ホークH81-A2(エアフィックス 1/48)製作記その2

2016.12.13初出

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■ 塗装考証12/16追加

 フライングタイガースのH81は、元来はRAF向けに生産されたもので、迷彩はそのままでラウンデルとフィンフラッシュを塗り潰して新たに青天白日と鮫口を記入した。迷彩パターンはP-40Lの類推で、カーチス社で型紙を使用して塗装されたと思われる。ラウンデルは単純にダークアースで塗りつぶしているが、フィンフラッシュはダークグリーンも使っており、そのためバリエーションがあり、機体によっては垂直安定板とラダーとで色調が反転したと考えられる。何故フィンフラッシュのみ2色を使用したのかは、謎だ。

 スコアマークは、5機とイラストの10機の時の写真がある。前者はサイズが大きく、別の機体という説もあるが、天使や機番の書体などからスコアのみ描き直したと思われる。鮫口の中の上半分の色が悩ましく、資料によっては水色となっている。カラー写真の印象より迷彩色と判断。

 作業に先立ち塗装図を作る。オールダー機は、右舷の写真もあり、ややポーズの違う天使が確認できる。天使の細部は手抜きで左舷と同じ。虎のマスコットはシールなので、各機同じ絵柄。迷彩パターンの不明部分は他機も参考にしつつ、パターンを起こす。既存文献よりかなり正確なはず。ただし、下面図の鮫口はかなりテキトー。下面迷彩色は、かなり明るいライトグレイ。スピナ後半は塗り直したのか油漏れなのか、暗い色調。


■ 塗装開始

 調色メモ。下面はC335ミディアムシーグレイとGX1白、C62艶消し白を1:1:1。ダークグリーンはC18RLM70、C13ニュートラルグレイ、GX1白が6:2:2ぐらいかな。ダークアースはC22のビン生。

 マスキングはセロテープ。窓枠にインテリアグリーンを吹いてから全体にサフを吹く。細部の不具合を修正してもう一度サフ。







■ 迷彩塗装1/4追加

 年末から正月にかけて突貫工事で塗マを済ませる。以下画像で。



まず下面色を吹いておいて、ダークアース。銀はがししようと思い付いてC8銀を吹く。銀の上に再度DA。

DGのマスクは紙。自作塗装図のプリントアウトを切って、Mrペタリで固定。2枚の接続部などはMrペタリを境界に使う。

ダークグリーン終了。この時点では、上面色が下面側にはみだしている。

マスクしてライトグレイを吹き、下面も終了。最初にマスクしておけば、この作業は不要だったな。

塗り分け線のミスや、吹きムラをタッチアップ。

RAFラウンデルを塗り潰した跡も紙でマスク。これもMrペタリでやや浮かせて固定。

ラウンデル部はやや暗いDA。晴天白日の青は、自作ダルブルー、ニュートラルグレイ、下面ライトグレイを1:1:1に極微量のGX5青。

下面の青は、自作ダルブルー、ニュートラルグレイが1:2に極微量のGX5青。つまり上面と同色相で若干暗い。


 補足。P-40の迷彩はほとんどボカシがない。今回紙を使ったのは、手近にプリントアウトがあり、Mrペタリをチマチマ貼ってくより手軽だから。紙の固定および補助的に使うMrペタリは便利。おすすめ。上面マークの青は、もっと明るくてもヨカッタな。胴体帯の赤は、C114RLM23ビン生。明るさと濁りがいい塩梅。


■ 鮫口

 続いてシャークマウスの塗装。お絵かきの鮫口データを利用して、ロボ用のカットデータを作る。後ろ2/3は無加工。前1/3はカウルの湾曲に合わせて加工する。Ju87と同じ手法で、モデルに貼ったタミヤテープにペン描きし、無加工部分にドッキング。当然一発では合わない。切って貼って修正を3サイクルほど繰り返す。塗装する順番も重要。あれこれ考え、口内の赤→歯も含めて黒→歯の白→赤細フチ。黒塗装は歯の部分も含めるのがミソ。理由は後述。



口内の赤をマスク。手近なレシートを使ったけど、写真撮るなら裏面にすりゃヨカッタよ。

赤はRLM23ビン生。実機の口内上面色部分はなぜか明るめ。ライトグレイを薄く重ねる。

黒のためのマスキング。先の方はシートの修正不十分で、若干の切った貼ったで対処。

白20%混の黒を吹き、白のためのマスクをしたところ。シートが黒なので分かりづらいが。

マスクを剥がすとこうなる。まだ塗装境の段差も削り落としていない。

段差を落として、赤線をマスクして吹く。シートは同じデータを使って切るからカーブが合う。眼の黒縁も塗装しておく。

実機写真の検討により、下面はこんな感じ。確証はないが、中心に歯が1本となるようである。以前掲載の塗装図は間違い。修正しておく。

塗膜の段差をラプロスで落とすと、歯のフチに下の黒が現れる。これが前述黒塗装範囲の理由。


 補足。カッティングシートは糊が強く、不用意に剥がしたところ、下地の塗装が一部持っていかれる。指で触って粘着力落としたんだけどなあ。本塗装前の洗浄が不十分だったのだろう。ともあれ、このあと面相筆タッチアップしてマーキングの塗装部分は終了。次のインレタ&デカールも終わってるけど、長くなったので一旦ここまで。


■ インレタ&デカール1/12追加

 マーキング塗装の次はインレタ。逆手順は不可。インレタの上にはテープ貼れないからねえ。



白部分のみインレタ。センターと角度が狂わぬよう細心の注意で位置決め。白が入ると青が暗く見える。

上面は塗装にしようかと思ってたけど、インレタがリベットにも馴染んでくれるので、エッジがシャープなインレタにする。

眼は、まず白目を貼る。ビミョーな位置のズレはDG地で目立たない。次に赤リングのインレタ。中心の黒は下地の塗装を残す。

hell's angelは赤インレタの上に白インレタ。赤はすこし大きめに作っておくのがミソ。パイロット名とスコアマークもインレタ。

虎は、大昔に買ったCMKデカールSD48-001。虎の出来はかなり良い。キットのは色がダメ。68はインレタじゃ。

ただしCMKの天使はトホホな出来。どこのオバサン? スタイル悪過ぎでしょ。胴が長くて腕が短い。鮫は寄り目だし。

貼り付け後にフラットクリアを全体に吹いて軽く研ぐ。ウェザマスで軽くウォッシング。なお、シリアルもインレタ。

窓のセロテープはまだ剥がさない。画像はキャノピオープンにして、可動をさりげなくアピール(←どこが「さりげない」じゃ)。


 マーキングが入るとテンション上がるね。キュートな天使は自慢の出来。迷彩3色の色調バランスも満足。スコアマークの赤丸はイラストと同じsvgデータなのに小さい出来上がりで唖然。原因は、インクスケープの円描画ツールのままで、ノード&リンクへ変換してなかったためかな。PCの画面上だと分からないのだ。以後気をつけよう。ところで、キットのデカールは、太陽の三角が1個足りない。そもそも色が悪くてとても使う気にならないから、手描きか別売りデカールは必須。


■ お持ち帰りコーナー

 今回作成した鮫口のカッティングデータをお裾分け。形状修正した機首に合わせているけど、キットオリジナルにも少しの調整で使用可能なはず。ただし、前述のとおり貼り付け時の調整は必要。オマケでマーキングのイラストデータもつけたので、自作デカール、インレタ等に活用されたし。さらに、今回使ったCMKデカール、現在も流通してるか不明だし、今後1/48フライングタイガースを作ることは多分一生無いしで、希望者にご提供したい。同隊の機番47、49、68、75、77が再現できる。ただし青天白日は1機分のみ、かつサイズやや過大、ホイルの三色は左右同じ向きに間違いなど、このシートだけでは完結しないので中上級者向けかな。希望者複数の場合は、希望の機体に分けてお送りするので希望機番もお知らせ願う。

データファイル


■ お絵かき

 久しぶりに鷹のお絵かき。AVGで#68オールダー機と並ぶメジャー級、シリアルP-8127機番47のR.T.Smith機だ。彼は後に1ACGにてB-25隊の隊長となる(P-51A製作記参照)。当機は複数の時期の写真があり、当初は第2スコードロン所属John Petachの使用機で、天使と虎はなく、機番白47(同位置同書体)、唇と後部胴体の帯は青。機首(眼の前上付近)に小さく白47。右舷後方窓下部に自転車に乗る人物(パンダという説もあり)のマンガが小さく描かれている。次に唇が黒、胴体帯が赤に塗り換えられ、機首の機番が消された(この状態のカラー写真がある)。その次の状態が本イラスト。天使、虎、パイロット名とスコアマークが追加された。ホイルは三色巴紋。右舷は不明。虎と天使は「あり」、自転車は「なし」かなあ。もっとも右舷の天使のポーズは不明。

 風防上部やや右舷寄りにリアビューミラーがある。写真の機体は汚れが著しくDGとDEの境界も曖昧だが、イラストはオリジナルパターンにて描画(←ただの手抜きや)。ただし現地で上塗りされた垂直安定板は不明確でイラストはモヤモヤっと塗っておく。#68と比べると天使はやや小サイズ。鮫口や目の形、虎の位置角度や機番の書体も違う。このあたりは写真を忠実に再現。ただし天使は不鮮明で、#68機のイラストの腕脚の角度を変更してサイズ調整したのみ。これらの描画オブジェクトも上記svgファイルに添付する。ご活用くだされ。
 オールダー機と比べると、鮫の風貌はかなり違う。せっかくなので並べてみよう。どっちを選ぶかはお好み次第で。私ゃ精悍なオールダー鮫だな。


■ 小物開始

 箱根駅伝なら9区突入。細部パーツの製作だ。



カーチスペラは、タミヤP-47のカフスを削り落とす。P-40Lでも同じことやってたなあ。

脚はハセ。左:ハセオリジナル、右:エア、中:ハセを加工。オレオは1.8mm真鍮パイプはんだメッキ。中心に0.8mm線を通す。

主脚カバーはキット。内側に0.2mmプラバンで、なんちゃってデッチアップ(←詳細不明のため)。

小カバーが難物。今回は慣れ親しみたる(?)0.3mmアルミ板にプラバン細切りのリブを接着。

尾脚は1.0mm真鍮線。曲げて削る。車軸部のRには瞬間+プラ粉を盛る。はんだ付けより楽かなあと。

尾脚カバー、尾輪はキット。カバー端部を段差に削る。長い軸が胴体天井で止まるようにして回転可動とする。


 補足。小カバーのリブは、0.3mmプラバンを0.5mm幅に切り、0.5mmの面(これがミソ)をアルミ板に瞬間で接着。接着後にナイフ、ヤスリで端部を薄く削る。従ってリブ断面は下辺0.5mm、上辺0.2mm、高さ0.3mmの台形となる(望むらくはL字形)。アルミ板が0.3mmと厚いのは、他の脚カバーとのバランスで、エッジをペーパーで丸めて精密度を揃える。製作記を読み返すと、前回P-40Lは逆の作り(プラバンに真鍮線のリブ)。


■ 主脚 1/24追加

 小物は続く。脚柱はプリビアスシルバーとセミグロスクリアを半々程度。この銀、現行C8と違って黒が入ってないので(←たぶん。単なる想像)、アルミの白っぽい銀色に向いている。結構好み。はんだメッキ部はコンパウンドで磨く。脚カバー内側塗装は下面色が確認できる。したがって、脚収容部の翼下面部分も同色だろう(製造工程からもグリーンとは考え難い)。尾脚のキャンバス部はインテリアグリーンとニュートラルグレイを半々にタバコライオンでガサガサの艶消しに。

 タイヤとホイルもハセP-40から。タイヤは前作でダイヤモンドパターンの練習台となっている。瞬間で埋めてハンドルータで回転切削。ホイルはロボでシートを切って塗装。ホイルの青は下面の青天白日と同色にする。塗り上がるとちょい暗い。上面の方にすればよかったか。他はGX1白、RLM23赤。フチは明色。銀色か下面色かは写真では分からないが、アルミ無塗装のホイルに三色塗装のキャップをつけたのだろうと想像し、銀と下面色を半々程度にする。塗装ついでに、左舷垂直安定板の塗り分けを修正。もちっとグリーンが広くてもよいか? イラストも訂正。

 主脚、リンク、脚カバーを接着。リンクもハセP-40で、薄くして使う。エアにも無調整でぴったり(横の斜めリンク長さは要調整)。ブレーキラインは焼き鈍した0.4mm真鍮線。脚柱とタイヤは、前から見て地面に垂直となる。昔の暴走族のようにタイヤがハの字に見えるとカッコ悪い。気持ち逆ハの字にすると、人間の目で見たとき垂直になる。



脚柱を塗装。下部のリングは開口する。赤はフィクション。最終的にフラットクリアを吹いて、もちょっと艶を落とす。

巴模様は左右で反転する。画像右が左舷。左右とも白の前が赤になる。

主翼に接着。汚しも行う。ハセの主脚は素晴らしい出来。部品取りだけでもキット購入価値あり。いい翼端灯もあるし。

後から。ハセの後斜めリンクは、エアの主翼の穴にジャストフィット。胴体下部のドレインを真鍮パイプで。



■ 排気管

 排気管は別売りレジンパーツを塗装するだけ、楽勝じゃ・・と思ったら大間違い。レジンパーツの出来がイマイチ。クイックブーストは大きすぎるし形も悪い。同社は他にも形状イマイチな製品がいくつかあるね。気をつけよう。でも店頭だと分からないんだよね。ウルトラキャストは悪くないがエッジの一部が薄いなど、若干気になる点があり不採用。ハセはやや太いのと、バラしてピッチ調整が必要なのが難点。

 ということで、仕方なくキットパーツを加工する。3〜4番目のピッチ違いが再現されてるのはキットだけだ。やや奥行不足なので、ベース部分にプラバンを貼ってから、付け根を削る。後端を開口し延ばしランナーで溶接跡を再現。自作焼鉄色で塗装し、ウェザマスの黒とサンドで汚す。出来上がりは手作り感満点だが、レジンパーツだってよく見りゃ似たようなもんだ。(←開き直りか)



単体で見るとサエないキットパーツが、カウルにセットしてみると一番実機に近い。

左、キットの基部に1mmプラバンを接着。右、針ヤスリ、エッチングソーなどでキット基部をくり抜く。

塗装、汚しをしてカウルに接着。アップだと溶接跡の表現が・・・

後から。この角度だと、カウル断面の厚さが目立つな・・・ 後で黒く塗ってやろう。



■ シート 

 飛虎隊のシートは、他の輸出型H81と同じ角形。とはいえその詳細は不明だ。キットパーツはそれらしく出来ている。抜きテーパーで上部が幅広で、側板を切り取り形状修正し、0.3mmプラバンを接着。シートベルトが悩ましい。AVG本のチラ見え写真からRAFのサットンハーネスでないことは明らかだが、大戦中期以降の米陸海軍に一般的に見られるタイプかどうか怪しげ。調べると、Aircraft Pictorialで、米空向けP-40Bは米一般タイプと別物なのが確認できる。おそらく、大戦初期には一般タイプは未出現なのだと思う。

 よってAVG機も一般タイプでない可能性大。とはいえ詳細不明でモケイにしようがなく、とりあえずはアイリス付属のエッチングででっちあげる。写真(オスプレ23FG本など)を見ると、フレーム上部あたりもキットと違うけど、正解は不明でキットを小加工して使う。イラストだけは、それらしく描いておく。情報求む。



シートとフレームはキットパーツ。ヘッドパッドはハセのパーツ下部に1mmプラバンを貼って大きくする。下辺中央にくびれがある。

ベルト本体は鉛板を使用。金具のみアイリスで、これは一般的米軍タイプだから考証的には疑問。ま、フンイキつうことで。

タバコライオンを混ぜたセールカラーで塗る。そのままでは背板との間隔が開き過ぎ。 フレームの湾曲部を伸ばして余りをカット。

ヘッドパッドはレッドブラウンで塗装しラプロスで磨くと使い込まれた革のような感じ。


 とりあえず今回更新はここまで。


■ 続、細部 2/2追加

 プロペラは白30%混のセミグロスクリア。チップはF-86Fで使用のオレンジイエロー。GX4にGX3を少量混ぜたもの。記録写真を見ると、#68機ではこの黄色塗装が確認できない。同隊他機では黄色ありの機体があるので、どっちが正解か悩ましい。で、当初は「なし」にしてみたものの、機体に組み合わせてると模型としてイマイチ地味。ということで作品は「あり」で。ステンシルはキットデカール。カーチスマークは「なし」。貼り付け後、セミグロスクリアを吹いて段差を研ぐ。



乾いたマークセッターが汚い。ティッシュに同液を少量つけて拭きとる。

尾脚とカバーを接着。開閉リンクを追加。胴体下面の謎の装備もプラ材からスクラッチ。ところでこれ何?


 機銃はMaster Modelの真鍮製。独特な縦長のスリットが再現されてるのはポイント高い。数か月前ホビランに入荷して瞬殺で売り切れ。先日再入荷で運よくゲット。普段こういうのは筆塗りだけど、スリットを潰さぬよう、エアブラシで塗装する。プライマーは最近愛用のミッチャクロン。機首のチューブ(1.0mm径)も入っているが、若干太く感じ0.8mm真鍮パイプを使う。キットの機銃フェアリングは細いから、そのままでは1.0mmだと入らないかもよ。



繊細すぎて、暑苦しい仕上がりの作品には合わないという意見が・・(←うるさい!1700円もしたんじゃ!)

機首チューブの先端は斜めに削る。プロペラのコーションはダークグレイを薄吹きしてトーンを落とす。


 トリムタブの操作ロッドは0.2mmプラバンと延ばしランナー。塗装後で瞬間は使いたくないから、あえてプラなんだけど、これがまた他の作業中に取れたり曲がったりでイライラ。かといって塗装前に付けたのでは磨きの工程に支障となるしで悩ましいところである。航法灯はクリアランナーを削る。ラダーヒンジのアームはハセ。

 自作インレタがミスった日の丸、やっぱり気になってキットデカールを貼る。といってもサイズが違うので、バラして1つずつ重ね貼り。だいぶ厚くなってるが、幸い白色で目立たない。



尾翼まわりにあれこれ追加。水滴形航法灯はハセP-40に入ってるんだけど、既に他に使ってしまっているのだな。

赤丸が不揃いなのは、隊員が手描きした実機を忠実に再現したものである(←ウソをつくな)。



■ 化粧直し

 鮫口の歯が、下面色に紛れて目立たないのが気になっていて修正する。歯をマスキングして口内にグレイをオーバースプレー案は、ロボ君カットのマスキングシートが歯の形に合わず却下。三次曲面だからなのだね。う〜むと考え、エナメル黒をマスクなしで口内に極薄くエアブラシ。面相筆にエナメルシンナーをつけて歯の部分だけ黒を落とす。まるで鮫の歯磨きをしてる気分。



極薄エナメル黒でお口を汚して、上中央の歯1本だけ「歯磨き」したところ。

歯磨き終了。白い歯が目立ってくれて満足。しかし、こうやって置くと、まるで漁船甲板上の釣られた鮫そのもの。


 実は拙イラストも口内に薄い黒を被せているのだ。模型でも同じことをやってるわけ。


■ ピトー管

 マスターモデルのは、真鍮パイプにゴム製のクランク部を接着するもの。決して悪くはないが、はんだ細工で自作する。当初はイモ付けで、整形中に接合部がポロリ。そこで、接合方法を改良する。0.8mm真鍮パイプの側面に0.3mmの穴を開け、長さ2mm弱に切断(下図橙)。0.6mm真鍮帯金の先端を0.3mmに削り、長さ4mmに切る(茶)。これらを2本の0.6mm洋白線(灰)に組み込む。下側の洋白線は接合部を平らに削っておく。台に並べてバーナー(ポケトーチ)で2箇所同時にはんだ付け。



洋白線の固定は、テープAを貼ってから、末端を青矢方向に下げてテープBを貼ると、接合部がピッタリつく(薄赤)。

はんだを流す前の状態。白い紙は帯金の高さを合わせるためのスペーサー。



■ ウェザリング

 いつもの手法をあれこれ。排気汚れと、実機写真で特徴的な給油口から垂れた汚れはタミヤエナメルのエアブラシ。ライトサンドと黒を使い、吹き付け後にエナメルシンナーをつけた筆で撫でて表情をつける(技法はP-51A製作記参照)。AVG隊の飛行場は泥だらけの未舗装で、実機のタイヤは泥どろ。エナメルのサンド系をトレッド面にエアブラシ。さらに水溶きウェザマスのサンド系を塗っては落として丁度よいところで止める。

 このように効果の異なる複数の技法を重合すると、深みのあるウェザリングになる(当社比)。タイヤの場合はエッジの緩いエアブラシでベーストーンを作り、エッジのあるウェザマスでアクセント。あるいは、明色系と暗色系の重合、たとえば銀はがしの周囲を暗く汚す、排気汚れはサンド系と黒色を重ねる、みたいな。その際、それぞれ単体では控え目にするのもポイントか。

 実機の表面は埃汚れで艶はないが、モデルはラプロスで磨いてサテングロス。そこで、最後に全体にフラットクリア+フラットベースを極薄く希釈して吹く。ところが、全体が白っぽくぼやけた印象になってしまい、再度水溶きウェザマス(スス)でウォッシング。一部トーンがキツすぎる箇所はグレイで補正。



翼付け根の銀剥げはノミでカリカリ。それ以外はミディアムシーグレイでチッピング。こぼれた燃料の汚れ、写真だともっと汚い。

タイヤはこんな具合。エアブラシだけだと泥のこびりついた感じが出ない。


 最後の艶調整は、毎回悩ましいところ。実物のリアルな再現にこだわれば完全艶消しの方向。一方で模型としての美しさ、深み、陰影等々の観点では艶ありめの方向。今回はリアル志向で。


■ アンテナ線

 最後にアンテナ線を取り付けて完成、といつもなら1行だけど、今回は書くこと多数。まず、従前の拙イラストは、アンテナ線の張り方が違う(汗。 お詫びしてイラストも訂正。ただし従前イラストのタイプも存在し、AVG本にある#77機の写真でこれがハッキリ確認できる。それで、同隊他機も全部同じだと早合点したのが間違い。 作品も当初は間違って取り付け、♪完成〜と思って#68機の写真見て「あちゃ〜」。で、やり直して、今度こそ完成じゃ、と写真を撮ると、ナイロン糸(直径0.09mm)が太く見えて気になる。三度目の正直で極細テグス(0.07mm)に取り換える。

 この貼り方が結構難しい。以下は試行錯誤で辿り着いた手順。ご参考まで。まず、胴体から尾翼に至るテグスAを、左翼から右翼端に至るテグスBに結びつけ、Aの尾翼側に0.4mm真鍮パイプを通す。このときテグスBは自由に動くのがポイント1。尾翼にテグスAを固定(真鍮板の穴に結ぶ)。胴体取付位置にΦ0.6mmの穴をあけ、そこから尾翼側取付部までの長さを測る。

 テグスAの胴体側に0.6mm真鍮パイプ(長さ3mm程度)を通して接着。この位置は上記の長さより1mm短くするのがポイント2。胴体の穴に真鍮パイプを差して接着。1mm短いから押し込むとテンションがかかる。テグスBの左翼側を固定。これは、バイスの穴(貫通しない)に挿して、瞬間をつけた延ばしランナーを突っ込む。右舷側は穴を貫通させ、引っ張ってテンションをかけて延ばしランナーで固定。下面の糸とランナーを切りタッチアップ。



当初は#77機(黄緑)のように張ってやり直し。#68機はこのように「鳥の足跡」状に張られる。画像は二度目の時のもの。

最後に照星とリング。これらもマスターモデル。曳き物の照星は柱がテーパーして先端が球!


 その極細テグスの残りが少なくなり、以前から気になっていたドールの髪用ナイロン糸を買ってみる。ボークスで「ドルフィー植毛ヘアー」という商品名で400円。スケールモデルと売り場が違うから買うのに勇気がいるかも。太さは約0.08mmで、黒色(他に茶髪金髪もあるけど)。見た目の太さは手持ち極細テグス(0.07mm)を油性ペンで着色したものと同一。質感もよく、アンテナ線として十二分に使える。今回テグスにしたのは、強度上の理由。粗忽者なので、しょっちゅう引っ掛けるのだ。


■ 完成

 最後に窓のセロテープをはがし、塗膜境に水ウェザマスの黒を流して完成。途中2、3ヶ月放置で実質製作期間は6ヶ月ほど。完成写真はUAMC後に撮ろう。



画像はアンテナ線二度目修正時点。



■ 静岡UAMC

 UAMCまであと1週間。久しぶりの参加で、その間の完成作も多い。車で行くのでたくさん持って行けるが、スペースは1コマしかない。そこで土日で展示作入れ替え作戦だ。初日はスピットとRAF、翌日は米軍と銀翼がメインテーマ。その他、鮫口三姉妹や中島三姉妹(長女は支度途中だなあ)も。

 準備で旧作を引っ張り出す。北側の湿気の多い部屋のクローゼットで段ボール箱に密閉、という保存環境が良くないのだろう、表面に薄らと汚れ(カビ?)が付着している。この際、展示作以外も濡れティッシュでお掃除。細かい部品を引っ掛けないよう注意したつもりでも、プロペラや脚カバーがポロポロ外れる。完成時はそれなりにちゃんと付いていたはずだから、経年変化なのかな。エナメルウォッシングなしでこの状況だから、エナメルじゃぶじゃぶ使っている人は、もっと悲惨な状況ではないかと拝察。


■ 完成写真 3/25追加

 UAMCから随分たっちまった。やっと写真撮影。キャノピは一応可動式なので、開閉両状態で撮る。細くスッキリさせた顎のラインにシャークマウスが映え、めちゃくちゃカッコイイ。苦労が報われる瞬間だ。風防および後方固定窓と胴体との接合部もスッキリ。キットのままではこうはいかんぞ。汚しはキツめのつもりが、画像でみると自分の意図より大人しめ。まあでも、飛行機モデルとしてはこの位がいいのかも。

 つうことで、一昨年12月の図面作成から1年以上の長きにわたるホークプロジェクトは終了。P-36からP-40Nまでの各型図面は、活用いただければ幸い。隼姉妹を片付けたら、次はブリファンとシーフュリーの予定。おっと、その前に引っ越しが・・・





































■ 懺悔

 P-40Bの製造中カラー写真などを見ると、当時のカーチス社のコクピット色は、もう少し黄色っぽいかも。ジンクロイエローとインテリアグリーンを混ぜるとよかったか。風防前下端の胴体のめくれ上がりは確信犯で省略。あと、脚庫のリブの数が違ったり。


■ お絵かき

 久しぶりのお絵かきは、AVG解散後に空軍に所属したオールダー中佐のP-51D-5-NTマスタングだ。H81ホークから乗り換えて、高性能ぶりに驚いたことだろう。出典はオスプレ23FG本。左舷機首、コクピット付近の写真がある。尾部マーキングは同本イラストに従う。ただし背中のアンテナポッドは有無不明(同隊他機に例がない)のため「なし」で描く。機首の「ヨカハマ」収容所は彼の親族が日本軍捕虜となっていたためとか。23FGエンブレムも同本を参考にする。配色と細部は写真を基に少々アレンジ。当機はダラス工場製であり、同隊機を見てもキャノピは独特の形をしているようである。アンチグレアはカラー写真から黒とするが、もしかするとこれは着色写真で通常のODかも。
 チャールズ・H・オールダー中佐(終戦時)は、1917年生まれ、カリフォルニア大学を卒業し、海兵隊に入隊、そこでパイロットの資格をとりVMF-1に配属となった。1941年7月、米義勇隊(AVG)に志願し、第3飛行隊に所属した。部隊はビルマのラングーンの北にあるキェダウ基地で活動を開始した。11月にホークH81戦闘機が到着し、RAF第67スコードロンのバッファローと共に同地の防空に就いた。日本軍のラングーン攻撃は12月23日から始まり、激しい迎撃戦の中で彼は5機撃墜を記録した。その後、第2中隊と交代して昆明に移り、第3飛行隊のリーダーとなってさらに5機の撃墜を記録した。

 AVGは1942年7月4日に解散し、彼は本国に戻り空軍に所属した。1944年夏、少佐になった彼は中国の第23戦闘航空群の副司令として前線に復帰した。23FGはAVG解散後の後継部隊であり、いわば古巣に戻った彼は、乗機P-51Dにてさらに8機の撃墜を記録した。CBIの米軍としてはトップエースである。戦後も朝鮮戦争にA-26パイロットとして参戦した。その後に空軍を退役、大学で法学の学位を取り、以後は法曹界に身を置き、有名な事件の判事を務めるなど活躍した。2006年死去。

 ポートレイトの彼は、思慮深く冷静沈着に見え、後の名裁判官ぶりを想起させる。一方、AVGのもう一人の有名人、イラストにも描いたR.T.スミス隊員(AVGは形式上民間団体であり、いわゆる軍隊階級はない)は、AVGでのお茶目な写真や、戦後いろんな事業に手を出したり、離婚再婚したりと、正反対の性格のようである。




AVG時代のチャック・オールダー隊員肖像






■ 参考文献

 参考文献リストは図面のページに置いておく。






図面のページ

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