AV-8B ハリアーIIプラス 1/72 ハセガワ 製作記 その1

2022.4.24初出

NEXT




最終更新日 3Dファイル




■ はじめに

 アラドはインレタ待ちで、次の1/72プロジェクトを始める。お題は第二世代ハリアーII。エアの第一世代GR.1を作って以来、作りたかったのだが、デカールが入手できなくてずっと棚ざらし。忘れかけてたけど、最近のジェット機マイブームで再び火がつき、ハナンツでデカール(On Target Decals 72-002)も入手。環境は整った。さあ作るぞ。

 製作コンセプトは、スパホの映え塗りの延長線。基本素組みで、コクピットや脚などの小物は3Dに置き換えてやろう。マーキングは不朽の自由作戦(OEF:Operation Enduring Freedom)でアフガニスタンの空を舞ったマリンコ機だ。

 で、キットを引っ張り出し、仮組みしてみると・・・ あれ?機首が何か変?


■ ハセのハリII

 ネットの画像と比べてみたのがこれだ。背中と尾翼のラインで角度を合わせると、機首が上を向いている。 しかも細い。



モニタの前で見比べる。機首のイメージが全然違うね。ここまで違うとは思ってなかったな。


 こりゃ素組みじゃダメだわ。予定になかったけど図面を描くか。


■ IIプラス図面

 つうことで図面作成。そもそもは外形検証用だが、細部もそれなりに描き込む。側面形、平面形は実機写真がベース。条件は良いので精度はまずまず。後日、ノーマルIIの製造図(一般概要図)を頂く。側面形、平面形の概略、胴体FS、翼型などが記載されており、この情報を反映させてver1.1とする。この一般概要図が図面としてどこまで正確に描かれているかは神のみぞ知るだが、写真と重ね合わせると、多少の誤差はあるものの、まずまずの精度で描かれているように思われ、したがって、相当程度の信頼度のある資料として取り扱う。




  • IIプラスの全長は47ft9in、スパン30ft4in、スタビレータスパン13ft11in。これはフライトマニュアルに記載されている。なお、ノーマルIIの全長は46ft4in。

  • 胴体基準線という記述はないが、あえていえば、WL96がそれに該当するのだろう。尾部上端のラインと平行。各胴体FSは数値が示されているが、煩雑なので代表値のみ記載。

  • 主翼パネルラインや翼端センサー(?)などの細部は、米国版AV-8Bと英国版GR.7/9で異なる。

  • 垂直尾翼の翼型は、製造図に記載あり。WL128.55は、垂直尾翼下端(あるいは後部胴体上端)。

  • グレイで塗った主翼断面は、フラップ内端とストレーキ先端をざっと結んだ線で切ったときの断面を想定。したがって上面図にあるXW28.1の断面とは微妙に合わない。

  • COM基準線FS420は、各翼型図に記載されており、それぞれの機軸方向の位置を示すものとなる。COMの意味は不明。

  • ドロップタンクとパイロン×3を追加(2022/8/22)。タンクは機軸に対して写真読み取りで-2.5°。タンク外形は上面、側面写真をトレース。パイロンと一緒に記載されている翼断面形、タンクやパイロンとの相対位置は、主翼図や写真から割り出したものなので、まずまずの精度。パイロンの後半の形状はやや甘い(トレースできるいい写真がないのじゃ)。




  • 上下面図の基本形状は、上から及び下からの写真がベース。製造図ともほぼ整合する。パネルラインは、写真から読めたものを記載。間違いなどあれば、是非ご指摘いただきたい。

  • 主翼下反角は11°とマニュアルに記載されている。ただし、どこで測って11°か?という問題があって、この答えがよくわからない。一般概要図の翼型図には、それぞれの断面に主翼基準面が記載されている(拙図にも記載)。ただし、胴体基準線との角度(いわゆる取付角)は記載されてなく、写真と重ねると概ね4°。ともかくこの主翼基準面を面沿いに(つまり胴体基準線から4°斜め上から)見たときの下反角が11°、というのが一つの解釈。

  •  ただし、この通りに作図すると、製造図の側面図に記載された主翼外形線に一致しない。逆に外形線に一致させて作図すると、上記の主翼基準面は約10.5°の下反角になる。その差は翼端で0.5mm(1/72)程度。真相は分からない。もしかして、10.5をラウンドして11とか?? あるいは、主翼基準面の角度とは別に下反角が定義されている可能性もあり??

  • 拙図の主翼正面図は、胴体基準線沿いに見た時の正面形として描く。翼基準面沿いではない。スタビレータは取付角0°として描いているので、翼基準面沿いであり、胴体基準線沿いでもある。前縁、後縁のラインは、各断面の翼型図を上記下反角で配置し(COM基準線と主翼基準線の交点が10.5°のライン上に並ぶ)、前後縁のWL座標を拾う。前後縁とも、前から見ると直線でなくビミョーな曲線となるが、実機もそうなのか、製造図面の誤差なのか、作図の誤差なのか不明。

  • スタビレータの下反角は、どこにも記載がない。製造図の側面図に記入されたスタビレータ側面形が正しいものとして、その端部におけるWLを読み取っている。なお、このときの下反角は、約15.8°となる。

  • 翼型図のうち、赤線で示したXW28.1は、製造図のトレースだと、後端の下に湾曲しているあたりが、実機側面写真と合わない。これは写真ではフラップの内端として真横からでも見えるのだ。拙図はその部分のみ実機写真に合わせてある。なお、XWは、翼基準面上における中心からの距離を示す。BLは水平面上での中心からの距離。XWにcos(下反角)をかけるとBLになる。

  • 翼型図が、翼を地面に垂直な面で切った断面なのか、翼基準面に垂直な面で切ったものなのか不明。とりあえず、拙図は地面に垂直として描くが、あまり根拠はない。なお、翼型については、製作記その2の翼断面図の項も合わせて参照されたし。

  • パイロンのXW(あるいはBL)の数値は示されていない。拙図の赤線は写真の読み取り。



■ ハセガワキット検証その1

 実機のラインとキットのラインを図面で比較する。上のモニタ前の画像と似たような雰囲気でしょ。キットの顔つきは、かなり残念。




  • 赤のアウトラインは、キットを写真に撮ってトレースしたもの。パースの影響が若干あるのと、仮組みでパーツ位置の精度が甘いので、その辺は割り引いて見られたし。青の線はver.1.0なので、最新のverとは違う。

  • 図面におけるキットと実機との重ね合わせは、後部胴体と垂直尾翼を基準にする。その上でキャノピ付近が最大公約数的に合うように調整する。つまり修正作業に一番都合のよいようにしているわけ。

  • キット機首の縦線はパーツ分割ライン。この位置にパネルラインはない。



胴体を揃えて重ねる。機首先端は2.5mm。レドーム回転体の軸線は4°違う。風防の傾斜角度も異なる。

コクピット付近で揃えて重ねる。まだレドーム軸は2°ほどズレている。レドームの太さも比較できる。


 つまり、コクピットとレドームで2段階に角度が違うわけ。また、補助インテイクドアは、実機では前傾し、やや後退角があるのに対し、キットは垂直で位置が後ろ寄り。インテイクリップの角度は正しい。


■ ハセガワキット検証その2

 風防、キャノピは、概ねイメージ良好。ただし、風防の前後長さが若干不足気味。風防の円錐形状はいいのだが、前端の位置が円錐に対して後退しており、その分だけ前端の幅が広い。細かく見ると、風防の円錐と胴体の取り合いがやや違っていて、円錐の開始位置が後退(その分胴体が盛り上がっている)。これは一応図面に細線で表記しているので、見比べてほしい。キットは細線が前上がり。実機は水平のまま前に伸びる。(この細かい違いは、後の修正作業に関係してくる)

 主翼は、一見良好そうに見える。が、実は問題あり(後述)。ストレーキは幅が足りず、片側2mmも狭い。それ以外の外形は良好。中央胴体は若干太目(下に垂れている)だが、気になるものではない。垂直尾翼、水平尾翼は厚さ翼型も適切。機首の幅も適切。

 3D設計も進んでいるが、長くなったので初回ここまで。1/48キットは手元になく不明。発売は72より後だけど、これらが修正されてるのか否か。情報求む。


■ ノーマルII図面 5/2追加

 IIプラスでないノーマルIIの図面を描く。実機において形状変化がある場合、共通部分と変更部分を意識しながら両方の図面を描き、おのおの単体でも重ねても違和感ないように描くと、単体では見えてなかったラインが見えてくることが多い。




  • 機首側面形は実機写真のトレース。風防直前のパネルライン(CFS133.7)以降のアウトラインは、IIもIIプラスも共通。パネルライン等の細部では、違う箇所もあるだろうが、よく分からないのでそのまま。

  • 機首平面形は、いい写真がなく推測。先端付近は完全な円断面とするならば、もっと機首は尖る。

  • エンジンインテイク上部の小インテイクについては、IIプラスとは異なるタイプを装着した機体が多数。IIプラスでは境界層を避ける凹みがあり、取り入れ口形状は丸く、全体の高さが高い。ノーマルは取り入れ口形状が半円。ただし一部の機体ではIIプラスと同じ形のものもある。

  • 下面図は、プラスからの変更点もよく分からないので作図しない。初期生産型では、多分、胴体下面のフレアディスペンサーは装備されない。

  • 初期生産型のストレーキは平板なタイプ。面倒なので作図してない。悪しからず。



実機におけるIIとIIプラスの機首を重ねるとこうなる。図はver1.0。

キットと実機を重ねるとこんな具合。キャノピで合わせている。IIプラスと異なり、ノーマルIIは結構イメージ近い。


 ハセは、最初にIIだけを見て設計して、あとで無理矢理IIプラスを継いだので、そこに破綻が生じたのだろう。なお、ノーマルIIを作る場合も、コクピット付近の角度は修正したほうがよい。修正は簡単なので。


■ 機首角度の修正その1

 コクピットの3Dパーツ(計器盤とコンソール)は、お試しプリントしたら改善点が多数。いろいろ手間取っているので、先にアウトラインを修正する。前回更新で記述したとおり、機首は二段階で角度が違っている。まず第一段階のコクピット付近の角度を修正する。この機首部分は、インテイクの上下2か所で後方の胴体につながっている。下側だけ切り離して1mmほど詰めて再接着すれば、機首全体が下を向くわけ。



矢印部分を切って詰める。写真ピンボケだけど。

こんな具合にエッチングソーやナイフを使ってL字形に切る。

インテイクの角度は変えない。ダクトの角度が変わらないように薄赤の三角部分を切り取る。

ダクトを接着して整形、塗装。



■ 機首角度の修正その2

 次にレドームを修正する。スペーサを挟んでレドームの角度を下げ、さらに切った貼ったで太らせればいいのだが・・



レドームをちょいと前に出して先端を詰めたぐらいでは、太さがたりない。


 やっぱ、ここは3Dで置き換えるのが一番だな。みんなも使えるし。


■ コレクトノーズの3D設計

 つうことで、3D設計。シンプルな形なのでFusionの方がいい。ソリッドモデリングでも出来そうだが、あとあとキット胴体との合わせの微修正に都合がいいかなと、フォームモードを使う(結局微修正は必要なかったのだが)。



自作図面をベースに基本形状をスケッチする。前半は回転体として作る。

後半は、フォームモードでロフトする。

風防の円錐の先端はキットより少し前方にあるのが正解。風防形状に合わせた円錐を作って付け足す(不要な後ろ側は切り取る)。

基本形状できあがり。このあとパネルラインを入れる。左右割にして、中心面を下にしてプリント。

プリントはこの状態で。お試しプリント→修正を何度か繰り返して最終形。

「Siraya Tech Fast Mecha ホワイトレジン」にてプリント。キットに合わせるとこんな具合。


 パネルラインの入れ方はブリティシュ・ファントムのパイロンの3D設計を参照くだされ。簡単に言うと、スジボリする形(スケッチ、平面、オブジェクトなど場合によって使い分ける)を「サーフェスに投影」で機首表面に投影し(平面、オブジェクトなら交差させ)、出来たパスに沿ってパイプを作成する、あるいは円か四角形をスイープする。


■ Siraya ホワイトレジン

 3Dに詳しい知人のオススメの「Siraya Tech Fast Mecha ホワイトレジン」を使ってみる。1kg8000円と、ややお高め。従前のエニキュービック黒と同じパラメータ(.025mm 2.4秒)で出力すると、やや太めに出る。2.0秒でも少し太め。もっと短くてもよさそう。粘度が低いので、サポート側の太りが少ない。アンチエイリアスはよく効く。

 メーカーによると耐摩耗性が高いので、可動部にはよさそう。曲げた時の割れに対してはエニキュ黒の方が強いか。色は不透明の白色だが、エニキュの黒を10%ほど混ぜると、丁度ハセのプラのような色になる。これがいい感じ。見た目に高級そう。混ぜてもレジンの性質は変わらないように感じる。以上、ファーストインプレッション。使い込むと変わってくるかも。


■ コクピット 5/6追加

 ようやくコクピットが出来上がる。何に手間取ったかというと、グレアシールド。当初、そこはキットを使うつもりが、計器盤との合わせが厄介で、隙間をなくすように設計すると、計器盤の形が実機と違うものになってしまうのだ。一体設計にすれば、隙間ゼロ。さらにHUDも設計。ダメ元でやってみたら、案外いける。



キットのコクピット。キャノピ閉めてしまえば計器盤とコンソールはほとんど見えないが、まあネタということで3Dパーツ化する。

従前掲載していた画像。ここまでは比較的簡単なのだが。

グレアシールドとHUDを追加設計。これらは別パーツとして、胴体組み込み後に後から取り付ける。

コクピット全景。前方に延びた部分は、キットの胴体にはめあわせるため。反りが出ないように壁も延長。

プリントして塗装。明るい部分はミディアムシーグレイ。

グレアシールドはこんな具合。段差表現は、基本形を3分割して縮小かけて再結合。


 計器盤とコンソールのディテールは、実機写真からスケールを考慮してデフォルメ。スイッチやボタン類はもう少し多いけど、これ以上はプリント困難。というか、1/72だともっと省略してもいいくらい。ただ、細かい分だけ1/48に拡大しても耐えられるのではないかな。グレアシールドは複雑な3D曲面なので、基本形状をBlenderで設計。Fusionのコクピットに取り込んで、さらにディテールを追加する。

 コンソールや後方バルクヘッドの寸法・形状は、お試しプリント&修正をくりかえして、キットにフィットするようにしたつもり。とはいえ、部分的にキットの干渉部をカットする必要はある。キットのバルクヘッドは位置が後退しており、1mmほど前に出す設計。HUDについては、次回更新で。


■ 胴体組み立て

 コクピットができたので、胴体左右を接着する。まず、「コレクトノーズ」をそれぞれの胴体半身に接着。図面に重ね合わせて角度を確認する。次に、コクピット、エンジンファンを組み込んで胴体左右を接着する。



エンジンファンは、#8銀と黒10%混の白で塗装。胴体へのはめ合わせは知恵の輪状態で、干渉する部分をカットする。

補助インテイクの位置を修正。図面に合わせて正しい位置にガイドのテープを貼る。

凹溝を前方に彫り込む。背面はカットしてプラバンを接着。内側を黒10%混の白で塗装。

胴体左右を接着。インテイクも接着。

コクピット付近の機首下面は下に湾曲しており、そのままではレドームからのラインにつながらない。図面に合わせて削って修正。

垂直尾翼前縁が分厚い(赤矢印付近)。翼断面になるよう削って尖らせる。飛行機モデルはこういう所が大事(と私は思う)。

キットは胴体下面のチャフ/フレア・ディスペンサが省略されている。3Dでさくっと設計。外からはめ込むのでこんな形になる。

胴体に穴を開けて、3Dパーツをはめ込んで接着。外枠がツライチになるように削る。その削りシロを見込んで設計してある。



■ キャノピ破砕コード 5/8追加

 キャノピ破砕コード、ダメもとで作ってみたら、案外いける。ツイッターにアップしたら反響があるので、急遽ダウンロードファイルをアップする。とりあえず、設計上の太さは直径0.2mm。もう少し細い直径もできそうなので、あとでやってみよう。1/48に拡大しても直径0.3mmなので、十分使えるはず。



コードの平面形をスケッチして、円をキャノピ側面形にスイープしたサーフェスに投影。それをパスにして円をスイープする。

プリントしてキャノピパーツの内側に仮止めしたところ。



■ HUD

 前回更新の宿題、HUDについて。トラスは場所によって太さが違うが、細いところで幅0.18mm。もう少し細くても出力できるが、フニャフニャして使えないので、このくらいが限度かな。そのまま拡大しても1/48に使えるが、スケッチ(HUD)を編集して、トラスの太さの数値を2割ほど細く変更するとなおよい。

 ガラスは0.2mmプラバンなどをクリア塗料を接着剤がわりにして取り付けるとよいだろう。実は透明レジンでガラス部も一体出力してみたが、透明度が低くて実用にならない。残念。  



ハリアーII用HUD。コクピットのファイルにも入っているが、単独ファイルもアップする。

Sirayaホワイトレジンにて出力。


 F/A-18、F-15は微妙に形が違う。そのうち設計しようかな。


■ 静岡ホビーショー 5/17追加

 三年ぶりにSHSに参加する。やっぱリアルの展示会はいいなあ。素晴らしい作品を見て、話しを聞いて、たっぷりとモケイパワーを充電。年々、3Dプリントがじわじわ来てる感あり。1/12のF1の3Dフルスクラッチとか。また、今回も、新しい技法や材料、接着剤などを教わる。お試ししたらこのページでも紹介したい。

 メーカーブースの方は、目玉はP-38Jだろうけど、素晴らしい出来なのは見なくても分かってるし、F-5A製作中だし、J型はアルミ貼りのトラウマありで・・・素通り。ファインのF-2はちょっと作ってみたいな。48戦車の方は、現用はストライクゾーンから少し外れてるし、虎は焼き直しだし。でもスチュアートがないのは「朗報」かも?

 別の意味で気になっている新製品が、ゾウケイの五式とフォッケ。3Dプリンタでのモックアップ状態での展示だが、予想どおり全然ダメ。五式は全てのフォルムが変だ。とくにカウルが気持ち悪い。キャノピや胴体の断面形も疑問。実機が残っているし、海外が難しければ国内に飛燕II型があるから、共通部分は参考になるはずなのだが。

 フォッケは機首のパネルを外した状態での展示なので、そのあたりの外形は不明だが(閉じた状態を見た知人によると、変だとのこと)、少なくとも主翼翼型はダメ。タミのドーラみたい(それがどうだかは、拙記事を参照)。垂直尾翼の前縁も厚くて、古いキットを見ているみたいだ。まだ間にあうなら、私の図面を参考にして欲しいなあ。しないだろうなあ。


■ F/A-18のHUD

 以前に作った3Dデータを改修して、フレームのみにする。お手軽に使えるよう、キットのグレアシールドの上に「ぺたっ」と乗せる設計。今回更新ネタはこれだけ。いやあ、SHSの話がしたかっただけで。



F/A-18のHUD。スパホとレガホの両方に使える。アカを作った時にこうしてれば良かったよ。



■ 主翼 6/6追加

 主翼は、内翼に大きなねじり下げが付けられ、前縁が逆「へ」の字、後縁が「へ」の字に折れ曲がるあたりは、よく再現されている。上面側の胴体との取り合いラインもいい感じ。ただし、よく見ると翼型が違っており、上面の湾曲が強く、前縁が前に垂れさがっている。以下解説。

 第二世代ハリアーは、第一世代と異なりスーパークリティカル翼型を採用している。これは現代のジェットエアライナーに広く使われており、その特徴は上面が比較的フラットで、逆に下面前半の凸カーブが強く、前縁が丸い。

 つまり前から2/3までは、レシプロ時代の翼を上下逆さにしたような形。そのままでは負の揚力が発生しそうだが、翼の後ろ1/3で、下面に凹カーブが入って後縁が大きく下に垂れ下がる。これによって正の揚力を発生するのだろうね。上面がフラットなことで、遷音速領域で上面の衝撃波発生を抑え、それにより臨界マッハ数が上がる。その結果、最高速度が上がり、燃費が向上するらしい。



キットの翼型。前縁の翼型は、レシプロ機に一般的な翼型と同じような形だ。

前縁から5mmのところに裏側から切り込みを入れて曲げることで、前縁の垂れ下がりを矯正する。


 曲げたパーツが元に戻らないように、裏面には0.3mmプラバンを接着。表面に出た折り曲げ線は、必要に応じ瞬間を盛って、スムーズに削る。


■ ストレーキ

 次にストレーキ。まず平面形は幅が片側で2mm不足する。そこでパーツを切断してプラバンを挟んで横に広げる。また、断面形としては厚すぎる。下面側のパーツは接着せず、穴はポリパテで埋める。これで直ったと思いきや・・・



くさび形のプラバンを挟んで面積を拡大。

裏側にはポリパテを詰め、エッジを薄く削る。

ざっと削って整形。翼前縁の断面形に注意。私にはこう見えるってことで。ストレーキのエッジのラインが実機と違う・・・

実機。写真は反転。左画像とは若干撮影角度が違うが、ストレーキの見え方が違う。


 ストレーキのエッジラインを横から見ると、実機は上に凸のカーブ、キットは下に凸。これが違うということは、ストレーキの断面形自体が違うってことで、この修正はかなり厄介。このままスルーするか、頑張って直すか。場所的に凹と凸の曲面が複雑に交錯していて、普通にヤスリが使えないから、削るだけでも大変。悩み始めると手が止まるが。さて、どうしよう。


■ シアノンDX

 静岡で教えてもらった新しい瞬間接着剤を使ってみる。以前あった(今もある?)黒瞬間に近い。硬化時間が長く、削り味が柔らかい。硬化スプレーとセットで使うといいとのこと。今回は、外形整形の際にパテ代わりに使る。感想としては、悪くない。プラ粉と混ぜると瞬間パテみたいな感じ。欠点はお値段高め。あと、全部使い切る前に容器の中で固まってしまいそうな悪寒。



シアノンDX



■ 続、ストレーキ 6/20追加

 前回更新で、エッジの側面形が気になるストレーキ、無視して先に進めようかと思ったけど、やっぱりどうしても気になるので再度修正する。フチだけ削って直す、というわけにはいかない。ストレーキ全体の取り付け角度を変更する。以下画像で。



赤線に、裏から切り込みを入れて谷折りにする。後端は翼と合わなくなるが、プラバンを貼って削り合わせるしかない。

谷折りの結果、全体幅が広くなるので、改めてプラバン延長部で切り詰めて幅を修正。後端を翼に合わせて削る。

以上の修正により、エッジのカーブが上に凸になる。完全な形状にはなってないが、まずまず雰囲気は改善。

再掲、再修正前。撮影角度が違うので、やや修正が強調されて見えるけど、左と比べると全然違うでしょ。

再掲、実機写真。ビミョーに撮影角度が違うので、そこは割り引いて見てくだされ。

裏側はプラバンで裏打ち。ストレーキは、エッジが上に凸のカーブになるよう、ちょいとひねりを入れる。

主翼、ストレーキを胴体に接着し、段差を修正。赤丸付近は凹んでいるので、削り作業が相当厄介。

下面側の隙間はタミヤパテで。


 ご覧のとおり、修正作業はかなり大変。最初からこの着地点が分かっていればまだしも、再修正なので、既修正部分が足かせになって作業を難しくしてしまう。ともあれ、これで気分すっきり。


■ 上側フレアディスペンサー

 ここも問題あり。以下画像で。



キットパーツ。穴の数はさておき、胴体から突出し過ぎる上に、断面形状も異なる。

こういうのは3Dが早い。自分でも上下前後が分からなくなるので、目印をつける。矢印は上と前を指す。

フレア表面が胴体とほぼツライチになるため、フレア部分が干渉する。胴体に穴をあける。

接着して整形。穴は縦6、横5が正解。上下前後の見分け方は、フェアリングの後ろ下側が広い。お持ち帰りはページ末尾で。


 3D設計補足。胴体との位置関係が重要で、その角度、寸法を図面から数値で規定できるFusion360を使う。フェアリングは、前後の断面形を描いてサーフェスモードでロフト。平面形の角丸四角で切り抜いてからエッジをフィレットで丸める。胴体は円錐断面で近似し、フェアリングから切り取る。フェアリングのエッジのカーブは、完全には再現できないが、そんなのはヤスリで削ればいいのだ。

 いやあ、このキット、サクッと作れると思ったら、問題個所だらけ。ハセガワには、もっと真面目に作れよ!(怒)と言いたい。問題点は、IIプラスで追加された部分に顕著。だから、素組みで作るなら、初期のノーマルIIがおすすめ。これなら機首イメージも悪くないし、フレアディスペンサーもないし、平板タイプのストレーキだとエッジの違いが目立たない(たぶん)。ただし、コクピットの角度だけは直してあげよう。修正は簡単だから。

 次は、ようやくスジボリ。先は長いぞ。だいぶへばってきたが。


■ 3Dは続く 7/20追加

 あれ、いつのまに1カ月? さて、現在スジボリ進行中。その合間に小物の3D設計じゃ。前脚は目立つので、置き換えが効果的。後方の小ドアも一体出力する。一方、タイヤ、ホイルはマスキングの手間を省くために別パーツ。真鍮線を介して脚柱に接着することで、強度も上がる。主脚はタイヤのみ設計。脚柱はほとんど見えないのでね。

 実機写真を見ていると、駐機中はエアブレーキが下がっている。ついでにこいつも再現するか。普通のプラモだと、こういうのは胴体接着前に工作するのが必須。しかし、既に胴体は接着済みだ。そこで、ハンターのスリットを3D置き換えしたときと同様、モジュールはめ込み方式にする。



設計出来上がり。

脚柱中心とフォークの内側に真鍮線を仕込む(青部分)。見やすくするため、車輪はズラして表示。

パイピングは、正面側面それぞれスケッチして面を押し出す。1つの面を選択し、もう1つの面を使って「面の分割」を行う。

そうして出来たパスに沿って直径0.2mmの円をスイープする。

キットパーツも悪くないが、トレッド溝の再現と、ホイル別パーツ化でマスク不要になるのがメリット。

エアブレーキの内部はこんな具合。胴体に穴を開けてはめ込んで、ツライチに削る算段。


 エアブレーキ設計補足。胴体形状は円弧断面で近似する。円弧の直径は、厚紙をサークルカッターで切り抜いたゲージで測る。3断面をスケッチしてサーフェスモードでロフト。パッチしてソリッド化したら、あとは通常のソリッドモデリングだ。エアブレーキ本体は次回で。



胴体に穴を開ける。

出力したパーツをはめ込む。気持ち浮かせて接着して3Dパーツのみ削る。


 エアブレーキ本体と、前脚後方のフラップ状の部品(←名称知らん)の設計は次回。あとはジェットノズルとエジェクションシートも3DP化しようかな。うーん、3Dてんこ盛りじゃ。




NEXT


Wings Of Pegasus HOME