スピットファイア Mk.Ia タミヤ1/48 製作記 その2

2019.6.9初出

BACK


最終更新日





■ 塗装考証 9/26追加

 マーキングを選ぶのが面倒になって、結局これ。1940年9月、イングランド北部カートン・イン・リンジー(Kirton-in-Lindsey)における第616スコードロン所属 QJ-G/X4330は、後にRAFトップエースになるジョニー・ジョンソン中尉も搭乗したとされる。本機は、シリアルで分かるとおり1940年半ばの生産(単身先では月日まで分からんのじゃ)で、その頃にはスカイの塗料が行き渡っており、下面はスカイとされる。下面ラウンデルの位置は変則的。オンターゲット4(参考文献-59)では25インチとなってるが、写真からすると40インチ程度が妥当。

 コードレターQJは616スコードロンの他に92スコードロンも使用していて、ややこしい。しかも書体やサイズ、記入位置まで似てるのだ。ちなみに616sqnは1939年4月から41年7月までQJ、その後YQに変更。92sqnは1939年4月からGRで40年5月から戦後までQJ。バトルオブブリテン時は両者QJである。



 ところで、以前にも書いたが(1/72 Mk.I製作記参照)、バトルオブブリテンにおけるMk.Iの下面色は難解。スカイのようで実はスカイじゃない機体は数多い。というか真正スカイは少数派かも? キット指定塗装のDW-Kも、スカイでなくスカイブルー、その色調はスカイと比べ緑味がなく暗いブルーグレイとのこと。その他、オードニル(スカイより暗く緑味の強い灰緑色)、スカイグレイ(FAA使用の明るい灰白色)などがあった。こんなの、モノクロ写真で分かるかっつうの。下面ラウンデルの位置、サイズも不規則だし、BOB機の考証は意外と困難なのだ。以上出典はオンターゲットSP9(文献-62)など。

イラストではスカイブルーの色を想像して塗っている。QJ-Gの絵と比べるともっと暗くてもいいかな。



■ 基本塗装

 使用色は、いつもの自作カラー。改めてレシピを。ダークグリーンはC330ビン生、ダークアースはC22と黄色が3:1、スカイはC26ダックエッググリーンとC128灰緑色が3:1。ダルブルーはC326サンダーバード青とC331ダークシーグレイを3:1に黄微量で赤味を消す。ダルレッドはC327サンダーバード赤、C58黄橙色、C331が2弱:1:1、トレイナーイエローはGX4キアライエローに赤を微量加え、C58黄橙色よりやや赤味が少ない程度。ミディアムシーグレイはC335ビン生。ナイトは白20%混の黒(正しくは青味があるんだけどスルー)。

 では塗装作業。たまぐりリベットが埋まるのを防ぐため、出来るだけ重ね塗りを避けたい。迷彩塗装の上からマーキング塗装では何層にも重なってしまう。胴体ラウンデルはサフの上に直に塗る。しかも赤を除いて各色突き合せ。主翼は隠ぺい力の強いダルブルー、ダルレッドなのでダークアースの上に塗る。ただし、ラウンデルの下に迷彩の段差が出来ないよう、そこはマスクしておく。以上により、概ね2層以下になる(DGの上のレターなど一部は3層)。



まず、下面を塗装してマスク。次にDEを吹く。胴体ラウンデルは突き合せで塗るためマスクしておく。

ちなみに下面マスクはこんな具合。

迷彩はMr.ペタリでマスク。DEとDGの迷彩境の段差を避けるため、主翼ラウンデルとフィンフラッシュをマスク。

Mr.ペタリをはがす。ボケ味はまずまず満足。迷彩の不具合をタッチアップし、ラプロス#6000で柚子肌を磨き落とす。

マーキングは黄→青→白→赤の順番。これは黄色を吹いた後、青のためのマスクをしているところ。

青を吹いて、マスクして、白を吹いたところ。主翼の白は赤の下地。エッジに白が出ないように極薄く粉吹き。

赤も吹いてレターのマスキング。なお、マーキング塗装では、にじみ出し防止のため、あらかじめ薄いフラットクリアを吹いておく。

基本塗装終了。右舷レターは確かこの配置だったかと・・・ 


 補足。今回は、胴体ラウンデルの赤(直径2.6mm)もサークルカッターでタミヤテープを切り抜いてマスキング。コードレターはクラフトロボでマスキングシートを切る。データはイラストのがそのまま使える。これは楽だ。主翼上面のダルレッドはレシピより赤を少なく、赤、黄、グレイが1:1:1ぐらい。実は、最近の作(1/48スピVb、1/72スピXVII、Iaなど)はこの退色強めのダルレッドを使用。単体で見るとほとんど茶色だが、ダルブルーの隣に置くとダルレッドに見えるから不思議。

 マーキング塗装終了後、各色の境界を中心にフラットクリアを吹き、ラプロスで段差と柚子肌を磨き落とす。私の塗装法においては、この磨きの工程が非常に大事。磨くことで本物っぽいしっとりとした塗装の質感が得られる。一方で、磨く前にグラデーション吹きは不可。柚子肌の上にグラデーションかけて磨くと、網点になってしまう。だからここまでは、単色の平板な塗り。色調変化は次のウェザリングの工程で。


■ ウェザリング

 写真で見るX4330機は、汚れが少なくデリバリー直後を思わせる。模型としては、もう少し汚しを強めてバトルオブブリテンの過酷さを表現してみたい。当時の記録写真の中から汚れの激しいものをいくつか選び、そのイメージを再現する。とくに世傑などにもあるMk.IIa/RN-Nのカラー空撮写真は参考度大。しかし、なかなか狙いどおりにはならないね。失敗して取り繕って、右往左往。ヘタレやのう。以下備忘録。

 まず、定番のウェザマス黒+茶のウォッシング。これだけではパンチ不足。エナメルの黒をぺトロールで極薄に希釈してパネルライン、リベットライン中心にエアブラシ。やり過ぎ箇所はぺトロールで吹き落とし、定着のためラッカー系のシンナーを上吹き。次にエナメルのバフも同様に希釈して全体的に吹き、退色と埃汚れの表現。と、気付いたら調子に乗ってやり過ぎ。ぺトロールをティッシュにつけて拭き落とす。一部の拭き残しは、まあ汚れ表現ということにしておこう。

 再度バフを吹いて退色表現。今度は控えめに。一旦ここでシンナー上吹きで定着。この頃には表面はテカテカ。そこでフラットベース(フラットクリアではない)を極薄に希釈して吹き、半艶ぐらいに表面を整える。艶が変わると汚しのトーンも変わる。改めて眺めると、もう少し暗色の締めが欲しいかな。乾いたウェザマスをリベットライン、パネルラインなどを中心に筆などで擦りつける。



エナメルのバフを吹いて拭き取った状態。一部のバフは、塗装面に染み込んで拭いても取れない。

フラットベースを吹いて艶を消し。ウェザマス黒を擦りつる。ウォークウェイ・ライン、機銃口のシールも塗装。

下面はこんな感じ。拭き残し気味のウェザマス・ウォッシング(黒+茶)とエナメル黒の細吹き程度。

キャノピのマスキングもはがして、気分は完成。←オイ、小物がまだだろ。三角ペナント取れてるし。


 このあと、面相筆チッピング、インレタ(シリアル、コーションステンシル)で、機体本体の塗装&汚しは終了。普段と違う順番なのは、展示会でウェザリング状態をお見せしたかったがため。では、日曜日に翔バナイカイ展示会で。


■ 小物 12/16追加

 今年の年末は、何かと多忙で更新進まず。スピは塗装が終わって気が抜けて3カ月放置。これじゃあいかん!と重い腰を上げ、小物のうちメジャーどころをやっつける。小物パーツは、どれも形状の正確さ、ディテール、合わせとも素晴らしい出来。他キットだと、修正やディテール追加、ひどいときは自作を強いられるが、これらが全く不要なのは有難い。唯一、重箱の隅をつつけば、排気管のパーツ分割は疑問。別に排気口の穴が表現されてるわけでもなく、それなら一体にすべきでは? というのも、分割部に繊細な凸モールドがあって、接着部の整形でつぶれてしまう。

 脚庫とカバー内側の塗装が悩ましい。キット指定ではいずれもスカイ。一方で、銀という説もある。手元カラー写真では、スカイなのか銀なのか全く判別不能。一応、Mk.V作成時にほらぶろ掲示板で教わったとおり、銀にする。以下備忘メモ。スピナとブレードは白20%のセミグロスブラック。銀は黒混の8銀。



シリアルは以前作っておいたインレタ。

主脚は、このように左右を切り離し、ダボを切ると後はめ出来る。追加工作は、キャッチリングの穴を開けただけ。

排気管は、接着部の段差を溶きパテで埋め、後端に穴をあける。ペラは先端を薄く削った程度。

つうことで、自立。この画像ですら、カバー内側は銀にもスカイにも見える。



■ コーションのインレタ

 コーションは、昔作った自作インレタが経年劣化で上手く貼れず、新たに作る。版下データが出来たので、ご提供。ついでに、汎用8inシリアルのデータもつける。代表的な2種類の書体で作ってある。Inkscapeなど使って適当に並べ直して使ってくだされ。コーション、シリアルとも1/48なので、他スケールには適宜尺度変更されたし。

コーション ダウンロード


■ 続、小物 1/13追加

 小ネタで連続更新。バックミラーを作る。キットはミラーの細い柱を風防に接着する設計。こんなの出来るかっちゅうねん(怒)。ここはキットの数少ない不満ポイント。以前Mk.Vbを作ったとき、ハンダ付けで2つ作っていて、1つ残っているハズなんだけど、いくら探しても行方不明。仕方ないからハンダ付けで新造しようとしたんだけど、腕が落ちていて上手く出来ない。しかーし、今の私には3Dプリンターという強い味方がいるのだ。形状的に普通のレジンでは直ぐに折れてしまうが、タフレジンを使えば大丈夫。

 設計自体は極めて簡単。問題はプリンターのパラメーターと設計寸法(部品厚さ)との調整。最終的に、設計上の最小厚さ0.35mm、層厚0.03mm、露光時間15秒とする。これで出来上がり厚さは0.25mmくらい。



基本形状出来上がり。ミラーの幅は2.6mm。取り付け部の半円状のディテールはプリントすると再現されない。

出力は、このように上下逆にする。

タフレジンでプリント、サポートを切り取ったところ。

積層痕などを整形し、銀色に塗る。アップだと、ちとツライな。キットパーツもこの形状にて欲しかったな。


バックミラー ファイルダウンロード


■ 再開 10/30追加

 あれー、前回更新からいつの間にか10箇月が過ぎているぞー。おかしいなー(←自分がサボってたんだろが)。フォッケも完成したし、サボる理由もなくなったので再開しよう。まず最初は、バックミラーのやり直し。LCDプリンタは、同じデータでも出力方向によって出来上がりに違いが出るのだ。



試行錯誤の結果、この向きで出力するのがいいみたい。


 前回のは、天地逆さにしたため、出力時に下側(サポートのつく側)になる底板の上側が厚くなってしまうのだ。そこで、底板を立てた状態で出力する。使用レジン、パラメータなどは前回と同じ。



タフレジンで出力。

色を塗ってミラーフィニッシュ貼って接着。瞬間接着剤の一発勝負だぞ。


 いざ接着してみると、ミラーの角度がいまいち。これだと真後ろが映らないぞ。データではちゃんと後傾するように作ってあるんだけどなあ。原因は、出力時の増厚で底板の角度が変わったか、キットの風防頂部の角度が違っているかだろう。面倒くさいのでやり直しはしない。前回のお持ち帰りデータも更新。ミラー角度は修正済みなので、使用にあたっては角度変更不要(のはず。お試しプリントはしてない)。


■ 続々、小物

 アンテナ線は三角ペナントがちょっと面倒くさい。2枚の紙にナイロン糸を挟み込むように瞬間で接着。三角に切り出してアンテナ柱に接着。イモ付けではすぐに破損してしまうだろうから、柱の片面を削って、その面に接着する。IFFアンテナ線は、胴体から水平尾翼に張られる。胴体の穴に糸を通し、伸ばしランナーの先を斜めに切って、瞬間をちょん付けして穴に突っ込み、余分なランナーを切る。複葉機の張線なんかもこの方式が楽。



見辛いけど、2枚の紙にナイロン糸が挟まっている。

出来上がり。航法灯はキットパーツ。底面にミラーフィニッシュを貼る。基部は0.14mmプラペーパー。

胴体側の接着は上述のとおり。コーションは自作インレタ。

尾翼側は、真鍮線を埋め込んで結び付けるのが確実。こういうのは急がば回れなのだ。

ピトー管は真鍮帯金と真鍮線のはんだ付け。こういうのはまとめて何個か作っておくと後々楽。

主翼に接着。このあたりのコーションも自作インレタ。このサイズだと何とか読める。

ギアインディケータは0.5×0.2mmの洋白帯金。塗装したウォークウェイラインのダークグレイとの明度差ががが・・・

クリアランナーの翼端灯はマスクせずそのまま機体塗装。ライト部のみナイフで塗料をこそげ落としてクリアレッドで塗る。

DUNLOPのロゴはインレタ。一部欠けてるなあ。

航法灯はキットパーツ。これって何色だったっけ?



■ チッピング

 最後に翼付け根を中心に面相筆のチッピング。ダークシーグレイ、ミディアムシーグレイ、銀を使い分ける。チッピングの部分は艶が出てしまうので、その部分に最後にGX117つや消しスーパースムーズクリアーを薄く。スピナをラプロスで磨いたら艶が出過ぎたので、ここにも吹いてしっかり艶消し。



大戦期の主翼付け根は、パイロットや整備兵の乗り降りで意外なほどハゲチョロなのだ。



■ 完成

 以上で、ようやく完成、最後に1年ほど放置。反省。いやあ、戦車@3Dプリントにはまって、そのあと引っ越しが3回あって・・・(しどろもどろ)。さて、改めて写真と見比べる。下面ラウンデルは、サイズは正解だが(オンターゲット本は間違い)位置はもう少し外より。ラウンデルが翼外縁に接するくらい。右舷レターのGとシリアルはもっと接近している。あ、これイラストが違ってるのか。そのうち直そう。DUNLOPのロゴはないな。アッパーカウルは、頑張ってアウトラインを修正したけど、あと0.5mm幅を狭めればよかったかな。



バトルオブブリテンの厳しさを表現しようと、ウェザリングは強め。機銃のテープを貼り替えた跡の汚れが気に入っている。




たまぐりリベットと自作インレタとサフで表現したリブテープは、効果大で苦労が報われる。




ダルレッドとダルブルーは手描きマーキングならではの色調。デカールではこの色は無いよね。と自画自賛する。←久しぶりの1/48完成で舞い上がってるな。




彫り直したスジボリに水ウェザマスのスミ入れがよく映える。ラウンデルはあと2mm外側が正解。残念。




キットの出来がよいので、このくらいのアップにも耐えてくれる。しかしこのサイズだと、チッピングがいかにも「描きましたよ」って感じ。シリコンバリア剥がしの方がいいかな。






■ 完成写真 1/5追加

 写真を撮るのに、さらに二か月放置。年末の休みに背景の紙を買いに行って、ようやく撮影。新居は自然光撮影が困難(家族がいるとねえ・・)、昔に戻って写真用電球で。今回いつもと趣向を変えて、5:3の画面で全身を見せる。ローアングルで見ると、アッパーカウルはもっと削ってもよかったかな。まだ丸みが残ってる感じ。相当削ったんだけど・・。あとは、ナイロン糸のアンテナ線の仕上がりがイマイチ。気が向いたら極細テグスに張り替えよう。塗装、マーキングの色味は満足。デカールにこの色はない。キツめだけど汚らしくない線を狙ったウェザリングもまずまず。

 さて、改めてスピットファイアって、美しい飛行機だなあ。その原点であるMk.Iは、初期ならではの線の硬さ、未成熟さがあって、それがまた魅力的だ。早くタミヤからMk.Vが出て欲しいなあ(エデュはいらない)。


































■ 図面



Spitfire Mk.I 側面図

Spitfire Mk.I 上面図

Spitfire Mk.I 下面図

Spitfire Mk.I 正面図

Spitfire Mk.I 断面図


Spitfire Mk.V 側面図

Spitfire Mk.V 上面図

Spitfire Mk.V 下面図


Seafire Mk.III 側面図

Seafire Mk.III 上面図

Seafire Mk.III 下面図


Spitfire Mk.VIII 側面図

Spitfire Mk.VIII 上面図

Spitfire Mk.VIII 下面図

Spitfire Mk.VIII 断面図


Spitfire PR.XI 側面図

Spitfire PR.XI 上面図

Spitfire PR.XI 下面図


Spitfire Mk.XIV 側面図

Spitfire Mk.XIV 上面図

Spitfire Mk.XIV 下面図


Seafire Mk.XVII 側面図

Seafire Mk.XVII 上面図

Seafire Mk.XVII 下面図

Seafire Mk.XVII キャノピ


Spitfire PR.XIX 側面図

Spitfire PR.XIX 上面図

Spitfire PR.XIX 下面図


Spitfire Mk.22/24 側面図

Spitfire Mk.22/24 上面図

Spitfire Mk.22/24 下面図

Spitfire Mk.22/24 断面図


Seafire FR.47 側面図

Seafire FR.47 上面図

Seafire FR.47 下面図

Seafire FR.47 正面図

Seafire FR.47 断面図

Seafire FR.47 キャノピ




■ イラスト

 全イラスト一覧は
こちらで。



■ 参考文献

 参考文献はMk.47製作記に記載。Spitfire Notes from Edgar Brooksは、WEB検索すればPDFで読める。





前ページ



Wings Of Pegasus HOME