ノースアメリカン F-86F-30 セイバー

North American F-86F-30-NA Sabre



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F-86F-30-NA Serial No. 52-4584 Mig Mad Marine of Major John H. Glenn, 25th FS, 51st FW, Suwon AB, Korea, 1953


















午後(注:1951年10月26日)の出撃のために威勢よく集合した。この回もチャーリーと僕はチームを組んで出撃した。新安州の北で清川江を越すとすぐに、こちらに接近して来る飛行機雲の束がいくつも目に入った。近い方が22機、その後方に16機いる。レッド小隊の長機、アル・シモンズが「下方にMig8機発見」と叫んだ。横転して降下に入るとMigが見えた。別の6機も発見した。僕たちはエンジンを最大出力に噴かしたまま、ほとんど垂直に機首を突っ込んだ。重くなった操縦棹を両手で握り、力いっぱい踏ん張って必死に針路を維持する。


降下の途中でMigはまた雲の中へ姿を消したが、僕たちはその雲の切れた穴に編隊のまま突っ込んだ。地面に突っ込む直前に何とか機首を引き起こした途端、身体中に汗が噴き出した。雲の影になった所にMig2機を発見した。その前方にはもっと飛んでいる。僕は一番近い2機を追って左に機首を向けた。敵の旋回の内側に回り込んでこのMigに迫ったが、射撃しようとした瞬間、機関砲弾の火の玉が僕の右の翼の上をかすめて飛んだ。後ろを振り向くとMigの二番機が見えた。もう撃ち終わったと見え、そのまま上昇して雲の中に姿を消した。僕が正面に目を戻すと、Migの一番機も雲の中に潜り込むのが見えた。


目の前、機首のすぐ下に別のMig2機が現れた。両手にいっぱいの力を込めて操縦棹を横に倒し、背面から上向きの姿勢に戻って奴らの後方についた。敵は僕に気づいたに違いない。機首を上げて雲の中に逃げ込んだ。危険だの何だのと考える余裕は無く、Migのすぐあとを追った。10秒あまり灰色の時間が過ぎ、明るい光の中に出た。高度1000メートルだ。先ほどのMig2機が、また僕の機首の下に見えた。翼を翻し、横転しながら降下してMigの真後ろにぴったりついた。


敵の一番機を照準機の中に確実にとらえ、操縦棹の先端の機銃発射ボタンを押した。射撃音と一緒に操縦棹も機体全体もビリビリ震動する。命中弾の火花がMigの機体に点々と見え、敵は激しく機首を上げて射線から逃れようとした。激しい運動で強いGがかかっているので、偏角を見込んで照準し、曳痕弾は弧を描いて飛んで目標に吸い込まれる。Migから砕けた金属の破片が飛び散り、短い火炎と煙の尾が流れはじめた。相手は緩い宙返りに入り、僕はあとを追って射撃を続けた。飛び散る破片と火炎は一層激しくなった。背面姿勢のMigからキャノピーが吹き飛ばされた。やったぞ。続いてパイロットが飛び出した。


「チャーリー、引き揚げようぜ」燃料はギリギリの状態だった。新安州から基地まではかなり遠い。大あわてでこの空域を離れた。僕たちは最後に着陸した数機のうちだった。ガブレスキ大佐がお祝いの握手をしに来てくれたのはうれしかった。この大エースと撃墜の場面を話し合うのは素晴らしい気分だ。フレンチー(注:整備員)もすっかり喜んで、すぐに僕の愛機、240号機に赤い星を一つ描き込んでくれた。

(朝鮮上空空戦記 D.K.エヴァンス 手島尚・訳 SABRE JETS OVER KOREA by Douglas K. Evans より抜粋して引用)






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