BAE シーハリアー FA.2 1/48 モノグラム 製作記 その1
2024.6.16初出
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さて、FA.2なのに、なぜモノグラム? とお思いの方もいるだろう。私自身、当初はエアFA.2のつもりであった。しかしキットを手にして、その出来の悪さに愕然。また、キネティックのFA.2は、あそこは常にそうだが、基本形状が全然違う。一方でモノの外形はバッチリ正確。ならばこっちをベースにした方がストレスなく製作できるだろう。 機首はコルセア-5と同方式、3DPの木型でヒートプレスする。図面描いて、3DP作って、切った貼ったの「がっつり系」プロジェクトとなる。完成目標は来年の静岡だ。
モノグラムAV-8A 第一世代ハリアーのベストキット。ハリアーって、形状把握が難しい機体だと思うが、実機の複雑な曲面を実に巧みに再現している。手元の製造図の断面図と比べても、寸法、形状ともほぼピッタリ。もしかして、製造図が反映されているのかも?? インテイク付近のボリューム感も非常に正確でgood(キネは過剰にマッシブ、タミヤは貧相)。モールドや小物はモノの通例。あと、主翼には事後変形。これもモノ通例だが・・・ |
![]() モノのAV-8A。ネット(scalemates)で調べると、初版は1981年とのこと。 |
![]() 背中の盛り上がり具合も、いい感じだ。 |
エアフィックスFA.2 エア冬の時代のキット。古いシーハリFGR.1(←多分)を流用し、胴体のみ新金型としたもの。流用パーツも恐ろしい出来具合だが、新規の胴体もかなりつらい。この頃のエア通例の梨地に太いスジボリは仕方ないとして、外形も残念賞。機首だけでも使えないかと思ったが、幅が2mmほど狭すぎ。キャノピも幅が狭い。側面形のイメージは悪くない。 |
![]() エアのFA.2。グレイが新規パーツ。背中の感じは悪くない。ベージュが旧パーツでプラの質も硬い。 |
![]() 上から見ると、機首が細い(カメラが近いので、細さが強調されてるが)。キャノピも細い。 |
キネティックFA.2 一言でいうと、全てが太い。プロテイン過剰で筋肉ムキムキ。エンジンインテイク直後付近で、胴体高さが2mm過大。その流れで機首も高い。キャノピ部の断面形は、1時11時および5時7時方向が出っ張っている。つまり楕円が角丸四角みたいな雰囲気。実機のインテイクから主翼にかけての胴体上部は、複雑な曲面をしているが、ここもムキムキで似てない。 主翼は厚く、上面の湾曲が強い。主翼上面の胴体の盛り上がりもムキムキ。小物の出来は各社の中では一番よい。ムキムキさえ我慢すれば、素直にこれを組むのがベスト。 |
![]() キネFA.2。やたらマッチョだが、パースのついた斜め写真だとよく分からないかも。 |
![]() 背中もムキムキで、盛り上がりがごつい。 |
タミヤFGR.1 機首だけでも使えないかと買ってみる。古いキットだから仕方ないが、外形は思った以上に違う。全体的にボリューム不足。胴体高さが2mmほど低い。インテイク付近が痩せて貧相。主翼上面の胴体の盛り上がりもボリューム不足。インテイクは先端を絞り過ぎ。インテイク開口部の幅は、片側で2mmも狭い。 機首の側面形はわりと良い。風防の断面形もよい。ただし機首幅は、インテイク直前で狭く絞られる。その影響でキャノピ後半の幅が狭い。モノはこのあたり実機どおりにボリュームがあるので、モノの胴体にタミヤの機首を移植するのも素直にいかない。そもそもキャノピが新造となれば、機首も新造が素直。ということで、結果は不使用。 |
![]() タミFGR.1。インテイクが絞り過ぎ。まだその付近での機首が細い。下にあるのは製作中のFA.2図面。 |
![]() モノと比較。インテイクの幅が全然違うでしょ。 |
モノグラムAV-8BハリアーII ついでにモノの第二世代もレビュー。これも第一世代同様に、外形が非常によい。次作るときは、これをベースにしたいな。ハリアーII+にする場合は、レドームとLERXは新造となる。前者は、1/72で3DPを作ってあるから問題なし。LERXはプラバン絞りかなあ。
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![]() 製造図の胴体断面図の一部。寸法は入ってないが、基準線があるので寸法を算出できる。 |
![]() 世傑の図面の一部。寸法はmm単位。製造図の一般概要図(私の手元にはない)をベースにインチをミリ換算したのではなかろうか。 |
ではまず、側面図から。 |
続いて、上面図。 |
続いて、胴体断面図。 |
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![]() FRS.1の機首。実機写真のトレース。 |
![]() FA.2の機首。こちらも実機写真のトレース。両画像は位置を揃えているので、取り込んでスライドショーで見られたし。 |
FRS.1の鼻筋ライン(側面形)って、単純な上に凸の曲線ではなく、微妙なS字カーブ(レドームは上に凸、風防手前では下に凸)なのだ。ちなみに、タミは単純な上に凸。 リアル工作にも着手したが、長くなったので今回ここまで。次回は機首ヒートプレス。
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![]() まず、ジャストサイズの設計。レドームは、単純にスケッチを回転。半身で作って左右反転するので、180度回転なのだ。 |
![]() 後半の胴体部は、5断面をロフト。キャノピなしの仮想の胴体形を想定する。この方がヒートプレスもやりやすい。 |
![]() キャノピも4断面でロフトし、あとで不要部を切り取る。 |
![]() 出来上がり。胴体後端は#8フレーム。 |
風防が、ちょいと難しい形をしている。後端フレームの頂部は曲線。しかし、正面ガラスは平面。なおかつ、横から見ると風防とキャノピはスムーズにつながる(側面図参照)。これ、立体で考えると再現が難しいのだ。単純に正面が丸い断面の風防をまず作って、正面ガラスだけ平らに切り取ったのでは、後端の断面形に直線が入る。フレームの手前で切り取れば側面ラインがスムーズにならない。写真を見ていただこう。 |
![]() 風防後端は曲線だが、正面ガラスは完全な平面。しかも横からみれば上面ラインはスムーズ。 |
![]() こうなるためには、正面ガラスのコーナー部(矢印)が出っ張る。斜め45°から見下ろせば、「クランク」が入ったラインになる。 |
厳密にこれを再現しようとすると、結構複雑な手順を踏む必要がある。面倒なので、単純化してロフトで作る(下画像参照)。 もう一つ、設計上重要なポイントがある。それは側面ガラスの面の形で、写真から二次曲面であることが分かるが、問題はそれが先狭まり(ハリアーIIはこうだよね)なのか、先広がりなのか、平行なのか。製造図面もないし、写真を見てもパースでよく分からない。そこで、実際に出力してみて、その印象で決める。写真は平行っぽく見えるので、まず平行で設計する。 |
![]() 側面は平行、つまりプロファイル1と2は同じ形状・サイズ。これを青線のレールでロフト(スイープでも可)する。 |
![]() 正面ガラスの部分を切り取る。これで側面ラインがスムーズかつ後端断面が曲線になる。 |
ロフトのガイドの青線の最上部に小さなRが入っているのがミソ。側面は後端直前で三次曲面になってしまうが、ほとんどがフレーム部分だし、微妙なところは出力後にペーパーで処理可能。で、出来上がった形と実機写真を見比べ、たぶん平行が正解ではないかな。 これで、形状の確認ができた(実際には、何度も試行錯誤している。とくに風防・キャノピと胴体の接合ラインの合わせが難しい)。いよいよ本番の木型(機首胴体)を作る。ジャストサイズのボディに「面のオフセット」が使えればこれで一発だが、複雑なロフトの場合、このコマンドが効かないことがある。今回もそのパターン。仕方がないので、一回り小さいスケッチをロフトする。 |
![]() 新たにスケッチするかわりに、ジャストサイズの断面を押し出し、側面を「面のオフセット」で小さくする。後端断面を追加。 |
![]() ロフトでつないで出来上がり。切り出しの目安に風防・キャノピの分割線、レドームの分割線を入れておく。 |
風防キャノピの木型の設計はこれから。
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![]() プリントしたものに、割りばしの足をつけ、いつもの台にセットする。 |
![]() ヒートプレスして切り出したところ。レドームは3DPをそのまま使う算段。 |
![]() これは確認用ジャストサイズの風防。コーナーの盛り上がりがわかるかな? |
![]() 機首側面を切り出し、キットのインテイクダクト内側を接着する。 |
![]() 左右の機首を合体して整形するために接合ピンを設ける。 |
![]() キットの胴体部と仮組み。いい感じだ。 |
模型はもう少し進んでいるが、長くなったので今回ここまで。
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![]() エッチングソーで切断。真っ直ぐに切るコツは、スジボリを入れておくこと。 |
![]() 3DPの延長プラグを接着する。3DPの断面は、製造図面どおりに作って0.5mmオフセットする。 |
![]() 3DPのプラグの表面に0.5mmプラバンを接着する。 |
![]() 垂直尾翼も5インチ延長。削りシロを含めて長めに延長しておく。 |
これらを矯正し、前後縁を真っ直ぐにしたいので、中に真鍮線を仕込む。前と中は1mm、後ろは0.8mm。翼端近くはクリアランスが少ないので、プラパーツに溝を掘りつつ、真鍮線も薄く削る。 |
![]() まず、下面パーツ側に一体となっているフラップとエルロンを切り離す。分割ラインは上下で異なるのがややこしい。 |
![]() 翼パーツを、プラが白くなるまでしごいて曲げ、真鍮線を接着する。この段階では下反角を決める。ねじり下げはまだ付かない。 |
![]() 後縁を先に接着し、翼端をねじると前縁の接着面が矢印方向にズレる。この状態で前縁を接着する。 |
![]() 胴体に仮組み。側方からの実機写真と見比べて、翼端のねじり具合をチェックする。 |
補足。下反角は12°。翼正面図を描いてあるので、これに合わせる。ていうか、このために描いたのだ。この図は、正面からではなく翼基準面方向(翼型図の細線)から見ていることに注意。中央の真鍮線は左右一体で、正しい下反角を保った状態で真鍮線をがっちり接着する(正確には戻りを考慮してすこし強めにする)。 ねじり下げは、下面パーツを接着することで、角度が決まる。上下パーツを接着してからねじるのではなく、ねじってから接着する。ねじると接着面がスパン方向にズレ、その状態で固定すると、ねじりが戻らない。翼取付角は、付け根で+1.5°、翼端では-2°くらい(翼型図の読み取り。正確な数値は記載なく不明)。
動翼パーツは上下ひっくり返して接着する。こうすると上面側には隙間の溝ができない。強度確保のため、真鍮線は打っておく。下面の溝は瞬間で埋める。後のスジボリなどの工程があるので、上面側の表面は、なるべくプラだけにしておきたい。 |
![]() 切り離していたエルロンとフラップは、間に0.5mmプラバンを挟んで接着する。あとは、燃料ベントも無視して、とにかく削る。 |
![]() AV-8Aとは、ドッグトゥースのあたりが異なる。ランナーを接着して削る。 |
動翼を接着したら、定規に貼った240番のペーパーでゴリゴリ削る。翼端なんか1mmくらい厚みがあるから、このくらいの番手でないと、やってらんない。キズは、あとの工程で捨てサフ塗るから、それで埋まってくれる。
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![]() 実機。GR.1だけどこの部分はFA.2も同じ。断面に厚みがあって、下にいくほど厚くなる。フラップとフラップの間には壁がある。 |
![]() キット。薄い。ファンと一体の内壁パーツがこの薄い外壁にぴったりはまる。フラップの間の壁も表現されない。 |
![]() 前縁を0.8mm切り取り、0.8mmプラバンを接着する。 |
![]() フラップ間の壁は、キットパーツを切り取ってプラバンの壁に置き換える。断面はクサビ形(でないとフラップが下がらない)。 |
![]() インテイク先端パーツを胴体に接着し、ざっと整形。 |
![]() フラップは、表面がカーブしている。0.5mmプラバンを熱湯に漬けて曲げる。 |
![]() 曲げたプラバンを切り出して、穴に接着していく。 |
![]() ファンとダクトのパーツは、そのままでは工作がしづらい。左右で切り離す。機首から続く内壁でカット部は見えない(ハズ)。 |
厚みをつけたエッジとダクトをどう処理するかは、このあと考える。パテでも盛るかな。ダクトを左右に分割したから、何とかなるだろう(一体だと無理)。ファンが、工作の邪魔になるようだったら、3DPに置き換えるという手もあるな。NACAダクトもエッジの甘さが気になる。ハンターと同じ方式で3DPにしようか。
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![]() NACAダクトを3D設計。穴を開けて落とし込んで、四隅のツメで位置決め。奥が凹んでいるのがポイント |
![]() 接着して整形。設計上、表面には0.1mmのマージンをとってある。 |
![]() ダクト内壁の後端を延長する。これ実は切り詰めていたもので、つまり元の長さに戻したわけ。実に無駄な作業である。はあ。 |
![]() コクピット内部の3D設計は進行中。機首左右パーツの合わせの調整のため、ディテールなしで床と壁を出力する。 |
![]() 機首、インテイクを含む後部胴体、ダクトとファンをどう組み立てるかが難しい。 |
![]() こんな具合に組み合わさるのだが、タミヤのように位置決めがカッチリしない。 |
さて、どうするか。ダクトと胴体を先に接着したいが、それでは正しい位置が決まらない。機首と胴体を先に接着すると、位置は決まるが、インテイク内部の塗装、工作に不便。機首とダクトを先に接着すると、ダクトと胴体の補助インテイクとの接続部の整形、調整ができない。三すくみ状態だ。うーーーん。 |
![]() そこで、機首を仮止めしてから、ノズルを胴体に接着して、機首を切り離す。まず、図面に合わせて機首を仮接着。 |
![]() ダクトをはめ込み、ダクトと胴体をしっかり接着する。機首が正しく固定されるとダクトは意外とぴったりはまる。 |
![]() 仮接着していた機首を切り離す。これでインテイク内部の工作、塗装が問題なく行える。 |
![]() 左舷の機首は、右舷の機首と胴体(ダクトがあるので、切り離し後も位置が決まる)に合わせた状態で仮接着。 |
![]() 左右あわせるとこんな具合。ダクトと補助インテイクの継ぎ目はほとんど見えない。 |
![]() ファンブレードを塗装。暗銀(C8+GX2)を吹いてウェザマス(スス+サビ)で濃いめにウォッシュ。定着にクリア上掛け。 |
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正直、どこまで売れるのか、全く予想がつかない。購入してみたいという方は、リンク先のページの事前予約でお知らせくださると非常にありがたい。予約キャンセル料は取らないので、アンケート感覚でお答えいただければとても助かる。 |