リパブリック P-47D レイザーバック 製作記 その2

2023.7.13初出

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最終更新日




■ N型の主翼 9/13追加

 Nの翼は、Dの翼を付け根で18インチ延長し、翼端を角型に整形したもの。それ以外の部分はほとんどDと共通だ。下図のグレイが変更部分で、それ以外は基本的に同じ(内部の燃料タンクの追加や下面のパネルラインなど異なる部分はあるが、少なくとも外形は完全に同一)。

 付け根で延長し、翼前縁には後退角があるにも関わらず、胴体端での翼前縁位置は同じ。そのため、翼前縁は途中(sta104と考えられる)でわずかに折れ曲がる。付け根の断面形は同じ。胴体側の連結ピンの位置も同じ。おそらく、フィレットはDと全く同じ部品が使われている。後縁の拡大はエルロンタブより外側。

 翼桁は、そのまま直線的に延長したのでは、胴体連結ピンにはまらない。sta29付近で機軸と直角になるように折れ曲がり、連結ピンからsta29までは前後桁は平行となる。その他、タミヤ改造N型製作記も参照くだされ。





 翼断面形に関しては、sta104から202までは完全にDと同一。sta29から104は、前桁以後は同じで、それより前方は平面形の変更に伴い前後長が短縮された。厳密にいうとリパブリックS-3の翼型から外れるが、コード変化は大きくないので問題ないのだろう。sta202から232までは、コードの延長に伴い、翼厚が増す。このことは、前後桁における桁高が変更されていることで確かめられる。

 下図はNの翼コンター図だ。赤がsta29で茶色がsta8.75.この2つはほとんど形状が同じで、桁位置も同じだが、JRL(ジグ基準線:青の水平線)との位置関係が異なる。つまり、この延長部分はJRLに平行ではないのだ。では何に平行かというと、翼上面ライン。これは後掲の平面図添付の翼正面図を見るとよく分かる。




 大部分がDの踏襲とあって、取付角が上がって下がるという変態的ネジリ下げも継承している。延長部分(sta8.75から29まで)では、取付角は変化ないと考える。つまり、この間ネジリ下げ(上げ?)なし。


■ N型主翼の謎

 製造図によりかなりの部分が解明できたのだが、依然として以下の謎が残る。識者の情報求む。
  • 機銃より内側の翼前縁には、燃料タンクが追加された。この給油口の位置、形状、サイズがよく分からない。記録写真によっては、給油口を示す赤四角が確認できるので、この付近にあることは間違いない。形状は胴体タンクと同様角形のようだ。

  • 延長部分の前後桁間にも燃料タンクが追加された。この給油口が不明。写真では見当たらない。胴体タンクからつながっていて、翼上面には給油口はない、というのが私の推測。

  • 主脚収容部の後方(sta64から104)には、何かが新設されているようである。これが何かが不明。燃料タンクか? もしタンク系だとして、注入口は主翼上面に新設されているのかどうか(写真では見当たらない)。ちなみに、M型が装備しているダイブ・リカバリー・フラップは、Nには無い。これがその新設と関係すると思っているのだが・・・

  • 燃料タンクが増設されたので、オイルタンクも大きくなってるはずだが、そのあたりどうなっているのか不明。


■ N型平面図

 では、N型の上下面図を掲載。基本形状に関しては、かなり自信あり。そこら辺の既存図には負けないぞ。


  • 風防、キャノピの平面形については、風防正面図、風防・キャノピの側面図が製造図にあり、それらと実機写真をベースに、断面図から平面位置を算出して描く。ちなみに、キャノピについては、プレキシガラスの外形でなく、フレームの上端を図示したつもり(Ω断面のため、前者はより広くなる)。

  • ドーサルフィンの平面形は、真上からの実機写真がないため精度は低い。一応、製造図に従う。

  • 翼平面形は、製造図、真上からの実機写真による(XP-47Nなのでドーサルフィンがないのじゃ)。翼端コード@232は、製造図に記載あり。

  • 翼延長に伴い、翼staもそのまま移動したため、JRLと胴体中心線との交点はsta-18となる(D型はsta0となる)。18インチはJRL方向に沿って測ったもの。水平面に沿った延長長さは18×cos(6°)=17.901"となる。

  • 主翼前縁の補助線を見ると分かるように、機銃から内側は後退角が小さくなる。ただし、製造図における全体概要図での主翼前縁位置はsta94で不変。ちなみに、内翼の前縁ラインが胴体中心と交差する点が仮想翼前縁ではない。←そんなん、どうでもええって。

  • これも相当マニアックな話だが、Nの全体概要図によれば、主翼基準線はDより0.05インチ後退する。主翼基準線と前後桁やリブとの位置関係は不変であるため、要はNの翼はDより胴体連結ピンが0.05"前進しているということになる。とはいえ、実寸で1mmであり、模型製作上、図面作成上は無視できる。

  • 主翼後縁位置も同じ全体概要図によれば0.03"後退する。なぜ0.05"でないのか不明。←だから、どうでもええやん。

  • 付け根側の主翼延長部はJRLに平行ではなく、翼上面ラインに沿っている。このため、胴体連結ピンとJRLとの位置関係は、JRLに直交方向に測って上に0.75"ズレる。胴体側の連結ピン位置は同じだから、JRLと胴体中心線との交点は、D型より0.75/cos(6°)だけ下がり、WL-24.88となる。

  • 下面のパネルラインは、いい写真がないので精度はやや甘。製造図から推測してこんなもんか。いい写真、求む。
【以下2/9追記】
  • 主桁より前方のリブ及び脚収容部上面のストリンガーの配置は、D型とは異なる。脚収容部内端のリブのリベットは、ストリンガーのリベットと同じ列に打たれているため、図面で区別して描くのが厄介。そこは簡略表記する。どうしても気になる人は、下の画像を参照されたし。

  • N型のフラップ下面リブの製造図はない(上面はあり)。よって、下面ストリンガーのラインはDからの推測。

  • スパー#2(後桁)と#3(フラップ前方の桁)の間の胴体近くは、D型ではストリンガーが密だが(パイロットの乗降のため)、N型ではそうでない模様。

  • 主翼下面の二か所の燃料タンク下面は、図のように縦横ほぼ等間隔にリベットが入る。作図上の都合で、数は完全には再現していない。まあ、大体こんな雰囲気ということで。隅の丸はドレインのパネルかな?

  • エルロン下面では、前半のリブがD型より密な配置になる。

  • 脚収容部前方下面にある小四角は、製造図の主翼一般図に記載があるが、実機写真では存在不明。また、下面の胴体との接合部のフィレットは、図面や写真がなく、推測。

  • その他、以前の間違いや不足を修正・追加。ガンカメラは右翼機銃外側に移設。コクピット空気取り入れ口も移設で、右翼前縁付け根付近に穴はない。その行先が不明。

  • エルロンヒンジの点検パネルのうち真ん中のものは、サイズが大きくなっている。現存機を見ると、一部のD(及びMも?)でもこのタイプがある。位置、サイズは製造図を基に精度向上。関連してD型平面図も修正。

  • 翼端灯は、途中から水滴型のものに変更される(いつからか失念、失礼)。また、ロケットランチャーも追記。D、M型のものと同じようだ。

  • 150ガロン ドロップタンクを追加。サイズ・形状は、実機写真およびタミヤP-38を「参考」にする。このパイロンに下げられる他の増槽や爆弾と同様、機軸に対して2°ほど前下がりに装着される。これは胴体下のラックも同様で、基軸平行でなく前下がり。



N型の脚庫上面の製造図。下が前。左側が胴体接続部。湾曲したリベットの列が、脚庫内端のsta26-3/4リブと内側の補強ストリップのもの。これらはジグ基準面に対して斜めなので湾曲する。staの数字は基準面とリブの交点で示される。そして、これらのリベットは、ストリンガーのリベット(これは本図では省略されている)と同じ並びに打たれる。したがって、表からみると平行なリベットの列に見える・・ハズ。←私の解釈が間違ってなければ。


 リアル模型は停滞中。主翼が気に入らないので、3Dで「正しい形」を立体化しようかと。


■ D型主翼テイク2 9/22追加

 ジャンボはプリントと修正のループ中。更新ネタがないのでローテーションお休み。

 さて、サンダー。以前作った主翼がイマイチ気に入らない。後半断面のぽってり厚みが気になるのと、後縁のS字カーブをつけ過ぎ。下画像のような特定の角度では良く見えるのだが、別の角度からだと何か変。こういうのは放置できない性格なので、もう1つキットを買ってきてやり直すことにする。



再掲。この角度だといいんだけどなあ。



■ サンダーボルトの翼

 キットの翼がいまいち違うのは分かる。それを修正しようとした翼がやっぱり違うのも分かる。しかし、やっているうち、正解が分からなくなってくる。そこで、改めて、サンダーボルトの翼の形状を確認する。



ちょいピンボケだけど貴重な56FGのM型オリジナルカラー空撮。この翼の見え方ってサンダーボルトらしい、と私は思うのだ。

左と少し角度を変えて。黄色帯の前から3/4(75%コード)あたりが逆Rで凹んでいる感じがサンダーボルト。

もう少し視線を下げると、付け根と翼端の幅がほとんど同じに見えてくる。前縁の尖り具合にも注目。

楕円翼がこのような形に見えるなんて不思議だが、ねじり下げと翼型の相乗効果によるものだ。

ストライプのおかげで、翼型がよく分かる。リパブリックS-3翼型は、後半(概ね60%コード以降)には逆Rが入る。コルセアやヘルキャットなどのNACA23000シリーズには逆Rはない。

付け根と翼端の取付角の違い、付け根付近(ストライプ部分)のネジリの少なさ、後縁のカーブに注意。以前掲載した翼断面コンター図と見比べられたし。

特異なねじり下げによるS字カーブが分かる。といっても、言われて初めて分かるくらいの微妙なカーブだ。(だから今まで私自身気付かなかったのだと言い訳しておこう)

この角度だと、翼平面形のテーパーが強く、翼端が尖って見える。前掲の斜め前からの写真とは真逆。



再掲。翼厚比11%のリパブリックS-3。定規を当てると後半の逆R(上面なら下に凸の曲線)が分かると思う。


再掲。コンター図。後縁を辿ると、S字カーブになる。




■ 3D設計

 見え方イメージは分かっても、立体的造形物としての正しい形が、自分の中でまだ曖昧。そこでFusion360で3D設計してみる。出来上がったのがこれだ。



イメージしやすいように、主要なパネルラインを入れる。キットの胴体に合わせて付け根を切り取る。

この角度から見ても、前掲の実機写真の見え方にシンクロしてるでしょ。

右翼はミラーで複製し、実機と同じ間隔、上反角をつけて並べる。一見、N型の角型翼のようだが、実機写真でもこんな風に見える。

ねじり下げだけでなく、後半の薄さ、逆Rと相まって、サンダーボルトらしい翼になるのだね。なお後端は出力の都合で厚くしている。

後縁のS字カーブ。実機写真とよく似た雰囲気だ。(当り前っちゃあ、当り前)

脚収容部もくり抜く。しかしこれによって問題が・・(後述)。


 この3D主翼、極めてサンダーボルトらしいと思うが如何だろうか。製造図にある翼桁座標だけを頼りにコンター図を描き、変なねじり下げに半信半疑で、それでも愚直に3D化した結果がこれ。今や半信半疑が確信に変わっている。


■ 設計メモ

 自分用備忘録、あるいは関心ある方の参考になれば、ということで作り方メモ。基本はロフト。8断面のリブをスケッチし、サーフェスのロフトでつなぐ。全部一度にやろうとすると何故かエラーが出る。そこで、上下別にして、それぞれリブ3つずつくらいに分けてロフトし、ステッチで面をつなぐ。レールが通っているので各面はスムーズにつながる。翼端は別途ロフト。

 とにかく、プロファイル(翼リブ図)とレールが交差していないとロフトしない。交差していても、断面が多いときなどはロフトしない。ロフト君のご機嫌次第なわけ。交差させるためには、先にレールが通る面(またはボディ)を作っておいて、それをプロファイル(リブ)を描くスケッチ平面にプロジェクト(交差)させ、出来た紫色の線(または点)をつなぐようにスプライン曲線でリブを描くといいと思う。←分かり辛い文章だけど、タイムラインを追っていくと意味が分かると思う。



sta74からsta132の上面をロフトしているところ。プロファイルは3つ。レールは前後縁、前後桁の4本。

翼端は前後に分ける。これは前半。直交する2つの面(プロファイル1、2)を、エッジライン(青線)をレールにロフトする。



■ プリント

 できた3Dモデルをプリントする。上手くいったら、作品の主翼も3DPにしちゃおうかという下心で。プリント方向は、前縁を下にするのと、付け根を下にするのと2通り試す。後者は高くなるため反りの影響を受けやすく、反ってるのか正しいカーブなのか分からなくなる。後者は反りは出ないが、脚収容部で厚みが変化する影響で、翼上面に凹みが出来る。

 つまり、どちらの方法も一長一短。また後縁が著しく欠けやすい。ということで、作品への採用は却下。プラパーツを組むときの立体見本とするに留める。しかし、立体で手に取ってみて、初めて正しい形状が理解できる部分もあり、この一連の苦労は全然無駄ではなく、むしろ必然ともいえる。

 実機に関心のある方は、ぜひプリントして手に取って眺めまわしていただきたい。目から鱗が落ちるよ。なお、3Dモデルは1/48で作っている。図面が1/48なのでね。脚庫の穴を塞ぐパーツも作ってある(つまり飛行状態にもなるわけ)。



66.7%縮小でプリントしてキットに合わせてみる。新規購入キットは気分を変えてバブルトップ。


 以上を踏まえ、新たなパーツでテイク2だが、長くなったので今回ここまで。


■ 続、主翼テイク2 10/5追加

 リアル模型での主翼テイク2、そのキモは翼型の再現だ。下画像は、キットの翼付け根断面に、実機の翼断面形を重ねたもの。どこがどれだけ違うかが一目瞭然。前半は、ほとんど一致しており、修正の要は感じない。後半は、70%コード付近の厚みを減らし、実機における表面の逆Rを再現する。






 厚みを減らすには、上下パーツの接着面を削る。下図の赤く着色した部分だ。平刀(またはノミ)の刃を立てて、カンナのように削るのが早い。キットは、脚庫後方に胴体を貫く桁パーツがある。この桁パーツ部分も高さを0.5mmほど下げる。





 後縁のS字カーブや翼端の削ぎ上がりは前回と同じ。やり過ぎだけ注意する。3DPの「見本」がとても役に立つ。で、出来上がった翼がこれだ。



矢印部分を削って後半の厚みを削ぐ。当然ながら、桁パーツも上下を削る。

胴体に合わせると、フィレット部に段差ができる。上の翼型を重ねた画像と比較して、正しい形状になっているか確認。

フィレットも削る。前回更新のレンダー画像の雰囲気に近くなったと思うが如何だろうか。

斜め後ろから。S字カーブを再現するため、付け根の後縁をちょいと上にひねる(その分、わずかに取付角が上がることに注意)。


 接着面の削りだけで、形が出来るわけではない。表面からも、思う存分削る。エルロンは上パーツに一体化されていて厚い。下面のブリスターを切り取って、薄く削る(ブリスターはあとで再接着)。スジボリがほとんど消えるので、チマチマ再生。エルロンとフラップの不要なリベットもほとんど消える。これはラッキー。機銃口パネルのスジボリに秘密兵器投入予定。


■ 変態的ねじり下げの理由

 以下、かなりマニアックな話。実機に関心のある方のみお付き合いくだされ。

 さて、当機のねじり下げは「上がって下がる」(←取付角でいえば。後方から見れば下がって上がる)。当初は何故だか不思議だったけど、最近理由が分かってきた気がする。カギは翼桁正面図だ。下図は、製造図にある桁の座標値を、エクセルに入れてグラフを描かせたもの。実際より左右に圧縮されているので、特徴が分かりやすい。



前桁上面。横軸は翼sta。縦軸はJRLからの高さ。単位はインチ。完全な直線でなくバラけているのは丸め誤差だろう。

後桁上面。前桁と同じく上面は付け根からsta202まで直線的。

前桁下面。スパン中央で上に凸。これも理由が説明できる。縦軸の目盛は他と異なるので注意。

後桁下面。こちらは逆に下に凸。これも理由あり。


 推測するに、P-47の主翼設計は、桁上面を直線にすることを第一優先にしたのだろう。その理由までは分からない。構造上の利点(圧縮部材を曲げないとか)なのか、製造上の都合なのか、単に設計者の美的センスなのか。それはともかく、そう仮定すると、あのねじり下げが説明できるのだ。

 付け根のsta29と少し外側のsta52を比較する。後桁は前進角がついているため、後桁の%コードはsta52の方が小さく(相対位置が前寄り)で、そのため桁高が増す(下面が下に凸なことでも分かる)。にもかかわらず後桁上面の高さを抑えれば、必然的に取付角が大きくならざるを得ない。前桁の%コードはほとんど変わらないことも関係する。sta132付近より外側になると、本来のねじり下げの方が優ってくる。 

 私の想像では、リパブリックの設計者は、付け根(sta29)と翼端(sta202)の取付角を最初に決め、次に前後桁を配置し、その上面を直線にして、最後に途中の翼断面図を桁に貼り付けた。前桁下面が凹んでいるのは、スパン中央は楕円翼のためコードが増し、前桁の%コードが小さくなる。その結果として、桁高が低くなるため。後桁下面が下に凸なのも、楕円翼と後桁の前進角により後桁の%コードが小さくなり、その結果、桁高さが増すため。

 なお、sta202より外側では、桁上面が直線でなく垂れてくる。これは、ここから外で前縁のカーブが始まることで、前桁の%コードが小さくなって、桁高が下がるため。また後縁も、テーパーが強くなり、後桁の%コードが大きくなり桁高が下がるため。翼中央(30%コード付近)ではほとんど垂れない。



再掲。これらの画像でも後桁上面の直線性が感じられるんではないかな。



 以前にP-47を製作したときは、ここまで詳細に翼の形状を知っていたわけではない。でも、写真をみて後桁上面が一直線なのが感じられ、そのように削り込んだ。結果的に正しい形状に近づいていたわけだ。エライぞ、当時のオレ。


■ キャノピ

 キャノピはオープン状態デフォルトとする。断面の厚みが見えてしまうので、内側を薄く削る。#800ペーパーから初めて最後はコンパウンド。

 胴体に乗せてみると、やや浮く。キャノピ内側をさらに削るのが理想だが、今更大変なので、最終的には胴体側を削って調整するつもり。開閉選択式は、機体構造上かなり困難。つまりキャノピ後端の前傾角のため、風防を接着するとキャノピがはまらない。だから、閉めた時の心配は不要だ。



内側を削って磨いたところ。金型が長年のご奉仕でスジボリが甘くなっている。彫り直して、表からも磨く。

胴体に乗せる。エッジを薄くすると、スケール感がアップするでしょ。これ、オススメ工作よん。


 次は尾翼。ここも語りたいことがあるが、長くなったので次回。


■ 尾翼の話 10/24追加

 では、前回予告の尾翼について。製造図には、垂直安定板と水平安定板の翼面座標がある。それぞれ、付け根付近と翼端付近の2組あり、下図はそのうち水平安定板付け根付近(sta10.5)の座標値をエクセルに入れてグラフにしたもの。単位は縦横軸ともインチ。このグラフで分かるように先端は尖っている。

 製造図の座標テーブルには、先端の曲率も明記されており、実寸で直径1/8インチ、すなわち約3mm!だ。1/72なら、紙が切れるくらい尖っているぞ。最大厚さは30%コードで、翼厚比は垂直尾翼で7%、水平尾翼で9%。これはどちらも付け根と翼端で同じ値。これらの尾翼断面形は、上下面図に追加しておく。図にはスパン方向のstaも記載する。





 スパン中間の翼座標データはないが、桁の製造図を見ると、桁上下端は直線。したがって、中間の断面形状は直線補間したものと考えてよいだろう。言い換えると、ラダー後端を直線に置き換えて均一な翼厚比とした翼断面形だ(実機は後縁が曲線なのでコードが長くなる分だけ実際の翼厚比は小さくなる)。

 キットは水平尾翼、垂直尾翼とも前縁の尖り方がやや足りない。また、最大厚が後ろ寄り(40%コード付近)。垂直尾翼はやや厚い(水平尾翼の翼厚比は正しい)。先端が尖るように削り、最大厚が前寄りになるように後半を薄く削る。ただし、垂直尾翼は、ラダーヒンジにブリスターの凸ディテールがあるので、後半の翼型はいじらない。



尾翼先端を尖らせる。とはいえ鋭敏過ぎると欠けるから、ある程度は鈍に。絶対的な厚みより、先端に至る面の流れを重視。



■ 3DPエンジン 
(この項 11/7再訂正)

 コルセア-5Nで3D設計したイグニションハーネス、せっかくなのでP-47にも使いたい。しかし、ハーネスだけプリントすると、ある程度太くないと出力できないし、モノが小さいのでエンジンへの取り付けも厄介。そこで、エンジン本体も3D設計して一体出力すれば、エンジンがハーネスのサポートがわりになって、単体よりも細く出力できるはず。

 つうことで、本体(シリンダー部分)を設計する。カウルを外してエンジン単体で見せることは考えず、正面からの視線に耐えればよしとする。減速ギアケースとディストリビュータなど補機類は、キットパーツでもいいけど、ここまできたらついでだ。

 まず、P-47が装備したダブルワスプR-2800 Bシリーズについて調べる。世傑の記述、当時の記録写真をチェックし、いつものほらぶろわーず掲示板で情報を頂き(毎度感謝)、それらを整理すると以下のとおり。ちなみに、現存機はエンジン換装している場合があり、あてにならない。



P-47BからD-16までが装備したR-2800-21および-63。

D-20以降-40までが装備したR-2800-59。


 R-2800-21(D-6まで)と-63(D-10以降)は水噴射装置の有無の違い。外形的には同じ。減速ギアケース上の機器は、ディストリビュータ(左右にあるやつ)、マグネトー(中央にあるやつ)、プロペラガバナ(マグネトーの前方)。

 R-2800-59は点火システムが変更され、ディストリビュータとマグネトーが一体化したタートルバックがギヤケース上部左右に装着された。またプラグコードの生え方が異なっている。画像はカーチスプロペラ装着機のもので、ハミルトンペラのD-22、25、27はプロペラガバナが後述のタイプに変更された。

 で、3D設計する。出来上がったのがこれだ。ディテールは現存機クローズアップなどから読み取る。ただし、手持ち資料の限界で、よく分からない部分も多い。もし間違いなどあればお知らせ頂けると幸い。ただし、正面からよく見えない箇所は確信犯で手抜き。



中期までのレイザーバックが装備したR-2800-21または-63。両者の外形は同じ。-59とはプラグコードの生え方がちょい違う。

後期のレイザーバックとDバブルトップが装備したR-2800-59。これは、カーチスペラ装着機のもの。

同じくR-2800-59のハミルトンペラ装着機用。プロペラガバナが、ハミルトンペラ用に変更されている。

出力してサフ吹いてスミイレ。胴体に取り付ける接合パーツも設計。なお、最終Verの手前段階なので、上画像と一部異なる。


 P-47MおよびNが装備したCシリーズは、世傑によればR-2800-57、73、77、81とされる(表の53は73の間違いか?)。手持ちの-57の画像では、正面から見える外形は、F4U-4、-5が装備した-32Wと同じ。N-20以降が装備した-73は、タートルバック装着の模様。他形式は不明。ギアケースまわりとハーネスはコルセア-5Nで設計済みだが、1/72にあわせて一部デフォルメする。

 ついでなので、タミヤ1/32キットを参考に、コルセアが装備したR-2800-8Wも設計しよう。つうても、これまで設計したパーツを組み合わせれば出来上がる。Wは水メタノール噴射で-1A以降。F4U-1は-8を装備。両者外形は同じ(←たぶん)。F6Fが装備した-10Wも、たぶん-8Wと同じ外形。



M-1からN-15までが装備したCシリーズR-2800-57。プラグコードの生え方は上の-59とビミョーに異なることに注目。

F4U-1A/Dが装備したR-2800-8W。このプロペラガバナはハミルトンペラのR-2800-59と同じ。


 使用上の注意。1つのファイルに上記5タイプ分のパーツが入っている。デフォルトは-59で、他タイプは上画像を参考に適宜表示をON/OFFされたし。相当”ややこしい”ので要注意。設計した本人でも間違えるくらい。先日"X"にアップした画像は一部間違いがあるので、上画像を参照のこと。バッフルプレートもどき(前後エンジン間のリング状パーツ)はOFFにもできる。

 ファイルは1/72で設計しているが、150%拡大して1/48にも十分使えるはず。シリンダーのフィンの厚さや間隔、プラグコードの太さは、スケッチの数値(※)で簡単に変えられる(フィンは多少難易度高いかな)。ちなみに、フィンの厚さ0.08mm、溝幅0.13mm、つまりピッチ0.21mm(←いずれも設計上の数値)とする。前回のAr196のときより攻めてるぞ。1/48キットのプロペラ軸や胴体との合わせは未確認。軸穴は面のオフセットで直してね。

 塗装の便を考え、ギアケースは別パーツとすることも可能。その際もイグニションハーネスは本体と一体を推奨。正面からよく見えない部分(バッフルプレートや吸排気管など)は省略しているので、カウルを開けて全体を見せるには不適。直径もカウルの厚み分だけ小さいし。←拙作コレクトカウルにジャストフィットなのじゃ。

※ P-47Dのプラグコードの場合、コンポーネント「P-47D harness」の中のスケッチ「ignition front」にあるφ0.55の円(ここはコルセアの流れで1/32で設計しており、1/72だと0.44倍に縮小される)。フィンは親コンポーネントのスケッチ「fin」で。こちらはそのまま1/72で設計。


■ 主翼テンプレート

 主翼外形修正で、スジボリがほとんど消えている。機銃口のパネルは面倒な形で、カッティングマシンでシートを切ってもいいが、翼のデータを使うと3DPのテンプレートが簡単にできる。ついでなので、小アクセスパネルのテンプレートも作っちゃう。小四角をきれいに並べるのって、案外難しい。



機銃口パネルのスジボリ用。

下面の小四角アクセスパネルと上面の小丸パネル用のテンプレート。3つに切って使う。外形はパネルラインに合わせてある。


 小パネル用は、サポートを付けずにそのままフィルム上で印刷する算段。その際は上画像で上側をフィルム側とするべし。というのは、最初の数層は露光時間が長く、太るので穴の形が不正確になるから。


■ 士の字

 ここらで主尾翼を接着する。主翼の項で書き忘れていたが、胴体下面の腹ボテ解消のため、左右胴体の接着面を削った。この影響でそのまま主翼を接着するとやや前進角がついてしまう(←翼の前半の方が削り幅が大きいため)。主翼の接着面を慎重に削り合わせる。

 主翼翼型を修正したため、下面側にも段差ができる。削り合わせるついでに、胴体の腹の側面も少し削ってやる。これでキットのメタボ腹はほぼ解消。



ようやく士の字。並行でスジボリもほぼ完了。もうすぐ塗装に入れるぞ。

お腹の両脇を再度削り込んで、メタボすっきり解消。あー、脚庫内に残るパーツ接合線はスルーなので。


 なお、初期のレイザーバックの主翼下面小四角パネルは、キットより数が少ないのが正(下面図を参照)。いつからキットのようになるかは不明。情報求む。フラップのステー付近も異なるが、まだ図面に反映できていない。


■ 胴体細部パーツ

 腹を削る過程で補助排気口のモールドが邪魔になるので、削り落として3DPで再生することにする。ついでにオイルクーラーのフラップも3DPで。ヘッドパッドは、キットパーツの位置が低いので、削り取って付け替える。これ、素組みの人もバルクヘッドのパーツを少し(1mm弱程度)上げて接着するといいよ。



オイルクーラーフラップは、プラ材で作ってもいいんだけどね。補助排気管の円形フタはプラバンで後付けする。

ヘッドパッドは、キットのままだと、こうなのよ。


 リベット図作成中。次回はまず側面図を掲載予定。胴体前半のリベットラインは、レイザーバックとバブルトップで違うって知ってた?



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