カーチスP-36A(モノグラム 1:72)製作記

2008.5.30初出

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■ はじめに

 F-104の項で表明したとおり、次回作はタミヤの新作零戦52型と決めているが、発売まで手持ち無沙汰。つなぎに軽くナナニイでも、ということでP-35製作時から気になっていたライバル機カーチス・ホークの登場だ。実は、フライング・タイガースのヨンパチP-40Bを構想中なんだけど、その予行演習の意味もあったりして。

 さて、カーチスP-36、あるいはホークH-75、これって、ドイツ機野郎からは「何それ?」、逆にマイナー機フェチにはメジャーすぎて相手にされず、米機好きでも駄作機一家の御先祖様くらいの認識で、意外と穴かもよ。

 まあ、米陸大好き、隠れカーチス好き(当ページではSB2CヘルダイバーとP-40L、他にエレール1/72 SBCヘルダイバー(複葉)など過去に作ったり)の私の嗜好からして、わりと順当な選択だと思うんだけど。え? タミヤの小型車両? ハセが出来たところで満足しちゃったのでねえ〜。とりあえずお休みかなあ。


■ キット評

 キットには1977年モノグラムの刻印。購入は相当昔で、押し入れで熟成も十分。オールドカーチス30年もの、てなところ。最近店頭で見かけないけど、オクでは出回ってるのかな? むしろ今なら、スペシャルホビーの方が一般的か。

 このキット、全体が醸し出す雰囲気はすこぶる魅力的なのだが、長期熟成してきたのには理由がある。つまり、ストレート組みはちとツライ、さりとて手を入れてカッチリ仕上げるには、それなりの技術が要求されるというわけ。



キットパーツの全て。

胴体クローズアップ。モールドは凸で、一部に本家モノグラム浮きだしモールドが施される。

ペラや脚カバーなどの小物は意外と良好。カウリング先端パーツは誤って踏んづけたので、もげてしもた。

クリアパーツの透明度は抜群、形状はまずまずだけど、胴体と擦り合わせてキレイに接着するのは難しそう。ヒートプレスで自作しようか。

1977 MONOGRAMの刻印。

コクピットは伝説の「止まり木」方式。椅子があるだけ進化してるけど。


 こういうキットは、追加工作一切なしで、合わせ目だけ処理して綺麗に組み上げるというのが本来の姿かな。でもそれはそれで、難易度高いぞ。特にクリアパーツの処理がね。


■ 外形チェック

 などといいつつ、どんなキットでも切り刻まないと気が済まない変態工作マニアとしては、外形チェックは避けて通れない。まず胴体側面形はほぼ完璧。主翼の翼型や翼厚も大きな問題なし。一般的にプラモのヒコーキの垂直尾翼は厚すぎで、この傾向は簡易インジェクションに顕著だが、このキットの垂直尾翼は薄くて二重マル。

 一番気になるのは胴体幅というか、横方向のボリューム不足。カウルは明らかに横幅不足で、搭載エンジンであるP&W R-1830エンジンの幅17.0mm(1/72実寸)より狭い。だから、カウル開口部が縦に細長くなってしまって、顔の印象がちょいと違う。後部胴体は、ノギスを当てると胴体最大幅の寸法でそれほどの違いはないものの、ボリューム感、面のハリが不足で、薄っぺらくて貧相。この薄っぺら感は、多くのP-40Bのキットにも共通。困ったもんだ。


仮り組みしたところ。雰囲気はご覧のとおり良好。

胴体平面形は、全体的にやや細身。カウル直後から防火壁にかけての急激な絞り込みが表現されず。

コクピット後方の胴体が薄っぺらく平板な感じ。これがファストバックの峰の幅の狭さにも影響している。

カウルの幅が狭く、開口部が気持ち縦長なのが気になるかな。


■ 製作コンセプト 6/6追加

 今回のコンセプトは、キットを活かしつつ、胴体の平面形・断面形にちょこちょこっと手を加え、P-36らしさを味付けしたい。キャノピだけは木型作ってプラバン絞ろうか。

 小物は例のとおり使えるところからトレード。エンジン、コクピットにはレジンパーツを入手したが、ディティールが良すぎて全体の雰囲気に馴染まないかも。ハセガワAPシリーズのF4Fやドーントレスあたりが小物のトレードに有用なのだが、品薄で今や貴重品。バッファロー含め、早く再販してほしいな〜。モランソルニエ、スピットIX、マッキ202、ヤク3・・も忘れないでね〜。

 脱線するが、APシリーズって、模型のツボを押さえた、ホントいいキット達なのだよね。正確な外形、清潔なモールド、適切な小物、大胆な省略(←これ大事)・・。こういうキットが市場になくて、チューカ、トーオーあたりの糞キット(失礼)が蔓延し、皆が散財している。なんと嘆かわしい状況か。

 閑話休題。型式、塗装は、とりあえず米陸P-36Aのナチュラルメタルに三色ラダーのつもりだが、拝借した資料本のフランス三毛猫、フィン空にも心惹かれて・・・。


アイリスのP-40N用コクピットパーツ。上が前方となる。

クイックブーストのP&W R-1830エンジン。F4F用だけど、問題なし。


■ 胴体工作

 いよいよ工作開始。胴体は左右接着面にプラバンを挟んで幅を広げ、あとは削りで微調整する。後方から撮影した実機写真から、キャノピレールの幅を割り出すと、最後部で9.5mm。これが可動部キャノピ前端だと10.0mmくらい。これを胴体幅の1つの目安とする。平板な後部胴体には、若干パーツの曲げも加え、丸みをもたせる。


カウリングとラダーは早々に切り離してしまう。主翼下面パーツと一体となっている排気管カバーも切り取る。

間にプラバンを挟む。

後部胴体。

下面側にも。

 カウルは最大幅を1mm程度広げ、幅17.5mmにするが、キットはカウル後方の絞り込みが強すぎる。これじゃあ後列エンジンが入らないって。だから後ろを多めに広げてやる。その分、実機はカウル直後から防火壁の間で急激に絞られていて、隼や97式戦とよく似たライン(巷の隼の平面図は間違っているのが多いけど←それこそ後列エンジンが入らないって)。これを再現するため、胴体パーツの防火壁部分に切れ目を入れて、折り曲げる。


カウリングにはクサビ型にプラバンを挟む。

正面から見たところ。縦長イメージが改善されたかな。この後、開口部周囲にもプラバンをぐるっと接着する。

防火壁のところに切り込みを入れて曲げる。右側は加工前。

クサビ形のプラバンを挿入して接着。

 おそらくP-36って、その後の液冷エンジン換装を確信犯的に想定しているんだと思う。だから、防火壁以降の胴体幅は、液冷エンジンにぴったり。そこに無理矢理空冷エンジンを載せるので、防火壁前後で折れ曲がったアウトラインとなるのだ。


■ ヒートペン

 最近、ブラシ氏のブログ(以下続編@ABCD応用編EF)で知って、ずーっと気になっていたヒートペン。思ったより高価でなく、ついに購入。想定する使用目的は、太いスジボリを細くするための埋め戻し。さっそくマッチボックスの運河彫りキットでお試しする。目盛り200(度かな?)に設定し、竹槍形のペン先で、伸ばしランナーをスジボリに埋め込んでいく。埋めるのは簡単。

 しかし、その上からスジボリすると、埋めた部分がポロッと取れてしまう。おそらく、埋めたプラとベースのプラとが完全に溶けて一体化せず、境界面がウェルドと似た状態になっているのだろう。う〜ん、残念ながらスジボリ再生には不向きかなあ。埋めるだけならいいんだけど。まあでも、これで押入の奥にしまい込むのも勿体ない。他に上手い使い道があるハズだよな、きっと・・・。


商品外観。会社近くのジョーシンにて4,620円なり。

中身はこのとおり。この竹槍形ペン先の他、ニードル形、ナイフ形が付属し、ネジで交換できる。また各種別売りペン先もあり。


■ カウルフラップ

 キットのカウルフラップは、カウルとの段差が大きな凹となっている。切り取ってプラバンで新造か、埋めてツライチに削るかだけど・・・、そうだ、この凹をヒートペンで埋めてみよう。下地のプラと一体化させるには、温度が高い方がいいかな?と210度にセット。キットのランナーを埋め戻し材に使えば、材質も均一だ。

 竹槍形ペン先でランナーを少しずつ溶かしては(今度は伸ばしランナーにせずそのまま)凹を埋めていく。しかし、埋めるだけでなく少しでも一体化するようにと、しばらくペン先を当てて加熱し過ぎたのが悪かったようで、ベースのプラ全体が柔らかくなって、全体が歪んでしまう。


工作前の状態。写真ではよく分からないが、カウルフラップは段差が結構ある。

ヒートペンでプラ(溶かしランナー)を盛ったところ。一見いいんだけど、カウルフラップ部が前後方向に縮んで短くなっている。どうしよう。

今度は、主翼下面の薬莢排出穴を塞いでみる。これは問題なく穴埋め終了。

裏からも溶かしランナーを盛る。


■ ヒートペンの可能性

 このように、使い方に注意が必要だが(←私のやり方が悪いだけ?)、大きな凹みを埋めるのには相当有効。あるいは肉盛りして外形を修正、なんてのにもいいかな。切った貼った盛った削ったの武闘派ハード工作モデラーは、1本持ってると便利だろう。

 あとはフィギュアのポーズ変更にも使えそうだ(説明書にも書かれており、フォーク形の専用ペン先もある)。布のシワの表現や、プラバンなどにテクスチャーをつけるなど、ジオラマ派には、未知の可能性を秘めた道具。一方、パカッと組んでササッと色塗るだけの立体塗り絵派には無用の長物。


■ キットについての追加情報

 このモノグラムのキット 刻印は1977年だが実際はその10年程前から 発売されているとの情報をいただいた。昭和45年(70年)のモデルアート12月号に アオシマ・レベルと「ライバル登場」のコーナーで作り比べの記事があり、恐らく発売は68〜69年頃、青箱のパッケージで、ハセが100〜200円の頃に、確か700円位であったとのこと。なるほど、知らなかった〜。確かに「止まり木」だもんねえ。古いはずだよ。じゃ、1977って何なの?? ←新たなギモン。


■ 続、胴体組み立て 6/14追加

 まずは、カウルフラップの再生。結局、切り離して新造。プラバンのかわりに、余りキット(1/32 P-47)の翼パーツを切り取って使う。真っ白なプラバンは、形やキズが見えづらいのだ。いや、それを言うなら、キットの銀色プラは、内部の色が均一でなく、形状把握の難しいことこの上なし。


胴体と仮合わせして、大まかなアウトラインを削っていく。邪魔な機銃口などは削り飛ばす。

後ろ斜めから。P-36のカウルは、平面形では後ろすぼまりだが、側面形ではすぼまっていないので、形を決めるのが案外難しいぞ。


■ コクピット〜胴体接着

 とにかくヒコーキモデルの常として、コクピットを工作しないと、先に進めない。1/72だから無視してもいいんだけど、せっかくレジンパーツもあるし・・

 って、コクピットの高さが違うから、そのまま使えないじゃん(P-36≠P-40N)。 ということで、リブをでっち上げ、レジンパーツを切り刻んでは接着。ま、雰囲気重視でテキトーに。こういうのは割と好きなので苦にならない。計器板、床板などは、胴体接着後に下から取り付け可能だから後回し。


右側。リブは0.3mmプラバン細切り。キャノピ開閉ハンドル部はポンチでプラバンを切り抜く。

左側。スロットルと後方のトリム調整ダイヤルの基本的配置は、後のP-40Nまで同じだね。

側壁だけデッチ上げたら、すぐ胴体左右の接着。カウルとの幅を微調整するため、前端開口部に1.2mmプラバンをかませて胴体幅を保持する。

裏側。切った貼った曲げたの補強を兼ね、コクピット前後バルクヘッドを1.2mmプラバンで取り付け。


■ 続、ヒートペン情報

 前述ブラシ氏のブログで、追加情報。スジボリを埋める際には、あらかじめペン先でスジをなぞっておき、伸ばしランナーを少しずつ埋めていくとよい、とのこと。詳しくはこちら、およびこちら(←6/17追加)。


■ 主翼組み立て 6/23追加

 早く「士」の字にしたいから、次は主翼。キットでは穴が開いているだけの脚収容部をどうしようかな。裏面だから無視してもいいんだけど、コクピットも手作りしたので、ついでにこいつも手作りしようか。側壁の工作は、プラバンにピンバイスで開口して縁を整形してから四角形に切り出すとよい。

 主翼下面パーツと一体となった胴体前下部は、排気管フェアリングを切り取ったため欠けている。ここは芸がないけど積層プラバン接着で、やっつけ仕事。まあ、目立たない下面だし。胴体幅を広くしたため、胴体と主翼とが合わない。広げた分だけ主翼パーツの接合部を慎重に削り合わせる。


0.3mmプラバン箱組みで、デッチアップ。リブは伸ばしランナー。リブや穴の配置はフンイキ。

実機では主翼下面には丸い穴があくのみ。不要部をプラ材で塞ぐ。勢いで切り取った機首側胴体下部はプラバンで再生。

主翼下面パーツに収容部を接着。うん、ナカナカよい雰囲気じゃ。

内側はこのとおり。キットの上反角は不足気味。正しい角度(前縁で6度)を保持するためプラバンの桁を接着。


■ P-36のねじり下げ

 さて、P-36のねじり下げだが、改めてじっくり写真を見ると、どうもねじってないようだ。世傑などによれば、主翼迎え角は1度とのことだが、翼端での迎え角もそのくらいに見えるような・・・。以前作ったP-40Lでは、ちょっとねじったんだけど、これは間違いだったかな??(大汗) ということで、今回はねじり下げ「なし」で組み立てる。


念のため、内部にポリパテを挟んで上下パーツを接着。

接着後、ざっと削りだしたところ。プラ成形色のせいで、前縁などの形状が見づらい。(翼端部のヒケには黒瞬間を盛っている)


■ 翼型

 キットの翼型は、まあそこそこ雰囲気は悪くない。ノギスを当てれば最大厚さが少々過大な程度。気になるのは、下面側の湾曲がわずかに強すぎること。特に翼端側は上面が平らで下面が湾曲しているので、上下ひっくり返すとよいぐらいだ。ただし、作品では完全には修正せず、前縁の断面形をそれらしく整える程度で済ます。


■ エンジン 6/27追加

 結局、クイックブーストのレジンパーツを使う。エンジン部の直径は17mmで、実物の正確なスケールダウン。ということは、カウリングのプラパーツの厚みは考慮されてないわけで、必要なだけ削る。

 また、このレジンパーツはバルブ操作ロッドをモデラー各自が自作するようになっている。ロッドの基部は凹穴がモールドされているのでバイスで深くさらい、φ0.5mm真鍮線を1本ずつ接着していくが、どうも太すぎ。0.3mm洋白線に変更する。またプラグコード基部のリングもオミットされているので、0.5mm真鍮線を焼き鈍して曲げる。プラグコードは省略。ナナニイだし。


レジンパーツでオミットされている部分を金属線で追加。

カウルと仮組みするとこのとおりあまりよく見えない。じゃ、プラグコードは省略でもいいかな。


■ 胴体機銃

 胴体機銃フェアリングは、写真から直径を割り出すと2mm強。フェアリングの長さは7mm、左右の間隔は中心で6.5mm。タミヤの2.0mmプラ丸棒を使う。少々細めだが他になく、しょうがない。カウルのカーブに合わせて慎重に摺り合わせる。


機軸との平行を正確にするために、長いまま接着してから不要部をカット。長いと、削り合わせ作業の持ち手にもなる。

接着後に削る。いまいち出来に不満。気が向いたら直すけど、とりあえずこのまま行っちゃう。


■ 続、コクピット

 計器板をテキトースクラッチする。0.3mmプラバンに穴を開け、表面を整形して裏からプラバンを接着。全体をダークグレイで塗ってから計器の部分をケガキ針でカリカリとスクラッチ。最後にフューチャーをたらして出来上がり。ラダーペダルもプラバン、伸ばしランナーでテキトースクラッチ。


計器板をスクラッチ。まず穴を開ける。あとで写真と見比べると、大分違うけどまあいいや。

周囲を凸形に切り取る。ラダーペダルもスクラッチ。ペダルにはケガキ針で滑り止めを彫ってみたんだけど。


 その他のコクピット内部は基本的に暗めの銀、一部の機器類をダークグレイで塗り、コクピット床板を接着する。これ、実機では、左右合わせで作られた主翼上面がそのままコクピット床となるので、模型でも床面と翼上面の高さを合わせたいトコロ。


計器板、ラダーペダルを下から接着。次に床板を接着して、隙間を瞬間パテで埋める。

できあがり。資料-16の実機写真では、ペダルだけはジンクロイエローのように見えるので、そのように塗装。

側壁はこんな感じ。

アップで見せるほどのものではないなあ。。






工作は続く。



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