零戦五二型(タミヤ1/48)製作記
2008.7.14初出
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はじめに |
そんな中、タミヤより待望久しい1/48キットがリリース。早速、発売当日に2個買いする。P-36はまだ士の字にもなってないが、気分はすっかりゼロ戦。まあ、蜜柑山に放置せず、合間にちょこちょこイジるつもりなので、ホークファンの方、ご安心を。 さて、日本機は彩雲以来久しぶり。知識、資料の蓄積にも乏しく、そこは皆様の力をお借りしながら進めたいと思っている。遠慮のないツッコミを切に期待する次第。
意外なことに、胴体の太さは3者ともほとんど同じ。新ハセは他2者に比べ、胴体が少々短い。決定的に違うのは風防・キャノピで、新ハセの欠点であった断面形(上部の幅が広すぎ=側面窓の傾斜が立っている)、高さ(新旧ハセはタミヤより約1mm高い)が改善された。幅と高さの積で、ボリューム感にも大きな違いが出る。ちなみに旧ハセの断面形イメージはタミヤに近く、旧ハセを新ハセより評価する人がいるのも理解できる(ただし主翼は新ハセの方がよい)。 カウリングは3者それぞれ印象が微妙に異なる。実機写真でも、タミヤの方が似て見えるのと、ハセガワの方が似て見えるのとあり、このへんは好みの問題かも。印象としてタミヤはスマート、新ハセはずんぐり丸っこいというか、先端で急に絞られる感じだが、カウル最大幅や開口部直径の実寸では意外にもタミヤの方が太い。 主翼は、新ハセも十分良いが、タミヤは独特のネジリ下げまでが完璧に表現されていて、驚き。実機で後端のラインがフラップとエルロンの境で折れ曲がるところが、ちゃんと表現されているのだ(ここはこの写真が参考になる)。前端が翼端に向かって垂れ下がるカーブも完璧。キットを組み立てる際は事後変形と誤解して直線に修正しないこと。ライターでこれをやったら、赤っ恥もんだぞ。 主翼断面形は両者で異なる。タミヤは後半がわりと平らな感じ、新ハセはふくらんでいるが、これは後ほどじっくり分析する。そういうわけで残念ながらタミヤ胴体にハセガワ丙型主翼を「がっちゃんこ」でお手軽に丙型に改造、というのは簡単でない。 |
上:タミヤ、下:ハセガワ(新版)。とくに矢印付近のカーブが両者で異なる。ハセはキャノピが大きく、後部胴体が短いので、何となく漫画ちっく(言い換えるとデフォルメ過多、チョロQ的)なんだよね。 |
いずれにせよ、細かい部分での好みはあるが、タミヤがベストキットであることに間違いなし。ハセガワキットには、長い奉公ご苦労様と言っていいかな。とはいえ、タミヤ新キットと比較で悪く言われて損だけど、某大陸や某半島メーカーとは、比較しようのない高品質。この点だけは、改めて強調したい。
今回、製作にあたって、戦記や手記などを読んでいる。零戦は、日本人にとって何か象徴的な特別な機体だと感じる。数多くの日本の若者が零戦で戦った、という歴史を考えながら、気持ちを込めて製作していきたい。 |
組み立て |
キットの側壁上端部は、ぬるっとして締まりがないので、エバーグリーンのプラ材(0.4×0.5mm)を接着、ストリンガーがあるように見せる。上端ぴったりに貼ると縁が厚く見えるので、本当はウソなのだが段差状にずらす。側壁下端は、床板との隙間をふさぐためにプラペーパーを貼る。 座席まわりのパーツがごつい。座席支持アームを薄く削る。ヒモは0.3mm糸はんだ。座席も縁と裏面を薄く削る。操縦席上下レバーの半円形基部の断面に軽め穴やスリットを彫ったものの、胴体に組み込むと全く見えない。残念。ラダーペダルは伸ばしランナーでアーチ状の部材を追加。これも完成後はよく見えないだろな。 |
キットは、胴体パーツにリブがモールドされ、そこに機器類パーツを接着していく。縁にエバーグリーンのプラ棒(白)を接着。 |
座席まわりは、とにかく軽く見えるように。ラダーペダルをディティールアップ。 |
幸運なことに、中島製52型のコクピットについては、オリジナルが現存している。インペリアル・ウォー・ミュージアム(IWM)にある胴体中央部だけの機体だ(参考文献-18など)。この機体内部にある銘板から中島製ということが分っている。同文献によれば、コクピット塗装をはじめ、機体表面もダークアースの上塗りの下はオリジナルの塗料が残っているそうである。(エアライナーズ・ネットの画像はこちら。moreをクリックすれば、画像多数。) それなら、これと同じ色を塗れば間違いない、と思いたいのだけど、この塗料は元は灰緑色で経年変化で褐色系に変色するという説があり、悩ましいところ。もう1つ参考にしたのが、スミソニアンにある同じ中島製海軍機である彩雲。このコクピットのカラー写真は、新版世傑にある。 これらの色調は灰緑色で、明度は明るくも暗くもなく、といったところ。IWMの零戦のほうが、茶色味が強い。まあ、汚れ、経年変化、印刷や写真やモニタによる誤差、あるいは製造工場違いでそもそも使うペンキが違ったり、等々の可能性があるから、この程度の資料ではこれ以上厳密な考証は無理。 ということで、よく分らず、エイヤで調色。#303のFS34102(ベト迷グリーンの明るい方)と#127中島系コクピット色を3:1程度に混ぜ、小量の#22ダークアースを加える。結局、IWMの零戦とスミソニアンの彩雲の中間の色といったところ。
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計器板はいつものとおり、ポンチでくり抜いたデカールを貼る。色味のあるハセガワを使用。仕上げにフューチャー。 |
左側。座席は色を変え、#340フィールド・グリーンのビン生。 |
配電盤は黒でなく暗緑色。これは現存機から間違いなし。トリム調整ハンドルからのケーブルがまだだな。 |
右側。無線機、クルシー操作盤も暗緑色で塗る。モノクロ写真しかなく確証ないが、黒いノブより本体は明るく写っている。 |
当時の記録写真を見ると、サイパンで捕獲された中島製52型(文献-4など)では、キャノピ内部胴体は、座席の色(=機体内部色)より暗いが、カウルの黒よりは明るく、胴体の暗緑色と同じ明度である。他にも文献-10など の複数の写真で、胴体の暗緑色に近い明度となっている。 色調については、IWMの52型は、埃で分りづらいが暗灰色といってよいだろう。現存パーツでも暗灰色。知人に見せていただいたカラー画像でも暗灰色に見えるものがある。 結論として、暗灰色の機体が存在したことは確度が高い。窓枠内側は、IWM機での黒が確認できる。タミヤのインストでは機体内部色で塗るように指示されているが、これはないだろう。なお、21型や32型も、当時の実機写真(文献-26に32型のカラーあり)により暗灰色であることが分かる。
ということで、タミヤの溝に底をつける。ただし、機銃を取り付けるとほとんど分からず、手間対効果の低い作業である。その他、胴体後部に補強とゴミ等進入防止を兼ねたバルクヘッドを取り付けたり。 |
左タミヤ、右ハセガワ。こうやって並べると違っているが、出来上がると気にならない部分かもしれない。 |
タミヤで表現されてない溝の「底」を工作。ランナーの中心に1.0mmバイスで穴を開けた後、キットパーツに合うようにカットして接着。 |
表から見ると、こうなる。このあと隙間をパテ埋めして整形。 |
瞬間パテを接着剤がわりにするので、1.2mmプラバンはぴったりサイズに切らなくともよいのだ。 |
改めて資料を見返すと、IWMの中島製52型では航空時計と航路計の2つが欠落し、ヒモでこすれたような塗料の剥げがある。サイパンで捕獲された中島製52型は航空時計のみ欠落で、操縦桿をヒモでしばっている(資料-16など)。関連して、左側コンソール(というのかな?)の計器もチェックすると、IWM、サイパンとも、前方2つは欠落で穴が開いている。オリジナル状態に近いとされている2つの例でこうなら、他も同じと考えた方が合理的かな。資料を見ているつもりでも、頭で見ていない、ということだね。自戒。 作品では、深く考えずに全部の計器が埋まった状態を再現してたのだが、せっかくコメント頂いたし、これを再現した模型も少ないだろうから、ネタ的に面白いかな、と作り直す。こんな時のために、2個買いしてあるのだよ。サイパン捕獲機にならって、航路計「あり」とし、上段左から2つ目、航空時計のところにピンバイスで穴をあける。 あとは、前と同じ作業を繰り返すだけだが、ハセガワのデカールは残ってないので、タミヤを使用。全ての計器が揃ってないので、2キット分使う。穴を明示するためにヒモ(に見立てた0.2mm鉛線)を通す。エルロンとエレベータを動かすのは大変だから、操縦桿はくくりつけず。 |
航空時計なしの状態に作り直す。左側コンソール部もやり直しで穴を開ける。タミヤのデカールは色味がないのが淋しいところ。 |
他にも、トリム調整ハンドルからのケーブル、その上方にある機銃切り替えレバー、スロットルケーブルのディティールを追加。 |
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0.3mm糸はんだを2つ折りにして植えていく。 |
できあがり。エンジン本体は明度を変えた銀2色でドライブラシ。 |
中島製については、悩ましいところ。まず、当時の記録写真を検証した結果として、脚カバー(脚に付いている部分)が青竹でない中島製零戦は多数存在したと考えられる。例として、世界の傑作機No.9零式艦上戦闘機22-63型51ページ、航空ファンイラストレイテッドNo.53零式艦上戦闘機108ページ、航空ファンイラストレイテッドNo.96写真史三〇二空31ページ、などを見ていただきたい。 また、最後期には、資材、工程の省略で無塗装という説があり(文献-16)、52丙型で脚収容部が無塗装にも見える写真がある。まあ、写真では暗色なのか陰なのか、明色なのか光の反射なのか、判然としないところもあり、とくに無塗装とライトグレイの判別はカラー写真でさえも困難なので、思い込みは禁物かも。 一方、A6M232氏より、青竹で塗られた中島製零戦の車輪カバー(三日月形のやつ)が現存(?型)していることを教えていただいた 。さらにインペリアル・ウォー・ミュージアムの52型の脚収容部は青竹であり、当該機の脚カバー内側は青竹で塗られていないが、これは三菱製部品の可能性があるとのこと(詳しくはこちらA6M232氏のサイト内の掲示板参照のこと)。 ということで、三日月形車輪カバーと脚収容部については、青竹で塗られた中島製機体が存在した。記録写真でも、中島製21型やサイパンの52型で脚カバー内側が暗色に見えるものがある(サイパンのは下半分のみ暗色)。一方で、中島製と思われる灰色塗装の脚収容部のパーツも現存しているとのこと。 結局、記録写真と現存パーツを総括すると、中島製については、収容部と三日月形車輪カバーが青竹、脚カバーは下面色というのが多数。ただ、例外もあり得るので、モデラー的結論としては、自分の信じる色を塗ればいいかな。 なお、脚部については、その他にも荷重表示(2色/3色)、脚柱の銘板(有無、位置)、トルクリンクの色(黒/銀)などもバリエーションがあり要注意。また、車輪カバーを引き上げるU字状の部分は、黒で塗装されている。三日月形車輪カバーの中央部にある凸は木製で、現存パーツでは無塗装に見える。
まず、胴体7.7mm機銃。一応、Fw190胴体機銃用のファインモールド製真鍮パーツを買ってあるのだが、よく見ると零戦の胴体機銃先端はラッパ型ではない。そこで、1.0mm、0.8mm、0.6mmの真鍮パイプの組み合わせで自作。接着剤のかわりにメタルプライマーを使う。胴体への取り付けをどうしようかと考え、キットパーツを使うのが一番簡単かな、とピンバイスで穴を開けて接着。そのままキットのように取り付けるが、若干機銃が沈み気味なため、微調整。 |
胴体7.7mm機銃。左キット、中自作パーツ、右ファインモールド。 |
胴体上面パーツにセットしたところ(写真では未接着のため、軸がずれてる)。左はキットオリジナル。 |
銃床部は、レバーのモールドを削り落とし、余りエッチングで工作。先端は瞬間パテを盛る。 |
「これだ!」と思って、瞬間パテでレバーの頭を試作。パテの粘度を調整する。出来、作りやすさなどは、極小鉛玉接着方式と大差なし。 |
これで、ようやく胴体左右が接着できる。製作開始から、1ヶ月。ペース遅すぎ。
胴体上面パーツの接着の前に、風防パーツと胴体との合わせをチェックする。若干風防の幅の方が広く、胴体パーツと胴体上面パーツとの間に0.14mプラペーパーを挟み胴体を広げる。このあたりは、キットの個体差、組み立て誤差等が入るので、誰が組んでも同じとはならない。 |
リベット打ちの圧力に耐えるため、接着部を過剰なくらいに補強しておく。 |
ようやく「一」の字。写真は接着後に軽くペーパーを当てたところ。 |
戦没者の霊に黙祷。
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リブ番号 | 弦長 | 翼厚 | 翼厚比 | 迎え角 | 先端曲率 | 機体中心からの距離 |
01番 | 53.9mm | 7.7mm | 14.3% | 2.0° | φ2.2mm | 2.6mm |
12番 | 42.4mm | 6.0mm | 14.2% | 2.0° | φ1.7mm | 51.6mm |
21番 | 33.4mm | 3.7mm | 11.1% | 1.0° | φ0.9mm | 90.1mm |
26番 | 26.5mm | 2.4mm | 9.0% | -0.5° | 読み取れず | 112.0mm |
また、当該図面をトレースしたものが下図。 |
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参考までに補足すると、01番リブは胴体内部なので、いわば仮想翼。12番リブは52型においてフラップとエルロンの境。26番リブは21型の翼折りたたみ線である。付け根から翼中央部までは翼厚比がほぼ一定(弦長が減少するから厚さは減少)、迎え角一定。そこから翼端に向かってぐんと薄くなると同時にねじり下げられるという、独特の翼デザインがわかる。 先端曲率は、不鮮明な数字の読み取りなので、多少の誤差があるかもしれないが、図面の実寸でチェックしてるので大きくは外れてないハズ。表では直径で表している。つまり、翼付け根付近においては、直径2.2mmの丸棒を先端に埋め込むと先端のカーブが正しく表現できるということ。意外に先端が尖っていることが分かる。多くのモデラーはこの点に無頓着で、ペーパーかけ過ぎて丸くなり(=直径大)タイフーンかハリケーンの翼のようになっている作品を見かけるね。(いや、実際のタイフーン、ハリケーンは皆が思うより尖っているのだけど) また、この図をよく見ると、面白い。翼断面形は、水平の胴体基準線を基準に翼上面、下面の座標値を記しており、弦線(翼先端と後端を結んだ線)を基準にしているのではない。各断面とも30%弦長(コード)のところが最大厚さで、この位置で基準線から上面、下面への距離が等しい。この30%弦長は主桁の位置でもあり、その上下中心が基準線となっていることから、主桁の基準線は桁の中心であることが裏付けられる。零戦は、この主桁基準線で上反角(5.71°)が定められているので、このことは重要。
これ、言葉で書くと簡単だが、実際に設計して製作することを考えると、非常に凝った造りである。翼後端ラインを見ればわかるように、外翼(中央部から翼端まで)は翼の迎え角も少しずつ変化しているが(この変化率が一定ならエルロン後縁は直線となり、変化率が一定でなければ後縁もカーブする)、それだけでなく、さらに前縁がサインカーブを描くよう、各リブの翼形を少しずつ変化させ、翼端にいくにしたがって翼前縁が垂れ下がるように設計されている。 これは、前述の翼断面形図でも確認でき、01番リブ〜12番リブまでの翼形は、相似形(ただし縦横比は翼厚比に応じて僅かに変わる)だが、そこから26番リブまでの翼形は相似形でない(上図の「参考」のように縦横比を変えただけでは形状が一致しない)。そして、このため翼端付近では、翼下面がほぼペッタンコとなる。また、こうして断面形に細工をしているので、後縁に比べて前縁のカーブが目立って大きくなるのである。 |
文献-25のプレーンズ・オブ・フェイム所有機の写真を横に縮小したもの。左翼前縁のハイライトを見ていただきたい。翼端削ぎ上がりにも注目。 |
文献-6から、同じく横に縮小。定規を当てれば後縁の屈曲がはっきり分かる。 |
さて、この外翼だけねじった翼だが、直線テーパー翼の翼端失速を防止するという観点からは合理的なのかな? 他の機体では、フォッケFW190、スピットファイア、P-47は翼全体を一様にねじっており(←写真の印象による私の推測)、従って前後端は直線(平面形が直線ならば)。一方、紫電一族、Ta152は内翼だけねじって外翼はねじりなしだが、現代のハイテク・エアライナーの翼がこれに近いねじり方だから、これはこれで何らかの利点があるのかな?
まず、下ごしらえ。機銃パネル付近は別パーツ。これは流し込み系接着剤で慎重に接着。フラップは当然「上げ」で組むので(翼の美しさを見せたいところだし、駐機中は普通下げないし、内部ディティールは開いて見せる程でもなし、内部の塗色は不明だし、下げる理由ないよね)これも先に翼下面パーツに接着。パーツ肉厚が薄く、後のリベット打ちが心配。裏側に瞬間パテを盛っておく。 後の整形作業でスジボリが消えないよう、あらかじめエッチングノコ、ケガキ針でさらっておく。キットは残念なことに、エルロン下面を翼上面パーツと一体にしたため、エルロンの翼付け根側付近にヒケが生じ、この付近の翼断面形が凹曲線となっている。修正は困難なので、仕方なく放置。以前の更新で記述した翼端「削ぎ下がり」を修正するため、パーツをしごいて曲げておく。仮組みして翼厚をノギスでチェック、上表通りを確認。さすがタミヤ。 脚収容部上部のパーツ肉薄部分に、脚収容部パーツとの隙間を塞ぐように瞬間パテを塗布。翼端部も整形作業で肉薄となりがちで、瞬間パテをみっちり充填。これもリベット打ちへの備え。翼パーツ主桁部の凸梁(この設計は素晴らしい。ヒケないよう厚みも考慮されている)に溶剤系接着剤をたっぷり塗り、瞬間パテが固まらないうちに上下パーツを合わせる。ここで前後左右から見て、反り、ねじりをチェック。しかる後、前後縁の合わせ目をカッターの刃でこじ開けつつ、瞬間を流し、これで接着終了。もたもたしてると瞬間パテが固まるので作業は素早く。 |
上反角を保持するため、いつものカーボンファイバー材で補強。その下端は、正しい角度になるように慎重に削り、翼下面パーツにがっちり接着。 |
定規に貼ったペーパーで表面を均したところ。エルロンヒンジ部がヒケて削り残しが生じている。 |
脚収容部は、前から見える縁を薄く削り、収容部側壁に軽め穴を開ける。穴の位置、配置は手持ち資料で不明確で、雰囲気だけ再現。 |
接着終了。途中写真は忙しくて省略。カーボン桁のおかげで、ものすごい強度。 |
また、翼型図はじめ零戦の公式図面は、<零式艦上戦闘機図面集>海軍航空技術廠編・復刻版として原書房より刊行されており、2000年新装版(12000円)は、丸善オアゾー、八重洲ブックセンターで在庫確認(2008.8現在)との情報を頂いた。感謝。
『先日都内で講演会があり、そこで鹿児島県加世田市に展示してある零式戦闘機の復元作業について聞いてきました。海底から引き上げた機体を元にして、当時の工作資料により機体構造を再生するというものです。作業に当たったのが海上自衛隊の鹿屋航空工作所であり、現代の技術的観点での材質の解析や強度試験も含めて、当時の航空技術の再現を試みたものだそうです。 『解説に当たられた平山さんという方に伺ったのですが、ゼロ戦の主翼構造、とりわけ主桁フランジ材(主翼表面に見える横方向の細長い部材)はいわゆる超超ジュラルミンという硬い材料を削り出し加工で作るわけですが、独特の「捻り」を与えられた関係上、左右主翼合計8本のフランジがみな異なっている。 『すなわち、フランジ材というのは断面がT字型のものですが、Tの字の上辺が主翼表面の一部をなす関係上、微妙ながら単なる平面では済まない。さらに超超ジュラ材は加工後に捻って成型など出来ない。ということで、左右分桁2本の上下辺、合計8本のT字断面部材の3D形状が総て異なっているそうです。私の知る限りこういう例は当時どの国でも他に見られないものですが、その3D切削整形を職人ワザで行っていたというのでさらに驚きます。 『世傑の#5でしたか堀越氏の自筆記事が転載されていて「資源小国たる我国の機材として製造にかける手間だけは惜しまぬ」とありまして、当時の情況を考えるに主力戦闘機すなわち国の命運を担う機材製造に並々ならぬ決意をもって臨まれていたのでしょう。(後略)』
技法は、リュータを使ったり、ペーパーを使ったり、丸刃のナイフを自作したりと、人により様々。私は、先が湾曲した平刀の彫刻刀を使う。刃先を立て、リベットラインに沿ってプラ表面を薄く削っていく。オーバーな表現は好きでないので、軽く1〜2回程度。その後#600ペーパーで周囲と馴染ませる。鉛筆の下書きは必須。正しい位置を削っているかの確認にもなる。 こうして出来たモデル表面は、リベットライン部分のみが凹んでいるが、実機をよく観察すると、実際はこんな単純なものではない。とはいえ、実機どおりの凸凹をつけられるセンス&技術もなく、そこは諦める。ただし、全て一様、均一に削るのでなく、多少浅深のメリハリや乱れをつけることにする。 |
べこつきに使う彫刻刀。 |
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点検ハッチのラインを黒瞬間で埋め、彫り直す。主翼タンク部分の長方形は52型で確認できず、埋める。 |
リベットラインについては、エ図は概ね正確。同じ作図者によるP-47図は間違いが多くて、疑ってかかってたんだけどね。機銃外側の燃料タンク下面は、エ図のとおり縦に4本のリベットライン。これは上面側とは異なるが、頂き物画像から確認。 メイン燃料タンク下面は、エ図と実機写真で異なり、縦に12〜3本のリベットライン−しかもそれぞれがダブル−のように見え(注:後に11本であることが判明してやりなおす:後述)、これは世傑などの米軍捕獲機、プレーンズ・オブ・フェイム(POF)所有のレストア機とも同じ。エルロンヒンジ前方はV字型にダブルとなっている様子。フラップ中ほどの横ラインは、裏側のフレームが外板に直接リベット止めされてないようで、従ってこのリベットラインは「なし」が正解だと思う。 |
右舷主翼下面ほぼ終了の図。反省点も少々あり。主にたまぐり#1を使い、ファスナは#4、主燃料タンクは#0。フラップの溶きパテ跡は、一旦打ったリベットを埋めたところ。 |
資料として、POF機を空撮したワック社のDVD「零戦52新撮ハイビジョン・マスター版」¥3,900をamazon.comにて購入。POF機はやたらと外板が凸凹しているので、リベットラインがよく分る。また、機体外形を把握する資料としても一級品。もちろん、美しい飛行姿勢は、製作モチベーション向上にも効果絶大。 これを購入後、書店で(えい)出版社「現存零戦図鑑U」\1,890を発見、購入。これもPOF機などの空撮写真多数で、リベットラインの把握に重宝する。DVDも付属しており、内容は一部ワックと重複。どちらか一方だけ買うなら、こっちがお得。
リベットラインについては、他に資料がないのでPOF機を参考にする。主翼は新造だが、きっとオリジナルを忠実に再現したのだと信じて・・。POF機のラインはエ図とほぼ同じだが、主翼前縁内側に1本追加。また、機銃外側にある燃料タンク上部は、主燃料タンクと同様にダブルとする。フラップ上面とさらにその前方側には、細かい補助リブがあるのだが、詳細がよくわからず、見えるとおりに再現すると本数が多すぎ、そこだけリベット密度が高くなって違和感があるので、適宜省略。 |
右舷主翼上面終了。タンク上部のダブルラインは、間隔を揃えるためにプラバンでスリット状のガイドを作る。べこつき表現は、リベットのまくれをペーパーで落としているうちに、ほとんど分らない状態となって悲し。 |
参考までにキットオリジナル。パネルラインを比べてちょ。 |
翼端灯は色つきアクリル。まだ磨いていないけど。 |
ここで、下面の訂正。下画像参照。また、主燃料タンクの細いダブルのラインは11本が正。文献-25にそれと分る写真があったのだが、作業時に気付かず。残念。また、翼前縁付近、脚収容部前方の様子も上面に準ずる。 |
赤丸部分に間違い。上面と同じようになる。ちなみに、エ図も同じ間違い。 |
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