シャーマンIc ハイブリッド ファイアフライ 1/48 タミヤ 製作記

2025.8.26初出




最終更新日 3Dファイル




■ はじめに

 久しぶりに1/48AFVのモデリング。お題はハイブリッド・ファイアフライ。簡単に解説する。ハイブリッドとは、鋼板溶接車体の前方装甲板を鋳造製に置き換えたもの。ハイブリッドとは英軍の呼称で、米軍ではコンポジットと呼んだ。これには、ハッチの違いで2タイプあるが、ファイアフライは後期のラージハッチのみ。なお、ハイブリッド/コンポジットは、米軍でいうM4、英軍ならシャーマンIにしか存在しない。

 ファイアフライは、外形上3タイプに区分される。まず、米軍でいうM4ベースのシャーマンIc(鋼板溶接:タミヤキット)、次にそのハイブリッド型であるシャーマンIcハイブリッド(今回製作)、そして車体が延長されたM4A4ベースのシャーマンVc(以前タミヤより改造して製作)である。Icでは鋼板溶接よりハイブリッドの方が多数派。

 モデリングとしては、鋳造部分を3DPで作り、タミヤのファイアフライに取りつければ、あとはキットのままで出来上がる。一応、ファイアフライ以外のシャーマンコンポジットも作れるように3DPは両者のコンパチとする。というのも、ファイアフライは車体前方機銃を装甲板で塞いでいるという違いがある。


■ コンポジット・ハルの設計

 初手は鋳造装甲板の3D設計。というか、これが今作の全てといっても過言でない。資料とするのは、下記2サイトが主。あとはネットで拾った画像、タミヤ、アスカモデルのインスト程度。細部や形状がよく分かる写真が少なく、苦労する。

http://the.shadock.free.fr/sherman_minutia/manufacturer/m4composite/m4_composite.html
https://military-classic-vehicles.fr/en/m4-sherman-composite-the-wheatcroft-collection/

 基本的な形状はBlenderで設計する。いや、当初はFusionのフォームでやろうとしたが、上手くできなかったのだよ。とはいえ、Blenderオンリーではなく、寸法やハッチの位置などを正確に出すため、図面がわりにFusionで骨格を作り、それをBlenderに取り込む。基本形状が出来たら、STLファイルとして出力し、それをFusionに取り込む。そこでハッチなど細部を設計する。ジャンボの砲塔やスチュアートの防盾と同じ方式だ。



Fusionで骨格を作りstlで出力。それをBlenderにインポートしたところ。

Blenderで鋳造装甲を作っていく。こんな滑り台のような形が出発点。

ループカットで辺を増やし、適宜頂点や辺を移動させて骨格の外形に合わせていく。ピンクの辺は鋭角。クリース値を1にする。

ハッチ周辺の面も作りこむ。ナイフで辺を増やしていくのが有効。減らすには辺(面)の溶解で。これで一応の出来上がり。

コピーして、縮小して、差分して中をくり抜く。内部の面を適宜修正。

オブジェクトモードに移動し、ミラー、サブディビジョンサーフェスをそれぞれ「適用」させる。この形でstl出力。


 ここまでBlender。これをstlファイルにエクスポートし、Fusionに取り込む。細かいやり方は、M3スチュアート製作記の「Fusionへの取り込み」を参照。



Fusionでハッチ、ハッチの穴、車体機銃などを加えていく。デフカバーとクランプは、ジャンボで作ったものを仮置き。

角度を変えて。ハッチを開けてみる。写真での見え方は、大体こんな感じだと思うがどうだろう。


 Fusionに取り込んでみると、基本形状の間違いに気づく。その時はBlenderに戻って修正する。再度出力し、それをFusionに取り込む。修正は、上画像4枚目の状態で頂点の位置を移動させる。サブディビジョンをかけた6枚目の状態では、点が多すぎて大変。そして、都度ミラーとサブディビジョンをかけてエクスポート。

 Fusionに取り込む際は、「Fusion360でのディテール追加」に書いた方法を使えば、Fusionで同じ作業を繰り返す必要なく、設計がそのまま使える。このサイクルを繰り返して、形状とディテールの精度を上げていく。基本形状は、まずまずのところまできたかな。このあと、ハッチのディテールなどを加えていく。


■ 設計メモ

  • ハッチのサイズ、位置は、タミヤのイージーエイトに合わせる。車体後半の寸法も同様。
  • ハッチは水平面より7°の傾斜とする。実車での数値は不明(情報求む)。
  • ハッチのヒンジの角度が悩ましい。角度を変えて試行錯誤し、水平面から30°、垂直面からは0°とする。実車での数値は不明(情報求む)。
  • 現存車両の写真を見ると、製造工場の違いなのか、鋳造装甲の形状にバリエーションがある。とくに中央のベンチレータ付近。
  • 同様に、クランプ基部も違いがあるみたい。
  • ハッチのヒンジの付近は、いい写真がなくて、正確な形状がよく分からない。情報求む。


■ サターン2ご臨終

 先日(8/23)、モデリンクの商品を生産中に、サターン2が動かなくなる。電源スイッチを押しても電源が入らない、入ってもすぐ落ちる。以前から同様の症状は出ていて、何度かリトライすると復活したのだが、今度ばかりは何度やってもダメ。ハズレを引いたかな。2年もたず。チーン。

 しかたなく密林でサターン3(ウルトラではなく無印)を購入。先月はカッティングマシン、先々月はPC買い換えたばかりなのに。痛い出費だよ。しかも、ビルドプレートが下まで降りた状態で固まっている。おかげでレジンの回収も大変だ。バットとフィルムの回収は悔しいが諦める。





 最新モデルではなくサターン3にしたのは理由がある。知人の3Dプリンタマニアも同意見だが、バットのチルトとかオートレベリングとかは、無意味なギミックだと思う。コンデジが出たころの無意味な画素数競争と同じだね。他社との差別化と価格つり上げが目的だろう。

 こういうものは、シンプルでベーシックなのがいいのよ。解像度も私には12Kもいらないな。2の8Kで十分。2で不満だった光源のパワー不足は、3では改善されているそう。問題は、同じサターン系列なので、同様のフリーズ問題が再発しないかどうか。


■ コンポジット考証 9/9追加

 先のサイトによると、コンポジット車体はクライスラーとALCO(アメリカン・ロコモティブ・カンパニー)の2社で生産された。両者には外見的な特徴があり、区別できる。クライスラーは、@ 車体右側の追加装甲板の角が角ばっている、A サスは上向きリターンローラー・アーム、B ドライブ・スプロケットは同社独特のギザギザタイプ、C ハイバッスルD78461砲塔を装着、というのが一般的な姿(例外はあるだろう)。一方でALCOは、@追加装甲板の角が丸い、Aリターンローラー・アームは水平、B プレーン・スプロケット、C ローバッスルD50878砲塔、となる。製造数は、前者の方が圧倒的に多い。

 上記2社は、あくまで車体の製造である。鋳造製の前方装甲は、下請けの鋳物会社、アメリカン・スティール・ファウンドリーの1社で製造され、前述2社に供給された。その工場は、A:インディアナ州イーストシカゴ工場、B:イリノイ州グラナイトシティ工場の2つがあった。これらは、後方左側上面にモールドされる識別記号で判別でき、前者はA、後者はBがシリアルの頭に記入され、また、前者は後から読める向きに、後者は逆に記入される。製造数は前者の方が倍程度多い。

 ここからは、前述のサイトに書かれてない、私の独自解釈となるので、勘違いがあるかもしれない。2工場の鋳造装甲には形の違いがある。Aのインディアナ工場(とここでは呼ぶ)は、ハッチのフチや中央のベンチレータのU字形の溝の付近に丸みがある。Bのイリノイ工場(同上)は、このあたりのエッジがくっきりしている。そして、この鋳造工場と車体工場は一対一には対応してないようで、少なくとも現存車両を見る限り、クライスラー製(とみられる)車両には両方の鋳造装甲が見られる。



Aのインディアナ工場製。ハッチやベンチレータの周囲にエッジが立ってない。全体的に丸みがある。画像右上に製造所の刻印ある。

Bのイリノイ工場製。ハッチやベンチレータの周囲のエッジが立っている。ヒンジのあたりも違う。別写真より同工場製が明らか。

インディアナ工場製。Aの文字が読める。画像上が前方である。Cはアメリカン・スティール・ファウンドリー社を表す。

イリノイ工場製。こちらはB。画像は上が後方。E6289は鋳造装甲板のパーツ番号。651個目の製品ってことかな。


 さてでは、ハイブリッド・ファイアフライではどうだろうか。ファイアフライの砲塔はローバッスルなので、全てALCO製とも考えたくなるが、スプロケットやリターンローラーはクライスラーの特徴を持つ車両が多数。ただしプレーン・スプロケットなどALCO製の特徴を持つファイアフライも少数見られる。一方、鋳造装甲は、両工場製が混在しているようだ。ただし、写真では、判別が難しい。

 ちなみに、私の設計している鋳造装甲は、Aのインディアナ工場製。ファイアフライはクライスラー製の予定。アスカのキットもインディアナ工場に近い。


■ コンポジット考証その2

 ハッチの角度、ヒンジの角度が判明。ハッチは、下記サイトから7°であることが分かる。このサイト、スチュアート製作時にも参考にしたのに、忘れてたよ。つうことで、ハッチの角度は、正解。めでたし。

https://afvdatabase.com/usa/m4sherman.html#M4A3(76)W

 一方、ヒンジの角度は、某海外AFVフォーラムに投稿したところ、ハッチ面から30°との回答をいただく(出典は不明)。さらに、現存車両のウォークアラウンド画像サイトも教えていただく(以上情報感謝)。その写真から、ハッチから30°というのは妥当な数字と考えられる。


■ 修正設計

 以前の設計は、ヒンジ角度を水平面から30°としており、これを37°に変更する。かなり捻じれが強いので、色んなところの辻褄を合わせるのが、結構大変。で、これでハッチを動かしてみると(←コンピュータ上でね)、こちらの方が、実車写真の見え方に近い。

 さらに、各部をリファイン。クランプも仮置きでなく再設計(といってもほとんど再利用)、機銃口付近の形状変更を加えたのがこれだ。機銃口をいじると左右対称が崩れるので、あとあと面倒だが、そこはある計略で乗り切る。



サブディビジョン・サーフェスを前回の2倍かけているので、メッシュが細かい(辺の長さでいえば1/2、面の数でいえば4倍)。

ハッチの角度を下画像と比較されたし。開いた時の前下がり感が強くなって、より実車写真に近づいたぞ。デフカバーは仮置き。


 比較のために、前回の画像もご覧いただこう。



再掲。

再掲。


 「計略」について補足。ボディ全体は左右対称のままとする。コピーして右反転したメッシュで機銃部分を作りこみ、その周囲の逆U字形の防水カバー止めのラインで切り取る。一方、ボディ全体からは、当該部分をくり抜き、そこにはめ込む。その後の修正で少々面が変わっても、カバー止めの凸モールドがあるので、誤魔化せる。

 お遊びで、ジャンボの砲塔を乗せてみる。防盾の頬のカットや、砲塔後部の形状は、ハッチのクリアランスを考慮したものであることが、よーく分かる。



防盾のカットとハッチの関係はこんな具合。砲の仰角を下げると、もっと狭くなる。

砲塔後部の削ぎ上がりも、ハッチのクリアランスのため。



■ BlenderデータのFusionへの読み込み その2

 海外の3D達人から、BlenderデータをFusionに取り込む際に、三角メッシュの集合体ではなく、Brep曲面として取り込む方法を教えていただく。Brep曲面とは、フォームモードやロフトなどで出来る、スムーズな表面を持った曲面のこと。ビーレップと読む。やり方は以下のとおり。
  1. 前処理として、Blenderオブジェクトにサブディビジョン・サーフェスを適用し、クワッドメッシュ(各面が四角形のメッシュ)にする。
  2. BlenderオブジェクトをWavefrontファイル(拡張子obj)としてエクスポート。
  3. Fusionにて新規デザインを開き、objファイルを「メッシュを挿入」で読み込む。
  4. 右下の歯車をクリックし、履歴をキャプチャしない「ダイレクトモデリング」に変更する。
  5. ソリッドモードに戻り、上のツールバーの「編集」→「変換」→「クワッドメッシュからTスプライン」→対象メッシュを選択し実行する。
  6. これで紫色のアイコンのボディができる。同様に「編集」→「変換」→「TスプラインからBREP」を実行。
  7. エラーが出るときは、フォームモードで「ユーティリティ」→「ボディを修正」したのち再トライ。自動修復をクリックするといいかも。それでもダメなら、Blenderのメッシュを見直す。
  8. 以上でめでたくBrep面を持ったボディになる。Brep面だと、例えば別のボディと結合/切取した境界が滑らかな曲線となり、フィレットやスイープなどが可能となる。
  9. しかし、ダイレクトモデリングのままでは、このあとの追加設計/編集作業に支障となる。そこでこのデザインを保存し終了する。別途、追加設計/編集用のデザインを立ち上げ、そこに保存したデザインを「現在のデザインに挿入」で取り込み、リンクを解除する。下画像はその状態。
 ただし、この過程でBlenderでクリース値を1にした鋭角エッジが丸くなってしまう(下左画像)。この根本的対処法は現在不明。今回の設計の場合なら、境界を越えて大きく作っておいて、Brepにしてから余分を切ることで何とかなるかな。それが右画像。あと、爬虫類の鱗のような表面の模様が気持ち悪い。これはレンダリングするしかないか。



Brep曲面となったボディ。直方体を結合し、前方側の境界にフィレットを入れてみたところ。タイムラインを遡って直方体のサイズを変更することも可能だ。

余分をカットしたところ。面の構成が違うのはエラー対応をしたため。画像のテクスチャーが違うのは、レンダリングで外観を設定したため。


 いずれにせよ、この方式により、FusionとBlenderの相互乗り入れが、より一層自由になる。活用度は高い。


■ コンポジット設計完了 9/26追加

 あれから、お試しプリントと細部修正を繰り返し、鋳造装甲板の設計が完了する。最終形はBrepボディとする。その方が表面が滑らかに出来上がる。Blenderでサブディビジョンを細かくかければ何とかなるが、そうするとメッシュの数が膨大となり、Fusion取り込み後の作業が重くなる。



Blenderで、下面、後面、上面を拡大しておく。辺のクリース値は全て0。形状の微修正は、この状態でメッシュをいじる。

ミラーしてサブディビジョン・サーフェスをかける。これをobjファイルで出力。

Brepボディに変換し、下面、後面、上面をカット、ディテールを追加して、これが最終形。ファイアフライの追加装甲も作ったよ。

模型製作には、壊れやすいライトガードなどを除去してプリントする。これらは、別途プリントして後付けする。

シリアルの凸モールドの作り方。スケッチ&押し出しでこのような形を作る。

車体に半分埋め込み、交差させる(画像は交差前の状態)。それを0.2mmほど上に移動して結合すれば出来上がり。


 ちなみに、このシリアルの作り方は、メッシュボディでの作り方。Brepだと、スケッチしてエンボス一発で出来上がる。もちろん、ここで紹介した方法でも可能。交差するときは、ツールを維持にチェック入れてね。

 では、苦心の鋳造表面の出来具合をレンダリング表示でご覧いただく。こちらは、足回りを組み合わせ、ファイアフライの追加装甲なしで。ギアカバーもジャンボのではなく、ノーマルM4のものに変更。







 いよいよ、リアルモデリングを進める。シャシーと履帯は3Dにする。これらの3Dファイルは、ジャンボ製作記、またはチャーチルAVRE製作記にリンクがある。キットのダイキャスト車体に適合するように、シャシーを設計変更してやろうかな(まあ、ヤスリで削るという手もあるが)。

 このデータを利用して、M4A1ラージハッチ(←上部車体全体が鋳造のやつね)の車体も作ろうかな。76mm砲塔にHVSSサスなんていいかも。




■ 3Dファイル

 ということで、お持ち帰りいだだく。ハッチは別ボディとしているので、オープンにすることも可能。その場合、ハッチ裏側の補強部品を非表示にする。ハッチは別パーツとして出力する方がよいだろう。ファイアフライの追加装甲板も別ボディなので、通常型コンポジットにすることも可能だ。併せて、Blenderファイルもアップする。上左画像のいじれる状態のもの。





鋳造装甲板 Fusion ●DL

鋳造装甲板 Blender ●DL





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