九七式中戦車 チハ(旧砲塔) 1/48 オリジナル3Dモデル その2

2021.11.4初出

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完成写真



■ プリントと組み立て 12/6追加

 設計は仕上がった。次はプリント。時間節約のため、なるべくまとめて出力する。1)車台、2)サスペンションとフェンダー、3)履帯左右、4)転輪関係、5)砲塔まわりと小物、6)アンテナ他bluレジン、の6回。車台が4時間、あとは2、3時間程度で、トータルざっくり15時間。




砲塔は、10°の傾斜と内側の溝のおかげで、上端の膨れはほとんどない。

サスとフェンダー、排気管を1回で。

履帯は、センターガイドの積層痕を抑えるため、層厚0.015mmで出力。全高が低いから、さほど時間はかからない。

転輪も低くて時間がかからないから層厚0.015mmとする(この2枚以外は0.025mm)。

車台前後の下向き面は、どうしてもキレイに出力できない。今回ここが出力上の弱点。あまり目立たない場所なので汚しで誤魔化す。

組み立て。前述マージンを定規に貼った#320ペーパーで落とす。積層痕を#600ペーパーで均し、サスと車台を接着する。

次にフェンダー、転輪と上部転輪を接着。起動輪内側と誘導輪を車台にはめ、履帯を引っ掛ける。

その他のパーツも取り付け、組み立てほぼ終了。あとはライトの反射板とガラスを追加する。ワイヤロープは塗装後に。


 補足。車台前後下向き面をきれいに出力しようとするなら、別パーツ以外に考えられない。しかし、それはそれで接合面が汚くなるから、総合的に見て今回の方式がベストかなあ。なお、自動でサポートを付けると、下向きリベットにサポートが付いちゃうから、手コキで削除してリベットの無い場所に付け替えるべし。


■ サフ吹き

 レジンが半透明の黒なので、状態が見辛い。確認のため、サフを吹いて、水ウェザマスでウォッシュ。細かいディテールが浮き上がって、テンション爆上げ。





このディテールが、全長10cmあまりの手のひらサイズに「ぎゅっ」と凝縮されてるのだ。





防盾のリベットの周囲の凹みも再現。bluレジンのアンテナもまずまずの再現度。

履帯側面の凹みに注目。これぞ3Dパーツの強み。

排気管のメッシュもきれいに抜けている。左右面にあるからインジェクションでは難しい部分だ。

ジャッキは前後左右上下の全てにディテール。しかも一発抜き。


■ 新砲塔、新車台の3D設計 12/20追加

 新砲塔、新車台の設計も終了。新規部分は車台後上部と砲塔程度なので、これまでの2割程度の作業量で出来上がる。得した気分。こちらは設計のみで、自ら製作する予定は今のところなし。その代わり、クラブのメンバーにパーツを送って製作代行を依頼する。

 設計にあたっては、「資料」としてファインモールドのキットを「参考」にする(資料提供感謝)。タミヤとファインでは砲塔のサイズが違い、タミヤが2mmほど小さいらしい。繰り返すが、私の設計はファインを「参考」。レンダー画像と実車写真を見比べると、このくらいで丁度いいかな? タミヤは未所有にて詳細不明。旧砲塔ではそのようなサイズ違いはない。

 また、タミヤを「参考」にした旧車台と、ファインを「参考」の新車台では、排気管の位置が不整合。旧の方が後寄り。実車がどうかは不明。写真を見比べた印象では同じ位置に感じる。よって、3D設計では、両者同じとして妥協する位置にする。前方のフェンスの位置は違えている。






 使用上の注意
  • ハルは、DLファイルでは新砲塔搭載タイプとなっている。タイムラインを最後まで進めると、旧砲塔を搭載するタイプに変更できる。すなわち、上面ハッチありで、砲塔回転軸が外寄りとなる。

  • 旧車台の新砲塔タイプは設計してない。悪しからず。まあ、ハッチを除去し、回転穴を移動するだけので、改設計もそれほど手間でないだろう。(←じゃあ自分がやれってか)

  • 車台後部の雑具箱は、別ボディとしてある。切り離して別途プリントするのがお奨め。

  • 後期のアンテナ基部はちゃちゃっと追加設計。クォータービュ画像参照。三面図にはまだ反映してない。形状や位置はファインのキットを参考とする。考証は甘い。設計はジャッキのファイルに含まれる。

  • 後期に見られる粗いメッシュと補強部材つきの排気管は未設計。悪しからず。

  • フェンダーは、一応新規設計するが、旧タイプの先端を切れば新車台に使える。青が新車台用。

  • ジャッキは取り付け台の形状が異なる。シャベルは足を切って取り付けられたし。位置は側・上面図等を参照。あとの小物は共通。

  • 旧タイプと同様、砲塔の下端、ハル上部側面の下端、およびキューポラ下端には、サポート接合面の肉痩せに対処するため、0.2mmないし0.3mm程度のマージンをつけてある。

  • 砲身、防盾、軸ホールドは、サイズ違いで2種類ずつ設計する。お好みで選んでくだされ。一応、砲身可動もできるが、お奨めしない。

  • 砲塔、キューポラは、相模造兵廠製をモデル化。他の製造工場も簡単な改造でできるはず。例えば三菱重工製は、キューポラを180°回転させ、車台上面の取っ手を除去する。日立製作所製はキューポラ前側ハッチに取っ手を追加する。位置・形状は後側と同じ。










■ 砲塔と車台、組み合わせの怪

 ところで、設計して初めて気づいたのだが、新砲塔と旧砲塔では、砲塔中心(正確に言うなら回転軸)の位置が異なる。だから、新車台でも旧砲塔用と新砲塔用は別物で、互換性はない。同様に旧車台で新砲塔を搭載した車両もあるので、こちらも2種類あるわけだ。何故このようなややこしいことになったのか?

 時系列的には、最初は旧車台+旧砲塔。次に新車台が登場する。したがって新車台+旧砲塔となる。次に新砲塔が登場し、新車台+新砲塔となるが、車台の回転リングが合わないから、この部分は改設計となる。では、なぜ旧車台+新砲塔があるのか?

 勝手に想像する。私の説はこうだ。前線では新砲塔が熱望されたが、車台の生産が追い付かない。そのため、旧砲塔の旧車台を流用し新砲塔を搭載した。改造箇所は車台上面装甲板のみで、ボルト止めなので改造は比較的簡単であった。←この説の根拠は全くない。真相ご存じの方、連絡求む。


■ 塗装準備 2/2追加

 チハに触るのも2か月ぶり。すっかりサボっちまったな。スパホとナスホが片付いて、こっちに本腰入れる。いやあ、テレワークは模型が進むなあ(←やめんか)。まず、塗装前の最後の工作。



前照灯はアルミ板と百均の光硬化レジン。

底が抜けてるのも何なので、プラバンで蓋をする。一応、そういう想定の設計をしてある。



■ 調色と塗装考証

 日本軍戦車の塗色については何ら知識がなく、ファインモールド監修のクレオスの特色を一揃い買ってくる。試し塗りしてみると、ちょっと色調が鮮やかかなあ。実際のペンキの色はこうだったにせよ、1/48のモケイに塗るにはどうかな。また、当時の写真を見ると、茶色はもう少し明るく感じる。ということで、彩度を低め、3色の明度差を広げる方向で調色する。

 茶色はC526と自作サフ(黒サフを混ぜたもので、明度はC13ニュートラルグレイ相当)を2:1で、緑色はC525と自作サフを3:1、土地色はC522と自作サフを4:1で混ぜる。黄色はプレーンでソリッドな黄色がいいかな(実際はどうだか知らない)と、自作オレンジイエロー(やや赤味)とRLM04(やや青味)を半々程度で。



適当な空き箱に試し塗り。手前側が彩度を低めた自家調合色。奥の方はビン生。


 迷彩パターンが悩ましい。日本戦車の迷彩は決まったパターンはなく、各車両ごとに違っていた。記録写真を見ると、パターンの傾向にも差があって、蛇行の曲率や色斑の大きさなどに個性がある。黄色帯についてもしかり。だから自由に塗ればいいのだけど、全く自由だと逆にどう塗るか決まらない(典型的指示待ち人間だな)。

 そこで、各社インストの塗装図などを参考に、全体の迷彩パターンはプラッツ(ドラゴン)をベースに自己流アレンジ、黄色帯はタミヤをベースにする。

 細部に関しては、主砲は防盾を含め陸軍カーキ、プラッツのインストだと、ジャッキとアンテナ鉢巻部分も同色。また車載機銃のマウントは黒。銃身カバーも写真だと同色かなあ。


■ 迷彩塗装

 実車では刷毛塗りされたというクッキリした迷彩をどう塗るか。面相筆で境界を塗って間をエアブラシというのが一般的かな。でも折角のモールドが筆塗りで埋まるのはいやだなあ。つうことで、マスキングゾルを使って全面エアブラシ塗装にする。黄色は最初に塗ってゾルでマスクしておく。



まず、黄色を吹いてゾルでマスク。原液は粘度が高すぎるから、水で薄める。

パターンを決定するため、一旦3色をざっとエアブラシしてみる。作業中にアンテナを引っ掛けて破損。ストックで補修する。

曲がらないように板に仮り止めして裏から瞬間を流す。タフレジンも万能ではないな。

土地色の部分からマスク。上画像より境界を広めに吹いてゾルを塗る。色味が違うのは、スマホのカメラの気まぐれ。

緑色を吹いて、緑色部分をマスクしたところ。ゾルが塗れないルーバーはティッシュでマスク。

その上から茶色を吹く。車体下部はゾルも使いつつ、塗れないところは後から面相筆でタッチアップ。

ゾルを剥がしたところ。モールドにこびりついたゾルは、水にしばらく浸けておいてから、硬めの筆で擦り落とす。

右舷のパターンはこんな具合。転輪のゴムを塗るためにマスク。


 ゾルとマステを剥がす過程で、前照灯とハッチの取っ手が取れてしまう。ううっ。まあ予備は準備してあるが・・。面相筆境界方式の方がよかったかも。


■ 細部 2/9追加

 細部を塗り分ける。以下メモ。転輪ゴムは自作タイヤブラック。陸軍カーキは、C527ビン生が正解だろうが、少々緑味が欲しくてC524枯草色を加える。キューポラハッチの裏側は、白ではないが何色かは不明で、茶色にしておく。履帯は茶色をベースに若干の土地色。スコップなどの金属部とワイヤロープは、土地色をベースにウェザマスや鉛筆粉をまぶす。三色灯は暗銀地にクリアカラー。白色灯は暗銀地に白をちょん塗り。



細部塗装終了。ウェザリングはまだこれから。

前照灯はこんな感じ。少々曇って「ピカリ」が足りないなあ。やっぱ百均の光硬化レジンはイマイチか。

ロープは電気コードの銅線を6本よじる。本当はもうひと巻きぐらいあるが、取り付け部に収まらないのでこの程度で。

塗装して車体に取り付け。ウェザリングも終了。ナンバープレートのインレタを作らんとあかんな。(忘れそう)


 ウェザリングはいつものとおり。以下メモ。エッジには土地色のスポンジチッピングおよびドライブラシ。土地色部にはもう少し暗いグレイで。泥汚れは、ウェザマスの木甲板のウォッシング。一旦フラットクリアで定着。落ちたトーンを再度ウォッシングで回復させる。要所にスス、サビのウォッシング。履帯のエッジに鉛筆粉。極薄のサンド系をエアブラシして埃感を追加。最後にフラットクリア+フラットベースを吹いたら、艶消しが強くなりすぎて、平板な印象になる。そこで車体などに手脂をすりすり。そこでまた手掛けがポロリ。うーん、軸をもう少し太く設計すればヨカッタな。


■ 完成

 以上で完成。とりあえずスマホで撮影。そのうちコンデジでちゃんと撮ろう。さて、今回は初の3Dフルスクラッチである。製作時間の比率でいうと、設計7割、出力と設計修正2割、組立&塗装1割くらいかな。大半がPC作業なわけ。これは会社の休み時間の恰好な暇つぶしになってくれて、自分的には極めて有用(←どんだけ休んでるんだよ、ってか?)。

 設計にあたっては、既存キット(タミ、ファイン、ドラ)を「参考」にして、そこに再現されているディテールはほとんど全て反映し、なおかつ実車写真によりキットの間違いを修正し、さらに履帯や排気管のメッシュなど、インジェクションでは抜けない凹部も再現してるから、全体として1/35を超えるディテールが1/48に凝縮されてるのだ。

 3Dプリントの鬼門である積層痕と歪みについては、ゼロではない。もっとも、ちょっとペーパーで削ってやれば、画像で見てのとおり実用十分なレベルになる。お試し出力と設計修正にもたっぷり時間をかけたので、この手のキットでは組みやすくなってると思う。リベットなどの再現性も画像のとおり。2Kモノクロプリンタであれば、インジェクションとほぼ同等レベルだ(←いや、正直に言おう。ここは、ちょい負け)。

 つうことで、商品として見てもイイ線いってるんじゃないかな? でも売ることは考えてない。生産する時間が勿体ないからねえ(その時間は模型製作に充てたいのじゃ)。かわりにデータはタダだ。もってけ泥棒。





























 前期砲塔型を塗ったら、後期型も作りたくなってきたぞ。お試しプリントは知人にあげちゃったけど、またプリントしようかな。




■ 3Dパーツ ダウンロード一覧

 左のパーツ名称は、パブリックリンク共有による閲覧のみ。ダウンロードはその右の「●DL」をクリック。なお、設計の都合上、閲覧ファイルとダウンロードファイルは、サポートの有無や配置などが異なる。閲覧ファイルの多くは、それぞれを一つのファイルに統合したときに、正しい形態と位置になっている。一方、DLファイルは、基本的に出力に都合のよい形になっている。両者は、タイムラインを前後するか、表示/非表示の切り替えで互換する。

 履帯のファイルは、容量を抑えるため、履歴をキャプチャーしない形式に変更する。そのため、タイムラインを遡って編集できない。編集可能なファイルをご希望の方は、メールされたし。戦車全体のファイルはパブリックリンクによる閲覧のみ。パーツの位置関係などは、これで確認されたし。下段メニューのモデルブラウザで、各ボディのON/OFFができる。


起動輪  ●DL

誘導輪  ●DL

転輪(2種類)  ●DL

上部転輪(2種類)  ●DL

履帯  ●DL

車台(旧)  ●DL

砲塔(旧)  ●DL

アンテナ(単独)  ●DL

フェンダー(旧)  ●DL

排気管  ●DL

サスペンション  ●DL

小物パーツ  ●DL

車台(新)  ●DL

砲塔(新)  ●DL

フェンダー(新)  ●DL

ジャッキ(新)  ●DL

全体(旧砲塔・旧車台)(閲覧のみ)

全体(新砲塔・新車台)(閲覧のみ)



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■ 参考文献

 泥縄ではあるが、製作中に参考書をお借りする。-1は、旧版世傑のような体裁。前期生産型、後期生産型、派生型と満遍なく取り上げられている。良書。見かけたら確保しよう。-2は、菊池俊吉氏撮影によるもの。チハは訓練中の前期生産型のみだが、写真が鮮明で素晴らしい。-3は、模型製作記と現存実車クローズアップ。新砲塔の製造工場による細部の違いなどを解説したイラストが有用。ジャッキの設計は本書を参考にする。


1 戦車マガジン 1981増刊 No.6 97式中戦車 戦車マガジン
2 日本陸軍写真集1 機械化部隊の主力戦車 グリーンアロー出版 
3 ミリタリーモデリングBOOK 第二次大戦 日本陸軍中戦車  新紀元社
4 Osprey Duel 43 M4 Sherman vs Type 97 Chi-Ha Osprey Publishing
5 Osprey New Vanguard 137 Japanese_Tanks_1939-45 Osprey Publishing
5-2 Osprey Vanguard 35 Armour of the pacific war Osprey Publishing
6 Concord 7004 Tank battles of the pacific war 1941-1945 Concord
7 Squadron 6096 Tank Warfare on Iwo Jima Squadron/signal
8 Wydawnictwo Militaria 24 Pacific War Far East 1938-1945 Paint and Marking Wydawnictwo
9 Wydawnictwo Militaria 167 Chalchin-Gol 1939 (Nomonhan Incident) Wydawnictwo



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