P-47Nサンダーボルト(1/48タミヤ)製作記

2004.9.5初出




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 はじめに


■ 最強ファイターN

 第2次大戦最優秀レシプロ戦闘機は、P-51マスタングというのが大方の見方であるが、「最強」戦闘機ならサンダーボルトN型である、と私は断言したい。最高速度、武装とペイロード、サバイバビリティは最強の名に恥じない。さらにNになって航続距離が延び、翼面積の拡大により空戦性能も向上した。操縦席には肘掛つき、キャノピ開閉は電動だ。

■ Nの翼

 サンダーボルトDは有り余るほど資料があるのだが、Nについては案外少ない。登場時期を考えると致し方ないが、世傑でもごくアッサリの記述で、ここでBodieの大著(Republic'sP-47 THUNDERBOLT : Widewing Publications)の記述をベースに補足したい。


 Nは主翼が改設計されたのだが、タイフーンとテンペストのように、完全なる新規設計ではなく、大部分がDの基本構造そのままである。
 開発経緯をたどると、そもそもNの主翼改設計の目的は、空力の改善ではなく、航続距離増加のための燃料タンクの追加である。設計や生産上のロスを少なくするため、Dの主翼桁付け根にプラグを挟み、当初は片側27インチ延長し、出来たスペースに燃料タンク追加を見込んだ。

 しかし、翼幅の増大に加え、脚や機銃、弾丸という重量物が外側に移動し、機軸まわりの慣性モーメントが増加(つまりはテコの原理)したことで、ロール率が悪化した。
 最終的に、付け根の延長を18インチとし、翼端を切断翼に変更、エルロンを面積の大きいものに変更、フラップを延長した。また、片側につき2個で100ガロン(資料により異なる)のタンクを増設し、翼端部前縁の平面形にも若干の変更が加えられた。その結果、付け根の延長ほどは全幅が増加せず(全幅42ft.6-13/16in.:資料により異なる)、角型翼となって翼面積は7%程拡大した。

 翼面荷重が下がるのだから直感的にも理解できるが、結果的に空力が改善され、ここに真の最強ファイターが誕生したのである。
 ロール率はエルロン面積増大のためかDバブルと同等以上、そして、常にDの内側を旋回できたそうである。最高速度はエンジン出力向上のためDより優速(同エンジンのM型よりは15mphほど劣る)。ただし、上昇率は重量増大のため低下した。

 なお、世傑では主脚が改修され、トレッドが3フィート拡大し、三点姿勢も低くなったとあるが、他文献での記述は見られず、トレッドや三点姿勢の変化は、単純に翼付け根での延長によるもので(3フィート=18インチ×2)、あっても材料、構造の強化程度と考えられる(タイヤサイズは変更された)。
 また、翼型に関する記述はないが、上記の経過を考えると、意図して変えてないが、エルロンの変更で主翼コードが変化したので、厳密な意味では同じ翼型ではない、だから同じとも書けない、というのが真相ではないか。

 後日入手したN型製造図より、この部分の主桁および後桁は、延長プラグの部分で折れ曲がり、それより内側では機軸直角となることが判明。このため胴体の主翼取付部には変更がない。一方、翼前縁の平面形は機銃部に屈曲点があり、胴体付け根でのコード長さはDと同じとなる。この屈曲は非常にわずかなので分りづらいが、大判の写真で確認できる。また、翼厚に関しては、正面から見ると下面がカーブして延長部分でも厚さが増えていない。このため、フィレットも基本的にD型と同じ部品と思われる。(2020.8追記)

■ Nへの道

 サンダーボルトの熱烈なるファンの私としては、タミヤのバブルトップは発売時点から気になる存在。ただ作っては面白くないし、48以外でもNは未だ作ったことが無い。アカデミーの翼をくっつければ簡単に出来そうだな、と目論んでたところ。

 一方、ネット上でのひょんなやりとりから、カッティングエッジ(CE)のN用コクピットを、不要デカールと交換で入手。静岡ではナチュラルメタルの表現技法を教わり、たまぐりなる極小○リベット再現ツールを入手。と、周辺環境も整う(外堀が埋まる、とも言う)。

 タミヤのこれまでの傾向と部品分割からして、Nの発売は全く期待できないから、安心して取り組める(後期型カウルの蚊とか出ないもんな)。メッサー、デュースとハード・モデリング続きで疲れ気味だが、さあ、作るなら今だ!!気合を入れて頑張るぞ。

■ 製作コンセプト

 Nへの改造と○リベット&銀塗装が目玉。それ以外は70点に要求水準を下げて完成を目指す。とはいえ、胴体平面形だけはきちんと改修したい。

 主翼とドーサル・フィンをアカデミー、主車輪ホイルはレベル、エンジン・ギヤケースはハセガワコルセア、コクピットにCEレジンを使い、あとはタミヤ。とりあえず、これでいくつもり。どっかで車輪のレジンパーツを出してくれないかなあ。  



CEレジンとハセモノ=レベルのカルトグラフ。

左レベル、右ハセガワ=コルセア

■ キットレビュー

 ではここで恒例のキットレビュー。辛口なのは機体への思い入れとご容赦いただきたい。

タミヤ Dバブル

 優れたキットだが、胴体平面形は大間違い。その結果、カウルがか細く逞しさに欠け、逆に胴体は太っちょで鈍重に見えるのが残念。詳しくはレイザーバックの項を参照願う。バブルトップの改修ポイントはきっちり再現されており、全く問題ない。後部胴体の部品分割は、MかD後期を目論むものだろう。

アカデミー N

 胴体のプロポーションは、今ふたつかみっつ。じたばた改修するより、素直にタミヤと交換する方が簡単。主翼平面形は前縁の屈曲も表現されており、一見良さそう。ところが、断面形では最大厚の位置が前寄りで、後半の「ぺったんこ」が広く、平面形も翼端のテーパーが強く、エルロンのコードが不足。脚庫の出来はタミヤと比べると不十分。小物は比較的良く、特徴的な車輪ホイルは十分活用できる。



上アカデミーは、ぱっと見良いが、翼型、平面形ともに問題あり。機銃パネル裏側の彫刻はgood。下タミヤ。

アカデミーの脚収容部は一発抜きで、奥行きが表現されてない。

レベル=モノグラム N

 ハセモノ版を高いカネ出して購入したが、出来は今みっつよっつ。モノグラムの名が泣く。アカデミーと比較するなら、胴体、主翼などのプロポーションにアドバンテージがあるが、タミヤ、ハセガワとは比較にならない(頭でっかちなのは、タミヤのアンチテーゼとしては評価できるけど)。合わせとモールドは90年代のキットとは思えず、素組みでも相当苦労しそうだ。
 救いは、車輪ホイル、エンジンなど一部小物が流用に耐えることと、ハセガワ版のカルトグラフ・デカールの質が良いこと。このキットを、まともなNのモデルに仕上げた方には最大級の賛辞を送りたい。



左から、タミヤ、レベル、アカデミー。

レベルのまあ使えそうなパーツ群。



 

 組み立て 9/10追加


■ コクピット

 側壁、床、シートをCEレジン、残りはキットパーツを使う。CEのパーツは、手元の資料と見比べてNの特徴をよく再現している。D型でも-30の写真を見ると床がコルゲートでなく平板で(注:-25とされる写真でも平板となっている)、側面の機器類も初期型とかなり異なっており、むしろNに近い。タミヤのパーツはD初期型そのままで、D後期型の場合、N用のパーツを使う方が正解に近い。シートには肘掛が付いていないが、実はN-15からの装備で、大戦参加機には付いていないのが正解。

 コクピット内部の塗色は、初期型Dではインテリア・グリーンと考えてほぼ間違えないと思っているが、後期型についてはD&SのD-30のカラー写真などから判断して、ダル・ダーク・グリーンと思われる。では、一体いつから変更されたか、など謎は残るのだが。なお、1/72サンダーボルトIIの項にも別出典の考証を記載しているので参考まで。

 レジンは、洗剤とクレオスのシンナーで洗っても離型剤が十分に落ちず、塗料をはじくこと著しい。厚塗りして抑え込んだが、経年変化が少し心配。一部にでかい気泡があり、瞬間パテで埋める。床や側壁は反っているので、裏にプラ板を貼って矯正。

 計器盤は、CEの方がNの特徴を正確に表現しているが、モールドのキレのよいキットパーツを使用する。中央下部に小パネルが追加されているので、CEから切り取って取り付ける。また、実機では上部中央が塞がれてなく、パーツを切り取る。左側下部にスイッチ・ボックスが追加されている写真もあるが、流用できるパーツがなく見送る。



側壁、床、シートはCE。計器板、バルクヘッドはタミヤ。

メーターは、いつものようにデカールを切り取って貼りこむ。

計器盤裏側も完成後に見える。レジンからディティールを切り取ってくっつける。

胴体に組み込んだところ。

■ 胴体幅の修正

 基本的にレイザーバックと同じ方法で、接着面を削る。幅も同様29mm。バブルキャノピーの方が取り合わせの処理が簡単。パーツに曲げを加えながら、上から見た胴体側面ラインを機首からコクピット後端まで一直線にする。キットの先端は絞込みがきつく、切り込みを入れクサビを挟む。胴体内部には補強&変形防止、コクピット内へのゴミの侵入防止、インタークーラー部の筒抜け防止などのプラ板細工を施しておく。


赤く塗った部分を削る。右の写真も同様。

マーカーは塗装時には良く拭きとっておかないと、いつまでも滲んできてひどい目に遭う(過去経験済み)。

キットのプラが白くなっている部分は、変形を加えた痕跡。理由があって、いろいろ手を加えているので、読み取っていただきたい。

胴体内部には、主翼の補強部材を追加する。コクピットは下方からプラ板で支える。

■ カウル幅の修正

 こちらも前回の方法を踏襲、下の写真のように分割して間にプラ板を挟む。前回は、先端のスジ彫りを残そうとしたため、形状的に不満が残った。そこで、先端リップに0.3mmプラ板をぐるりと貼り付け、裏から瞬間パテで補強し、先端の絞り込みのカーブや開口部の形状を納得するまで削り込む。開口部は、正面から見て4時8時方向に丸みを持たせる。


カウルは3分割して間にプラ板を挟む。スジ彫りなどは後回し。

胴体平面形状に注意願う。これが正しいサンダーボルトの胴体。

■ 主翼 9/15追加

 いよいよN型改修のメイン、主翼の工作だ。当初、アカデミーを使う予定だったが、翼型とエルロンを修正、タミヤの脚庫を移植、胴体取り付けも工夫が必要、など追加工作が結構手間。平面形も良く見れば前縁の屈曲がオーバーで、翼端のテーパーが強すぎる。実機の真上からの写真で、翼端でのコード(翼弦長)を割り出すと29mm。アカデミーでは全然足りない。

 一方、実機の開発経緯からして、基本形はDの主翼そのままなので、むしろタミヤを使えば脚庫やエルロン分割部の素晴らしいモールドを活かせる。などと考え、当初の計画を変更し、タミヤの主翼ニコイチとする。

 まず下準備。下面の胴体接合部は、複雑な部品分割なので、下面パーツ、車輪カバーから必要部分を切り取って、胴体パーツに接着、整形しておく。また、Nのフラップは、Dほど胴体側に食い込んでない。フラップの端を2mmほど切り取って、胴体側に接着する。


延長部は、もう一方の翼パーツから、こんな具合に切り取ってくる。

翼端部はこんな具合。もう一方の翼からエルロンを切り取ってくる。翼端はレベルを使用。


 主翼は2個のパーツをうまく使い、付け根で9.5mm延長する。接合ラインを直線にするのがポイント。エルロンと翼端前縁はもう一方の翼パーツから切り出す。翼端はレベル。
 フラップはニコイチで内側に延長するだけで、取り付け部は変更する必要がない。パーツの構造上フラップダウンも簡単で、そっちの方が模型的に見栄えもするが、ここはやはり翼の美しさを見せたい所。アップ状態として、フラップを翼上面パーツに接着する。


胴体への取り付け。赤い部分は、胴体側に固定している桁で、これにより強度と上反角を確保する。胴体側の処理にも着目願う。

着陸燈はD後期と同じ位置。モールドを、そっくり切り取って埋め込む。3色ライトは色付きプラ材。

 主脚収容部の胴体寄りの側壁は、中央部がコルゲート状で、しかもタイヤのクリアをとるため凹んでおり、自作は困難な形状。ここはレベルを使用する。高さが足りないのでプラ板を上下に接着。
 後方の側壁は、タミヤから切り取ってくる。ネットで入手した現存N型のクローズアップでは、Dのような○型の紋様はなくただの平板なので、裏返して接着。


延長部は、青矢印のパネルラインが一致するように接着する。赤で示した部分の後縁形状はDと同じ。

下面側延長部は、プラ板を使う。エルロン、フラップの深い彫刻はタミヤならでは。

 延長部では、当然ながら前後に段差ができる。後側はフラップ分割線が直線となるように延長し、前側は、胴体取り付け位置に合わせて削る。これにより、機銃部での微妙な屈曲も再現される。
 また、翼後縁がねじり下げの美しいカーブを描くよう、細心の注意を払う。これは、Dをフラップアップで組む場合でも同様だ。

 後縁平面形状の大部分はDと変わらない。また、フラップ延長部分の後縁は、機軸に直角。前縁翼端部のカーブは僅かで、翼端で1mm強後退する程度。翼端部は、下面が切れ上がっている。以上を念頭に置き、外形を削っていく。勿論、邪魔なバルジは、デザイン・ナイフで切り取っておく。

■ N型改造の総括

 主翼については、手間と完成度の両面から、タミヤのニコイチがベスト。一見大変そうだけど、出来の悪いキットをまともな状態にするよりは楽だし、工作の醍醐味もあって楽しめる。で、部品取りにはレベルを使えば、アカデミーは不要。
 ただ、細かいことを言わないのであれば、安価なアカデミーから調達というのもアリ。コクピットはレジンに置き換えるのが簡単だが、床だけプラ板で作り直し、側壁等はキットをベースにしても、そう手間はかからずNらしくなるだろう。

 アカデミーの主翼は使えない。きれいなスジ彫りのおかげで、ぱっと見は良いのだが、基本的プロポーションが狂っており、正確に直そうとすると、それなりの苦労を強いられる。そういえば、アカデミーってそういうメーカーだったよな。忘れてた(某蛇の目ジェットでひどい目にあったのだよ)。
 レベルは、さすがといえばさすが。正しい。なお、市中出回っているNの平面図は、いい加減なのが多いので要注意。


■ ドーサル・フィン 9/23追加

 簡単な作業と思いきや、意外と手こずる。パーツ状態で好印象のアカデミーから移植したところ、何故かカッコ悪い。実機写真と良く見比べると、上縁が後ろ下がり。相変らずのアカデミー・マジックだ。正しくは、機軸(胴体中央のパネルラインが目安)とほとんど平行で、ごく僅かに後下がり。
 そこで、高さを修正し、上縁を鋭角に削り、基部にプラペーパー、隙間は瞬間パテで埋め、ちまちま整形するが、いまいちしっくり来ない。ハセガワD-30のも使えない。

 結局、レベルから切り出す。これが正解。ぬめっとしたモールドを一皮剥くように削ると、基本形は正確なので俄然印象が良くなる。パテの使用も最小限で済む。ただし、タミヤの胴体に合わせるためには、若干の「曲げ」と慎重な削り合わせが必要。

 ドーサル・フィンの改修作業は、M型の発売を待てば少しは楽になるだろう。コクピットと着陸燈も、そのまま使える。まあ、それを言うなら「N」の発売を待つのが最も楽だけど、いつまで待っても出ないだろうな。



モデルでは尾翼を切り欠いたが、残した方が正確なラインを出しやすいかな。

上縁は鋭角。基部の幅は結構広い。



フィンとキャノピが加わり、より一層Nの形らしい。

■ たまぐり

 ドーラで○リベットは懲りたはずなのに、また同じ苦労をしたいとは、相当ビョーキが進行しているようである。

 たまぐりセットの最小径(2番)を使用し、まずは尾翼下面で試し打ち。ドーラで使用したシャーペンよりは作業性が良く、尾翼くらいなら快調だ。ガイドには0.3mmプラ板+両面テープ。テープの粘着力が落ちれば、どんどん貼り替える。ダイモ・テープと全く同じ使用感だが、より安価。塗装時の研ぎ出しを考慮し、打った後は#600ペーパーで平滑に磨く。彫刻刀での「めくれ」取りが不必要なのが有難い。

 サフを吹いてみたところ、径が少々大きく、うるさく感じる。そこで急遽インターネットで0番と1番を購入。代引きで注文後、2日で届くのはさすが。00番(0.2mm)は品切れ。Nの尾翼は塗装されている場合が多く、無塗装部よりは大きい径でも良いだろうと考え、尾翼上面は1番とする。0番だと点にしか見えない。



#2(0.35mm)で打ち、薄くサフを吹いたところ。

こちらは、#1(0.3mm)。下の定規(1目盛1mm)と比較されたい。

■ 続、たまぐり 10/19追加

 機体全体を何番で打つか、が問題。そこで主翼下面を#0で打ち、サフと8銀を軽く吹いた状態で、尾翼の#1と比較する。#0は、厳密なスケール度や、どアップでの精密さでは優るものの、一見したとき○でなく●のように見え、一方、#1は○がはっきり分る。ということで#1に決定。

 たまぐりは、針と比べ、パーツに負担がかかる。裏から見ると、リベットラインに沿ってプラが白く変色するほどだ。今回のようなツギハギ細工では要注意。また翼後縁などは慎重に。アルテコ瞬間パテとの相性は良い。木のグリップに人差し指をかけ、親指と中指で針先を持つ。慣れると結構なスピード(毎秒1個)で打てるが、2時間もやると肩は凝り集中力が低下して限界。動翼のリベットは、一旦溶きパテで埋めてから打つ。



主脚庫後方のパネルラインはこのようになっている。縁のリベットが目立つので#4で打つ。脚庫はこのとおり。手抜きだが、結構それっぽい。

主翼延長部のリベットラインは推定。

 主翼のリベットラインは、基本的にDと同じ。延長部と主脚収容部後方に新設された燃料タンクの部分が異なる。延長部のリベットラインは、手持ち資料では不明で、推定となる。
 今回は、リベットラインの考証には時間をかけず、前回のレイザーバックのとおり、ただひたすら手を動かしたが、それでもやはり時間がかかる。主翼片側片面で2時間。トータルだと20時間ぐらい・・・いやもっとかな。

 途中、飽きてしまって浮気の虫が・・・

■ 続、主翼

 リベットと上下接着の作業順序は、よく考えないと手戻りだ。前縁と翼端部のみ残して先にリベットを打ち、上下接着、整形後に残りを打つ。翼端部はリベット打ちのストレスに耐えるよう、接着時に内部にポリパテを充填する。
 翼端チップはレベルのパーツだが、厚みを増すためプラ材を貼り付けてから整形する。翼端のエッジは、横方向から見ると途中で折れ曲がるという微妙なライン。しかもエッジだけ見ると負の迎え角がつく。平面形はP-51によく似ている。  



3色ライトは、内側に凹ませたアルミ板を接着。パンチング・メタルに筆の柄でぐりぐり。

光を当てるとキラリと輝いてうれしい。。

正しい形状とするために、翼端燈の部分も一体に削り出す。

延長部内側には補強のプラ板を接着。これでたまぐりの圧力に耐える。

■ お買い物

 Nの主車輪のレジンパーツをウルトラキャストで発見。ネットでオーダーする。送料込みで11.45カナダドル(1000円ちょっと)。国内模型店(イエサブ)では同社のタイヤパーツが800円台なので、電車賃など考えればインターネット・ショッピングも悪くない。2個以上なら割安だ。同社は全て航空便発送で、注文後1週間で到着。

 さて、気になる出来具合だが、エッジはシャープ、トレッドパターンもきれいで、十分使用に耐える。残念なのは、アカデミーのホイール部をそのまま流用していること。これは、一見良さそうなのだが、実は径が大きいという問題点がある。

 結局、レベルのホイールを切り出し、タミヤのタイヤに移植することに。こちらは逆に僅かに径が小さく、タイヤとの隙間を溶きパテで埋める。レベルのホイールは、縁にラダー状の模様がないが、当時の実機写真を見ると、初期のNでは模様がないように見える。これが、戦後のNやレストアド・ジャグになると、模様付きを履いている。

 なお、UCの名誉のために補足すれば、アカはタイヤの断面形がおかしいが、UCでは修正され、しかもブロックパターンが彫られ、さらに接地面の膨らみが表現され、それがゲートを切る作業だけで得られるというのは、11.45カナダドルに十分値する。



左から、アカデミー、ウルトラキャスト、レベル+タミヤ。

スーパースケール48-956(左)とCAM48-112(右)。2つも買って、どうすんの?

■ デカール 10/29追加

 買ってから気づいたが、CAMのシートには間違いがある。実機では「The SHELL PUSHER」の文字はカウル左右両側にあるのだが、デカールには1つしかセットされていない。それは、ある方のご厚意で戴けることになり解決したのだが、よくよく写真と見比べるとなんと「The SHELL PUSHER」のサイズがあまりに過大。弾丸まで含めるとカウルからはみ出す程。実機ではカウルフラップにもかからず、これでは使えない。

 同じシートの「MEAT CHOPPER」とグレた赤ん坊の方は、若干大きいがまあ使える範囲内。しかし、手元に機体全体の写真がなく、キャノピ後方のオリーブドラブの有無、アンテナ柱のタイプが確認できない(デカールインストでは、ODなし、ドーサルフィン両側にアンテナ2本とされている)。

 実は、「The SHELL PUSHER」はスーパースケールにもあり、こちらは2つセットされサイズも適正。ところが、シャドーの色が赤(CAMは黄色)。「The SHELL PUSHER」は珍しく機体全体と左右両面の写真が残されている貴重な存在。で、改めて実機写真を見比べると、右側の写真では黄色に見えるし、左側のは赤に見え、どっちが正しいか分らない。

 ただ、左側の写真はよく見るとヘンで、尾翼の黄色がかなり暗く、青の三角の方が明るく写っている。フィルタかフィルムのせいなのだろうか。だとするとシャドーの色調も割り引いて考える必要があるのか。写真に詳しい方、ぜひ情報を。なお、スピナは青とされているが、尾翼の三角より暗く、青だとしてもそれとは異なる色調である。

 さて、もう1枚の「2 BIG and Too HEAVY」はというと、Nで最も派手なマーキング、セクシーなノーズアート、しかも左右異なる絵柄で2度オイシイのだが、悲しいかなシルク印刷の限界で絵が平板。唇が黒というのも艶消し。うーん、どうしよう。ハセモノの「Expected Goose」にするか。でも右側のマーキングの有無が、写真がなくて不明なんだよな。

 などと、つまらぬことで頭悩ますが、これもまた模型作りの楽しみの一つ。

■ カウリング

 先端リップをぐるりと囲むパネルラインは、ランナーに縫い針を接着した工具を自作し彫る。カウル内の整流板は、前回レイザーバックでカウルを作り直した際の没カウルから持ってくる。カウル接合部の補強、パテ整形などは前作と同様。


パネルのファスナは自作テンプレート。両面テープとセロテープでしっかり固定するのが失敗しないコツ。

カウリングの工作は、これで大体終了。カウル内部は、以前作ったものを流用。

■ 主翼接合

 胴体、主翼にやり残したリベットを打って、ようやく「士」の字。結局、リベット打ち終えるのに約1ヶ月。あ、まだ脚カバーが残ってるか。

 なお書き忘れていたが、主翼上下接着の際には、接着面を少々削って翼を薄くする必要がある。でないと、翼を延長した分だけ付け根の翼厚が増し、胴体接合部で合わなくなってしまう。
 この処理が実機でどうなっているかは不明だが、胴体側フィレットで辻褄を合わせているか、翼延長部では翼厚一定かのどちらかと考えられ、モデルでの処理は厳密には実機と異なる。


カウルフラップは一回り大きい#2で。

パネルライン沿いはダブル。

2ヶ月かかってこの状態。桁のパーツにたっぷり溶剤系接着剤を塗り、強固に接着する。

■ 小物

 タミヤのエンジン本体には、パイピングを施す。ギアカバー本体はハセF4U-5Nから。その上の補機はレベルの方が実機に似ているので、切り取ってきて交換する。


タミヤ、ハセガワ、レベルの三位一体エンジン。

脚カバーの縁は薄く削る。技法は1/72サンダーボルトIIと同じ。

■ 小物 11/25追加

 オイルクーラーフラップは、表面を湾曲させる。前半部は0.3mmプラ板を貼って削るが、不要パーツとなる胴体後部のインタークーラー・アウトレットの扉(閉じた状態のもの)が使えることに気付き、後半部はそのように。コクピットの頭部防弾板は、接着時のミスで中心からズレているため、切り取る。ニコイチの余りパーツを使う予定。

 翼端燈は、アクリルのブロックから削り出す。やはり私の技術ではヒートプレスは無理。内部の電球はバイスの穴をナイフで広げて水滴形状の再現を試みるが、あまり成功していないようだ。



写真を撮り忘れてたので今頃紹介。自作カウリング先端スジ彫り用ツール。ランナー部分を開口部のフチに当てながら彫る。

オイルクーラーフラップは、湾曲した表面に修正。

■ キャノピ取り付け

 キャノピは、フレームの縁を薄く削る。後方のは、ガラス面含めて薄く削り、コンパウンドで磨く。前方のはそれだとガラスの歪みが目立ちそうなので、脚カバーの縁のような断面形状に削る。これには三角刀が便利。ついでにフレームとの境をクッキリとスジ彫っておく。これは後にセロテープでマスクする際に効果大。

 胴体幅の修正のせいで、胴体との合わせはパチピタとはいかず、ハカマの部分の削りが生じる。その後にたまぐり。これで折角接着したパーツが外れてドタバタ作業。
 その他、ドーサルフィンの基部を再度薄く削ったり、打ち抜いたリベットを埋めたり、と毎度のチマチマ作業。さあ次は塗装だ。



胴体側取り付け部を慎重に削ってキャノピを接着。前端部が少々浮いている。

前端部を彫刻刀などで削ってリベット打ち。



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