ここはあっさり手間をかけずにいく。 胴体 こういう合わせの良いキットの接着には、流し込みタイプを使う。胴体表面等に若干のヒケが見られるので溶きパテで埋める。コックピット後部の、バードケージコルセアとの差し替え部分に、慎重な摺り合わせが必要である。胴体が前後に分かれているキットなどと同様、先に片側同士のパーツを接着し、半身を完全形にしてから胴体左右を接着するのがセオリー。 主翼 展開位置で固定するため、手順に注意し組み立てる。まず、上面側の内翼と外翼を、プラペーパーをのりしろにして接着する。こういう接着には瞬間がよい。段差がなく、接合面のスジボリがきれいに残り、上反角が狂わないように細心の注意。 基本外形の組み立て 胴体と主翼を接着する。合わせは良好なので、パテなど使わなくてすむよう慎重に組み立てる。フラップ格納部の胴体に隙間があるので、予めプラ板で塞いでおく。水平尾翼はヒケをサンディング。 表面仕上げ 基本形ができたところで、表面の仕上げを行う。消えたスジボリはエッチングノコで再生する。主翼もヒケをペーパーで均すが、布張りモールドを消さないように、テープを貼って保護する。主翼上面の翼前縁燃料タンク給油口のモールド位置が間違っているので、パネルライン1つ分内側に彫り直す。 プロペラ キットのプロペラは、薄くてブレードのボリュームが足りない感があるが、完成後はさほど気にならない。修正するなら−1dを購入し、根元を細く削るとよいだろう。d型はプロペラ直径が小さいが、実はキットの直径は大きめなのでその点は問題ない。 エンジン エンジン関係は、ギアケースの補器類パーツを立体感あるように彫り込み、糸半田でプラグコードを追加。エンジンは黒で塗装後に銀でドライブラシ。キットのエンジン取り付け位置は、若干前過ぎる。 排気管 金属パイプで作ればベストだが、主翼と胴体の接着前に取り付ける必要があり、完成が遠のく。プラパーツをピンバイスと針やすりで穴開け加工すれば、見られるようにはなる。あとは塗装でごまかす。 主脚 主脚は押し出しピンの跡を丁寧に埋める。主脚柱に沿った細いロッドは0.5mm真鍮棒。下端のリングは、糸半田をコイル状に巻き付けカッターで切り出す。y字型のリンクに付くスプリングは、ギターの弦。ブレーキパイプは糸はんだ。 脚扉 前方から見える部分を中心に、扉の縁を薄くする。飛行機が極薄の金属板で造られていることを表現する重要なポイントだと思う。彫刻刀の三角刀が便利。 尾脚 型抜きの関係で省略されたディティールの再現がポイントとなる。メインフレームとなる三角形の板に、円形の軽め孔を開口する。その前方のフレームを細く削る。本当は凹型断面になっているが、再現は困難。 翼端燈 コルセアは米軍機によくある透明カバーに電球のみ色付きのタイプ。製作手順は以下のとおり。 フラップの接着 私の場合、機体ラインの美しさの表現は大きなテーマであり、それゆえキャノピー、カウルフラップは閉め、なるべく翼下に物はぶら下げず、クリーンな形態とするのが好みである。しかしながら、ここはタミヤに敬意をはらってフラップダウンとする。 金属細工 ラダー、エレベーター、エルロンのバランスタブの操作ロッドを、0.3mm真鍮線で作り直す。アンテナ柱は、真鍮棒を叩いてつぶし、ピンバイスにはさんで削る。ピトー管は0.6mm真鍮棒を加工する。 再びコックピット シート、ヘッドレスト部分、グレアシールド部分は、キャノピーを閉じていてもよく目立つ。シートは縁を薄く削り、ファインモールド製エッチングシートベルトを追加。買える手間には金を惜しまないのが完成への早道。ステンレス製のため、ピンセットでつまんでライターで数秒焼きなます。ベルトはガルグレーで塗装。
キットの防弾ガラスは、形状が全く違うので使用せず、取り付け穴も埋める。実機では、風防の前方フレーム内側に隠れてぴったり収まるようになっていて、そのために外から写した写真では防弾ガラスの存在がよく分からない。ただ、防弾ガラス自体は平面なので、グレアシールド上部に円弧状のフレームがあるのが確認できる。CやHのディティール写真集では、取材機から取り外されているので注意が必要。
風防の接着 基本的に合わせは良い。後半部の後端が胴体から多少浮き上がり気味なので、裏側を少し削り、胴体との段差が金属板一枚をイメージできる程度にする。こうして幅を少し締め気味にすると、今度は上端部が浮き上がるので、下端を少々削る。
重箱の隅をつつくと、カウリングの側面型は実機ではけっこう後ろ広がりだが、キットではその表現が弱く、カウリングが円筒形となっている。そのため、機首からコックピットにかけてのラインが、カウリング後端で若干折れ曲がるところがデフォルメされている。しかし、美しいモールドを犠牲にしてまで修正するほどのものではない。
また、キャノピー上方の窓枠の位置が微妙に異なる。実際はキットのような前すぼまりとなっていない。資料Hによくわかる写真がある。後述するが、給油口のスジ彫り、ランディングライト、防弾ガラスといった若干のミスがあるから、完璧を期すには注意が必要。
@
新版世界の傑作機
文林堂
A
旧版世界の傑作機(青表紙、白表紙)
文林堂
B
エアコマンド(航空ファン別冊) vol.1
文林堂
C
モデルアート別冊 コルセアモデリングガイド
モデルアート社
D
Corsair in action (新版)
Squadron/Signal Publications
E
Corsair in action (旧版)
Squadron/Signal Publications
F
Marine Fighter Squadron 121
Squadron/Signal Publications
G
Golden Wings 1941-1945
Squadron/Signal Publications
H
Flight Deck US Navy Carrier Operations 1940-1945
Squadron/Signal Publications
I
D&S Corsair part-1
Squadron/Signal Publications
J
Carrier Air War in original wwII color
Motorbooks International
K
WWII WAR EAGLES Global Air War in ORIGINAL COLOR
Widewing Publications
L
WWII PACIFIC WAR EAGLES China/Pacific Aerial Conflict in ORIGINAL COLOR
Widewing Publications
M
WARBIRD HISTORY F4U CORSAIR
Motorbooks International
Eは絶版だが、新版に比べトライカラーの優れた写真が多数ある。J〜LがEthell著の素晴らしいカラー写真集で、Jは現在ファイターコマンドと合本になってエアコマンドという本になっている。内容の割に高くない(5,000円以下)ので、持っていない人は入手をおすすめする。Mは特に後期型の部分で充実した内容である。
コックピットは、スロットル操作部をハセガワ1/48サンダーボルトから流用したが、基本的にモールドを丁寧に塗り分けるだけで十分。コックピット内部はグリーン系のジンクロで、計器板、サイドコンソール、グレアシールド、ヘッドレストが黒(いつものとおりダークグレーで塗装)。グレーや銀でドライブラシ。
コックピット後方バルクヘッドと胴体との隙間は、目立つので埋めておく。前側バルクヘッドは、パネルラインの位置が正しい。
上部の枠はこれほど前すぼまりではない。
次に脚収容部、翼断面パーツ、外翼固定パーツを接着。ここで必要な強度を確保するので、接着はしっかりと行う。強度を出すためには、溶剤系をたっぷり使うのが一番であるが、表面に影響を与える場合もあるので、そういう部分は瞬間も併用する。
外側の下面パーツを上下のモールドの整合に注意して接着。最後に、それらを内側の下面パーツに接着する。補強として、左右の翼上面パーツ同士をプラ板で結合。上反角を図面でチェックしながら作業する。
製作時、コルセアのねじり下げのデータがよく分からず、作品ではほんの気持ちだけねじっているが・・・完成後、改めて写真をよく見ると「なし」が正解のようだ。
カウリングと胴体の接合部に段差ができる。目立つ所なのでノーズのラインが崩れないように丁寧に処理し、消えたモールドを伸ばしランナーなどで再生する。
展開状態に組んだ主翼
給油口の○モールドはこの位置が正しい
−1aの前期型はトレッドなしつるつるタイヤが多いので、ペーパーでモールドを落とす。主車輪は前から見てほんの少しだけ逆ハの字になるように取り付ける。ホイールが出っ張るので、接着面を少し削る。
排気管はキットのままでも結構見られる
フックはこのくらい埋まっているのが正しい
主脚カバーは脚に密着している
脚柱カバーは、脚柱に密着している。その上部の隙間には、布かゴムかのカバーがあるので、紙で再現する。
尾脚カバーの三日月形の整形フェアリングは−1a型にはない。カバーは、胴体と接する線全体がヒンジとなっている。こういうヒンジは当然直線である。でないと開閉できないが、この事実を無視したキットはFW190Dなど意外と多い。
コルセアの場合、尾脚カバーは前後に2分割され、ヒンジの線もそこで折れている。胴体側の取り付け部を直線になるように削り、カバーも指でしごいて、接合部に隙間ができないようにする。
着艦フック基部付近のタイダウンリングは、0.5mm真鍮線。その前方の板状フレームも実際は2本の棒なので中をくり抜く。尾輪のフレームは、ピンバイスと針やすりなどで門型に中をくり抜く。
タイダウンリングは真鍮線で作る
その隣の板状の部材は中をくりぬく
尾輪のフォークの間を抜くと効果大
翼側を切り欠き、断面を塗装しておく(今回は銀)。クリアーランナーを切り欠きの形に削る。断面を磨く必要はない。電球の再現として、0.5mmピンバイスで穴を開け、クリアー塗料を落とす。瞬着で接着。金ヤスリ〜1000番ペーパーで削る。必要ならスジボリ。最後にコンパウンドで磨く。慣れると簡単。
製作中の破損防止に主脚を先に接着しておく。右内側フラップの穴は、−1aにはないのでプラ板で埋める。接着に際しては、仮り組みと摺り合わせを十分に行う。そのままでは、フラップ相互の隙間が開きすぎるが、外側から順に翼に接着し、胴体との間に隙間を集めると目立たない。最内側フラップが少し外側に位置するよう、取り付け部を摺り合わせる。
下面側のヒンジがピッタリとは合わないが、上面優先で作業を進め、翼側ヒンジを一旦切り取って付け直す。後上方から見て、翼上面とフラップとの隙間がきれいに揃い、フラップ相互の面が揃うように注意する。強度アップのため金属線を通そうとしたが、微妙な位置決めができず諦める。結果的に瞬着イモ付けだが、なんとか強度は保っている。
なお、資料Hの現存実機写真を見ていると、外側フラップは−1d型では金属外皮になっているようだ。
タブ操作ロッドを真鍮線に換える
タブにつく部分をペンチでつぶすとよりリアル
照準器は、グレアシールドから1mm程度顔を出すよう、取り付け基部を加工。コルセアの場合、照準器にガラスはなく、防弾ガラスに直接投影するようである。グレアシールド上部の計器類の有無が資料ではっきりとは確認できなかった。
これを再現しようと、透明プラ板をしこしこ削ってみたのだが、風防パーツの厚みのため、窓枠フレームにうまく隠れるように防弾ガラスのフレームを納めるのが至難の技である。実機の記録写真でも防弾ガラスの存在はよくわからないし、下手に作るとかえって見苦しい、と割り切ってガラスは再現せず、グレアシールド部の円弧状のフレームのみ細切りプラ板で再現する。ガラスがあると思って見れば見えてくる?
最後に、コックピット全体に、フラットベースをシンナーで薄く溶いたものを、ハンドピースでスプレーし、全体をつや消しにする。
クリアーパーツの断面を機体内部色で塗っておく。断面が白く光るのを防ぐテクニック。曇り防止のため、クリアーパーツの裏側に静電気防止スプレーを吹き、パーツを接着する。パーツの合いが良いので、接着には流し込みタイプを使用する。後端部が浮くので、セロテープで押さえておく。
風防後部が胴体に密着するように慎重に摺り合わせる
防弾ガラスの円弧状の枠に注意