ホーカー ハリケーン Mk.IIc Trop 1/48 アルマホビー 製作記

2024.6.23初出




最終更新日 




■ はじめに

 零戦に続き、アルマのハリケーンも始める。怒涛の新規着手ラッシュなのだ。こちらもグジェコシ代表からの頂き物で、作らねば・・・ 周囲には既に完成させた人も複数いて、口を揃えて言うのは「作りやすい」。だからシーハリアの箸休めにいいかな。コンセプトは、素組みであっさり低カロリー。マーキングはSEAC(South East Asia Command)にする。これ、ずっと前から作りたかったのだよね。


■ キットレビュー

 アルマ通例の好キットだ。このキットの一番の美点は、後部胴体の羽布貼り表現の素晴らしさ。胴体下面は別パーツになっており、羽布モールドもばっちり。しかもこのパーツの合わせが完璧。ここに限らず、パーツの合わせは非常に良い。だから作りやすいのだね。主翼は単純な上下割りで、これも熱烈支持。また、キャノピが、閉じた状態で前狭まりになっている点もポイント高し。

 主翼や胴体のリベットは凸モールド。実機もその通り。個人的好みでは、ちょっとモールドがくどいかな。まあ塗ってみないと分からないが。スジボリはやや太め。くどめの凸リベに合ってると言えなくもない。使用キットはIIc Tropで、出来のいい3DPのシートと機銃と排気管が入ってるんだけど、同じ箱の商品をネットで調べると3DPが入ってないみたい。もしかして代表からのプレゼント?? ありがとう。

 外形もとても良い。が、気になる箇所が若干ある。機首の側面形はよいが、平面形はエンジンカウルが幅広。一回り大きなエンジンが入っている感じ。マーリンエンジンって、もう少しスマートなはず。アッパーカウルのブリスターは、やや左右に離れている。

 開いた状態のキャノピは、パーツの厚みもあって前広がりが強い。実際はほとんど平行に近い程度。閉じたキャノピの平面形状は問題ない。ただし前述製作者によると、胴体とうまく合わせるには、キャノピ裾を外側から削り込む必要ありとのこと。

 ラダーとエレベーターの羽布表現は、平らなところにリブの細い凸線があって、これも私好みなのだが、エルロンだけは、なぜか旧来キットのようにリブとリブの間が凹んでいて、しかもリブの凸線がない。ラダーなどと同じ表現にしてほしかったな。

 とまあ気になるところはあるが、今回はコンセプトに従い、切った貼ったは封印。素直に作ろう。


■ コクピット

 製作開始。インストに従い、脚庫を組んで、その上にコクピットを作っていく。完全素組み。追加工作一切なし。その塗装は、インストに従う。ハリのコクピットって、全面グレイグリーンではないのだね。知らなかったよ。



計器盤にはキットデカールを貼る。貼り方はいつもと同じ。フラットクリアを吹いて、メーターにフューチャーをたらす。

このあたりは、ほとんど銀色。#8銀を吹いて、フラットクリアを上かけ。翼上面は左右一体。

側壁は、半分より上がグレイグリーン。これはC364ビン生。下半分は銀。

開口部から見える雰囲気もナカナカよろし。


 そういえば、WW2当時のハリケンのコクピットのカラー写真ってあったっけ? と探したところ、唯一見つかったのがこれ。フィンランドで使用されたMk.Iだ。全体の雰囲気から、オリジナルの塗装が残されていると思われる。これだと、キットのインストの指示で合ってるようだ。シートは銀色だし。



コクピット両サイドのトラス、その周辺などは銀色のようだ。



■ 胴体、主翼

 胴体を組んだら主翼と接着する。この合わせも驚異的に良い。プロペラだけは、合わせがいまいち。P-39もそうだが、プロペラはアルマの鬼門かも。キットの軸を切り飛ばし、0.8mm真鍮線に交換する。エルロンだけ自分好みに一手間加える。



こんな具合に軸の受けを作る。胴体に接着した1mmプラバンに、穴を開けた0.5mmプラバンを溶剤系で接着して芯出し。

プロペラブレードは切り飛ばし、スピナを整形する。小穴に真鍮線が入りづらいので、ランナーで漏斗状の受けをつける。

湯流れ不足か、左右フィレット後端が欠けている。

プラ材で再生。チラ見えだけど、胴体羽布表現の繊細さが分かるかな。

エルロンの凹みは、タミヤパテで平らにする。リブの再現方法は後で考える。

翼と胴体を接着し十の字。アッパーカウルが左右に張り出し気味だが、気にしないことにしよう。


 合わせがいいので、サクサク進む。


■ 機首修正 7/1追加

 十の字になって、尾翼も仮組してブンドド。すると、機首アウトラインが気になってくる。でもなあ、今回は切った貼ったは封印だし、もう胴体接着した後で、外から削ると薄くなって、最悪穴があくかもだし・・・ いや、しかし、やはり、どうにも気になる。気になってこれ以上手が進まん。うーん、どうしよう・・

 こういう時は、自分の心に素直に従う。機首上面の接着面に切込みを入れ、幅詰め分だけ切削して再接着すれば、胴体組み立て後でも修正出来そう。よし、やったるか。いつもの泥縄劇場だな。

 手を動かす前に、実機のアウトラインのイメージを確認する。それぞれの画像と同じアングルで模型と見比べると違いが見えてくる。



正面から見ると、アッパーカウルの2時10時の張り出しはほとんど感じられない。

この角度から見ると、アッパーカウルの外側線は直線的。画像はMk.Iだが形状はMk.IIも同じ。

アッパーカウル両サイドは直線的。シリンダーヘッドの小ブリスターの離れ具合にも注意。

斜め後ろから見ると、頬がコケている。このあたりは、臓物(エンジン関係の機器)もないので膨らむ理由がない。

レストア機ではなく、WW2当時のオリジナル。カウル形状は同じ。スピナ直後のパネルラインの形状(キットは正確)にも注意。

製造図面では、コクピット直前のパネルライン付近が最大幅で、それより前方は前狭まりのように見える。


 写真と見比べて検討した結果、アッパーカウル後端で1mm弱幅詰めして、コクピット部分とスピナ直後は無変更としてその間ですり付ける。つまり、細長い菱形に切削し、その隙間を寄せて再接着するわけだ。ただし、そのままだと硬くて隙間が閉じない。それと、先に仕込んだプロペラ軸が傾いてしまうという問題もある。そこで、アッパーカウルを切り離す。

 燃料タンク部は隙間を寄せて接着。下画像の赤い菱形部(最大幅1mm程度)をカットする。プロペラの軸受けを新たに作り。アッパーカウルを接着。隙間をプラバンで塞ぎ、あとは写真を見ながら、エンジンカウルの丸みを削ぐようにゴリゴリと削る。排気管直前のパネルラインより前方は、正しく再現されているので、そこは触らない。小ブリスターの凹みは瞬間パテで埋める。

 エンジンカウル下側も、やや太め。4時8時断面を削り込む。斜め後ろから見てふっくらした頬を、「頬がこけた」ようにするイメージ。



修正前。赤い菱形部分を切り取り、間を詰めて再接着する算段。ただし青線部分を切断しないと胴体パーツは曲がらない。

修正前。左画像でも分かるが、アッパーカウルの側面ラインに丸みがある。

燃料タンク部の上面に切込みを入れ、アッパーカウルを切り取る。以前作ったペラ軸受けも切り取る。

新たな軸受けを設置。側面形における燃料タンク上面を正しい高さとするため、伸ばしランナーのつっかい棒を入れる。

修正後。アッパーカウルは、後端で1mm弱横幅を詰める。前端はそのまま。アッパーカウル後端の隙間はプラバンで埋める。

修正後。アッパーカウル側面部は丸みを削いで直線的にする。これで気分スッキリ。


 幅詰めより、そのあとのエンジン部分の丸み除去の方が、外形イメージへの効果は大きい。幅を詰めなくとも丸みだけ削っても、それなりの効果があるはず。最初から機首幅を詰めるつもりなら、胴体接着前に赤菱形を削り青線を切る方が楽。アッパーカウルを切り離す必要もない。ただし、主翼接合部が狭まらないよう、つっかい棒でもしておく必要あり。


■ スライドフード修正

 ここまで来たら毒皿だ。もう一つ気になっているオープン状態のスライドフード(←イギリス流の呼び方)も直す。キットは閉じた状態でのアウトラインを重視して、コクピット後方の胴体幅が実機どおりとなっている。そのため、開いたフードがそこに被さると、クリアパーツの厚み分だけフードは幅広となる。

 一方でスライドフード後端は、キットの胴体が実機よりやや狭いため、パーツの厚みがあってもほぼ実機どおりの幅。結果として、フードパーツは前広がりのテーパーが強い。

 修正作業としては、キットパーツをお湯につけて前広がりを矯正し(前は1mm弱狭め、後ろはそのまま)、その分だけ、重なる胴体部を削り込む。



修正したい底面の形にプラバンを切り、このように底にはめ込み、セロテープで固定し、熱湯につける。(画像は矯正後の状態)

狭めたスライドフードが納まるように胴体側の干渉部分を削る。


 熱湯につけると、意図しない変形となる恐れがあるので、温度と時間には注意のこと。私は沸騰直前くらいだが、初めてなら、それより低めの温度から出発するが吉。時間は数秒。上部だけ湯につけるという手もあるかな。セロテープは、側面全体に貼る。例えば中央一カ所だけ止めると、そこだけ狭まる恐れあり。


■ 士の字 7/23追加

 ユルユル進行中。尾翼を接着して士の字。本キット、水平安定板は左右一体の上下割り、左右割りの垂直安定板を水平尾翼の上に乗せ、別パーツのラダーとエレベータ取り付ける、という部品構成。合わせが良いのでストレスはない。強度確保のため、動翼は真鍮線を打って接着する。



ラダーは、キットのピンを切って真鍮線に置き換える。

エレベータも真鍮線を介して取り付ける。繊細な羽布表現がよい。

カウルのブリスターは、少し上にズラして接着する。白い瞬間パテが元の接着位置。

修正したスライドフードを載せてみたところ。ヨシ。


 サンディングで消えたカウルのファスナは、#12と#3のたまぐりで再生。スピナ直後のオイル除けは、L字断面をしていて、漏れた油を受けるようになっている。ノミなどでフチを残して削る。ブリスターは、少し削って低くするといいかも。

 画像はないけど、機首のトロピカルフィルターとラジエータも接着。これで、基本外形の組み立ては終了。あとはリベットの再生/追加とキズ等の修正だ。


■ Drリベット

 凸リベットの再生に新兵器投入、Drリベットだ。そもそもは、シーハリアーの後部胴体の凸リベットを再現する目的。まずハリケンで練習なのだ。直径違いで何種類があるうち、細い方から3本を購入。一番細いのは直径0.18mm、次が0.26mmである。



注射器の針の中にピストンと一体になった針金が通っていて、プラペーパーをくり抜いて、接着剤をつけて、針金で押し出す。

先端のクローズアップ。直径違いで先端部の色が違う。これは0.26mm。


 最初は不要なモデルで練習する。プラペーパーは0.1mmか0.14mm、接着剤はタミヤの緑フタ(黄緑でない方)。カッターマットの上にプラペーパーを置き、Drリベットの針先をくるっと回してくり抜く。そのまま針先を接着剤にちょんと浸し、モデルの面に垂直に置き、ピストンを押す。

 切り抜いて、貼るだけなら意外と簡単。難しいのは針先を正しい位置に合わせること。模型を左手で持ち、右手で針先の位置を決めると、ピストンを押すのに手がもう一つ要る。したがって、模型は固定しておく必要がある。一列に揃えるのが高難易度。一応、ガイドテープを貼るが、それでも位置が乱れる。あと、大きさにもバラツキがでる。練習あるのみだな。

 といいつつ、練習もそこそこに本番。アルマのキットのラジエータは、抜きの都合で凸リベットが再現されていない。とりあえずケガキ針でつついてあるが、ここにDrリベットを注射してみよう。



とりあえず、こんな具合に、名刺のケースにモデルをマステで固定する。固定ツールも売ってるけどな。

既に針リベットを打ってあるが、その上に注射する。カッティングシートの細切りをガイドにする。

0.18mmで打ったところ。ガタガタだな。まだまだ練習が必要だな。下面なのでそのままいっちゃうケド。

水平尾翼のフィレットは、抜きの都合で一部のファスナが再現されていない。ここにも注射だ。


 上手くできないので、名人お二人(両人とも重度の注射病)にコツを聞く。接着剤はリモネンもあり(こんど試してみよう)。ガイドにテープを貼る。列の不揃いは、金尺や爪楊枝で押して微修正。貼り付け後は流し込みを塗布。先端に位置決め用の取っ手をつける(下画像)。等々。情報感謝。



W名人のカスタマイズ注射器。画像は「ほらぶろわーず掲示板」より無断拝借。


 最近、全体が短くなった改良版Drリベットが発売された。こっちの方が作業性がいいかも(私のは残念ながら旧タイプ)。




Wings Of Pegasus HOME