中島 キ44 二式戦闘機 鍾馗 図面
2024.4.30初出
鍾馗については、図面を描くための資料が極めて限られている。実機は現存していない(中国に主翼の残骸があったが、今はどうなってるのだろう?)。写真も限られている。幸い、マニュアルは残っており、記載された寸法や図は貴重である。
ただし、距離が近く、スピナは真横だが尾翼は斜め。また約10°の俯角がある。フリー画像ソフト「GIMP」により、遠近法のパースを除去したものが2枚目。比べると、機首がやや小さくなり、尾翼は大きくなる。また各要素が全体的に前寄りになる。 |
1枚目。補正なしの生の写真がこれ。垂直尾翼がやや後傾しているのはレンズの歪みか、紙の歪みか。実機がこうなのか。 |
2枚目。遠近法を補正したもの。その詳細は後述。垂直尾翼がやや後傾しているところも補正(ここはちょい補正しすぎかも)。 |
この空撮は俯角があるため、主翼の陰で胴体下面ラインが分からない。そこで、下の3枚目で補完する。この写真はさらにカメラが近く、パースがきつい。画像は、主翼近くの寸法に合わせて縦横の縮尺を変更。GIMPの遠近法補正はしていない。4枚目は同じく側面形を補完するもの。こちらはやや斜め前方からだが、距離が遠い。俯角も1枚目より小さいので、胴体下面ラインが分かる。この画像は縮尺、遠近法の補正なし。 |
3枚目。撮影位置は主翼前縁付近、推力線にほぼ同じ高さ(翼端の見え方で分かる)。鍾馗は結構腹が垂れ下がっている。キャノピは見上げるため、高さが低く見える。 |
4枚目。距離による歪みが少ないのが、この写真の価値。キャノピの高さ、カウルの開口部の高さも分かる。尾翼下側が見えないのが残念。 |
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側面図出来上がり。寸法の赤字はマニュアル記載値、青字は出来た図面を測った値。青細線は、フレーム、ストリンガーの位置を示す。この近傍にリベットラインがあるわけ。なお、図は最新バージョンとは細部が異なる。 |
2枚目と重ねたところ。写真のキャノピは、切り取って移動して「閉めて」ある。 |
ちなみに世界の〇作機や大〇本絵画本の図面は、リベットラインが間違い。左舷点検パネルとその下のパネルラインの間にストリンガーが一本多いぞ。全体形状も全然違うし(キャノピが低く、機首が細く、尾翼が横長)。
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16マスの格子を斜めに見たところ。左側は大きく右側は小さく、パースがついて赤線は中央より右側にある。 |
GIMPを使って遠近法の補正をしたもの。赤線は中央になる。つまり、補正により、赤線は左に移動する。 |
そこでまず、写真の撮影距離を計算する。これは、主翼、尾翼の見え方と機体平面形状から、図学的に割り出すことができ、結果は約40m(カメラとスピナ先端の距離)となる。スピナが真横で、ラダーは斜め前から見ることになる。その角度は約13°。cos(13°)=0.974なので、機首より尾翼は2.6%遠くにあり、すなわち尾翼高さは2.6%小さく見える。だから、その高さが2.6%大きくなるように、GINPで補正してやる。 この作業で、縦横比も変化する。ここで、カギになるのが尾翼高さの絶対値。縦横比を調整し、全長と尾翼高さを合わせる。こうして出来たのが2枚目画像なわけ。実際にはレンズの歪みなどもあって、こうは単純ではないだろうが、それ以上は追及しない(したくてもできない)。
胴体ステーション 疾風のマニュアルには、誤ったフレーム間隔が記載されていた。これに惑わされた既存図面も存在したね。鍾馗も疑ってかかったが、数値を図化して写真のリベットラインと比較すると、問題ないようだ。全長 次に全長。疾風も隼I型も、実際の全長とは異なる数値であった(←私の分析では)。したがって鍾馗も正しい保証はない。が、結果的には正しいものと思われる。傍証として、米軍測定値(と私には思われる)である29'2-1/2"をミリ換算すると8,903mmであり、マニュアルの8,900mmに限りなく近い。隼II型はマニュアルの数値が正しい。尾翼高さ 尾翼高さは、マニュアルの図には胴体基準線(=推力線)から1,200mmと記載されている。しかし、この図の他の寸法の比率からすると、1,300mmが正解で、単純な記載ミスと考えられる。疾風で思ったのだが、中島の設計は、割とキリのよい寸法が使われている。だから、1,290mmなんてのはないだろうと。胴体高さ、幅、長さ その他、胴体高さ1,800mm、胴体幅1,050mm、胴体長さ8,107mmというのがある。これ、出来た図面の胴体最高点(風防後端での風防高さ)と胴体最低点(主翼中央付近)の差をとると、1,800mmにならないのだよね。差は2cm程度だけど、無理に合わせようとすると、他が破綻する。一方、風防後端の断面で切ったときの高さを測ると1,800mmとなる。ということで、こじつけっぽい感じもあるが、こうしておく。一方、胴体長さ8.107mmは、何を表すかよく分からん。カウル先端からだとラダーの中ほどまでの長さに該当する。垂直安定板後端から測るとスピナ中ほど。エンジンのプロペラ取り付け軸先端から垂直安定板後端までか?? 胴体幅1,050mmについては、次回で考察。
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マニュアルの図。赤矢印が垂直安定板後端に見える。この線は安定板上端では、ほとんどヒンジラインの位置になる。 |
初回ここまで。次回は断面図と上面図。ハセとの比較は次回のお楽しみ。
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鍾馗の平面形が分かるほぼ唯一の写真。トリミングしているが、主尾翼の平面形もこの写真がベース。真上でなく俯角65°である。また距離も近く、ラダーヒンジが斜めに写っている。それでも、胴体にくびれがほとんどないことは明瞭。 |
主翼との比較で、防火壁の幅が分かる。ただしパースが強い写真なので、その影響をどう計算するかが重要。キャノピ、胴体後端、主翼フィレット、フラップそれぞれの幅も分かる。 |
風洞実験用の木型。たぶん胴体の形状は実機どおりだろう。風防の木型もあるが、この写真では外されている。 |
では、胴体平面形を決めていく。カウル前半の下半分は完全な回転体、だと私は考える。これが出発点。これに従えば、カウル前半の平面形は、側面形におけるカウル下側と同じとなり、カウルの最大幅は1,430mmとなる。カウル後端から尾部までは、一直線なのか、途中でくびれが入るのか、悩ましいところ。上の3枚の写真は、#3フレームのところで微かにくびれるように見える。 胴体最大幅1,050mmは、裏ページでは#3フレームとしたが、胴体最大高さ1,800mmが風防後端断面ならば、最大幅も同じ断面と考えた方がスッキリする。風防後端断面で1,050mmとなるには、#3フレームは1,085mmとなる。カウル後半はスムーズなラインで絞り、カウル後端から#3フレームまでは直線とする。こうすると、防火壁の幅は1,250mmとなる。裏ページでは1,300mmとしたが、やや過大であったな。 #3フレーム以降は、垂直安定板後端まで一直線とする。木型写真だと、尾翼付近からカーブが入っているように見えなくもないが・・ 一方、空撮は直線のようにも見え・・・ ともかく、こうして描いた胴体平面形は、#3フレームのところで微かにくびれが出来る。
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生写真(左右反転)。パースにより右側が小さい。また垂直より25°傾いているので、上反角の影響も強い。 |
GIMPにより距離のパースを除去し、全幅をマニュアルのスパンに合わせたもの。上反角の影響は除去できない(←あたりまえ)。 |
上反角の影響による歪みは、左の翼だけ切り取ってスパン方向に広げて除去する。その際に目安となるのがエルロン内端の位置だ。上右写真で、全体スパンに対する左右の内端間の距離は、上反角の影響を受けない。正しく広げられれば、前述のフィレット幅とも合ってくる。
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胴体と尾翼の骨組みが分かる貴重な写真だ。水平安定板の桁と胴体フレームの接合方法も分かる。 |
鍾馗のややトリッキーなパネルラインはこの写真が根拠。四角い小穴は何だろう? |
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長くなったので、断面図は次回。
さて、側面形と平面形が決まった。次は断面形だ。モケイの外形の良し悪しを決定づけるのが断面形。チューカ製キットは、側面図と平面図だけで設計して断面形がダメダメなのが多いよね。モノやエアの「らしさ」は断面形が「らしい」から。では、写真を見ていこう。裏ページの再掲だけど。 |
リベットラインや白帯で断面形がよく分かる。フィレットのくびれ具合(わりと弱め)、防火壁の形(なで肩)に注目。 |
後部胴体頂部が分かる。後部胴体は、単純な楕円ではなく、菱形の角を丸めたようなイメージだ。 |
尾翼手前あたりは菱形が強く出る。垂直尾翼と胴体のつながり具合も分かる。ハセ1/32はここが残念。 |
中島系は、フィレット後方が緩い峰でせり上がっていく。零戦とはちょっと雰囲気が違う。キャノピの底の高さも分かるね。 |
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後方からの写真は何枚かある。これは少々荒いが俯角が小さいので歪みが少ない。 |
疾風(ピンク)と比較。胴体頂部の高さを揃えて重ねる。鍾馗は幅広に見えるが、底幅はほぼ同じ。偶然にも側面傾斜角は同じ。 |
側面図を重ねる。疾風のキャノピは底が深い。 |
隼二型と重ねる。隼は細く、低い。 |
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図面シリーズとしては、次は下面図となる。また、側面、上面、断面も、もう少し精度を上げたい。ただ、新規模型プロジェクトの図面を優先するので、それが一段落してからとなる。気長にお待ちくだされ。
それと、キットが100%完璧かというと、そうではない。詳しくは裏ページをご覧いただくが、@垂直尾翼と胴体のつなぎの断面形、Aスピナの形状・サイズ、Bキャノピ側面形、C主翼厚さと取り付け位置、が要改善点。 このうち@とAは手作業での修正もそれほど大変ではないから、これから作る人はぜひ改善されたし。Bは木型作ってヒートプレスだから大変、Cもフィレットに影響するから、切った貼ったの大仕事。新規キットは、私の図面をベースにして、さらに完璧なものになってほしいな。そういう意味では、図面を描く意義はあったわけだ。←牽強付会ってか
造形村フォッケウルフ 胴体形状、鼻筋の細さは良さそう。ただし、主翼が全然ダメ。前縁が厚く丸い。一方で、それ以降は平板で厚みも足りないか。NACA23000って言葉を知ってるのかな? また、翼取付高さが低い可能性。そのせいか、フィレット付近の胴体下面の丸みが足りない。私の図面は翼型と翼高さをちゃんと示しているのに、多分無視されているのだろう。残念。(当方からオファーはしたのだ。断られたが。) ミニアートP-47 外形は、タミヤを「参考」にしているのかな。したがって、タミヤの欠点(胴体が太く、翼後半が厚い)をそのまま引きずっている印象。小物はタミヤと比べて別に優れている訳でもない。ということで、アドバンテージはリベットくらい。形は気にしない、リベット欲しいが自分で打ちたくない、という人にはオススメ。私ならタミヤを選ぶな。 ボーダーモデル1/35キット群 それぞれのコピー元?の出来がそのまま反映されているみたい。スピットはパーツ状態で胴体断面形がダメとの話(私は見てない)。メッサーは機首の形が変でカッチョワルー。97艦攻はハセ48がベースと思われ、まずまずの印象。分かったことは、このメーカーは飛行機のことを知らない。ま、オーセンティックな飛行機モデラーはスケールの時点で対象外。逆に出来が良くなくて一安心だ。
画像は鮮明で、拡大すると数字も読める。この翼型はNN21と明記されており、鍾馗も同じ翼型である(鍾馗マニュアルに記載)。このデータは、私自身は初めて見たもので、これまでメジャーな出版物には記載されていなかったもの。 |
これがその図。ページをスマホで撮影したため歪みがある。印刷の網点のためモアレが生じているのはご容赦を。 |
その拡大。座標値(上段はコード%、中下段は翼基準面からの距離)、翼型番号(NN21-1.5-16.5)も明瞭。 |
このデータをエクセルに入力してグラフを描かせてトレースし、側面図(フレットまわり)、平面図(付図の翼型図)、断面図(フィレットまわり)を訂正し差し替える。図面は従前の掲載箇所に置く。記事も一部訂正。その翼型図が下画像だ。青線はキャンバーライン(翼上下面の中間点をつないだもの)。 |
最大翼厚位置が、40%コード付近にあり、後半は割と絞られ、またキャンバーラインも最高点が後ろ寄りで、層流翼に近いものとなっている。ただしP-51などと比べると前縁が厚い。これは失速特性に配慮したものだろうか。 私の疾風や隼の図面に記載していた、NN21の「想像図」がこちらで、これは九七戦に用いられたNN2-改をベースに、後半をNACA23000シリーズに近づけたもの。 |
これらを重ねるとこうなる。「想像図」は、翼前縁付近では上面が厚く、翼後半では下面が薄い。翼前縁20%コード付近ではその差は1/72で最大0.5mmほど。 |
参考までに、九七戦のNN2-改がこちら。NN21とはかなり異なる翼型だ。出典は参考文献-6の丸メカ。ちなみに、隼は同丸メカによると、付け根が「九七戦のNN2」(←文献の表現。つまりNN2-改ということ)、翼端がNN21とのこと。 |
疾風の図面も新資料に基づき訂正してver.3として差し替えておく。しかし、アルマの疾風はこの「想像図」に基づいて設計されているはずで、なんとも痛恨。関係者にはお詫び申し上げる。まあ、資料の出版は発売後だから間に合わなかったわけだが。 隼の翼型図も修正完了し、ver.3とする(7/12)。修正のない、側、上、正面、断面図はver.2のまま。翼型をver.2と比較すると、付け根はほとんど同じ(ver.2がほぼNN2改と同じため)、翼端はやや前縁の上面側が薄くなるが、もともと薄い箇所なので、それほど大きな差はない(←私の主観では)。
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側面図、上面図も、気付いた点を微修正(ディテールの追加、ミスの修正など)して差し替える。コメントは元の場所に追記。次は正面図。各図のファスナも追加する予定。
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アルマから1/72隼II型の新キット発売がアナウンスされた。同社疾風同様に、元の図面は私の作である。疾風と違うのは、今回は2年前の開発当初から水面下で全面協力しており、設計段階でのレンダー画像による形状等のチェックや、資料の提供などしてきた。ということで、隼の決定版になることは間違いない。しかも価格は、P-39と同様に以前の同社キットより抑えられている。これは同社の企業努力によるもの。(先日のモデフェスでは5000円を切る予価。カッコ内後日追記) キットは中期型(後期前型)と後期型(後期後型)のコンパチ。前期型が出るかどうかは分からない。1/48あるいはI型も分からない。本キットが売れれば可能性は高いと思う。で、これらが実現した暁には、鍾馗のキット化だ。←そのために図面を描いているのだよ。 |
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初回パッケージの塗装例は3つ。上から59戦隊、54戦隊、71戦隊である。 |
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メインパーツのランナー図。この他に小物類のランナーがもう1枚。ヘッドレストや落下タンクは2種類セットされる。 |
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開発中はしゃべりたくてウズウズしてたのに、堅く口止めされてたのだよ。これでやっと解禁。
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パーツ割りから、バリエーション展開も期待できる。サイクロンエンジン搭載型も出るのではないかな。P-40Bはどうかな? 詳細はこちらから。
さて、今回の主な修正点は、まずファスナを記入。また、これまでフレーム/リブ位置を示していたものを、リベットラインに変更する。シングル/ダブルが判明したものはそのとおりに表記。分からないものはそのまま。改めて図面と写真を見比べると、間違いや記入不足も多く、それらも修正。コメントは初出箇所に追記する・・予定。
ではまずII型の各型式の違いから。乙は主翼機銃が撤去され(オプションで40mmロケット砲)、かわりに胴体機銃が12.7mmに変更になる。それに伴い、機銃ガス抜き穴が大きくなり、給弾パネルが幅広になる。丙は主翼の12.7mm機銃が復活。てなところが、世傑あたりに書かれている。でもそれだけかな。 |
甲の機首回り。右の乙と比べると、後方の機銃ガス抜き穴が小さく、弾倉パネルは細長い。前方のガス抜き穴はどうだろう? |
乙の機首回り。左記以外に、風防の裾のパネルの形が違う。甲は単純な曲線。乙は途中で折れ曲がる。左画像と比べられたし。 |
こちらは明野の甲型。 |
70戦隊の乙型。うーん、前方の穴は同じかなあ。ちょっと位置が前方寄りのような気もするが・・・ |
甲。望遠鏡式照準器のディテールが分かる。風防裾の形状にも注意。 |
乙。百式照準器や転覆覆いのディテール、風防の手掛け、風防上部のフレーム(内部にある)が見どころ。 |
乙型でも、初期生産機は望遠鏡装備だ。給弾パネルの形から乙なのは間違いない。 |
これも望遠鏡装備の乙。ガス抜き穴が大きい。風防の裾は角ばっている。ということで、照準器は型式の識別点にはならない。 |
甲の左舷アクセサリカウルには、小さな円形パネルがない。右舷にはある。乙は左右同じ位置にある。 |
別の甲型。やはり無い。 |
さらにもう一つ。アンテナ線の引き込み位置が違う。こちらは甲。 |
乙。後方に移動し、元の場所は小さな円形パッチで塞がれるようだ。キャノピ内部の穴にも注目。 |
細かいところでは、乙は弾倉パネルとその後方のパネルラインとの間にリベット列がある(一番上の画像参照)。左舷は写真ではよく分からない。右舷だけとする理由は思いつかないから多分左舷にもありだろう。甲は両舷ともない。 なお、画像キャプションでは、これらの違いを単純に甲と乙で分けているが、実際に型式の変更に伴うものなのかは分からない。つまり、これらの変更は乙の生産開始時期とは多少のズレがある可能性がある。 次に、胴体各部を見ていこう。今もってよく分からないのが、胴体上部にあるとされる胴体燃料注入口と潤滑油注入口。下3枚目の乙型にある穴らしきもの以外は、いくら写真を見ても分からない。 |
燃料補給中。防火壁後方の胴体上部に燃料口があるのは間違いないのだが。またアクセサリカウルを外した別写真では、防火壁前方に滑油タンクらしきものが見える。 |
この写真だと、矢印のところにあるような・・・いや、ただの塗料のハガレか? |
再掲。画面右上端の穴は滑油口かな。もしそうだとして、機体中心線上なのか、左舷よりなのか。 |
再掲。これなど、全く存在が分からない。他の写真もこんなもん。 |
続いて、その他の胴体各部。かなりマニアック。 |
甲型。転覆覆い後方の穴5個、胴体上部の穴が分かる。この機体はキャノピ上部の窓枠が無く、内部のフレームだけのように見える。 |
望遠鏡型照準器装備の乙型。風防内部の胴体上部の穴に注目。風防の裾は角ばっている。 |
フィレット付近のリベットラインに違いがある。これは乙型の左舷。 |
乙型の右舷。日の丸の前方に縦のリベットラインが追加されている。これが右舷と左舷の違いなのか、たまたま補修されただけなのか。ちなみに甲型は左右とも追加ラインはなさそう。 |
次は尾部まわり。 |
尾灯の点検パネルは、左舷のみで右舷にはない。これは隼や疾風も同じ(拙作図面参照)。 |
こちら右舷。この写真は尾翼のリベットライン、ダブル・シングルがよく分かる。 |
エレベータのトリムタブには下面側の胴体寄りに操作ロッドがある。写真でも何となくそれらしきものが写っている。 |
別写真で。操作ロッドだと思えばそう見えてくる。ま、確かなことは分からない。尾脚ドアの開き方にも注意。 |
トリビアはまだ続く。次は脚。拙作1/48鍾馗製作記にも書いたけど、脚カバーの内側は、甲と乙で異なる。あ、これは便宜上そうしてるだけで、実際は型式とはズレてるかもしれないのは前述のとおり。 |
甲型。カバーの内張り(というのかな)は凸凹なく平ら。他写真も合わせると、塗色は青竹と思われる。 |
甲型の外側。下と比べるとリベットラインもビミョーに異なる。 |
乙型。内張りにリブの凸がある。他写真とも合わせて、無塗装銀と思われる。 |
乙型の外側。斜めのリベットラインがない。 |
次は主翼機銃。よく見ると面白い。 |
丙型の12.7mm機銃のクローズアップ。機銃口のあるパネルは暗色(赤?)で塗られている場合が多い。 |
別角度で。ちなみに、機銃は主翼先端よりかなり上に位置する。 |
これは何だろう。駐機中にホコリ侵入を防ぐためのカバーなのかな? 機体は丙型。 |
これ何だろう? 40mmロケット砲か?それとも12.7mm機銃の銃身スリーブか、あるいは駐機中のカバーか? 型式不明。 |
40mmロケット砲かな。右上画像と違って銃身が長い。スリーブの前半はテーパーしている。 |
これまた違った形の40mmロケット砲。左画像のテーパー状の先端を外しただけかもしれない。ロケット砲は、他にもバリエーションがある。 |
これで最後。主翼まわり。 |
内外翼の境の前縁は、細いストリップ状のパネルに大きめのリベットが2列で打たれているように見える(矢印)。同じものは後方のエルロン前方にもある。詳細は拙図を参照されたし。 |
主脚庫後方には、正体不明の四角い箱(右の矢印)。何これ? 薬莢回収用の大きなブリスターにも注目。一連の画像および脚カバー内側(画面外)から47戦隊の甲型と思われる。 |
ロケット弾給弾中の図。このパネルは長方形ではなく、平行四辺形である。前後の辺はストリンガー(前進角あり)に平行。 |
乙型。この写真だと、矢印のところにパネルラインがあるように見える。既存図面や模型では「なし」とされているが。また、主翼の薬莢穴は塞がれていることが分かる。 |
以上でトリビア終了。文章を書くのに疲れたので、図面のキャプション追加は後日。改めて掲載画像を見返すと、図面の要修正箇所も出てくるが、それも後日ということで。
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その結果がこれだ。通常当頁のレンダー画像は正投影にしているが、実機写真とのイメージを比較するため、パース付きとする。 |
主翼を非表示にしたところ。アクセサリカウルはこのような円筒でモデル化する。ここのフィレットは面倒なので省略。逆にフィレットなしの方が、胴体と翼との関係を把握しやすい。 |
胴体との取り合いはこうなる。これにフィレットがつくと、実機写真のイメージになると思うがどうだろう? バルジは隼のように前に垂れ下がらないのが正解とみて間違いない。 |
脚収容部のあたりは、カウルからつながる円筒の胴体断面が残る。これと主翼とを滑らかにつなげると、実機のラインになる(と私は思う)。 |
もしかすると、バルジ上面は、タイヤを収めるためもう少し上方に膨らんでいるかもしれない。前縁の尖り具合はこんなもんかな? 脚庫上部のパネルライン(矢印)にも注目。平面図だと後退角がつくが、この画像だと前進角があるように見える。 |
正投影にして正面から見たところ。脚カバーはこんな具合に見える。拙図の正面図もこんな風に描いているよ。左画像の矢印のパネルラインは、正面だとこうなる。だから前進角に見えるのだ。 |
補足。胴体、キャノピ、主翼は、ロフトで作る。尾翼はバランスを見るのが目的なので、簡便に板で代用。胴体は古い3D設計なので、古いバージョンの図面を使用しており、最新のものとは微妙に違う。例えばキャノピが少々高い。ロフトで胴体を作っているため、フィレットのあたりに変な凸凹ができている。これ、断面コンター図を、寸分の狂い無く描かないとこうなってしまうのだ。これ以上の修正は難易度が高くてこの辺で妥協。 一方、主翼は中島NN-21翼型データを反映したもの。バルジ部は、翼型の相似形で前縁を張り出す。詳しくいうと、最大厚の40%コードより前方を拡大して平面形に合わせる。イメージを助けるため、パネルラインも入れる。タイヤは、現解釈でもギリギリでバルジ内に収まることは確認済み。ただ、余裕がないので、膨らみが少しあってもいいかな。 さて、折角なので、実機写真と比較して、胴体太さなどの見え方も確認しよう。 |
米軍撮影の写真に角度を合わせる。胴体やキャノピの見え方はイイ感じではないかな? ちなみに、脚庫上のパネルラインは後退角がつく。フィレットが変なのは、後部胴体の3D設計が手抜きだから。 |
参考、補正なし実機写真。 |
胴体のクビレ具合、キャノピ断面形など確認されたし。内外翼境の折れ曲がり具合はどうだろう? ちなみに、キャノピは後方にスライドさせている。 |
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3Dデータのお持ち帰りは意味がないからしないが、画像は閲覧可能にしておく。興味ある方はこちらからどうぞ。ビューキューブ横の三角をクリックすると、正投影とパースを変更できる。
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1 | 新版世界の傑作機 No.16 陸軍2式単座戦闘機「鍾馗」 | 文林堂 |
2 | 旧版世界の傑作機第14集 鍾馗 | 文林堂 |
3 | 世界の傑作機 スペシャルエディション No.8 写真史「飛行第四十七戦隊」 | 文林堂 |
4 | 鍾馗戦闘機隊 帝都防衛の切り札 陸軍飛行第70戦隊写真史 | 大日本絵画 |
5 | 鍾馗戦闘機隊2 陸軍戦闘機隊の総本山 明野陸軍飛行学校小史 | 大日本絵画 |
6 | ハンディ判図解・軍用機シリーズ 12 隼/鍾馗/九七戦 | 光人社 |
7 | 航空ファンイラストレイテッド No.79 陸軍航空隊の記録 第1集 | 文林堂 |
8 | 航空ファンイラストレイテッド No.80 陸軍航空隊の記録 第2集 | 文林堂 |
9 | 航空ファン95年3月号 | 文林堂 |
10 | モデルアート別冊 No.329 日本陸軍機の塗装とマーキング 戦闘機編 | モデルアート |
11 | モデルアート別冊 No.395 日本陸軍一式戦闘機 隼の塗装とマーキング | モデルアート |
12 | モデルアート別冊 No.416 陸軍航空英雄列伝 | モデルアート |
13 | 一式戦闘機「隼」 [歴史群像]太平洋戦史シリーズ52 | 学研 |
14 | 二式戦闘機(二型)取扱法 | 陸軍省陸軍航空本部 |
15 | 丸2023/6豪華別冊付録 | 潮書房光人新社 |