中島 キ44 二式戦闘機 鍾馗 図面

2024.4.30初出


最終更新日


■ はじめに 

 新規図面プロジェクトは鍾馗。予想は当たったかな? ん?五式戦? まあ、これもいずれそのうち。さて、鍾馗。ハセ1/32の出来がいいので、本来図面は描く必要なしなんだけど、アルマホビー(か他のメーカー)がキット化してくれるかも、と期待して描くことにする。作成にあたっては、ハセ1/32は頭から消し去り、写真とマニュアルだけをベースに自分なりに線を引く。出来上がったら、キットと比べよう。

 鍾馗については、図面を描くための資料が極めて限られている。実機は現存していない(中国に主翼の残骸があったが、今はどうなってるのだろう?)。写真も限られている。幸い、マニュアルは残っており、記載された寸法や図は貴重である。


■ 鍾馗の写真

 まず写真から見ていただく。図面作成には「遠方・真横・鮮明」三拍子揃った写真が必要だ。当機の場合、この条件に該当するものはない。その中で、最もよく側面形を表しているのが1枚目、70戦隊機の空撮だ。このイメージを大切にしたい。

 ただし、距離が近く、スピナは真横だが尾翼は斜め。また約10°の俯角がある。フリー画像ソフト「GIMP」により、遠近法のパースを除去したものが2枚目。比べると、機首がやや小さくなり、尾翼は大きくなる。また各要素が全体的に前寄りになる。



1枚目。補正なしの生の写真がこれ。垂直尾翼がやや後傾しているのはレンズの歪みか、紙の歪みか。実機がこうなのか。


2枚目。遠近法を補正したもの。その詳細は後述。垂直尾翼がやや後傾しているところも補正(ここはちょい補正しすぎかも)。



 この空撮は俯角があるため、主翼の陰で胴体下面ラインが分からない。そこで、下の3枚目で補完する。この写真はさらにカメラが近く、パースがきつい。画像は、主翼近くの寸法に合わせて縦横の縮尺を変更。GIMPの遠近法補正はしていない。4枚目は同じく側面形を補完するもの。こちらはやや斜め前方からだが、距離が遠い。俯角も1枚目より小さいので、胴体下面ラインが分かる。この画像は縮尺、遠近法の補正なし。



3枚目。撮影位置は主翼前縁付近、推力線にほぼ同じ高さ(翼端の見え方で分かる)。鍾馗は結構腹が垂れ下がっている。キャノピは見上げるため、高さが低く見える。


4枚目。距離による歪みが少ないのが、この写真の価値。キャノピの高さ、カウルの開口部の高さも分かる。尾翼下側が見えないのが残念。




■ 胴体側面図

 で、これらをベースに、マニュアル記載値(胴体フレームのステーション、尾翼高さなど)を考慮して描いた側面図がこれだ。フレーム、ストリンガーの位置は、写真のリベットラインを読んだもの。これを2枚目の補正後画像と重ねたのが、その次の画像。



側面図出来上がり。寸法の赤字はマニュアル記載値、青字は出来た図面を測った値。青細線は、フレーム、ストリンガーの位置を示す。この近傍にリベットラインがあるわけ。なお、図は最新バージョンとは細部が異なる。


2枚目と重ねたところ。写真のキャノピは、切り取って移動して「閉めて」ある。



 ちなみに世界の〇作機や大〇本絵画本の図面は、リベットラインが間違い。左舷点検パネルとその下のパネルラインの間にストリンガーが一本多いぞ。全体形状も全然違うし(キャノピが低く、機首が細く、尾翼が横長)。


■ パースの補正

 上の2枚目画像が、最終的な側面図になる。だから、1枚目の生画像を「どの程度」補正するかが重要だ。なぜなら、遠近法の補正により、キャノピやパネルラインなどの各要素が少し前に移動し、補正の強弱によってその移動量が変化するからだ。



16マスの格子を斜めに見たところ。左側は大きく右側は小さく、パースがついて赤線は中央より右側にある。

GIMPを使って遠近法の補正をしたもの。赤線は中央になる。つまり、補正により、赤線は左に移動する。


 そこでまず、写真の撮影距離を計算する。これは、主翼、尾翼の見え方と機体平面形状から、図学的に割り出すことができ、結果は約40m(カメラとスピナ先端の距離)となる。スピナが真横で、ラダーは斜め前から見ることになる。その角度は約13°。cos(13°)=0.974なので、機首より尾翼は2.6%遠くにあり、すなわち尾翼高さは2.6%小さく見える。だから、その高さが2.6%大きくなるように、GINPで補正してやる。

 この作業で、縦横比も変化する。ここで、カギになるのが尾翼高さの絶対値。縦横比を調整し、全長と尾翼高さを合わせる。こうして出来たのが2枚目画像なわけ。実際にはレンズの歪みなどもあって、こうは単純ではないだろうが、それ以上は追及しない(したくてもできない)。


■ マニュアル記載数値

 陸軍省陸軍航空本部作成のマニュアル「二式戦闘機(二型)取扱法」に記載された数値について考察する。このうち、側面図作成に大きく関係するのが、胴体フレームのステーション値、全長、尾翼高さ、胴体高さだ。

胴体ステーション

 疾風のマニュアルには、誤ったフレーム間隔が記載されていた。これに惑わされた既存図面も存在したね。鍾馗も疑ってかかったが、数値を図化して写真のリベットラインと比較すると、問題ないようだ。

全長

 次に全長。疾風も隼I型も、実際の全長とは異なる数値であった(←私の分析では)。したがって鍾馗も正しい保証はない。が、結果的には正しいものと思われる。傍証として、米軍測定値(と私には思われる)である29'2-1/2"をミリ換算すると8,903mmであり、マニュアルの8,900mmに限りなく近い。隼II型はマニュアルの数値が正しい。

尾翼高さ

 尾翼高さは、マニュアルの図には胴体基準線(=推力線)から1,200mmと記載されている。しかし、この図の他の寸法の比率からすると、1,300mmが正解で、単純な記載ミスと考えられる。疾風で思ったのだが、中島の設計は、割とキリのよい寸法が使われている。だから、1,290mmなんてのはないだろうと。

胴体高さ、幅、長さ

 その他、胴体高さ1,800mm、胴体幅1,050mm、胴体長さ8,107mmというのがある。これ、出来た図面の胴体最高点(風防後端での風防高さ)と胴体最低点(主翼中央付近)の差をとると、1,800mmにならないのだよね。差は2cm程度だけど、無理に合わせようとすると、他が破綻する。一方、風防後端の断面で切ったときの高さを測ると1,800mmとなる。ということで、こじつけっぽい感じもあるが、こうしておく。

 一方、胴体長さ8.107mmは、何を表すかよく分からん。カウル先端からだとラダーの中ほどまでの長さに該当する。垂直安定板後端から測るとスピナ中ほど。エンジンのプロペラ取り付け軸先端から垂直安定板後端までか?? 胴体幅1,050mmについては、次回で考察。


■ 側面図 

 右舷も描き、一般的な側面図としての体裁にする。左舷は二型乙、右舷は二型甲。弾倉パネル、機銃ガス抜き穴、照準器が異なる。







  • 図中で赤字で示す寸法はマニュアルに記載されているもの。青字は、出来た図面を測って5mmに丸めたもの。 マニュアルの垂直尾翼の図によると、一番下のラダーヒンジが胴体基準線上にある。したがって、スピナ先端とヒンジ中央を結んだ線が胴体基準線となる。

  • 水平尾翼取付角の記載はない。写真の見え方に従って胴体にストリンガーを入れ、そこに尾翼を当てはめると、水平ではなく、1、2°程度の取付角があるように見える。拙図では1.5°とする。

  • 垂直安定板の後縁とラダーヒンジの関係が悩ましい。世間の図面や模型は、後縁=ヒンジライン としているものが多数。実際がどうかは分からないが、私は安定板後縁はヒンジより前にあって、そのラインが後傾していると解釈する。

  • 上記の理由。@上記1枚目写真で、安定板後縁が後傾しているように見える。2枚目画像はGIMPで後縁を垂直にしているが、やや無理がある感あり。A後縁とヒンジが同一位置にあると、ラダーを切ったときに後縁に干渉してしまう。避けるには胴体側とラダーに段差が必要。Bマニュアルの図をよく見ると、ヒンジの前方に安定板後端を示す線があるように思える(下図参照)。C後縁=ヒンジラインとして写真の縮尺を合わせてトレースすると、タブを含んだ全長が8,900mmを超える。逆にタブの分だけ後縁を前に追いやると全長がちょうど8,900mmに納まる。

  • #13と#15フレームはダブル。これは、水平尾翼の前後桁をそれぞれ2本のフレームで挟み込むため。胴体フレームと水平尾翼桁との間隔は15mmで、これは水平尾翼の図を解釈するとこうなる。

  • 胴体と主翼の境界のラインは、フィレット境とフラップ後縁を表す。

    <以下11/28追記>
  • 尾灯の点検パネルは左舷のみ。これは隼、疾風も同じ。また、尾灯のガラスは透明ではなく、電球のようなスリガラスではなかろうか。

  • 排気管上方の小円形パネルは、II型甲では左舷に確認できない。乙以降では両舷同じ位置にある。

  • 風防フレームの下端は、甲では単純な曲線。乙は途中で折れ曲がる。またアンテナ線引き込み位置は、乙では隔壁1つ分後方に移動する。

  • ただし、これらの変化が、甲と乙固有のものなのか、たまたま甲から乙への変更に近い頃に導入されたかは不確か。甲と乙の唯一確定的な識別点は、胴体機銃ガス抜き穴と弾倉パネルのみ。望遠鏡式照準器は、乙の初期にも見られる。

  • 乙の図面にピンク色で記載した胴体弾倉パネル後方のリベットラインは、甲型にはない。乙は左右両舷にある。同様に右舷のコクピットドア下方のピンクのリベットラインも乙のみと思われる。これと近傍の縦リベットラインは右舷のみ。

  • 右舷図の胴体7番隔壁と9番隔壁の間にあるピンクの縦リベットラインは、乙の右舷のみに確認できる。甲や乙左舷には「なし」が確認できる。特定の機体のみ(補修、補強とか)の可能性もある。

  • 日の丸の位置とサイズは、写真トレースでこんなもん。本図では直径880mmとして描く。機体によりバラツキがあるような気もするので、塗装の際は個別に確認するべし。

  • 胴体フレームのリベットラインは、正確にはステーション位置よりややズレるが、どっちにズレるかが不明なので、ステーションの位置に記入する。



マニュアルの図。赤矢印が垂直安定板後端に見える。この線は安定板上端では、ほとんどヒンジラインの位置になる。



■ 裏ページ

 一部の方はご存じだが、当サイトには諸事情により表に出せない記事を載せた「裏」ページがある。どこからもリンクしていない。ハセ1/48製作時に鍾馗裏ページを作成した。当時は資料写真の出所に配慮したんだけど、最近はあまり気にしてないので、もうオモテにしていいかなと。つうことで、あわせてこちらもお読みくだされ。なお、当時と今とで考えの違っている部分は、訂正または削除し、一部写真を追加する。訂正漏れはご容赦を。

鍾馗裏ページ



 初回ここまで。次回は断面図と上面図。ハセとの比較は次回のお楽しみ。


■ 胴体平面形 5/8追加

 一部の既存図面は、防火壁の幅を1,050mmとして、五式戦のようにくびれた胴体になってしまってるが、鍾馗の胴体がそんなに細くないことは裏ページに書いたとおり。改めて写真を見ていただこう。



鍾馗の平面形が分かるほぼ唯一の写真。トリミングしているが、主尾翼の平面形もこの写真がベース。真上でなく俯角65°である。また距離も近く、ラダーヒンジが斜めに写っている。それでも、胴体にくびれがほとんどないことは明瞭。


主翼との比較で、防火壁の幅が分かる。ただしパースが強い写真なので、その影響をどう計算するかが重要。キャノピ、胴体後端、主翼フィレット、フラップそれぞれの幅も分かる。


風洞実験用の木型。たぶん胴体の形状は実機どおりだろう。風防の木型もあるが、この写真では外されている。



 では、胴体平面形を決めていく。カウル前半の下半分は完全な回転体、だと私は考える。これが出発点。これに従えば、カウル前半の平面形は、側面形におけるカウル下側と同じとなり、カウルの最大幅は1,430mmとなる。カウル後端から尾部までは、一直線なのか、途中でくびれが入るのか、悩ましいところ。上の3枚の写真は、#3フレームのところで微かにくびれるように見える。

 胴体最大幅1,050mmは、裏ページでは#3フレームとしたが、胴体最大高さ1,800mmが風防後端断面ならば、最大幅も同じ断面と考えた方がスッキリする。風防後端断面で1,050mmとなるには、#3フレームは1,085mmとなる。カウル後半はスムーズなラインで絞り、カウル後端から#3フレームまでは直線とする。こうすると、防火壁の幅は1,250mmとなる。裏ページでは1,300mmとしたが、やや過大であったな。

 #3フレーム以降は、垂直安定板後端まで一直線とする。木型写真だと、尾翼付近からカーブが入っているように見えなくもないが・・ 一方、空撮は直線のようにも見え・・・ ともかく、こうして描いた胴体平面形は、#3フレームのところで微かにくびれが出来る。


■ 主尾翼平面形

 翼の平面形は、米軍による空撮が頼り。基本的な寸法はマニュアルに合わせる。マニュアルには、スパン9,450mm、ルートコード(バルジ除く)2,110mm、チップコード(最翼端での仮想長さ)980mmが記載されている。フラップ外端とエルロン外端は、マニュアルでは少々分かりづらい記述だが、注意深く解釈すると寸法がばっちり分かる(後述)。



生写真(左右反転)。パースにより右側が小さい。また垂直より25°傾いているので、上反角の影響も強い。

GIMPにより距離のパースを除去し、全幅をマニュアルのスパンに合わせたもの。上反角の影響は除去できない(←あたりまえ)。


 上反角の影響による歪みは、左の翼だけ切り取ってスパン方向に広げて除去する。その際に目安となるのがエルロン内端の位置だ。上右写真で、全体スパンに対する左右の内端間の距離は、上反角の影響を受けない。正しく広げられれば、前述のフィレット幅とも合ってくる。


■ 尾翼

 尾翼のリブ、ストリンガーの配置は、下左写真による。試作型と思われるマニュアルの構造図とは合わない。ただ、全てが新しくなったのではなく、一部は引き継がれたものと考える。パネルラインは下右写真。



胴体と尾翼の骨組みが分かる貴重な写真だ。水平安定板の桁と胴体フレームの接合方法も分かる。

鍾馗のややトリッキーなパネルラインはこの写真が根拠。四角い小穴は何だろう?



■ 上面図 

 では上面図。胴体のカタチは、米軍空撮や木型の雰囲気に一致してると思うが如何?



  • 胴体平面形の決め方は上述のとおり。キャノピ幅については、次回断面図のところで解説する。 寸法の数字のうち、赤字はマニュアル記載のもの、もしくはマニュアルから合理的に計算で導かれるもの、青字は図面(元は写真)の読み取り。

  • 主翼のリブは翼基準面に直交する。平面図では、パネルラインやリブなどは、翼基準面(上反角6°)に垂直に投影したものを地面に垂直な方向から見た形として図化する。つまり、いつものお約束。

  • エルロン内端は、翼基準面沿いに中心から2,000mm(sta.2,000)とする。これは写真から計算されるが、マニュアル記述のフラップ幅4.000mをsta2000×2と考えると辻褄が合う。

  • また、エルロン外端も同様に写真からsta4,450となる。エルロンスパンは基準面沿いに2,450mmとなり、これにcos6°を乗ずると補助翼構造図に記載の2,437mmと合致する。

  • エルロン内端(=フラップ外端=内外翼境)のコードは1,750mm。写真の読み取りから。

  • 翼のリブ、ストリンガーは、マニュアルの図に従う。厳密にはリブ、ストリンガーの位置とリベットラインやパネルラインとはズレがあるが、どっちにズレてるかが分からないから、そこはテキトーに誤魔化す。(これは側面図も同じ)

  • 主翼前後桁は、胴体下端で防火壁と#3フレームに一致する(はず)。防火壁と#3フレームにおいては、前後フレームとの距離が半端な数字となっているのは、それが原因と考えられる。つまり、翼の都合優先で前後桁を配置し、そこに防火壁と#3を合わせたかと。それ以外のフレーム間隔は5mm単位。

  • 内翼端付近の機銃点検パネルは、前後辺がストリンガーに平行な平行四辺形だ。世傑47戦隊本に写真がある。内外翼境のパネルも同様に平行四辺形だと思う(こちらは確信までは至らず)。

  • 車輪バルジ付近のパネルラインは、脚収容部の脚柱前方のリブに沿っていて、後退角がついているはず。キットや既存図では前進角になってるが、リブのないところにパネルラインがあるわけないでしょ。

  • 水平尾翼は前述のとおり。スパンを記述したものは発見できず。既存文献には1,750×2とあり、写真とも合う。

  • エレベータヒンジは主翼前縁から5,800mm。これは胴体#13、15フレームの位置、それと水平安定板前後桁の関係、桁とヒンジの距離を示すマニュアルの図(ここは量産型に引き継がれたとの前提)から求まる。

  • 翼型については、7/10追記の項に記載。翼厚比は、写真の見え方から、中心で16.5%(疾風と同じ)、外翼境で15.0%、翼端で8%(疾風と同じ)とする。

  • 取付角2°、ねじり下げ2°はマニュアルに記載。裏ページに書いたとおり、航空ジャーナルの渡辺利久氏の文章により、内翼はねじり下げなし、外翼でねじる。

  • エルロン操作ロッドの内側の点検パネルは、マニュアルの主翼図に記載がある。文献-4の61ページの写真で、何となく存在ありに見える。(10/23追記)

    <以下11/28追記>
  • 胴体燃料注入口と滑油注入口の位置は不明。本図は推測によるもの。また、付近のファスナ、リベットも推測。

  • フラップ上部の水色丸で示すアクセスパネルは、マニュアルの図から推測したもの。写真では、何となく見えるような見えないような・・・

  • 一番上のカウルフラップは、他より狭い。その下の4枚は同じ(か、ほぼ同じ)で、一番下(排気管の前)は縦に長い。

  • 風防中央上部の横枠は、窓ガラスの内側にある。

  • 主翼アクセスパネルのファスナの数は推測。

  • 日の丸のサイズと位置は、概ねこんなもん。本図は直径1100mmとして描く。一部の機体(明野の斑迷彩)では、主翼日の丸がもっと小さく、外側に記入されている例がある。


 長くなったので、断面図は次回。


■ 胴体断面形 5/10追加

 前回更新から2日で再更新。明日から静岡HSで、前泊して空き時間にホテルで記事を書く。

 さて、側面形と平面形が決まった。次は断面形だ。モケイの外形の良し悪しを決定づけるのが断面形。チューカ製キットは、側面図と平面図だけで設計して断面形がダメダメなのが多いよね。モノやエアの「らしさ」は断面形が「らしい」から。では、写真を見ていこう。裏ページの再掲だけど。



リベットラインや白帯で断面形がよく分かる。フィレットのくびれ具合(わりと弱め)、防火壁の形(なで肩)に注目。

後部胴体頂部が分かる。後部胴体は、単純な楕円ではなく、菱形の角を丸めたようなイメージだ。

尾翼手前あたりは菱形が強く出る。垂直尾翼と胴体のつながり具合も分かる。ハセ1/32はここが残念。

中島系は、フィレット後方が緩い峰でせり上がっていく。零戦とはちょっと雰囲気が違う。キャノピの底の高さも分かるね。



■ キャノピ

 キャノピ断面形は、後方からの写真による。側面写真で、キャノピの底(胴体との接合ライン)の深さが分かり、キャノピ幅を合わせると、当該部分の胴体断面形が決まる。そこで違和感があれば、底の高さか幅が違うわけで、側面図、平面図を修正。これを繰り返して断面形を詰めていく。。



後方からの写真は何枚かある。これは少々荒いが俯角が小さいので歪みが少ない。

疾風(ピンク)と比較。胴体頂部の高さを揃えて重ねる。鍾馗は幅広に見えるが、底幅はほぼ同じ。偶然にも側面傾斜角は同じ。

側面図を重ねる。疾風のキャノピは底が深い。

隼二型と重ねる。隼は細く、低い。



■ 断面図 

 以上を踏まえて断面図を描く。







  • カウルの開口部のサイズは、正面写真や、斜め前からの写真でこんなもんか。上部のエアインテイクのサイズ、形状は、もうちょい精度を上げたいところ。

  • 断面Bを見ると、上面は下面よりわずかに2cm拡大する。これだけでは空気流量が少ないかと思えるが、ダクト正面形を見ると、ダクト底面がシリンダーの隙間に合わせて凹んで、断面を大きくしているのだろう。このあたり、案外「攻めた」設計をしている。ちなみに、エンジン直径は1,263mm。

  • 断面Eでは、風防後端を正面から見た形として描く。胴体断面は風防後下端位置で垂直に切ったもの。

  • キャノピ付近の胴体断面形は、キャノピの幅、底の高さに一致するように断面を決める。隼や疾風と比べると肩が張っている。

  • #5、6フレームのキャノピ内部になる部分は、やや平らになって高さが抑えられているようにも見える。断面図は、それがない理想的な形として描く。

  • マニュアルに胴体断面形が描かれているが、拙図はそのトレースではなく、写真の見え方で線を引く。雰囲気はマニュアルの図に合っている。マニュアルの図も、形状寸法が正確な「図」ではなくイメージ図といった程度だろう。

  • 垂直尾翼は、翼厚比8%として描く。実機がどうだかは不明。



■ コンター図 

 断面図の右下にあるコンター図を拡大。







 図面シリーズとしては、次は下面図となる。また、側面、上面、断面も、もう少し精度を上げたい。ただ、新規模型プロジェクトの図面を優先するので、それが一段落してからとなる。気長にお待ちくだされ。


■ ハセ1/32との比較 5/14追加

 前回更新で書き忘れ。ハセとの比較だ。キットは手元にないので、ネットで拾ったインストの塗装図(キットのデータを使っていると推測)と比較する。ジャジャーン、結果発表。胴体側面形、胴体平面形は、ほぼピッタリ。大山鳴動して鼠一匹、か。冒頭に書いたとおり、図面を描く必要はなかった? まあでも、ハセ32がかなり正確ということが分かったことには、価値があるだろう。

 それと、キットが100%完璧かというと、そうではない。詳しくは裏ページをご覧いただくが、@垂直尾翼と胴体のつなぎの断面形、Aスピナの形状・サイズ、Bキャノピ側面形、C主翼厚さと取り付け位置、が要改善点。

 このうち@とAは手作業での修正もそれほど大変ではないから、これから作る人はぜひ改善されたし。Bは木型作ってヒートプレスだから大変、Cもフィレットに影響するから、切った貼ったの大仕事。新規キットは、私の図面をベースにして、さらに完璧なものになってほしいな。そういう意味では、図面を描く意義はあったわけだ。←牽強付会ってか


■ 静岡HS新規キット評

 SHS後の最初の更新なので、メーカーブースなどで見たキット評をいくつか。作者を批判する意図ではないので、作った方、これから作る方は気を悪くしないでほしい。以下あくまで完成見本または作品を見た印象。

造形村フォッケウルフ
 胴体形状、鼻筋の細さは良さそう。ただし、主翼が全然ダメ。前縁が厚く丸い。一方で、それ以降は平板で厚みも足りないか。NACA23000って言葉を知ってるのかな? また、翼取付高さが低い可能性。そのせいか、フィレット付近の胴体下面の丸みが足りない。私の図面は翼型と翼高さをちゃんと示しているのに、多分無視されているのだろう。残念。(当方からオファーはしたのだ。断られたが。)

ミニアートP-47
 外形は、タミヤを「参考」にしているのかな。したがって、タミヤの欠点(胴体が太く、翼後半が厚い)をそのまま引きずっている印象。小物はタミヤと比べて別に優れている訳でもない。ということで、アドバンテージはリベットくらい。形は気にしない、リベット欲しいが自分で打ちたくない、という人にはオススメ。私ならタミヤを選ぶな。

ボーダーモデル1/35キット群
 それぞれのコピー元?の出来がそのまま反映されているみたい。スピットはパーツ状態で胴体断面形がダメとの話(私は見てない)。メッサーは機首の形が変でカッチョワルー。97艦攻はハセ48がベースと思われ、まずまずの印象。分かったことは、このメーカーは飛行機のことを知らない。ま、オーセンティックな飛行機モデラーはスケールの時点で対象外。逆に出来が良くなくて一安心だ。


■ 図面修正 7/10追加

 いつもお世話になっている図面マニアのT氏より、疾風の翼型データが記載されている出版物(丸2023/6豪華別冊付録 潮書房光人新社)を紹介いただく(大感謝)。その中の古峰文三氏による「四式戦「疾風」開発史」という記事に、当時の製造図の写しと思われる図が記載されており、そこに、ルートと翼端における翼型の座標データが記載されている。

 画像は鮮明で、拡大すると数字も読める。この翼型はNN21と明記されており、鍾馗も同じ翼型である(鍾馗マニュアルに記載)。このデータは、私自身は初めて見たもので、これまでメジャーな出版物には記載されていなかったもの。



これがその図。ページをスマホで撮影したため歪みがある。印刷の網点のためモアレが生じているのはご容赦を。

その拡大。座標値(上段はコード%、中下段は翼基準面からの距離)、翼型番号(NN21-1.5-16.5)も明瞭。


 このデータをエクセルに入力してグラフを描かせてトレースし、側面図(フレットまわり)、平面図(付図の翼型図)、断面図(フィレットまわり)を訂正し差し替える。図面は従前の掲載箇所に置く。記事も一部訂正。その翼型図が下画像だ。青線はキャンバーライン(翼上下面の中間点をつないだもの)。





 最大翼厚位置が、40%コード付近にあり、後半は割と絞られ、またキャンバーラインも最高点が後ろ寄りで、層流翼に近いものとなっている。ただしP-51などと比べると前縁が厚い。これは失速特性に配慮したものだろうか。

 私の疾風や隼の図面に記載していた、NN21の「想像図」がこちらで、これは九七戦に用いられたNN2-改をベースに、後半をNACA23000シリーズに近づけたもの。





 これらを重ねるとこうなる。「想像図」は、翼前縁付近では上面が厚く、翼後半では下面が薄い。翼前縁20%コード付近ではその差は1/72で最大0.5mmほど。





 参考までに、九七戦のNN2-改がこちら。NN21とはかなり異なる翼型だ。出典は参考文献-6の丸メカ。ちなみに、隼は同丸メカによると、付け根が「九七戦のNN2」(←文献の表現。つまりNN2-改ということ)、翼端がNN21とのこと。





 疾風の図面も新資料に基づき訂正してver.3として差し替えておく。しかし、アルマの疾風はこの「想像図」に基づいて設計されているはずで、なんとも痛恨。関係者にはお詫び申し上げる。まあ、資料の出版は発売後だから間に合わなかったわけだが。

 隼の翼型図も修正完了し、ver.3とする(7/12)。修正のない、側、上、正面、断面図はver.2のまま。翼型をver.2と比較すると、付け根はほとんど同じ(ver.2がほぼNN2改と同じため)、翼端はやや前縁の上面側が薄くなるが、もともと薄い箇所なので、それほど大きな差はない(←私の主観では)。


■ 下面図 10/23追加

 鍾馗は微速前進中。さて、下面に関しては、一次資料が限られており、利用可能なものは、@マニュアルの主翼骨組図、A地上の実機写真で翼下面が写っているもの、B世傑にある主翼下面の残骸写真、C中国にある主翼の残骸の写真。それらでは分からない不明点は、先人の業績(イラストで見る日本陸・海軍機大図鑑:モデルアート社など)や既存キット(主にハセ1/32の塗装図)を「参考」にし、あとは想像で描く。



  • パネルライン、アクセスパネル、フラップのサイズ・形状は、先人を「参考」にする。弾倉パネル後方のパネルラインはキット等にはないが、あっても悪くないかと。ま、その程度の確度。後部胴体下面のパネルラインは、上面からの推測。

  • 水平安定板のパネルは、世間の図面やキットと異なり4分割としているが、とくに根拠があるわけではない。5枚だと分割し過ぎかな?という程度。

  • 脚庫の形状は、側面写真での脚カバー形状による。

  • 主翼後方の胴体下面(隔壁5〜7まで)のリベットラインは、全くの想像。フラップ直後から隔壁5までの下面は、マニュアルの骨組み図。胴体下面のパネル/リベットラインもよく分からず、想像で。

  • ピトー管点検パネルとその外側の点検パネルの位置は、マニュアルの図よりリブ1つ分外側にする。実機写真ではそのように見える。

  • 乙型は、主翼機銃撤去に伴い、薬莢排出口と後方のブリスターは無い。また中心線付近の胴体機銃薬莢排出口は甲より拡大されたものと思われる。

  • 落下タンクの形状、サイズ、前後位置は世傑20ページの写真などから。精度は甘い。

    <以下11/28追記>
  • エレベータのトリムタブには、内側寄りにタブ操作ロッドがある。

  • マニュアルの図では、フラップの後半は布貼りと書かれている。本図では、下面は全て金属、上面後半のみ羽布とするが、もしかすると、下面も後半は羽布かも。


 側面図、上面図も、気付いた点を微修正(ディテールの追加、ミスの修正など)して差し替える。コメントは元の場所に追記。次は正面図。各図のファスナも追加する予定。


■ アルマホビーの隼 






 アルマから1/72隼II型の新キット発売がアナウンスされた。同社疾風同様に、元の図面は私の作である。疾風と違うのは、今回は2年前の開発当初から水面下で全面協力しており、設計段階でのレンダー画像による形状等のチェックや、資料の提供などしてきた。ということで、隼の決定版になることは間違いない。しかも価格は、P-39と同様に以前の同社キットより抑えられている。これは同社の企業努力によるもの。(先日のモデフェスでは5000円を切る予価。カッコ内後日追記)

 キットは中期型(後期前型)と後期型(後期後型)のコンパチ。前期型が出るかどうかは分からない。1/48あるいはI型も分からない。本キットが売れれば可能性は高いと思う。で、これらが実現した暁には、鍾馗のキット化だ。←そのために図面を描いているのだよ。






 初回パッケージの塗装例は3つ。上から59戦隊、54戦隊、71戦隊である。







 メインパーツのランナー図。この他に小物類のランナーがもう1枚。ヘッドレストや落下タンクは2種類セットされる。





 開発中はしゃべりたくてウズウズしてたのに、堅く口止めされてたのだよ。これでやっと解禁。


■ 正面図 11/8追加

 正面図が、とりあえず出来上がる。プロペラブレードは未だ。いずれ、3D設計してそれを二次元図面に変換する予定。できれば、I型も描きたいところ。さて、正面図としての「売り」は、主翼の正面形かな。内外翼の境で折れ曲がる。当初はこの内外翼境での翼厚比を14.5%としていたが、それだと折れ曲がりが少ないかなと思い、15.0%にしてみる。それ以上の根拠はない。この変更に伴い、上面図に記載している翼断面図を変更して差し替える。



  • この主翼正面形の折れ曲がりが、上面側だけなのか、下面側だけなのか、両方なのかが問題。本図では、翼基準線(※)を直線と仮定する。これだと上下面両方で折れ曲がる。しかし、実際に作図すると、ねじり下げの効果があって、上面側の折れ曲がりが強く感じられる。

    ※ ここでは他の多くの機体の例に従い、コードライン(翼前後縁を結んだ線)の30%コードの点を結んだ線と設定する。ただし、実機がこのような考え方をしているかは定かではない。翼前縁が翼基準線かもしれない。

  • 主翼機銃は、翼前縁より上方に位置する。

  • 翼端はわずかに切れ上がる。そのため翼の最外端は翼基準線より上になる。ただしコルセアのように、上面ラインが翼端まで一直線になるほどではない。

  • 主翼バルジは、隼やP-51マスタングのように前下方に垂れ下がるのではなく、素直に前方に張り出していると思う。したがって、当該部分における翼前縁ラインは下に曲がっていかない。

  • 主脚庫の正面形は、前縁バルジ、カウルからつながる胴体下面の曲面などの影響で、複雑な形になる。下面図、翼型図、胴体断面図を突き合わせ、主要な点の位置を割り出し、それらをつないで線を引く。

  • 主脚カバーの正面形は、この主脚庫正面形をコピーしたもの。カバーの脚柱部分とタイヤ部分には「ねじれ」があり(このねじれはバルジの影響によるもの)、そのため、カバー平面形とは異なる形に見える。

  • 主脚トレッドはマニュアルに3.0mと書かれている。脚ピボットを想定し、主脚とタイヤを描くと「ハ」の字に広がり、鍾馗らしい地面に踏ん張った姿となる。

  • 尾脚カバーは、カバー上縁にヒンジがあるのではなく、内部にある。そのため、あたかもカバーが上ににスライドするように開く。



■ アルマホビーのカーチス・ホーク

 アルマホビーから、ホークH-75/P-36の1/72キット発売が公表された。例により、元図は私が作成したもの。だから、外形はばっちり正確なはず。ただし、隼のように途中段階での監修はしていない。レンダー画像で分かるように、風防と後方固定窓のパーツ割りが工夫されており、従前のキットのように窓のフチにクリアパーツの接着面が見えない。これは嬉しい。

 パーツ割りから、バリエーション展開も期待できる。サイクロンエンジン搭載型も出るのではないかな。P-40Bはどうかな? 詳細はこちらから。


■ 図面修正 11/20追加

 各図面を修正して差し替える。これにて、鍾馗図面シリーズは一応の完成とする。プロペラブレードやI型図面など、まだ足りない部分もあるが、ゆるゆる追加するつもり。

 さて、今回の主な修正点は、まずファスナを記入。また、これまでフレーム/リブ位置を示していたものを、リベットラインに変更する。シングル/ダブルが判明したものはそのとおりに表記。分からないものはそのまま。改めて図面と写真を見比べると、間違いや記入不足も多く、それらも修正。コメントは初出箇所に追記する・・予定。

側面図  上面図  下面図  正面図  断面図  コンター


■ 鍾馗トリビア

 図面を片手に写真を眺めていると、いろんなことに気付く。知ってた人は知ってたんだろうけど、これまで語られてなかった(たぶん)発見もある。言葉だけだと説明しづらいので、写真とともに解説する。出典は巻末のリストのどれか。例によりナニがアレなのはこの際ご容赦くだされ。

 ではまずII型の各型式の違いから。乙は主翼機銃が撤去され(オプションで40mmロケット砲)、かわりに胴体機銃が12.7mmに変更になる。それに伴い、機銃ガス抜き穴が大きくなり、給弾パネルが幅広になる。丙は主翼の12.7mm機銃が復活。てなところが、世傑あたりに書かれている。でもそれだけかな。



甲の機首回り。右の乙と比べると、後方の機銃ガス抜き穴が小さく、弾倉パネルは細長い。前方のガス抜き穴はどうだろう?

乙の機首回り。左記以外に、風防の裾のパネルの形が違う。甲は単純な曲線。乙は途中で折れ曲がる。左画像と比べられたし。

こちらは明野の甲型。

70戦隊の乙型。うーん、前方の穴は同じかなあ。ちょっと位置が前方寄りのような気もするが・・・

甲。望遠鏡式照準器のディテールが分かる。風防裾の形状にも注意。

乙。百式照準器や転覆覆いのディテール、風防の手掛け、風防上部のフレーム(内部にある)が見どころ。

乙型でも、初期生産機は望遠鏡装備だ。給弾パネルの形から乙なのは間違いない。

これも望遠鏡装備の乙。ガス抜き穴が大きい。風防の裾は角ばっている。ということで、照準器は型式の識別点にはならない。

甲の左舷アクセサリカウルには、小さな円形パネルがない。右舷にはある。乙は左右同じ位置にある。

別の甲型。やはり無い。

さらにもう一つ。アンテナ線の引き込み位置が違う。こちらは甲。

乙。後方に移動し、元の場所は小さな円形パッチで塞がれるようだ。キャノピ内部の穴にも注目。


 細かいところでは、乙は弾倉パネルとその後方のパネルラインとの間にリベット列がある(一番上の画像参照)。左舷は写真ではよく分からない。右舷だけとする理由は思いつかないから多分左舷にもありだろう。甲は両舷ともない。
 なお、画像キャプションでは、これらの違いを単純に甲と乙で分けているが、実際に型式の変更に伴うものなのかは分からない。つまり、これらの変更は乙の生産開始時期とは多少のズレがある可能性がある。

 次に、胴体各部を見ていこう。今もってよく分からないのが、胴体上部にあるとされる胴体燃料注入口と潤滑油注入口。下3枚目の乙型にある穴らしきもの以外は、いくら写真を見ても分からない。



燃料補給中。防火壁後方の胴体上部に燃料口があるのは間違いないのだが。またアクセサリカウルを外した別写真では、防火壁前方に滑油タンクらしきものが見える。

この写真だと、矢印のところにあるような・・・いや、ただの塗料のハガレか?

再掲。画面右上端の穴は滑油口かな。もしそうだとして、機体中心線上なのか、左舷よりなのか。

再掲。これなど、全く存在が分からない。他の写真もこんなもん。


 続いて、その他の胴体各部。かなりマニアック。



甲型。転覆覆い後方の穴5個、胴体上部の穴が分かる。この機体はキャノピ上部の窓枠が無く、内部のフレームだけのように見える。

望遠鏡型照準器装備の乙型。風防内部の胴体上部の穴に注目。風防の裾は角ばっている。

フィレット付近のリベットラインに違いがある。これは乙型の左舷。

乙型の右舷。日の丸の前方に縦のリベットラインが追加されている。これが右舷と左舷の違いなのか、たまたま補修されただけなのか。ちなみに甲型は左右とも追加ラインはなさそう。


 次は尾部まわり。



尾灯の点検パネルは、左舷のみで右舷にはない。これは隼や疾風も同じ(拙作図面参照)。

こちら右舷。この写真は尾翼のリベットライン、ダブル・シングルがよく分かる。

エレベータのトリムタブには下面側の胴体寄りに操作ロッドがある。写真でも何となくそれらしきものが写っている。

別写真で。操作ロッドだと思えばそう見えてくる。ま、確かなことは分からない。尾脚ドアの開き方にも注意。


 トリビアはまだ続く。次は脚。拙作1/48鍾馗製作記にも書いたけど、脚カバーの内側は、甲と乙で異なる。あ、これは便宜上そうしてるだけで、実際は型式とはズレてるかもしれないのは前述のとおり。



甲型。カバーの内張り(というのかな)は凸凹なく平ら。他写真も合わせると、塗色は青竹と思われる。

甲型の外側。下と比べるとリベットラインもビミョーに異なる。

乙型。内張りにリブの凸がある。他写真とも合わせて、無塗装銀と思われる。

乙型の外側。斜めのリベットラインがない。


 次は主翼機銃。よく見ると面白い。



丙型の12.7mm機銃のクローズアップ。機銃口のあるパネルは暗色(赤?)で塗られている場合が多い。

別角度で。ちなみに、機銃は主翼先端よりかなり上に位置する。

これは何だろう。駐機中にホコリ侵入を防ぐためのカバーなのかな? 機体は丙型。

これ何だろう? 40mmロケット砲か?それとも12.7mm機銃の銃身スリーブか、あるいは駐機中のカバーか? 型式不明。

40mmロケット砲かな。右上画像と違って銃身が長い。スリーブの前半はテーパーしている。

これまた違った形の40mmロケット砲。左画像のテーパー状の先端を外しただけかもしれない。ロケット砲は、他にもバリエーションがある。


 これで最後。主翼まわり。



内外翼の境の前縁は、細いストリップ状のパネルに大きめのリベットが2列で打たれているように見える(矢印)。同じものは後方のエルロン前方にもある。詳細は拙図を参照されたし。

主脚庫後方には、正体不明の四角い箱(右の矢印)。何これ? 薬莢回収用の大きなブリスターにも注目。一連の画像および脚カバー内側(画面外)から47戦隊の甲型と思われる。

ロケット弾給弾中の図。このパネルは長方形ではなく、平行四辺形である。前後の辺はストリンガー(前進角あり)に平行。

乙型。この写真だと、矢印のところにパネルラインがあるように見える。既存図面や模型では「なし」とされているが。また、主翼の薬莢穴は塞がれていることが分かる。


 以上でトリビア終了。文章を書くのに疲れたので、図面のキャプション追加は後日。改めて掲載画像を見返すと、図面の要修正箇所も出てくるが、それも後日ということで。


■ 3D設計 12/23追加

 実は、図面作成と同時並行で、図面をFusion360で立体化する作業を行っていた。プリントして模型を作るのが目的ではなく、自分の鍾馗の外形解釈が正しいかどうかを確認するため。とくに、胴体とキャノピの取り合いは、胴体断面形、キャノピ平面形、キャノピ断面形が複雑に影響しあうので、3Dで確認するのが一番。ということで、まず胴体とキャノピを立体化。さらに、内外翼境の折れ曲がり、胴体とバルジの関係などを見たくて、新たに主翼も作成する。



その結果がこれだ。通常当頁のレンダー画像は正投影にしているが、実機写真とのイメージを比較するため、パース付きとする。

主翼を非表示にしたところ。アクセサリカウルはこのような円筒でモデル化する。ここのフィレットは面倒なので省略。逆にフィレットなしの方が、胴体と翼との関係を把握しやすい。

胴体との取り合いはこうなる。これにフィレットがつくと、実機写真のイメージになると思うがどうだろう? バルジは隼のように前に垂れ下がらないのが正解とみて間違いない。

脚収容部のあたりは、カウルからつながる円筒の胴体断面が残る。これと主翼とを滑らかにつなげると、実機のラインになる(と私は思う)。

もしかすると、バルジ上面は、タイヤを収めるためもう少し上方に膨らんでいるかもしれない。前縁の尖り具合はこんなもんかな? 脚庫上部のパネルライン(矢印)にも注目。平面図だと後退角がつくが、この画像だと前進角があるように見える。

正投影にして正面から見たところ。脚カバーはこんな具合に見える。拙図の正面図もこんな風に描いているよ。左画像の矢印のパネルラインは、正面だとこうなる。だから前進角に見えるのだ。


 補足。胴体、キャノピ、主翼は、ロフトで作る。尾翼はバランスを見るのが目的なので、簡便に板で代用。胴体は古い3D設計なので、古いバージョンの図面を使用しており、最新のものとは微妙に違う。例えばキャノピが少々高い。ロフトで胴体を作っているため、フィレットのあたりに変な凸凹ができている。これ、断面コンター図を、寸分の狂い無く描かないとこうなってしまうのだ。これ以上の修正は難易度が高くてこの辺で妥協。

 一方、主翼は中島NN-21翼型データを反映したもの。バルジ部は、翼型の相似形で前縁を張り出す。詳しくいうと、最大厚の40%コードより前方を拡大して平面形に合わせる。イメージを助けるため、パネルラインも入れる。タイヤは、現解釈でもギリギリでバルジ内に収まることは確認済み。ただ、余裕がないので、膨らみが少しあってもいいかな。

 さて、折角なので、実機写真と比較して、胴体太さなどの見え方も確認しよう。



米軍撮影の写真に角度を合わせる。胴体やキャノピの見え方はイイ感じではないかな? ちなみに、脚庫上のパネルラインは後退角がつく。フィレットが変なのは、後部胴体の3D設計が手抜きだから。

参考、補正なし実機写真。

胴体のクビレ具合、キャノピ断面形など確認されたし。内外翼境の折れ曲がり具合はどうだろう? ちなみに、キャノピは後方にスライドさせている。



 3Dデータのお持ち帰りは意味がないからしないが、画像は閲覧可能にしておく。興味ある方はこちらからどうぞ。ビューキューブ横の三角をクリックすると、正投影とパースを変更できる。




■ For foreigners who use machine translation

This article is written in colloquial Japanese, therefore it cannot be correctly translated into English by machine translation such as Google Chrome. In particular, a subject is often omitted in Japanese, so "I" may be mistranslated into "you", "we" or "it", and vice versa. Also, there is no distinction between the singular and the plural in Japanese, so the two may be confused in translation. Sometimes affirmative and negative sentences may be translated in reverse.


■ 図面一覧

側面図  上面図  下面図  正面図  断面図  コンター


■ 参考文献



1 新版世界の傑作機 No.16 陸軍2式単座戦闘機「鍾馗」 文林堂
2 旧版世界の傑作機第14集 鍾馗 文林堂
3 世界の傑作機 スペシャルエディション No.8 写真史「飛行第四十七戦隊」 文林堂
4 鍾馗戦闘機隊 帝都防衛の切り札 陸軍飛行第70戦隊写真史 大日本絵画
5 鍾馗戦闘機隊2 陸軍戦闘機隊の総本山 明野陸軍飛行学校小史 大日本絵画
6 ハンディ判図解・軍用機シリーズ 12 隼/鍾馗/九七戦 光人社
7 航空ファンイラストレイテッド No.79 陸軍航空隊の記録 第1集 文林堂
8 航空ファンイラストレイテッド No.80 陸軍航空隊の記録 第2集 文林堂
9 航空ファン95年3月号 文林堂
10 モデルアート別冊 No.329 日本陸軍機の塗装とマーキング 戦闘機編 モデルアート
11 モデルアート別冊 No.395 日本陸軍一式戦闘機 隼の塗装とマーキング モデルアート
12 モデルアート別冊 No.416 陸軍航空英雄列伝 モデルアート
13 一式戦闘機「隼」 [歴史群像]太平洋戦史シリーズ52 学研
14 二式戦闘機(二型)取扱法 陸軍省陸軍航空本部
15 丸2023/6豪華別冊付録 潮書房光人新社








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