P-47D |
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製作記(1/32ハセガワ) |
レイザーバック |
2007.6.20 初出
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はじめに |
さてその理由。実は、期待が大きかった分、箱を開けたときの「ため息」も大きかったのだ。それはつまり『ハセガワさん、私のページを読んでくれなかったのネ(泣)』あるいは『読んだけど無視したのネ(号泣)』、ということで、私の脳内にある「理想の姿」にするには少なからぬ手間がかかるのだ。 でもこれは、サンダーボルトの太った女神様への愛が試されているのだ。修正作業は愛情の表現に他ならず、しかもそれが他人の作品との決定的アドバンテージとなる。そう考えると、むしろキットが完璧でないことに感謝の念すら覚え、それなら一丁やったろうやんけ〜。静岡で見た作品はかっちょよかったしな〜。となるわけ。 ところが、 案の定、トランペッターからレイザーバックとN型のリリースがアナウンスされ、テストショットをWebで見るとタミヤの丸コピー。しかも、某電撃スケールモデラー誌のS編集長から『作例やりません?、以前レイザーバックやりたいなんて言ってましたよね〜』とのお誘い。これは方針変更して、ハセのバブルを完全修正した上で、トラペのキャノピと背中を合体し、究極のレイザーバックを目指すしかないぜ。さて、雑誌掲載(予定)にあたり、編集長との約束が1つ。雑誌発売後一定期間は、当HPにて製作記を公表しないこと。ただし、購買意欲をそそる前フリは推奨。ということで、本項、表ページからはリンクしていない関係者限定「裏製作記」としてスタートする。いずれ雑誌掲載後には一部修正して公表する予定である。そして、表ページには、適宜「予告編」を出すつもり。 なお、ハセガワキットであるが、総体的には素晴らしいキットで、T-ボルトの偏執狂的ファンでないかぎり問題ないレベルである。購入を検討されている方には、即買い、即作りをおすすめする。なにしろ、2007春時点では同社はレイザーバック開発の予定がないとのウワサ。やっぱり皆んなにどんどん買ってもらわないと困るのだ。(←勝手な奴)
次に問題点。ライトユーザー向けに、簡単に修正できる部分から。カウリングの取り付け高さが約1mm高く、下面で胴体との段差が生じる。メーカーとマニアの間で議論があったようだが、これは明らかな設計ミス。レストア時にミスした現存機を見ての誤解と思われる。 カウリング内部のエアインテイクとの仕切りは、同社ヨンパチそのままの変な形。ただし目立たない部分なので、そのままでよいだろう。後部胴体側面のエアアウトレットも、ヨンパチのミスをそのまま引きずっている。ドアが横に開くのはもっと前方にスライドしてから。タミヤを参考にするとよい。 コクピットの開口部が、後ろ広がりになっているが、実機はここまで極端ではない。コクピット床は、コルゲート(波板)「なし」となっている。タミヤのD-25は「あり」だが、調べてみるとD-25でも「なし」とする資料がある(Bodie本)。逆に「あり」とする根拠資料をお持ちの方、ぜひご連絡いただきたい。 主翼は、前縁が尖るように削るとT-ボルトらしくなる。同様、垂直、水平尾翼の前縁も尖らせるとさらによい。また上下パーツ接着の際には、ねじり下げにも注意。
と前置きしつつ遠慮無く斬っていこう。このキット、一言でいうと同社ヨンパチの拡大。でもって「拡大するならココは直してね」とお願いした部分は、残念ながらほとんどそのまま。ただ、進化した部分もあって、胴体下部は側面が平らにスリムになった。まあ100点満点ではないけれど、タミヤでもミスしていた点で、これは高く評価できる。 ヨンパチ最大の問題点は、胴体高さの不足。コクピット前方では1/32実寸で約2mm不足。それに伴い、カウリング高さも同じだけ不足している。また、胴体側面形では尾部が切れ上がって見える。これらの修正は、どこでどう辻褄を合わせるかが難しい。下手にやるとバランスが崩れるからだ。側面形については、エアライナーズネットのこの写真またはこの写真などと比較するとよくわかる。こいつに合わせても、タミヤは「完璧」。(だから言ったでしょ) |
![]() キットの胴体パーツ。全体的にスリムかつ尻尾が切れ上がって「スマート」で、独特の「迫力」に欠ける。 |
![]() 実機と比較されたい。「裏製作記」なので、著作権気にせず資料写真もバンバン載せちゃうもんね。 |
ヨンパチから劣化した部分もある。それは機首の平面形。当ページでは、わざわざ真上から撮影した写真まで掲載したのにネ。ほんとに残念だよ。サンニイではタミヤに似て機首が前すぼまりになっており、カウリングは全体的に1mmほど幅不足。ただし、高さも増さないとカウリングがさらに扁平になるので要注意だ。以上はこの写真やこの写真やこの写真を参照されたい。いずれも手持ち資料のスキャン。我が家のモニタでは概ね1/32実寸になるようにサイズを調整してある。 痛いのが風防&キャノピの断面形。バブルキャノピのΩ断面の再現はインジェクションの限界で仕方ないとしても、風防後端フレーム部分の断面形がいまいち似てないのだ。実機は側方がもっと直線に近く、上方が幅広。イメージ的には零戦の風防の側方直線部をゆるい曲線におきかえたような形である。キットはジェット戦闘機の風防断面みたく全体的に丸い。また、正面ガラスの幅も若干不足している。修正するならヒートプレスで作り替えるしかない。 |
![]() キットの風防パーツ。天頂部(赤矢印部分)の幅が狭い。両側部(青矢印部分)の曲率が大きい。以上が似てない原因。 |
![]() 同じく実機写真と比較願う。キット設計者の形状把握能力を疑うね。 |
キットの垂直安定板は左舷にオフセットされているが、これはB型の初期まで。以降はオフセット0となる。実機写真を見てもオフセット「なし」が確認できる。エアロディティール43ページの記述(左舷1°オフセット)は間違い。根本的に修正すると大変なので、前縁を薄く削るときに気持ちだけ修正するとよいのでは。 主翼は、セバスキーS3というP-35からP-43、P-47に受け継がれたリバブリック社独特の翼型が、十分に表現されていない。なんか零戦の翼みたい。実機は上面後半部の湾曲が少なくほとんど平らで、一方前縁はかなり尖っている。翼の見え方については、この写真とかこの写真とかこの写真が参考になるかな。 |
![]() 垂直尾翼オフセット。これは「なし」が正解。 |
![]() 翼型もいまいち。これはテープで断面形が把握できよう。 |
タミヤをちょいと参考にすれば済むのに修正してないところもあれば、タミヤのミスを安直に真似しているところもあったりして。キャノピ断面形のミスはセンス不足だな。カウリング下面の段差も、もう少し注意力があれば気付くレベルのものだ。 |
組み立て 6/30追加 |
広げた胴体が元に戻らないよう、1.2mmプラバンのバルクヘッドを入れる。この断面形はカウルフラップのパーツから写し取る。上下に広げるだけでは、左右幅が狭くなるから、左右の接着面にシムを挟み、胴体幅を44mmに合わせる。上側に入れるか下側にするかで、主翼高さに影響するから、慎重な調整が必要だ。写真から判断するに、主として上側の高さ不足のよう。つまり、シムは上側に挟むべし、となる。そうしてできた胴体は、まさに脳内イメージのT-ボルトそのもの! |
![]() 記念すべき?最初の作業はバルクヘッドの切り離し。モーターツールでプチプチと穴を開け、ニッパーで切っていく。 |
![]() キットの胴体左右の絞り込みが実機より若干オーバーに表現されている。数カ所を切り込みを入れ、シムを挿入して広げる。 |
![]() 内部にバルクヘッドを入れる。下側後部は、応力が集中して外面に折れ線ができないように梁状のプラバンでバルクヘッドの圧力を受ける。 |
![]() 右舷側は元のパーツ。鉛筆で黒く塗った部分が挿入したシム。 |
P&WダブルワスプR-2800エンジンの直径は1,342mm。写真からフレームの幅を計算すると約30mm。これより、パネルの厚さを無視すれば前側フレーム部の幅は1,342mm、後ろ側では1,402mmとなり、1/32でそれぞれ41.9mm、43.8mmとなる。横から見るとこの前後フレームは、それぞれカウリングのパネルにある留め金の位置に一致する。「なんだ、やっぱり前すぼまりじゃないか」と言われそうだが、N型の写真をもう一度よ〜く見てほしい。 実機は、前後エンジンの中間くらいから後方は左右平行で、それより前は機首先端に向かって緩やかにカーブしている。そのカーブの分だけ前側フレームが狭くなるのである。一方、タミヤも32ハセも、前すぼまりが強すぎ。48ハセはいい感じなんだけどね。で、幅を測れば、ハセ32は前フレーム41mm、後ろフレーム43mmで、前フレームはエンジン直径42mmより狭い。明らかな論理矛盾。これはタミヤも同じ。
カウル内インテイクの仕切パーツも、ヘンな形状。裏から瞬間パテで裏打ちしてから削る。また2枚のベーンも形が違うので0.3mmプラバンで置き換える。完全には再現できていないが、よく見えない部分なので、この程度でおしまい。キットは取り付け位置が1〜2mm前寄りだが、そのまま。 |
![]() パーツの合わせ目に1.2mmプラバンを挟む。裏からも補強し、このあと補強部の凸凹をパテなどで埋める。 |
![]() インテイクの仕切りパーツは、このように修正。左、キットパーツ。右、修正後。よく見えない部分なので、このへんで妥協。 |
追加工作は定番のプラグコードのみ。キットパーツは、コード基部が正しい本数分再現されてなく、自作する。0.5mmプラバンを馬蹄形に切り出し、裏からφ0.3mm糸ハンダを接着。そこに短く切ったφ0.6mm真鍮パイプを通して接着。1つ1つは簡単な作業だが、18気筒×2=36本だと肩がこるぜ。 P&WダブルワスプR-2800エンジンは、サブタイプによって、プラグコード基部やディストリビューター(ギヤケース上に2個ついてるヤツね)が異なるが、詳細不明。新世傑などによれば、D-20からD-40まではR-2800-59を装備していて、D-30なんかの写真を見ると、キットとは違うんだけど。キットのコード基部は初期のレイザーバックに見られるような。まあでもいいや。 |
![]() プラグコード基部。こういうものは、プラバンに穴を開けてから、外側を切り詰めていく。 |
![]() プラグコードの作業終了。塗り分けが実物と少々異なるが、見栄え優先で。位置も、ちょいとズレてるし。ギアケースはトラペ待ち。 |
仕方なく、S-3の形状については、実機写真をトレースする。上面、下面のカーブがよく分かるものからそれぞれトレースして、モナカのように合わせ、前縁が分かる写真で補正する。模型もモナカだから、実用上は問題ないはず。参考までにキットの翼型も、胴体パーツの接合面をトレースする。 結果がこちら。Hasegawa H-3翼型(キット)は胴体接合部における翼厚比が16.5%と、高速機にしてはちょいと厚めだ。重ねてみると、両者の違いがよく分かる。
ただし、これが翼の最大厚さ位置ではないので、桁の前後位置関係と先のS-3翼型から、最大厚さ位置での翼厚をこれまた比例計算によって求め、それを翼弦長で割る。という過程を経て、取り付け位置における翼厚比を算出すると、15%となる。飛行中に前方から撮影した写真(だいたいの翼厚が胴体高さとの比率でわかる)と較べても、まあ違和感ない数字か。
サンダーボルトは楕円翼であるが、楕円翼の代表選手スピットファイアは、正面から見ても楕円翼。これすなわち、翼厚比の付け根から翼端にかけての変化率(減少率)が一定なのに対し、翼弦長の変化率が一定でないからと推測できる。一方、サンダーボルトは正面から見ると翼の上下は一直線に見える。これはどう考えたらよいのか。以下おおいし氏の仮説を引用。←私も支持。 サンダー>楕円翼に見えるが・・・ 1)前後の主桁はいずれも一直線、平面写真から分かる 2)機銃パネルのピアノヒンジ、これ直線(そうでないと開閉できない)、すなわちこの部分は2次曲面と理解できる 3)主翼後縁のエルロンとフラップ取り付け部、これ断面上下はいずれも直線に見える >以上から推察できる仮説「主翼は本来直線テーパー翼であり、フラップとエルロンの横方向中ほどの後縁を多少後ろに伸ばして楕円をムリに作っている」 >上記傍証として「水平、垂直尾翼いずれも見た目で後縁が楕円状になっているが、安定板の桁は直線である」これ舵面をいじって整形していることは明らか。 >上記であるとすれば、主桁フランジ材の加工はシンプル。
上面パーツは、前縁の湾曲を強め、後半は逆に平らに、後縁を横に広げる(延ばす)ことでねじり下げを強め、翼端が若干削ぎ上がりとする。曲げたパーツが元に戻らなくするため、前縁には裏から0.5mmプラバンを接着する。 下面パーツは、前縁を平らに延ばしたいところだが、曲がらないので裏から0.5mmプラバンを接着して削る。平板な翼中央部は湾曲を強めるように曲げる。さらに、フラップとエルロンのヒンジ部の翼厚を薄くするため、接着面を削る。 翼型を保持するため、内部には一式戦「隼」並みの3本桁を配置。この桁高さは、翼型データから計算してある。そして、上面パーツ裏側には、強度保持のカーボンファイバーをがっちり接着。そして上下パーツを接着する。桁上側や、翼端には瞬間パテを接着剤がわりに使う。 主翼パーツからエルロンを切り離したのは、大失敗。さも動きそうに見せたかったのだが、カーブの微妙な場所なので、後付けでうまくカーブが合うわけがない。結局コテコテに接着して削りたおす。パーツの厚みが唯一の救い。切り離した意味なし。 |
![]() 翼パーツは、正しい翼型になるように、手で曲げる。内部にはプラバンで補強。 |
![]() 翼型を比較いただきたい。上キット、下修正済み。赤矢印部の厚みや、黄矢印部の曲率に着目。 |
サンダーボルトの主翼、見る角度によって、平面図の楕円翼とは全く違った形に見える。ねじり下げのため、正面斜め上方からは、直線テーパー翼のように見えたり。また翼端削ぎ上がりのために、側面わずかに上方からだと、角度により端部がN型のような矩形に見えたり。また、機銃の後方、エルロンの前方あたりは、厚みが薄くほとんど湾曲がなく見える。
なお、厳密な正確さを追求するなら、結構大がかりな改修が必要となる。つまり、パーツ割りの関係で収容部が全体的に浅いとか、主脚作動ピストンが天井と一体成形されているので、切り離してもう少し下側にずらすとか、ピストン後方の側壁が正しくは開口部より奥に位置し壁面が機軸に直角だとか(タミヤは正しい)、タイヤ収容部翼端側の側壁は、さらに1、2mm外側に位置するとか・・・。脚庫マニアの方は、私に代わって是非再現いただきたい。 |
![]() 目立つとこだけディティールアップ。本質的な間違いは修正していない。 |
![]() 縁を薄く削る。後でたまぐりが打てるか心配だけど。 |
塗色については、初期のレイザーバックはインテリア・グリーンで、ある時期から変更され、後期のバブルトップD-30ではダル・ダーク・グリーンとなったところまでは、いろいろな証拠から間違いないと思っている。問題は、その変更がいつか? D-23はどっちか? なのだが、手持ちカラー写真では決め手がなく、あとは白黒写真の印象での判断となる。 そこで、いろいろな写真を眺め、計器板の黒、スイッチ類の赤と床や壁面の明度差、外装のオリーブドラブ、ヘッドレストの黒と防弾板との明度差などを目安に、無塗装のレイザーバックではダル・ダーク・グリーンの可能性が高いと判断する。もちろん、白黒写真の印象など、極めて当てにならないことは承知の上。 次に床板のコルゲートの有無。最初のバブルトップであるD-25でコルゲート無しの写真がある(文献-1)。一方、レイザーバックでコルゲート無しの写真は見たことがない。また、D-25あたりからコルゲートが無くなったという説を聞いたことがあるが、出所、根拠が不明。ということで、決め手は無いがコルゲート「あり」と考えるか。 計器板、両サイドの機器類について。タミヤのレイザーバックの左右側壁パーツは、D&SではC型とされるコクピット内の写真を再現したもので、D型でもかなり初期のものと思われる。D-23では、D-25に近いと思われるが、D-25なら計器板と右側面の写真がある。ハセガワ1/32ではこのD-25の写真にかなり近いものとなっている。 蛇足ながら、タミヤのバブルトップD型は、C〜D型レイザーバック初期の側壁とコルゲート有りの床板となっている。バブル最初期のD-25であってもコクピットはM型のパーツを使った方が、より実機に近いものになるだろう。 |
![]() この写真ではダルダークグリーンに見えなくもない。窓枠で判るように、本来無塗装で現地迷彩の機体。出所は文献-22、文献-1にも同じカラー写真があるが、色調は文献-22の方が鮮明。 |
![]() この写真は、D-25のものとキャプションに書かれている。手持ちの他資料からはD-25から-28までの型の特徴に合致する。出典は文献-1。見所は多数。色調はダルダークグリーンか。風防窓枠裏は黒に見える。 |
![]() D-30の計器板。計器板中央下部の「ふんどし」はD-30からとされる。この写真でもダルダークグリーンに見える。同じく文献-1から。 |
コルゲートの床板はトラペで、残りはハセガワを使う。D-23の計器板は写真が無く、D-25のものを参考にする。キットはD-30から装備された爆弾/増槽投下スイッチが計器板中央下部にぶら下がっている。これはD-28以前の型にする場合は切り取ること。かわりに用途不明(パーキング・ブレーキ・レバー取り付け基部か?)の凸部があるので、プラ材で追加。右下にぶら下がる計器はD-25では2連なので、1つ切り取る。メーター部分は、下手に手を加えると見苦しい出来になるので、そのまま。いつものようにデカールをポンチでくり抜き、1つずつ貼り、クリアをたらす。使用したキットのデカールは、印刷が大味なのが残念。 キットの計器板は取り付け位置が2mmほど低い。これは、照準機や防弾ガラスとの位置関係がおかしくなるから、無視できない問題。また、写真と見比べれば、側壁との関係も違っている。計器板に取り付くラダーペダルはハセガワ。ペダルに穴を開ける。取り付け位置はあとで調整する予定。ペダルから床板に斜めに延びるロッドは目立つので是非再現したい(予定)。計器板の裏側にはメーターが再現されるが、配線などしても見えないから省略。それより縁を薄く削る方が重要。 左右側壁もハセガワ。左側はスロットルのロッドを追加し、スロットルの左(後方)にある主脚出し入れレバーを延ばしランナー+微少鉛玉(東急ハンズで購入)で再現。その左下にはエルロン、ラダー、エレベータのトリムコントロールがある。型抜きの都合で再現されない部分をプラ材で置き換えた程度。その上側にあるレバーはフラップコントロールで、フラップ位置によってレバーの位置も異なるのだが、どっちがどっちだか不明なので、そのまま。 右側は、コードを0.3mm糸はんだで追加。蛇腹のホースは酸素ホースで、クラッシック・ギターの4弦で再現。それが取り付く黒い円形のものは酸素レギュレーター。ホースの反対側は、ヘルメットの酸素マスクにつながり、その端部をコクピット内のどこかに引っかけておくことになっている筈だが、その位置が不明(C〜D初期では判明してるが)。 床板はトラペだが、2本のレバー(左側は手動油圧ポンプ、右側の小さいのは尾脚固定レバー)と操縦桿基部、四角柱の燃料切り替えコックをハセガワから移植。操縦桿の前方のパイプは、操縦席へのフレッシュエア吹き出し口(だと思う)で、真鍮パイプで再現する。D-25とは形が違うが、誰もD-23のコクピットは知らないから、これでいいのだ。 D&S(文献-8)の現存D-30の色が当時の色調だとすれば、ダルダークグリーンはかなり青味の強い色である。#15濃緑色、#65インディブルー、#62白を2:3:1程度に混色。このグリーン、見れば見るほど、Ethellなどのカラー写真での日本軍機の緑黒色に見える。 |
![]() キットのオリジナルパーツ。左ハセガワ、右トラペ。コクピットの幅が違う。トラペの計器板はクリアパーツで使えるシロモノでなし。 |
![]() 酸素ホースの色が不明。ご存知の方、ぜひご教示願う。酸素レギュレータの右側の機器のみ、トラペから移植。 |
![]() キットのスロットルレバー(銀色の球状部分)は、Dでもかなり初期にしか見られない形だが、とりあえずそのまま。後期には棒状になる。D-25コクピット写真参照。 |
喇叭に物申す 当初「表」に掲載してたんだけど、考え直してこちらに。率直に言って、私は以前から同社の姿勢に疑問を感じており、早く市場から退出してほしいと願っていた。なぜか。それは、製品が他社のコピーか、全く似てないかで、飛行機模型を愛する心と、良質なキットを作ろうという真摯な姿勢が感じられず、一連の中国製品に通ずる拝金主義があるように思えるからだ。 多少出来が悪くとも、出してくれるだけモデラーにとってありがたいと思うべきか? 否。 なぜなら、プラモデル市場という限られたパイをメーカーが奪い合っている状況下で、こういったメーカーがパイの分け前にあずかることは、その分だけタミヤ・ハセガワといった優良メーカーの取り分が少なくなり、それがこれらメーカーの新規キット開発を抑制し、結局はモデラーや販売店の利益にならないからだ。 30年前の日本も、モノグラムをコピーしてたのだから、大目に見るべきか? 否。時代と状況が全く違う。 元々が実物の縮小コピーであるプラモデルで、他社製品のコピーが法的に問題があるかどうかは知らないが、商道徳的には問題ありだ。タミヤ1/48を拡大した1/32キットは、本来タミヤから出るのが正しい姿なのだ。 昔のマルサンは、高価な舶来キットに代わる安価な品を国内向けに供給し、それが日本にプラモ文化を根付かせた。同じことを中国国内向けにやるならそれは大目に見てもいいかもしれないが(まあ中国にスケールモデル文化が根付くかどうかは別にして)、日本、欧米市場へは止めてもらいたい。 では、この状況を改善するにはどうするべきか。悪いものは悪いとはっきり批評し、購入を止めるのが一番だと考える。買えばメーカーに「この程度でも売れる、儲かる」というメッセージを送ることになってしまう。小売店にとっては、短期的には厳しいと思うが、長期的にはきっとプラスになると信じる。
そこで、表面を均質なプラにするためには、Aのように中央で上下に切り離し、間にプラバンなどのスペーサー(シム)を挟んで接着する方法が考えられる。この場合、表面材質が異なるのは接着線上のみとなり、スジ彫り、リベットは全く問題ない。パテの固結時間を待つ必要もない。なお、スペーサー接着部には、裏側からプラバンなどで補強することが望ましい。 ところが、サンダーボルトの場合、ちょうど中央部にエアアウトレットがあったり、胴体前部と尾部とで嵩上げする高さが異なるため、単純ではない。そこでBのようにパーツを曲げてやることで、スペーサーを挿入する位置を頂部にする。ここでAとBを比較すると、外周の長さは等しい(つまりスペーサーの幅が等しい)。ここがポイントで、スペーサーの幅が等しければ、どこに挿入してもよいワケだ。 ただし、注意すべきは曲げたパーツは元に戻ろうとするので、内部にしっかりと補強部材(バルクヘッドなど)を入れておかないと、高さを増したつもりが幅を増したことになってしまう。面倒くさければ、縦に1本つっかい棒を入れておくと、横の広がりも抑えられる。 |
![]() 再掲。 |
![]() 再掲。右舷オリジナル。左舷修正済み。黒着色部がスペーサー。 |
それはさておき、まずは寸法出し。側面形は実機の側面写真を基準とする。この写真は、若干下方から撮影しているため、キャノピ下端の高さを補正する必要がある。これは水平尾翼端と付け根とのズレと、水平尾翼の幅とキャノピ下端の幅との比例計算によって求めれば、キャノピ高さ17.0mm、後端での高さ16.0mmとなる。 |
![]() 側面形はこの写真をトレース。ただし、若干下から見上げた状態なので、補正が必要。クリックして拡大(我が家のモニタで1/32原寸)。 |
![]() キャノピの高さなどは、こちらが参考になる。ただし横方向には歪みが大きい。クリックして拡大(我が家のモニタで1/32原寸)。 |
![]() インベイジョン・ストライプが断面形の把握に役立つ。クリックして拡大。 |
キャノピ後端から垂直尾翼前端までを、側面から見て一直線にカットする。上部がカットされた胴体パーツは歪みやすいから、あらかじめバルクヘッドをいれておく。積層プラバンの背中は、実機写真やタミヤのパーツを見ながら、まず彫刻刀(丸刀)で大まかに削る。あと1mmというところまで荒削りしたら、次に#60番から#180番のサンドペーパーで削る。このとき、特に、キャノピ後方窓からの面の流れに注意する。また、頂部は、キャノピ直後では丸い断面だが、アンテナ柱の付近では既に尖った峰となっている。 あらかた削れたら、背中を胴体パーツに接着する。胴体パーツは、まだ左右を接着してないので、背中も左右割りである。ここで失敗。左右の背中をそれぞれ別個に胴体に接着したため、左右を合わせたときに歪みが発生。気付いたのは瞬間でガッチリと接着した後。とほほほ。 しかし、このまま放置するわけにはいかず、バキバキと無理矢理剥がして最接着。こんどは左右仮合わせした胴体パーツと、左右仮合わせした背中とを、慎重に摺り合わせしてから接着。接着後、さらに背中を削る。まだ左右は接着してないので、削る際にずれないように真鍮線のピンを打っておく。 |
![]() 積層のための1.2mmプラバン。簡単な図面を描いて幅と長さを決める。 |
![]() バルクヘッドを挿入し、胴体上部をカットする。歪みを抑えるために、3枚のバルクヘッドをつなぐようにプラバンを仮り接着する。 |
![]() 胴体に接着してから、さらに削る。断面方向にエンピツで線を描き、写真と比較する。実はこの後、歪みに気付き、はがして再接着。 |
![]() 左右パーツの位置がずれないように打った真鍮線。左右を仮止めして、右舷側から左舷側にピンバイスで貫通させる。 |
さてここで、垂直尾翼前端付近の胴体断面を見ると、キットは上が尖った卵形をしている。胴体中央部では「下が尖った」卵形だから、感覚的にこれはおかしい。大した証拠はないが、普通の楕円形と考えたほうが自然。これを修正しようと思えば、胴体上側の接着部にプラバンでも挟んで広げてやればよい。 そうすると、オフセットしている垂直尾翼の右舷側は、尾翼の中心と胴体の中心が一致することとなり、修正不要となる。左舷側はオフセット0.7mmに対して倍のオフセット量となるので、これは仕方ないから切り離して正しい角度に再接着。ただしフィレット部は削りだけで対応可能だ。なお、この方法だと、水平尾翼の取り付け角に影響が出るので注意が必要。まあ、その調整は別に難しくないが。 |
![]() 垂直尾翼切り離し前の状態。 |
![]() 左舷側を切り離し、最接着したところ。このあと段差になっているフィレット部を削る。 |
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![]() コクピットに追加工作。前回写真から、ウェザリングも追加。 |
![]() 反対側。 |
胴体後方側面のインタークーラー・エアアウトレットのダクトは、トラペでパーツ化されており、うまいことにハセガワの穴にピッタリつながる。同社には文句たらたらだが、使えるものは使わせてもらう。不要な部分を切り取って、インタークーラー部にメッシュを貼る。これまでの作品では、随分と手前側に貼り付けていたが、実際はかなり奥で斜めになる。出来てみると、のぞき込んでもよく見えない。 |
![]() インタークーラーのダクトはトラペ。必要部分のみ切り取る。 |
![]() こんな具合に胴体に納まる。オイルクーラー直後のアウトレットの内側にもトラペのパーツを切り取って使用。。 |
また、中心線が正しい位置かどうかには確証がなく(ラダー分割ラインを鉛直の目安にする−厚みのテーパーは考慮済み)、下側排気口などのディティールは無視しているため、断面図として見たときの正確さには自信がないが、切り取ってゲージとして用いるのには問題なかろう。青線はストライプが無い部分で、窓枠などから推定して描いたもの。これもフレーム位置のつもり。
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![]() たまぐり。通販は「シーフォース」「ナナコ」で検索されたい。 |
![]() こうやって持つ。力で押すのではなく、先端を支点に針がワイパーの動きをするよう手首を回転させて彫ると、「打ち抜き」のミスを防げる。 |
主翼にリベットを打っていると、いろいろ細かいことが気になる。以下、列挙。まあしかし、おそらく元にした図面が悪いのであって、そこまでメーカーに求めるのも酷だろう。リベットを打たなければ、ほとんど気にならない点ばかりである。
作品は、そこまで修正せず。そのため下面ではラインが相当破綻している。ただし上面に関しては、桁、リブの位置を含め、できるかぎり正確に再現したつもり。 |
![]() とりあえずまず水平尾翼。主翼は次回更新で。見づらい写真で恐縮だが、ラインは大体こんなもの。 |
レイザーバックのパイロット後方防弾板。極初期(D-1で確認)は、ヘッドパッド付近の形状が異なり、直線状である。それも、上部は鉛直(左右が平行)で、途中から折れ曲がる形(お好み焼きのコテみたい)のものと、鉛直部分がなく全体が台形のものと2種類。ただし、すぐに円弧状(富士山の形)になった。 レイザーバック最後方窓の内側の塗色。機体外面と同じ(OD:オリーブドラブ、またはNM:無塗装)ものと、ニュートラルグレイとおぼしき色で塗られたもの(外面OD、NMともにあり)の両方が見られる。初期の8AF(第8空軍、当時は英国に基地を置く)ではグレイのものが多いような気がする。いずれにせよ、コクピット内部色ではない。 |