P-51A マスタング(アキュレイトミニチュア 1/48)製作記 その1
2016.7.4初出
![]() |
|
ところで、P-51の製造図面に描かれる線図は、たとえばグラマンなどに比べて、全般的に精度が低い。グラマン機では線図をそのままトレースして使えるが、当機の場合「概念図」というのに近く、ある図をトレースして図面に起しても、それが別の図面と整合しないケースが多々ある。さらにその図面に重要な寸法が記入されてないことも多く、例えば、機銃アクセスパネルは前後長は記入されているが幅の寸法がない。幅は現物合わせということか?? この「甘さ」加減は、同じノースアメリカン社のB-25のマニュアルを基に図面を作成したときにも感じられ、同社の傾向かもしれない。大企業グラマンと中小ノースアメリカン、製図工のレベルも違ったのかな。
アキュのキットで気になる箇所は機首と風防。でもこの二つって模型の「顔」だからねえ。機首はまずエンジンカウルの側面の平板感がないのが目立つ。それと、主翼取付位置が下がったB型以降と比べた時の腹の引き締まり感が足りない。とはいえ主翼部の胴体高さは正しく、この原因は先細りな機首。スピナが小振りで、つられてカウルも先細り。 風防は、側面形や後フレームの断面形は正しいものの、正面ガラス部の傾斜が緩く、その影響で上方の小窓に平板部が生じてしまっている。また内側の金型の形が悪く、正面両サイドの屈曲線が窓枠の外にはみ出ている。金型屋(韓国らしい)がよく分かってなかったんだろな。発売時の雑誌作例でも気付かず、今回パーツをじっくり見て気付いた次第。他の人はどうしてるんだろうとネットで調べると、みな正面から写真撮ってなくて後斜めばかり。成程、そういうことか。 あとは垂直尾翼が高い。実はマニュアルには垂直尾翼高さの数値が2種類あって、キットはそれを勘違いしたものと思われる。各型通じて高さが変化しないことは、実機写真をトレースしてみれば確認できる。 で、以上を図面にしてみる。赤のキットのラインは、実機との違いをイメージ的に表したものである。パネルラインも違ってるところがあるが、それは図示していない。赤の図、単体で見ると、機首イメージは違和感ないけど、重ねると寸法的にはかなり違う。スピナ〜カウルの高さ不足をインテイクの高さで補っているので、シルエットでは差が出ないのだ。逆に、風防は赤単体と青単体で比べると頂部のイメージがかなり違うね。
気を取り直してアルミ材削り出しにトライ。ハンズで2×2cmの円錐ブロックを買ってきて、中心に穴をあけて2mmの真鍮棒を差し込み、ハンドルータで回す。以前手作業でアルミ棒削った時は全然削れずに諦めたけど、ルータ使って荒目の金ヤスリを当てると、意外にも結構削れてくれる。ヨカッタ〜。面で削るより、ヤスリの端の尖った部分を刃物のように使うと作業効率がよい。 連続作業するとアルミもモーターも火傷しそうなくらい加熱し、手も痺れてくるから、適宜休憩。2時間くらい格闘すると、大体スピナの形になる。なお、軸穴を開けるのも手作業では大変。ハンドルータに1mmドリルを取り付け、ある程度削ってから、最後に手作業で2.0mmに合わせる。 |
![]() キットの機首に合わせてみる。キットはオリジナル状態。インテイクの先端パーツはつけていない。 |
![]() 斜めから。カウルの外形にも注目。 |
じつは作業開始時点は、キットのスピナが小振りだと知る前で、サイズは安直にキットに合わせる。その後図面と比べてサイズ違いに唖然。幸い、1ACG機のスピナ後半は迷彩塗装されてるので、この部分をレジンのブロック(Dアップパーツの湯口)に置き換えてサイズを合わせる。 |
![]() これもルータで軸と端面の垂直を出して瞬間で接着。 |
![]() 以上合計3時間ほどでそれなりの形になってくれる。電動工具の威力はすごいな。 |
|
![]() プリントアウトの断面B、Dを切り抜き、0.5mmプラバンに貼って、正確な形状のバルクヘッドを切り出す。 |
![]() 切り抜いた紙をキットの機首に合わせてみると、断面の丸さがよくわかる。上部エアインテイクは、修正に邪魔だから一旦切り離す。 |
![]() キットの機首パーツも同じ位置で切断し、正しい形に曲げながらプラバンに接着。側面形もプリントアウトに重ねながらチェックする。 |
![]() 裏側はこんな具合。バルクヘッドは表まで突き抜けている。キットパーツは曲げたために白くなっている。 |
![]() バルクヘッドに合わせて外側を削り、正しい形状に仕上げていく。スピナとインテイクも仮り合わせして、イメージをチェック。 |
![]() 曲げたプラの戻り防止に裏側にもプラバンをがっちり接着。切削時に左右胴体がずれないよう、ランナーと真鍮線で噛み合わせを取り付け。 |
ここまで出来たら、あとは写真を見ながらカウル外形を整えていく。切り抜いたプリントアウトはゲージとしても活躍。いやあ、図面があるといいねえ。キットのインテイクはタッパが高いだけでなく、断面形状もいまいち。断面図を参照されたい。実機はもっと頂部と肩の断面が丸いのだ。ここもゲージを切り抜いて確認しながら削っていく。
コクピット内の造形には、手元にあるアイリスのB型用レジンパーツを活用する。P-51Aのコクピットの詳細は手持ち資料でそのものずばりの写真がないが、製造時期などからしてA-36とほとんど同じだと考えてよいだろう。手元のP-51、A-36、マスタングI(RAF向けP-51)の写真から類推すれば、P-51Bとも大して変わらない。酸素レギュレータがどこにあるか不明で、レジンパーツから切り落とす。高高度性能の低いアリソン型は酸素が必要なかったのか。 |
![]() キットのコクピット側面機器類パーツ。それほど悪くなく、私としてはこれで十分。 |
![]() こちらはアイリスのレジン。それぞれの造形は素晴らしいが、厚みが気になるところ。 |
![]() 胴体に接着。そのままだと縁が分厚くなるから、フレームはキットパーツ。機器類をレジンに置き換える。 |
![]() 塗装する。使用色の確証はないが、インテリアグリーンとしておく。黒い四角の一部はベタデカール切り出し。アップだと注意書きがツライなあ。 |
![]() 座席と後方防弾板&フレームはアイリスレジン。床(というかアリソン型は主翼上面)はキット。 |
![]() 左2つがキットの無線機。右はレジンのB型用。 |
コクピット内部塗装はブロンズグリーンかも。また、側壁機器類、注意書き黒四角、スイッチ&レバーの色味などかなりフィクション入ってるので要注意。 無線機の詳細が不明。キットの合計5個の小箱からなる無線システム(イラストがスコドロ歩回本にあり)はアリソン型でも初期のようで、1ACG機は後方窓から大きな無線機の箱が見える。ただし、B〜Dで使われたものとは異なるようで正体不明。手元資料を見てもよくわからない。また、RAF使用機は米軍とは異なる無線機を搭載している。マニュアルのイラストは写真となぜか違ったり、このあたりかなり複雑怪奇。
|
![]() サイズの合わない前方部隔壁や翼リブを取り去る。下面パーツが事後変形で反っていて、カーボンファイバの補強桁を接着。 |
![]() とにかく各部削りに削って何とか収める。脚庫前方の隔壁をプラバンで。 |
![]() 上反角(翼基準線で5%、下面だと6.2゚)、ねじり下げ(付け根1.05゚、翼端-0.85゚)、前縁バルジの垂れ下がりに注意して上面パーツを接着。 |
![]() よく考えたら、車輪カバーを閉じるつもりだから、ここまでキッチリ合わせる必要もなかったな。 |
一丁上がりと思ったら、胴体と合わせると翼端取付角が違うし。ヘタレや。接着面を剥がして再接着などコテコテと。で、上下貼り合わせたら、前縁バルジに細心の注意を払って形状を削り出す。この部分は前に突き出ているのではなく、前下方に突き出ているから、下から見上げるとバルジが無いように見え、主翼前縁ラインは前から見ると「ヘ」の字に折れ曲がる。上面のカーブはそのままバルジに垂れ下がっていく感じ。
無線機の詳細が不明だけど後付けは無理。正体不明のままでっち上げ。アイリスのレジンパーツをラックに載せ、キットの無線機パーツを目隠し&台がわりにして取り付ける。しかる後、胴体左右を接着。ヒケが嫌で瞬間を使う。でもって主翼と合わせてみると、機首と主翼下面のつながりがイメージと違う。腹の引き締まり感がないのだ。あれえ、チェックしたはずなんだけどなあ。真相はもしかすると、主翼取付位置が低いのかもしれないが、今さらなので、機首側を盛ることで対処。 |
![]() 胴体内部にあれこれ工作。プロペラ軸の受けは2mmの穴をあけたプラバン2枚。バルクヘッドに溶剤系で接着してすることでじっくり中心出し。 |
![]() 後部胴体底が真っ平ら。隅角部を削って丸める(青矢印)。ラジエータ出口の様子も違うので写真を見て削り込む(赤矢印)。 |
![]() 機首下面を膨らませる。プラバンと瞬間+プラ粉を盛って削る。 |
![]() 機首〜主翼のラインを確認。ここが機軸平行に一直線になるのがアリソン馬の外形のキモ(図面参照)。だから脚扉は閉じるのだ。 |
![]() 主翼工作のまずさでフィレット部にも段差&隙間。プラバンで土手を作ってプラ粉+瞬間を埋める。 |
![]() どうにか、仮十の字。主翼はまだ接着しない。垂直尾翼は2mmほど切り詰める。 |
出来上がりは表面が全てキットのプラ地というのが目標なのに、結果はプラバンやらプラ粉+瞬間やらでコテコテ。ヘタレや。次は風防ヒートプレス。浮気の虫が・・・
|
![]() 正面窓の幅、両脇の窓枠のカーブ(ほとんど真っ直ぐ)に注目。 |
![]() キット風防に正面窓のマスキングシートを貼ったところ。シートのかなり外側に窓枠のスジボリがある。 |
|
![]() 単純な直線でも、線の位置を揃えるためにシートを貼りガイドにする。 |
![]() 機銃アクセスパネルもこのとおり。 |
側面図も修正。
|
![]() 切り取ったリブをプラバンで追加。リブは翼基準面に垂直が正解だぞ。キットやレジンパーツは地面垂直。縁にプラバンの受けを取り付ける。 |
![]() がっちりと車輪ドアを接着。キットパーツは若干隙間があくが表面のカーブは合っており、最小限の削り合せで済む。 |
![]() 再度胴体と合わせてみると、機首とのラインに不満。やはり、キットの主翼取付位置は低いようだ。 |
![]() 取付け部を削って0.5mmほど翼を持ち上げる。フィレット境の段差を再度プラバンと瞬間+プラ粉で埋める。 |
|
![]() 左タミヤ、右アキュレイト。アキュは前縁後退角が小さく翼端コードが過大。タミも翼端前縁カーブを緩くするとベター。 |
![]() 接合部に貼ったプラバン(薄いグレイ)が分かるかな? リブは例によりインレタで再現する予定。 |
|
![]() エンピツで印をつけた風防接合ラインを1mm弱切り取る。 |
![]() 風防、キャノピを接着せずに擦り合わせるため、縁にプラバン細切りのガイドを接着する。正面窓前方のオーバーハングは切り取る。 |
絞り方おさらい。0.4mmプラバン(最近これが定番)を1/6サイズに切り(概ね20×20cmとなる)、軍手2枚重ねで持ってガスコンロで加熱。木の枠をつける人もいるが、手持ちの方が絞りの微妙なコントロールがしやすい。火力は最弱よりやや強め、炎との距離は10cm以下で水平にぐるぐる回して加熱。熱さを我慢しつつ中央が縮んだところで型に巻くように被せる。下に引くと薄くなってNG。 出来上がり1.0mm厚さが理想だが、両側面は0.7mmくらいだな。切り出して整形し、胴体に合わせると、正面風防下端の幅が0.5mm狭い。型に瞬間+ケミウッドの削りカスを盛って修正。正確に0.5mm盛るため、プラバンの小片を接着して目安にする。今度はばっちり。 |
![]() 絞って切り出してざっと削ったところ。正面窓に真っ直ぐプラバンを当てるため、傾斜させて割り箸の脚に固定。 |
![]() 胴体に乗せて削り合せる。正面窓のエッジは製法上甘くなるのは止むを得ない。内部色を塗った上に瞬間を盛る。 |
|
![]() 左アイリス、中アキュ、右タミヤ |
![]() 出来上がり状態。左アイリス、右アキュ。ガラスの感じはアキュも捨てがたいが、正確さでアイリスを採用かな。 |
|
![]() ダブルけがき針が活躍。集中力が切れてきて(一部脱線してるし)、風防は後日。 |
|
![]() 接着部のプラを0.3mm程削る。 |
![]() アルミ板接着。削って磨く。 |
|
![]() 修正前のアキュ翼端。正しい形状は図面を参照されたし。 |
![]() 右翼上面。プラを1段削り、アルミ板を整形。 |
![]() 今度は下面側を同様に工作する。先に貼った上面のアルミ端部が見える。 |
![]() アルミ板接着。 |
![]() 表面をツライチに整形。#600〜#1000ペーパーで磨き、仕上げに軽くラプロスで擦ってみる。最終仕上がりにはちょい光り過ぎか。 |
![]() アルミ作業概ね終了・・・と思いたいが、スピナの穴開けがまだだな。 |
|
![]() 窓枠スジボリのため、テンプレートを貼る。ここで側面窓下辺のラインが違っているのに気づく。←早く気づけよ。前後長さもちょいと過大。 |
![]() 鉛筆書きは、使用したダブル針の間隔。左側面の小窓がまだだな。正面窓下辺のスジボリは胴体との境で、窓枠は胴体上部接着後に彫る予定。 |
|
比較でD型も。ノーズのラインは同じ。352FG、457FS司令John Mayer 中佐のD-10-NA "PETIE 2nd"。 |
|