モスキートPR.XVI(タミヤ1/48)製作記

2006.11.16 初出

●次ページ





The Wooden Wonder



 はじめに 




■ モッシー・イン・ブルー

 実はヘルダイバーの製作中から次回作をあれこれ考えていたのだ。当初の候補は別にあって、ある作家の搭乗した双発偵察機なのだが、塗装考証が詰めきれず暫くおあずけ(←解決したらいつでもやるよ)。同じ双偵つながりでPRUモッシーはどうかな?と資料など集めているうち、だんだんその気になってきて、もう後戻りはできない気分。ハードモデリングの後で、若干燃え尽き症候群気味ではあるが、かねてから作りたかったモスキート、作れる時に作ってしまおう。今回は気合いを抑え気味に、さらっと行ってみようか〜。

 さてモッシー、戦闘型と爆撃型とに大別できるが、私の好みはグラスノーズの流麗なラインを持つ爆撃型。タミヤからはB.IVがキット化されているが、使用部隊が少ないこともあり、どう作っても今さら新鮮味がない。爆撃型は二段過給器マーリン装備の後期型の方がよりメジャーだし、こっちのカウリングの方がカッコええな〜。最近は切った貼ったしないと作った気がしないしな〜。透明プラバン絞ればキャノピも何とかなるかな〜。などと考え、偵察型の主流PR.XVIに決定。モッシー全型式の中でこいつが一番カッコイイしな。マーキングは青蚊ならこれしかない!という赤白尾翼の680スコードロンに決まり。


■ キット評

 48モッシーといえば、秀作タミヤと本家エアフィックス。どちらも戦闘型、爆撃型、夜戦型がキット化されており、エアのは後期型夜戦のNF.30である。その他、モノグラムの爆撃型を店頭では見かける。モノらしい味わいにあふれたキットだと想像するが、手元にはないのでこの際無視。

タミヤ

 タミヤは戦闘、爆撃両型とも、スピナ直下のエアインテイクの無い前期型がキット化されている。合わせやディティールはタミヤスタンダードで、文句なし。アウトラインも重箱の隅さえつつかなければ、ばっちり良好。素材を活かし、素組みするもよし、ディティールアップするもよし。下手に外形をいじっても、苦労の成果は見た目には分からないから、止めた方がよい。部品分割にもセンスが光り、組み立てやすさに配慮されている。

 今後のキット開発のため、あえて不満を言わせてもらうと、クリアパーツが厚く、レンズ状になっていること。特にノーズ部は厚すぎ。キャノピ窓枠は、タミヤ通例と異なりスジ彫りだけの表現だが、この機体こそ、ごつい窓枠モールドにしてほしかったところ。アウトラインの重箱の隅とは、垂直尾翼が高いことと機首断面形。これらは後述する。

エアフィクス

 エアの爆撃型は後期型カウル。これは前期型の戦闘型キットに爆撃型胴体と後期型カウルのパーツが新規に追加された(つまり両タイプ作れる)もの。戦闘型はレオナルドなどに在庫多数だが、爆撃型は現在店頭であまり見ない。これは、B.XVIとPR.XVIのコンパチで、2種の爆弾倉扉(腹のふくれた爆撃型とスマートな偵察型)、2種のキャノピ(天測窓の有無)のパーツがセットされる。

 タミヤで問題の垂直尾翼、機首断面形に関しては、ばっちりである。ただし、ぬるいモールド、甘い合わせはエアスタンダード。小物については、エアにしてはがんばっている部類だが、タミヤとは比較にならない。どちらをベースに組むかは悩ましい選択だ。

 エアの1つの「売り」である後期型カウルが、またなんとも悩ましい出来。モールドのぬるさは仕方ないとして、エアにしては形状の捉え方もイマイチ。後期型の特徴であるスピナ直後のインタークーラー用インテイクの形もはっきりせず、その後方のキャブレターインテイクも変。さらにカウル本体のラインも変だ。


■ 両社の比較

 タミヤキットの胴体断面形や垂直尾翼については、いろいろとマニアの間で囁かれていることもあり、この機会にエアと比較しつつ検証してみたい。

垂直尾翼と後部胴体 11/20修正

 両社の垂直尾翼を較べると、タミヤはエアより2mm高い。オスプレイのモスキート製作ガイド本(未所有@立ち読み)によると、タミヤは実機より2mm過大という記述があるが、それが何を根拠に書かれているのかが不明。そこで、真横遠方から撮影した実機写真(インアクションpart1 p.24、新版世傑p.64など)をもとに全長との比率で検証する。

 その結果、確かにタミヤは2mm程過大。それだけでなく、垂直尾翼前端付近での胴体も1mmほど太い(高い)。一方のエアは、尾部付近の寸法は尾翼、胴体とも概ね正確である。ところが、主翼後端付近の太さ(高さ)ではタミヤは正しく、逆にエアは1.5mm程細い(低い)からやっかいだ。従って、正確さを求めるなら、エアベースでもタミヤベースでも何らかの修正作業が必要となる。

 そして、タミヤの尾翼を修正する場合、単に尾翼(ラダー)を削ればよくはならないから要注意だ。後部胴体の太さ(高さ)と尾翼高さの比率ではタミヤキットは正しく、胴体を直さずに垂直尾翼だけ修正したのでは、尾翼が低く見え過ぎてしまうのだ。だから、胴体を修正しないなら、尾翼も修正しない方がかえってよい。タミヤの尾翼付け根での幅(コード)は正しい。つまりタミヤの垂直尾翼は、形状としても縦長に歪んでいる。

 なお、胴体の幅や断面形では、両社ほとんど同じで、爆弾倉扉は、完全に互換性がある(精度の違いはあるけど)。



手前エア、奥タミヤ。胴体上部で両社の位置を合わせている。尾翼はタミヤが2mm高い。胴体は、爆弾倉後端あたりで1.5mm、垂直尾翼前端あたりで0.5mmタミヤが高い。

タミヤとエアの内装は、ご覧の通りここまで「そっくり」でビックリ。


11/20修正はここまで

機首

 ヒコーキの顔ともいえる機首。エアは太く丸みのある側面形、タミヤはやや細くキャノピがより後方に位置することもあって、スマートに見える。新幹線に例えればエアは0系「ひかり」、タミヤは100系といったところカナ?

 では、機首の断面形について見ていこう。タミヤは、風防前方の顔に例えると頬骨の部分が角張っている。ただし修正するとクリアパーツにも影響するので悩ましいところ。エアは自然な円断面で、実機写真の印象ではエアに軍配。胴体下半分については、実機でもかなり平べったい形をしており、特に後半部では正しく再現されている。前半部では、爆弾倉扉の部分を見ると、キットは少し角張っている印象を受ける。これらは両社とも同じ。

 また細かいところでは、機首と後部胴体とのつながり方が違う。タミヤは機首が細く後部胴体が太いのだが、その差はキャノピ前後での胴体頂部の高低差に現れており、エアは高低差が小さくタミヤは大きい。この違いについては、検証できる資料がなく、どっちが正しいか不明。



両社を先端で合わせている。エア(奥)は機首からキャノピへかけての胴体の盛り上がり方が大きい。

タミヤは、黄色いマスキングテープの部分での断面形が角ばっている。側面窓の形状も異なり、タミヤは前上方の隅が鋭角。


操縦席キャノピ

 両社、一見同じようでパーツを並べて見比べるとかなり違う。もちろん互換性は無い(つまりタミヤ胴体にエアキャノピは合わない)。とくに前半部の幅が異なり、タミヤが広い。これは前方胴体の形(頬骨の張り方)から決まり、おそらくタミヤは過大。そのせいか全体的に扁平に見える。

 一方エアは、ころんとした全体形の雰囲気は悪くない。前半部の幅については正解に近いと思うが、残念なことに前側方の窓枠(車でいうとAピラーに相当)が湾曲している。タミヤのAピラーは正しく直線。結論は、エアの幅にタミヤの形が正解に近い。



タミヤとエアのキャノピは、特に断面の形状、寸法で異なる。

キャノピの形だけでなく、頬骨部分(赤丸)との関係に注目(といっても写真では違いが分りづらいが)。


機首風防

 これも一見同じ形だが、正面形はタミヤが純粋な楕円形に対し、エアは卵形で10時14時方向が少しつぶれている。どっちが正しいかは手元の写真ではなんとも言えない。ただし、模型のパーツとしてみると、エアは窓枠モールドがぬるっと太く、またウェルド(複数方向から射出された材料が接する境界)が生じており、使用をためらう。タミヤにはウェルドはないが、後期型にするには頂部の窓枠のスジ彫りを消さないといけない。



機首風防と胴体との境界における形状、機首断面形、胴体とキャノピとの関係などに注目。


カウル

 前述のとおり、両社で異なるタイプであるが、残念なことにエアの出来がいまいちだ。



エアは2速2段過給器エンジンの後期型カウル。赤丸付近がくびれているのが残念。


 その他、後部胴体断面形や主翼断面形など気になっている箇所はあるのだが、検証中なので、いずれまた記述したい。


■ モノのモッシー 11/23追加

 モノグラムキットの写真を提供頂いたので、掲載する。感謝。コメントは・・・やめておこう。



左エア、右モノ。

う〜ん。かなり・・・





 組み立て 



■ キャノピ

 まず、今回最も技術的難易度が高いと思われるキャノピから着手。ここでコケたらスタコラサッサと逃げるのさ。

 さて、エアはそのまんまPR.XVIだからすんなり使えればいいのだが、側面のブリスター部が球面でなく多面体のような形状で、歪みもひどく使う気になれない。さらに前述のとおりAピラーが湾曲している。一方、タミヤはモールドもシャープで、エアに較べれば薄くて歪みも少ない。ということで、ベースはタミヤに決定。



エアのパーツ。ブリスターの形状がダメ。前から見ると三角形で上から見ると台形になっている。


 側面ブリスターは透明プラバンのヒートプレス。まずは木型を自作する。材料はヘルダイバーと同様に朴(ホオ)の板。キットパーツの切り欠きにぴったりはまるように側面形を決め、周囲の窓枠の形状を写し、ブリスターのふくらみの正面形、平面形を削り出し、球面に仕上げ、さらに透明ブラバンの厚みを考慮して型を微調整する、という手順。



まず側面形を合わせる。

クリアパーツとの接続部、バブルの正面形状まで合わせたところ。


 ヒートプレスのやり方は、ヘルダイバーと同様。コツはゆっくり加熱すること。タミヤの0.4mm厚透明プラバンを使用し、出来上がり厚さ0.8mmを目標とする。満足するものが絞れるまで何回かやりなおし、出来たら切り出し、キットパーツとの合わせを調整し、合わせを確認すると・・・あ、合わない。

 そこで木型を微修正し、再度同じ工程を繰り返し、今度は合うだろう・・・ま、まだ合わない(以下くりかえし)。4辺をぴったり合わせるのは、当初考えていた以上に難易度が高く、途中で投げ出そうと何度思ったことか。結局4〜5回繰り返し、なんとか妥協できるレベルのものが出来る。天測ドームの方は、それほど難易度は高くない。



瞬間接着剤でコーティング、割り箸の足をつけて、とりあえず木型の出来上がり。手前は天測窓用。

失敗作の山。


 タミヤで問題となるのは風防の裾幅。これを1.5mmほど狭めて出来上がりで20mmに修正する。単純に幅を狭めようとすると先端部が前にせり出してくるから、それも合わせて調整が必要。後半部も下幅を0.5mmほど狭める。0.5mmプラバンでガイドを作り、セロテープで固定して熱湯につける。

 1個目は曲げすぎて失敗。2個目でなんとか成功。こういう事態を想定して、キットは2つ買ってある。失敗してから部品請求するより手っ取り早いし、スペアがあると思い切った修正もしやすい。だから私はよくこの手を使う。



タミヤのパーツの幅を修正。この状態で熱湯に浸す。

幅を狭めたキャノピをタミヤの胴体に乗せたところ。これだけ狭くなっている。


 モスキートのキャノピは、一部のフレームが内側にのみ存在する。キットでは内側に凸モールドで表現されているので、削り落とす。あとで延ばしランナーかなんかで再現する予定。天井部のフレームは天測窓の設置に伴い、位置が変更されているので、元のモールドを削り落とす。出来上がったブリスターを接着し、なんとかPR.XVIのキャノピの形になる。



やっとこさ形になったキャノピ。側面ブリスターの接着面には暗色を塗っておく。これからさらに磨いて透明度を高める。

再掲、エアのパーツ。



■ 後部胴体 11/29追加

 キャノピの目途が立ったところで、その仕上げは後回しにして胴体に取り掛かる。迷いに迷ってベースに選んだのはタミヤ。決定的な理由はモールドのキレ。それに主翼(当然タミヤを使用)の取り付けが楽だし。さてそうなると、垂直尾翼をどうするか?が問題。

 前述のとおり、胴体を修正せずして尾翼だけ修正というのはあり得ない。尾翼はそのままでも、見た目に特に違和感ないし、その方がむしろカッコイイぐらい。ここはあえて修正せずオトナのモデリングをするべか、などと考えつつ気づいたらエッチングノコ片手にゴリゴリ。あ〜結局いつものパターンじゃん。



胴体をカット。カットした前方はそのままに、後方の接着部を1mm削って再接着することで、尾部のみ1mm細くする。

垂直尾翼前端での胴体高さは18mmとする。その後方の切断した上側に残る尾脚付近胴体は、断面が合うように軽く曲げておく。



■ 垂直尾翼

 さてと、これで心おきなく修正できるぞ。垂直尾翼の高さを2mmカット、ラダーと垂直安定板との分割線も同時に2mm下げ、側面形をAIRLINERS.NETの写真に合わせる(キットに合わせ画像の縦横比を修正する)。タミヤのラダー後端は下3/4くらいが直線となっているが、実機の直線部分はもう少し短い。垂直尾翼下端でのコード(前後幅)はそのままで修正する必要はない。



ラダーのリブをあとで再生する際に胴体が邪魔になるので、ラダーを切り取ってしまう。断面の厚みを保持するためにプラバンを接着する。


 垂直安定板の厚さ(付け根)を手持ち写真から算出すると4mmで、キットはぴったんこ。さすがタミヤ。ちなみに、翼厚比では約11%で、高速機(=薄くしたい)、木製機(=薄いと強度的に不利)ということを考えると、この辺が妥協値なのかな(ということで見た目にも違和感がない)。

 ついでに言うと、一般的な金属製の機体では、垂直尾翼、水平尾翼の翼厚比は主翼よりも小さいのが普通。プラモデルでは垂直尾翼が厚すぎるものが多い。とくに胴体からそのままつながっているようなタイプ(FW190など)は要注意。


■ 前部胴体

 尖った頬骨を整形手術。0.5mmプラバンで裏打ちしてから削る。タミヤの胴体はキャノピの幅に影響され不自然に外に広がっている。これを自然な紡錘形にする。レストア中の実機写真は板目が見えているので、このあたりの微妙なカーブがよくわかる。



裏打ちのプラバンは、別パーツとなっている機首の補強も兼ね、広い範囲に貼り付ける。境目は瞬間パテで整形。

胴体前部の「頬骨」を削り、キャノピを乗せる。写真では修正前との違いは全く分らず、実物も作った本人以外は分らない。←なんじゃそりゃ。


 一連の修正作業、はっきり言って無駄だと自分でも思う。だから人にはお奨めしない。まあしかし、他人から見れば全く無駄なことを真剣にやるのが趣味の世界ってもんだ。(←開き直り)


■ カメラ窓

 PR型のアイデンティティ。しっかり再現したい。各型によりカメラ窓の数、位置が異なり、PR.XVIでは5箇所。胴体中心線上にある2箇所は、パーツの分割線上であり、頭が痛い。そこで、写真のように胴体の一部を切り取ってもう一方に接着してから穴をあける。



胴体の一部を切り取る。カメラ本体はキットパーツの周囲にプラバンで壁をつくる。これは瞬着のガスや削りカスによる窓の汚れ防止が目的。

窓は0.4mm透明プラバン。一段凹ませて接着。窓越しにはカメラがほとんど見えず、がっかり。


 爆弾倉部分にある窓は、実機写真で表面から一段凹んだ平面ガラスのように見える。爆撃型では空気抵抗を考慮してツライチの曲面ガラスだが、写真が本職のPR型なら平面ガラスに換装されていてもおかしくない。左舷斜めの窓はPR.XVIだけの特徴。実機写真はCrowood本にある。写真を元に爆弾倉のヒンジラインの延長線上に開孔する。


爆弾倉の窓を平板に換えるため、内側にプラバンを貼り、断面の厚さを確保する。

ついでに乗降ハッチ。キットのクリアパーツは表面に段差が生じるので、穴を一回り大きく広げ、爆弾倉窓のパーツの縁を切ってはめ込む。



■ 後部胴体断面

 タミヤキットについては、右フラップを下げると胴体補強材に当たる、だから胴体断面形状が間違っているのではないか?という有名(?)な指摘がある。胴体断面形については、パネルラインがなく「つるん」としているため、写真での把握が難しいが、確かに最大幅位置がキットは少し下にあるように見えなくもない。ただし確証はなく、また修正するほど顕著でない。

 フラップが補強材に当たるのは、むしろ補強材の表現がオーバーなためと、フラップのクリアランス(実機ではフラップ上げの状態でも胴体とフラップの間に若干の隙間がある)による、と私は見る。


■ お買い物 12/8追加

 胴体の下ごしらえが済み、次はコクピットの内装だが、その前にお買い物の紹介。まずは、カッティング・エッジ(CE)のレジン製コクピット・コンバージョン・パーツ。タミヤ用で、機首をそっくりすげ替えるもの。キャノピ越しだとコクピット内部はよく見えないから、キットストレートのつもりだったが、ホビーランドで見つけて衝動買い¥4,400ナリ。キットより高いぞ。内装の出来具合は非常によろしい。ただし、型ずれのため、胴体側壁の一部が薄かったりして、そのまま使うには躊躇する。

 ではここまでの、お買い物リスト。

タミヤキット×2  5,600 円
エアフィクスキット  3,500 円
カッティングエッジ コクピット  4,400 円
モスキット排気管×2  4,000 円
合計 17,600 円




カッティング・エッジ製レジンパーツ。概ねこれで一揃いで、あとは計器が印刷された透明フィルムがついている。

モスキットの排気管。これはB.IVやFB.VIなどの1段過給器型用で5本タイプ。従ってPR.XVIの6本タイプにするには2セット必要。カネかかるぜ。



■ コクピット

 基本はキットを活かし、個々の機器パーツのうち使えるものをカッティングエッジのレジンから切り取ってくる。切り出す手間が余計にかかるが、胴体の基本パーツの精度を確保できる。レジンパーツは、柔らかいシリコン型に注型する上、レジン樹脂が収縮することもあり、歪みが避けられない。収縮は場合により経年的に進行し、数年後に作品を箱から出してみたら歪んでたなんていう悲しい事件も発生する(経験済み)。

 モスキートのコクピットはサブタイプによって若干の差異があるが、PR.XVIについては資料がなく正確なレイアウトは不明。SAM本にはB.XVIの写真があり、時期的にこれが近いと思われる。まあ、あまり深く考えず、B.IV用のCEをそのまま踏襲。偵察型の機首には、爆撃照準器のかわりにカメラ操作機器があるはず(クルーの体験談に機首に腹這いになってカメラを操作したという記述あり)だが資料がなく再現のしようがない。



CEのレジンパーツを切り取っては貼り付ける。配線は延ばしランナー。内壁は#364エアクラフト・グレイグリーンのビン生。

計器板はキットそのまま。工作法はいつものとおりで、ポンチでくり抜いたデカールを貼る。銀色のカマボコ形のものは「リリーフシステム」。


 個々の機器類の説明。コクピット左側面の中央はスロットルボックスで、これにはプロペラ・コントロール・レバーもついている。その前方にコンパス。その上方のカマボコ形はエレベータ・トリム。右側面の横長の箱は燃料計、その後方の赤と白のレバーは左右のラジエータ・フラップ操作レバー。4本1まとまりの黄褐色の筒は信号弾。キャノピ天井にある小窓から発射する。

 乗員席後方の3色のボタンのついた箱はT.1154型送信機。これが乗っている部分は、じつは左右一体で製作される主翼の上面で、正しくは翼形断面で上反角がついているはずだが、模型で再現するのは無意味。その前方にある黒い箱はR.1155型受信機。機首部にある赤いボトルは酸素らしい。米軍では緑で英軍は赤?引き続き調査中。



パイロット・シートのクッション(ベルトつき)と座面はCEレジン。背板のみ0.3mmプラバンに置き換え。肘掛けはキットでステーは0.2mmプラバン。

ナビゲーター席のクッションもレジン、背板はプラバン。パイロット後方の無線機ラックは、SAM本のB.IVのイラストを参考にでっち上げ。


 出来上がったコクピット。レジンパーツの表現力のおかげで、労せずして密度感のある仕上がりだが、残念なことにキャノピを乗せるとほとんど見えない。まあ、考証もぬるいからよく見えなくて幸いかも。なにしろクッションの真偽は確認できず、ハーネスは、この頃には穴のあいてない後期タイプの可能性大、シート座面の形状も実機とは異なる。

 それにしても、モッシーのコクピットは狭い。キャノピの幅は約1mなので、自分の頭がその中にある状態を想像してみると分かる。2名の席が前後にずらして配置されているが、並列では肩が収まらないよね。機首も狭く、体をひねって腹這いになる格好だ。ひょっとしてナビゲーターには体格制限があったのではと思う程。


■ リリーフ・システム

 モッシーのパイロット・シートの下には、リリーフ・システムなるものが装備される(途中写真参照)。このシステムは、フレキシブル・ホースと漏斗そして衛生タンクから構成される、と書くと何の用途かお分かりだろう。長時間の飛行任務による乗務員の生理的負担を解消するシステム、平たく言えば「尿瓶」「簡易トイレ」である。このシステム、1個しか装備されないが、クルーは2名、ということは・・・「中尉殿、お先にどうぞ」「いや私はまだいい。君が先に使ってくれ」なんていう会話があったかどうか。(ほとんどのモッシーは士官のパイロットと下士官のナビゲーターのペアで運用された)

 大型爆撃機などでは、機体後方にケミカル処理型のトイレが設置されている例が多い。戦闘機ではそうもいかず、なんらかのポータブル処理グッズ使用となる。日本軍の戦記には、油紙に小便して捨てようとしたが、あまりに高空だったため窓に凍り付いた、などという記述もある。いずれにしても、飛行服を厚着しハーネスなど装着した状態での「使用」には相当の困難があっただろう。極寒の高高度では尻を出すのも大変だ。

 某J隊の対潜哨戒機P-3Cでは、リリーフ・チューブなる装備があり、これはチューブが機外に通じているというもの。基地祭で機体が展示されると、ちょうど手の届くところに穴があり、皆もの珍しそうに指をつっこむのだそうな。気をつけよう。  


■ キャノピ再び 12/17追加

 胴体左右の接着前に、キャノピと胴体との合わせを調整しておく必要があり、キャノピにもう少し手を加える。PR.XVIとB.IVのキャノピは、ブリスターと天測窓の他に、予圧型か否かという機能上の重大な差異があり、外形的には正面窓フレームの形状が異なる。PR.XVI作るなら、ぜひ再現したいポイントだネ。



再掲。加工前の状態。非予圧型は「つるん」とした窓枠。しかもキットは本来平面である正面窓が湾曲しておりNGだ。


 作業性を考慮し、まず前面窓を全て切り取る。0.4mmプラバンで窓を置き換え、周囲の細い枠をスジ彫り、少し段差をつけて接着する。中央の縦フレームには適当なプラ材をはさむ。下端のフレームは0.2mm透明プラバン。キャノピが出来たところで、胴体との合わせを確認。摺り合わせをしておく。



前部を切り取る。手前にあるのは0.4mmプラバンで新造した窓。天測窓にも穴をあけ、その縁は目立たぬよう斜めにカット。

できあがり。透明だと出来具合の確認が出来ないので、内部色を塗る。側面ブリスター部の下端にもフレームを追加している。


 次に、機首側面小窓を仕上げる。キットの透明パーツは瞬間で接着し、胴体と完全にツライチに削る。窓枠はスジ彫りで表現するが、同時にキットの窓の形状を修正する。右下写真でキットとの形状の違いが分る。



0.2mmプラバンでテンプレートを作り、両面テープでしっかり固定。ケガキ針でスジ彫り。

次に外側の枠をスジ彫りする。直線部とコーナー部に分けて、エッチング・テンプレートなどを利用して彫る。



■ 胴体接着

 ようやく胴体左右の接着だ。溶剤系の接着剤は接着部が事後的にヒケてきたりして嫌なので、瞬間を使う。瞬間は衝撃に弱いから、補強にのりしろを付けておく。特に機首上面は必須だが、機首窓からそれが見えてしまう。そこで、SAM本にイラストのある円形のヘッドパッドを取り付けて隠す。



接着部には補強のベロをつける。もう1つの胴体パーツから切り取ると断面のカーブがぴったりだ。

機首部。円形のヘッドパッド。その後方は接着シロ。

B.IVの航法燈は2個だが、PR.XVIになると3個になっている。いつものように色つきプラ材をはめ込み、裏には凹ませたアルミ板。

接着、整形した胴体に機首風防とキャノピを仮組みしたところ。キャノピ後部に生じた隙間をプラバンで塞ぐ。





組み立ては続く。次は主翼まわり。



次ページへ(Next)

HOME