スピットファイアMk.Ia(タミヤ1/72)製作記
2013.6.28初出
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●拡大図面
問題点は風防&キャノピ。I のキャノピ側面はまっ平らだが、キットはバブル状。風防もイマイチで、下端が「ぬるっ」とした形状。また後方フレームの直線部が湾曲し、後部固定キャノピは小さすぎ。プロペラもツラい出来。ただし、今となっては両方ともエア新キットから持ってくれば解決かな。リブ表現が過剰な動翼も気になるが、削ってしまえば問題ないか。 続いて外形マニアの世界。後部胴体の背が、1/72実寸で1mm弱(画像参照)高く、側面形がスマートさに欠ける。キャノピ位置も同寸高く、つまり実機は風防・キャノピがもっと胴体にめり込んでいて、その分ファストバックの背が低いのだ。また、垂直尾翼は厚すぎ。主翼、水平尾翼は、平面形、翼型、翼厚とも良好。 さらにいうと、実は胴体全長が少々短い。拙図と比較してキットの胴体長(カウル先端からラダー後端まで)は1/72で2mm弱短く、胴体は約1/74スケールということになる。この短い胴体は、ある時期までの定説になっていたようで、タミヤ1/48のI/V、ハセIX(1/72、1/48とも)、ハセV(1/48)、エアの旧I/V(1/72、1/48とも)などに共通している。私はこういうのはあまり気にならず、全長は正しいが形が似てないキットと、全長は少々短いが形が似ているキットでは、後者を圧倒的に支持するのだが、厳密には翼と胴体の大きさのバランスが崩れてるのは否めない。 |
![]() 上タミヤ、下エア新。スケールを合わせて並べたもの。画像はカメラが近いため多少の歪みがある。 |
ところで、極初期の防弾ガラスなし風防も、前面の傾斜角度は同じ(下図緑線)。防弾ガラス側板の下幅が広い理由は、「なし」風防の正面の平面部分が長方形で、そこに末広がりの防弾ガラスを乗せた結果、湾曲している側方ガラスと隙間が生じるためである。ついでにいうと、Mk.XI あたりのPR型の風防も、基本形状はこの極初期 I 型と全く同じ(正面フレームの有無のみ違う)。風防正面には平面部があり、多くのバQキャノピは間違っている。スライドキャノピのフレームも、I 型と同じで、プレキシガラスの湾曲のみ異なる。
対照的に、メッサーの後部胴体は直線が一切使われていない。ここに限っていえば「直線のスピット、曲線のメッサー」となる。おもしろいね。
以上を修正したのが下の胴体。ここまでチマチマと数年がかり。 |
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![]() 青は実機、赤はタミヤキットの写真をそれぞれトレースし、胴体長さを合わせて重ねたもの。重なった部分は紫となる。キットはファストバックの背が高く、また風防&キャノピがやや後方寄り。別パーツのロワーカウルは、やや垂れ下がり不足(これは後述)。 |
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![]() ラダー断面形(後方から見た形)の比較。あくまでイメージなので注意。ラダー最大厚は水平尾翼のチョイ下あたりで1.4mm。 |
![]() 写真はMk.14だが基本形状は同じ。斜め横から見てヒンジラインが折れ曲がって見えるのは、断面形の屈曲によるところが大きい。 |
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![]() 上、実機。下、キット。(キットの図はイメージで、実際とは寸法が異なる。) |
![]() ラウンデル付近から直線的に絞られ、さらに尾翼付近から一段と絞りがきつくなる。ラダーとは面がつながらず、折れ曲がる。 |
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![]() 後方シリンダーヘッド部(赤丸)は膨らんでなく、ラインは一直線。写真は左右反転。 |
![]() 上、キット。赤丸付近でクランク状ラインとなる。下、シリンダーヘッドを削って修正中。まだ完全ではない。 |
ここのラインは非常にデリケートで、全く膨らんでいないわけではなく、画像の角度より少し高い角度から見るとわずかに膨らんでいる。また、Mk.IXになると I で小ブリスターとなっている部分を包むようにカウルが膨らむので、見え方が違ってくる。 |
![]() この角度では、ほんのわずかにエンジン部が膨らんでいる。とはいえ、ほとんど一直線といっていい程度。 |
![]() 微妙に撮影角度が違うが、後期マーリン型カウルはこのあたりのラインが異なる。 |
とにかく、スピットのアッパーカウルのカーブは微妙でデリケート。これまでのキットでも前期マーリン型については完全なものはまだない。関連する画像を見ていただこう。なお、多くのレストアされた現存のI型、V型のアッパーカウルは、オリジナルと比べて若干上方にふくらんでいることに注意。 |
![]() シリンダーヘッドは防火壁のラインからはみ出している。そのはみ出し具合が極めて難しいのだ。 |
![]() 最前列シリンダー付近の断面形状と絶対幅(スピナ直径と比較せよ)に注意。 |
![]() デリケートなカーブがハイライトでよく分かる。下にあるマーリンエンジンの形が見えていないと、カウルの形も見えてこない。写真は左右反転。 |
![]() 最もポピュラーなアングル。修正作業ではこのイメージを損なうわけにはいかない。写真は左右反転。 |
これを図で表すとこうなる。最後列シリンダー付近の断面形である。青は実機、赤はキット。参考までに緑はIX型(実機)で、上と横の両方に膨らみ、アッパーカウル下端における折れ曲がりもI〜V型よりクッキリしている。 |
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で、以上を3Dに再現するのだが、これらの写真の全てを満足するような形を削り出すのに苦労する。あの後斜め上方の写真を忘れたくなる程。その一直線ラインだけを再現すると、他の部分が破綻する。最終的にはシリンダーヘッド全体の幅も狭め、テーブル状で肩が張ってるエンジン上部を緩やかなカマボコ形断面にして肩の角を丸める。上図で赤断面を青断面にするには「えっ、こんなに?」ってぐらい削る必要があるのだ。逆に、防火壁は2時10時の張り出しが弱いので中心にシムを入れて太らせ、それでも足りず最後は瞬間+プラ粉を盛る。 |
![]() なんだかんだで、出来上がりのライン。実機では、シリンダーヘッドの張り出しは、案外にマイルドなのだ。 |
![]() 上、新エア。中、タミヤ。下、旧エア。新エアもクランク状で、タミヤとよく似たライン。実はここのラインは旧エアが一番実機に近い。 |
●拡大図面
●拡大図面
断面図を重ねると、面の流れが把握できる。カウルの断面を見れば、これらラインがシリンダーヘッドを無駄なく確実にクリアしていることが分かる。30°の接線を描けば、その接線が機首からコクピットにかけて一定のペースで上がっていく=すなわち30°方向から見て一直線。一方、キットのラインはエンジンルームに無駄な空間があり、30°接線が上下する=クランク状。
胴体との合わせを調整しているうち、なぜかキャノピの位置が後方にずれて、機首と後部胴体のバランスが悪くなる。もともとタミヤの胴体はやや短いので、それならばと後部胴体を1.5mm程延長する。んが、ここで失敗。確かに全長や胴体前後のバランスは改善するものの、短い全長に合わせた胴体高さになっていたため、後部胴体の縦横比が狂い、細長気味。止めるか、せめて1mm弱程度の延長に抑えておくべきであったな。←やる前に気付けよ。 |
![]() 風防、キャノピはエア新のパーツ。この段階では後方固定部のみ胴体に接着。 |
![]() 1mmプラバンを2枚挟む。0.5mmの削りシロで、差し引き1.5mmの延長となる。 |
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![]() 主、尾翼を接着。パーツの合わせが良いので、こういうときは流し込み系を使う。この段階で上反角を正しく出しておく。 |
![]() ひっくり返すとこうなる。コクピット後方胴体内部は銀色が正解だが、気付いたのは接着後。 |
![]() クリアパーツはスジボリして軽く磨く。コクピット内部はキットパーツそのまま。後方フレーム背面は銀が正解。 |
![]() コクピット内部へのゴミ侵入防止にプラバンの床とバルクヘッドを取り付け、さらにテープでガード。 |
このあと、主翼下面を接着するが、機首形状をいじくっているためか、上面と下面とが微妙にズレる。そのため接着ダボは切り取っておく。逆に言うと、先に主翼上下を接着すると、誤差が主翼と胴体の間に発生→接合部の調整が大変、ということになる。下面接着時には、上反角(6°)とねじり下げ(2°強)に十分注意する。前縁を先に接着し、正しい角度にねじりながら後縁と翼端に瞬間を流す。キットのままではねじり下げ不足となる。
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![]() 主翼前端部で0.5mmほど増やす。これにより、機首下面カーブと主翼下面カーブの関係も改善される。 |
![]() ロワーカウルと主翼下面との間に若干の段差が生じるくらいが適正。この段差はエアインテイクで隠される。 |
ではどこか? シリンダーヘッド後端付近には、バルブを駆動するギアがあるため、ロッカーカバーが若干膨らんでおり、そのため左右ロッカーカバーの幅は、後の方がわずかに広く、アッパーカウルの平面形も後広がりである(それだけでなく、Mk.VIまではブリスターで膨らみをクリアする)。ただ、ロッカーカバー自体は1ステージでも2ステージでも同じ形で、両型でスペック上の幅が異なる説明にならない。推測だが、エンジン左側の発電機を含めた幅かも。
主翼を整形。翼前縁は、NACA2200シリーズの翼型を意識して尖り気味にする(別添図面参照)。翼端はナイフのように尖っている(下画像参照)。しっかりと厚みを削ぐ。研ぎ澄まされた楕円翼の切れ味がスピットファの美しさのキモである。これに伴い消えたスジボリを再生。垂直尾翼の厚みの修正が水平尾翼に影響して、後退角がついているのに気付く。撤去して再接着。←今頃気付くなよ。 |
![]() これといって変わり映えしない画像だ。 |
![]() ラジエータとエアインテイクも接着。 |
では、実機の翼端形状を見ていこう。画像は頂き物。毎度情報感謝。無断掲載深謝。 |
![]() このアングルの写真は貴重である。ヒネリ具合が大変よくわかる。 |
![]() 翼端灯以降のエッジは尖っている。翼端で風を切り裂いて飛ぶ。 |
●拡大図面
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![]() 有名な写真の一部。ナニでアレだけど掲載しちゃう。 |
その他、スジボリの残り、動翼リブ、小ブリスターの追加等々、かったるい作業が続く。正直あまり楽しくないが、気合入れて図面を作ると、一つ一つのディテールに愛着がわき、再現せざるを得ない気分になる。 |
![]() プロペラ、スピナはエア新キットから。ネジリに注意。カウルのブリスターはプラバン。接着後に整形すると作業が楽。 |
![]() キットのモールドを削り落とした動翼リブは、とりあえずカッターでスジをつけるだけ。 |
●拡大図面
●拡大図面
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![]() サフも吹いて、本番塗装準備完了。 |
![]() キットから相当削り込んで丸めた機首断面だが、この角度から見るとシリンダーヘッドの存在感はしっかりある。 |
どのマーキングにするか、思案中。
●拡大図面
●拡大図面
●拡大図面
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![]() 旧エアMk.Iのパーツをベースに削る。このサイズでは穴あけは無理。 |
![]() 脚柱角度、タイヤの角度に注意して接着。初期(Mk.IX途中まで)は強めの逆ハの字のタイヤが特徴。 |
これで塗装前の作業は終了。次は塗装だ。 |