スピットファイアMk.XIVe(1/48エアフィックス)製作記

2005.1.18初出

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『究極』の迎撃戦闘機



 はじめに


■ きっかけは

 またまたWEB上のやりとりからグリフォン祭りが始まる。グリスピの周囲には常に引火性ガスが漂っているので、ふとしたことで直ぐ燃え上がるのだ。
 一方でキットにはあまり恵まれず、サンダーボルトに匹敵してグリフォンの熱狂的ファンである私だが、ハセガワから決定版が出るまでと敬遠していたのも事実。しかし、それはいつとも知れず、ハードモデリングできるのも今のうちかも、ということで気合も新たにグリフォンに挑戦だ。

■ スピットの魅力

 WWIIで最も美しい飛行機は?と問われれば、私なら間違いなくスピットファイアと答える。ただ、その中で、どのタイプが一番か?となると答えは難しい。前期マーリンの「凛とした美」、後期マーリンの「均整の美」も各々すこぶる魅力的だ。しかしそれでもなお、グリフォンの「究極の美」は超絶的。か細い胴体に大出力エンジンを無理やり積み、各部を徹底的に改変しながら破綻しないそのラインは、美しい。

 最初期型と比べ、最終的に外形がオリジナルを保っているのは胴体中央から尾部までの下半分のみ。プロペラが2枚から6枚になった飛行機なんて他にある? これを究極と言わずして何と言おう。
 外形のバリエーションが多いのも、スピットの魅力の一つ。以下、グリフォンに限って外形の違いを整理しよう。さらにこれらの順列組み合わせとなるで、ややこしい。
キャノピ:5種(XIIなど初期のファストバック型、XIV以降ふくらみが増したファストバック型、偵察型前面ワンピース型(可動部も与圧のためレール等が異なる)、XIV以降のバブルトップ一般型、シーファイアのバブルトップ前面曲面型が2種(XVIIとFR47では前後キャノピとも形が異なる) 垂直尾翼:7種(XIIのとんがり、XIVなどの幅広、XVIIIなどのさらに広い幅広、スパイトフル型、フック付きさらに3種プラス)、 主翼:4種(標準翼、切断翼(延長翼はグリフォンではなし?)、22以降の新設計翼とその延長翼) 機首:3種(長短2種、FR47のインテイク延長)、 後部胴体:2種(ファストバックとバブルトップ)、水平尾翼:3種(XIIの初期型、一般型、スパイトフル尾翼対応型)。以上、私の気づいてないタイプがあれば是非ご教示願う。

■ キット評

 では、恒例のキット評。なお、キットにミスはつきもので、ここでの戯言に惑わされず、マイペースで製作を進めていただければ幸い。ここでの指摘事項を修正する必要性は全くない。「なんか作る気無くしたなあ」なんてどうか言わずに。まあ、私から見ればタミヤ、ハセガワの秀作キットも、プロポーションについて完璧なものは無く、グリフォンだけが特別ではない。

 ミスは知っててそのまま作るのも大人の見識。ミスなど探さないのも大人の知恵。人様の作品にけちをつけるのが狙いではない。「じゃあ黙っていろよ」と言われそうだが、大好きなグリフォン、作るからには正確さを追求したいし、気づいたことは指摘せずにいられないのがモデラーの性。ご容赦願いたい。

 前置きはこれくらいにして、早速レビューしよう。既にこれらのキットを製作された方は、読まない方がいいかも。検証には、エアライナーネットのレストア実機写真を使う。


上からハセガワIX、エアフィックス22、アカデミーXIV。アカの太さは一目瞭然(緑矢印で2〜3mm)。エアはほとんど正確。後部胴体下面の主翼側(青矢印)を1mmほどシェイプアップさせ、機首上面(赤矢印)を削り、スピナから滑らかにつなげると完璧。機首寄りのフィレットと胴体の取り合わせも少々異なる(黄矢印)。


エアフィックス

 スピットファイアFR22/24とシーファイアFR46/47の2パッケージがある。基本パーツは一緒。実機写真と重ね合わせると、胴体側面形の基本プロポーションはほとんど正確。幅、断面形状もしかり。スピナの形状、寸法ばっちり。主翼も基本形状は正確。。

 プロポーション上の大きな問題点は2つ。1つは、シーファイアFR47の機首下面インテイクの形が悪い。断面形、側面形ともダメ。ゆえに開口部の形もおかしい。これはそもそも機首下面パネルの幅不足に起因しており、関連して機首側面パネルとの分割ラインも低い。FR22/24では目立たないが、やはり下面パネルの分割ラインの間違いは同じ。
 2点目は、後部キャノピの形状が不満。特に側面形はボリューム不足。胴体との境界ラインは不正確かつ部品の合せも悪い。FR47の特徴である湾曲した前部キャノピは、ちゃんとパーツがセットされている。

 細部では、ラジエータの断面形状。キットは側面が地面に垂直になっているが、翼面に垂直なのが正。プロペラブレードもいまいち似てないが、何枚も修正するのは面倒だ。エンジンシリンダーヘッド部のバルジは、側面から見た雰囲気は良いが、上から見ると胴体との分割ラインが異なる。ただし、別パーツのおかげで修正は比較的簡単。その他、垂直尾翼前縁の付け根付近が厚いが、これはちょっと削るだけで簡単に修正できる。
 表面モールドは、タミヤによく似た太目のスジ彫り。部分的にリベットが打たれている。小物も前述のとおり一部に形状の不満があるが、概してシャープな出来である。

アカデミー

 Mk.XIVのファストバックとバブルトップの2パッケージがある。どちらとも、キャノピ形状のイメージが良いのが、このキット最大の美点。スライド金型を使っており、断面形のΩ形状も再現されている。残念なのは、胴体側面形が太め、つまり胴体高さが全体的に高い。それに伴いスピナは基部の直径が過大で、全体的にずんぐりしている。後部胴体の断面形は、上部が尖りすぎ。

 主翼形状は問題なし。平面形はタミヤI/Vに似たふくよかな形。垂直尾翼の側面形状は正確。ただし胴体が太い分だけ全高が過大。モールド、小物、合わせはアカデミースタンダード。プロペラが使えると嬉しいのだが、残念ながらこちらもいまいち。根元の厚みが不足している。エアで平行四辺形になっているラジエータ断面形は長方形。ただし全体の形はいまいち。

 中級者以上のモデラーには、Mk.XIVを作る場合にも、エアをベースに改造することをお奨めする。理由は基本的外形が正しいから。ただし、初級者にはアカデミー素組みを推奨する。合せも良いし、出来上がればグリフォンスピット以外には見えない。そして腕が上がったら、是非エアからの改造にチャレンジして欲しい。



FR47のインテイクが問題。キットは開口幅が縦に広く横に狭い(赤矢印)。また青矢印のパネルラインの位置が低く、折れ線がきつい。

上エア、下アカ。全体形状はエアがよいが、先端のカーブ(赤矢印)が間違い。また胴体上部との接合ライン(青矢印)が胴体中心線に寄り過ぎ。

エアFR47。スライドフードの形状がいまいち。

こちらはアカ。側面形のイメージは良い。尻尾が伸びてるのは実機と異る。

ハセガワIXとの比較

 さて、エアとハセIXの胴体を重ね合わせると、これが不思議と合わない。勿論型式の違う部分はあたりまえだが、本来一致すべき部分まで合わないのは何故か。どちらも実機写真と重ね合わせると「ほぼ」ぴったり合うのだが、この「ほぼ」というところが微妙で、ずれてる方向が反対だと結果として意外と大きなズレになる訳。

 またハセの後部胴体はエアより2〜3mm短い。これは、ハセは実機と比較してハセIXは2mm程短いため(だからといってハセの後部胴体を単純に2mm延長すると、胴体前後のプロポーションのバランスが狂うからお奨めしない。ハセの胴体前後の長さの比率はよいのだ。キットのプロポーションの評価は、それだけでなく長さ太さのバランスなど全体的な形状が重要と考える)。なお、タミヤT/Xもハセと同じ胴体長さ。

■ 至難の選択

 キットをレビューしたところで、さていよいよ作るタイプを決めなければならない。これが至難の選択。ペンギン塗りのFR47にも随分惹かれ、散々悩んだ挙句、エア+アカ+ハセ3個イチのSEACのMk.XIVeバブルトップとして、とりあえず手を動かす。まあやはり、切った貼ったを期待している読者諸兄も多かろう、ということで。

 製作コンセプトは考え中。というのは、こいつをさらっと仕上げて、本命シーファイアでハードモデリングか、それは将来の課題にして当面XIVeに打ち込むのか、決めかねているのだ。ということで、気分次第のモデリングだ。

■ eウイング

 実は私自身eウイングについては、機関砲が移動した程度でよく理解してなかった。以下、WEBで教わったことの受け売り。情報提供の各位に感謝。

 eウイングには、現地でcウイングから改修されたものと、当初からeウイングとして製造されたものの2種類がある。前者は、改修キットにより20mm砲を外側に移設し内側に12.7mm機銃を追加したもの。従って翼外側の7.7mm機銃口やアクセスパネルなどは残っている。
 一方後者は、構造的にはcと変わらないが7.7mm機銃口はふさがれ、Mk.XVIIIからはアクセスパネルなどもなくなった。

 XIVeは、この前者のケース。後者はマーリン装備でCBAFで製造されたIXeやXVIeが該当する。

■ シーファイアのキャノピ

 バブルトップだけで3つのタイプがある。既存の図面や塗装図では、このあたり極めていい加減なものが多いので注意が必要。
 1つめは、正面ガラスが平面の、陸上型スピットにも共通したタイプ。

 2つめは、ショートノーズのグリフォン・シーファイアXVIIとFR47前期生産型に装着されたタイプで、前部風防が3枚のガラスで構成される。正面ガラスは湾曲しており、側面ガラス形状は頂部が鋭角。このタイプのキャノピで注意すべきは、分割部のフレームを横から見たときに、通常タイプよりフレームの前傾角度がきついことである。

 3つめは、FR47後期のみに見られるタイプで、エアフィックス付属のパーツはこれ。前部キャノピは4枚のガラスで構成され、側面ガラスは正面が平面タイプのそれとよく似た形。分割部のフレームの角度は通常タイプと同じ。FR46/47ではこの3タイプとも存在するので、注意が必要。



 組み立て 2/3追加


■ 胴体の下ごしらえ

 垂直尾翼をアカデミーと交換。エアとアカで断面形が異なるので、胴体側の整形作業が必要。また、アカデミーの垂直安定板は、断面形状が気持ち悪い。側面形はほぼ正確。なおグリフォンの幅広尾翼は、XVIII以降で見られるラダーがさらに拡大されたもの(垂直安定板上部も変更されている)と2種類あるので、写真を見るときは注意が必要だ。

 さて、断面形。キットは垂直尾翼のコードでいうと20%位置あたりが薄く50%あたりが厚い。そのため中央部が湾曲しすぎ。厚さを実機写真から割り出すと3.0mmで、1mm程過大。
 ここは、前縁付近に瞬間を盛り、かつ中央部を削って、断面形状イメージを改善する。ただし厚さに関しては、水平尾翼取り付け部との関係がおかしくなるから、程々で止める。なお、エアの垂直尾翼は、逆に前縁部が特に付け根付近で厚すぎる。少しスマートに削ることで、究極の高性能機のイメージに近づくだろう。



尾翼はアカデミーから移植。胴体上側ラインの延長線でカットする。

裏側からプラ板と瞬間パテで補強。ラダー下部は胴体高さに合わせて1mmほどカットする。

 パイロット乗降用のドアは、キットパーツが小さくまた薄いので、アカから切り取ってくる。コクピット直後の後部胴体上部は、アカのキャノピ幅に合わせるため、接着面を少し削る。機首下面パネルは中心線で二等分する。そのままだと胴体パーツと「面」がつながらないし、分割することで側面形状が把握しやすくなる。

 後部胴体にカメラ窓を開ける。Mk22/24とXIVとは、胴体フレーム1つ分だけ位置がずれるので注意。写真から直径を割り出すと6mm。左右でズレるとみっともないので、正しい位置をテンプレートでけがいておく。Mk22以降とは異なり、左舷側にアクセスハッチあり、右舷側ハッチなしとなる。



カメラ窓を開け、薄肉部は裏から瞬間パテで補強。

機首下面パネルは中心線で二等分する。

■ FRXIVのカメラ窓

 胴体下部の2つのカメラ窓の存在に疑問をいだく。XVIIIでは、側面と合わせて4つの窓があるのが確認できるし、写真偵察型XIXもしかりなのだが、XIVでは証拠が見つからないのだ。後で埋める方が簡単なので、とりあえず「あり」で作業を進める。カメラ窓の部分を、胴体パーツ、主翼下面パーツからそれぞれ切り取って接着し穴を開ける。

 その後、改めて資料を調べるうち、インアクションに側面窓ありで下面窓なしのベルギー空軍FRXIVの写真を発見。ここから、FRXIVの下面カメラ窓は「なし」が基本、といえる。もっともこれだけで単純にXIV「なし」XVIII「あり」とは結論づけられないが、少なくともカメラ窓があるべき位置にIFFアンテナがある機体では「なし」として間違いない。ということで一件落着。穴を埋めるとするか。はあ〜。

 補足すると、写真偵察型XIXでは、下側カメラ窓前方にオイル除けフェンスが設けられた機体が見られる。これは平面的には砲弾型をしている。ただし「ない」ものも確認できるので、標準装備ではないようだ。また、上記写真では右舷側側面カメラ窓周囲のハッチが「ない」ことも確認できる。



一連の無駄作業の途中写真。

穴まで開けたんだけどね。

■ 機首の修正

 グリフォンスピットは、機首バルジのイメージが命。2000hpエンジンの証しだから納得いくまで手を入れたい部分である。よく見ると前述以外にも気になる点がある。それは平面形。そのまま組むと左右のバルジが前すぼまりとなる。グリフォンのシリンダーヘッドは、6個ずつ平行に並んでいるから、これは論理的にもおかしい。

 修正するには、そのベースとなる胴体パーツにも手を入れる必要がある。実機ではスピナ直後から先頭の排気管あたりにかけて「ぐっ」と広がり、そこから後方の胴体に向けて平行となる。キットは先細りでスマート。胴体左右パーツの接着面にプラ板を挟み、かつスピナの直径に合うように胴体に切り込みを入れて先端を曲げる。




エアオリジナルの機首。左右バルジの外側線が平行でない。

左右パーツの間にプラ板を挟み、機首を広げる。上が修正後、下はキットそのまま。

 断面形では、キットは左右のバルジ側面が平行(つまり地面に垂直)であるが、実機は前から後ろにかけてねじれていく独特の形(FR.47製作記の断面図参照)。胴体パーツとバルジの接着部を削ってよくすり合わせる。
 一連の作業を、胴体左右パーツを接着することなく精度高く行うため、左右パーツを真鍮線にて仮どめする。これは、真鍮線の径の穴を開けた左右一対のプラ棒に真鍮線を通し、胴体左右パーツを正しい位置に仮どめした状態で、これを瞬間パテで固定すれば、簡単にできる。



斜線部分を少々削り、バルジとの馴染みをよくする。

写真は分かりづらいが、排気口の前方付近に真鍮線のピンを打っている。

 バルジ先端の形状は瞬間パテで整形する。胴体パーツにセロテープを貼ってから、バルジを仮どめし、パテを盛る。胴体接着前に大まかな形を整え、接着後さらに削る。ポイントは下に隠れているシリンダーヘッドを意識することである。



先端部に瞬間パテを盛り、おおまかな形を削り出す。

バルジを接着したところ。キットの排気管の隙間は上下に狭い。0.5mm程広げる。

全体形状や接合部を概ね修正したところ。特に最前方と最後尾のシリンダー部の頂点を明確にする。

これでバルジが平行となる。

 以上で、機首の修正が概ね終了。まだ形状に不満があるが、注文中の新資料が届いてから最終仕上げをする予定。

■ お買い物

 ウルトラキャストのパーツが届く。排気管は、ハセガワのパーティングラインを消して穴を開けただけだが、その手間を惜しむ人には有用だろう。しかもマーリンXVI用でグリフォンでなく、全体的なサイズが異なり残念ながら使えない。
 Eウイング用パネルは、肝心のハセガワの主翼との合せが、左右ぴったり前後は若干隙間。まあ、バルジだけ使ってもいいけど。



ウルトラキャストに大量注文。モスキットも忘れず購入。

シートはベルトの表現も秀逸で、縁も薄い。2個入っているのもお徳。おすすめできる。

4本スポーク車輪は、ハセガワと比較して一長一短。好みの問題。

ブロックパターンの方は、手作業では困難なパターンがきれいに彫られ、シーファイアなどには効果大だ。

■ フィレット 2/14追加

 ここまできたら、フィレットもハセIXに交換だ。理由は2つあり、1つはハセIXにはフィレット上の小バルジが再現されていること。2つめは、正しい主翼取り付け位置とするため
 胴体上面を基準に主翼上面までの長さを測ると、エアの方が主翼が低い。また、翼厚もハセの方が厚い。そのため、エアのフィレットにそのままハセの主翼を接合すると、相乗効果で主翼下面の位置が低くなり過ぎるのである。

 勿論、ハセのフィレットに交換することで、ハセ主翼との合わせもピッタリとなる。もっとも、ハセのフィレットをエアの胴体につなぐという、より面倒な作業が発生するわけで、作業手間だけを考えればエアのフィレットを残し、ハセ主翼との隙間を埋める方が断然簡単である。

 では、作業に入る。フィレットと胴体の境界ラインはエアとハセで微妙に異なるので、事前に十分切断ラインを検討する。基本的には双方のフィレット境界ラインとして可。ハセのフィレットはハセの主翼に仮どめしてエアの胴体と擦り合わせる。でないと折角のフィレットが主翼とうまく接合しない恐れがある。フィレットと胴体の接着の際にも同様の状態にする。



エアの胴体からフィレットを切り取る。こうしてみると、スピットの胴体は本当に華奢である。

こういう状態で擦り合わせる。パーツどうしが当たる所を少しずつ削っていけば、最後にはピッタリとなる。

 ハセのフィレットとエアの胴体の相性は悪くない。フィレットの交換により、主翼部の胴体高さを実機側面写真と照合しても、寸法ばっちり正確だ。もっとも、合うように調整しながら作ってるからあたりまえだけど。



浮き出しパネル状態となるよう流し込み系接着剤で位置を調整。どうしても生じる隙間は溶きパテで埋める。

裏から瞬間パテとプラ板でがっちり補強。接合ラインがコクピット内にできるが、しょうがない。

 ただし、平面形での相性は完璧とはいかず、そのままでは主翼との間に0.5mm程の隙間が生じる。理由はエアとハセの胴体幅が、特に下部において異なり、ハセの方が太いため。ここで隙間にプラ板なぞ挟むのはバカらしいので、そのまま主翼上面パーツを接着するのが得策。

 当然、下面パーツとの間にズレは生じるが、その辻褄を合わせるほうがラクだし、仕上がりが綺麗。なお、擦り合わせと接着は、あらかじめ主翼上下パーツがズレた状態で仮どめし、隙間がない状態として作業している。



エアオリジナルの胴体と主翼の関係。エアのフィレットには小バルジがない。

ハセフィレットに交換したもの。左写真との主翼取り付け位置の違いがわかる。

■ 主翼の下ごしらえ 3/9追加

 主翼はハセガワIXを使う。グリフォン祭り掲示板で教わったのだが、エルロンの分割ラインにはヒンジ部でのバリエーションがあり、凸形のと直線のとがある。
 手持ちの写真を見ると、VやIXなどスパンの長いエルロンで凸形、VIIやVIIIなどの短いスパンでは直線となっている。XIVはVIIIベースの主翼なので、エルロンは短スパン。キットのヒンジラインは凸形なので、直線に修正し、あわせて不要なスジ彫りを埋める。

 スピットファイアは高速でエルロンが重い(結果的に効きが悪い)という欠点があり、それを改善するための短スパンである。さらにMk21以降の新型主翼ではタブが設けられた。

 機銃パネルは、キットのバルジを切り取って使う。キットでは7.7mm銃のパネルに小判型の小バルジがある。eウイングでは、さすがに無いだろうと考え、パネルの浮き出しモールドともども削り取る。  ハセガワの下面パーツは、機首との分割ラインが複雑。これはキットのエアフィルタの一部を切り取って接着することで解決。
 水平尾翼はハセガワを使うが、エアとは分割ラインが異なる。胴体側をノミでちまちま彫って調整。

■ 機首バルジ再び

「SPITFIRE FLYING LEGENDS」の空撮写真を見ながら、バルジを微修正。前方側頂点を少々後に移し、より滑らかでスマートな形にする。

 ところで、キットの排気管の下に位置するパネルラインは、若干位置が高い。その後方の胴体パネルラインとの位置関係が実機と異なるので発覚したのだ。パネルラインが実機と違ってもあまり気にならないのだが、問題はそれを基準にしたのでバルジ位置が微妙に高いこと。今更修正する気はなく、こっちの方が実機よりかっこいいと思い込むしかない。



バルジを微修正。先端が胴体から立ち上がる角度や形状、頂点の位置、胴体との境界ラインがチェックポイント。

バルジの幅はこんなもの。前方から見て、バルジが胴体からどんな角度で立ち上がっているかも要チェック。

■ コクピットとカメラ窓

 ここまで苦労して、本来キットを買って箱を開けたのと同じ状態なわけ。で、やっとコクピットの製作だ。やっぱハセガワの新キットが欲しいな。

 カメラ窓は、0.4mm透明プラ板。製作中にゴミがつくと取れないので、この部分を完全密閉することにする。そのため、前後にバルクヘッドを設ける。これは厳密に正確に切り出さなくとも、瞬間パテを接着剤がわりに使うとよろし。また、主翼パーツと一体となっているフィレット部の胴体下部も切り取ってきて胴体パーツに接着してしまう。主翼後端での胴体高さは、実機写真から寸法を割り出し26mmとする。



カメラ窓、キャノピがゴミ等で汚れるのを防止するため、面倒だが3箇所のバルクヘッドを設置する。

ハセのフィレットを移植したことで、ハセの床がそのまま使える。計器板は好みでエア。

ハセIXのパーツを適宜使用して、メリハリをつける。コクピット内部はXIVとは異なる部分もある。

0.4mm透明プラ板に直径5mmの○モールドをけがいてから切り抜く。

■ 十の字

 あちこち切った貼ったしており、その微小な誤差が積もり積もって、思わぬ歪みとなって現れる。そのため慎重な調整が必要。主翼上面パーツは先にフィレットに接着する。ここで、フィレット取り付け位置のミスに気付き焦る。前方では正しいものの後方で若干高いのだ。仕方ないのでフィレット後半部を曲げて対処。一方前方側では水平位置に見過ごせない誤差があり、接着部をはがす。

 アカデミーのキャノピを使うので、その合わせをチェック。アカのキャノピは狭いので、胴体上部を相当細くしないと取り付けられない。コクピット後部を中心に接着面を合計で2、3mm程削る。ここまで削るとプロポーションにも影響するが、背に腹は代えられない。計器板パーツも、これに合わせ幅を狭める。

 接着の順番にも気をつかう。まず機首上面、次に胴体と垂直尾翼の曲がりに注意して後部胴体上面。次いで胴体下面。コクピットを組み込み、主翼左右に補強を加える。あれほど気を使ったカメラ窓だが、瞬間接着剤の多用のせいで曇る。悔しい。

 最後に主翼下面だ。フィレット部でパーツが薄いので、裏に瞬間パテを充填してから中央部を接着。上反角とねじり下げに注意して翼端部を接着だ。スピットのねじり下げは、結構強い。切断翼の写真を見るとよく分る。翼端部での取付角が0になるように。



コクピット床を下からはめ込み、テープで隙間をふさぐ。

ようやく十の字。水平尾翼は仮りどめ。

■ エアインテイク、ラジエータ 3/23追加

 このあたりから、チマチマ作業が続く。作る方も読む方もツライ部分が、だらだら続くので、適宜読み飛ばしていただきたい。

 ラジエータはエアのパーツを加工する。実機ではMk.XIVとMk.21以降とでは形が若干異なるが、アカデミーと比較すればエアの方がイメージが近い。パーツは断面が平行四辺形なので、隅角部に切り込みを入れて長方形に直す。後端部の形状が異なるのでプラの小片を接着する。平面形もイメージが異なり、ハセガワが近いが、キットのまま。

 パネルラインは、エアロディティールなどの図面と現存機では異なる。複数の現存機で同じラインとなっていることや、当時の生きている写真(少々不鮮明だが)から、現存機のとおりである確度が高いと判断する。ハセガワの主翼は基部が凹んでいるので、ハセガワのラジエータから基部のみ切り取って接着する。

 機首下面のインテイクはエアのパーツ。内部のフラップをプラ板に置き換える。胴体との合せを十分調整し、もっと胴体にめり込んだ状態にする。胴体上面からインテイク下面までの高さは32mm。



前列左、中がエアを修正したもの。右はエア未修正。後列左アカ、右ハセIX(基部切り取り済み)。

中のラジエータ部分はエアのパーツを利用。一回り小さいので周囲にプラ板を接着。

■ キャノピ

 製作開始時点では予測してなかったのだが、キャノピが今回の最大の難関。バブル部分はパーツ状態でのイメージが良いアカデミーを使う。ICMのMk.XVIは側面形のイメージは割と良い。無修正で使うなら、これもありかも。ただしスライド金型ではないので、断面形ではアカデミーがベストだし、前方風防部もICMにするなら、胴体に合わせるのに若干手間がかかりそう。

 前部風防部は各社パーツが利用可能だが、エアは前面ガラスの角度が寝すぎ、ハセVやIXは若干小ぶりで、アカのバブルと組み合わせたイメージがいまいち。結局、アカとの相性ではやはりアカとなる。

 と、ここまでは良いのだが、エアの胴体との相性が最低、最悪だ。アカの狭い胴体頂部に合わされたパーツは、エアの正しい胴体にはきつく、そのため胴体を細くしたのは前述のとおりだが、完全にキャノピに合うまでやると全体のラインが崩れてしまうので、そこまではできない。ま、それほどアカの胴体上部の細さは異様ということ。
 また、キャノピが約1mm高い。背高なアカの胴体に乗せてバランスする高さなので、正しい寸法の胴体に乗せると、キャノピの高さが目立つのだ。また、少々胴体にめり込んだ形をしているのも、合わせを難しくしている。

 で、合せの確認でエアの胴体に無理やり押し込んだところ、「ピキッ」という嫌な感触とともにクラックが・・・。急遽やまい氏からストックを送っていただく。感謝ムニダ〜。1個目のパーツは修正作業の「練習台」となるが、実はこれが功を奏したのかも。では、修正作業開始。


0.2mmプラ板を接着したところ。前方の縦枠にも同様に0.2mmプラ板を貼る。でないと枠に段差が生じる。まだ高さは修正していない。

後方は逆に裏側から0.3mmプラ板を貼り、胴体との位置関係を改善するとともに、後端の形状を修正。内部はテープで保護。

 キャノピ高さを低くするために下辺を1mmカットする。当然そのままでは窓枠が細くなる。そこで0.2mmプラ板を枠の形に切り出し、あらかじめ正しい位置に瞬間で表側から接着しておく。表側というのがミソで、裏側から削ってフチを薄くすると、胴体との合せも改善され一石二鳥というワケ。

 一方、前方風防パーツは、キャノピ高さに合わせ下端を削り、それに合わせて胴体も大胆にカット。次に風防とキャノピの合わせをチェックする。上部で0.5mm隙間が生じるので、キャノピ側接合面を0.5mm程斜めに削る。このためキャノピの縦枠モールドを新たに彫り直す必要が生じる。


下辺を1mmカット。瞬間でガチガチに固め、胴体上部に#400ペーパーを巻き、その上で慎重にキャノピを擦り合わせる。

枠は角棒ヤスリで慎重に削り、面を出す。透明だと作業状況が確認できないので、機内色を塗っている。

キャノピ前方枠は上部がなだらかにつながるように、断面を削る。前部風防もアカデミーで高さ修正済み。

胴体側は、スライドレールの溝から0.5mm下がった位置をキャノピ下端位置とし、不要部分を切り取る。

 胴体との合わせが改善され、これなら開閉選択式にもできそうだ。ここまでは、まだ胴体との合わせと大まかな全体形状の修正が終わった段階。まだ、整形、スジ彫り、縁の薄肉化、磨きなどの仕上げが残っている。ふ〜。

■ パネルライン

 ここらで、ちまちまとパネルラインを追加・修正する。写真などで判別できたのは以下のとおり。
右舷排気管下の菱形、胴体燃料タンク下方(左右)のバチ型のアクセスパネルは埋める。機首バルジ後端から後方に向かうラインは、写真により「ある」ものも確認できるが「ない」ものが大勢を占めるので埋める。機首下面パネルの分割ラインは、後方側で接着線より上に移動する。塗り分け線となるので、模型の印象を左右する重要なラインだ。コクピット付近の上下ラインは両舷とも1本ずつ不要なので、前部風防側面中央付近のを埋める。胴体カメラ窓付近は前述のとおりで、左舷側にハッチあり、右舷側はハッチなし。

垂直安定板は、エアロディティールなどの図面とは異なるので注意。垂直安定板上方の前後ラインは「なし」(ただし、写真により、それより2mm程上方に「ある」ものもあり、このあたりもバリエーションがあったものと考えられる。)で、中央斜め上下ラインが上端まで延びる。その前方の上下ライン「なし」。アカデミーはその他のパネルの位置も異なり、また方向舵トリムタブも位置が違う。実機の垂直安定板は左右でアクセスパネルが異なるので注意。

主翼では翼前縁タンクとその給油口のパネルラインを新たに彫る。位置は図面等を参照されたい。ラジエータも前述のとおり。Mk.14〜19と21以降では形状、パネル分割が異なる。エアロディティールの写真が良い資料である。
翼外側の7.7mm機銃の薬莢排出口やバルジのデコボコは平らにする。不鮮明な写真しか手元にないが、薬莢排出口などは確認できない。機銃の撤去に伴い、平板パネルに変更されたのではないかと推測する。7.7mm機銃の銃口穴はMk.14で明瞭に確認できる写真がある。製造工程では開けられ、現地で塞がれたと思われる。テープ状のもので塞がれているように見える写真もあるが、詳細不明。



左側パネルライン、リブとの位置関係に注意。水平尾翼基部はハセガワのパーツに合うようにノミで削ってある。

右側。サフェーサのリブ表現は、このあとペーパーで仕上げる。



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