鍾馗U型乙 製作記(その4)
2009.2.6初出
|
|
組み立て(続き) |
まず、引越しの記録から。前回は3年前でその後さらに物が増えている。完成品のダンボール箱(大)が6つ。前回より2個増。さらに未組立キットが4箱(大)。資料本は13箱(小)でこれも1個増。模型誌が小4箱。塗料、工具、材料等で3箱。引越し先の収納スペースが今より狭く、減量しないと入りきらないぞ。 まず模型以外の趣味関係書籍(楽譜、画集、小説等)を泣く泣く処分。模型誌も半分程度処分。これらは保存が悪くてカビでかなり痛んでたのもあるけど。あと、完成品とキットも少し処分するか・・・。 |
完成品(×6)とキット(×4)。キットはすべてランナーからパーツを外して、通常のキット箱に3〜4機ずつ詰めている。 |
私の趣味関係全書籍23箱。階段上がるのに引越屋の兄ちゃん辛そうだった。すまんなあ。このうち7〜8箱分の中身を処分(泣)。 |
|
主翼下面のボルトカバーはアルミ棒の削りだし。 |
脚収容部にプラバン細切りで縁を追加。ボルトカバーも接着。 |
オーマイガーッ!! テープと一緒に塗料がはがれるっ! それにクリア部分も! アルミ片でテストしたときは、結構な食いつき強度があると思ったんだけど、筆で厚塗りした結果なのか。希釈して薄吹きしたのでは、食いつきが不十分。モデル表面が手脂で汚れていたせいもあるかも。う〜ん、やっぱアルミへの塗装は難しいね。 |
クリア塗装後、アンチグレアをマスキング。 |
黒を塗装。よく見ると、縁が部分的に凸凹。キャノピは乗せているだけ。 |
とりあえずの対策として、
|
まず固定タブ。作り方は零戦と同じで、裏から深さ0.5mmの凹みを掘ってアルミの小片を仕込む。 |
続いてサフェーサでリブ表現。これもいつもと同じ手順。 |
#8銀+#46クリアを吹いて、エルロンできあがり。 |
ラダーとエレベータも。リブの配置はエルロンも含め松葉氏の図面を参考とする。実機写真等での検証はしてないので悪しからず。 |
出来上がってみると、銀塗装の場合リブテープの凸が目立ちすぎ。少し削って控えめな表現にすべきだったな。まあしかし、早く完成させたいので、そのままでいっちゃう。←今回こればっか。
|
日本機特有のハゲチョロ塗装。これ、実物と全く同じ原理なわけで・・・ |
前回の剥離の抑えに、ニッペ・アルミカラー・クリアを全体に吹き、日の丸と味方識別帯を塗装する。前述の注意事項に配慮したつもりが不十分で、テープをはがすと塗装が剥がれまくって、あせる。 しかも残念なことに、マーキングが入った途端にオモチャっぽくなってしまう。白、赤がきれい過ぎるのが原因か。塗膜が厚いせいもあるかな? そこで、銀はがしを過剰気味に施し、面相筆で汚れを描き込む。これで若干改善。 今回の教訓として、単純なマーキングの場合、デカールを使ったほうが結果的に塗膜が薄くなっていいかも。今回みたいにハゲチョロするなら塗装でもいいけど。 |
白帯と日の丸を塗装。白帯部分に剥離が発生。このあと、面相筆でタッチアップ。 |
黄橙色を塗装。剥離が怖いので、今度はできるだけ紙を使う。 |
マスクをはがす。またもや剥離発生(←学習しろよ)。 |
脚カバーも塗装。全然合ってないぞコリャ! でも、塗装だけの問題でなく、翼前縁と脚収容部の位置関係が違う疑いアリ。 |
塗装直後。2回目のクリアをある程度厚吹きした上に白を吹き、さらに赤を重ねたため、塗膜が厚くなりリベットも埋まってしまう。 |
銀はがしや汚しを施したところ。実機の白帯や日の丸は、剥離で境界がボロボロになっている。これを再現したつもり。 |
調色メモ。白(以前使ったフィニッシャーズ+#62)には黒を微量混ぜてトーンを落とす。赤は零戦で最初に塗ったもの(レシピは零戦製作記参照)。原色の#3赤と比べ、かなりくすんだ暗めの赤だが、銀肌と白帯との対比では鮮やかで軽い赤に見える。これもオモチャっぽさの一因か。 味方識別帯は、隠ぺい力を期待してGXカラーで調色したところ、GXの黄には白が混ざっているために#58黄橙色と同じ色調にならない。近似色を作って下塗りとして、その上に零戦で使用した赤混の#58黄橙色を吹く。結果的にかなり厚塗りとなり、スッキリ感がない。
|
青竹は、零戦で明るすぎた反省から、下地の銀を暗くしてクリアブルー(+クリアイエロー少量)を吹く。小車輪カバーも同色で塗装。 |
脚カバー裏側と脚柱は、スーパー・ファイン・シルバー。そのままだと光り過ぎるので、上からフラットクリア(ガイア)でトーンを抑える。 |
ブレードは形を微修正してスピナに接着。スピナはキットのままで形状バッチリだ。銀はがしのためスーパー・ファイン・シルバーを塗っておく。 |
赤褐色は、隼や彩雲などと同じもの。ビン生赤褐色に同明度のグレイを多目(1/3程度かな?)に混ぜる。 |
|
シートは、キットパーツの背板を薄く削り、側板をプラバンに置き換える(削るより簡単で形が正確になる)。 |
ファインモールドのエッチングで手抜き。背部のフレームもキットパーツ。 |
鍾馗U型乙、丙は100式射撃照準器を装備する。手近に使えるパーツがなく、仕方なくスクラッチ(アフターマーケット・パーツはないハズ)。手元の資料では文献-3、6にクローズアップ写真が数点。全体像は不明だが、分かったとしても再現できないし、分かる範囲で適当にでっちあげ。 基本はプラ板やランナーで、ガラス部分はエバーグリーンの0.13mm透明プラバン。画像で見ると、ちょうど1/48スケール相応の厚さだ。接着はメタルプライマー。クリア塗料でもいいだろう。ガラス支持部は0.14mmプラバン。こういうのは、穴を開けてから周囲を切っていく。出来上がりは一寸オーバースケールだが、まあいいっしょ。 |
100式照準器はプラ片からスクラッチ。風防と干渉しなければ、棒の先に照準環を取り付けるつもり。 |
角度を変えて。斜めガラスを保持する帯板状パーツが100式照準器のチャームポイント。 |
さて、いつものようにマスキングして塗装するわけだが、マーキングの位置決めでテープを貼ったり剥がしたりしているだけで、既に一部剥がれているクリア塗装がテープにくっつく。そうなるとクリア膜の付いたテープは使い物にならない。だもんで、貼ってみて位置やサイズに多少不満があっても諦めるしかない。←つまり、機番の位置、サイズがズレている言い訳。 |
図面のコピーに写真を見ながらマークを描きいれ、カッターで切っていく。 |
機番は手描きして切り出し、小部分に分けて少しずつ貼っていく。 |
戦隊マークできあがりだが、ベタデカールから切り出して貼る方が簡単か。クリアを吹いてからエッジを均す予定。 |
機番も終了。銀のトーンが変わっているところがクリアの剥がれた部分。ご覧のとおりボロボロ。日焼け後の背中みたい。 |
|
|
|
排気管は、キットパーツの穴をモーターツールで深く掘り込み、エッジを薄くけずる。上:キットオリジナル。 |
色を塗って取り付け。胴体との取り合いとかイマイチだけど、ご勘弁を。 |
アンテナ柱は1.2mm真鍮棒を削る。取り付け基部を裏打ちしたつもりだったが、場所がずれていたのか強度が心もとない。 |
ラダーのヒンジカバーはアルミ棒を削る。縁は0.1mmアルミ板で再現。ラダーにもフェアリングがつくのだが、あとで取り付けるつもり。 |
蝶形フラップを接着。翼上面とフラップとの取り合い優先で、下面側はガタガタ。幸い、アルミ地金なので目立たない。 |
上から見える部分は赤色。ただしフラップ全体が赤色ではなく、翼からはみ出す部分のみが赤く塗られている。 |
尾脚カバーは0.3mm板。胴体の外板の一部と一体として、取り付け強度を稼ぐ魂胆。尾脚はキットパーツの脚柱を真鍮線に置き換え。 |
知らぬうちにエルロンヒンジカバーが取れててアセる。黒瞬間で接着したのだが、接着面が小さくて強度が不足なのだなあ。 |
細かいところで若干気づいた箇所があるが、重箱の隅でもあるし、ほんの少しの手間で修正可能なので、あえてここでは指摘しない。さあ、どんどん買って、どんどん作ろう。
考えた末、レールとカバーを別パーツとして、カバーを0.1mmアルミ板から絞る。レールは0.7mm真鍮線を四角断面に削る。イモ付けでは直ぐ取れるのが目に見えている。主翼に穴を開け、レールの先をL字形に曲げて接着。これで強度ばっちり。カバーを被せればできあがり。後ろから見るとレールとカバーの隙間がリアルで満足。 レールと主翼の接合を十分摺り合せて調整しないと、カバーが浮いてしまうが、少しくらいなら、強引に押さえつければアルミの柔軟性で何とかなる。同じ型で絞るので、形を揃えて複数作るときに有効。これはこれで使える手法だ。0.1mm板は薄くてつぶれやすいので、中に瞬間やパテなど充填しておくとよいだろう。 |
キットのバルジ(左上)を型にして絞る。絞ったらハサミで切り出してフチを#400ペーパーで整形。 |
主翼に0.7mmの穴を開け、レールを接着。そこにカバーを被せる。少々オーバースケールだけど雰囲気はまずまず。 |
乾燥したら、#1200ペーパーでマーキング周囲のめくれを均す。その他の部分もラプロスで軽く磨いて表面を平滑にする。最後に仕上げとして、ガイアのフラットクリアを全体に吹く。表面は半艶でもアルミ部分の金属感は失われない。ここは銀塗装との大きな違い。むしろクリアのテラテラした安っぽい艶がなくなり、実感が増したような気がする。
|
主脚出来上がり。車輪ハブから生えているバーは格好のアイキャッチ。0.3mm洋白線で再現。先をペンチでつぶす。 |
ブレーキパイプは焼き鈍した0.35mm真鍮線。延ばしランナーで脚柱にディティール追加。上部の小カバーも角度に注意して接着。 |
開閉リンク基部は、形を揃えるため三角断面に削った棒を輪切りにする。白いプラバンは見づらいので嫌い。キットのプラを使う。 |
カバー開閉リンクは0.35mm真鍮線。1/32キットとは形が違うけど、実機がどんなだかは資料がなくて不明。 |
機体へ取り付け。脚収容部と車輪カバーのみ青竹色で、主脚カバー内側は下面と同じ。これは、中島製零戦と共通のパターン。 |
ついでに尾脚部。前回更新で画像を掲載してなかったので。 |
2〜3サイクルやれば、かなり外形もピッタリになると思うが、面倒くさいので1サイクルで終了。表面を#1000ペーパーで均してコンパウンド磨き。当初はガラス部のフレームをアルミで作るつもりだったが、これも面倒でパス。 |
着陸灯のガラスカバーはプラバン・ヒートプレス。 |
主翼に取り付け。接着剤がわりにメタルプライマーを流す。内部のライトは1/43車モデル用パーツ(さかつうの2mmライト)。 |
|
風防を接着。照準器と風防とのクリアランスがなく、照準環は取り付けられず。残念。 |
キャノピ内側のフレームを伸ばしランナーで工作。キャノピへの接着はプラ用接着剤(いわゆるタミヤの白フタ)の点付け。 |
しかし、出来上がって外から見ると、クリアパーツの歪みでゆがんで見える。改善するならキャノピを絞るしかない。 |
開閉取っ手も伸ばしランナーで追加。黄色はフィクションで根拠なし。私には黄色に見えるのだ。 |
|
脚カバー類と同様、0.3mm板から。0.2mm板で内貼りを取り付け、これが接着ベロを兼ねる。 |
主翼に取り付け。内部のリンク機構はキットパーツそのまま。 |
翼端灯、尾灯は、毎度のハセ1/48P-40から。接着にはドゥフィクスという接着剤を使用。ピトー管はファインモールドの真鍮挽き物。脚出表示棒は0.3mm真鍮線、アンテナ線はいつもの極細渓流釣テグスでは繊細すぎて今回の作風に合わないと考え、通常テグスをフェルトペンで塗ったもの。碍子は瞬間パテを点付けだが、ちょっと大きすぎ。胴体への引き込み部の位置関係が実機と違うが、パネルラインのミスなのか、キャノピの形が違うのか。 胴体上部の滑油給入口を忘れていて、0.1mmアルミ板を丸く切り出して貼り付ける。なお、これら給入口は全て赤く塗っているが、ここもフィクション。実機がどうかは不明。ウォークウェイは、当初はハセガワの糊付シートでも貼ろうと考えていたが、実機写真を見ると塗ってるようだ。慎重にマスキングしてアンチグレアより少し明るい暗灰色を吹く。最後に、タミヤ・ウェザリング・マスターで排気汚れをこすりつけ、これにて、目出度く完成。 |
プロペラ警戒線の黄橙色は自作インレタ。赤褐色、銀をかすらせて使用感を演出。滑油給入口がまだない。 |
ドゥフィクス。使用感はまずまず。 |
|
完成 |
製作期間6ヶ月で何とか完成。苦労の割に至らぬ所ばかりだけど、このアルミニウムの金属感は、塗装では絶対に得られない。これは大満足。アウトラインの解釈や細部塗装でも、通説とは異なる新考証を提示できた。これから製作するモデラーの参考になれば幸い。 |
|
完成画像はこちらから。アンテナ柱にハゲチョロしたけど、これって金属じゃないよね?
|
九七式戦のアンテナ柱。画像提供N氏。毎度THNX! |
なのにアルミに手を出さなかったのは、満足できる精度で貼るのは無理だと思ってたから。でも、本稿冒頭にも書いたように、完璧な精度で作られた作品を目にして「ああ、出来るんだ」「もしかして自分でも?」「じゃあ、やってみよう」となったわけ。 結果はご覧のとおりで、「とりあえずやってみました」というレベルかな。初めてのアルミ貼りゆえ、失敗多数だし、リベットの凹みや塗料定着など、まだ克服できていない技術的課題も残っている。全体的に工作精度が低いのも反省点。考証も甘いしね。ただ、手ごたえは掴んだ。次に無塗装機を作るときも、迷いなく銀貼りだ。
そのときは、糊つきアルミ箔ではなく、糊「なし」アルミ「板」を絶対的にお奨めする。ただし、パネルの合わせにちょっと工作技術を要するから、不器用な人にはキツイかもね。それと、リベットの凹みにつながる空洞発生が、目下最大のネック。接着剤の選択が解決の鍵だと思うので、いくつか試して、自分に合った接着剤を見つけてほしい。 1/32クラスなら、0.3mm板を使うのもアリ。板厚がある方が、リベットの凹みが発生しにくいと思う。キャノピのフレームは難しそうだが、分割と手順を工夫すると意外と簡単。むしろヘルダイバーで極薄プラ板を貼るほうが難しかったくらい。機体全面に貼らずとも、ワンポイントで使うのも効果的だろう。F9Fパンサーの翼前縁とか、F4ファントムのお尻とかね。あるいは、カーモデルの窓枠とかバンパーとか。
苦労もあるが、とくに銀色の機体では空の映り込みが重要で、これは屋内@電球では出せないし、画像によっては、自分でもハッとするほどリアルなものもあって、やっぱ屋内よりは外だね。衆人環境での恥ずかしさもあるけど、「昔作りましたよ」なんて声を掛けてもらえると嬉しかったり。 |
こんな状況で撮影。堤防の木々を借景。スカイラインに合わせて板を斜めにしているのがポイント。 |
このアングルで撮ったのがこれ。トリミングするとギャラリー画像になる。 |
ということで、ギャラリー画像更新。
改めて、これまでのご厚誼に深く深く感謝申し上げる。突然の休止で不義理なこともあろうと思うが、ご容赦いただければ幸いである。休止中は充電期間として、またパワーアップして再開したいな。撮り直した旧作などあるので、当ページはもう少しだらだらと更新するつもりではある。 では、また |
参考資料 |
文献-1、-3の図面は胴体のリベットラインが違っているので注意。側面ハッチ下の縦通材が1本多い。 他に洋書のモノグラフ「Nakajima Ki-44 Shoki in Japanese Army Air Force Service / Schiffer Publications」があるが未所有。コクピットについては、ミケシュ氏著の「Japanese Cockpit Interiors / Monogram Aviation Publications」に写真等あり。未所有だが、関連ページの写しを頂いた。松葉氏著の精密図面を読む[10]もお借りした。以上資料提供感謝。 |
1 | 新版世界の傑作機 No.16 陸軍2式単座戦闘機「鍾馗」 | 文林堂 |
2 | 旧版世界の傑作機第14集 鍾馗 | 文林堂 |
3 | 鍾馗戦闘機隊 帝都防衛の切り札、陸軍飛行第70戦隊写真史
ISBN978-4-499-22982-1 |
大日本絵画 |
4 | ハンディ判図解・軍用機シリーズ 12 隼/鍾馗/九七戦
ISBN4-7698-0921-2 |
光人社 |
5 | 航空ファンイラストレイテッド No.79 陸軍航空隊の記録 第1集 | 文林堂 |
6 | 航空ファンイラストレイテッド No.80 陸軍航空隊の記録 第2集 | 文林堂 |
7 | 航空ファン95年3月号 | 文林堂 |
8 | モデルアート別冊 No.329 日本陸軍機の塗装とマーキング戦闘機編 | モデルアート |
9 | モデルアート別冊 No.416 陸軍航空英雄列伝 | モデルアート |
10 | 一式戦闘機「隼」 [歴史群像]太平洋戦史シリーズ52
ISBN4-05-604181-4 |
学研 |
11 | 三式戦「飛燕」・五式戦 [歴史群像]太平洋戦史シリーズ61
ISBN978-4-05-604930-5 |
学研 |
|