中島 四式戦闘機 疾風 (ハセガワ1/72)製作記

2017.1.1初出

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完成画像





■ 模型も始める 1/16更新

 図面を描きながら、手元のハセ72キットを眺めているうち、自分の図面を3Dで確認したくなってくる。こうなると、落ち着いて野馬などいじっていられない。ということで期待どおり(?)製作開始。え?48か32でやれって? それは読者諸兄にお任せしよう。


■ キットの検証

 せっかくなので、図面と重ねて比較してみる。



ハセ72胴体。コクピットの真横で距離50cmから撮影。104戦隊迷彩乙型とほぼ同じ撮影位置ではないかな。


比較で拙図。図面と写真は、たとえ同じアウトラインであっても印象が違う。私の目にはキットも図面もほとんど同じ太さ(高さ)に見える。実際には違うのだけど。

そこで重ねてみる。カウル下面に高さ、主翼前縁に前後を合わせる。キットは風防前で2mm弱高い。また風防からカウルへの下り勾配が強い。主翼からカウルの間もちょい長いかな。アンテナ柱の位置は拙図とほぼ同じ。キットは既存図をベースにしてないことが分かる。

再掲。104戦隊の迷彩乙型。


カウル開口部が小さく位置が低い。そのため「おでこ」が妙に盛り上がっている。映画「エイリアン」を思い浮かべるのは私だけ?

後から見たところ。鼻筋(風防からカウル)が細いところなど実機写真の印象にかなり近い。胴体の基本的断面形が正確だからだ。


 以上の検証結果より、製作方針を決める。胴体高を下げ、機首を詰め、カウル正面を直せば大体図面に合うかな。キャノピは高さや幅の寸法は合っているが、胴体接合位置が高い(その分キャノピパーツ自体の高さは低い)。また直線であるべき側面がぬるっと丸いし正面窓の形も違う。ケミウッド削ってヒートプレスしよう。主翼フィレットの凹みが若干強い気もするが、ここはスルーの予定。


■ 胴体組み立て

 ♪ちゃらりららら〜(←オリーブの首飾り)と胴体切断イリュージョンの始まり。いや美女と巨大回転のこぎりは出てこないが 。以下画像で。



まずカウルをエッチングソーで切断。中央の排気管を切り離して取っておく。次に胴体中央を上下に真っ二つ。これはカッターが楽。

これだけでは鼻筋の下り勾配が直らないから、さらに#5フレーム付近でカットし、1mm程ずらして再接着、黒いマーカー部分を削る。

左舷胴体を接着。バルクヘッドは断面図プリントアウトどおりに切ったプラバン。右舷は修正前で、断面(黒着色)が見える。

上:修正前右舷(カッターのスジ目だけ入っている。左右反転)、下:修正後左舷。比べると相当スリム。

大昔に買ったトゥルーディテールのレジン製コクピット。やっと使う時がきた。まだ売ってるかは不明。

前後切断部の補強(白プラバン)があるため上手く納まらない。一部をカットして組み込む。どうせ前の方は計器盤で見えない。

カウル先端は口を広げてシムをかます。インテイクの高さ位置に注意して接着、整形。断面形確認のため鉛筆でコンターを描く。

カウル側面パーツは、側面形、断面形に合わせるように上下に押しつぶす。カウル内側は瞬間+プラ粉で補強。

カウルのラインは図面を切り出した型紙で確認しながら削る。イメージ確認のため鉛筆でパネルラインを描き、主尾翼と仮組み。

キットのキャノピパーツを乗せてみる。これはプラバン絞りで自作する予定。


 補足。キット写真と図面の重ね合わせでは胴体高さが2mmも違わないように見えるが、キットは主翼取付高さがやや低い。そのため修正量としては2mm弱になる。また、キットはラダー下部の幅が狭い。胴体下側の接着部に0.5mmプラバンを挟む。ラダー上部は増厚の必要がないから(むしろ厚すぎ)、下が広がるように中程でパーツを折り曲げる。カウルのおでこは、さらにパーツを切り刻んでラインを合わせる。インテイク両脇は裏打ちが透けて見えるほど削っている。

 さて、こうして出現した3D現物は、従前プラモで見慣れた印象と大きく違い、後部胴体が細く、頭でっかち。一瞬修正の寸法を間違えたかと思うくらい。でもノギスを当てると図面どおりだし、手に取って記録写真と同じ角度で眺めると、ちゃんと写真と同じ形に見えるから、今までのイメージが間違っていて、今度のが正解であることは間違いない。昔のプラモの刷り込みのせいかな。だから、もし拙図を忠実に再現したキットができたら、たぶん一部のマニアからは「実機と違う」とブーイングだろうね。

 もうひとつ。図面と立体でも認識の違いがある。図面を描く作業をしていると、その「絵」が頭の中にイメージとして定着してくる。その状態で立体を見ると、同じ寸法なのに胴体が細く感じるのだ。いや、実物より図面が太く見えるという方が正確か。実はこれ、前々から感じていて、例えば、スピットの側面図は私のイメージする実物より後部胴体が太く、鈍重に見える。理由はよく分からないけど、平面と曲面の差なのか、フィレットの影響なのか(フィレットの下側は影となって見た目の胴体太さに認識されない?)。

 そんなこんなで、最初はなんか違って見えたわけ。時間が経つと、新しい方のイメージが脳内に定着し、違和感がなくなっていく。今では、「これ以外に考えられない!」というくらい。作品完成の暁には、ぜひ展示会等で実物を見て、その認識ギャップを味わっていただきたい。


■ コクピット 1/21更新

 コクピット内部の塗色は、最近の考証では無塗装銀の機体(および暗緑色@現地塗装)では灰緑色で、黄緑七号いわゆる暗褐色の迷彩が導入されるとコクピット内も黄緑七号となる。隼、鐘馗も基本的に同様の経過を辿る。米軍捕獲の暗褐色迷彩機のコクピット内はかなり暗い色で塗装されており、黄緑七号説と合致する。五式戦も内外黄緑七号だ。灰緑色の色調は零戦を含め中島機に共通と思われ、#127コクピット色(中島系)は明る過ぎで、むしろ#126三菱系の方が近い。学研本では、疾風のプロペラが同色の可能性大としている。



暗褐色迷彩とするので、内壁、床を同色で塗る。レシピは#12オリーブドラブ(1)と自作ダークアースを2:1に黒少量で明度調整。

丸メカのイラストを見ながら、適当に色を差す。側壁は接着後の塗装だけど、ほとんど見えないからいいのだ。



■ 主翼 1/25更新

 拙図面に合わせて主翼を工作する。付け根側のコードを1mmほど短縮。翼端側はそのまま。翼端部を少し折り曲げて切れ上がりを表現。この時代のキットの常としてねじり下げはついてないから、自分でねじる。翼型は良好。翼端部がやや厚い。ねじりで生じる隙間や太いスジボリを瞬間で埋め、定規に貼った#240ペーパーで形を出す。



スジボリの位置決めに、図面のプリントアウトをパーツの上に置いて、ラインの端点を針で打つ。図面があると便利だ。

接着、整形、スジボリ概成。翼端がぽってり厚いので薄く削る。これ大事。



■ 垂直尾翼の考察

 学研本に、増試〜量産初期型において垂直安定板が増積され、このタイプは増積部下端に暗部が見られるとの記述がある(同本p100、図のB、C、世傑p21に暗部の分かる写真あり)。で、写真を眺めてふと思う。この暗部はラダーの前下端で、舵が中立の時は胴体の中に隠れて見えず、舵を大きく切ったとき初めて見えるのでは? そうであれば、垂直安定板は変化してないのでは。まあ、不鮮明な写真ゆえ、学研説を否定するほどの確信はない。傍証として、同本p48の米軍捕獲機によく似た暗色部が見え、当機ではラダー側にある。ただし、これはこれ、増積は別との考えも成り立つ。


■ お絵かき

 図面が出来たら色塗り。まず暗褐色迷彩を二題。上段は飛行第47戦隊第1飛行隊旭隊所属機。高い稼働率を維持し、疾風が最も輝いた部隊といえるだろう。旧世傑p52に写真あり。製造番号は不詳。日本機のマーキングの青はカラー写真で見たことがなく、色調は想像で。一応、学研本の「日本航空機規格8609」規定の青3色のうち一番明るい色を想定し、明度を写真のイメージに調整する。


 下段は、昭和19年末フィリピンで捕獲された飛行第11戦隊所属、製造番号1146。本機が唯一現存する疾風となる。左舷の写真はなく、ハゲチョロは右舷を真似る。熱帯で退色が進んだとの想定で、上より迷彩色を明るくしてみる。


 黄緑七号の色調は、疾風のオリジナルカラー写真に従い、褐色味を強くする。一部のB-17などで見られるほとんど緑味のないオリーブドラブあたりをイメージ。上の2機、色相は同じだけど、明るい方が赤く見える気がする。チッピングが相変わらず下手くそ。なにせ、ベジェ曲線で描くわけだからねえ。といっても全てのノードをいちいちクリックして描いているわけではなく、10ノードくらいの図形をいくつか描いて、コピーして大きさや向きを変えて重ね、ある程度まとまったらパス統合して・・という作業をくりかえす。もっと上手く描ける方法がないかなあ。

 47戦隊機は、写真では迷彩色が暗く、暗緑色では?との疑念がよぎる。そこでモノクロ変換し明度とコントラストをいじってみると、案外写真の雰囲気に近くなる。塗装後間もない黄緑七号とみて間違いないだろう。11戦隊機は対比で明るめに調整。こんな感じに見える写真もあるよね。



■ 丁の字

 主翼を胴体に接着。スジボリも8割方終了。



カウルと尾翼は仮り止め。

エンジンやインテイクの仕切りを接着。開口部を広げて、顔も似てくる。




■ 胴体形状の再検討 1/31更新

 ver.1側面図掲載後に複数の方から新たな写真、情報を提供いただく。大感謝。中に現存機の里帰り飛行時に望遠で撮影されたものが数点。それらを眺めていると、以前掲載の側面図よりキャノピがさらに前寄りに見える。そこで、遠方かつ真横ただし不鮮明、および遠方かつ鮮明ただし斜めの写真(三拍子揃ったのはない)を、全長を基準に合わせてトレースすると、風防が従前の図(ver.1)より実寸で2〜3cmほど前寄りとなる。

 胴体フレームの位置に関しては、渡部氏の実測値を考慮する。これ、取説の数値と違うし、主翼前縁からラダーヒンジまでの合計が7090mmに合わなかったりで、当初は無視してたのだ。改めて実測値どおりにプロットし、それを7090mmに合うように縮小すると、ver.1のリベットラインとほとんど一致するのだね。気付かなかったヨ。ビミョーな差は、@ステーションとリベットラインは通常一致しないこと(FM-2の項に詳述、実測値はリベットラインと推測できる)、A合計値は5mm単位に丸めた誤差の集積と胴体側面の湾曲のせい、と考えられる。ということで、実測値、取説の記述、米軍の測定の3つの数字が矛盾なく整合するわけだ。

 あとは、パース誤差を補正した記録写真(捕獲302号)や現存機の鮮明な写真などをトレースして、キャノピフレームの細部を詰める。カウルフラップ、防火壁、主翼などの前後位置は実測寸法に従う。併せて、カウルや後部胴体の形状も微修正。記録写真との整合がちょっと苦しい気がするが、まあパースのついた写真の読み取り誤差範囲内と考えることにしよう。


  • 全長、ラダーヒンジまでの距離、胴体高さなど、ver.1の作図時に考慮した数値情報はver.2でも考慮する。胴体ステーションは、若干見直す(#8〜9が300→290など)。

  • 実はver.2の方が、渡部利久氏の胴体実測値に近い。ver.1では風防前後長の数字が合ってないのだ。ver.2ではぴったり。

  • 当該写真とは関係ないが、主翼の高さを見直し、主翼sta4より外側で約3cm(実寸、1/48では0.6mm)下げる。sta0は変わらず、側面図での胴体下面ラインは変わらない。見直しの理由は、主桁下面の正面形が緩いUカーブになっているのを考慮したものである。






■ 総括

 再検討にあたっては、記録写真、現存機写真を何枚も重ねて風防位置をチェックする。現存機の写真は、遠方真横あるいは遠方鮮明というもので、無視できない。これに従えば風防がver.1より2〜3cm前進するのは明らか。一方で、この風防位置は、大戦中および米軍捕獲時の写真としっくりと馴染まない気がする。もしかすると、里帰り飛行の前に風防をレストアして、取り付け位置が前進したのか?? 劣化しやすいプレキシガラスは当然交換されただろうから、それに合わせてフレームも補修(一部新造?)し、再組立時に何らかの理由(ミスかネジ穴が潰れたとか・・)で位置がズレた、というのはあり得る話ではないか?

 そう思って写真を見直すと、大戦中と里帰り機では別機のような印象を受ける。クローズアップ写真ではその痕跡は認められないけど、尾灯や機銃穴の補修跡はオリジナルみたいにきれいな仕上がりだし・・・ まあ、答えは知覧まで行って現存機のコクピットに潜り込まない限り分からないだろう(←許されないって)。気持ち的には記録写真の雰囲気に近いver.1を正としたいんだけど、風防移動説はちょっとトリッキーかな。

 ということで、とりあえずver.2を正として図面イラスト等はこちらに揃える。図面のページの諸図もver.2に直す。いずれにせよ、1/48で0.5mm程度だから、どうでもいいっちゃあ、どうでもいい話である。現存機の鮮明な写真はこちらなどで見ることができる。改めて資料提供諸兄に感謝。引き続き鮮明な写真絶賛募集中。

 http://geta-o.jp/WB/P&F/HAYATE/WB-HAYATE.html


■ キャノピ自作

 位置はともかく、形は大差ないからどんどん進める。



図面を切り出したものをゲージにしてケミウッドを削る。写真で見ると、やや太めだな。

風防正面窓の上隅の張り出しが造形上のポイント。ここをしっかり角ばらせると「らしく」なる。

さらに幅を狭め、プラバンの厚み分を削って絞り型のできあがり。

切り出して胴体との馴染みをチェック。まあまあかな。



■ 細部 2/7更新

 勢いに任せてディテール工作を進める。キャノピと胴体の接合ラインを下げた結果、開口部の幅が広がる。本来それを見込んで胴体上部の幅を狭めるべきであったが後の祭り。木型は幅を広げるわけだが、盛るのではなく頂部を削るという方向。以下画像で。



曲線のスジボリはロボでテンプレートを切る。データは有効活用しないと。シートは2枚重ね。

排気管工作。中段4本は切り取っておいたキットパーツ。上下はプラ材(キットの増槽)を加工。クリアランスを慎重に調整する。

キャノピ後方の合わせが不満で、型を修正し絞り直す。1度目修正で上手く収束せず2度目の修正。ヘタレや。

後方固定部も同じ型で済ませる。キットパーツも使えるかも。

スピナはムクのプラ材の削り出し。ちなみに使うはベンチュラ版グリスピのスピナ。図面を切り出して形状を合わせる。

1.5mm棒をそのまま軸にする。後ろの軸受けで角度を調整する。クランクケースのパーツがごつくて、ナイフで彫刻。

機銃ガス抜き穴を開口。キャノピ接着後に塗装するので貫通穴を塞ぐ。胴体前端の穴からボトルシップみたいにプラバンを接着。

全体形が見えてきたぞ。



■ 図面修正

 では、ver.2修正版の正面図と断面図。これらは、主翼位置の修正がメインとなる。胴体高さも微妙に見直して、それも反映。以前の正面図はトレッドを既存図面にある3,450mmとしたが、脚取付位置の関係でハの字が強すぎると思い、寸法を無視してトレッドをやや狭める。それだけでは何なので、後期型オイルクーラーと増槽ラックを追加。ラックの寸法は甘い。タンクは写真から直径を割り出す。結構太い。一部の既存図は過少。



■ お絵かき

 暗褐色迷彩の次は、無塗装銀を二題。まず第73戦隊清水博少尉搭乗の第二次増加試作機、製造番号491。昭和19年11月所沢で撮影の写真で有名だ。同隊は12月にフィリピンに進出する。ラダー上部の弦長が長く角ばっているのが本機の特徴。脚引込リンク部はドアになっているように見える。増槽ラックは胴体中央。そのドアのサイズ、増槽ラックの形状は甘い。機番は赤の可能性大だけど、何となく昔の刷り込みで黒にする(後日、赤にして差し替え)。アンテナ柱は時期からして赤褐色かな。左翼付け根には滑り止めの黒塗装あり。本機は昭和19年7月の生産で、この頃には中島機のコクピットは灰緑色で塗装されていた。イラストは日本機の白っぽく艶のない銀肌を狙うけど、あまり成功してないか。


 続いては昭和20年春から夏の満州における第104戦隊の乙型、製造番号不詳。オイルクーラーは大型。スピナ、翼端の赤は通説に従う。後期生産型の無塗装機は、本来黄緑七号で迷彩されるところ、前線から至急の要請で迷彩前に引き渡された。とのことでアンテナ柱は黄緑七号、胴体給油口は黄色(部品段階で黄色に塗られたと妄想)、本来は迷彩後に記入と考えられる警戒塗装は赤としてみる。アンチグレアの黒塗装範囲が狭いのもこの時期の特徴。上記経緯から、コクピット内は黄緑七号となる。本機は胴体に「肇」の字が記入されていたとか。本機の写真は終戦後内地に帰還した後のもの。



■ 続、細部 2/10更新

   カウルフラップの縁を薄く削ってカウルを接着。さらにオイルクーラーも接着し、引き続き細部を進める。以下画像で。



シートは0.3mmプラバン細工。もっともTDのレジンパーツのように背当てがつくのが正解かもしれない。

無塗装のシート、キャンバスのベルトは推測。正解ご存知の方はぜひお知らせ願う。操縦桿のグリップは木製のようだ。

着陸灯は、ランナーの裏にポンチで抜いたアルミ板をクリアー塗料で接着し、断面をグレイで塗って翼に接着。

この方式、ヒートプレスなしでもキラリと光るライトを再現できる。1/72の小さなライトにはいいかも。

ここらで一旦サフを吹き様子を見る。案の定、不具合が見つかり、ちまちま補修していく。

スリットは、1つずつナイフで彫ったらガタガタ。一旦プラバンで埋め、エッチングソーで連続した溝を掘り、間仕切りを入れる。



■ 図面修正

 上下面図をver.2対応に修正。風防位置を変更した他、渡部氏実測の主翼リブ間距離を反映して主翼ステーションを微修正(情報提供感謝)。ただし実測値と全く同じではない。理由は、それだと機銃付近の辻褄が合わなくなるから。機銃位置を取説記載値(sta2000)として近傍のリブ位置を固定。実測値は胴体同様にリベット中心で測ったものと考え、それに合うように全体のリブ位置を調整する。

上面図  下面図


■ 続、キャノピ 2/17更新

 当機、風防と後方固定窓の下辺窓枠は胴体と滑らかにつながる⇒パテ作業が必要⇒塗装前にキャノピ接着⇒窓内側の汚れリスク&照準器も作らなきゃ、で一生懸命穴を塞いだりしてたんだけど、やってみると案外簡単に風防とスライドフードが切り離せる。これで問題解決。照準器先送り。キャノピ開状態にも出来るけど、フチが厚いから閉デフォで。十分に胴体と摺り合せてから前後に切断するのがミソ。でないと閉めた時にぴったり合わないぞ。磨き、スジボリも切断前の方が楽。



前々回より型をさらに2回ほど微修正して最終形。スジボリは例によりダブル針&エッチングソーで。

エッチングソーで慎重に切り離す。先にスジボリを深く入れておくと脱線しない。風防、後方固定窓を接着し黒サフ、パテ盛り。

ルータで綿棒回してコンパウンド磨き。内側は接着前に磨いてある。スライドフード下辺の折り返しも彫刻。よく見えないが。

コクピットの縁にはプラバンでガイドを取り付ける。

各所の突起類も接着。

タブは接着面を斜めに削って強度確保。


 塗装前の工作はほぼ完了。残すは、たまぐりファスナとインレタのリブテープのみ。このまま一気に塗装へなだれ込む。


■ お絵かき

 迷彩バリエーションを三題。まず、昭和19年頃の神奈川県中津(相模)飛行場における第1練成飛行隊所属の前期生産型。同隊は、本来訓練飛行隊であるが、戦局の悪化により戦闘任務を与えられ関東の防空の一翼を担った。実機右舷後方からの写真が新版世傑にある。主翼の細線は黄色を確認。ハゲチョロはフィクション。下面の無塗装は確信なし。下面日の丸には白帯がついた可能性がある。同隊の暗緑色機で下面を灰緑色塗装+下面のみ白帯という例もあるようだ。

 暗緑色迷彩機は全てが初期生産型であり、胴体中央の増槽ラックが特徴。無塗装銀で工場完成して軍納入後に塗装(おそらく現地部隊にて)された。色調は、オリジナルカラー写真から判断して、茶色がかった「いわゆる陸軍機濃緑色」ではなく、海軍と同じ青味が強い暗緑色。前にも書いたけど、陸軍機濃緑色とか川崎系濃緑色って、暗緑色と黄緑七号の印象が記憶の中で混ざっているのだと思う。


 続いて、明野教導飛行師団の増加試作機。集合排気管用のカウルが残っている。増槽ラックはない模様。左舷胴体前半の写真しかなく後半はマーキングを含めて空想の世界。機番が記入されてるかも。こういう確度の低い塗装は、模型にするには躊躇があるけど、イラストなら気楽に楽しめるね。描画テク的にはスプレーガンによる斑迷彩が難関。いも、きゅうり、ひょうたん、カモメ、ヘビ、などの描画オブジェクトを幾つか用意し、向き大きさを変えて配置。ぼかして不透明度を下げて重ねると、まあなんとかそれらしくなる・・かなあ。


 最後は紺色の第102戦隊第3中隊機。考証は学研本を参考にする。いつだったか、静岡HSで「九州で紺色の疾風を見た」と年配の方から聞いたのを思い出す(鐘馗製作記その3参照)。紺色の羽布が現存しており、色調はそれを参考とする。暗褐色の上からわざわざ紺を塗るよりは、無塗装機に塗る方が自然かなと考え、初期生産型と妄想。もっとも同隊に初期生産型が配備された可能性があるかどうかは知らない。


 ところで、今月号のスケビにある飛燕復元のインタビュー記事は大変興味深い。当時は、現在のような鮮やかな赤や白の顔料がなく、くすんだ色だったらしい、とのこと。なるほど。


■ たまぐり〜インレタ 2/27更新

 塗装に向けてのあれこれ。ファスナをたまぐり。カウルは#2、機銃パネルは#1、尾翼フィレットや小アクセスパネルは#0で。あれ、キャノピ頂部のフレームのスジボリが曲がっているぞ。じくじょ〜。削って彫り直す。

 インレタは、今回の予定マーキングの都合で白に統一したいところ、白は下地なしでリブテープには薄くて不向き。プロペラ端なども含めて別に黄色を作成し、そこにリブテープを入れる。貧乏性なので、製作中および今後製作予定(願望含む)を10機分ほど作っておく。



ファスナ終了。キャノピのスジボリはまず中央に位置決め用テープ。次に両脇にガイド用テープを貼り、中央をはがしてダブル針。

サフを吹いて軽く研ぐ。直したつもりの不良個所がまたぞろ・・・

インレタを貼る。今回のリブテープは、マーキングの都合で黄色(T108)なのだ。

リブの幅は0.2mmとする。スピットVの経験を踏まえ、ヒンジ付近の金属部分もインレタにする。



■ お持ち帰りコーナー

 今回作成のリブテープ用svgファイルをご提供。さらに今回特別にP-40とP-51の1/72用リブテープもつけて、今ならセットでお値段なんと0円!(←某TVショッピングの声で) 

インレタ版下


■ プロペラ 

 並行して小物類も作っていく。キットのプロペラは悪くないけど、やや細い。旧MAによるとブレード最大幅は270mm。プラバン貼って増積しようかと思ったけど、面倒なのでジャンクボックスから少し大きめのペラを探す。選ぶはタミヤのモスキート。



図面を切り出して、ブレードに貼り、そのまま外形線を削り出す。これで形状ばっちり、形も揃う。さらにピッチと厚みを整える。

右、整形終了。左、キットパーツ。パッと見は悪くない。厚いのは削ればいいけど、前縁の湾曲を削って直すとますます細くなる。



■ 塗装 3/9更新

 マーキングは大方の予想どおり(?)11戦隊46号機。日の丸のサイズは実機写真から計算し、翼:白18.8mm赤16.0mm、胴体:白14.6mm赤12.5mmとする。72倍すれば、それぞれ1,350mm、1,150mm、1050mm、900mmとなる。記入位置は下図を参照されたし。学研本108頁にあるキ106の標識図から読める数値とは何故か違うけど、実機写真主義なのだ。フラップ上の歩行禁止線は機軸平行となる。一部の塗装図やインストは間違ってるので要注意。後縁の黄橙色が少々悩ましい。フラップ上の主翼後縁はわずかに内側に切り込まれ、フラップの上面が見える。そこが何色かが問題。そもそもフラップ上面全体が何色かも分からないし。一応黄橙色としておく。フラップ全体は暗褐色かなあ。


 イラスト描いて塗りのイメージは出来上がっている。あとはそのとおりに出来るかどうか。暗褐色はコクピットに使用した自作色に白を加えて明度を上げる。灰緑色は#128ビン生、日の丸は以前作った自作色(たぶん鐘馗)、黄橙色はガイア025橙黄色に赤微量、アンチグレアは白30%混の黒でかなり明るめ、下地の銀はリニューアル前の#8銀ビン生。

 今回はシリコンバリアの上塗りにラッカー塗料を使う。本番前に長谷川須比人君で確認。ラッカーだから剥がれにくい、ということは全くない。また、シリコン層はかなり薄くても大丈夫。マスキングテープはやはり危険。ラッカーの塗膜厚さで落ち味が微妙に異なり、薄い方が細かいタッチが可能。厚いと「べろっ」とむける感じ。いずれにしても、水性塗料よりラッカーの方が、仕上がり、落ち味、塗膜薄さとも優れる。

 シリコンの上にマスキングは不可だから、塗装の手順を工夫する。マーキング先塗りにしてマスクして銀→黒→マスクしてシリコン→灰緑色→暗褐色。アンチグレアと下面にはシリコン層なし。だって暗褐色にはテープ貼れないからねえ。尾翼の稲妻マークはロボで切りたいところだが、リブのインレタの上に糊の強いカッティングシートを貼りたくない。仕方なくタミヤのマスキングテープを手切りする。



須比人君で色調の確認は、毎作欠かせない工程。シーファ17と同時進行で、あしゅら男爵。

イラストデータのプリントアウトを下絵にしてマスキングテープを切る。紙の上にセロテープを貼っておくときれいに剥がせるよ。

サフの上にGX1クールホワイトを吹き、赤のためのマスクをした状態。

赤を吹いてマスクをはがす。これはこれで松本零士の漫画にありそうな。ビルマの白騎士、なんちて。

日の丸をマスク。寄り目にならないよう、先に白縁をマスク。

シリコンが不要な羽布部もマスクして黄橙色。デリケートなインレタ部には塗膜を重ねたくないので、この段階でマスクなのだ。

味方識別帯と歩行禁止ラインをマスク。こういう細線は難しいね。黄色はどうしても厚塗りになるので、突合せ塗装にしない。

下面含め全体に#8銀。クリアはなし。銀色の疾風も美しい。

アンチグレアとステップの暗灰色を吹いてマスク。このあとシリコンバリアを上側面のみ薄く吹き、さらに下面に灰緑色。

暗褐色が終了。グラデーションも少しつける。下面との境はペタリ君と紙の併用。フィレットや翼前縁には上面色が回り込む。

マスクをはがす。イラストのイメージとビミョーにずれてるな。暗褐色が暗く、赤と黄色が鮮やか過ぎなのかな。黄線が太いし。

白縁がないと赤も落ち着いた色調に見えるんだけどねえ。脚庫にはペタリ君を詰める。


 次は銀はがし。出来上がりのイメージ違いが、ウェザリングで修正できるといいなあ。


■ 春の訪れ 3/21更新

 ウチの三男坊に桜咲く。試験前夜から高熱が出て、当日朝は身体精神とも最悪コンディション。本人も周囲も諦めてたんだけど、なんとか滑り込みギリギリセーフ。これで心軽くモケーに打ち込めるぞ。


■ 銀はがし 

 ではお楽しみ銀はがし。その前にプロペラを接着、整形、塗装する。この灰緑色、シーファ17に塗ったダークスレートグレイそのまま。黄味の強い灰緑色にさらに同量のグレイというレシピ(#340フィールドグリーン、#333EDSG、#26ダックエッググリーン、白が40:45:5:10)がこの微妙な色合いを出し、さらなる調色の必要性を感じない。

 続いて銀はがし。まず胴体右舷を写真を見ながらピンセットの先などでカリカリ。垂直尾翼以外はそんなに剥がれていない。主翼は1/72にプリントした図面を手元に置いて、リベットラインを意識しながらカリカリ。アンチグレアとステップはシリコンなしだけど、ノミでカリカリすると剥がれてくれる。主翼を剥がし過ぎて、胴体とのバランスが悪くなる。フィクションで胴体にもう少し追加。全部を銀にするとウザくなる。中間のトーンとして、面相筆でニュートラルグレイの点描。

 ウォッシングはいつもの水ウェザマスで。リベットライン沿いに少し暗色を残す。これで日の丸のトーンが落ちることを期待したんだけど、不十分。マスキングして、シンナーしゃぶしゃぶのエクストラダークシーグレイを薄く被せる。尾翼のマークは違和感ないのでそのまま。シリコン上のテープは危険だから、白縁のみテープであとは紙でマスク。吹く方向に注意すれば何とかなる。こんどはトーン落ちすぎで(←よくやる失敗だよ)、ラプロス#6000で注意深く擦ってやると、ナカナカいい感じ(←怪我の功名だよ)。それにしても、この暗褐色の色調、見れば見るほどウ〇コのような・・・



プロペラブレードをスピナに接着。先端のフックは延ばしランナー。

途中省略して、銀はがし、フラットクリア&ラプロス研ぎ、スミイレ、日の丸色調補正終了。プロペラも塗装。

銀はがしクローズアップ。一部の銀で下の白が出てるな。タッチアップしておこう。右舷胴体は実機写真を概ね忠実に再現する。

翼は搭乗員や整備員が歩き回るから、胴体とは別の剥がれ方をするだろう、との想定。

インレタを貼る。ノルナは世傑などの写真に従う。燃料タンクキャップに問題が・・(後述)

プロペラにもインレタ。位置がビミョーにずれるのはインレタの宿命。気にしないことにしよう。


 写真の1146号機は、もっと退色風味で、もう少しウェザリングを追及したいところだ。さて、疾風銀はがしのコツ。全体に均等にするのではなく、「ここだっ」という部分を集中的にはがす。それ以外はトーンを合わせる程度。パネルライン沿いだけでなく、パネル中央部もはがすべし。どんな飛行機でも主翼付け根だけは盛大にはがれている。


■ 図面修正

 九州の匠から情報を頂く。大感謝。以前トミー(!!)1/32疾風を作ったとき、知覧まで取材に行かれたとか。大きな修正箇所は翼前縁タンク。給油口は円形(がびょーん)。また、リベットラインは3分割で横方向ラインはなし。また右舷機銃外側にはガンカメラのパネル&ブリスターあり。その他、見えてなかったリベットラインなどを追加。基本的アウトラインは変更なし。

 現存疾風は左右舷でパネルラインの異なる箇所が多い。主翼上面の他に、水平尾翼前縁、ラダー下部にもある。匠によれば、リベットの形の違いなどから、左舷はアメリカでのレストアによる追加で、右舷が一般的な疾風の姿と推測できる、とのこと。拙図ではこのレストア追加ライン(推測)を水色で示す。ラダー下部は73戦隊の初期量産型写真で右舷ラインなしが確認できる(←うわ、見落としてた)。
  • 主翼上面はリベットラインの追加修正多し。脚収容部上部、フラップ上部など。主翼端上面のリベットラインは後1/3程度のみ。水平尾翼端上下面も主翼と同じ処理。側面図の後部胴体ストリンガーのラインを微修正。その他リベットラインを追加、修正(ダブル⇒シングル、その逆)など。垂直尾翼端のリベットは右舷のみの可能性(知覧は左舷のみ)。現存機の水平尾翼に見られる桁リベットラインは右舷になく、レストア時に追加されたものと推測。

  • 下面図に200リットル統一型増槽と取付具を追加。ラックの取付位置は下面クローズアップ写真から割り出し、まずまずの精度。翼下面に描いた4つまたは3つのネジが振れ止め取付位置となる。タンク振れ止めは、後方の方が中央の丸棒が短く、タンクは機軸に対してマイナスの取付角となる。翼の吊り下げフックの後方にあるパイプが燃料管。タンクのディテールは世傑等の写真から。考証は甘い。

  • 手持ち写真では防火壁後方の機銃アクセスパネルのリベットラインが読めない。渡部氏の図面では3分割のライン(翼前縁タンクと類似)が入っている。実機を直接見ているはずなので、もしかして?? 拙図は写真に従い「なし」とする。

  • 翼下面主脚付け根後方のブリスター上にある円形アクセスパネルは、現存機では右舷にのみある。これがレストア時に新設されたものなのか、左舷が撤去か、オリジナルも右舷のみか、正解は不明。






■ 脚カバー 3/27更新

 ローテーションではシーファ登板なんだけど、図面訂正でまた疾風なのだ。モケーの方はあまり進まず、小間物作業中。



写真掲載忘れの機番インレタ。

キットの主脚カバーは車輪部がやや小さい。車輪カバーを接着して増積する。左は接着して不要部をカットしたところ。

カバー前端はフチをL字に折っている。増積を兼ねてプラバンを接着し、キットパーツは内側 から薄く削る。

車輪カバーは0.2mmプラバン細工。透明なのでちょっと見えづらいな。主脚カバーはサフを吹いて様子を見る。


 補足。脚カバー前端は2mm幅のプラバン帯を瞬間でしっかり接着し、削って所定の折り返し幅に仕上げる。車輪カバーはジャストサイズ+αの帯を流し込みで接着。翌日ペーパーで微調整。


■ 図面再修正

 九州の匠より追加情報。毎度恐縮至極。ただし、現存機にあるからといって、当時の疾風にあったかどうか不明なラインもあるので、そこは各自ご判断されたし。

側面図  正面図  上面図  下面図

  • カウル先端の水色点線は、写真で読めないけど類推で「あり」としたライン。

  • 後部胴体真下より1つ外のリベットラインはダブル。ただしどこまでダブルかは推測。また当該ストリンガーは#19フレームまでのように見える(写真不鮮明で確度低し)。

  • 後部胴体上部のストリンガー配置が大間違い。お詫びして訂正。

  • 統一型200リットルタンクは、学研隼本にサイズが記載されており、直径450mm、長さ1600mm。

  • 現存機の後部胴体下面中央にはパネルラインあり。ただし現存機だけかも。図面は一応ありにしておく。





 関連する画像も見て頂こう。まあナニがアレだが、明度調整など画像処理してるので・・・



主翼前縁タンクの給油口は円形。縦ダブルのリベットラインが味方識別塗装端から後方に向かって伸びている。

ご覧のとおり横には3分割。下側には前縁と平行方向のパネルライン、リベットラインがあるが、上面にはない模様。

もいっちょタンク。主桁より後ろのリブラインとタンクのリブラインはズレている。

カウル先端左舷横内側。写真横倒しだけど。シリンダーヘッドに結合される大リブとその間を補完する小リブ2本が基本構成か。



■ 脚など 4/11更新

 主脚を工作。キットの脚柱は太過ぎる。中心に刺した真鍮線を持ち手にして2/3くらいまで細く削る。以下画像で。



トルクリンクは0.5mmプラバン細工。彫刻刀で凹部を彫り穴あけ。ブレーキラインは0.3mm鉛線。脚カバー内側にもリブを追加。

#8銀で塗装して仮組み。オレオにはハセのミラーフィニッシュ。画像のタイヤは上下逆。キットのダボ穴が間違いだ。

タンク蓋を修正。タミヤパテで埋め、平丸刀で整形。周囲の塗装を残したいのでペーパーは使わない。

筆塗りでタッチアップ。シリコンバリアのため、修正作業が難しくなる。これは想定外だ。(←普通しないよ)

シートと操縦桿を取り付ける。真鍮線削り出しのアンテナ柱も接着。スライドフードは乗せてるだけ。

脚を接着して自立。尾脚はキット。残るは細部。機銃、照準器、ピトー管、燃料冷却器、航法灯・・ 脚カバーの警戒線と汚しも。


 補足。脚柱とカバー、タイヤの接着も微妙な調整が必要。正面から見て、カバーの前縁の湾曲がタイヤに少しかかるぐらいが正解。タイヤとカバーはわずかに後ろ広がりになるかな。さらに翼前縁カーブと格納時の脚柱前進角の影響で、カバー上部にもねじれが入る(キットは表現されている)。このため翼取付け部ではカバーはかなり後広がりになる。翼の脚収容部の外端が機軸平行でなく後広がりになっているのはこのため。


■ カウル内側

 追加画像も見て頂こう。見えない部分は類推してね。画像は左から、左舷横内側、右舷横内側、下やや右舷寄り。








■ 主翼の謎

 実は、作図していて主翼と胴体の取り合いが気になって仕方ないのだ。疾風の翼型は、世傑の解説によれば中心で中島NN-2、翼端で同NN-21とのこと。NN-21の形状を示す資料は手元にないが、NN-2に関しては、丸メカの九七戦に座標入り図面で示されている。それをプロットしたものが拙図における中心部仮想翼断面図で、下図では赤で示している。このNN-2翼型は、一般的な翼型(例えばP-40、スピットファイアなどのNACA2200シリーズ、下図では翼厚比を揃えて青で表示)と比べて、後半の下面垂れ下がりが大きい。そのため、主桁位置で高さを合わせて側面図に重ねると、実機の下面ライン(下図黒線)から大きく下にはみ出すのだ。実機の下面ラインは写真トレースから間違いない。そこで、その差が実機においてどう処理されているのかが、謎なのだ。





 ここはいくつかの説が考えられるが、胴体下面部分ではこの「出っ張り」部分が削られて(←模型的表現を使えば)、後部胴体にスムーズにつながるラインにされている、というのが一番素直かな。拙図もその解釈をしてきた。しかし、匠より「フラップ付近の翼後縁は僅かにカーブしている」との指摘をいただく。それが下画像だ。






 これを考慮した説の一つが下図である。向かって左側は従前解釈、右が新解釈だ。従前解釈でも胴体部では翼基準線が湾曲すると考えている。変曲点より外側では基準線は直線で、したがって翼外側線も直線である。新解釈は、翼外側線はそのままに、フラップ付近から翼型がNN-2から変化するとしたもの。





 これならば、一応翼後縁の湾曲は説明できる。翼型が変われば、出っ張りも小さくなるし。しかし、中心の翼型がNN-2から外れてしまう。なぜこういう翼型改変をするのか、合理的な理由が見出せない。また、『中心がNN-2』という文献の記述に合致しない。では、中心もNN-2となるよう、フラップ部から翼基準線を湾曲させたのだろうか。しかし、主桁上下フランジも基準線に合わせて湾曲することになり、このような製造が難しくなるだけの設計とする合理的な理由はやはり見出せない。実機写真でも桁が湾曲しているようには見えない。

 第3の説は、ねじり下げの付け方(=翼取付角の変化率)が中心から翼端に一様でなく、中心付近では小さい変化、外側で大きくなる、というものだ。これだと後縁の湾曲、主桁の直線、中心の翼型が一応合理的に説明できる。でもなぜ変化率を変えるのだろう。また、腹の出っ張りに対してはこの説だけでは説明できない。なお、翼取付位置が高いという説は、主桁下フランジにS字カーブが入ることになるから、不正解だろう。

 それとは別に、中心部NN-2という記述が事実と違うのかもしれない。あるいは丸メカのNN-2とされる翼型図が違っているのかもしれない。NACA2200のような翼型であれば、「出っ張り」もなく、変な翼型改変をせずとも胴体ラインにスムーズにつながる。この時代の飛行機の設計って、シンプルだと思う。シンプルな発想で翼を設計し(主翼は飛行機の性能の根源だから無意味な改変はしないはず)、そこに胴体を乗せてシンプルにつなぐ。その結果が最終的なアウトラインになるのだと。そう考えたとき、腹の出っ張りを削るというのは、シンプルな発想ではないのだ。

 後世の作図家はアウトラインから入るから発想が逆なんだよね。いずれにしても、現時点で謎は未解明。でも本気で解くには、実機の翼下面座標を測るしかないのだろうね。


■ 続、細部 4/24更新

 野馬に集中であまり進まず。さて、ホ5の砲口は段のついた独特の形状。工作に新兵器投入だ。ほらぶろわーず掲示板で知った精密チャック。2.35mmチャックに取り付けて使用する。ミツトモ製作所、商品コード29071、1900円。ハンズは品切れで取寄せる。皆買いに走ったか?

 記録写真の11戦隊機は、胴体のリベットライン沿いが、汚れか退色ムラかで格子状の暗部となっている。穂先の短い平筆にウェザマスを少量つけて格子を描く。やり過ぎたら濡れたティッシュで拭けばやり直しOK。調子に乗って翼にも施す。残るは照準器、アンテナ線、増槽ラックくらいか。



精密チャックに0.8mm真鍮パイプを咥え、平ヤスリの側面部を使って切削。

翼に接着。少し長い。後で直そう。脚出表示棒は0.3mm真鍮線。脚カバーの荷重表示線は細切りデカール。

ピトー管は0.6mm洋白線。これも精密チャックで先を削る。翼端灯はいつもようにクリアランナーを削る。

ウェザリングを追加。スライドフードは置いてるだけ。



■ 続、主翼の謎

 どうでもいい話をしつこく続ける。つらつら考えるに、やはり丸メカにある97戦とされる翼型と疾風の翼型は違う、と考えた方がスッキリする。その翼型の正確な形は知る由もないが、このあたりが多分正解に近いだろうと、前半は97戦の翼型、後半はNACA2200をつなぎ合わせたような翼型を想定する。まあ中島NN2(かなんか知らんが)の改良型というわけ。結果的に最大キャンバーが30%コード付近となり、NACA2300に近いものとなる。

 下面図添付の各断面における翼型図は、機体中心における想定翼型のキャンバー中心線(下画像の青線:翼上下面の中心をつないだ線)を描き、これが翼厚比によって変わらない(=青線が同じ)として描いている。これはNACA 4digitと同様の考え方。翼端の翼型は中心の翼型を縦に8/16.5縮小したものではない。この翼型でも、仮想翼型が胴体下側ラインから少々はみだす。そこは「削って」合せたのかな。削らずに済むような翼型だとあまりに不自然なのだ。側面図における翼型はこの削った線を描いている。


下の翼型図は、コードと取付角を考慮し、前縁で揃えたもの。中心部は両方を表示(削った線が青)。前回説明の非線形な取付角変化として、翼後縁ラインは湾曲させる。


 ということで、翼型をこれに変更。さらに、胴体側面形を見直し(ご指摘感謝)、11フレームあたりを若干下に膨らませる。また、前回更新のカウル内側の写真で左右を比べると、リブの密度が異なる。大リブの間には小リブ1本が本来の姿で、左舷はレストアにより余計なリブが追加されたと考えられる。以上、関連する側面図、断面図、正面図、下面図を修正して差し替える。イラストは未対応。


■ 静岡HS

 子供の文化祭と重なって、静岡HSは日曜のみ参加の方向で調整中。これが3年続くといやだなあ。


■ 最後の作業 5/8更新

 残る作業を片付ける。左舷脚カバーの分割線と荷重表示線が平行でないのが気になって直す。前者の角度が間違ってるのが原因で、ナイフ、エッチングソーで正しい角度に修正、筆塗りでタッチアップ。翼下増槽ラックも追加するが色が不明。とりあえず無塗装銀とする。 以下画像で。



照準器はプラ細工。1mmプラバンの上に小さな部品を乗せていき、最後に切り落とす。

車輪カバーの開閉リンクはプラバンと延ばしランナー。脚カバー分割線を修正。荷重表示線のデカールも貼り換える。

増槽振れ止めは増槽パーツを輪切りにして細く削り、端部に0.2mmの穴をあける。爆弾振れ止めは延ばしランナー細工。

端部のパーツは、直径0.2mmの伸ばしランナーに直径0.5mmの伸ばしランナーを薄切りにしたものを白フタで接着。



■ イラスト修正

 胴体形状やパネルライン等を修正、翼下増槽ラックを追加してイラストを差し替える。


■ 完成

 最後に極細テグスを黒く塗って取り付けたら完成だ。静岡HSでの展示に、キャノピ開位置にて木工ボンドで仮止めする。ちゃんとした写真は後ほど。「新解釈」疾風の姿は静岡にて確認されたし。











■ 完成写真 6/12更新

 疾風も撮影終了。キャノピ開状態で撮影してたら、インテイクの仕切りを忘れているのに気付いて、取り付ける。ついでにキャノピを閉めて撮影続行。つうことで開の画像には仕切りがない。閉の画像にはあるけど、角度のせいで見えない。←何が言いたい。

 さておき、新解釈図面を立体化するとどう見えるか、をアピールしたくて、いつもより画像を増量。1枚目は近くから(20cm)撮影したもので、当時の記録写真でもこのくらいの撮影距離のものは多い。機首の見え方をそれらと見比べて頂きたい。2枚目以降はズームにして引き気味(30cm)に撮影。斜め後ろのは、本機の記録写真に近いアングルだね。




























 これにて疾風の図面&製作記は終了。情報提供諸氏に改めて感謝申し上げる。図面はメーカー、出版含め誰でも無償で自由に使って結構である。どこかでピリッとしたキットを出してほしいなあ。1/72もそろそろリニューアルの頃合いだよね。

 さて、第二弾は鋭意準備中。あの中島機だ。近日公開、乞うご期待!




■ 参考文献

 参考文献リストは図面のページに置いておく。






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