P-36 P-40シリーズ 図面

2016.12.13初出

製作のページ




完成写真





■ はじめに 

 アリソン野馬は絶賛停滞中。ぼやぼやしているうち、エア1/48新金型のP-40Bが発売になる。本格的製作は野馬の完成が見えてからだが、既に製作着手した方もいるだろうから、取り急ぎ図面(とキットレビュー)だけ掲載する。いやあ、早く野馬を作らないと・・・

 塗&マは、AVGフライングタイガースの機番68にするつもり。インアクション(新)などによれば、P-40〜は米陸軍向けの呼称で、H81A〜がAGV含む輸出版、うちRAF向けはトマホーク〜となる。P-40(注)=トマホーク I=H81-A1で翼機銃が片側1丁ずつ。同様に、P-40B=トマホーク IIA=H81-A2で翼機銃が片側2丁になる。また、P-40C=トマホーク IIB=H81-A3で、セルフシーリングタンクおよびドロップタンク装備可となったのがP-40Bとの違い。細部は相手先により違いがある。ピトー管は米軍が矢じり形に対し輸出型はクランク状、また左舷エルロンタブは米が可動、輸出型は固定、RAFはアンテナ柱あり、など細部に違いがある。

注:P-40はサフィックスなし。他モデルと区別するときはP-40-CUと呼称する場合もあり。CUはサブタイプ名ではなくP-47D-21-REなどの「RE」と同じく製造工場を表すもの。従ってP-40B-CU、P-40C-CUという表記もできる。また、P-40-CUのモデル名はH81、P-40Bは同様H-81Bであるが、実質的には上記のとおり。


■ P-40シリーズ、全長の謎(12/17 P-40Bの全長を訂正)

 例により、製作の前に図面を描く。が、全長が悩ましい。資料本にある全長データは、あてにならないことが多い。ワイルドキャットがそうだったよね(FM-2製作記参照)。当機もしかりで、資料によりバラバラ。ざっと一覧表にしてみる。右端の製造図ベース(FD)の値が、私が最も確からしいと思っている数値。恐ろしいのは公式マニュアル(EMI)でさえ違っていること(理由は後述)。


Total Length (inches)

D&S WA IA(1) IA(2) EMI FD
P-36 342 - - - - 346.12
P-40B/C 381 - 380.56 380 - 381.6
P-40D/E 374 380.5 380.72 374 380.75(*) 380.72
P-40F-1 380.72 - - - - 380.47
P-40F-5/L 399.72 - 401.72 400 - 400.47
P-40M/N 399.72 - 401.72 400 399.72 400.72

D&S : Details & Scales, WA : Walk Around, IA(1) : In Action 1026, IA(2) : In Action 1205, EMI : Erection And Maintenance Instructions, FD : Factory Drawings from AirCorps Library
(*) : P-40K




 では表右端の製造図ベースの数値、というか私が正しいと信じる数値の根拠。まず、最も確実なのが短胴型ウォーホークD/E型で、全体概要図、カウル組立図、胴体組立図などの数字がピタッと整合している。防火壁(=sta 0)からスピナ先端までが118-3/8"、防火壁からラダー後端までが262-11/32"で、合計380-23/32"≒380.72"≒9,670mmである。K型も、垂直安定板前方が増積されただけで全長は同じ。

 長胴型ウォーホークのM/N型は胴体組立図から短胴型よりジャスト20"延長されていることが確実(ラダーヒンジのsta値その他複数の図面による)。となると、全長は400-27/32"なのである。ところが、製造図の全体概要図には全長399-27/32"と誤記されていて、マニュアルはこれを単純に写したものと思われる。この図、胴体長など個々の長さとその合計が一致しないので、間違いは明らか。それにしても、D&Sなどの374"はかなりの誤差だけど、どっからこんな値が出てきたんだろう?

 次に、マーリンエンジン装備F/L型について。手元の製造図にはこれらの全体概要図は含まれていない。ただし、カウルの寸法入り図面はあり、これによるとD/E型のカウルより1/4"短いことがはっきり分かる。旧作L型製作記には同じと書いたけど間違いだったね。まあ1/48で0.2mm以下だから・・・むにゃむにゃ。スピナと防火壁以降の胴体長は同じだから、マーリン型の全長は短胴、長胴ともそれぞれ0.25"短いはずである。

 続いてP-36(あるいはH-75、いずれも同じ)。これは製造図に全体概要図があり、スピナ含みの全長が記載されている。ただし、現存機の側面写真と重ね合せると若干ズレている。まあ、スピナも全長に含まれるので、当機の場合はそれが原因かもしれない。防火壁以降の後部胴体については、寸法入り胴体構造図があり、P-40D/Eと同じ長さであることが確認できる。また、P-36とP-40Bの写真を重ねると防火壁以降のキャノピ、後部胴体はピッタリ重なるので、P-40Bの後部胴体長もP-40D/Eと同じとなる。

 最後にP-40Bの全長。実は"AirCorps Library.com"の製造図にはB/C型の図面は一切含まれていない。が、スピナ後端が-92-13/16"という情報があり、それに合わせるとスピナ先端は概ね-119.3"となる。また、複数の現存機体の遠方真横からの写真があり、防火壁から尾翼までを製造図の寸法にあわせると、防火壁からスピナ先端までは概ね119"となる。ということで、拙図においてはこの数値を採用する。防火壁以降の長さは262.34"で、これを足して全長381.6"となる。ちなみにD&Sやインアクションの数値も381"付近だ。(2020.12訂正)

 実は、P-36風防の製造図があり、風防先端および後端のsta値、胴体基準線からの高さが記載されている。ところが、これが上述の防火壁〜尾翼合わせの写真と整合しない。逆に、この風防位置が正しいものと仮定して写真を合わせると、P-40Bの全長は383"となり3"長くなる。防火壁合わせが正しいのは確か。でも、なぜ風防の数値が違っているのは謎。また風防前面傾斜角はこの製造図によると 37.5゚、ただしこれも写真と整合しない。


■ エアの全長

 さて、気になるエア48の全長。実は私はまだ入手できておらず、これは知人による検証。キット胴体パーツと拙図を重ねたところ、機首が1mm程度長い。残念。ま、切り刻んで詰めてやれば問題なかろう。




■ 側面図

 側面図を掲載。機首に関しては、基本的に写真のトレース。ただし、遠方真横からで条件がよいので精度は高い。12/17、全長とスラストライン他を見直してver.2.0とする。12/20、細部を修正・追加、解説も加えver.2.1とする(情報感謝)。2020/12、スピナ形状(先端を尖らせる)、垂直尾翼とフィレットとの境界ラインを修正して差し替え。


  • スラストラインの高さは、当初は写真読み取りで胴体基準線から2"上としていたが、1"上との情報があり、改めて写真と重ねるとそっちの方が整合がよい。ちなみにP-36は1.75"下、D型以降は3.078"上である(12/17訂正)。

  • 全長の決定過程は前述のとおり。側面形は実機写真のトレース。主尾翼部の黒太線はフィレット境を、赤細線は胴体中心の仮想翼型示す。

  • 翼型:NACA2215(胴体中心)、NACA2209(sta197)、コード:ルート108" 翼端46-5/8"(先端仮想)

  • 主翼取付角度:1゚、ねじり下げなし、上反角:6゚(前縁)、水平尾翼取付角:2゚

  • 主翼前縁位置:胴体基準線から21.5"下、防火壁(sta0)から9"前方(いずれも胴体中心)

  • 水平尾翼断面形は図面トレース。先端は尖っている。

  • スライドフードの側面窓は左右で異なる。左舷は緊急時には上ヒンジで開く。またスライドレールは、前半が水平、後半は後下がり。

  • 一部の現存機にあるD型以降と同じ形の方向舵タブ操作ロッドはレストアミス。

  • 左舷水平尾翼前縁下の丸パネルはB/Cにはない(B-E比較図参照)。レストア機にあるのはE型の尾部を流用したからかな?タブもEのがついてるし。




■ 写真との比較 12/19追加

 全長について、半信半疑の読者もあろうかと、実機写真と重ねてみる。写真はairliners.netから拝借。よく見るとズレてる箇所もあるな(汗)。まあ、そのいくつかは個体差ということで・・(機体によりラインは微妙に異なる。風防が他機より立っているのはレストアミスかな。また、若干遠近法の誤差もある)。重ねた図面は最新バージョンでないので要注意。




■ E型との比較 

 WEBサイトならではの楽しみ方として、BとEの図面を重ねてみよう。それぞれ単独で見ると、Bは胴体が高いため何となく短く見えるが、目の錯覚であることがわかる。また、案外と共通部分が多い。製造、補給の都合を考えると、変えなくて済む部分は変えないのが賢い方法である。後部胴体下半分と主翼の骨格はP-36からP-40Nまで同じ形。なお、E型の図面は、遠方真横の条件のよい実機写真のトレース。全長や各フレームなどは製造図データに合わせる。ただし細部の考証はやや甘なので注意されたし。また、側面図は最新ではない。




■ 断面図

 では断面図。ところで、模型の良し悪しを決定づけるのは、全長全幅といった数字より、断面形の再現性である、と私は思う。その再現性においては、比率(バランス)、角度、曲率、曲線と直線の区別、面の変化といった要素が重要。チューカ系によくある側面図と平面図を何も考えずに立体化したキットは、これらが全く考慮されてないから気持ち悪い形になる。一方でモノやエアはこういう部分の捉え方が上手なので、「似ている」「雰囲気がよい」となるのだ。


  • 製造図にP-36の防火壁の座標値があり、#1断面はこれに従う。P-40Bも主翼下部を除き同寸である。その最大幅は39.4"。防火壁以降の胴体幅はこの写真をベースに算出する。なお、E型以降の胴体防火壁最大幅は38.32"。主翼取付け部の幅はBとEとでは同じようである。防火壁の高さは、基準線から30.07"。

  • 胴体の各フレームは製造図のトレース。高さは側面図、幅は上述の胴体幅に合わせる。

  • エンジンカウルも含む胴体最大幅は、エンジン後端付近と推測。写真の印象であまり根拠はない。

  • カウルの断面形は写真からの推測。側面図、平面図と辻褄が合うように、またスピナ〜防火壁への面の流れ、エンジンやラジエータの位置・寸法を意識して作図する。

  • E断面のカウルフラップ基部は、P-40E以降と共通部品ではないかと推測。理由:ラジエータ、オイルクーラーが似てる(多分同じ)。

  • 胴体機銃フェアリングはやや逆「ハ」の字形になる。




■ 文字か形か

 愚考をひとつ。前項で「数字より、断面形の再現性」と書いた。もう少し考えを進めてみよう。数字は文字情報、断面形はイメージ情報ともいえる。あるいはテキストデータと画像データ、耳からと目から、という対比もあるかな。で、文字情報は観念的、抽象的、心理的な要素が強く、図形情報はより実体的、具体的である。プラモの全長なんて少々違っていても、実のところ見た目にはまず分からない。しかし、人は得てして「胴体が〇ミリ長い」などと聞くと、すごいダメキットに感じてしまう(←それこそ心理的に)。あるいは「某サイトに××が違うと書かれていた」なんてのも同類。まあ、世の中には気持ちが大事だという人も多いけど。

 といいつつ、自分は何が何ミリ違うと重箱の隅をつついいる。じゃあどうして?というと、ひとつは図面を描く以上、できるだけ正確にしたいから。拙図を基にキットを開発してほしいと願う身にとって、無責任ではいられない。書くと間違いが指摘され、それが正確度向上につながる。もうひとつは、細部の追及自体に「飛行機考古学」的な面白さがあること。製造図や写真を分析して実機の真の姿を解明し、図面として再現、同好の士と意見交換というのは、知的好奇心をそそる遊びなのだ。で、考古学上の発見があると、黙っていられない性分なんだろうな。♪俺の話を聞け〜ってか。普通の(まっとうなともいう)モデラーが模型作りを楽しむ分には意味のない情報だから、軽く聞き流してもらえれば幸い。

 つまるところ、文字情報(当頁を含め)に惑わされず、自分の目で判断されたし、といいたいわけ。それから、文字情報は間違ってることが多々あるので要注意。当頁でも訂正は日常茶飯事だし(陳謝)。文献やサイトの記述も鵜呑みは危ない(ついでにいうと図面もね。←文字じゃないけど)。写真は絶対嘘をつかない。だが、先入観で目が曇ってると真実は見えない。人間の目(というか脳)は見たいものが見えるようにできてるからねえ・・・(猛省)


■ 平面図 12/22追加


 怒涛の勢い?で上下面図。残るは正面図で、これも準備中。カウルの形状は写真からの推測。キャノピ幅は断面図から慎重に計算してるので、世間一般の図面よりは正確なはず。スライドフードは後ろの方が僅かに幅が狭い。高さは同じ。


  • 風防ガラス側面は平面で、やや後広がり。下端のラインが左右平行でなく「ハ」の字になっていることに注目。同じカーチス社のヘルダイヴァーや五式戦などと同じ発想だ。前面の湾曲部は円筒形で、どこで切っても同径の円となる。

  • 主翼は例により、主翼基準面に垂直に投影したものを水平面に投影したものとして図示(下図参照)。胴体付け根部分の辻褄が合わないのはテキトーに誤魔化すのも、いつものとおり。

  • ちなみに、各リブは主翼基準面に垂直、脚収容部のリブのみは地面に垂直(だから図面ではカーブしている)

  • 主翼スパン:447.5"、同コード:108"(機体中心)、46-5/8(翼端仮想)、前縁後退角:1゚18'、フラップ最大コード:1'9.125"、同スパン:20'4"、主翼機銃:機体中心から74.5"および83.75"

  • 主翼各桁はルートにおける翼断面図に桁位置が記入されており、これに合わせる。最前方の#1桁は防火壁の位置にあり、機軸に直行する。各ストリンガーの配置は製造図をベースに実機写真で補正。

  • 主翼端のカーブは3つの円の組み合わせ。水平尾翼、垂直尾翼も円の組み合わせ。これらの半径が製造図に記載されており、そのとおりに描く。

  • 下面図、エルロン前方の線がややこしいが、エルロンの前と両脇に隙間があり、リベットのあるパネルラインの直ぐ後方の線が隙間の前端を表す。まあ、実機写真を見てくだされ。

  • 水平尾翼最大コード:42.75"、同スパン:153.625"、垂直安定板オフセット:1.5゚左

  • 水平尾翼の位置は製造図における各図の整合がとれないため、拙図では一般図のエレベータヒンジ位置を基準とし、これにリブ断面図を合わせて、各桁の前後位置を決める。一番後ろの#4桁は機軸に直角と想定する。これは水平安定板後端部分にあるのではなく、その1つ前方のリベットライン位置にあることに注意。

  • 上記位置決めだと、水平尾翼の各桁と垂直尾翼の各桁とが合致する。構造力学的にみて合理的な設計となるので、まあそう大きく外してないだろう。水平安定板後端は僅かに後退角がつく模様。ヒンジラインは機軸直角。

  • 2020/12、スピナ形状が側面図に一致しないミスを修正、翼端のstaのミスを修正、水平尾翼ヒンジラインの補助線のミスを修正して差し替え。なお、他型に共通するものは合わせて修正(修正漏れご容赦)。




■ 正面図 12/28追加


 正面図を掲載。前から見た胴体は妙に上下に間延びして見えるけど、側面図、平面図、断面図との整合を確認しつつ線を決めているので、作れない図面にはなってないはず。実機の印象と異なるのは、遠近法のため。これにて一応P-40Bの図面を終了する。引き続き、P-36、P-40Fくらいは描くつもり。また、間違いは予告なく修正する場合があるので、プリントアウトを参照される際にはバージョンを確認願う。


  • トレッド:98.125"(タイヤサイズが異なるためP-36およびE型以降とは異なる)、脚柱中心間:83"(おそらく各型式不変)。製造図を見る限り、タイヤと脚柱は地面に垂直。

  • 一部のパネルラインは省略。主尾翼前縁の細線は最前端位置を示す(他機も同じ)。機銃はその線よりやや上に位置する。

  • スライドフード側面窓および後方固定窓の上方は湾曲している。下の方は平面。こういう所は模型でもきっちり押さえたい。

  • 主脚フェアリングはコンター入り製造図面があり、まあ雰囲気は再現。脚カバーはピアノヒンジ。そのためヒンジラインは一直線となる(先端付近はヒンジがなく曲線が入る)。

  • アンテナ線の張り方はバリエーションがある模様。図が正しい保証はない。

  • Bのプロペラ直径が不明。P-36は120"、N型は132"とのこと。図面は132"で描く。



 たぶん年内最後の更新かな。図面に没頭していて馬は停滞中。気持ちも薄れてきてヤバいぞ。といいつつ、お年玉企画に新規図面準備中だ。あの傑作日本戦闘機の真実の姿が明らかに!? 乞うご期待。


■ 下面図修正 1/9追加


 下面図の脚カバーフェアリングを修正し、ver.2.1とする。B/C型とそれ以降で形が異なる。D&Sの写真はレストアミスか。上面図は、カウルのパネルラインを微修正。


■ 図面再修正 2/2追加

 再び図面修正。主な修正箇所はラジエータカウルで、レストア機は5時7時に2本のパネルラインがあるが、WW2当時の機体は6時に1本。資料を再確認すると1本はフライングタイガース機含めて確認できるが2本は見当たらない。ではなぜレストア機がみな2本なのか? ある時期から2本に変更されたと考えるのが自然だが、記録写真では確認できない。謎だ。その他、主脚収容部を見直し、脚カバーの形状、上面リベットラインを修正する。右舷後方窓の内側にある丸いのはブザーでガラスの穴はない。ちなみに左舷はオイルとガソリンの注入口。以上、拙図に騙されて作ってしまった方には大変申し訳ない。お詫びして訂正。


■ キット検証

 先頃、ようやくエア新キットを入手。側面形状は拙図と重ねれば直ぐ分かるとおり、カウルが1mm長く、胴体後端(垂直安定板)が1mm短い。また、ラジエータ部が高さ、幅ともに大きい。カウル後端あたりで機首を詰めて、胴体後端を1mm延長するのはそれほど大仕事ではないだろう。大事なのは、機首を短縮する場合は必ずラジエータカウルを小さくすること。そうしないと見た目のバランスが悪くなる。その断面形はキットのような「U」でなく「V」に近い。これは中に入るアンコの形を考えれば理解できよう。また、胴体後端延長に伴い、ラダー長も要確認だ。

 その他、パネルラインのミスが少々。図面では分かりづらいところは、カウルの排気管が通るスリットで、キットは横から見て水平に一直線だが、実機は斜め上から見て一直線で、真横からだと前方がやや垂れ下がる。小さいことだが機首の印象に与える影響は大きい。



ラジエータカウルは3つのドラムとの隙間が最小になるような形をしている。

D型以降(F/Lは除く)もドラムが同じだから、基本的に同じ断面形。カウルフラップも共通と思ってるのだが・・・(画像は反転)



■ P-36図面 2/2追加

 予定どおりP-36図面に進む。防火壁以降と翼の基本的構造はP-40Bと同じ。ただしあちこち違うところがあって、全部把握できてるか自信ない。お気づきの点はお知らせ願う。さて、P-36というのは米陸での呼称。輸出版は呼称が異なり、またサイクロンエンジン搭載型もありでややこしい。量産型をメインに整理しよう。抜け番は試作または極少数生産機。出典はD&S、ただしH75A-1およびA-2に関してはカーチス社仏軍向けマニュアル(※)。

P&WツインワスプR-1830装備型
P-36A 胴体機銃 .50×1、.30×1、翼機銃なし 178機生産(以下同)
P-36C 翼に.30×2が追加となる 32機
P-36G 翼が.30×4となる ノルウェイ発注H75A-8を米陸で受領 30機
H75A-1 胴体7.5mm×2、翼7.5mm×2 仏発注、降伏後はRAFが受領、モホークI 100機
H75A-2 胴体7.5mm×2、翼7.5mm×2 仏発注、降伏後はRAFが受領、モホークIIと呼称 100機、48機目以降は翼機銃4丁
H75A-3 胴体7.5mm×2、翼7.5mm×4 仏発注、降伏後はRAFが受領、モホークIII 135機
H75A-6 胴体7.5mm×2、翼7.5mm×4 ノルウェイ発注 独捕獲機のうち8機はフィンランドに供与 24機

ライトサイクロンR-1820装備型
H75A-4 胴体7.5mm×2、翼7.5mm×4 仏発注、降伏後はRAFが受領、モホークIV 284機
H75A-7 胴体7.5mm×2、翼7.5mm×4 蘭発注、降伏により蘭領東インドへ 20機
H75A-9 胴体7.5mm×2、翼7.5mm×4 モホークIVとしてインドへ 10機

(注)D&SではH75A-6と7は武装不明と記載。記録写真よりいずれも翼4と判断される。
(※)https://web.archive.org/web/20150924021036/http://www.gc2-4.com/NSGAcouv.htm
https://web.archive.org/web/20150924021030/http://www.gc2-4.com/NMACcouv.htm



 補足する。米陸に最初に配備されたP-36Aは、胴体機銃が.50(右舷)と.30(左舷)。翼機銃なし。真珠湾攻撃に遭遇したのはこのタイプ。エンジン換装されたB型は1機のみ。続くP-36Cは、翼に.30×2を追加。A、C型とも排気管フェアリングなしの機体が見られる。単に外しただけか、Cの生産途中から導入でAにはレトロフィットなのか不明。スピナは凸形。P-36Gはノルウェイ発注H75A-8で、同国降伏により米陸に引き取られ訓練部隊に送られた。輸出型H75Aの特徴である胴体機銃パネルのスリットあり。米陸使用機は以上のみ。

 輸出型は胴体機銃スリットの他、ピトー管、アンテナ関係、照準器などの装備品が米陸型と違う。フランス発注は、H75A-1、-2、-3がP&Wツインワスプ、-4がライトサイクロンで、それぞれ翼武装が異なる。-1、-2は胴体機銃スリットなし。仏降伏によりその一部はRAFに渡り、モホークと名付けられた。スピナは凸形が多数で、後期?には砲弾形もあり。H75A-5以降はノルウェイ、オランダ、イランの発注で数も少ない。-6の一部がフィンランドに渡った。フィン機にサイクロン型もあるが、来歴不明。

 では側面図。条件の非常に良い現存実機写真があり、側面形はバッチリ。またエンジンカウルとアクセサリカウルは製造図があり、それも参考にする。カウル開口部奥上部の正面から見えないところに、過給機エアインテイクがある。カウル下面のドアはオイルクーラーの補助インテイク。

  • 製造図によれば、カウル先端(機銃フェアリングを除く)から防火壁まで29-7/16"、ラダー後端までは291.78"=7,410mmとなる。スラストラインは胴体基準線より1.75"下。

  • 風防と胴体の分割ラインは、P-40Bのように複雑でなくシンプル。ちなみにP-40Bでは、小アクセスハッチの後方で胴体外板が上にめくれたようになる。スライドフードも、中央縦フレームの位置や、コーナー隅切りなど細部が異なる。

  • 前後タイヤはP-40より小さく、前27"、後10.5"。前後脚カバー、そのフェアリングも異なる。プロペラ直径は120"。

  • 輸出型H75Aの胴体機銃パネルのスリットは、前3本は前向きに開口。また、Aカウル右舷に小四角パネルが見られる(全ての型にあるか不明)。ただしH75A-2はスリットとブリスターなし。仏軍機は背の高いアンテナ柱を装備する。この柱にはワイヤは張られてなく、ワイヤは米陸型と同じ張り方。

  • とあるフォーラム(URLは下記)によると、後期生産型では、後部胴体のパネルラインがP-40に似た分割となる。「後期」がいつからなのか、詳細不明。ちなみに、D&Sのクローズアップ写真はこのタイプ。

    http://www.britmodeller.com/forums/index.php?/profile/4702-hbbates/content/&type=forums_topic_post&



 続いて上面図。Aカウルの幅は製造図座標から起こすと、なぜか写真と異なる。図は写真に合わせる。私は現物優先主義者なのだ。

  • 胴体機銃パネルは、P-40Bと同様な3分割か不明。図は分割なしとしている。情報求む。

  • 主翼ストリンガーの本数は、P-40Bより若干少ない。H75A-3、-6の7.5mm×4機銃パネル関係はP-40B/Cと同じ。

  • アンテナ線の胴体引き込み位置はP-40Bと異なる。



 補足。エンジンカウル平面形は、ツインワスプR-1830(直径1,220mm)から必要なクリアランスをとるように作図する(下左画像)。製造図のAカウル座標値を再現するとエンジンカウルからのラインがスムーズに流れない。

 また、水平安定板後端ラインが異なる(下右画像)。ヒンジ位置は同じで、エレベータが前方に広い。ラダー同様にヒンジを支持する湾曲ステーが2つある(上面のみ)。



実機写真からするとラインはこんなもんか。けっこうギリである。

エレベータ前縁ラインとともにフィレット後端の形も異なる(アタリマエ)。マスバランスより外側の分割ラインは同じ。


次回、断面図、正面図、下面図の予定。サイクロン型は予定なし。悪しからず。


■ 下面図、断面図、正面図 2/24追加

 残るP-36図面を一挙掲載。側面図も脚フェアリングなどを描き加える。引き続きマーリンホークF/L型図面作成の予定。

  • 下面図、主翼外側のパッチは小爆弾×5の懸架ラックのカバー。

  • 断面図、防火壁(#1)の形状、寸法は製造図にあるAカウル座標値に合わせる。当然ながら下部フェアリングを除きP-40Bと同じ形。防火壁以降の胴体断面形は基本的にP-40B/Cと同じ。排気管フェアリング、胴体下面フェアリング、尾脚カバー膨らみの断面形は甘い。

  • 正背面図の排気管フェアリングの形状は甘い。脚カバー&フェアリングは製造図あり。ただし現存機写真と整合しない。図面は写真に合わせる。タイヤが小さくなり、トレッドはP-40より狭い。脚の主翼取付位置は変わらず。車輪引込穴は小さい。

  • 主翼機銃が片側一丁ずつ装備の場合、銃身は主翼先端線よりやや下に位置する。一方、片側二丁ずつの場合は先端線よりやや上。これは、銃弾補給方法の違い(1丁は上から、二丁は下から)によるものか?




■ P-40B/Cトリビア

 つい最近気づいたこと2、3。アリソンエンジンって6つの排気穴が等間隔ではなく、第3と第4の間が少し広い。そう思って実機写真を見ると、排気管の間隔が違う。B型だけでなく、E型以降も同様。一方、マーリンは等間隔で6-1/16@5となる。製造図の排気管フェアリングを見ていて気付いた次第。ま、実寸で16mmほど、1/48だと0.3mmだから、ゴミみたいなもんだ。

 それと、RAFトマホーク、フライングタイガースH81A-2の左舷エルロンタブは固定式。一方で米陸型は可動式となっている。既存図面はみな可動式になってるね。C型後期には尾脚が長くなり、脚カバーに切り欠きがある。しかし、こんなことに気づくなんて、かなり病気が悪化しているようだ。



アリソンの排気管は等間隔ではない。

輸出型H81Aのエルロンタブは左右とも固定式。


 P-40B側面図の排気管を修正。平面図は後ほど。あ、野馬の図面も直さなくちゃいけないのか。ううう・・・


■ サイクロン・ホーク図面 3/5追加

 サイクロン搭載型の図面は予定なしだったんだけど、さる方面からのご要望により描くことにする。とはいえ、予定なしだったのには理由があって、図面を描くに足る十分な資料がない。側面形はまずまずの空撮写真があるものの、平面形、細部(とくに下部)の解る写真がなく、図面というよりは想像図に近い。下面は不明部分が多く、想像にも限界があるので図面なし。下手に想像図を描くと誤解を生じるしね。

 側面空撮写真は遠近法の誤差を補正してトレースしており、側面図のアウトラインは、そう外してないはず。多くの既存図面のカウルは角張り過ぎだね。あれじゃあ、ポリカルポフI-16だっつうの。

  • 側面写真からエンジン位置を割り出す。スラストラインはP-36よりさらに下がり、胴体基準線から2"下となる。

  • 機銃位置は、P-40Bに揃える。なお、P-36は機銃搭載位置は同じと考えられるが銃口はやや上で、これは射線が上向きなのだろう。フェアリングの中心は射線水平になっている。

  • パネルライン、排気管、ファスナは写真から読めたものだけ。翼下部の水色線は、なんとなくそう見える写真がある。防火壁以降はP-36のまま。アクセサリカウル下方の斜めラインは、文献-39のパネルを外した写真のファスナ穴から推測。左右排気管の間隔はP-36と同じかやや広いくらい。

  • 平面図、断面図の線は、「オレが設計者ならこう引く」という程度の根拠。エンジン前後位置はFM-2のエンジンとプロペラの位置関係から推測。エンジンより前方のカーブは側面図に揃える。アクセサリカウル頂部(11時から1時まで)は、エンジンカウルの緩いカーブを保ったまま高原状に機銃アクセスパネルに至る。11時、1時は小さなRで折れ曲がるが、前にいくに従いRが緩くなる。2時、10時方向は、若干削ぎ気味の線にしてみる。無駄に膨らませると前下方視界を妨げるだろうとの推測。

  • カウリング開口部は、プロペラ軸に対して上下非対称で下が長いように見える。なお、エンジン上方、下方にはP-36と同様それぞれ過給機とオイルクーラーにつながるエアダクトがあり、そのためエンジンカウルは縦長断面。カウル正面からダクト入口は見えない。



 アウトライン推測の根拠も見ていただこう。



絞り込みのラインはP-36に似せて描く。当該エンジン、最大直径はシリンダーの前寄りで後半は絞られている。

ライトサイクロンR-1820エンジンの直径は1,378mm。上下にはエアダクトの空間がある。機銃はシリンダーの間を通る(はず)。

側面形でツインワスプ型と比較。ワイルドキャットほどはエンジン違いによる全長の差がない。

さらに平面形。アクセサリカウルもP-36より広角にしないとスムーズにカウルにつながらない。


 ご参考まで、ベースの補正済み側面写真も載せちゃおう。出典は文献-39。主翼下方のシルエットの段差は、脚フェアリングなので、早とちりせぬよう(←したのか?)。さらにFM-2とも重ねてみる。こういうのは、図面ならではの楽しみ。同じエンジンでもカウルのタッパはかなり違う。







■ 新資料とB/C図面訂正 3/16追加

 追加資料情報および図面のミスの指摘を頂く。提供諸氏に感謝。P-40B/C図面にこれらを追記/訂正して差し替える。資料はWarships Publishing社のAircraft PictorialシリーズのP-40-CU、B、Cモノグラフ。このシリーズ、他にF4Uコルセア初期やF4Fワイルドキャット、キングフィッシャー、ヴィンディケーターなどちょっとマニアックな米軍機が並ぶ。写真は鮮明で初見のものが多数(これだけ参考文献を所有しててもである)、内容は非常にマニアックで細部や型式毎の違いなどが詳細に解説されている。D&Sや歩回本と異なり、現存機ではない当時のオリジナルの細部写真が多数というのも価値が高い。コアなファンには絶対的にお奨めだ。

側面図上面図下面図正面図

  • 上記文献によると、P-40-CU、P-40B/Cの主翼下面エルロン前方にある細長い四角は、パラシュート付き照明弾の格納部とのこと。P-36/H-75Aの主翼下面にある似たような長方形部分(位置は若干異なる)には、小型爆弾ラックが装着される。もしかすると照明弾と小型爆弾ラックは交換可能なのかも?? さらなる情報求む。

  • 左翼下面フラップ前方にあるのは温度プローブで、図面では小さくて分かりづらいが前側はコイル、長方形3つは固定バンド、後側は細いパイプで前後端が翼内に入る。詳細な写真は前述Aircraft Pictorialにあり。

  • 尾脚は3種類が確認できる。P-40-CUはP-36と同じ小直径(10.5")の尾輪で、さらに脚柱はP-36よりも短い。引込部のバルジがないからか。次に、尾輪直径が大きくなり(写真読み取りだと12"くらい)また脚柱も少し長くなる。P-40B/Cの多くがこれ。

  • さらに、C型の生産後期には延長尾脚が導入される。これに伴い、胴体開口部が後方に広がり、カバーにはタイヤをクリアする切欠きが設けられた。ただし文献にある脚柱6"延長は写真と整合せず、4〜4.5"程度と見られる。尾輪直径は2つめと同じ。なお、E型以降も脚柱は長いが、開口部延長とカバー切欠きはない。外から見えない引込機構部の改設計だろうか?

  • 風防内部の防弾ガラスは一部の機体には装着されていない。その前方にある小四角形のガラスは下置き式照準器のリフレクタで、照準器本体は計器盤下方に置かれる。防弾ガラスはやや右下がりに傾いて取り付けられる。これはリフレクタの投影像と重ならないための措置と思われる。これ、模型で忠実に再現すると「なんだ下手くそだな〜」なんて内心思われちゃうんだろな。

  • この防弾ガラスは、風防内側にガラス沿いに渡された2本細いロッドに金具を介して吊り下げられる。また、風防後端フレーム内側上部には水平にロッドが渡されている。これは側面図、上面図では見えない位置で、正面図に記載する。なお、従前から描いている風防ガラス面内の線は、ガラスの継ぎ目である。

  • -CU型は、胴体燃料タンク、オイルタンク給油口が異なる。また、胴体中央部左右の編隊灯がない。B型以降は給油キャップが左舷後部窓の内側に移され、ガラスに丸穴があく。でも、何で-CUは右舷にもあるんだろう? 一部の-CUは胴体機銃ブラストチューブが長い。

  • C型のタンク/爆弾ラックの図も追加する。振れ止めは横から見ると翼面に垂直のように見える。また振れ止めの角度を調節する細いロッドは、フェアリングを突き抜けて翼下面の機体中心線上に取り付けられる。つまり、フェアリングを外して前後方向から見ると振れ止め本体とロッドはきれいなW字形となるわけ。下面図には、振れ止め取り付け基部とフェアリングの穴のみ図示。

  • 垂直尾翼の航法灯は左右で前後位置が若干ズレる。これはP-36からP-40Nに至るまで同じアレンジ。

  • エンジンカウルの縦のリベットラインの配置は推測が入っているので悪しからず。






正面図の拡大。防弾ガラスは金属製のフレームに収まる。吊り下げ金具は煩雑になるので省略。


 次回、固定脚ホーク図面の予定。いや図面でなくて想像図か・・・ マーリンホークはしばらくお待ちを。


■ 固定脚ホーク図面 4/3追加

 さすがにここまでは予定なしだったんだけど、別の方面からのご要望により描くことにする。図面を描くに足る十分な資料がなく脚まわりはほとんど想像図。側面形はやや距離が近いがまずまずの写真がある。正面からの写真がなく、脚の正面形や取付位置は想像の域を出ない。ま、斜めの写真で何となくそんな感じに見えるって程度。

 図面の前に、固定客もとい固定脚ホークの概要についておさらい。出典はD&S他。このうちMはよく分からない部分が多く、外形的には同じと思われるN、Oを図面化する。

・H75M 胴体.50×2、翼.30×4 中国発注 30機 中国で追加生産(途中挫折とか)
・H75N 胴体.50×2、翼.30×2 タイ発注 機数不明 翼下に23mm銃を懸架したものあり(この場合.30は撤去か?)
・H75O 胴体.50×2、翼.30×2 アルゼンチン発注、29機、当国で追加20機生産

その他、H75H、Qはいずれも2機のみ生産。Hは脚フェアリング形状が異なり、曲面風防。なお、H75Qを引込脚とする資料もある。

  • スラストラインは、H75引き込み脚タイプと異なり、胴体基準線より1"下となる。

  • エンジンカウル側面形は、引込脚サイクロンホークと同じかと思いきや、文献-15の写真(キャプションによるとO型)は下側のラインが違い、エンジンとのクリアランスがほとんどない。オイルクーラーへのダクトは細い隙間なのかエンジンの間なのか。M、N型も、写真の印象はO型と同じカウル形状に見える。

  • 上記写真ではカウルフラップが片側3枚ある。ただしタイのドンムァン空港にある現存N型には「なし」、またLIFEカラー写真にあるアルゼンチン空軍のO型も「なし」のように見えるので、写真はプロトタイプなのかも。

  • M型は、Hと同じ中央がくびれる脚フェアリング。その他の平面風防、凸形スピナなどはN、Oと同じと思われる。 D&SではN、Oは胴体機銃×2とあるが、記録写真等を見ると左舷のみに見える。

  • 脚フェアリング形状は-15写真から。一見すると引込脚H75よりタイヤが大きく見えるが、遠近法の誤差を考慮(カメラ位置は翼端から10m程度と近い)すると同じサイズであることが分かる。パネルライン等は、写真で読めたものを図示。

  • 脚の正面形はかなり推測が入る。図面では引込脚と脚取付位置が同じとの想定。文献-16から、脚柱下部は湾曲した片持ちフォーク。ただしオフセット量は不明。図は何となくそれらしくで。また引込脚と似たような斜め補強部材がある。

  • 排気管フェアリング、脚フェアリングの車輪部は取り外した機体も多い。右舷はそのように描く。幅広の低圧タイヤを装着した機体もあり、その場合は取り外し式の車輪覆いは湾曲の強いものとなる。



 引込脚型との機首の違いを見ていただこう。黒が固定脚、赤が引込脚サイクロン搭載型、グレーは固定脚型のサイクロンR-1820エンジン。下側カウルとの間隔に注意。固定脚はオイルクーラーへのダクトの隙間が小さい。





 平面ガラスで構成される風防は、次のようにして形状を決める。側面窓の前、後、下の辺を延長した三角形(水色)を考える。正面窓の傾斜角は曲面ガラスタイプと同角度であることが実機写真から分かる。三角形の頂点が各図面において矛盾しないように45゚の補助線を引いて確認。風防後方フレームの形は、スライドフードと同じだから三角形の2点は固定され、前方の1点を動かして、正面窓の形状が実機写真らしく見える位置を探る。その結果が下図だ。これで「作れない図面」にはなってないはず。 側面窓は、かなり前狭まりになっているため、裾のフェアリングの平面形も他型とは異なる。固定脚型は、ノックダウン生産を企図しており、製造の容易な平面ガラスとしているのだろう。





 次こそはマーリンホークの予定。


■ F/L 側面図 4/18追加

 ちょっと回り道して、ようやくF/L型。マーリン鷹ファンの方、お待たせ。まず型式のおさらい。FとLの差はほとんどない。F-1は短胴、F-5以降は長胴となる。L型は軽量化モデルで、F長胴との外形的な違いは、機銃が4丁になり、風防左舷に小窓がつくくらい。ただし、細部はF初期とL後期でいろいろ異なる部分があり、その変更時期が不確かなものもあるから、モデル製作時は写真でよく確認されたし。図は右舷を最初期、左舷を最後期とする。



  • エンジンカウルの上半分の外形およびカウル分割ラインは、D型以降のショートノーズアリソン型(以後「D-N」と表記)から上部エアインテイクを切り取ったものと、基本的に同じ(長さは0.25"短い)。防火壁以降の胴体、主尾翼はD-Nと基本的に同じ。

  • Fの排気管スリットは前上がりで、先細のカウル、エンジンから下向きに伸びる排気管の帰結。D-Nも前上がり(前後位置は異なる)。Bは前下がりで、この違いはエンジン排気穴とカウルスリットの相対位置関係がBは近く、排気管正面形が「下がって上がる」逆への字だから。

  • F型スラストラインはD-Nと同じく胴体基準線から3.078"。マーリンエンジンのシリンダー列の中心は防火壁から56.75"、シリンダー1本分の幅は6-1/16"。

  • 左舷ラジエータカウルにある2枚の小四角アクセスパネルは、初期にはなくFの途中から。また右舷の余剰冷却液排出穴は、初期はただの穴で、後期はB型のような水滴型ブリスターとなる。

  • F-1はアンテナ柱がなく、主翼端からアンテナ線が張られる。それ以外の後部胴体上部はF/Lを通して同じ(多分)。航法灯の後ろの左右2つの丸いパネルは水平尾翼端へ張られるIFF(?)アンテナの引込部。その後方右舷の丸い穴は信号弾発射口かな。

  • B型では脱着パネルとなっているラダー下側ヒンジ部の小四角部は、F型以降ではパネルがついている機体を見ない。最初から「なし」かな。


■ F/L 断面図

 平面図はE-N型と大して変わらず、既存資料にあるから、当ページとしては断面図の方がより優先度が高いかな。平面図は次回更新で。製造図にコンター入りのアゴ断面図があって、それを忠実に再現してある。

  • 防火壁上半分は真円断面、円の中心はスラストラインで半径19.16"(EMIのN胴体最大幅÷2)とするとフレーム製造図等と整合がよい。ちなみにBの防火壁幅÷2は19.7"で、Bの胴体の方が太い。

  • アゴのインテイク開口部はかなり幅が狭い。そこから急激に最大幅近くまで広がる。断面図と側面図を見比べられたし。既存図面や改造パーツは口の広いものが大半。

  • 胴体下半分の断面形状は、BとD以降で同じだと思ったら、防火壁〜sta5までは異なる。主翼取付部自体の幅は同じ(かほぼ同じ)だが、立ち上がりの角度が違う。

  • sta6以降の胴体下半分は、外形的にはBと同じと思われる。ただしフレームの内側形状は異なっており、パーツは共通ではない。

  • sta16〜18の延長部分は、FW190Dのように全く同一断面のプラグで延長するのではなく、高さも幅もsta18の方が小さい。



 F/LとBの断面図を並べて比較すると面白い。前面投影面積がかなり違うことが分かる。なお、同じ色が同じ断面位置を表すものではないので注意。


■ F/L 平面図 5/1追加

 マーリンホークの残り3枚。まず上面と下面。

  • P-40長胴型の垂直安定板はオフセットが0゚に変更された。短胴型は1.5゚。

  • L型は軽量化のため外側の機銃が撤去されたが、下面のアクセスパネルはそのままで、薬莢排出穴も塞がれていない(たぶん)。銃口は、フェアリングのないパネルで塞がれる。上面の丸い穴(?)が撤去されたかどうかは不明。

  • 銃口フェアリング先端の半球状カバーは、射角の調整に応じてフリーに動くようになっている。眼窩にはまった目玉みたいなもの。これはP-36の胴体機銃やP-51Dも同じような構造。図は真ん中の位置で描く。

  • 銃弾庫は完全に機軸に直角。2分割の蓋が内側と外側で幅が異なるのは、最初のD型は機銃2丁でリブ1つ分だけ銃弾庫が内側に広いことを考えると理解できよう。

  • 短胴Fはアンテナ柱なし、長胴は柱ありが基本。ただし、使用国、地域により若干のイレギュラーがあり、例えば北アフリカの仏空軍では短胴にもアンテナ柱がレトロフィットされる。柱は右舷にオフセットされ、一方で衝突防止灯は左舷寄り。

  • フィレット下面のライト、D字形パネルについては、こういう状態の機体があることは間違いないが、F/Lの全てがそうなのかは不明。また胴体下部フェアリング後端付近の小四角パネルも詳細不明(なしが主流?)。

  • 主翼下面の小爆弾ラックは、片側3発と5発のバリエーションがある模様。前後に小さな振れ止めがある機体もある。また、穴のないプレーンなパネルもある。任務によって交換か?

  • スライドフード下端は、前端では胴体上端とツライチ、後端では段差がある。

  • 風防側面下側の胴体は、風防後端フレーム近くでは僅かに外側に広がる。カウルからの円断面から直線の風防後端部にすりつけるためである。この結果、風防側面ガラスの後半(換気小窓の部分)はB型のように後広がりになる。ただしB型ほど顕著ではなくほんの僅か。

  • 右舷脚フェアリング先端にあるガンカメラはF-15では「あり」の模様。ただしいつからありかは不明。悪しからず。




■ F/L 正面図

  • 顎の中の円形のものは筒状のエンジンエアインテイクダクト。先端に円盤状の蓋がつく。この蓋は中央部を左右に通る軸を中心に回転して開閉する。図は閉まった状態。

  • 顎インテイク開口部は下側が真円で半径が9.38"(先端)、8.97"(内寸)。上側は垂直(=左右平行)で幅は左記と同じ(あたりまえじゃ)。

  • カウル分割パネルラインは正面から見て完全な直線になる。上から3本までは延長するとスラストラインにぶつかり、鉛直線からの角度はそれぞれ25゚、69°、85゚(鋭角で表記)。その下のアゴとの境のパネルはスラストラインの少し下を通り(胴体基準線から2.25"下)角度は79°。顎の下側パネルラインは45゚。

  • 翼機銃は3丁が一直線、等間隔に並んでいない。図面が下手くそな訳ではないので念のため。製造図には翼基準線からの距離が示されており、それに基づき作図する。この距離がそれぞれ異なるわけで、そのため、フェアリング後端までの長さもそれぞれ異なる。



 図面はまだ続く。次回はN型。




■ 参考文献

 関連するP-36やD型以降も含む。この他、公式マニュアル"Erection And Maintenance Instructions"も大いに参考にする。文献-1〜8は定番。9はオリジナルのカラー写真。フライングタイガースは10、11、13、23。36〜39は仏空軍使用のH75。11、38、39はフランス語。40はフィンランド空軍のH75でフィン語。11と40は写真のみ英語のキャプションがつく。41〜43は豪空軍のキティーホーク。リストは暫定版。まだ他にソ連軍使用機もあるし。それでも40冊越えは大したもんだ。

1 新版 世界の傑作機 No.39 P-40 ウォーホーク - 文林堂
2 旧版 世界の傑作機 P-40 ウォーホーク- 文林堂
3 オスプレイ軍用機シリーズ21 太平洋戦線のウォーホークエース978-4-49922-779-7 大日本絵画
4 Curtiss P-40 In Action aircraft no.26 0-89747-025-7 Squadron/Signal Publications
5 P-40 Warhawk In Action aircraft no.205 0-89747-537-2 Squadron/Signal Publications
6 Walk Around P-40 Warhawk Walk Around Number 80-89747-361-2 Squadron/Signal Publications
7 D&S Vol.61 P-40 WARHAWK PART 1 Y1P-36 through P-40C1-888974-14-1 Squadron/Signal Publications
8 D&S Vol.62 P-40 WARHAWK PART 2 P-40D through XP-40Q1-888974-15-X Squadron/Signal Publications
9 P-40 Warhawk In Color Photos from World War II0-87938-928-1 Motorbooks International
10 Eagle Files 4 Tigers Over China The Aircraft of the A.V.G. 0-966076-7-4 Eagle Editions
11 Flying Tigers American Volunteer Group3-912749-03-04 DTU
12 Miniatury Lotnicze 22 112 Sqn "Shark Squadron" 1942-194583-89088-75-4 Kagero Studio
13 Miniatury Lotnicze 28 AVG "Flying Tigers" 1941-194383-89088-28-2 Kagero Studio
14 Monografie 36 Curtiss P-40 vol.1978-83-60445-27-3 Kagero Studio
15 Monografie Lotnicze 61 Curtiss P-36 Hawk cz.1 83-7237-036-2 AJ-Press
16 Monografie Lotnicze 62 Curtiss P-36 Hawk cz.2 83-7237-037-0 AJ-Press
17 Monografie Lotnicze 63 Curtiss P-36 Hawk cz.3 83-7237-038-9 AJ-Press
18 Monografie Lotnicze 64 Curtiss P-40 cz.1 83-7237-039-7 AJ-Press
19 Monografie Lotnicze 65 Curtiss P-40 cz.2 83-7237-040-0 AJ-Press
20 Monografie Lotnicze 66 Curtiss P-40 cz.3 83-7237-041-9 AJ-Press
21 Aircraft of the Aces 35 P-40 Warhawk Aces of the CBI 1-84176-079-X Osprey Publishing
22 Aircraft of the Aces 38 Tomahawk and Kittyhawk Aces of the RAF and Commonwealth 1-84176-083-8 Osprey Publishing
23 Aircraft of the Aces 41 American Volunteer Groups Colours and Markings1-84176-224-5 Osprey Publishing
24 Aircraft of the Aces 43 P-40 Warhawk Aces of the MTO1-84176-288-1 Osprey Publishing
25 Aircraft of the Aces 55 P-40 Warhawk Aces of the Pacific1-84176-536-8 Osprey Publishing
26 Aircraft of the Aces 86 P-36 Hawk Aces of World War 2978-1-84603-409-1 Osprey Publishing
27 Aircraft of the Aces 117 Aces of the 325th Fighter GroupISBN 978-1-78096-302-0 Osprey Publishing
28 Aviation Elite 14 49th Fighter Group Aces of the Pacific1-84176-785-9 Osprey Publishing
29 Aviation Elite 31 23rd Fighter Group 'Chennault's Sharks'ISBN 978-1-84603-421-3 Osprey Publishing
30 Aviation Elite 39 57th Fighter Group 'First in the Blue' 978-1-84908-337-9 Osprey Publishing
31 Osprey Duel 8 P-40 Warhawk vs Ki-43 Oscar 978-1-84603-295-0 Osprey Publishing
32 Osprey Duel 38 P-40 Warhawk vs Bf109 MTO 1942-44978-1-84908-469-7 Osprey Publishing
33 Checkertails The 325th Fighter Group in the Second World War0-89747-316-7 Squadron/Signal
34 49th Fighter Group0-89747-221-7 Squadron/Signal
35 The Curtiss P-36 and P-40 in USAAC/USAAF service 1939 to 1945 0-9539040-5-9 Guideline Publications
36 Red Series 5112 Curtiss Hawk-75 in French Service978-83-61421-07-8 Mushroom Model Publications
37 Red Series 5104 Fighters Over France and the Low Countries83-916327-1-7 Mushroom Model Publications
38 Les Ailes de Gloire No.6 Curtiss Hawk H752-914403-08-9 Editions d'Along
39 Curtiss Hawk 75- Ducavia
40 Suomen Ilmavoimien Historia 5 Curtiss Hawk 75 P-40M951-98751-9-0 Kari Stenman Publishing
41 RAAF Camouflage & Markings 1939-45 Vol1 - Kookaburra Technical Publications
42 RAAF Camouflage & Markings 1939-45 Vol2 0-85880-037-3 Kookaburra Technical Publications
43 The P-40 Warhawk, Mustang and Kittyhawk in Australian service 0-9587978-1-1 Aerospace Publications
44 Aircraft Pictorial No.5 P-40 Warhawk978-0-9817931-1-5 Warships Publishing
45 Aviatic WWII Aircraft No.1 Curtiss P-40F Warhawk- Aviatic
46 Air Vanguard 8 Curtiss P-40 Long-nosed Tomahawks978-1-78096-909-1 Osprey Publishing
47 Air Vanguard 11 Curtiss P-40 Snub-nosed Kittyhawks and Warhawks978-1-78096-912-1 Osprey Publishing






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