ワイラウェイ(MPM1:72)製作記

2004.11.28初出

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南洋州の小さな挑戦。


 はじめに


■ ワイラウェイへの道

 どうやら他人に影響されやすい性格らしく、’04激作展でRAAFの名品2点を見てから、青白ラウンデルが気になってしょうがない。随分昔に買ったMPMのワイラウェイがあるのを思い出し、押入れの奥から掘り出す。バQのキャノピは、既に黄ばんでいるが、小物含めてアカデミーのテキサン他から移植すれば何とかなりそうだな、と思ったところで、勝手に手が動いてもう止まらない。おいおい、P−47Nの方は大丈夫か。

■ 実機解説

 私のページでは、実機解説は既知のこととして省略するのが常であるが、世傑やインアクションにもないマイナー機なので、簡単におさらいする。ネタ本は写真のとおり。




ネタ本(資料−1)。これ見るとブーメランも作りたくなるぞ。エアのキットもあるしな(作るのは大変だけど)。

開発経緯

 アボリジニ語で「挑戦」を意味する「ワイラウェイ」は、その外形がノースアメリカンAT−6テキサンとよく似ている。正確には、テキサンの前身のNA−16がベース。この前期型は固定脚だが、後期型はテキサンと同じ引き込み脚。
 このライセンスを取得したオーストラリアのコモンウェルス・エアクラフト・コーポレーション(CAC)社により、胴体前方2丁後方1丁のビッカース0.303in(≒7.7mm)機銃と爆弾ラックが追加され、1939年から46年(!)にかけて755機が製造された。エンジンは600hpのプラット&ホィットニーR−1340ワスプで、P&WまたはCAC製が装備される。

 本機は、もちろん「戦闘機」ではない。ネタ本によればRAAFではあくまで「練習機」兼「多用途機(連絡、偵察、軽爆撃)」として開発したもので、戦況の逼迫により止むを得ず空中戦に投入されたというのが正しい。本来の目的においては優秀で有用であり、だからこそ戦闘機としても使用された訳である。

サブタイプ

 モデラー的には、サブタイプの相違点が気になるところ。基本的に全形式を通じて大きい相違はないが、それでもTからVまでの3タイプに分かれ、さらに製造バッチごとにCA−1からCA−16の7つに分かれる(途中、番号が飛ぶので注意)。

WIRRAWAY TCA−1A20−3〜42コルゲート板の垂直安定板
WIRRAWAY UCA−3A20−43〜102垂直安定板が平板に
CA−5A20−103〜134CA−3と同じ
CA−7A20−135〜234CA−3と同じ
CA−8A20−235〜434CA−3と同じ
CA−9A20−435〜622キャブレターインテイク変更
WIRRAWAY VCA−16A20−623〜755ダイブブレーキ追加

 ワイラウェイTつまりCA−1は、ユンカースのようなコルゲート板の垂直安定板が特徴。U以降は普通の平板。TからUへの変更点はこれだけ。Vは、急降下爆撃のためのダイブブレーキが追加された。これはフラップに連動して、外翼フラップ上面側が上側に開くもので、U以前にもレトロフィットされたとある。急降下爆撃機としてのVは単座運用され、後方機銃は撤去された。

 写真を見ていて気づくのは、カウル下面のエアインテイクの形状で、CA−1〜8はストレート。写真ではこれにもバリエーションがあるが、ネタ本に記述は無く詳細不明。CA−9以降は途中が半球状にふくれ、入り口も受け口のような形状になった。このタイプは、カウル正面から見て10時方向にエアインテイクが追加されているので注意。形はワイルドキャットのそれに似ている。また同じくCA−9からウイングラックが追加された。

■ ブーメラン

 ついでに、ブーメランとワイラウェイの関係について。ネタ本を見ると良く解るのだが、ブーメランは技術的にはワイラウェイの延長線上にある。よく見ると尾翼の形は同じだし、主翼もよく似ている。一見金属モノコックに見える胴体も、実は鋼管木板張りで、ワイラウェイから進歩していない。
 一言でいうと、ワイラウェイに戦闘機としての空力的モディファイ(胴体の短縮、主翼スパンの短縮)を加え、エンジンをツインワスプに換装したもの。

■ キット評

 この記事を読んで、このキットを作ろうと思う方がいるのか、いたとして流通してるのか、などはさておきキット評。

 このキットの最大の美点は、その胴体布張り部の繊細な表現。だからこそ作ろうという気にもなる訳。ベースはエレールの傑作、テキサンである。アカデミーも実はエレールのパクリ。ワイラウェイとは細部が結構異なるが、それらの相違点はきちんとフォローされている。総じて原型製作者の確かな技術と機体への愛が感じられる好キットだ。



上MPM、下アカデミー。布張りの表現に着目。ワイラウェイとテキサンの違いもよく分かる。

 エレールの欠点(つまりはアカデミーも同じ)である幅が狭いキャノピは、MPMワイラでは広げられた。むしろ広すぎるくらい。
 合せは、バリが盛大に出て一見悪そうだが、原型の勘合精度は高く中級者以上には問題ない。スジ彫りや動翼のモールドも繊細。小物は簡イの常で使えるレベルではなく、他キットからの流用が必須条件。キャノピはバQのみ、レジンパーツはセットされない。

 垂直安定板は平板タイプなので、CA−1は作れない。カウル下面のインテイクは2種がセットされ、一応CA−3以降の各タイプが作れるようになっているが、カウル前面インテイクは忘れられている。これは結構見落としがちなポイントで、CA−9以降を作る際は注意が必要。

 CA−16は、外翼フラップの上面側にダイブブレーキのスジ彫りを1本追加する。位置は、翼後縁と平行で、後縁から約3mm。このスジ彫りから後方の翼上面パネルは、フラップと一体となっている。ダイブブレーキのヒンジは、フラップのヒンジと平面的に同じ位置で、イメージ的にはドーントレスなどに近い。なお、−9以前のフラップは零戦などと同様、下面のみが単純に下に開くタイプ。


上MPM、下アカデミー。翼端の形状、フィレットとの取り合わせが異なるが、基本形は同じ。

左エレール、中MPM、右アカデミー。幅が相当異なる。

小物はこのとおり。他から持ってきたほうがまし。インテイクは2種類ある(中央のパーツ)。

デカールは、一見良さそうだが、硬くて使えない。エッチングも付属している。

 組み立て


■ 基本組み立て

 当ページ初の簡易インジェクションだが、キットの素性が良ければ簡イも難しくなく、出来の悪いインジェクションより作っていて気持ちいい。今まで躊躇されていた方は是非チャレンジを。私の攻略法は、小物は全て流用する(つまり流用できない簡イには手を出さない)。それと細部の割り切り。コクピットや脚庫には手間をかけない。

 では、早速組み立てよう。今回の攻略のキモ、アカデミーのキャノピを使うため、胴体を3mmほど細くする。美しい布張り部のモールドをつぶしてしまっては意味が無いので、接着面を削って合わせる。単純に削ったのではカウル幅と合わなくなるので、そこは得意の「パーツ曲げ」で調整。布張り部の前端あたりでグッと曲げる。
 別パーツになっている機首上部は左右に切断し、それぞれ胴体パーツに接着。その後キャノピ幅に合わせて接着面を調整する。接着後、変形防止のため、ランナーで左右につっかい棒を入れておく。

 胴体を狭めたため、主翼とフィレットに大きな隙間ができる。ここは瞬間パテが便利。接着剤代わりにたっぷり充填する。ただし強度はさほど無いので過信は禁物。主脚庫から胴体が筒抜けとなるので、現物合せでプラ板を貼り付け、これも瞬間パテで隙間を埋める。



コクピットはアカデミーを流用してでっち上げる。CAC製機の内部色は不明だが、ブーメランの写真では英軍インテリアグリーンに近い。

カウルから胴体への平面形は、ぎゅっと絞られてまるで隼のようだが、実機はこれほどではない。

車輪収容部は、翼下面パーツの一部を切り取ると、内部の処理が楽。

着陸燈は、ムクの透明アクリル材。断面をブラックグレイで塗る。レンズは、あえて再現しない。

■ 続、組み立て 1/11追加

 取って付けたような主翼フィレットは、テキサンと共通する特徴。キットは滑らかすぎて特徴が出てない。後縁を少々削って長さを詰める。完全に修正するならパテの出番となるが、ヤスリで対応できる範囲で止めておく。機首上面の機銃付近は複雑な形状をしているが、まあなんとなく再現して了とする。

 このキット、エレールゆずりで、主翼翼型が悪い。特に下面。実機に比べ、キットは前縁が厚く、また下面が扁平。作品では気休め程度に前縁を下面中心に削って尖らせている。


フィレット修正前の状態。

瞬間パテで裏打ちして削る。フィレットはパネルラインの前方までで終わる。

 キャノピはアカデミーを使用。最後部下端が胴体と合わない。これはテキサンとワイラウェイの後部胴体形状を比較すれば明らか。クリアパーツなので継ぎ足すわけにもいかないが、ここは最も簡単な対処策。すなわち最後部をカットする。実機でもこの状態で運用されている場合が多い。断面の厚さには目をつぶる。



再掲。ワイラウェイとテキサンのキャノピの取り合わせの違いに注意。

 最前部キャノピは側方部の胴体接合ラインがテキサンと異なり、ワイラウェイでは湾曲している。これはキャノピを少々削るだけで解決。前面ガラスは二次曲面、つまり側面から見て直線が正しい。キットは三次曲面(側面形も湾曲)なので、削って修正。ついでにキャノピ全体の表面の凸凹を削り、コンパウンドで磨く。一部窓枠が再現されていないが、これは塗装時に対応する。

 主翼の後端に至る断面がもったり丸いのもエレールそのまま。見た目の後縁のシャープさには、端部の絶対的な厚みより、そこに至る面の流れが重要。ここは削ってきちんと平面を出したい。これにより布張りのモールドが消えてしまうので、ラダー、エレベーターともどもサフェーサでリブテープを再現する。


アカデミーの前方キャノピは、胴体との接続ラインを丸く削る。

リブテープの再現はいつものサフェーサ&面相筆。

■ 細部工作

 部品取りにハセガワのドーントレスを購入。エンジン、タイヤ、プロペラが使える。こいつらに交換することで、モデルの精密感が断然向上する。
 脚柱はマスタングによく似ている。それもそのはず、同じノースアメリカン社デザインだ。ということで、ジャンク・ボックスからハセガワのマスタングを探し出す。ワイラって結構短足。長さを相当切り詰める。

 シートは、キットのものが実機に似ている。実機写真を見ると、後席も前席と同じ背もたれ付きだが、どうやって機銃を撃つのだろうか?。ちなみに機銃架は半円形で、ドーントレスのものを加工して使用する。キットの後方機銃が意外と精密なモールドでビックリ。しかし残念なことに作業中に紛失。


エンジン、ペラはハセガワのドーントレス。これで作品がぐっと締まる。

エンジン取り付けのため、胴体前部にプラ板を接着。

脚柱はハセガワP−51を加工。上は加工前。タイヤはハセガワのドーントレス。矢印部にも瞬間接着剤を流す。強度が向上し経年変化に耐える。

シートはキットパーツの縁を裏から薄く削るのみ。着陸燈はスジ彫りして磨く。

■ 続、細部

 このあたりで、一旦サフを吹き表面のアラを補修しておく。


脚柱の固定のためにプラの小片を接着しバイスで穴あけ。キャブレターインテイクもキットパーツ。

排気管はキット。パーツで見ると頼りない形をしているが、バリをとればジャストフィット。

 パイロットを保護するロールバーは、クリアパーツを通してよく見える。コクピット内部は手を抜いても、ここだけは再現したい。ワンポイント手間をかけた部分があると、完成後も存在感を示してくれるだろう。
 前方機銃は機体により装備の有無があり、確認が必要。長大なアンテナ柱もワイラの特徴の一つ。ネタ本図面によれば、1mm程左舷側にオフセットされる。このキットは、カウリング先端のカーブがきつい(角張っている)。若干気になっているのだが、完成を急ぐので修正はパス。


ロールバーは延ばしランナーをプラ用接着剤で組む。さすがはトラス構造、出来上がると案外強度がある。

銃身スリーブは1mm径のプラ棒。正しくは放熱の穴が開き、先端に銃口が顔を出す。

 キャノピは、写真のように細切りマスキングテープを貼り、その上からセロテープを貼る。マスキングテープをガイドに切れば、窓のマスキングの出来上がりとなる。細切りテープの幅の誤差、歪みや曲がりは、その後のセロテープを切る工程でリカバリーできない。従って、これらの作業の精度が仕上がりに直結する。


キャノピのマスキング中。黄色いテープに沿ってデザインナイフで慎重に切る。

脚を仮止めして、三点姿勢。尾輪はアカデミーのテキサン。

■ 塗装前の下準備 1/24追加

 塗装の前にキャノピを接着し、特に胴体前部との接合面を溶きパテ等で処理しておく。下地はいつものとおり。尾翼のエッジなどで光が透けるとみっともない。銀など吹いて防いでおく。
 雲形の塗り分けには、またまたMr.ペタリ君を使う。今回はマスキングテープを併用して吹きこぼしなしとしよう。テープを使うとペタリ君の位置が安定する効果もある。貼ってから爪楊枝でカーブを微修正。


 塗装


■ さて塗り始めるが・・

 文献−1の塗装図を参考に塗装作業を進める。大戦前期の雲形迷彩に決め、塗装図を見る。緑はフォリッジグリーンとの記載。ふむふむ、やまい氏のボーファイターはRLM70ベースだったなあ。ということでよく似た自作RLM83(ドーラやP−47Nコクピットで使用)をチョイス。
 茶色は塗装図ではダークアース、記述ではアースブラウン。よく分んないけど自作ダークアース(スピットUなどで使用)でいいかな。下面はスカイブルー。モノクロ写真でもかなり明度が高い印象で、RLM76に白を2割ほど混ぜる。


下面を吹き、次にダークアースをフリーハンドで吹く。下地が出来てるので、塗料は薄く、ノズルを絞る。

Mr.ペタリでマスキングして、RLM83。うまくボケるよう、吹く方向に注意する。

主翼ラウンデルは13mm、胴体は10mm。使用色はスピットUの自作ダルブルー。

基本塗装終了!のはずが・・

■ 迷宮の入り口?

 基本塗装が出来上がって写真と見比べると「なんか印象が違う!」。写真では上面2色の明度差がほとんどなく、境界が判別できないほどなのに。なぜだろう?と文献−2のKookaburra本の本文に初めて目を通すと・・・む、むむむ、なんか色々書いてあるぞ。ということで、改めてRAAFカモフラージュを勉強する。



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