F4U−5Nコルセア(ハセガワ1/48)製作記
2003.5.4 初出
<はじめに> 第2次大戦に間に合わなかったので、少々マイナーな感があるロングノーズコルセアだが、実は−1型に負けず劣らずのかっこよさ。ハセガワのキット化には大感謝。 ■ キット評
プロポーションは大変良好で機首の微妙なラインがよく再現されている。気になるのはコクピット後方の胴体の背が低いこと。−4の途中からバルジが付加されたが、その高さ分だけ(約2mm)低い。ただし、修正するとキャノピーにも影響するのが悩ましいところで、モデルも修正していない。 布張り部はかっちりしたモールドでタミヤ−1よりも好ましい。小物に関してはタミヤと比べて一長一短があるが、いずれにしろ出来はよい。ハミルトンプロペラは最高。他のモデルもこれに取り替えたいくらいだ。 <組み立て> ■ 胴体の修正 金型差し替え部の段差を修正する。−4までの胴体に太い機首を無理矢理継いだため、実機では防火壁の斜めのパネルラインでアウトラインが屈曲している。キットではこれが金型差し替えラインとなっているので、ここも修正する。 円筒形を曲げるわけだから当然簡単にはいかず、金型ラインのあたりはパーツが伸びる(内側から外に押し出す)ので、プラが白くなるほど爪でしごく。後で元に戻っては意味がないので、裏からプラバンでがっちり補強する。 ■ 胴体、主翼の下ごしらえ ラダーの上端が厚いので、モールドを消さないように裏側から削る。表面も湾曲しているので伸ばすように曲げてやって、さらに裏側を削る。必要に応じ前後縁も接着面を削る。 胴体や主翼表面の浮き出しモールドは、塗装の研ぎ出しの邪魔になるので、スジ彫りしてからツライチに削る。主翼パーツは表面にヒケがあるので、溶きパテ500番を塗ってからサンディング。 ■ コックピット キャノピーオープンとするので、ある程度コックピットのDアップをする。私の好みからはキャノピーを閉めたいが、キットパーツはレンズ状の歪みが著しく断念。 計器板はデカールを利用する。当初デカールをそのまま貼ってみたが、余白が光ってよくない。そこでメーターを一個一個切り離して貼る。コツは、枠は切り取って目盛り部分だけ使用し、マイクロゾルで定着する。できあがると、メーターの目盛りがくっきりして、さらにデカール自体のツヤでメーターのガラスの雰囲気もあり満足。苦労は報われる。 バルクヘットと一体化しているラダーペダルは、余分を切り落とし計器板の裏に接着する。計器板が低いので、フロアー全体を1mm上げる。キャノピースライド用の溝を再現。スロットルレバー、ヘッドレスト下のバーなどに手を入れる。 ■ 胴体、主翼の接着 上面パーツは、事後収縮の影響か翼端下がりに変形しているので、指でしごいて直す。パーツが白くなるほど曲げるので、割れに注意。実機写真から判断すると、コルセアの主翼ねじり下げは、おそらく「なし」だと思う。作品では、できあがりの翼端の迎え角を写真のイメージに合わせたつもりで、わずかにねじる。 ところが主翼を持ったはずみで端部の前縁が割れてしまう。今後同様の事故を防止するため補強する。方法は、下面の適当な位置に2mm径の穴をバイスで開け、同径プラ棒を差し込み瞬間で固定するだけである。泥縄式だが、手間もかからず、片側2カ所で、かなりがっちりしたものとなる。 ■ カウルフラップ スマートな機首を強調するため、カウルフラップ閉状態とする。寸法をきちんと出して0.3mmプラバンを切り出す。下側はマスキングテープで寸法取り。プラバンを曲面にしごいて白ブタでがっちりつけ、裏側からさらに補強する。 ■ レドーム、フラップ取り付け レドームは簡単な作業かと思いきや意外と手こずる。レドーム軸線が上を向いてるのだ。レドーム側の取り付け部をヤスリったりプラバンを貼ったりして調整する。正しい角度はいまひとつ分からないが、写真から判断して(よく分かる写真が意外と少ない)機軸とレドームの軸が平行、スラスト・ラインより少々上向きになるように調整する。 脚に車輪パーツをはめて三点姿勢のプロポーションチェック。タミヤと比較すると主脚、尾脚とも少々短い。そのため、プロペラハブの位置が低くなっている。しかしタミヤの方は少々腰高感があるので、これでよしとする。 ■ モールド埋め、スジ彫り フラップと主翼のリベットを溶きパテで埋める。スジ彫りはエッチングノコで再生。○リベットは0.3mmのシャーペンをペーパーで研いだもの。フリーハンドで打ったら蛇行して失敗。サフェーサーで埋めてやり直す。キャノピー後方のバルジは境界が曖昧なので、スジ彫りしてからノミ等で彫り込む。 ■ 小物のディティールアップ 細部写真のとおり。ちまちまと作ったが、シーブルーで塗装したら目立たなくてがっかり。防眩板を薄くして取り付けるが、機首アンチグレアの塗り分けラインに防眩板の位置が重要であることが判明。キットの取り付け穴どおりでは塗り分け線が少々高くなってしまう。作品は塗装時に気づいたのでそのまま。 そのほか、翼端燈クリアー化。右翼先端のスポイラーは整形時に削り飛ばしているので再生。エンジンは0.3mm銅線でプラグコードを追加。上部のアンテナ2本を真鍮棒から削りだす。ピトー管もはんだづけで製作。三角形の小突起は0.2mm真鍮線を芯にはんだを盛り整形する。真鍮線は切り離さず、そのままテープで木板にとめてはんだを流す。 <塗装> ■ マーキングの考証 (巻末に考証の追加あり) CAMデカールが入手できたので、有名なボーデロン機とするが、手元の実機写真は資料Eに前方から写したカラー写真と、Dに右後方から翼折り畳み状態のカラー写真、Cに同じモノクロがあるのみである。その他の材料は@(新版)の牧氏の塗装図、ハセガワのインスト、小池氏のボックスアート程度。 ■ 参考資料 大戦後コルセアは資料もぐっと少なくなる。Fには同じVC−3のヨコスカ・クイーンがある。レター類は同じくブルーで 機番24。機首に赤で”YOKOSUKA QUEEN”のパーソナル・マーキング。
全面シーブルーというのは意外と難しいのだが、おもちゃっぽさを逆手に取って、ぴかぴかのグロス仕上げでミュージアムモデル風を目指す。
胴体前方で金型の差し替えの段差が目立つ。位置のまずさもあって修正も大変だ。後部キャノピーはレンズ状の歪みがある。無理に後縁を薄くしているのが一因。主翼には裏の補強リブのヒケがある。こうした細部の配慮があと一歩なのが残念である。
左側パーツは削っただけでは正しいラインが再現できない。パテは嫌いなので、いつもの曲げ方式でいくことにする。斜めのパネルラインとその上方につながるパネルライン、金型差し替えラインに、裏から切り込みを入れ、爪でぐぐっと曲げる。下図は左側胴体パーツを上から見た概念図で、上が機首側となる。
胴体右側は削りだけで対処できる。ほとんど自己満足の世界だが、いい感じに折れ曲がってくれた。あとは経年変化に耐えるかどうか。
金型差し替えの段差を消す。
斜めのパネルラインで折れ曲がっている。
後部胴体のキャノピーが重なる部分の段差が無視されているので、キャノピー後部の形に合わせて胴体パーツを切り取る。キャノピーパーツを重ねてからデザインナイフで切断ラインをけがくと簡単。切り欠きはプラバンでふさぐ。
後縁は内側から厚み抜き。180番のペーパーを両面テープで定規に貼って使用。今まで金ヤスリを使っていたが、これはよい。どんどん削れる。水をつけると粉が飛ばず掃除も楽。
ラダー上端を裏から薄く削る
NPのデカールは、貼りやすさを優先し実機と微妙に位置を違えている。
キットのガンサイトは出来がよいので、タミヤのサンダーボルトと交換。タミヤのはオーバーサイズなので周囲を削る。
塗色は、D&Sの写真では、計器板、グレアシールド、サイドコンソール、同下部、コックピット側面が黒、前後バルクヘッド、フットペダル、床板、シートがインテリアグリーンである。インストの指示と若干異なることに注意。
メーターはデカール切り貼り。ガンサイトのレンズは1/43カーモデルのライト。−1のようにガラス無しとしたが確証なし。その横の計器は−1Dから。
キャノピーの縁を薄く削り、バックミラーと取っ手をつける。シートはD&SのAU−1を参考にプラバンで自作。肘掛けは不明なのでつけない。シートベルトは鉛板、バックルはトライマスターのエッチング。
車輪収容部の側壁と主翼下面パーツの間の隙間に0.5mmのプラバンを貼った上で、上下パーツ間をがっちり接着する。これは強度確保が目的。
カウルフラップは閉じる。胴体との間には隙間があるので、胴体側をポリパテで裏打ちして削る。
排気管は少々オーバーサイズだが、穴を開けてそのまま使用。
フラップは、少々の摺り合わせで案外すんなり納まる。フラップと主翼との隙間のでき具合に少々不満があり百点満点ではないが、それにこだわると大作業となるので無視する。
レドームの取り付け角度、翼端の迎え角に気をつかう。
機銃とその基部も同様。
レドームの付け根の処理に手間がかかる。
エルロンタブのロッドも真鍮線に置き換え。
ロッドを追加。リングは0.5mmアルミ線を棒に巻き付け切り出す。y字型リンクのスプリングはギターの弦。エッチングノコでトレッドをスジ彫り。
タミヤの−1a同様、脚カバーを脚に密着させる。
逆T型アンテナは真鍮線をはんだ付け。
尾輪は、フォークの内側をくり抜き、省略されている軽め孔を空ける。
尾脚カバーは開位置では途中で折れ曲り、ヒンジは直線となっている。
フック先端をタミヤの−1と交換、ロッドは真鍮線。
インテイクベーンを植えたが目立たずがっかり。
主脚カバー上端にモールド追加。
Dからは主翼下面インシグニアの位置(インストより2mm後方が正しい。レドームへの袖のかかり具合も正しくない。)、胴体後方と尾翼のレター、機首側面の21の位置、大きさなどがわかる。BuNoは白ともブルーともとれる色調。レドームはグレーに見える。主脚やホイールはシーブルー。機首上面のアンチグレア塗装は不明。
Eからはプロペラハブのライトブルー、主脚カバーの21について確認できる。レドームは黒ともグレーとも。アンチグレアの有無は判定できない。同資料に同じVC3の機体があるが、これらはつや消し黒のアンチグレアが施され、位置は風防際まで及んでいる。カウルフラップの隙間は赤く塗装されている。
出撃マークとパーソナルマークについては手元の写真では分からない。塗装後に気付いたが、尾脚は無塗装銀のようである。面倒臭いので修正してない。
発色抜群のCAMデカールを使用。
資料@では、出撃マークもブルーとされている。
左側の出撃マークは、なしとするが、マーキングの詳細は諸説あってよく分からない。
自作インレタを貼り込む
ポリマーのおかげで濡れたような艶
ピトー管の三角形ははんだ盛り
@
世界の傑作機(新版、旧版)
文林堂
A
航空ファン別冊(各種)
文林堂
B
モデルアート別冊 コルセアモデリングガイド
モデルアート社
C
Corsair in action (新版、旧版)
Squadron/Signal Publications
D
D&S Corsair part-2
Squadron/Signal Publications
E
WARBIRD HISTORY F4U CORSAIR
Motorbooks International
F
PLANES,NAMES & DAMES vol.II 1946-1960
Squadron/Signal Publications
G
Night Wings USMC Night Fighters,1942-1953
Squadron/Signal Publications
H
KOREAN AIR WAR
Motorbooks International
I
Air War Over Korea
Squadron/Signal Publications