P-47D バブルトップ 製作記(1/32ハセガワ)
レイザーバック

2007.6.20 初出

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 はじめに 




■ サンダーボルトへの道

 ついに!待望の1/32サンダーボルトバブルトップが、ハセガワより発売された。発売予告時から当ページでエールを送ってきた甲斐があったというもの。国産メーカーの連合軍機1/32リニューアルは初めて。画期的快挙である。ハセガワには大いに感謝したい。それに応えにゃオトコがすたる。またもハードな長旅(理由は後述)になりそうだけど頑張ってみるべか〜。と半月ほど前から作り始める。

 さてその理由。実は、期待が大きかった分、箱を開けたときの「ため息」も大きかったのだ。それはつまり『ハセガワさん、私のページを読んでくれなかったのネ(泣)』あるいは『読んだけど無視したのネ(号泣)』、ということで、私の脳内にある「理想の姿」にするには少なからぬ手間がかかるのだ。

 でもこれは、サンダーボルトの太った女神様への愛が試されているのだ。修正作業は愛情の表現に他ならず、しかもそれが他人の作品との決定的アドバンテージとなる。そう考えると、むしろキットが完璧でないことに感謝の念すら覚え、それなら一丁やったろうやんけ〜。静岡で見た作品はかっちょよかったしな〜。となるわけ。

 ところが、

 案の定、トランペッターからレイザーバックとN型のリリースがアナウンスされ、テストショットをWebで見るとタミヤの丸コピー。しかも、某電撃スケールモデラー誌のS編集長から『作例やりません?、以前レイザーバックやりたいなんて言ってましたよね〜』とのお誘い。これは方針変更して、ハセのバブルを完全修正した上で、トラペのキャノピと背中を合体し、究極のレイザーバックを目指すしかないぜ。

 さて、雑誌掲載(予定)にあたり、編集長との約束が1つ。雑誌発売後一定期間は、当HPにて製作記を公表しないこと。ただし、購買意欲をそそる前フリは推奨。ということで、本項、表ページからはリンクしていない関係者限定「裏製作記」としてスタートする。いずれ雑誌掲載後には一部修正して公表する予定である。そして、表ページには、適宜「予告編」を出すつもり。

 なお、ハセガワキットであるが、総体的には素晴らしいキットで、T-ボルトの偏執狂的ファンでないかぎり問題ないレベルである。購入を検討されている方には、即買い、即作りをおすすめする。なにしろ、2007春時点では同社はレイザーバック開発の予定がないとのウワサ。やっぱり皆んなにどんどん買ってもらわないと困るのだ。(←勝手な奴)


■ キット評

 まずは、長所から。表面のモールドは素晴らしい。スジボリの太さも完璧。いつも思うがタミヤは太すぎて精密感に欠ける。余計なリベットが無いのも嬉しい。小物は必要十分。足りない部分はモデラーが補えば良いのだ。クリアパーツの薄さもよい。全体のアウトラインについても、細かいことを言わなければ、合格点をつけられるだろう。

 次に問題点。ライトユーザー向けに、簡単に修正できる部分から。カウリングの取り付け高さが約1mm高く、下面で胴体との段差が生じる。メーカーとマニアの間で議論があったようだが、これは明らかな設計ミス。レストア時にミスした現存機を見ての誤解と思われる。

 カウリング内部のエアインテイクとの仕切りは、同社ヨンパチそのままの変な形。ただし目立たない部分なので、そのままでよいだろう。後部胴体側面のエアアウトレットも、ヨンパチのミスをそのまま引きずっている。ドアが横に開くのはもっと前方にスライドしてから。タミヤを参考にするとよい。

 コクピットの開口部が、後ろ広がりになっているが、実機はここまで極端ではない。コクピット床は、コルゲート(波板)「なし」となっている。タミヤのD-25は「あり」だが、調べてみるとD-25でも「なし」とする資料がある(Bodie本)。逆に「あり」とする根拠資料をお持ちの方、ぜひご連絡いただきたい。

 主翼は、前縁が尖るように削るとT-ボルトらしくなる。同様、垂直、水平尾翼の前縁も尖らせるとさらによい。また上下パーツ接着の際には、ねじり下げにも注意。


■ 続、キット評

 以下はマニアックかつ修正が大変な部分。ただし、これらをもってして、本キットが他に比べて劣っているのではないことは、明言したい。およそ世の中に出回っているキットは、この程度のミスは大なり小なり抱えている。模型誌が書かないだけだ。むしろ本キットはミスのレベルが小さいと言える。特に簡易インジェクションメーカーやアジアの新興メーカーには、外形の捉え方が甘いものが多数。要注意だ。

 と前置きしつつ遠慮無く斬っていこう。このキット、一言でいうと同社ヨンパチの拡大。でもって「拡大するならココは直してね」とお願いした部分は、残念ながらほとんどそのまま。ただ、進化した部分もあって、胴体下部は側面が平らにスリムになった。まあ100点満点ではないけれど、タミヤでもミスしていた点で、これは高く評価できる。

 ヨンパチ最大の問題点は、胴体高さの不足。コクピット前方では1/32実寸で約2mm不足。それに伴い、カウリング高さも同じだけ不足している。また、胴体側面形では尾部が切れ上がって見える。これらの修正は、どこでどう辻褄を合わせるかが難しい。下手にやるとバランスが崩れるからだ。側面形については、エアライナーズネットのこの写真またはこの写真などと比較するとよくわかる。こいつに合わせても、タミヤは「完璧」。(だから言ったでしょ)




キットの胴体パーツ。全体的にスリムかつ尻尾が切れ上がって「スマート」で、独特の「迫力」に欠ける。

実機と比較されたい。「裏製作記」なので、著作権気にせず資料写真もバンバン載せちゃうもんね。


 ヨンパチから劣化した部分もある。それは機首の平面形。当ページでは、わざわざ真上から撮影した写真まで掲載したのにネ。ほんとに残念だよ。サンニイではタミヤに似て機首が前すぼまりになっており、カウリングは全体的に1mmほど幅不足。ただし、高さも増さないとカウリングがさらに扁平になるので要注意だ。以上はこの写真この写真この写真を参照されたい。いずれも手持ち資料のスキャン。我が家のモニタでは概ね1/32実寸になるようにサイズを調整してある。

 痛いのが風防&キャノピの断面形。バブルキャノピのΩ断面の再現はインジェクションの限界で仕方ないとしても、風防後端フレーム部分の断面形がいまいち似てないのだ。実機は側方がもっと直線に近く、上方が幅広。イメージ的には零戦の風防の側方直線部をゆるい曲線におきかえたような形である。キットはジェット戦闘機の風防断面みたく全体的に丸い。また、正面ガラスの幅も若干不足している。修正するならヒートプレスで作り替えるしかない。




キットの風防パーツ。天頂部(赤矢印部分)の幅が狭い。両側部(青矢印部分)の曲率が大きい。以上が似てない原因。

同じく実機写真と比較願う。キット設計者の形状把握能力を疑うね。


 キットの垂直安定板は左舷にオフセットされているが、これはB型の初期まで。以降はオフセット0となる。実機写真を見てもオフセット「なし」が確認できる。エアロディティール43ページの記述(左舷1°オフセット)は間違い。根本的に修正すると大変なので、前縁を薄く削るときに気持ちだけ修正するとよいのでは。

 主翼は、セバスキーS3というP-35からP-43、P-47に受け継がれたリバブリック社独特の翼型が、十分に表現されていない。なんか零戦の翼みたい。実機は上面後半部の湾曲が少なくほとんど平らで、一方前縁はかなり尖っている。翼の見え方については、この写真とかこの写真とかこの写真が参考になるかな。



垂直尾翼オフセット。これは「なし」が正解。

翼型もいまいち。これはテープで断面形が把握できよう。



■ 愚痴

 前述したとおり、このキットの発売自体には意義があり、感謝しているのだが、どうもハセガワの設計担当者の「手抜き」あるいは「センス不足」が随所に感じられてしまう。Airliners.netの画像なんて、たいした苦労もなくタダで手に入るのだから、ちょっとチェックして直してほしい。カウル内インテイク仕切とか、胴体側面アウトレットは、ヨンパチの間違いを修正せずそのまま。

 タミヤをちょいと参考にすれば済むのに修正してないところもあれば、タミヤのミスを安直に真似しているところもあったりして。キャノピ断面形のミスはセンス不足だな。カウリング下面の段差も、もう少し注意力があれば気付くレベルのものだ。




 組み立て 6/30追加




■ 胴体高さの修正

 エアライナーズの写真に重ね合わせて、どう修正するか考える。コクピットより前方は2mm高さ不足で、主として上側が不足。一方、コクピット後方は0.5mmほど。胴体真ん中で上下に切り離し、間に2mmのシムを挟むという案もあるが、側面アウトレットやスリットの形、位置が狂ってしまう。そこで、いつものとおり曲げて、左右接着面にシムを入れる方式に決定。曲げの邪魔になる前方バルクヘッドを切り離し、胴体パーツが上下に広がるように曲げ、最大高さ63mmとする。

 広げた胴体が元に戻らないよう、1.2mmプラバンのバルクヘッドを入れる。この断面形はカウルフラップのパーツから写し取る。上下に広げるだけでは、左右幅が狭くなるから、左右の接着面にシムを挟み、胴体幅を44mmに合わせる。上側に入れるか下側にするかで、主翼高さに影響するから、慎重な調整が必要だ。写真から判断するに、主として上側の高さ不足のよう。つまり、シムは上側に挟むべし、となる。そうしてできた胴体は、まさに脳内イメージのT-ボルトそのもの!



記念すべき?最初の作業はバルクヘッドの切り離し。モーターツールでプチプチと穴を開け、ニッパーで切っていく。

キットの胴体左右の絞り込みが実機より若干オーバーに表現されている。数カ所を切り込みを入れ、シムを挿入して広げる。

内部にバルクヘッドを入れる。下側後部は、応力が集中して外面に折れ線ができないように梁状のプラバンでバルクヘッドの圧力を受ける。

右舷側は元のパーツ。鉛筆で黒く塗った部分が挿入したシム。



■ 機首幅の考証

 Bodie本のN型を真上から撮影した写真(前出)から、実機の機首平面形とキットが違うのは明らかだが、もう一度、機首幅について検証しよう。ネタとなるのはこの写真。エンジンの前後に環状のフレームがあり、これにカウリングのパネルが取り付けられる。よく見ると、前側はエンジンの外周とフレーム外側が一致しているのだが、後ろ側はエンジン側面部においてはフレーム内側とエンジン外周とが一致している。

 P&WダブルワスプR-2800エンジンの直径は1,342mm。写真からフレームの幅を計算すると約30mm。これより、パネルの厚さを無視すれば前側フレーム部の幅は1,342mm、後ろ側では1,402mmとなり、1/32でそれぞれ41.9mm、43.8mmとなる。横から見るとこの前後フレームは、それぞれカウリングのパネルにある留め金の位置に一致する。「なんだ、やっぱり前すぼまりじゃないか」と言われそうだが、N型の写真をもう一度よ〜く見てほしい。

 実機は、前後エンジンの中間くらいから後方は左右平行で、それより前は機首先端に向かって緩やかにカーブしている。そのカーブの分だけ前側フレームが狭くなるのである。一方、タミヤも32ハセも、前すぼまりが強すぎ。48ハセはいい感じなんだけどね。で、幅を測れば、ハセ32は前フレーム41mm、後ろフレーム43mmで、前フレームはエンジン直径42mmより狭い。明らかな論理矛盾。これはタミヤも同じ。


■ カウリング

 ハセガワのパーツは4分割で、それぞれの間に1.2mmプラバンを挟むと、ちょうどいいサイズに拡げられる。ただし、そのままでは「頬」のあたりで接合部の面がつながらないので、下面側中心線を切断し、前方で0mm、後方1mm程度くさび形に削る。接合部分は強度が低く、その後の「たまぐり」リベットの負荷が心配。裏から0.5mmプラバンで補強する。非補強部と凸凹になるので、適宜瞬間パテ、プラバンなどで埋める。

 カウル内インテイクの仕切パーツも、ヘンな形状。裏から瞬間パテで裏打ちしてから削る。また2枚のベーンも形が違うので0.3mmプラバンで置き換える。完全には再現できていないが、よく見えない部分なので、この程度でおしまい。キットは取り付け位置が1〜2mm前寄りだが、そのまま。



パーツの合わせ目に1.2mmプラバンを挟む。裏からも補強し、このあと補強部の凸凹をパテなどで埋める。

インテイクの仕切りパーツは、このように修正。左、キットパーツ。右、修正後。よく見えない部分なので、このへんで妥協。



■ エンジン

 ハセガワのパーツは、直径が実物のR-2800エンジンより1/32実寸で4mmも過小。カウルを広げたこともあり、カウルパーツの厚みを考慮してもスカスカ。トラペの出来が気になるが、手を動かさないと前に進まない(どっちにしろ直径の問題は同じだと思われる)。よって、ハセガワをベースに作業する。シリンダーなどの造形はとてもよい。

 追加工作は定番のプラグコードのみ。キットパーツは、コード基部が正しい本数分再現されてなく、自作する。0.5mmプラバンを馬蹄形に切り出し、裏からφ0.3mm糸ハンダを接着。そこに短く切ったφ0.6mm真鍮パイプを通して接着。1つ1つは簡単な作業だが、18気筒×2=36本だと肩がこるぜ。

 P&WダブルワスプR-2800エンジンは、サブタイプによって、プラグコード基部やディストリビューター(ギヤケース上に2個ついてるヤツね)が異なるが、詳細不明。新世傑などによれば、D-20からD-40まではR-2800-59を装備していて、D-30なんかの写真を見ると、キットとは違うんだけど。キットのコード基部は初期のレイザーバックに見られるような。まあでもいいや。



プラグコード基部。こういうものは、プラバンに穴を開けてから、外側を切り詰めていく。

プラグコードの作業終了。塗り分けが実物と少々異なるが、見栄え優先で。位置も、ちょいとズレてるし。ギアケースはトラペ待ち。



■ 主翼の考察 7/9追加

 似てない主翼、どうせ直すならキチンと調べよう、と資料をひっくり返すが分からないことが多い。新世傑に、上反角(上面で4°中心で6°というアバウトなものだが)と、取り付け角1°、翼型はリパブリックS-3との記述。その他、翼面積やアスペクト比などのデータもあるが、模型にはあまり役立たない。Web検索では、Seversky S-3という名称で、リパブリック社のP-35、P-44ランサーも同じ翼型。確かに3機の翼はよく似ている。そんなことより知りたいのはその形状データと、翼厚比だが、これがなかなか見つからない。

 仕方なく、S-3の形状については、実機写真をトレースする。上面下面のカーブがよく分かるものからそれぞれトレースして、モナカのように合わせ、前縁が分かる写真で補正する。模型もモナカだから、実用上は問題ないはず。参考までにキットの翼型も、胴体パーツの接合面をトレースする。

 結果がこちら。Hasegawa H-3翼型(キット)は胴体接合部における翼厚比が16.5%と、高速機にしてはちょいと厚めだ。重ねてみると、両者の違いがよく分かる。

 トレースしたS-3翼型を、縦横の縮小率を変えることにより翼厚比を変えたのがこちら。

 次に、実機の翼厚比を求める。P-47のマニュアルにある後桁取付ピンの図面に、ピン中心間隔が11.05インチとの記述がある。 この結合ピンがむき出しになってる写真(前出)から、ピン中心間隔とその部分との翼厚の比率が分り、それに11.05を乗じてこの部分の翼厚を出す。

 ただし、これが翼の最大厚さ位置ではないので、桁の前後位置関係と先のS-3翼型から、最大厚さ位置での翼厚をこれまた比例計算によって求め、それを翼弦長で割る。という過程を経て、取り付け位置における翼厚比を算出すると、15%となる。飛行中に前方から撮影した写真(だいたいの翼厚が胴体高さとの比率でわかる)と較べても、まあ違和感ない数字か。


■ 続、主翼の考察

 次に、主翼の正面形状、あるいは翼面のテカリ(ハイライトの入り方)、言葉を変えれば桁フランジ上下面が直線か曲線かどうか、さらに言葉を変えれば、翼厚比の変化率が一定かどうか、について考察を進める。

 サンダーボルトは楕円翼であるが、楕円翼の代表選手スピットファイアは、正面から見ても楕円翼。これすなわち、翼厚比の付け根から翼端にかけての変化率(減少率)が一定なのに対し、翼弦長の変化率が一定でないからと推測できる。一方、サンダーボルトは正面から見ると翼の上下は一直線に見える。これはどう考えたらよいのか。以下おおいし氏の仮説を引用。←私も支持。


サンダー>楕円翼に見えるが・・・

1)前後の主桁はいずれも一直線、平面写真から分かる
2)機銃パネルのピアノヒンジ、これ直線(そうでないと開閉できない)、すなわちこの部分は2次曲面と理解できる
3)主翼後縁のエルロンとフラップ取り付け部、これ断面上下はいずれも直線に見える

>以上から推察できる仮説「主翼は本来直線テーパー翼であり、フラップとエルロンの横方向中ほどの後縁を多少後ろに伸ばして楕円をムリに作っている」

>上記傍証として「水平、垂直尾翼いずれも見た目で後縁が楕円状になっているが、安定板の桁は直線である」これ舵面をいじって整形していることは明らか。

>上記であるとすれば、主桁フランジ材の加工はシンプル。


■ 続々、主翼の考察(おまけ)

 ついでにN型主翼の正面形状についての補足。以前N型を作ったとき、胴体付け根側における延長部の処理が疑問と書いたが、よく考えると、胴体はD型(正しくはMか)と同じ、ということは結合ピンも同じで、付け根部分の翼厚はDもNも同じ。また、脚収容部などDの翼との共通部分も当然同じ。とすれば、ここから導かれる結論は一つで、Nの翼延長部は翼厚一定。Fw190Dの胴体延長部みたいに、そこは面が不連続となっているはずだ。


■ 主翼の製作

 ハセガワのパーツ、しごいて曲げると何とかなりそう。パーツ裏や小口面の余計な部分を切り取る(銃弾パネル裏の補強板は中途半端な高さで、ヒケが生じるだけで無意味だね)。プリントアウトしたS-3翼型を切り抜いてゲージを作る。その翼厚比は、胴体取付部で15%、翼端は正確な値が不明なため一般的な値を採用し9%とする。

 上面パーツは、前縁の湾曲を強め、後半は逆に平らに、後縁を横に広げる(延ばす)ことでねじり下げを強め、翼端が若干削ぎ上がりとする。曲げたパーツが元に戻らなくするため、前縁には裏から0.5mmプラバンを接着する。

 下面パーツは、前縁を平らに延ばしたいところだが、曲がらないので裏から0.5mmプラバンを接着して削る。平板な翼中央部は湾曲を強めるように曲げる。さらに、フラップとエルロンのヒンジ部の翼厚を薄くするため、接着面を削る。

 翼型を保持するため、内部には一式戦「隼」並みの3本桁を配置。この桁高さは、翼型データから計算してある。そして、上面パーツ裏側には、強度保持のカーボンファイバーをがっちり接着。そして上下パーツを接着する。桁上側や、翼端には瞬間パテを接着剤がわりに使う。

 主翼パーツからエルロンを切り離したのは、大失敗。さも動きそうに見せたかったのだが、カーブの微妙な場所なので、後付けでうまくカーブが合うわけがない。結局コテコテに接着して削りたおす。パーツの厚みが唯一の救い。切り離した意味なし。



翼パーツは、正しい翼型になるように、手で曲げる。内部にはプラバンで補強。

翼型を比較いただきたい。上キット、下修正済み。赤矢印部の厚みや、黄矢印部の曲率に着目。


 サンダーボルトの主翼、見る角度によって、平面図の楕円翼とは全く違った形に見える。ねじり下げのため、正面斜め上方からは、直線テーパー翼のように見えたり。また翼端削ぎ上がりのために、側面わずかに上方からだと、角度により端部がN型のような矩形に見えたり。また、機銃の後方、エルロンの前方あたりは、厚みが薄くほとんど湾曲がなく見える。


■ 主脚収容部 7/26追加

 話は前後するが、主翼上下接着の前に、脚収容部の工作が必要。キットは、タミヤ1/48とほぼ同じ再現度となり、必要十分な出来である。今回も外形重視で、ひっくり返さないと見えない内部工作は程々に。ということで、作品では、縁を薄くし、パイピングなど目に付くディティールを追加した程度。

 なお、厳密な正確さを追求するなら、結構大がかりな改修が必要となる。つまり、パーツ割りの関係で収容部が全体的に浅いとか、主脚作動ピストンが天井と一体成形されているので、切り離してもう少し下側にずらすとか、ピストン後方の側壁が正しくは開口部より奥に位置し壁面が機軸に直角だとか(タミヤは正しい)、タイヤ収容部翼端側の側壁は、さらに1、2mm外側に位置するとか・・・。脚庫マニアの方は、私に代わって是非再現いただきたい。



目立つとこだけディティールアップ。本質的な間違いは修正していない。

縁を薄く削る。後でたまぐりが打てるか心配だけど。



■ コクピットの考証

 作品は、レイザーバックでも最後期型で無塗装銀のD-23とする予定。この時期のコクピットについては、そのものズバリの写真類が無く、詳細は不明。特に塗色と床板が悩ましい。

 塗色については、初期のレイザーバックはインテリア・グリーンで、ある時期から変更され、後期のバブルトップD-30ではダル・ダーク・グリーンとなったところまでは、いろいろな証拠から間違いないと思っている。問題は、その変更がいつか? D-23はどっちか? なのだが、手持ちカラー写真では決め手がなく、あとは白黒写真の印象での判断となる。

 そこで、いろいろな写真を眺め、計器板の黒、スイッチ類の赤と床や壁面の明度差、外装のオリーブドラブ、ヘッドレストの黒と防弾板との明度差などを目安に、無塗装のレイザーバックではダル・ダーク・グリーンの可能性が高いと判断する。もちろん、白黒写真の印象など、極めて当てにならないことは承知の上。

 次に床板のコルゲートの有無。最初のバブルトップであるD-25でコルゲート無しの写真がある(文献-1)。一方、レイザーバックでコルゲート無しの写真は見たことがない。また、D-25あたりからコルゲートが無くなったという説を聞いたことがあるが、出所、根拠が不明。ということで、決め手は無いがコルゲート「あり」と考えるか。

 計器板、両サイドの機器類について。タミヤのレイザーバックの左右側壁パーツは、D&SではC型とされるコクピット内の写真を再現したもので、D型でもかなり初期のものと思われる。D-23では、D-25に近いと思われるが、D-25なら計器板と右側面の写真がある。ハセガワ1/32ではこのD-25の写真にかなり近いものとなっている。

 蛇足ながら、タミヤのバブルトップD型は、C〜D型レイザーバック初期の側壁とコルゲート有りの床板となっている。バブル最初期のD-25であってもコクピットはM型のパーツを使った方が、より実機に近いものになるだろう。



この写真ではダルダークグリーンに見えなくもない。窓枠で判るように、本来無塗装で現地迷彩の機体。出所は文献-22、文献-1にも同じカラー写真があるが、色調は文献-22の方が鮮明。

この写真は、D-25のものとキャプションに書かれている。手持ちの他資料からはD-25から-28までの型の特徴に合致する。出典は文献-1。見所は多数。色調はダルダークグリーンか。風防窓枠裏は黒に見える。

D-30の計器板。計器板中央下部の「ふんどし」はD-30からとされる。この写真でもダルダークグリーンに見える。同じく文献-1から。



■ コクピットの製作

 ほとんど個人的メモ。読んでてつまらぬ「何を、どーした」が、以下だらだら続くけどご容赦願う。

 コルゲートの床板はトラペで、残りはハセガワを使う。D-23の計器板は写真が無く、D-25のものを参考にする。キットはD-30から装備された爆弾/増槽投下スイッチが計器板中央下部にぶら下がっている。これはD-28以前の型にする場合は切り取ること。かわりに用途不明(パーキング・ブレーキ・レバー取り付け基部か?)の凸部があるので、プラ材で追加。右下にぶら下がる計器はD-25では2連なので、1つ切り取る。メーター部分は、下手に手を加えると見苦しい出来になるので、そのまま。いつものようにデカールをポンチでくり抜き、1つずつ貼り、クリアをたらす。使用したキットのデカールは、印刷が大味なのが残念。

 キットの計器板は取り付け位置が2mmほど低い。これは、照準機や防弾ガラスとの位置関係がおかしくなるから、無視できない問題。また、写真と見比べれば、側壁との関係も違っている。計器板に取り付くラダーペダルはハセガワ。ペダルに穴を開ける。取り付け位置はあとで調整する予定。ペダルから床板に斜めに延びるロッドは目立つので是非再現したい(予定)。計器板の裏側にはメーターが再現されるが、配線などしても見えないから省略。それより縁を薄く削る方が重要。

 左右側壁もハセガワ。左側はスロットルのロッドを追加し、スロットルの左(後方)にある主脚出し入れレバーを延ばしランナー+微少鉛玉(東急ハンズで購入)で再現。その左下にはエルロン、ラダー、エレベータのトリムコントロールがある。型抜きの都合で再現されない部分をプラ材で置き換えた程度。その上側にあるレバーはフラップコントロールで、フラップ位置によってレバーの位置も異なるのだが、どっちがどっちだか不明なので、そのまま。

 右側は、コードを0.3mm糸はんだで追加。蛇腹のホースは酸素ホースで、クラッシック・ギターの4弦で再現。それが取り付く黒い円形のものは酸素レギュレーター。ホースの反対側は、ヘルメットの酸素マスクにつながり、その端部をコクピット内のどこかに引っかけておくことになっている筈だが、その位置が不明(C〜D初期では判明してるが)。

 床板はトラペだが、2本のレバー(左側は手動油圧ポンプ、右側の小さいのは尾脚固定レバー)と操縦桿基部、四角柱の燃料切り替えコックをハセガワから移植。操縦桿の前方のパイプは、操縦席へのフレッシュエア吹き出し口(だと思う)で、真鍮パイプで再現する。D-25とは形が違うが、誰もD-23のコクピットは知らないから、これでいいのだ。

 D&S(文献-8)の現存D-30の色が当時の色調だとすれば、ダルダークグリーンはかなり青味の強い色である。#15濃緑色、#65インディブルー、#62白を2:3:1程度に混色。このグリーン、見れば見るほど、Ethellなどのカラー写真での日本軍機の緑黒色に見える。



キットのオリジナルパーツ。左ハセガワ、右トラペ。コクピットの幅が違う。トラペの計器板はクリアパーツで使えるシロモノでなし。

酸素ホースの色が不明。ご存知の方、ぜひご教示願う。酸素レギュレータの右側の機器のみ、トラペから移植。

キットのスロットルレバー(銀色の球状部分)は、Dでもかなり初期にしか見られない形だが、とりあえずそのまま。後期には棒状になる。D-25コクピット写真参照。


喇叭に物申す

 当初「表」に掲載してたんだけど、考え直してこちらに。

 率直に言って、私は以前から同社の姿勢に疑問を感じており、早く市場から退出してほしいと願っていた。なぜか。それは、製品が他社のコピーか、全く似てないかで、飛行機模型を愛する心と、良質なキットを作ろうという真摯な姿勢が感じられず、一連の中国製品に通ずる拝金主義があるように思えるからだ。

 多少出来が悪くとも、出してくれるだけモデラーにとってありがたいと思うべきか? 否。
 なぜなら、プラモデル市場という限られたパイをメーカーが奪い合っている状況下で、こういったメーカーがパイの分け前にあずかることは、その分だけタミヤ・ハセガワといった優良メーカーの取り分が少なくなり、それがこれらメーカーの新規キット開発を抑制し、結局はモデラーや販売店の利益にならないからだ。

 30年前の日本も、モノグラムをコピーしてたのだから、大目に見るべきか? 否。時代と状況が全く違う。
 元々が実物の縮小コピーであるプラモデルで、他社製品のコピーが法的に問題があるかどうかは知らないが、商道徳的には問題ありだ。タミヤ1/48を拡大した1/32キットは、本来タミヤから出るのが正しい姿なのだ。

 昔のマルサンは、高価な舶来キットに代わる安価な品を国内向けに供給し、それが日本にプラモ文化を根付かせた。同じことを中国国内向けにやるならそれは大目に見てもいいかもしれないが(まあ中国にスケールモデル文化が根付くかどうかは別にして)、日本、欧米市場へは止めてもらいたい。

 では、この状況を改善するにはどうするべきか。悪いものは悪いとはっきり批評し、購入を止めるのが一番だと考える。買えばメーカーに「この程度でも売れる、儲かる」というメッセージを送ることになってしまう。小売店にとっては、短期的には厳しいと思うが、長期的にはきっとプラスになると信じる。


■ 胴体高さの修正(補足) 8/3追加

 6/30更新分で胴体高さを修正しているが、文章と写真だけでは解りづらいので、図解にて説明する。下図は、胴体の断面を模式的に表したもので、グレイの部分がキットパーツである。左上のように、赤点線のように断面形を修正したい場合、右上@のように、パテまたはプラバンを接着して盛り上げる人が多いだろう。

 これは、一見簡単な方法に思えるが、パテにつきものの気泡の処理に思わぬ手間を食われるし、表面の材質がプラとパテ(またはプラバンと接着剤)と異なるため、スジボリやリベット打ちをする場合には極めて都合が悪い。パテにスジボリは「絶対」にうまくいかない。プラバンを瞬間で貼っても、プラと瞬間の互層は何かと不都合。

 そこで、表面を均質なプラにするためには、Aのように中央で上下に切り離し、間にプラバンなどのスペーサー(シム)を挟んで接着する方法が考えられる。この場合、表面材質が異なるのは接着線上のみとなり、スジ彫り、リベットは全く問題ない。パテの固結時間を待つ必要もない。なお、スペーサー接着部には、裏側からプラバンなどで補強することが望ましい。

 ところが、サンダーボルトの場合、ちょうど中央部にエアアウトレットがあったり、胴体前部と尾部とで嵩上げする高さが異なるため、単純ではない。そこでBのようにパーツを曲げてやることで、スペーサーを挿入する位置を頂部にする。ここでAとBを比較すると、外周の長さは等しい(つまりスペーサーの幅が等しい)。ここがポイントで、スペーサーの幅が等しければ、どこに挿入してもよいワケだ。

 ただし、注意すべきは曲げたパーツは元に戻ろうとするので、内部にしっかりと補強部材(バルクヘッドなど)を入れておかないと、高さを増したつもりが幅を増したことになってしまう。面倒くさければ、縦に1本つっかい棒を入れておくと、横の広がりも抑えられる。



再掲。

再掲。右舷オリジナル。左舷修正済み。黒着色部がスペーサー。



■ 背中

 当初、安直にトラペを移植しようと目論んでいた背中だが、これが使えないので自作となる。木型を削ってヒートプレスが最も望ましいが、逆Rでバキュームが必要となり、面倒くさい。そこで、プラバン積層で製作することに決定。ただしこの方法も、積層の境界が後々まで残るのでは?という不安があるのだが。

 それはさておき、まずは寸法出し。側面形は実機の側面写真を基準とする。この写真は、若干下方から撮影しているため、キャノピ下端の高さを補正する必要がある。これは水平尾翼端と付け根とのズレと、水平尾翼の幅とキャノピ下端の幅との比例計算によって求めれば、キャノピ高さ17.0mm、後端での高さ16.0mmとなる。




側面形はこの写真をトレース。ただし、若干下から見上げた状態なので、補正が必要。クリックして拡大(我が家のモニタで1/32原寸)。

キャノピの高さなどは、こちらが参考になる。ただし横方向には歪みが大きい。クリックして拡大(我が家のモニタで1/32原寸)。

インベイジョン・ストライプが断面形の把握に役立つ。クリックして拡大。


 キャノピ後端から垂直尾翼前端までを、側面から見て一直線にカットする。上部がカットされた胴体パーツは歪みやすいから、あらかじめバルクヘッドをいれておく。積層プラバンの背中は、実機写真やタミヤのパーツを見ながら、まず彫刻刀(丸刀)で大まかに削る。あと1mmというところまで荒削りしたら、次に#60番から#180番のサンドペーパーで削る。このとき、特に、キャノピ後方窓からの面の流れに注意する。また、頂部は、キャノピ直後では丸い断面だが、アンテナ柱の付近では既に尖った峰となっている。

 あらかた削れたら、背中を胴体パーツに接着する。胴体パーツは、まだ左右を接着してないので、背中も左右割りである。ここで失敗。左右の背中をそれぞれ別個に胴体に接着したため、左右を合わせたときに歪みが発生。気付いたのは瞬間でガッチリと接着した後。とほほほ。

 しかし、このまま放置するわけにはいかず、バキバキと無理矢理剥がして最接着。こんどは左右仮合わせした胴体パーツと、左右仮合わせした背中とを、慎重に摺り合わせしてから接着。接着後、さらに背中を削る。まだ左右は接着してないので、削る際にずれないように真鍮線のピンを打っておく。



積層のための1.2mmプラバン。簡単な図面を描いて幅と長さを決める。

バルクヘッドを挿入し、胴体上部をカットする。歪みを抑えるために、3枚のバルクヘッドをつなぐようにプラバンを仮り接着する。

胴体に接着してから、さらに削る。断面方向にエンピツで線を描き、写真と比較する。実はこの後、歪みに気付き、はがして再接着。

左右パーツの位置がずれないように打った真鍮線。左右を仮止めして、右舷側から左舷側にピンバイスで貫通させる。



■ 垂直尾翼

 オフセットを修正する。普通には、フィレットとの境で切り離し、正しい角度に再接着する。その場合、フィレットの整形が必要となる。左舷側は削りで対応できるが、右舷側はパテでも盛らないといけない。しかし前述のとおり、パテはいろいろ問題があって使いたくない。どうしよう。

 さてここで、垂直尾翼前端付近の胴体断面を見ると、キットは上が尖った卵形をしている。胴体中央部では「下が尖った」卵形だから、感覚的にこれはおかしい。大した証拠はないが、普通の楕円形と考えたほうが自然。これを修正しようと思えば、胴体上側の接着部にプラバンでも挟んで広げてやればよい。

 そうすると、オフセットしている垂直尾翼の右舷側は、尾翼の中心と胴体の中心が一致することとなり、修正不要となる。左舷側はオフセット0.7mmに対して倍のオフセット量となるので、これは仕方ないから切り離して正しい角度に再接着。ただしフィレット部は削りだけで対応可能だ。なお、この方法だと、水平尾翼の取り付け角に影響が出るので注意が必要。まあ、その調整は別に難しくないが。



垂直尾翼切り離し前の状態。

左舷側を切り離し、最接着したところ。このあと段差になっているフィレット部を削る。



■ 胴体接着 8/17追加

 胴体左右を接着する前に内蔵をつめなくては。コクピットは大体出来ているので、ラダーペダルからの操作ワイヤを0.3mm洋白線で追加し、その取り合いでラダーペダルを少々内側(と同時に下側にも)に寄せた程度。計器板の位置を合わせるため、コクピット全体を嵩上げする。



コクピットに追加工作。前回写真から、ウェザリングも追加。

反対側。


 胴体後方側面のインタークーラー・エアアウトレットのダクトは、トラペでパーツ化されており、うまいことにハセガワの穴にピッタリつながる。同社には文句たらたらだが、使えるものは使わせてもらう。不要な部分を切り取って、インタークーラー部にメッシュを貼る。これまでの作品では、随分と手前側に貼り付けていたが、実際はかなり奥で斜めになる。出来てみると、のぞき込んでもよく見えない。



インタークーラーのダクトはトラペ。必要部分のみ切り取る。

こんな具合に胴体に納まる。オイルクーラー直後のアウトレットの内側にもトラペのパーツを切り取って使用。。



■ 背中補足

 レイザーバックの峰を削るために、断面図をトレースする。元となる実機写真は、上に掲載している後方ちょい斜めから撮影したもの。このストライプの境界をトレースしたものが図の赤線。それぞれの位置は、胴体の各フレーム部となっているようである。片側をトレースしたものを反転して貼り合わせ、縦横比率を製作中のモデルの胴体に合わせて補正する。遠近法による誤差は修正していない。

 また、中心線が正しい位置かどうかには確証がなく(ラダー分割ラインを鉛直の目安にする−厚みのテーパーは考慮済み)、下側排気口などのディティールは無視しているため、断面図として見たときの正確さには自信がないが、切り取ってゲージとして用いるのには問題なかろう。青線はストライプが無い部分で、窓枠などから推定して描いたもの。これもフレーム位置のつもり。


クリックして拡大。元データはこちら

 


■ リベット、リベット、リベット

 いつものように、水平尾翼下面から打ち始める。通常部はたまぐり#1、点検パネルのファスナは#4または#8を使用。



たまぐり。通販は「シーフォース」「ナナコ」で検索されたい。

こうやって持つ。力で押すのではなく、先端を支点に針がワイパーの動きをするよう手首を回転させて彫ると、「打ち抜き」のミスを防げる。


 主翼にリベットを打っていると、いろいろ細かいことが気になる。以下、列挙。まあしかし、おそらく元にした図面が悪いのであって、そこまでメーカーに求めるのも酷だろう。リベットを打たなければ、ほとんど気にならない点ばかりである。

  • 主翼の小アクセスパネルのほとんどはリベットラインとケンカする。これは全部埋めて、リベットラインを描いてから、彫り直すのが正解。作品では上面など一部のみ埋めて彫り直し、残りはリベットラインをパネルに無理矢理合わせる。右翼の航法灯(アンバー)もケンカ。これはクリアー化した後で気付いたので修正できず。

  • 機銃の穴の位置と、その周囲のパネルラインの位置、形状が不正確。P-47の機銃は「水平」に並んでいるとの俗説があるが、これは間違い。厳密には水平でない。キットは俗説を信じてしまったようだ。正しくは、一番外側は銃身スリーブの中心と翼先端が一致。一番内側は銃身スリーブ下端と翼先端がほぼ一致する。

  • 機銃弾倉パネルのピアノヒンジのハシゴ形モールドは幅が太くて大味。また、弾倉パネル前後左右のパネルライン は平行で、パネルは平行四辺形が正しいのだが、キットは前後が平行でない。そこで、後ろ側を埋めてさらにヒンジの幅が狭くなるように彫り直す。しかし、実機はヒンジのハシゴ形は外から見えず、タミヤのようなスジ1本が正解のようだ。

  • 同じく機銃弾倉パネル、および機銃パネルのファスナが大味。数も不正確。写真から直径を割り出すと1/32で0.6mmが正解。埋めてたまぐり#8で打つ。

  • 主翼のリブは、実機では翼桁中心線に垂直であって地面には垂直でない。しかしキットは地面に垂直。このため、上面と下面との辻褄が合わない。これは他のキットでもよくあるミスで、図面を鵜呑みにするとこうなる。逆にこれが正確に再現されているキットの方が珍しいかも。タミヤ1/48でも間違っている。なお、インベイジョン・ストライプも、リブに沿って塗られているはずである。

  • 主翼リブ間隔は、文献-31(丸メカ)にステーションナンバー入りの骨組み図があって、参考になる。手元の写真から読み取ったリベットラインと、この図は完璧に一致するので、この図の信頼度は高いと判断される。このステーションナンバーは胴体中心からリブまでの距離をインチで表したものだから、254をかけて32で割ると1/32実寸(ミリ)となる。しかし、この距離が翼桁中心線に沿ったものなのか、地面への投影図なのか不明。多分前者だと考え、リベットはそのとおりに打つ。

  • それと比較すればキットの主翼パネルラインは概ね正確。ただし、後桁沿いのパネルラインは、正しくは一直線になるべきところが折れ曲がる。なお、丸メカには胴体のステーションナンバー入り図面もあり、これも役立つ。

  • エアロディティールが取材したレストア機のガンカメラの位置は、通常の位置と異なる(Dの最後期か?レストアミスか?)。少なくともレイザーバックや初期のバブルトップとは異なる。鵜呑みにして作ったのでやりなおしだ。また横方向の位置はよくリベットラインと調整する必要あり。キットも要注意。

  • 脚付け根上面は、かなり複雑なリベットラインとなっているが、リベット入りの図面で、ここが正確に表現されているものはない。ウォークアラウンドによく分かる写真があり、出来るだけ再現する。

 本当に正確に作ろうと思えば、パネルラインを全部埋め、リブが翼桁中心線に垂直になるようにパネルラインとリベットラインを描くこととなる。そうすると、薬莢排出口や、脚収容口もずれるから、下面パーツをその分外側にずらして接着する必要があるし、脚収容部内部のリブも翼桁中心線に垂直にやり直さないといけない。

 作品は、そこまで修正せず。そのため下面ではラインが相当破綻している。ただし上面に関しては、桁、リブの位置を含め、できるかぎり正確に再現したつもり。



とりあえずまず水平尾翼。主翼は次回更新で。見づらい写真で恐縮だが、ラインは大体こんなもの。



■ 落ち穂拾い

 太平洋戦線のD-15-REの写真(文献-2、p.124)を見ると、防弾ガラスのフレームが随分と暗い。この時点でコクピット内部は既にダルダークグリーンなのか?たまたまフレームだけ暗色か?暗く見えるだけか? 一方で同じ文献74ページのD-21-RAの後部防弾板は明るく見える。工場により切換え時期に差があるのか? たまたま写真の写りのせいなのか?。

 レイザーバックのパイロット後方防弾板。極初期(D-1で確認)は、ヘッドパッド付近の形状が異なり、直線状である。それも、上部は鉛直(左右が平行)で、途中から折れ曲がる形(お好み焼きのコテみたい)のものと、鉛直部分がなく全体が台形のものと2種類。ただし、すぐに円弧状(富士山の形)になった。

 レイザーバック最後方窓の内側の塗色。機体外面と同じ(OD:オリーブドラブ、またはNM:無塗装)ものと、ニュートラルグレイとおぼしき色で塗られたもの(外面OD、NMともにあり)の両方が見られる。初期の8AF(第8空軍、当時は英国に基地を置く)ではグレイのものが多いような気がする。いずれにせよ、コクピット内部色ではない。










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