三菱 零式艦上戦闘機二一型 タミヤ 1/72 製作記 その2


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最終更新日 3DPファイル




■ 塗装考証 9/5追加

 予定どおり、緒戦の陸上基地部隊にする。実機写真があって、マーキングと機番が分かる機体にしたい。中国の12空は、前後で迷彩色が異なるという謎塗装なのでパス。となると、台南空か3空か22空となる。台南空の青帯にはとても惹かれるが、写真が少なく、青帯のある機体はアンテナ柱を撤去している。←アンテナ柱は「あり」にしたい。

 一方、3空は写真で機番と帯が分かる機体が割と多い。まず写真を見ていただこう。出典は「戦う零戦(文芸春秋社)」または世傑。



一応第一候補がこれ。3空のX142。セレベス島ケンダリー基地にて撮影。胴体帯は赤かと思ったが・・・(後述)

キャプションでは機番はX146だが、拡大すると私にはX142に見えるのだ。ハイフンは「なし」?

同じ3空の機体。機番は不明。胴体帯は、日の丸とは明らかに明度が異なる。黒か青(紺)か。ならばX142も赤ではない可能性大。

3空の機体。機番は不明。胴体帯はカウリングより明度が低いかも。だとすると黒か。手前機のカウリングは黒より明るい。


 X142の尾翼の白帯2本は小隊長機なのかな。胴体帯は黒の可能性が高いと思うが、100%の確信がないのと、機番にやや疑義があるのが難点。その他の3空機は以下のとおり。

X138:胴体白帯、尾翼帯なしか黄帯、機番は不鮮明で読めずキャプション頼り。
X141:胴体白帯、尾翼白帯、機番は不鮮明で147や111の可能性あり、ハイフンの有無はよく分からない。
X149:胴体暗色帯(赤?青?黒?)尾翼赤?帯、上の写真のX142と並んで写り、胴体帯の色は同じだろう。
X-157:胴体白帯、尾翼赤?帯、機番は137かも。
X-172:胴体黄帯、尾翼赤帯(日の丸と同明度に見える)、1は斜めに傾く、ハイフンあり。
X-182:胴体赤帯、尾翼赤帯(いずれも日の丸と同明度に見える)、ハイフンあり、胴体尾翼とも2本帯を消して1本にした痕がある、アンテナ柱なし。

 こうして並べると、胴体帯は3または4色、尾翼帯は3色かな。これらの帯で中隊と小隊を分けたらしいが、4×3×3=36機あったのだろうか? ともかく、上記の中から第2、第3の候補を選ぶとこれだ。



第2候補。X141。帯の色は100%疑義なし。機番がやや不確定なのが難点。

第3候補。X-172。胴体帯は黄、尾翼帯は赤かな。とにかく、暗色の帯は、いまいち色が確定しない。


 さらに、台南空と22空の候補がこれ。



22空。手前の機番はキャプションによるとII-116。胴体帯は黒かな。日の丸がやけに薄い。

台南空。機番V-105は赤フチつきの白とか。


 いやあ、どれも決定打に欠け、決め難い。もう少し悩む。帯の色や機番について情報をお持ちの方、ぜひお知らせ願う。

 これら候補について、実際にモケイに塗ったイメージをつかみたいのと、機番と帯の位置、サイズ、書体を決めるため、塗装図を描く。こういう目的なので、図面としての正確さは全く求めない。アウトラインやパネルラインはタミヤのインストを「参考」にする。ざっとした絵だがご容赦を。4番目は1番目との比較で胴体帯を赤にしたもの。機番のサイズと書体は機体によって多少のバラツキがあるようだ。









 意匠的には、一番目の黒白帯がスパルタン(って言葉も最近聞かないけど)で好みかな。


■ 明灰色の色調について

 零戦の明灰色は、過去から色々と議論されていて、いまだに結論が出てない(ように思える)。ホント難しい色だよね。ここでは、私の考えを述べたい。

 上の塗装図、お気づきのとおり地の明灰色の色調を変えている。1番目と4番目は、やや緑褐色寄り。2番目は純粋な無彩色の灰色。3番目は黄褐色寄り。5番目は1、4番目の明度を上げたものだ。では、どれが正解だろう。あるいはどれも正解ではないのか。

 現在までの変遷をまとめる。今から4、50年前のグンゼカラー35番明灰白色は、明るいライトブルーで、これが「常識」だった。今思うと、本物を見た人も存命の時代での人々のイメージする零戦の色だったのではないか(←それを裏付ける傍証(※)もある)。だとすれば、真実の色からそれほど離れてないのではないか。ただし、記憶の中で多少の美化、脚色はあっただろう。

 次に「飴色」が登場した。上の3番目をさらに暗く褐色寄りにした色調だ。根拠は現存する機体片の色調だとか。ある年代以降の模型や出版物のイラスト(とくに海外)で、この濃いめの灰褐色をよく見る。しかし、現存する機体片は、ワニス成分の経年変化による黄変で、当時の色調からは大分離れたものではないか、と私は思う。

 その後は諸説入り乱れ、各塗料メーカーからも様々な色が発売され、混沌としてくる。しかし、最近になって、現存する塗装片の顔料が調査された。それによると、黒と白の顔料しかないのだそうだ。ただし、その比率=明度までは分からない(←調べた人は分かってるのかな?)。黒と白のみであれば、上の2番目のような無彩色グレイとなる。これで議論決着・・・

 ではないと私は考える。当時の塗料のワニス成分って、わずかに褐色味を帯びてたのではないだろうか。九六艦戦がアルマイト色に見えたのは、このワニスも一役買ってるのではないか? それと、当時の顔料はやや濁った色(白→アイボリーホワイト)だったという話もある。

 もう一つ考慮に入れておきたいことがある。航フ イラストレイテッドNo.109「海鷲とともに」にある「見なれた零戦の塗色をできるだけ正確に再現した」という水彩画だ。作者は空母飛龍勤務の整備将校である。その色調は青緑がかったグレイ。無彩色のグレイではない。褐色系でもない。母校の大先輩だから、というわけではないが、私はこの記録/記憶を重要視したい。ちなみに、いい本なので未読の方は買うべし。

※ 当時グンゼが35番を発売するときに、零戦の元パイロット複数名に集まってもらい、その意見で色調を決めた、という話がある。


■ 結局結論は?

 顔料は白と黒(その比率は不明)、それにワニスと顔料の褐色味がプラスされ(その度合いは不明)、さらに空と海の青色が映り込み(その度合いは天候次第)、結果として人の目には明灰緑色として見えた、というのが私の結論。それがどの程度の明度と色相なのかは、たぶん誰にも分からないだろう。

 つうことで、自分の信じる色を塗ったらいいと思う。つまり、当時のワニスは透明だ、とするなら褐色味を抑え、空や海の映りこみのない色が正しい塗色だ、とするなら青味を抑えればいいわけ。私はどちらも控えめに考慮し、結果は上の1番目の色(モニタによって見え方違うだろうけど)。いずれにせよ、タミヤの箱の横にある塗装図の飴色は茶色過ぎるな。ペンキの色としては、米軍のガルグレイFS16440が近いと想像する。これ青味があまりないけど、米軍ハイビジ機も写真だと青く見える。模型に塗るなら、少量の青を加えたい。



再掲。1番目の灰緑色。明度は帯の白と黒、日の丸の赤との対比で決める。



■ 秋は忙し 9/11追加

 まだ真夏の暑さだが。暦の上では秋ってことで。で、今年の秋は例年になくイベントてんこ盛り。9/7 徳島モデラーズクラブ展示会訪問に始まり、このあとは、

 9/15 関西AFVの会展示会
 9/21、22 翔バナイカイ展示会(3DP受け渡し)
 9/28 彩雲会K名人の工房訪問
 10/5 WINGS例会
 10/12、13 大激作展、10/14 モデリンク
 10/19 北九州銀翼会展示会

 と、毎週末に模型関連の予定が入っている。その間に3DPを生産し、孫姫が来襲しで、ホント模型を作っている時間がない。零戦は大激作展には間に合わせたいところ・・・ あとは塗装、マーキングと小物で完成だが、現在、キャノピのマスキングで停滞中。


■ ささやかな進捗

 その間の、ささやかな進捗。風防、キャノピのフチを薄く削る。画像は風防のみだが、可動部キャノピ、後方固定部キャノピのフチも薄くする。風防と可動キャノピは、窓枠の範囲内でエッジを斜めに削る。固定キャノピは、前側の窓一枚分のなかで斜めに削る。ここは厚いのでフチだけでは薄くできない。



工作前。見やすいようにエッジをマッキーで塗っておく。

工作後。斜めの部分は黒く塗っておけば目立たないだろう。


 マッキーは、塗装で表面に滲んでくるから、使う場所によってはエライことになる。今回の場合は滲んでも問題ない場所。


■ キャノピマスキング

 キットの窓枠は、微小な凸モールド。段差が小さいので、いつものようにセロテープを貼って、モールドをなぞってカットする、という手法が通用しない。そこで、アルマの疾風と同じ方式、マシンでマスキングシートを切る方式にする。しかし、窓枠が多いので、かなり大変。現在苦戦中。画像なし。


■ 塗装考証、追加情報

 台南航空隊所属機のカラー映像の情報をいただく。毎度感謝。この映像は、米陸空軍第36戦闘飛行隊の整備士官、ケン・ゲリッシュ中佐が趣味で撮影したものである。使用されたフィルムは16mmのコダクロームだそうで、現在は米国国立公文書記録管理局が所有している。

 この中の11分過ぎから、1943年9月に米軍がラエを占領した際、飛行場周辺に廃棄されていた日本機群、特に台南空の零戦21型/報国-550の胴体部がアップで撮影されている。胴体の斜め帯は、報国の黒とは違う青みがかった黒色に見える。また、機体の灰色はかなり白っぽく、緑味や褐色味はない。一方で、日の丸の赤はかなり鮮やか。

 前回の拙考察とこの画像がどう結びつくのか、悩ましいところである。灰色については、放置された残骸であって、退色やチョーキングの影響があるといえなくもないが、鮮やかな赤とがうまく結びつかない気がする。それはさておき、後方の21型は、下塗りの赤褐色が薄く透けていること、操縦席後方のキャノピ内部の胴体が黒(または暗灰色)であることが分かる。

動画はこちらから。https://www.youtube.com/watch?v=F53Mo374edg







■ キャノピ接着 9/17追加

 その前に照準器をとりつける。で、後方固定キャノピを接着するが、流し込み系を使ったところ、胴体と窓ガラスの隙間に流れてしまう。はがして翌日ペーパーとコンパウンドで復旧。毎度同じミス。学習しないやつだな。1/48零戦の製作記を読み返したら、同じミス。ここはキットの落とし穴。これから作る人は気を付けよう(ヨンパチもね)。



照準器はキットパーツを使い、投影ガラスのみ0.2mmプラバンに置き換える。

オーマイガー! 流し込み接着剤が流れて窓の内側がとんでもないことに!


 胴体側も少々削り、再度塗装。今度は風防ともども白フタで接着する。で、接着後に気づく、照準器のガラスが無くなってる。オーマイガー。風防が邪魔でもう取り付け不可能。仕方ない。忘れることにしよう。


■ 続、キャノピマスク

 カッティングマシンのデータを作る。セロテープをクリアパーツに貼り、ケガキ針で窓のエッジをなぞる。はがしてカッティングシートに貼って写真を撮り、これをトレース。あとは実際に切ったシートをクリアパーツに貼って微修正していく。



セロテープをカッティングシートに貼ったところ。下に見えるのは寸法出しのための定規。

3、4回修正して出来たのがこれ。しかし、各辺がビミョーに曲がっている。コーナーのRも不揃い。


 各辺が曲がっているので、パーツに貼っても窓枠の「通り」が悪く、カッチリ感が出ない。そこで、カッティングマシンは諦め、別の方式を探る。1つはセロテープを使い、切り出す際に、細切りカッティングシートのガイドを貼る方式。2つめは普通に細切りマステをチマチマ貼っていく方式。不要パーツで試してみる。

 結果は細切りマステ方式の方がいいかな。折角マシン用のデータを作ったから、寸法合わせにこのデータを利用してやる。マステにカットしたシートを貼って、これを目安に定規でマステを切るのだ。



こんな具合に、カットしたシートに合わせてマステを切る。しかし実際に貼ってみるとビミョーなズレが残る。

そこで、マステをこんな具合にカット。各小片をそれぞれの辺に合わせて貼る。四隅はコーナーに合わせてカットする。

パーツに貼ったところ。X字の切れ目の隙間や重なりがビミョーなズレの現れ。ここはあとでマスキングゾルを塗る。

風防はほぼ一枚貼り。最後方の窓は元のカッティングシートを使う。スライドレールを伸ばしランナーで追加工作。


 さあ、次は塗装だ。


■ 調色

 前回記事のとおり、C325 FS26440(米軍ガルグレイ)をベースに調色する。他にC315 FS16440もあるけど、万の位の2で表されるとおり半艶なので。しかし、手元のこの2色、本来艶の違いだけのはずなのに、色調も違うんだよな。何故違う?どっちが正しい?

 さておき、C325に少々青味を加えたい。これにはC308 FS36375(ライトコンパスグレイ)を混ぜる。比率は半々よりややC308が多め(6:4くらい)。



左C325、右C315。左はやや緑っぽい。本来の色調は右が正解かな? でも半艶なので325を使うのだ。


 あ、ビンをよく見ると、C325は航空自衛隊F-1迷彩色とあるな。だからか?


■ 塗装考証その2

 本番塗装の前に、細部塗装の考証を。まず、フラップ内側の塗色について考える。モケイだと青竹で塗ってる例が大多数だよね。



この写真だと、なるほど青竹に見える。三菱製。キャノピ内部は、やはり黒(または暗灰色)だ。

しかし、この写真はどう見ても青竹でない。迷彩色と同じ明灰色かな。


 右上写真は、世傑零戦スペシャルだと75ページ。R作戦支援の赤城甲板上とのこと。フチなし日の丸から三菱製と分かる。もしかして左上写真は実は日陰で暗く見えるだけなのか?? ここは現存するパーツも残ってそうだが、どうなんだろう?どなたかご存じ?


■ 塗装考証その3

 次に、脚カバー内側と脚収容部の塗装。モケイではどちらも青竹で塗っている例が大多数。でも、これ間違いだよ。タミヤも罪作りだねえ。証拠写真を見ていただこう。



3空の三菱製21型。三日月形の車輪カバー、主脚カバーともども明灰色。探せば他にも明灰色の写真が出てくるよ。

岩国航空隊の零戦32型(32型は三菱製のみ)。車輪カバーとその上方の脚収容部が明灰色であることが分かる。

381航空隊の三菱製52型。どちらも明灰色。つまり、三菱製は最初から最後まで、カバー内側と収容部は明灰色。

次に中島製を見ていこう。大分航空隊の中島製21型。車輪カバーとその上方の収容部は青竹。別写真から脚カバー内側は明灰色。

2枚目の32型と同じ写真にある中島製21型。この写真だと分かりづらいが、32型よりカバー内側が暗い。スピナの形状にも注意。

矢田部航空隊の中島製52型丙。車輪カバーと脚収容部が青竹、主脚カバー内側は明灰色に見える・・・かな。

拙作中島製52型。車輪カバーと収容部が青竹。脚カバー内側は明灰色。

モノクロ変換。ちょっと暗くて分かりづらい例だったな。


 脚カバーの荷重表示線も興味深い。三菱の初期は赤線一本が多い。途中から赤青。中島は最初から赤青かな。最後は赤黄青(52型丙写真参照)なのかな。←申し訳ない。荷重表示線は、あまり詳しく見てない。

 もう一度言う、三菱製は全部明灰色。中島製は脚カバー内側が明灰色であとは青竹(ただし末期は一部無塗装もありか?)。車輪カバーの青竹については、現存パーツがあるので、そういう機体が存在したことは間違いない。考証については裏ページも参照されたし。


■ カウル改修 9/25追加

 前からモヤモヤしてたのだが、キットのカウルの開口部が小さいような気がしてならない。この1/72キットは、同社1/32のスケールダウンだと思うし、その1/32キットは、現存実機を徹底的にリサーチしたものだと思う。であれば、キットは正確な外形のはずで、私がそう思っているだけかもしれない。写真で検証したいのだが、いい写真がなく検証が難しい。

 一方、世傑No.5に、当時の製造図らしきものがある。試しにこの寸法を測ってみると、開口部の直径はキットより1/72で0.5mm程度大きい。また先端のカーブの曲率はキットより小さい。これが寸法的、形状的にも実物のカウルと同じかどうかの確証はない。が、開口部狭い説の1つの傍証ではある。



その図面の写し。開口部直径は1/72で10.5mm。リップ先端直径は11.7mm。

こちらキットインストのトレース。位置と寸法は左図面と揃えてある。インストの図とキットが整合しているかは不明。


 真相は不明だが、ここは自分の感性を信じて、カウル形状を修正する。棒にペーパーを巻き付け開口部を0.5mm広げる。過給機インテイクの上辺が削れて無くなるので、0.2mmプラバンを曲げて接着。その分下辺リップを削って開口部の高さを維持する。

 カウル先端のカーブを製造図どおりに修正するなら、パテでも盛る必要があるが、ここはパス。カウル正面を気持ち削って、過給機インテイクの正面形状修正の辻褄を合わせる。。



修正前。

修正後。パースのせいでよく分からんな。過給機インテイク下辺は未修整(この写真で修整の必要性に気づいたため)。


 いずれにせよ、ビミョーな違いだ。自分的には、より21型らしくなって満足。モヤモヤ解消。


■ 塗装

 気分がスッキリしたところで塗装作業に入る。まず窓枠部に黒を吹く。そのまま明るい迷彩色を吹くと、黒い部分の発色が悪くなり、十分な発色にしようとすると塗膜が厚くなる。そこで黒の上に薄く白を吹いて、地の明度を揃える。修正作業でサフが薄くなったり取れたところにサフを吹き、準備終了。

 次に明灰色を吹いていく。いつもは十分に発色するまで吹いてからウェザリングに入るが、今回は90%の発色で止める。続いてウェザリング。今回、パネルラインや動翼境のシェーディングは一切やらない。なぜなら零戦はそんな風には汚れないから。人様がどう塗ろうが好きにすればいいが、私は絶対しない。

 ただ、迷彩色単色だと模型的にのっぺりしてしまう。そこでスポンジチッピングで潮焼けを表現する。実機写真で潮焼けが明示的に分かるものはないが、解像度の低いモノクロ写真しか残ってないから分からないのだ(ということにしておく)。チッピングは、基本色にグレイを混ぜたものを全面にスタンプする。

 チッピングはどうしても「やり過ぎ」になってしまう。その上から迷彩色をエアブラシしてトーンを抑える。その際、いつもの「ののの」吹き(F/A-18製作記など参照)で、ムラムラモヤモヤしたテクスチャーの味付けを加える。発色90%にしたのは、このモヤモヤ吹きのため。90%の部分と100%の部分がいい感じのムラになるわけ。さらにビン生のC325でも「ののの」吹きして、色味にもゆらぎを加える。



ベースの明灰色を吹いたところ。90%の発色で止める。

スポンジチッピングで潮焼けを表現する。画像はチッピングした直後の状態で、この上にさらにエアブラシを重ねる。

書き忘れてたが、手掛けを真鍮線で追加工作。零戦作るなら一度はやりたいよね。

チッピングの上にエアブラシでのの字を書いて、基本塗装終了。パネルラインのシェーディングは一切しない。


 さらに、全体にセミグロスクリアを吹いて、柚子肌やチッピングの凸凹をラプロス#6000で軽く均す。がっつり研ぐとエアブラシ上掛けも取れてしまうから程々に。

 続いてマーキング塗装。3空のX142号機にする。その前に調色。日の丸は、アルマの疾風に使った赤とC114 RLM23レッドを半々(注:後日塗り直し)。カウリングは、F4U-5Nに使ったシーブルーをそのまま。黒帯は白20%の半艶黒。日の丸のサイズと位置は、キットインストそのままだけど、大丈夫だよね。



マスキングの途中状態。日の丸は、丸いテープで位置を決め、周囲を貼って中をはがす。

白、黒、赤、紺と吹き、歩行禁止線のマスキング。スピナはイメージ確認のための仮り塗装。カウルも仮り止め。

マスクをはがす。なんか、日の丸か朱色っぽくて気に入らない。RLM23のせいかな。

C365紅色をベースに調色して塗り直す。レシピは後述。そのため、再度マスキング。ああメンド。

塗り直し完了。それほど大きな違いはないが。

チラ見えのアクチュエータがイイのだ。銀で塗って目立たせる。


 日の丸塗り直しのレシピ。C365紅色は「日本海軍機用」と書いてある。ちょい青寄りの赤だ。そのままでは彩度が高すぎるのでダークアース、セールカラー、黄色など混ぜるが、どれだけ混ぜたかよく分からん。結果的にC365、C310 FS30219(ベト迷タン)、黄色が2:2:1くらいと同等。赤は彩度を落とすと青に寄っていくので、黄色で戻す感覚。

 マーキングの各色を吹く前に、セミグロスクリアをひと吹きしてにじみ防止するのはいつものとおり。歩行禁止の極細線は、先に赤を塗って細切りテープでマスクするより、後塗りで細い隙間を開けてテープを貼る方がキレイに決まる。 細切りテープじゃ、ヨレて上手く貼れないし、周囲にはみ出た赤の上に明灰色じゃ、発色が悪い。


■ インレタ 10/1追加

 モデリンクまで2週間。次の週末は用事があり、来週はモデリンクの準備で製作時間が取れない悪寒。だから今週中に完成させたいところだが・・

 インレタが出来上がったので貼り付ける。今回作成したのは、機番、製造番号、足踏の3つ。ココヲノセル→ はうっかり失念。予備を作ってもスペースが余るので、動翼リブと他の機番(X141、X172、II-116各1機分)も作成。



機番のインレタを貼る。貼り方はいつもどおり。台紙ごと切り出しマステで仮止め、台紙を引き抜いて転写。

製造番号もインレタ。一部の文字は転写できず。まあいいや。雰囲気だから。

足踏もインレタ。デカールあるけど、透明ニス部の段差と、経年変化でニスが黄変するのが嫌なので。

給油口の蓋を日の丸赤で吹き付け塗装。マスキングはセロテープを貼ってスジボリに沿ってナイフで切る。


 版下データをご提供。Google Chromeだと右クリックして「名前を付けてリンク先を保存」。左クリックで、イメージ表示。

インレタ版下(機番、リブ等)


■ 脚まわり

 コクピットと脚収容部には凝らない派だが、脚フェチなので脚はちゃんと作る。零戦って、脚が繊細で、それが魅力なのだよね。



脚柱パーツに脚カバーの一部分(赤矢印)が一体となっている。これ1/48も同様。

よく切れるナイフで切断し、カバーに接着する。こうした方が、整形と塗装が楽。カバーはフチを薄く削る。

隙間を埋めて塗装。荷重表示は赤線一本にする。これは三色のキットデカールの不要部をカットしたもの。

塗装して組み立てる。ブレーキパイプは0.2mm鉛線。オレオはミラーフィニッシュ。脚柱は白20%の半艶黒。

車輪カバーは外側からフチを薄く削る。これが脚を繊細に見せる重要なポイント。

ついでに燃料タンクも。両面テープで脱着式とし、「なし」をデフォとする。


 落下タンクは、基地でも付いている写真が多い。が、「なし」の方が足元がスッキリして、零戦の軽快で繊細な感じが出るのよね。キットデカールの荷重表示線は赤黄青の三色だけど、21型にこのパターンはない。写真で赤青に見えるやつも、もしかしたら赤だけで、青に見えるのは汚れか、こすれて塗装が剥げたとも考えられる。


■ プロペラ

 21型のペラは、直径2.9mで、32以降より0.15m小さい。それだけでなく、ブレードの形状も違うように思える。21型の方が、先端の円弧の曲率が大きく、全体的にふっくら丸いような。写真を見比べても、違うように見えるのもあれば、同じように見えるのもあり、悩ましいところ。



三菱製21型。後縁など、全体にふっくら丸いカーブに感じられる。赤線は、案外先端から離れている。

こちらは52型。52型のプロペラ、スピナに関しては、三菱製と中島製の違いは見いだせない。

中島製21型。この写真だと、かなり丸く見える。ただし、撮影角度のせいで若干スパン方向(画像で左右方向)に圧縮されている。

52型。左と比べると、先端がかなり尖り(カーブの曲率が小さい)、ブレード全体も菱形っぽく見えるのだが。


 同じような写真でも、微妙に撮影角度やピッチが異なるので、比較が難しい。もしかすると、同じ21型、あるいは52型でも、ブレード形状にバリエーションがあるのかもしれない。

 それはともかく、模型ではふっくら丸い形状として、21型らしさを強調したい。キットの21型用ペラは、上でいうところの52型の形をしている。そこで、52型用のパーツを使い、先端を1mmカットし、端部を丸く削る。それだけで、21型っぽい形になってくれる。



左、52型用パーツの先端をカットしたもの。塗装してキットデカールを貼り付け済み。右は21型用パーツ。

ブレードを切り離し、中心に真鍮線を打って、3Dのスピナに接着する。直径は2.9mに合わせて根元で調整する。

裏側。スピナの小穴から瞬間を流して固定する。そのための穴なのだ。ブレード裏面は茶色。タミヤのインストは間違い。

機首にとりつける。うむ、これぞまさしく三菱製21型の姿じゃ。


 補足。キットの赤二本線のデカールは、やや線が太く繊細さに欠ける。仕方ない。前にF4U-5Nで赤版のインレタ作ったときに、21型を作る予定はなかったのだよ。貼り付け後、セミグロスクリアでコート。ブレードとスピナの銀は、C8+クリア。裏面の茶色はC131赤褐色に同明度のグレイを2割ほど。

 いやしかし、タミヤもインストとデカールをリニューアルすべきだよな。間違いが多すぎる。天下のタミヤなのだから、正しくあってほしい。


■ 座席

 3DPパーツを塗装する。もう目と手が追い付かない。ヘタレな自分でも筆塗りできるように、ベルトと座席面を離しているのだが(3D設計テクとしては、ベルト裏面のエッジに面取りを入れる)、それでも難儀。塗装メモ。本体はコクピットと同じくC340フィールドグリーンでエアブラシ。ベルトはC45セールカラーとC526茶色で筆塗り。



ファインのナノアビの箱絵を見て塗装、水ウェザマスでウォッシュする。アップはきついな。

溶剤系接着剤でコクピットに接着するため、底に0.14mmプラシートを瞬間で貼る。


 シートのフチのパイプ断面がイイ感じ(自画自賛)。これを表現したくて、3D設計を何度もやり直したのだよ。


■ 最後の作業 10/8追加

 まず、スミイレ(水溶きウェザマスのウォッシュ)。あまり強い色で入れたくないので、F4U-5Nと同じくスス+サビに日本海軍用セットのグレイを少々混ぜる。カウルと機体と同じ色を使い、カウルはラインが明るく、機体は暗くなる。拭き残しで、迷彩色が暗く沈んだ箇所もあり、全体をラプロス#6000で軽く磨き(暗い箇所はある程度しっかり)色調を回復させる。

 最後にフラットクリアあたりで全体の艶を整えようかと思っていたが、この磨きっぱなしの艶がイイ感じなので、これを最終状態とする。で、キャノピのマスクを外す。今回はマステを使っているので、はがす前に境界にナイフで軽くスジを入れる。これで多少はエッジがシャープになる。それでもやはりテープに持っていかれた塗料で、エッジがギザギザになるが、そこは面相筆でタッチアップ。はみ出しは、尖らせた爪楊枝でこすり落とす。最後にウェザマス黒でウォッシュする。



キャノピのマスクを剥がし、上記の細工をした状態。可動キャノピのエッジを薄く削ってあるので、閉じた状態にもできる。

ピトー管は0.6mm真鍮パイプに0.3mm洋白線を刺したもの。翼端灯カバーと航法灯をクリアレッドで塗装。

車輪カバーのリンクを0.3mm真鍮線に置き換える。上はキットパーツ。ランナーに付けたままで工作すると楽。

機体に取り付ける。ロッドはたぶん黒で塗装されていると思う(少なくとも52型は黒)。


 画像にはないが、0.2号テグスのアンテナ線を取り付ける。可動キャノピはオープン状態にして木工ボンドで接着。これにて、工作終了。排気汚れやオイル汚れなど、下面の汚しを追加したいところだが、とりあえずモデリンクの商品使用見本としてはこれで完成とする。


■ 工房探訪記

 先日、ソリッドモデルS会のK氏の工房を訪問したので、ご紹介したい。現在、氏は1/16 零戦21型と1/16 P-51Dを製作中で、いずれも木による大まかな外形(モックアップというのかな?)が出来た状態。どちらも最終的には外板にアルミ板が貼り付けられる。



製作中の零戦21型。主翼下面に水平な取付基部が一体となっている。これを水平な台に乗せ、胴体各部の高さ寸法をチェックする。外形が出来たら、この基部は削り取られる。

金属製の主脚。全長10cm程度。オレオは可動する。タイヤはゴムを回転ツールで削ったもの。

主脚のクローズアップ。

工房の壁に全紙大の1/16原寸の図面が貼られている。図面は氏の鉛筆による手描き原稿をコピーしたもの。

図面のクローズアップ。

これが鉛筆描きとは信じがたい。


 驚いたのは、胴体や主翼は一体でなく、いくつかの断面で切って分割されていること。各部分は3mm程度の金属棒とパイプで、ゆるみなく結合されている。主翼はリブ断面で切って片側4分割程度。胴体は前後2分割だが、後部胴体は4分割程度が接着されたもの。各部分は断面形状の金属板を貼って、それをガイドにベルトサンダーで切削される。



アルミ板を曲げる1トンの油圧プレス機。画像のゴムブロック(レンガ色)と木型との間に、アルミ板を挟んでプレスする。

シリコン注型に用いる真空成型機(右)と電気炉(左)。

透明アクリル板のヒートプレスに使われるトースター。両面から加熱される。

ヒートプレスしたアクリル板。分りづらい写真だが、零戦の風防。指で大きさが分かると思う。

アクリル板には木製の持ち手をつける。サイズが大きいので持ち手がないと絞るのは難しい。

アルミ板の接着に使われる瞬間接着剤。硬化時間がゆっくりしている。店頭にあまり流通していないが、ネットで買えるとのこと。



■ 完成

 取り急ぎ、スマホで撮影。ちゃんとした写真は後ほど。ワンポイントちょい足しのカウルフラップとスピナが、個性を主張してくれて満足度高い。売れ行きもナカナカだよ。キャノピを開けると、3DPのシートもよく目立つ。キットのシートは穴が開いてないし、サイズが小ぶり。

 塗装とマーキングについては、諸説ある中で「私はこう考える」という例として見てもらえれば幸い。でも黒と白の帯の零戦って、あまり完成品を見ないから新鮮だ。明灰色は、展示会会場で見るとちょっと暗いかな。展示会ってどうしても照明が暗いからねえ。このあたりを考慮して、明るめに調合してもよかったか。

細部の塗色は拙作が正しいと信じているが、もし勘違いがあればお知らせ願う。フラップの内側も情報求む。左翼付け根のステップは、写真で黒く見えるものがないので、明灰色とする。

 今回、薄さと細さがこだわりポイント。脚カバーやキャノピのフチを薄く削り、コクピットのフチは伸ばしランナーのレールで薄く見せる。シートのフチも薄いよ。このひと手間で、零戦の繊細さが表現できたかなと思う。



IJNAS 3rd Air Group, Kendari air base, Celebes island in Feb.1942

























 製作記冒頭に書いた1/48 21型については、ファインモールドから新金型キットが出るのを期待して待とう。ということで、エデュのキットは不要になるな。




■ 3Dデータファイル 

 エンジンの画像にはカウルフラップがあるが、ダウンロードファイルには含まれない。ギアケースは21用と32以降用の2種があるので、表示を切り替えられたし。デフォは21型用。

<12/2追加>
 三菱製21型用スピナ、シート(各型共通)、32および52型用カウルフラップ、さらに1/48用エンジンもアップ。1/48エンジンは履歴をキャプチャしない形式とする。いじりたい人は1/72用で。


21型カウルフラップ(開)  ●DL

21型カウルフラップ(閉)  ●DL

21-52型エンジン 1/72 ●DL [7/29 更新]

三菱製21型スピナ  ●DL

21〜52型シート  ●DL

32型カウルフラップ(開)  ●DL

32型カウルフラップ(閉)  ●DL

52型カウルフラップ(開)  ●DL

52型カウルフラップ(閉)  ●DL

21-52型エンジン 1/48  ●DL



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■ 参考文献



1 世界の傑作機 No.5 零式艦上戦闘機11-21型 文林堂
2 世界の傑作機 No.9 零式艦上戦闘機22-63型 文林堂
3 世界の傑作機 No.55 零式艦上戦闘機11-21型 文林堂
4 世界の傑作機 No.56 零式艦上戦闘機22-63型 文林堂
5 旧版世界の傑作機1974年6月号 零式艦上戦闘機一一型〜二二型 文林堂
6 旧版世界の傑作機1974年10月号 零式艦上戦闘機五二型〜六三型 文林堂
7 航空ファンイラストレイテッド No.42 日本陸海軍機カラー&マーキング 文林堂
8 航空ファンイラストレイテッド No.53 零式艦上戦闘機 文林堂
9 航空ファンイラストレイテッド No.93 Veterans 文林堂
10 航空ファンイラストレイテッド No.96 写真史三〇二空 第三〇二海軍航空隊写真史 文林堂
11 航空ファンイラストレイテッド No.109 海鷲とともに 文林堂
12 航空ファン2008年8月号 文林堂
13 モデルアート別冊 No.272 日本海軍機の塗装とマーキング戦闘機編 モデルアート
14 モデルアート別冊 No.323 零式艦上戦闘機一一型/二一型 モデルアート
15 モデルアート別冊 No.378 真珠湾攻撃隊 モデルアート
16 モデルアート別冊 No.510 日本海軍機の塗装とマーキング戦闘機編 新版 モデルアート
17 モデルアート別冊 No.518 零式艦上戦闘機モデリングガイド モデルアート
18 エアロ・ディティール7 三菱零式艦上戦闘機 大日本絵画
19 日本海軍航空隊戦場写真集 大日本絵画
20 闘う零戦 隊員達の写真集 文芸春秋
21 日本軍用機写真総集 光人社
22 軍用機メカ・シリーズ5 零戦 光人社
23 太平洋戦争日本海軍機写真集U デルタ出版
24 A6M ZERO in action Aircraft Number 59 Squadron/Signal Publications
25 WARBIRD Legends MBI Publishing Company
26 U.S.NAVY FIGHTERS OF WWII MBI Publishing Company
27 現存零戦図鑑U (えい)出版社
28 零戦52新撮ハイビジョン・マスター版 ワック
29 不滅の零戦 生きつづける名戦闘機 光人社







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