P-51A マスタング(アキュレイトミニチュア 1/48)製作記 その1

2016.7.4初出

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■ はじめに 

 静岡HSが終わって早ひと月半、そろそろ新規プロジェクトを始動しよう。お題は、アキュレイトのアリソン野馬。ヨンパチ本命のエアP-40Bは発売まで間があり、それまでのつなぎなのだ。だから気になる外形だけ直して、あとは肩に力を入れず作るつもり。外形修復テーマは、製造図データの3D化。並行で以前作成の側面図もリニューアルしよう。マーキングはビルマの1ACGで、スピナ他の無塗装部にはアルミを使い、人より目立とうという姑息な作戦。←でもアリソン馬ではベストな塗装センスだと思うな。




■ 図面

 製作に合わせ、図面をバージョンアップ。Aircorps Libraryの製造図面を読み込んで、以前作成した側面図を修正する。通常の流れだと、側面図の次は上下面図にいくんだけど、キットもそこは多分外してないだろうから、先に断面図を描く。実際の作業にはこちらの方が重要。なお、上のイラストは修正前の図面。どこが違うか間違い探しってか??新規図面対応済み。

 ところで、P-51の製造図面に描かれる線図は、たとえばグラマンなどに比べて、全般的に精度が低い。グラマン機では線図をそのままトレースして使えるが、当機の場合「概念図」というのに近く、ある図をトレースして図面に起しても、それが別の図面と整合しないケースが多々ある。さらにその図面に重要な寸法が記入されてないことも多く、例えば、機銃アクセスパネルは前後長は記入されているが幅の寸法がない。幅は現物合わせということか?? この「甘さ」加減は、同じノースアメリカン社のB-25のマニュアルを基に図面を作成したときにも感じられ、同社の傾向かもしれない。大企業グラマンと中小ノースアメリカン、製図工のレベルも違ったのかな。


  • 上述の甘さの例として、ラジエータ側面図は高さが全然合わない。図面が過大。キットのラジエータがやや深いのはこれが一因かも。

  • マニュアルのsta図には間違いがある。カウル先端がsta0となっているが正解はsta-8。まあ、注意深い人なら間違えないと思うけど。

  • フィレット後方ラジエータ部のパネルラインについて。製造図や現存機(P-51A)では斜めのパネルライン。一方でキット、既存図面、現存機(A-36A)は水平。よく分からないので、とりあえず拙図では左舷斜め、右舷水平としておく。→後日訂正、A-36Aまでは水平、P-51Aになって斜めになる。詳細はA-36A図面の注意書きを参照。

  • エレベータヒンジの高さ位置は、製造図に尾部胴体上端が胴体基準線から10"、そこからエレベータヒンジまで2.42"というものがあり、一応それに従って作図する。写真の印象とは合ってるかな。 拙作旧図面とは少しズレてるけど、これタミヤのインストをコピーしたはずなんだよなあ。

  • 主翼部はフィレット境を図示しているため、当該部の翼型を正確に表したものではない。sta17はちょうど胴体端にあり、フィレット境より内側。



  • 製造図の中にはA型機首断面を描いたものが複数あるが、それぞれの形状がピッタリ一致しない。各図はまあイメージ図みたいなものか。拙図はそれらを参考にしつつ、現存写真も参考にしつつ。

  • 断面Bの2時10時はかなり角ばっている。3時9時は直線。この角はアリソンエンジンのシリンダーヘッドをクリアするため。スピットのアッパーカウルとも通じる液冷V形エンジンの宿命。

  • スピナ直径は27-11/16"。1/48で14.7mm。これは寸法入りスピナ部品図+実機写真検証から絶対間違いない。ただし厳密にはこの数値は内側の円盤で、スピナ外形は板厚1枚分外側になる。

  • カウルの先端は、階段状になりスピナの中に潜り込む。製造図の正面図のラインはこの段落ち部を図化していて、キットはこの先端の直径(13-5/32×2)をスピナ直径と誤解した可能性あり。段落ち後方の直径は28"。

  • EからSまでの各フレームは、製造図の寸法入りコンター図をトレースしたもの(ラジエータ部を除く)。キットもこの情報を反映しており、重箱の隅を除けば防火壁以降の胴体形状は完璧に再現されている。ラジエータ部は別の図面にある断面をトレースして合成。こちらは例の「甘さ」を含んでいるかも。

  • 防火壁上部の断面形、A,B,D型それぞれの製造図を重ねると、ラインはほぼ一致。同じと思われる

  • 主翼付け根前縁のバルジは、形状寸法が分かるいい図面がない。一応リブ断面図などあるにはあるが、上述の甘さがあるのだ。拙図は最大公約数で作図。色つき翼型図は、各断面を25%コードの翼基準線で位置を揃えて重ねたもの。




■ キット評

 基本的にはとても良く出来たキットである。基本的寸法が正確で、公式マニュアル、あるいは製造図面の情報まで一部反映されている様子。ファストバックの断面形は正確で、背中の峰の細さがよく表現されている。タミヤのB型はここが太く、メタボで鈍足な農耕馬っていう風情。また、エンジンシリンダーヘッドの張り出しの印象がよい(絶対的寸度は別にして)。小物の出来は総じてタミヤの方が上かな。もっとも、使えるパーツを適宜選べばいいから問題ではない。

 アキュのキットで気になる箇所は機首と風防。でもこの二つって模型の「顔」だからねえ。機首はまずエンジンカウルの側面の平板感がないのが目立つ。それと、主翼取付位置が下がったB型以降と比べた時の腹の引き締まり感が足りない。とはいえ主翼部の胴体高さは正しく、この原因は先細りな機首。スピナが小振りで、つられてカウルも先細り。

 風防は、側面形や後フレームの断面形は正しいものの、正面ガラス部の傾斜が緩く、その影響で上方の小窓に平板部が生じてしまっている。また内側の金型の形が悪く、正面両サイドの屈曲線が窓枠の外にはみ出ている。金型屋(韓国らしい)がよく分かってなかったんだろな。発売時の雑誌作例でも気付かず、今回パーツをじっくり見て気付いた次第。他の人はどうしてるんだろうとネットで調べると、みな正面から写真撮ってなくて後斜めばかり。成程、そういうことか。

 あとは垂直尾翼が高い。実はマニュアルには垂直尾翼高さの数値が2種類あって、キットはそれを勘違いしたものと思われる。各型通じて高さが変化しないことは、実機写真をトレースしてみれば確認できる。

 で、以上を図面にしてみる。赤のキットのラインは、実機との違いをイメージ的に表したものである。パネルラインも違ってるところがあるが、それは図示していない。赤の図、単体で見ると、機首イメージは違和感ないけど、重ねると寸法的にはかなり違う。スピナ〜カウルの高さ不足をインテイクの高さで補っているので、シルエットでは差が出ないのだ。逆に、風防は赤単体と青単体で比べると頂部のイメージがかなり違うね。


■ 製作開始

 では、製作開始。最初の作業はスピナのアルミ化。某氏がアルミ板叩き出しでスピナを作ったという噂を聞き、まずはそれにトライ。原価一円の直径2cm厚さ1o強のアルミ円盤を焼きなまして叩く。しかし硬いので相当強く叩かないと曲がらず、騒音・振動が酷くてマンションでは無理。では万力作戦はどうかとケミウッドで雄雌型を作り、挟んで万力で締め付ける。これなら静かだが、ケミウッド程度ではアルミに負けて先がつぶれて尖った形にならない。0.7mm板も試すが、延ばすうちに切れてきてダメ。ということで、この方式は諦める。

 気を取り直してアルミ材削り出しにトライ。ハンズで2×2cmの円錐ブロックを買ってきて、中心に穴をあけて2mmの真鍮棒を差し込み、ハンドルータで回す。以前手作業でアルミ棒削った時は全然削れずに諦めたけど、ルータ使って荒目の金ヤスリを当てると、意外にも結構削れてくれる。ヨカッタ〜。面で削るより、ヤスリの端の尖った部分を刃物のように使うと作業効率がよい。

 連続作業するとアルミもモーターも火傷しそうなくらい加熱し、手も痺れてくるから、適宜休憩。2時間くらい格闘すると、大体スピナの形になる。なお、軸穴を開けるのも手作業では大変。ハンドルータに1mmドリルを取り付け、ある程度削ってから、最後に手作業で2.0mmに合わせる。



キットの機首に合わせてみる。キットはオリジナル状態。インテイクの先端パーツはつけていない。

斜めから。カウルの外形にも注目。


 じつは作業開始時点は、キットのスピナが小振りだと知る前で、サイズは安直にキットに合わせる。その後図面と比べてサイズ違いに唖然。幸い、1ACG機のスピナ後半は迷彩塗装されてるので、この部分をレジンのブロック(Dアップパーツの湯口)に置き換えてサイズを合わせる。



これもルータで軸と端面の垂直を出して瞬間で接着。

以上合計3時間ほどでそれなりの形になってくれる。電動工具の威力はすごいな。



■ 胴体修正 7/18追加

 スピナの目処が立ったところで機首の修正に進む。キットの機首は全体的な雰囲気としてはそう大きく外れてないが、いざ修正しようとなると全体があちこち少しずつ違っていて厄介。せっかく断面図を作ったことだし、ここは大いに活用しよう。今回の修正、名付けてバルクヘッド組み立て法(←名付けんでよろし)。以下画像で。



プリントアウトの断面B、Dを切り抜き、0.5mmプラバンに貼って、正確な形状のバルクヘッドを切り出す。

切り抜いた紙をキットの機首に合わせてみると、断面の丸さがよくわかる。上部エアインテイクは、修正に邪魔だから一旦切り離す。

キットの機首パーツも同じ位置で切断し、正しい形に曲げながらプラバンに接着。側面形もプリントアウトに重ねながらチェックする。

裏側はこんな具合。バルクヘッドは表まで突き抜けている。キットパーツは曲げたために白くなっている。

バルクヘッドに合わせて外側を削り、正しい形状に仕上げていく。スピナとインテイクも仮り合わせして、イメージをチェック。

曲げたプラの戻り防止に裏側にもプラバンをがっちり接着。切削時に左右胴体がずれないよう、ランナーと真鍮線で噛み合わせを取り付け。


ここまで出来たら、あとは写真を見ながらカウル外形を整えていく。切り抜いたプリントアウトはゲージとしても活躍。いやあ、図面があるといいねえ。キットのインテイクはタッパが高いだけでなく、断面形状もいまいち。断面図を参照されたい。実機はもっと頂部と肩の断面が丸いのだ。ここもゲージを切り抜いて確認しながら削っていく。


■ コクピット

 機首が8割方出来たところで次はコクピット。まず後方固定窓を胴体に接着する。キットのクリアパーツの合わせはまずまず。どっちにしても胴体とツライチに削るから、セロテープで仮止めして表側から瞬間をたっぷり流す。断面は忘れずにグレイで塗っておく。内側窓も一応#1500ペーパーをかけてからコンパウンドで磨く。

 コクピット内の造形には、手元にあるアイリスのB型用レジンパーツを活用する。P-51Aのコクピットの詳細は手持ち資料でそのものずばりの写真がないが、製造時期などからしてA-36とほとんど同じだと考えてよいだろう。手元のP-51、A-36、マスタングI(RAF向けP-51)の写真から類推すれば、P-51Bとも大して変わらない。酸素レギュレータがどこにあるか不明で、レジンパーツから切り落とす。高高度性能の低いアリソン型は酸素が必要なかったのか。



キットのコクピット側面機器類パーツ。それほど悪くなく、私としてはこれで十分。

こちらはアイリスのレジン。それぞれの造形は素晴らしいが、厚みが気になるところ。

胴体に接着。そのままだと縁が分厚くなるから、フレームはキットパーツ。機器類をレジンに置き換える。

塗装する。使用色の確証はないが、インテリアグリーンとしておく。黒い四角の一部はベタデカール切り出し。アップだと注意書きがツライなあ。

座席と後方防弾板&フレームはアイリスレジン。床(というかアリソン型は主翼上面)はキット。

左2つがキットの無線機。右はレジンのB型用。


 コクピット内部塗装はブロンズグリーンかも。また、側壁機器類、注意書き黒四角、スイッチ&レバーの色味などかなりフィクション入ってるので要注意。

 無線機の詳細が不明。キットの合計5個の小箱からなる無線システム(イラストがスコドロ歩回本にあり)はアリソン型でも初期のようで、1ACG機は後方窓から大きな無線機の箱が見える。ただし、B〜Dで使われたものとは異なるようで正体不明。手元資料を見てもよくわからない。また、RAF使用機は米軍とは異なる無線機を搭載している。マニュアルのイラストは写真となぜか違ったり、このあたりかなり複雑怪奇。


■ 主翼 7/27追加

 キットの脚収容部は、タミヤ1/48などと同じく、開口部の形に隔壁があって、実機の主桁まで抜けているところが再現されていない。さらりと作るなら無視が正解なんだろうけど、なぜか手元にアイリスB型用レジン脚庫があるんだな。仕方ない、仕込んでやるか。と思ったところが苦労の始まり。アキュの翼下面パーツに全然合わない。開口部より狭い脚庫ってどうよ(怒)。



サイズの合わない前方部隔壁や翼リブを取り去る。下面パーツが事後変形で反っていて、カーボンファイバの補強桁を接着。

とにかく各部削りに削って何とか収める。脚庫前方の隔壁をプラバンで。

上反角(翼基準線で5%、下面だと6.2゚)、ねじり下げ(付け根1.05゚、翼端-0.85゚)、前縁バルジの垂れ下がりに注意して上面パーツを接着。

よく考えたら、車輪カバーを閉じるつもりだから、ここまでキッチリ合わせる必要もなかったな。


 一丁上がりと思ったら、胴体と合わせると翼端取付角が違うし。ヘタレや。接着面を剥がして再接着などコテコテと。で、上下貼り合わせたら、前縁バルジに細心の注意を払って形状を削り出す。この部分は前に突き出ているのではなく、前下方に突き出ているから、下から見上げるとバルジが無いように見え、主翼前縁ラインは前から見ると「ヘ」の字に折れ曲がる。上面のカーブはそのままバルジに垂れ下がっていく感じ。


■ 続、胴体

 早く胴体を接着したいので、最低限必要な作業を済ませる。後部胴体断面修正のため内側に裏打ちしておく。ラジエータフラップを切り離し、筒抜け防止の隔壁をつける。尾脚収容部にも取付基部となる天井を設置。

 無線機の詳細が不明だけど後付けは無理。正体不明のままでっち上げ。アイリスのレジンパーツをラックに載せ、キットの無線機パーツを目隠し&台がわりにして取り付ける。しかる後、胴体左右を接着。ヒケが嫌で瞬間を使う。でもって主翼と合わせてみると、機首と主翼下面のつながりがイメージと違う。腹の引き締まり感がないのだ。あれえ、チェックしたはずなんだけどなあ。真相はもしかすると、主翼取付位置が低いのかもしれないが、今さらなので、機首側を盛ることで対処。



胴体内部にあれこれ工作。プロペラ軸の受けは2mmの穴をあけたプラバン2枚。バルクヘッドに溶剤系で接着してすることでじっくり中心出し。

後部胴体底が真っ平ら。隅角部を削って丸める(青矢印)。ラジエータ出口の様子も違うので写真を見て削り込む(赤矢印)。

機首下面を膨らませる。プラバンと瞬間+プラ粉を盛って削る。

機首〜主翼のラインを確認。ここが機軸平行に一直線になるのがアリソン馬の外形のキモ(図面参照)。だから脚扉は閉じるのだ。

主翼工作のまずさでフィレット部にも段差&隙間。プラバンで土手を作ってプラ粉+瞬間を埋める。

どうにか、仮十の字。主翼はまだ接着しない。垂直尾翼は2mmほど切り詰める。


 出来上がりは表面が全てキットのプラ地というのが目標なのに、結果はプラバンやらプラ粉+瞬間やらでコテコテ。ヘタレや。次は風防ヒートプレス。浮気の虫が・・・


■ 風防木型 8/4追加

 ケミウッドを削る前に、風防窓の展開図を描き、側面図に追加する。側方窓の展開図は製造図にあり、この斜め線も当図から。当窓は二次曲面で、この直線が保たれるように曲げられる。木型もここが直線になるように削る。正面窓の形にシートを切ってキットの窓に貼ると、キットはかなり幅広であることが分かる。



正面窓の幅、両脇の窓枠のカーブ(ほとんど真っ直ぐ)に注目。

キット風防に正面窓のマスキングシートを貼ったところ。シートのかなり外側に窓枠のスジボリがある。



■ スジボリ

 並行してパネルラインを彫る。今回も図面の描画要素を使ってテンプレートを切る。これは楽でよい。キットのパネルラインはそれほど大きく外していないが、細かく見れば位置が微妙にずれていたり。この際だから図面どおりにスジボリ。



単純な直線でも、線の位置を揃えるためにシートを貼りガイドにする。

機銃アクセスパネルもこのとおり。



■ 上下正面図

 三枚一挙に掲載。おかげでモケイは進まず。側面、正面、断面図はキッチリA4サイズだが、 上下面図はそれでは収まりきらず、縦に少し長い。A3縦に出力するとちょうど1/48になる(ハズ)。


  • 主翼翼型は、ルート(バルジなし仮想翼型)と翼端の座標値から、いつもの方法で中間スパンの翼型を計算。水平、垂直安定板はマニュアルの座標値。ラダーとエレベータ断面は製造図から。主翼バルジは前述のとおり。 じつはこの主翼バルジの平面形がカッチリ決まらない。拙図はいろんな図面の合わせ技で。

  • 主翼前後縁を延長すると、25%コード位置で交わる。すなわち25%コードラインは機軸と直角。胴体においてはsta99となる。

  • 主桁断面は[型(左が前)で、このウェブ前面が主桁staとなる。したがって、パネルラインやリベットラインは主桁staより後方に位置する。後桁断面も[型で左が前。この[は、一体で(おそらくプレス加工)コーナーはRがつく。各リブは主翼基準線に直角。

  • 主翼主桁は機軸直角でなく約1゚の前進角がつく。胴体中心における主桁位置(胴体sta)は、リブ部品図から計算して105.198となる。これは組立補修マニュアルの主翼前縁座標値から求めた主桁ラインを延長(座標はsta75から翼端までしかない)したものと図上で一致する。

  • 主翼組立図におけるsta17はcantで逆ハの字。上反角がつくと地面に垂直となる。

  • 製造図の各主翼リブにおける主翼基準線は、25%コード位置におけるコード基準線(翼前後縁を結んだ線=主翼取付角がある)の高さで胴体基準線に平行な線であるとすると、整合が良い。ただし、拙図の翼型図ではコード基準線と25%コードを図示。



  • 右翼下面の三色灯は一部のレストア機にあり。実機も本当にあるかが確証ない。情報求む。マニュアルの部品図では、A-36ではラジエータカウル下面に三色灯がある。これも実機写真では未確認。

  • エルロン前方にある三日月形突起は、B型の途中から導入されたらしい。よってA型にはない。

  • 翼燃料タンク下側カバーのネジ穴は部品図のとおり。前列56、外側35、後方47個(コーナーはダブルカウント)。間隔は前外後で異なるが、実機写真とも整合する。

  • 脚収容口は脚カバーの図面と主翼組立図とで形がビミョーに異なる。仕方ないから脚カバーの図に合わせる。例の甘さがある可能性はあるが、こっちの方がまだましだろうと。ところが、脚柱カバーと車輪カバーのエッジは、製造図では重ならない。仕方ないから両方を寄せて描く。

  • 脚柱カバーのリベットラインは製造図そのまま。車輪カバーのリベットラインはどれが表に現れるものか不明の部分もあり。

  • sta135.5から190.5までのストリンガーは、レストア中写真と図面とで本数が異なる。図面は1本少ない。一応レストア機に従う。

  • ラジエータカウル下面のリベットラインが不明。マニュアルに示される当該部品番号の図面が、手元の製造図から欠落しているのだ。写真もないし。後方ドアのリベットはは製造図から。



  • 主翼前縁ライン(図中細黒線で表示;ちなみに他機種図面も同様)は各翼断面図から起こしているのでまずまずの精度。独特の垂れ下がりに注目。

  • 主脚は製造図のトレース。甘さたっぷりかも。ピボット位置の精度はまずまず。

  • プロペラ直径10'9"。



 側面図も修正。
  • カウル上面左右のパネル/スリットは製造図に詳細な位置、サイズあり。カウル左舷のオイルフィルタドアは高さ6-11/16、幅6-1/16、パネル中心が機体中心から9-3/4で前後位置としては中心がsta75-1/8。カウル右舷のスリットパネルは、高さ6-1/4、幅7-1/4(平行線の離れ距離)カウルパネル下端から2-1/4(展開図上で)。

  • 脚は実機写真のトレース。ただし現存D型。

  • プロペラ位置は、製造図と写真とで不整合。もちろん写真を優先。ブレード形状は甘い。




■ 続、主翼 8/31追加

 のろのろとスジボリ進行中。大体終わってきたところで車輪ドアを閉める。



切り取ったリブをプラバンで追加。リブは翼基準面に垂直が正解だぞ。キットやレジンパーツは地面垂直。縁にプラバンの受けを取り付ける。

がっちりと車輪ドアを接着。キットパーツは若干隙間があくが表面のカーブは合っており、最小限の削り合せで済む。

再度胴体と合わせてみると、機首とのラインに不満。やはり、キットの主翼取付位置は低いようだ。

取付け部を削って0.5mmほど翼を持ち上げる。フィレット境の段差を再度プラバンと瞬間+プラ粉で埋める。



■ 水平尾翼

 キットの水平尾翼は平面形状が不正確。これは簡単に修正できるが、実機の水平安定板よりエレベータが厚いという独特の断面形が再現されていない。そこでタミヤを流用する。当然基部は合わない。微調整で済まそうとすると、後退角がついてしまうので、接合部にクサビ形のプラバンを貼って調整。



左タミヤ、右アキュレイト。アキュは前縁後退角が小さく翼端コードが過大。タミも翼端前縁カーブを緩くするとベター。

接合部に貼ったプラバン(薄いグレイ)が分かるかな? リブは例によりインレタで再現する予定。



■ 風防

 ようやくヒートプレスにとりかかる。キットの風防と胴体の合わせは、実機のガラス境がパーツ境となっている。これはタミヤのB型も同じだが、接着面が外から見えてしまって具合が悪い。これだけでも風防自作の理由になるくらい。当然ここは接着面を胴体側に追い込む。木型は表面を0.5mm削って足をつける。これで準備完了。




エンピツで印をつけた風防接合ラインを1mm弱切り取る。

風防、キャノピを接着せずに擦り合わせるため、縁にプラバン細切りのガイドを接着する。正面窓前方のオーバーハングは切り取る。


 絞り方おさらい。0.4mmプラバン(最近これが定番)を1/6サイズに切り(概ね20×20cmとなる)、軍手2枚重ねで持ってガスコンロで加熱。木の枠をつける人もいるが、手持ちの方が絞りの微妙なコントロールがしやすい。火力は最弱よりやや強め、炎との距離は10cm以下で水平にぐるぐる回して加熱。熱さを我慢しつつ中央が縮んだところで型に巻くように被せる。下に引くと薄くなってNG。

 出来上がり1.0mm厚さが理想だが、両側面は0.7mmくらいだな。切り出して整形し、胴体に合わせると、正面風防下端の幅が0.5mm狭い。型に瞬間+ケミウッドの削りカスを盛って修正。正確に0.5mm盛るため、プラバンの小片を接着して目安にする。今度はばっちり。



絞って切り出してざっと削ったところ。正面窓に真っ直ぐプラバンを当てるため、傾斜させて割り箸の脚に固定。

胴体に乗せて削り合せる。正面窓のエッジは製法上甘くなるのは止むを得ない。内部色を塗った上に瞬間を盛る。



■ B型側面図 9/7追加

 A型の側面図をベースに、B型側面図を作成。従前の1/32D型に掲載のイラストは、タミヤインストをベースにB型の写真を重ねて描いたもの。今回の図面は製造図ベースで、機首カウルは座標データを忠実に再現。。A型も細部を微修正/追加してver.1.2とする。次は断面図の予定。

  • 全長は387.3125"=9,838mm。これはD型マニュアル三面図が正解で同じマニュアルにあるB型の386.97"は間違い。主翼はA型よりジャスト3インチ下がる。スラストラインは-1.75゚で、スピナ後端において胴体基準線と1.5"の差がある。スピナ直径は28-1/8"、スピナ長26.75"、プロペラ直径134"。製造図にD型スピナ長として26.375"というものがあるが、これはエアロプロダクツ製ペラ対応か?

  • カフス付きハミルトン・プロペラに関しては、手元に数値データはない。実物を測るわけにもいかないが、多分実物を測ったであろうタミヤ1/32キットのプロペラを「実測」して図化する。カフスに記入されているステンシルデータを読むと、ピッチは最少23゚、最大65゚とある。もしかして、プロペラブレードのピッチのことか?と思い、簡単な計算で検証してみる。プロペラには機体速度と回転速度とが合成された風が当たる。プロペラ先端のピッチが23゚のとき迎え角が0゚になるには、機速と回転速度の比がtan(23゚)=0.42になればよい。付け根(スピナ端)の回転方向の速度は当該スパンに比例するから、そこから逆算すればピッチ64゚のとき迎え角0゚となり、ほとんどデータに一致する。したがって上述の想像はたぶん合ってるだろう。ま、付け根側が正確にどの位置かは不明だけど。ちなみに、時速500km/hだと、プロペラ回転速度は毎分320回転くらい。



 座標データを再現しても、線描の図面で見ると写真のイメージとなぜか違う。でも、色を塗って陰影をつけると実機のイメージに近づくのだ。実は私がお絵かきを始めたのはこれが大きな要因。正確に描いたはずなのに似てないのが悔しくて。


■ 計器盤

 やり残しのコクピット関係を進める。計器盤は、手元にアイリスB型用、キット、タミヤD型がある。計器やスイッチの配置が一番正確なのはアイリス。アキュは実はあまりアキュレイトではない。ところがアイリスはレジンが収縮してエッチングの中央部計器盤が入らない。周囲を削るとメーター部ギリギリ。とりあえず両方作ってみていい方を選ぶ。アイリスは計器の印刷されたフィルムの裏から色を差す。キットのは凸モールドに白を乗せて計器を表現し、フューチャーを垂らす。



左アイリス、中アキュ、右タミヤ

出来上がり状態。左アイリス、右アキュ。ガラスの感じはアキュも捨てがたいが、正確さでアイリスを採用かな。



■ キャノピスジ彫り

 風防との摺り合せの結果、中央部キャノピのスジボリが消えたので、新たに彫り直す。キットのスジボリは若干違うところもあり、この際直して気分もスッキリ。



ダブルけがき針が活躍。集中力が切れてきて(一部脱線してるし)、風防は後日。



■ プチアルミ貼り

 第1エアコマンド機の翼端無塗装部を再現。以前1/32野馬の記事で翼端無塗装の有無は不明と書いたが、その後資料を見返してやっぱ無塗装の可能性大かなあと。模型的に見栄えもするし。で、久しぶりにアルミ板を取り出す。貼り付け部をノミなどで凹ませ、0.2mm板を貼る。小面積だし、リベットは打たないから密着性にこだわる必要なく、瞬間接着材を使用。最後の微妙な合わせはプラの方に瞬間なりプラ粉なりを盛って削り合せる。左右のアルミ板の接合部は、それほど神経質にならずとも、アルミを削って磨くと目立たなくなる。



接着部のプラを0.3mm程削る。

アルミ板接着。削って磨く。




■ 続、アルミ 9/14追加

 引き続き、主翼端にもアルミ貼り。こちらは0.3mmを使用する。その前に翼端形状を修正。アキュのは前端のカーブがきつい。



修正前のアキュ翼端。正しい形状は図面を参照されたし。

右翼上面。プラを1段削り、アルミ板を整形。

今度は下面側を同様に工作する。先に貼った上面のアルミ端部が見える。

アルミ板接着。

表面をツライチに整形。#600〜#1000ペーパーで磨き、仕上げに軽くラプロスで擦ってみる。最終仕上がりにはちょい光り過ぎか。

アルミ作業概ね終了・・・と思いたいが、スピナの穴開けがまだだな。



■ 風防スジボリ

 風防にスジボリしたところで、図面と模型の違いに気づく。製造図をトレースした風防側面窓のテンプレートを貼ると、模型の形と違うのだ。模型の風防パーツはキットの胴体分割ラインに合わせているが、どうもこのラインが違うみたい。正しくはラインがもっと上で、その分だけ風防前側が狭く、それに相応して胴体上部も狭いようだ。木型を幅広に修正したんだけど、この修正って実は正しいラインから外れる方向の修正だったわけだ。残念。今更戻す気はなく、このまま進む。



窓枠スジボリのため、テンプレートを貼る。ここで側面窓下辺のラインが違っているのに気づく。←早く気づけよ。前後長さもちょいと過大。

鉛筆書きは、使用したダブル針の間隔。左側面の小窓がまだだな。正面窓下辺のスジボリは胴体との境で、窓枠は胴体上部接着後に彫る予定。



■ B型断面図

 製造図を基に、ノーズとラジエータ・カウルの断面図を描き起こす。製造図にはエンジンカウル上半分、下半分それぞれのコンター図と座標テーブルがあるが、両者は基準の取り方が違っていて面倒。というのは、前者は胴体基準線を基準としていて、後者はスラストライン基準、しかも断面を切る位置も違うから、単純にトレースして合体というわけにはいかない。ま、多少手間はかかったものの、コンターを重ねてみると、マーリンエンジンの入った機首の微妙な断面変化が分かって面白い。カウル上面は意外と平ら。

  • 機首コンター図の各断面staは胴体基準線沿いで前端より次のとおり。sta-7.686(A断面、胴体基準線高さでのカウル前端)、-4、0(=B)、4、8、12(=C)、20、30、40(=D)、50、60、70(=E)。

  • 断面図Aの細線はリップ先端を表す。




■ B型機首

 1/32 D型の記事でBとDでアッパーカウルのラインが違うと書いた。で、今回の製造図ベースの新図面と実機写真を重ねてみると、なんとB、D両型ともこの図面と一致する。製造図はB型の型式番号が書いてあるので図面の取り違いというのはない。ということは、実はラインは同じか? B型生産途中から変わったのか、最初からそうなのか。少なくともDと同じラインのBが存在することは確か。以前の記事を書いたときは、写真と図面を重ねて違うと結論づけたハズなんだけど、自信がぐらつく・・・ ←人間の目って、見たいものを見るからなあ。どの写真と重ねたか失念で、当時の思考を検証できず。引き続き調査中。


■ お絵かき

 ともかく以前のイラストを新図面ベースに書き換える。1944年4月、4FG、336FS Don Gentile 大尉のB-7-NA "Shangri-La"、および1944年5月英国Debden基地における4FG、334FS所属、Ralph 'Kidd' Hofer 少尉(当時)搭乗 P-51B-15-NA s/n42-106924 "Salem Representative"。









 比較でD型も。ノーズのラインは同じ。352FG、457FS司令John Mayer 中佐のD-10-NA "PETIE 2nd"。










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