AV-8B ハリアーIIプラス 1/72 ハセガワ 製作記 その1
2022.4.24初出
|
製作コンセプトは、スパホの映え塗りの延長線。基本素組みで、コクピットや脚などの小物は3Dに置き換えてやろう。マーキングは不朽の自由作戦(OEF:Operation Enduring Freedom)でアフガニスタンの空を舞ったマリンコ機だ。 で、キットを引っ張り出し、仮組みしてみると・・・ あれ?機首が何か変?
|
モニタの前で見比べる。機首のイメージが全然違うね。ここまで違うとは思ってなかったな。 |
|
|
|
|
胴体を揃えて重ねる。機首先端は2.5mm。レドーム回転体の軸線は4°違う。風防の傾斜角度も異なる。 |
コクピット付近で揃えて重ねる。まだレドーム軸は2°ほどズレている。レドームの太さも比較できる。 |
つまり、コクピットとレドームで2段階に角度が違うわけ。また、補助インテイクドアは、実機では前傾し、やや後退角があるのに対し、キットは垂直で位置が後ろ寄り。インテイクリップの角度は正しい。
主翼は、一見良好そうに見える。が、実は問題あり(後述)。ストレーキは幅が足りず、片側2mmも狭い。それ以外の外形は良好。中央胴体は若干太目(下に垂れている)だが、気になるものではない。垂直尾翼、水平尾翼は厚さ翼型も適切。機首の幅も適切。 3D設計も進んでいるが、長くなったので初回ここまで。1/48キットは手元になく不明。発売は72より後だけど、これらが修正されてるのか否か。情報求む。
|
|
実機におけるIIとIIプラスの機首を重ねるとこうなる。図はver1.0。 |
キットと実機を重ねるとこんな具合。キャノピで合わせている。IIプラスと異なり、ノーマルIIは結構イメージ近い。 |
ハセは、最初にIIだけを見て設計して、あとで無理矢理IIプラスを継いだので、そこに破綻が生じたのだろう。なお、ノーマルIIを作る場合も、コクピット付近の角度は修正したほうがよい。修正は簡単なので。
|
矢印部分を切って詰める。写真ピンボケだけど。 |
こんな具合にエッチングソーやナイフを使ってL字形に切る。 |
インテイクの角度は変えない。ダクトの角度が変わらないように薄赤の三角部分を切り取る。 |
ダクトを接着して整形、塗装。 |
|
レドームをちょいと前に出して先端を詰めたぐらいでは、太さがたりない。 |
やっぱ、ここは3Dで置き換えるのが一番だな。みんなも使えるし。
|
自作図面をベースに基本形状をスケッチする。前半は回転体として作る。 |
後半は、フォームモードでロフトする。 |
風防の円錐の先端はキットより少し前方にあるのが正解。風防形状に合わせた円錐を作って付け足す(不要な後ろ側は切り取る)。 |
基本形状できあがり。このあとパネルラインを入れる。左右割にして、中心面を下にしてプリント。 |
プリントはこの状態で。お試しプリント→修正を何度か繰り返して最終形。 |
「Siraya Tech Fast Mecha ホワイトレジン」にてプリント。キットに合わせるとこんな具合。 |
パネルラインの入れ方はブリティシュ・ファントムのパイロンの3D設計を参照くだされ。簡単に言うと、スジボリする形(スケッチ、平面、オブジェクトなど場合によって使い分ける)を「サーフェスに投影」で機首表面に投影し(平面、オブジェクトなら交差させ)、出来たパスに沿ってパイプを作成する、あるいは円か四角形をスイープする。
メーカーによると耐摩耗性が高いので、可動部にはよさそう。曲げた時の割れに対してはエニキュ黒の方が強いか。色は不透明の白色だが、エニキュの黒を10%ほど混ぜると、丁度ハセのプラのような色になる。これがいい感じ。見た目に高級そう。混ぜてもレジンの性質は変わらないように感じる。以上、ファーストインプレッション。使い込むと変わってくるかも。
|
キットのコクピット。キャノピ閉めてしまえば計器盤とコンソールはほとんど見えないが、まあネタということで3Dパーツ化する。 |
従前掲載していた画像。ここまでは比較的簡単なのだが。 |
グレアシールドとHUDを追加設計。これらは別パーツとして、胴体組み込み後に後から取り付ける。 |
コクピット全景。前方に延びた部分は、キットの胴体にはめあわせるため。反りが出ないように壁も延長。 |
プリントして塗装。明るい部分はミディアムシーグレイ。 |
グレアシールドはこんな具合。段差表現は、基本形を3分割して縮小かけて再結合。 |
計器盤とコンソールのディテールは、実機写真からスケールを考慮してデフォルメ。スイッチやボタン類はもう少し多いけど、これ以上はプリント困難。というか、1/72だともっと省略してもいいくらい。ただ、細かい分だけ1/48に拡大しても耐えられるのではないかな。グレアシールドは複雑な3D曲面なので、基本形状をBlenderで設計。Fusionのコクピットに取り込んで、さらにディテールを追加する。 コンソールや後方バルクヘッドの寸法・形状は、お試しプリント&修正をくりかえして、キットにフィットするようにしたつもり。とはいえ、部分的にキットの干渉部をカットする必要はある。キットのバルクヘッドは位置が後退しており、1mmほど前に出す設計。HUDについては、次回更新で。
|
エンジンファンは、#8銀と黒10%混の白で塗装。胴体へのはめ合わせは知恵の輪状態で、干渉する部分をカットする。 |
補助インテイクの位置を修正。図面に合わせて正しい位置にガイドのテープを貼る。 |
凹溝を前方に彫り込む。背面はカットしてプラバンを接着。内側を黒10%混の白で塗装。 |
胴体左右を接着。インテイクも接着。 |
コクピット付近の機首下面は下に湾曲しており、そのままではレドームからのラインにつながらない。図面に合わせて削って修正。 |
垂直尾翼前縁が分厚い(赤矢印付近)。翼断面になるよう削って尖らせる。飛行機モデルはこういう所が大事(と私は思う)。 |
キットは胴体下面のチャフ/フレア・ディスペンサが省略されている。3Dでさくっと設計。外からはめ込むのでこんな形になる。 |
胴体に穴を開けて、3Dパーツをはめ込んで接着。外枠がツライチになるように削る。その削りシロを見込んで設計してある。 |
|
コードの平面形をスケッチして、円をキャノピ側面形にスイープしたサーフェスに投影。それをパスにして円をスイープする。 |
プリントしてキャノピパーツの内側に仮止めしたところ。 |
ガラスは0.2mmプラバンなどをクリア塗料を接着剤がわりにして取り付けるとよいだろう。実は透明レジンでガラス部も一体出力してみたが、透明度が低くて実用にならない。残念。 |
ハリアーII用HUD。コクピットのファイルにも入っているが、単独ファイルもアップする。 |
Sirayaホワイトレジンにて出力。 |
F/A-18、F-15は微妙に形が違う。そのうち設計しようかな。
メーカーブースの方は、目玉はP-38Jだろうけど、素晴らしい出来なのは見なくても分かってるし、F-5A製作中だし、J型はアルミ貼りのトラウマありで・・・素通り。ファインのF-2はちょっと作ってみたいな。48戦車の方は、現用はストライクゾーンから少し外れてるし、虎は焼き直しだし。でもスチュアートがないのは「朗報」かも? 別の意味で気になっている新製品が、ゾウケイの五式とフォッケ。3Dプリンタでのモックアップ状態での展示だが、予想どおり全然ダメ。五式は全てのフォルムが変だ。とくにカウルが気持ち悪い。キャノピや胴体の断面形も疑問。実機が残っているし、海外が難しければ国内に飛燕II型があるから、共通部分は参考になるはずなのだが。 フォッケは機首のパネルを外した状態での展示なので、そのあたりの外形は不明だが(閉じた状態を見た知人によると、変だとのこと)、少なくとも主翼翼型はダメ。タミのドーラみたい(それがどうだかは、拙記事を参照)。垂直尾翼の前縁も厚くて、古いキットを見ているみたいだ。まだ間にあうなら、私の図面を参考にして欲しいなあ。しないだろうなあ。
|
F/A-18のHUD。スパホとレガホの両方に使える。アカを作った時にこうしてれば良かったよ。 |
第二世代ハリアーは、第一世代と異なりスーパークリティカル翼型を採用している。これは現代のジェットエアライナーに広く使われており、その特徴は上面が比較的フラットで、逆に下面前半の凸カーブが強く、前縁が丸い。 つまり前から2/3までは、レシプロ時代の翼を上下逆さにしたような形。そのままでは負の揚力が発生しそうだが、翼の後ろ1/3で、下面に凹カーブが入って後縁が大きく下に垂れ下がる。これによって正の揚力を発生するのだろうね。上面がフラットなことで、遷音速領域で上面の衝撃波発生を抑え、それにより臨界マッハ数が上がる。その結果、最高速度が上がり、燃費が向上するらしい。 |
キットの翼型。前縁の翼型は、レシプロ機に一般的な翼型と同じような形だ。 |
前縁から5mmのところに裏側から切り込みを入れて曲げることで、前縁の垂れ下がりを矯正する。 |
曲げたパーツが元に戻らないように、裏面には0.3mmプラバンを接着。表面に出た折り曲げ線は、必要に応じ瞬間を盛って、スムーズに削る。
|
くさび形のプラバンを挟んで面積を拡大。 |
裏側にはポリパテを詰め、エッジを薄く削る。 |
ざっと削って整形。翼前縁の断面形に注意。私にはこう見えるってことで。ストレーキのエッジのラインが実機と違う・・・ |
実機。写真は反転。左画像とは若干撮影角度が違うが、ストレーキの見え方が違う。 |
ストレーキのエッジラインを横から見ると、実機は上に凸のカーブ、キットは下に凸。これが違うということは、ストレーキの断面形自体が違うってことで、この修正はかなり厄介。このままスルーするか、頑張って直すか。場所的に凹と凸の曲面が複雑に交錯していて、普通にヤスリが使えないから、削るだけでも大変。悩み始めると手が止まるが。さて、どうしよう。
|
シアノンDX |
|
赤線に、裏から切り込みを入れて谷折りにする。後端は翼と合わなくなるが、プラバンを貼って削り合わせるしかない。 |
谷折りの結果、全体幅が広くなるので、改めてプラバン延長部で切り詰めて幅を修正。後端を翼に合わせて削る。 |
以上の修正により、エッジのカーブが上に凸になる。完全な形状にはなってないが、まずまず雰囲気は改善。 |
再掲、再修正前。撮影角度が違うので、やや修正が強調されて見えるけど、左と比べると全然違うでしょ。 |
再掲、実機写真。ビミョーに撮影角度が違うので、そこは割り引いて見てくだされ。 |
裏側はプラバンで裏打ち。ストレーキは、エッジが上に凸のカーブになるよう、ちょいとひねりを入れる。 |
主翼、ストレーキを胴体に接着し、段差を修正。赤丸付近は凹んでいるので、削り作業が相当厄介。 |
下面側の隙間はタミヤパテで。 |
ご覧のとおり、修正作業はかなり大変。最初からこの着地点が分かっていればまだしも、再修正なので、既修正部分が足かせになって作業を難しくしてしまう。ともあれ、これで気分すっきり。
|
キットパーツ。穴の数はさておき、胴体から突出し過ぎる上に、断面形状も異なる。 |
こういうのは3Dが早い。自分でも上下前後が分からなくなるので、目印をつける。矢印は上と前を指す。 |
フレア表面が胴体とほぼツライチになるため、フレア部分が干渉する。胴体に穴をあける。 |
接着して整形。穴は縦6、横5が正解。上下前後の見分け方は、フェアリングの後ろ下側が広い。お持ち帰りはページ末尾で。 |
3D設計補足。胴体との位置関係が重要で、その角度、寸法を図面から数値で規定できるFusion360を使う。フェアリングは、前後の断面形を描いてサーフェスモードでロフト。平面形の角丸四角で切り抜いてからエッジをフィレットで丸める。胴体は円錐断面で近似し、フェアリングから切り取る。フェアリングのエッジのカーブは、完全には再現できないが、そんなのはヤスリで削ればいいのだ。 いやあ、このキット、サクッと作れると思ったら、問題個所だらけ。ハセガワには、もっと真面目に作れよ!(怒)と言いたい。問題点は、IIプラスで追加された部分に顕著。だから、素組みで作るなら、初期のノーマルIIがおすすめ。これなら機首イメージも悪くないし、フレアディスペンサーもないし、平板タイプのストレーキだとエッジの違いが目立たない(たぶん)。ただし、コクピットの角度だけは直してあげよう。修正は簡単だから。 次は、ようやくスジボリ。先は長いぞ。だいぶへばってきたが。
実機写真を見ていると、駐機中はエアブレーキが下がっている。ついでにこいつも再現するか。普通のプラモだと、こういうのは胴体接着前に工作するのが必須。しかし、既に胴体は接着済みだ。そこで、ハンターのスリットを3D置き換えしたときと同様、モジュールはめ込み方式にする。 |
設計出来上がり。 |
脚柱中心とフォークの内側に真鍮線を仕込む(青部分)。見やすくするため、車輪はズラして表示。 |
パイピングは、正面側面それぞれスケッチして面を押し出す。1つの面を選択し、もう1つの面を使って「面の分割」を行う。 |
そうして出来たパスに沿って直径0.2mmの円をスイープする。 |
キットパーツも悪くないが、トレッド溝の再現と、ホイル別パーツ化でマスク不要になるのがメリット。 |
エアブレーキの内部はこんな具合。胴体に穴を開けてはめ込んで、ツライチに削る算段。 |
エアブレーキ設計補足。胴体形状は円弧断面で近似する。円弧の直径は、厚紙をサークルカッターで切り抜いたゲージで測る。3断面をスケッチしてサーフェスモードでロフト。パッチしてソリッド化したら、あとは通常のソリッドモデリングだ。エアブレーキ本体は次回で。 |
胴体に穴を開ける。 |
出力したパーツをはめ込む。気持ち浮かせて接着して3Dパーツのみ削る。 |
エアブレーキ本体と、前脚後方のフラップ状の部品(←名称知らん)の設計は次回。あとはジェットノズルとエジェクションシートも3DP化しようかな。うーん、3Dてんこ盛りじゃ。 |