鍾馗U型(ハセガワ1/48)製作記

2009.2.6初出

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 はじめに 




■ 究極の銀表現

 きっかけは、昨年の静岡ホビーショー。TSMCの名人によるソリッドモデルの素晴らしい作品に、頭をバットで殴られたような衝撃を受ける。アルミ板を貼ったナチュラルメタルの質感は、実機そのもの、いやそれ以上。「いつかは俺もああいう作品を作りたい!」とメラメラ製作意欲が燃え上がる。ご本人に話を伺うこともできた。これはもう銀貼りやるしかないでしょ。(TSMCのホームページはこちらから。開設間もないが、これから内容充実されるとのこと。)


■ 鍾馗?正気?

 そのアイテム、予告した銀色の日本機の答えは「鍾馗」。周囲には意外な選択と受け止められたけど、日本機離れしたところが結構好きで、自分では順当な選択なのだ。もっとも、今回の機種選定は、まず銀貼りありき。ただ未知の技法で自信なく、本命の米陸機は将来の課題に残し、第一作目はシンプルなのを選びたいというのが正直なところ。

 日本機でも選択肢は他に隼、飛燕、疾風とあるけど、隼と疾風は過去1/48製作済み、飛燕は銀貼りの傑作多数。決して消去法ではないが、鍾馗は以前より製作予定機リストの上位にあり、形もシンプルで好都合。これで決定となったわけ。


■ 製作コンセプト

 銀貼りに集中するため、いつもの切った貼ったと細部工作は封印(というか、それに釣り合う銀肌に出来るか自信なし)。コクピットは狭くてどうせ見えないし。ただしリベットは銀貼りと一体不可分だからやるしかない。日本機特有の白っぽい銀の表現は、とりあえず考えないつもり。米陸機みたいなゴージャスな鍾馗になっちゃうかも。

 ハセガワのキットはまだ全然チェックしてないので、キット評は後ほど。基本はサラリと作るつもりだけど、考証ミスなど製作上の注意点は、できるかぎりフォローしたい。鍾馗は、零戦と違って現存機がなく、資料も少ないため不明点が多い。零戦に引き続き、読者諸兄のご支援を切に期待する次第。


■ 銀貼りテク

 銀貼りのテクニックはいろいろあり、普通は糊付きアルミ箔を使うかな。しかし、ここはソリッド名人から伝授した技でいく。使うのはアルミの薄板。名人のP-51は0.3mm厚を使用とのこと。こいつは硬くて、そのままではモデル表面に馴染まない。そこをブレイク・スルーするのが、秘伝「焼き鈍し」だ。(←大げさな)

 では早速試行してみよう。1/48というスケールを考え、0.2mmでファースト・トライ。まずは、焼き鈍し。名人の教えではオーブントースターで焼くのだが、ウチのはパワーがないのか、時間が足りないのか、あまり柔らかくならない。そこでガスコンロで試行。加減が分からないけど、要は柔らかくなればよいカナ。そのまま自然冷却。



材料と道具。ヘラはたたみ針。ハサミは金属専用を新たに購入。

0.2mmアルミ板を焼き鈍す。ある程度の板厚があると、すぐには冷めないから、火傷には注意のこと。


 次は絞り。適当な大きさに切って、ヘラなどでこすりつけ、モデルの曲面に馴染ませていく。カウリング先端のきついカーブも、根気よくこすっていくとピッタリとパーツに合ってくれる。セロテープなどで適宜仮止めしながらやるといいようだ。結構力がいるので、ヤワなモデルだと壊れちゃうかもね。ここは工夫が必要。

 接着。先人は接着剤にも苦労しているが、名人は瞬間接着剤、それも硬化に時間がかかるタイプを使用し、その間に位置決めするとのこと。瞬着もいろんな種類があって試してみたいが、とりあえず黒瞬間で試行。基本はパネルラインで分割して貼っていくが、アルミはカッターナイフでも簡単に切れるので、パネルの切り出しは、硬化後でも可能。大まかに切って、接着して、硬化後に精度を出すというのがいいかも。

 磨きとスジボリ。板厚半分に削るくらいの気持ちで、表面を金ヤスリ〜#400ペーパーで均す。平らになったら、ケガキ針などでスジ彫り。さらに球ぐりでリベット打ち。アルミは柔らかいのでプラに近い感覚で作業できる。ただし失敗のリカバリーは、ほとんど不可能。慎重な作業が求められる。(修正は削るか貼り替えるか)

 最後に仕上げ。再度、周囲の凸凹をペーパーで均し、順次番手を上げて磨いていく。表面の質感は、番手で決まる。#600くらいが大戦機にはいいかな。#1500(ラプロスなら#6000)以上だと、かなりキンキラキンで、ジェット機はこれでもよさそう。もちろん、コンパウンドで磨きたおして鏡面仕上げもOK(←いつかやってみたいぞ)。



胴体に貼ったところ。左はラプロス#6000まで、右は#800ペーパーで磨いたものだけど違いがよく分からない。リベットは球ぐり#1番(0.3mm)。

カウル先端のカーブもこのとおり。モデルは長谷川レイコちゃん。


 ということで、アルミ板方式、なんとかモノになりそうな予感。やれやれ一安心。みんなに「銀貼りやります!」って宣言しちゃったのでねえ。0.2mmに気をよくして、同様に0.1mmアルミ板でも試す。絞りはこちらの方が簡単なので、省力化にはいいかも。ただ、0.2mmの方が、安心して削りたおせるかな。いずれにしても、これだけの厚みがあると、スジボリや小バルジなどの表面モールドは浮き出ない。小バルジは別途加工して貼り付けとなる。外板べこつきを表現するなら、表から削る。

 その他あれこれ。アルミ薄板(糊なし)は、東急ハンズで、0.3mm、0.2mm、0.1mm、0.05mmが手に入る。近所のホームセンターでも0.2mmまでは入手可。糊付きしか入手できなくとも、焼き鈍す過程で糊が焼失するから問題なし。ただし有毒ガス発生に注意。0.05mmアルミ板は、厚さは糊付きアルミ箔に近い。デリケートなモールドを活かしたいなら、これもありかな。

 ついでに、一般的な糊付きアルミ箔も試してみる。ヘラなどで伸ばしながら貼っていくと、柔らかいので、ある程度の曲面にはよく馴染む。糊のせいで表面が凸凹になるから、ペーパーで平らに均す。スジボリは上からなぞって再現可。出来上がりは悪くないのだけど、糊がフカフカと柔らかく、仕上げ後でも硬いものが当たるとキズが付くのが不満。やっぱ、アルミ板がいいな。


■ 銀貼りその2 2/17追加

 銀貼りで是非試したかったのが「凸リベット」。まずはアルミ板をモデル表面の曲面に合わせて絞り、ペーパーで磨く。次に裏から尖ったものでリベットを打つ。少し先を丸めたカルコやエッチングノコあたりが良さそう。尖った針だと穴があいて接着剤が漏れてしまう。こうして打ったリベットは、断面形が富士山のようになっているので、表から適当な径の球ぐりで軽く押さえる。

 こうして試作したのが下画像。好き嫌いはあるだろうが、結構いい雰囲気。ただし、工作法の都合で、表面がべこべこになってしまうので、大スケールか大型機でないと違和感あるかも。この解決法が見つかれば、1/48単発機の凸リベット無塗装銀も夢じゃない??

 また、接着が難しい。誤って表面に瞬間接着剤が付着すると、除去が困難。凸リベットだから削るワケにはいかない。木製のソリッドモデルではアセトンで拭き取るそうだが、スチロールを溶かすのでプラモデルにはダメらしい(試してないので伝聞)。



0.2mm板に凸リベットを打ってみたところ。ナカナカよい雰囲気。板厚、打つ道具、押さえる球ぐりのサイズなどはいろいろ試すと面白そう。

長谷川レイコに貼ってみたところ。貼り付け後にスポンジヤスリで軽く磨いてある。球ぐり#2か#3あたりを使用だが、1/48にはちょっとリベットが大きすぎるかな。


 結論として、可能性非常に大。上手く工作できれば、実感この上なし。ただし工作難易度も高い。普通に球ぐり打って磨くほう(つまり沈頭鋲)が全然簡単。でも、どなたか1/48の4発重爆あたりで挑戦されないかなあ〜。


■ キット評

 恒例のプロポーションチェック。ハセガワキットは、カウリングのイメージなど実機の形状をとてもよく再現しており、総じてとてもよく出来ている。細かいことを気にしなければ、素組みで十分といえる。しかし、これはどのキットにも当てはまることだが、重箱の隅をつつけば気になる箇所がないわけではない。以下、レベルに応じて。

レベル1

 従来から指摘されている事項。知ってて直さずも1つの見識。エルロン上面側の弦長が長い。胴体給弾パネルがU型甲以前の小さいタイプ。垂直尾翼の前縁だけは尖らせてあげよう。

レベル2

 ちょっと手を加えると、よりよいイメージ。中・上級モデラーを自認するなら是非どうぞ。可動部キャノピの側面形状(とくに下端ライン)、プロペラブレードの形状、フィレット付近の胴体断面形、翼前縁の曲率は、比較的簡単な修正で効果大だ。ついでに、垂直尾翼付近の断面形も直すといいぞ。



可動部キャノピは、赤ラインが正。緑丸の部分は直線で、黄丸のところで「カキッ」と曲がる。

キットはこのあたりがくびれ過ぎ。

翼前縁が丸すぎ。車輪収容部の出っ張り先端や、着陸灯の断面を実機と比較されたい。

胴体から垂直尾翼への面の変化に注意。実機がどんなだかは、世傑を参照願う。


レベル3

 変態工作マニア向け。真っ当なモデラーは気付かぬフリが吉。キットはカウル直後の胴体が絞り過多で、防火壁〜コクピットあたりで2mm程度の胴体幅不足。これは、新世傑40ページの写真で、翼との比較で防火壁の幅が検証できる。また、後部胴体断面形は側面の曲率不足。主翼は気持ち薄い。実際の薄さ以上に平板感があるのは翼断面形のせい。また主翼取り付け位置が1mmほど低く、腹ボテ気味。

 その他、パネルラインの考察など細かいあれこれは、適宜製作途中でコメントする予定。


■ 鍾馗のアウトライン−通説って・・

 実は、これまで語られてきた通説には誤り(とまでは言わなくとも誤解を与える表現)があるのだ。通説曰く、「鍾馗は大直径のエンジンを装備したため頭でっかちで、カウリング直後から胴体を極度に絞って細くし、小さく薄い主翼であった」

 これ、子供の頃から擦り込まれていて、特に疑問は感じなかったんだけど、今回の製作にあたって、初めてじっくりと実機写真により検証したところ、びっくりの結果。鍾馗が装備したハ-109の直径1,263mmって、欧米と較べれば、普通(下表参照)。頭でっかちなのは、エンジンとカウルの間にたっぷり隙間があって、エンジン直径以上にカウルが太いため。エンジン整備中の写真をよく見るとその隙間が分かる。


エンジン 直径 使用機
ハ-112(金星) 1,218mm 五式戦、彗星
ツイン・ワスプ R-1830 1,224mm F4F、P-36
ハ-41(ハ-109) 1,263mm 鍾馗
BMW 801 1,316mm FW190
ハ-101(火星) 1,340mm 雷電、天山
ダブル・ワスプ R-2800 1,341mm F6F、F4U、P-47
ライト・サイクロン R-2600 1,397mm ヘルダイバー、アベンジャー


 胴体の絞り込みは、図面などではえぐったような逆Rがついているが、実際は逆Rはほとんどわずか。ほぼ直線的に絞られており、隼や疾風と大差ない。翼厚については、車輪部のバルジを除けば(一般的に翼のスペックはバルジが控除される)付け根の翼厚比は約17%で、むしろ厚翼というべき値。これも一部の図面は誤り。参考までに、薄翼のスピットファイアが13%、一般的なところで15%(例えばP-40)、厚翼の代名詞ハリケーンだと19%。

 つまり、「エンジン以上に太い機首から、ほぼ直線で胴体を絞り、翼は小さいけどやや厚め」というのが真実の姿。嘘だと思うなら、先入観を取り払って実機写真をよ〜く見てみそ。既存図面の間違いも、通説の言葉のイメージが一人歩きしたのが原因と推察。ほんと、言葉ってコワイな。もっとも「『俺にとっての』鍾馗は、胴体がギューっと絞られて翼がうんと薄いのだ」という意見は否定しない。模型は主観的であってよい、というのが私の見解。あなたの鍾馗と私の鍾馗の形が違っていてもOK。でないと模型がツマラナくなるでしょ。





 組み立て 




■ 改めて製作コンセプト

 当初の予定では切った貼ったは封印だったが、分かった以上、直さないと気が済まない性格。胴体平面形と主翼は直してやろう。胴体断面形や翼型のビミョーなところは、完璧を目指さず雰囲気のみのお手軽修正で。なにせ銀貼りは手間がかかるので、余裕がないのだ。


■ カウリング銀貼り

 いよいよ本番工作開始。まず一丁目一番地、カウルの銀貼りから。手順は下画像をご覧いただきたい。最後にチョット磨きすぎたらピカピカ、ゴージャスな仕上がり。鍾馗じゃないな、コリャ。全体を貼り終えたら表面の輝き具合を調整しよう。



0.2mm板を使用し、カウル前上部から貼っていく。次に前側面(手前に転がってるパーツ)を貼る。先に貼った部分とは慎重に合わせを微調整。

前面ぐるりを接着後、後端のパネルラインのところで切り揃える。胴体ラインを修正するため、カウル側面に0.3mmプラバンを貼る。

表面をざっと#400ペーパーで一皮剥く。まだ細かい凸凹が残っている。

さらに#600ペーパーで凸凹を消し、リベット類(#0、#4球ぐり)、スジボリを施し、使い古しの#800スポンジヤスリで磨いたところ。



■ 使用上の注意

 以下、現時点で分かった注意点など。

 この技法で非常に重要かつ難易度が高いのが、アルミ板とプラの密着。アルミ板の裏側に隙間(気泡など)があると、磨いてるうち凹んでくるし、リベットを打っても周囲を巻き込んで大きく凹んでしまう。これには、絞りと接着が非常に重要となる。まず、絞りの段階で出来るだけ隙間のないようにする。キットをもう1つ用意して、絞りの木型がわりにすることが必須。貼り付け中のキットでは、先に貼ったアルミ板が邪魔で上手く絞れないのだ。

 接着は特に重要で、アルミ板とプラとの間に空隙ができないように、セロテープで押さえながら固定する。もし隙間が生じてしまったら、剥がしてやり直すのがベスト。剥がすのは意外と簡単(逆にいうと剥がれやすい)。一度に大面積を貼ると隙間が生じやすいから、パネル毎に小さく貼っていく方が、結果的に早くできるだろう。ただし、先に貼ったパネルとパネルラインを合わせるのも結構面倒。



分かりづらいが、赤丸の部分は裏に空洞があって凹みが生じている。こうなると、削りでは凹みが解消できず、剥がしてやり直し。



■ 胴体幅の修正 2/20追加

 カウリングは置いといて、しばらくは銀貼りのベースとなるプラ工作。まず、胴体幅(断面形)を修正しよう。くびれについては、第3フレームのところで、胴体上下に切り込みを入れ(中央はつながっている)胴体パーツを曲げる。幅については、上下の接着面にプラバンのシムを挟む。垂直尾翼周辺についても、ラダーを切り離し、正しい断面形状にパーツを曲げてやる。

 ところが、出来上がりのイメージが全然ダメ。シムを入れたことで胴体頂上部が広がり、断面形が全然似ていないのだ。このまま接着し、裏打ちして削り倒すのも、コクピット部分では不可。よってシム方式は却下。やり直し。



胴体幅を広げるため、シム(白いプラバン)を入れてみたんだけど、断面形が角張ってしまう。


 う〜むと考え、いつもの曲げ方式。鍾馗の胴体断面は菱形を丸くしたような形なので、胴体高さ半分のところで折り曲げ、胴体幅を広げる。そのままでは元に戻るから、内側に「つっかえ棒」ならぬ「つっかえ板」のプラバンをがっちりと接着。最初はバルクヘッドで補強しようかと思ったけど、こっちの方が簡単。先に貼った胴体後上部のシムは撤去。



胴体中央部にプラバンを接着。下側のシムは残す。コクピット前方も増幅したカウルとの幅調整のためシムを残す。

左右を合わせてみる。肩が丸くなり(というか元に戻って)側面が張り出し、まあイメージに近づいたかな。胴体接着後、さらに削りで調整する。

ストレスのかかる接着なので、接着ベロを取り付ける。適当な直径の燃料タンクを切って使用。上下方向にも、つぶれ防止の柱を入れる。

コクピットフロア、バルクヘッドもプラバンを接着して幅を増す。これも胴体形状を保持する補強部材となるので、幅を慎重に調整する。


 次はコクピットを工作して、胴体左右接着、外形の削り修正という手順になる。


■ コクピットの塗色

 コクピット工作の前に塗色を決めないといけない。インストでは#127中島機内色とされているが・・・
 参考文献-10、11に陸軍機の内部色について詳しい分析がある。その記述を私なりに解釈すると、次のとおりと考えている(←日本機通人の多大な助言あり。感謝)。


 中島製陸軍戦闘機のコクピットは、まず九七戦の頃は灰藍色であった。昭和15年に青竹色になり、隼、鍾馗の一部が該当(疾風は不明。あったとしても増加試作機程度か)。昭和18年6月に青竹の廃止と灰緑色への変更が指示され(現場の対応には多少の遅れあり?)、隼、鍾馗、疾風も灰緑色で塗られるようになった。

 この色調は、中島製零戦や彩雲のコクピット色、疾風のプロペラ色に近い(あるいは同じ)ようだ。さらに19年中頃から上面に黄緑7号(暗褐色)の迷彩が導入されると、コクピットも資材簡略化により黄緑7号となった(時期のズレはありか?)。

 鍾馗について整理しなおすと、生産初期のものは青竹色、おそらくU型甲か乙の生産途中あたりから灰緑色(U型の生産は17年11月から19年末まで。生産機数から推測すると乙は18年夏ごろから生産開始と思われる)。末期は黄緑7号の可能性あり。


 以上の説と、実機写真とを比較、検証してみたい。ミケシュ本のコクピット写真では、内部が非常に暗く写っている。この機体はフィリピンで捕獲された上面黄緑7号塗装のU型丙製造番号2143号とのことで、これは黄緑7号の可能性ありと思っている。

 文献-3にあるコクピットの塗色も結構暗い。他写真と一連のフィルムで撮影されたのであれば、末期の黄緑7号の可能性は低い。これを灰緑色と解釈するか、別の色とするかは判断の分かれるところ。灰緑色とするならば、中島製零戦などに較べれば若干暗めの色調だったのだろうか。あるいは単に撮影条件(or現像・焼き)の問題か。別の色とした場合、メタリック感がないので青竹とするには躊躇する。初期の灰藍色のストック塗料を塗ったのか(文献-11では飛燕に例があり)、あるいは別の塗料なのか(どんな色か想像もつかないが)。

 一方、文献-1、2にコクピットドアが開いた状態で撮影された機体(U甲とU乙)があり、いずれもドア内側は明るい。灰緑色といわれればそう見える。また、ある方から頂いた写真(型不明)は、金属感があり、これは青竹かも。

 結局、決め手はないが、無塗装のU乙、丙は灰緑色で、若干暗めの色調だったかも?、というところかなあ。なお、全時期を通じて計器板は黒。また、キャノピ内胴体上部、窓枠内側も黒(末期は黄緑7号かも?)。これらは写真(計器板はカラー)でほぼ確実。


■ コクピット 2/26追加

 キットのコクピット左右には、左側にショボいスロットルカラムが1つ、右側にはポツンと配電盤のパーツがあるのみ。床板のディティールも淋しいし(上画像参照)、あまりにスカスカなので、何か追加したいところだ。

 ところが、とにかく資料が少ない。手持ちは、@ミケシュ本の写真、A70戦隊本の写真、B丸メカの高荷氏イラスト、C「SEA & SKY」誌77年11月号に掲載された長谷川一郎氏のイラスト、D丸メカの座席等のイラスト(取説の写し)が全て。このうちCは、写真を模写したんじゃないか?と想像するが、右側面についてはこれが唯一の資料となる。これら資料を適宜参照しつつ、しかし結局は「詳細はよく分からない」ので、割り切ってテキトーにデッチアップする。

 前作で2つ買ったタミヤ零戦の余り部品が活躍。上から覗いたときに密度感が出るように取り付けていく。それでもまだスカスカなので、配線をぐちゃぐちゃと這わせるが、センス不足だなあ。なお、個々の形状、配置はホントにいい加減で、資料価値ナッシング。スロットルレバーは前方に機銃発射レバーがついてて、ここだけは再現。右側にある配電盤は、ミケシュ本の写真を見るとスイッチの配置など違うけど、ここだけ正確に再現しても意味ないのでスルー。



計器板はキットそのまま。よく出来ている。いつものとおりデカールをポンチで抜いて貼り、フューチャーをたらす。

イラストを見ながら、それらしく部品を追加。スロットルとトリムはタミヤ零戦。足元の燃料切替コックは位置を変えプラバンで作り換え。

灰緑色は、タミヤ零戦では褐色が強かったかなと思い、暗緑色を少し追加。レバー頭の色など細部は想像の世界。

右側壁。四角い配電盤はキットそのまま。よく考えると、無線機があってしかるべきだな。(ま、いっか・・)

ラダーペダルはタミヤ零戦+キットで、でっち上げ。レバーの頭は瞬間パテ。実機の床は一部しかなく、あとはスカスカとのこと。

思ったとおり、胴体左右を合わせると開口部からはほとんど見えない。



■ 胴体接着 3/5追加

 パイロットシートの工作は後回しにして、コクピットを組み込み胴体接着。接着後、胴体断面形を特に上部が尖り気味になるように、また第3フレーム以降の胴体側面が一直線になるように(つまり各縦通材が一直線になる)、定規に貼った#120ペーパーでゴリゴリ削る。

 キットの主翼取り付け位置は元々実機より低いのだが、作品では、胴体前部にシムを入れたり、翼断面形を修正(下面のカーブを緩く)したりと、手を入れた結果、主翼下面パーツとカウリング、後部胴体との接合部に段差が生じる。そこで、フィレットを切り離し、接合部を1mm削って再接着することにより、主翼取り付け位置を補正する。



後部胴体の削りに備え、瞬間パテとプラバンで裏打ち。

主翼取り付け位置を1mmほど上げるため、胴体接着後にフィレットを切り離す。

後部胴体の「肩」を思いっきり削る。まだまだ実機と違うけど、このへんで妥協。フィレット部の「くびれ」の修正はこれから。

前から見ると、こんな感じ。コクピット前方の断面はほとんどいじらず。水平尾翼上部付近の胴体は△断面といっていいほど。

切り離したフィレット部の裏側はプラバンでしっかり補強する。

胴体を広げたため、主翼との接合部を多いところで1mm以上削る必要がある。主翼を仮組みして、ざっと合わせたところ。



■ 主翼の下ごしらえ

 主翼は、翼型と翼厚に手を入れる。実機写真から最大翼厚を計算により割り出し、フィレット付け根:6.7mm、内外翼境:5.3mm、翼端(平面形のカーブの始点):3.0mmとする。この厚さをキープするため、1.2mmプラバンの翼桁を接着。翼上下パーツは正しい断面形に曲げる。すなわち、上面前半の曲率を強め、上面後半と下面の曲率を緩くする。

 次はねじり下げ。鍾馗は付け根の迎え角2°翼端では0°で、-2°のねじり下げである。ある文献の渡部利久氏の記事によると、鍾馗のねじり下げは内翼では捩らず外翼のみ捩る(←零戦に類似)とのこと。実機写真を見る限り、本当かどうか確証はないが、記事どおり再現してみる。つまり、内外翼の境で翼前縁を「へ」の字、後縁を「逆へ」の字に折り曲げ、外翼のみ捩るのである。

 翼下面パーツを曲げたせいか上反角が怪しくなり、脚収容部の中央にエッチングノコで切れ目を入れて正しい角度に保持してプラバンをがっちり接着。上面パーツは、接着後に前縁を薄く削るので薄くなっている部分をプラバンで裏打ち。

 エルロンにはアルミ板を貼らないので、そのままでは板の段差が生じる。そこで、切り離してアルミ貼り付け後に整形する算段。そのままでは翼厚が狂うから、切断部にはプラバンで厚さ保持のシムを入れる。鍾馗のフラップは後縁が翼上面からはみ出すが、銀貼りには厄介な構造。アルミ板貼り付け後に上面側エッジを裏から削ろうと考え、フラップも切り離す。最終的には閉じて組む予定で、フラップの受けを接着しておく。



主翼パーツに下ごしらえ。詳細は本文参照。

裏側。フラップは銀貼りの都合で別パーツとし、後からはめ込む予定。そのために接着ガイドをつけておく。



■ 主翼の考証

 重箱の隅を少々。まず蝶形フラップの形状について。キットや既存の図面では、フラップ前縁ラインが左右一直線(平面図として)となっている。しかし、実機写真を見ると、前縁ラインはわずかに後退角がついている。新版世傑の破損機裏返し写真から計算すると、付け根側はそのままで翼端側のフラップ弦長を1mmほど短くするのが正解のようだ。しかし目立たない下面なので、とりあえずそのままで手抜き(上画像もキットのモールドどおり切断)。

 車輪収容部上側のパネルライン。一部の図面では、下画像鉛筆描きのラインが描かれているが、私は「なし」だと思っている。理由はパネルラインに該当する骨組みがないから。新世傑p36にラインありに見える実機写真があるが、よく見ると写真のキズのようで他にも似たキズがある。なお、キットにはこのラインはない。わざわざ追加スジボリなどせぬように。



一部図面に描かれている鉛筆のパネルラインは「なし」が正解。



■ 続、胴体 3/13追加

 切り離したフィレット部をさらに裏から補強し、フィレットの「くびれ」を瞬間パテで埋める。私は基本的にパテは大嫌いで外面には使わない主義だが、今回はアルミ板を貼るのでパテの使用に躊躇はない。また、フィレットを全体に1mm嵩上げしているが、翼厚を増したため、翼の中程では段差が生じフィレットが落ち込んでいる。

 また、前方ではフィレットの曲面がちょっと単純でなく、前縁から急に立ち上がり、排気管のすぐ下あたりから横ばいとなる。そんなこんなで、フィレット部分にパテを盛大に盛りつけ、ゴリゴリ削る。



フィレット付近をさらに補強。下面から削り込むので、しっかり裏打ちしておく。

くびれに瞬間パテを盛る。

キットオリジナルと比較。写真では違いがあまり分からないかも知れないが、実際に手にとって比べると、量感とか、面のハリが全然違う。

翼との合わせも調整するため、境界にプラバンを貼ったり(矢印)、黒瞬間を盛ったり。



■ 主翼接着

 下ごしらえした主翼を瞬間で接着し、正しい翼型に削る。キットの翼型は、凸レンズの断面のような形で、@上下の曲率が同じ(=上下対称)、A前半の上への立ち上がりが弱く後半の曲率が大きい、さらにB前縁の曲率が大きい、という3点が不満。これらは、ある程度パーツの曲げで修正しているが、さらに削りで仕上げる。

 前縁のカーブをイメージどおりにするためには、最先端の位置を上下パーツの接合面より少し下にする。こうすることで、鮒(ふな)か鮎の頭の形のような断面形にしていく。前方バルジ部はとりわけ先端がぶ厚いので、部分的に裏打ちのプラバンが透けて見えるほど薄く削り、先端をしっかり尖らせる。

 鍾馗の翼は、内翼と外翼とで厚さの変化率が異なるため、正面から見ると内外翼境で屈曲しているが、これも十分に意識しながら削っていく。漫然と削ったのではダメ。翼端は米軍機のような削ぎ上がりになっている。これも日本機離れしたデザインの1つだね。キットは抜かりなく表現されているが、さらに削りで強調する。

 これで、ようやく「飛行機らしい」「飛びそうな」翼になってくれたと自己満足。まあ、正確な翼型データは不明なので、あくまで主観的「らしさ」なんだけど。



さらに桁を一本追加。これで上反角はばっちりだ。

エッジが少々ダルいので黒瞬間を盛る。このようにテープを貼ると表面張力でエッジに厚く盛ることができる。

前縁が尖るように削る。バルジの屈曲部は裏打ちのプラバンが白く見えている。

キットオリジナル。とくにバルジ部で前縁が厚ぼったい。これ味方識別帯を塗るとさらに目立つのだ。

翼全景。バルジ部の尖りがまだ足りなくて、この後さらに削っている。

胴体と合わせてみる。


 形状的にまだ不完全ではあるが、切った貼った盛った削ったはこの程度にして、銀貼りに移る。






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