マクダネル・ダグラス F-4 ファントムII 図面 その1

2017.11.11初出


次ページ 図面最終更新日 製作記top 完成画像



■ はじめに 

 新プロジェクトは、ヒント(もうすぐ発売のジェット機)でバレバレ、あの超有名機ファントムIIだ。もうすぐエアからブリティシュ・ファントムが発売されるよね。Me262を期待した人、残念。告知時点で発売済み。え?誰?B-2Aステルス爆撃機なんていう人は?(←確かに発売予告あり。でも資料持ってないし〜)

 さてファントム、疾風や隼と同様、既存キットはどれもどこか違うように感じてて、正しい形がずっと気になってたのだ。最近の48はAもZもナニがアレ・・(以下略)。新作エアは真打になれるのか、これは検証するしかない。つうことで、本命はブリファンだけど、まず基本の米ショートノーズから始め、次にブリファン、ロングノーズと進め、元気があればリコン、A型まで。

 今回は、各型の変遷、つまり何処が変わって何処が不変か、を踏まえた外形検証を目的として、図面の細部は追及しない方針とする。このあたりは既存図面もあるし、細部をキッチリ描くだけの十分な資料がない。悪しからずご了承を。どなたか提供いただければ頑張って描くかも。→九州方面などより絶大な情報提供があり、頑張って描くことにする(後日追記。頑張りすぎて、ファスナの数まで数えて描くとは・・)。


■ 基礎資料

 ベースとする資料は、まずAviation Archivesで入手のマクダネル・ダグラス社作成図面で、基本寸法は、シートナンバー32-00005のジェネラルアレンジメント、断面形は32-1144のBCDJ型胴体図(側面、平面、断面が1枚に描かれる)をメインとする。また、F-4A, F-4B & RF-4B-Structural Repair Instruction Manualなどのマニュアルも重要。マクダネル命のTommy Thomason氏によるサイトTailhook Topicsも参考度高い。あとは実機写真。

 


■ 写真

 人気機種だけに膨大な写真があるが、図面に使えるものとなると意外に少ない。ショートノーズの側面写真では、真横遠方鮮明三拍子そろったものは手持ち1枚だけ。これもややサイズが小さいが、とりあえず見ていただこう。






エアライナーズ・ネットのF-4Cである。尾翼や車輪の見え方から計算すると、コクピットの真横、距離は150m以上離れており、遠近法の誤差は小さい。胴体基準線に合わせて若干回転。後でロングノーズと比較できるようベースのサイズを揃えておく。






■ 全長、胴体高さetc

 基本寸法は、前述のとおりマ社全体配置図に記されてるが、これがまた図面によって数字が違ってたり、実機写真とビミョーに合わなかったりして、毎度資料の迷宮に入り込む。ショートノーズの機首はFS-27.0と-27.1の2つがある。尾端の燃料排出ベントもB、E、RF型の図面ごとに違ってFS671.28、671.75、671.98の3種。胴体後端も664.0と664.4の2つ。写真に合わせても微妙すぎてよく解らん。機首に関しては、前輪中心(FS85.50)やレドーム後端(FS46.68)と写真を合わせると先端はFS-28.5くらいになる。

 胴体高さは、A型配置図からするとWL75.5と読めるが、TailhookTopicsの図では75.3だ。主翼取付高さは、全体配置図でLEMAC(MACすなわち空力平均翼弦における主翼先端)の高さがWL8.59とされており、内翼上反角が0゚だから、LEMACは翼基準線上にあるハズだが、なぜかマ社胴体図にある主翼位置と合わない。胴体断面図も、これまた各図面ごとビミョーに違ったり。さてどうする?


■ 胴体側面図、断面図、コンター図

 上記の謎を解くべく試行錯誤あれこれ、途中省略して結果が下図だ。とにかく、図面により断面を切るFSも違うし、精度はビミョーに甘いしで結構大変。よって、ある一断面を切り取っただけでは、真実を表せず(テレビと同じ?)、全断面を起こして総合的に評価しないとダメ。なお、お気づきの点は是非ご指摘くださるようお願いする。



  • レドーム先端は、一体のFRP製(だっけ?)という部品の性質からして、先端位置のバリエーション(あるいはバラツキ)があったものと考える。写真の機体だけの特徴なのか、他型にも一般的なのか不明。後日、図面は先端を-27.1にする(下の写真と重ねた画像は従前のものなので先端位置は異なる)。

  • 胴体高さは写真との整合性からWL75.50が正しい。なお、キャノピ最高点はWL78.04。

  • 燃料ベント後端位置は、とりあえず3つある数字のまん中のものを採用。胴体後端は、たぶん当初のつるんとしたお尻が644.0で吹き出物ができると644.4かなと。どっちにしても、模型製作上は誤差の範囲だ。

  • 垂直尾翼のFS値は、マ社全体配置図から計算にて算出。写真ともよく整合する。

  • 主翼取付位置はマ社胴体図に従う。こうすると胴体中心における翼最下点がWL0.0となる。LEMACは、翼基準面ではなく、わずかに垂れ下がる翼前縁の実先端高さなのかも(確証なし)。

  • 主脚収容部以降の主翼境における胴体端はBL47.5で、これはマニュアルにある主翼骨組図に記載されている。この幅は主翼後端付近まで一定。なお、胴体断面は主翼取付部より上が若干外に膨らむので、胴体最大幅としてはそれよりやや広い(厳密な数値は不明)。

  • エンジンインテイクの内端はBL29.8。これはRF型機首コンター図から読める。この内端の壁面は垂直で機軸平行なので、どこで測っても同じ値となる。ただしインテイクベーンは、やや前狭まりに取り付けられるのでこの限りでない。


 当機の作図においては、写真と製造図面をどう重ね合せるか、が重要なポイント。それが下画像。ちょっと見辛いけど。




エンジン排気口付近がズレているのは、斜めから見る誤差を除去した結果。左右スタビレータの見え方(とスタビレータ幅と胴体幅の比率)から、ズレ幅は推測できる。





 さらに断面コンター図。各色のFS値は側面図を参照。薄青はインテイクリップを正面から見た形状を示す。後部胴体上部の幅、肩の高さ、主翼境の胴体幅、後部キャノピの幅などに注意。



 初回ここまで。ファントムマニアの辛辣なるツッコミ熱烈歓迎。拙図面と既存キットとの差がどうかというのも、気になるところ。生憎手持ちはハセ72Cのみ。他キットについて情報頂けると有難い(特に赤とか象とか・・)。個人的感触としては、48、72ではモノが依然として外形ではベストではないか(残念ながら完成作は処分で検証不能)。ただし現在は入手難。入手可な範囲では、やっぱハセかな。


■ 垂直尾翼追記 11/14追加

 垂直尾翼のデータを追記する。一般配置図では、垂直尾翼の基準線はWL66.50にある。前後位置は、主翼MACから垂直尾翼MACまで244.44"という非常に回りくどい表示。計算がやたら面倒くさいが、結果は基準線での仮想先端がFS452.91となる。後上端はここから211.15"。コード@基準線は207.2"。25%コード後退角は58.3゚。前縁後退角は、前上端の座標値を出してATANで計算して65.0゚となる。

 翼型は付け根(基準面):NACA 0004.0-64、先端:NACA 0002.5-64。マ社図にはMODの記載があるが、実際は純粋な対称翼。翼厚比はroot:4.0%、tip:2.5%だから、実際の最大翼厚(1/48)を計算すると、胴体上端部で3.9mm、尾翼上端で0.6mmとなる。これは40%コードにある。上端では驚くほど薄い。ラダーヒンジは80%コードにあり、パネルの後端はそれよりやや前方。ラダー上端はWL132.0、下端は72.0。


■ その他追記

 その他の胴体関係数値を記載する。レドームは風防直前の「凹と凸」を除けば回転体で、その軸は図の読み取りで-6.4゚。後端はFS46.68とされるが、斜めなのでどこで測るかが問題。基準線(WL0.0)との交点付近とすると写真に整合する。一般的に斜めのステーションは基準線と交差する点で表記するので、問題なかろう。

 J79エンジンのスラストラインは、下に5.25゚、横に0.25゚。高さは記載なく、写真のノズル位置から求める。マニュアルに記載の全長は、基準線沿いではなく、駐機状態(スタティック・レングス)で、その差は約6mm。

 主翼翼型は、胴体中心:NACA 0006.4-64MOD、内翼外端(BL160):NACA 0004.0-64MOD、ここから胴体端(BL47.5)における翼厚比を計算すると5.8%(BL0〜BL160間で上下端が直線と仮定)となり、最大厚さは1/48で7.2mm(40%コード、なお、車輪部のバルジは胴体端では「なし」となり、胴体との境界ラインはバルジの有無にかかわらず同一)となる。外翼端は NACA 0003.0-64MOD。内翼上反角0.0゚、取付角+1.0゚、ねじり下げなし。その他の翼関係の詳細は平面図で記述する予定。


■ 風防の違い

 ファントムの風防って、全型式同じだと思ってたけど、ショートノーズとロングノーズで違うのだね。ま、正確にいうとガラス部品は基本同じで、胴体ラインが違うので分割ラインが違う。画像を見ていただこう。同じアングルで揃えられなかったけど許してちょ。



ショートノーズ。風防側面ガラス下部の不透明部分(赤矢印)に注目。また、正面平面部の下端は狭い。

こちらロングノーズ。左の不透明部と透明部の境界が、こちらの胴体分割線になっている(青矢印)。平面部の下端は広い。

ショート。風防フレームのネジの数を数えても違いが分かる。

ロング。前方の胴体が盛り上がっているのだ。


 補足すると、ショートでも、1960年代頃のBCDSJやブリでは、不透明部がなく胴体境まで透明。この理由は、当初は下まで透明で、ロングが出現して不透明部ありの部品に統一されたためと思われる。これは左右で不透明部の有無が違う機体の存在で裏付けられる。初期モデルで不透明部ありは、改修時に交換したのだろう。




不透明部なし。ベトナム戦当時のC型。

下端に三日月形の不透明部あり。


 ショートとロングの違いを図面にするとこうなる。ロングの図面はちょい精度甘い。どうやら、先端のコーンの中心軸は両者同じで、ロングは風防前の凹みがない分だけ盛り上がる。





おったまげー。


 いやこれ、図面描くまで気づかなかったなあ。衝撃の事実だよ。前から知ってた人って、ほとんどいないんじゃない? 既存のキットや図面でも区別されてないし。


■ C型上面図 11/22追加

 続いて平面形を見ていこう。マ社図やマニュアルをベースとして、かつ実機写真と重ね合わせ、さらに断面図、側面図との整合性もチェックして、基本外形の正確度にはこだわってる。後席付近の胴体幅&キャノピ幅が広く、後部胴体側面ライン(主翼中央〜翼後端付近)が直線なのが、既存の図面(やキット)と違う解釈だ。とエラソーにいいつつも、思い込み勘違いなどあるはずだから、お気づきの点は是非ご連絡願う。

 今回は、マ社図やマニュアルに記された桁などの基準線、座標を出来る限り図面に記載し、パネルラインの位置を決める(基準線は最新のバージョンでは非表示とする。必要な方には表示バージョンを送るのでメールされたし)。というのも、レシプロ機だとステーション値が分かれば、パネルライン位置も推測できる。しかし本機(というかジェット全般かも)の場合、フランジの幅が広いため、パネルラインと基準線が一致しない場合が多いのだ。

 その基準線もいろんな座標軸があってややこしい。ここで各軸を整理しておく。FS(Fuselage Station)軸は胴体基準線そのもの。BL(Buttock Line)軸はFSに直交かつ水平。OWS(Outer Wing Station)軸は外翼基準面(上反角12.0゚)沿いでFSに直交し、原点はBL160.0。OWCS(Outer Wing Canted Station)軸は外翼主桁(41.68%)に直交し、外翼基準面沿い。ただし各数値はFS直交方向に測るというややこしさ。SS(Stabilizer Station)軸はスタビライザ基準面(下反角23.25゚)沿いでFS直交。さらに、XN軸は内翼前フラップヒンジライン沿い(詳細後述)で胴体中心が原点。XF軸は外翼前フラップヒンジライン沿い(同)でBL160.0が原点。WL(Water Line)軸は地面に垂直(水面というべきか)。



  • 基本図面はいわゆる「平面図」、つまり真上から見たものとして作図(ただし、例によりパネルライン、リベットラインなどは翼基準面への垂直投影を真上から見たものとする)。外翼とスタビレータはそれぞれの基準面沿いの図も余白に記載する。モケイにスジボリなんてときは、こちらを参照されたい。

  • 胴体は主翼上にオーバーハングする。左舷は、胴体外側線、右舷は主翼との境界線(赤線)で示す。キャノピのオーバーハング部分は、キャノピの外側線を記載。

  • 内翼前フラップのヒンジライン(XN)は前桁(14.5%)に平行で、BL160.0で11.25%である旨記載がある。主桁の40.48%は明示的でないが、マニュアル282pの外板図にそれらしき記載があり、実機写真とも矛盾しないので、たぶんそうだろう。

  • 外翼上面のストリンガーは12.0、21.4 28.8、35.5、41.6、47.8、53.9、59.9、70.6%。内翼の前桁と主桁間のストリンガーは、22.75、29.70、35.60%。 スタビレータの桁位置はF4H-1マニュアルに記載あり。

  • 外翼の%コードは内翼における%として記載され、外翼前縁は-10%、フラップヒンジは3.2%となる。

  • 図中にピンクで示す主翼のBL値(82.5、104.89、117.00、138.742)は、前桁または主桁と主要なリブとが交差する位置を表す。



■ 下面図

 翼型はこちらに記載。翼前縁の垂れ下がりが悩ましいところ。外翼とスタビレータは断面図がありそれをトレースする。内翼前フラップについては代表断面の座標があり、エクセルに入力してグラフを描かせてトレースする。写真の見え方にも整合している。胴体中心はシート53-1349のE型主翼断面図をトレース。まあ、仮想翼断面だから、模型的には関係ないよね。



  • 胴体下面での前桁と主桁の間(いわゆるトーションボックス部分)は翼の形が表面に現れる。胴体中心線上は隼の主翼下面のように峰が立っている。

  • 主桁と前桁のパネルラインは精度やや甘い。写真からしてこんな感じか? なお、胴体下部における前桁はFS250.60で、胴体フレームのFSとは微妙に異なる。

  • 各前縁フラップの両端分割線は上下で異なる。翼下面にあるピアノヒンジを中心にして回転したときに、互いに干渉しないような面で切ってあるのだ。ただし詳細不明で図はかなり甘い。

  • 後縁フラップとエルロンの分割線は、下面は直線、上面はヒンジ部で湾曲する。これも互いの干渉を避けるため。

  • エンジンインテイク部の胴体最大幅は、BL53.6。これは、数値として示されているわけではなく断面図の読み取り。実機写真でチェックしてるので、そう外してないだろう。



■ スペイ型胴体側面図、断面図、コンター図 11/27追加

 いよいよ本命(?)ブリティシュ・ファントム図面だ。R&Rスペイエンジンに換装して太くなった胴体ライン、「どこ」が「どれだけ」変わったか、が見どころ。エアキットに合わせて海軍型FG.1で。胴体断面形は、マクダネル社図32-1123をベースとし、比較しやすいようにFSをC型に揃えて描く。マ社図は横方向の縮尺の記載がなく、そのままでは胴体幅の数値が分からないが、C型の機首を基準に合わせることで、幅の数値が計算できる。



  •  機首はC型と全く同じ。インテイクの形状は、リップ部ではC型と同じ高さで横幅のみが広い。後方にいくに従い高さも大きくなる。インテイク側面は、C型とほぼ同じ断面カーブのまま外と上に広がる感じ。インテイク部胴体幅の拡幅は図面読み取りで3.4インチ。各種文献には3インチと書かれている。ま、四捨五入されたのだろうな。多分。

  • 後部胴体の「肩」の折れ線は、C型ではFS249からFS359まで水平なのに対し、スペイ型ではFS300付近より後方が垂れ下がっていく。

  • インテイクの開口部については、外側の先端位置はC型より1/48で1.5〜2mm程後退する。上から見た前進角は同じ。従って開口部の内側端(=インテイクベーン後端位置)はさらに後退する。ベーンの先端位置は変わらず、この結果ベーンは固定部、可変部ともに前後長が広くなる。小穴のパターンなど詳細も異なる。

  • スペイエンジンのスラストは下に5.75゚、外に0.55゚となる。ジェットノズル付近は下側および外側に大きく膨らむ。Tailhook Topicsによると、シュラウド後端直径の実測値は38.5"とか。図はこれに合わせる。結構絞り込みが強いが、写真の見え方に合致する。

  • 主翼の基本構造、形状は同じ。側面図で見れば、インテイク拡幅のため、あたかも主翼コードが短くなったように見える。後縁フラップはC型と同じ。後部胴体はフラップぎりぎりまで拡幅される。ここで幅が抑えられるので、後部胴体の横方向の拡幅は意外と少ない。


 C型側面、断面図と重ねて出力すると、違いがよ〜く解る。ノズルより後方は、胴体上半分(塗装部分と無塗装のパネルの一列)の形状は変わらず、その下側の蛇腹状の無塗装部のみが下に膨れる。これも、FS555以降は不変。ノズル直上のスリットは、側面図でも平面図でもC型と同じ位置(形状、ベーンの数は異なる)。なお、当該図面はバージョンが古いので、細部は最新とは異なることに注意。



 次に断面コンター図。参考までに既出C型と並べる。取り込んでスライドショーで見ると面白いよ。なお、スペイ型のマ社断面図は、ここまで細かくコンターを切ってなく、そこは適当に補間してある。


■ スペイ型上下面図 12/5追加

 側面図の次は英型の上下面図。上面図の左舷は胴体最大幅を表示、右舷は胴体と主翼の境を表示する。また、主翼主脚バルジ断面も表示。C型とスペイ型とは同じ膨らみの形状で、胴体境が違うだけという認識。ベースの翼平面図はC型として図示する。この図で分かるように、胴体境のラインはバルジの有無にかかわらず同じ。



  • 上面図の左右で後縁フラップの見え方が違うことに注意。スペイ型は胴体のオーバーハングが大きいので、真上からだとフラップ内端線がほとんど見えない。

  • 上面バルジ図の細線で示す円弧は、バルジの境界を示す。パネルラインとは一致しないので十分注意されたし。また、バルジ図の青細線はバルジが無い場合の翼表面。上面と下面で平仄が合ってないけど、オリジナル(シートナンバー32-0488)がそうなってるのだ。悪しからず。また翼断面図は取付角を無視して描く。

  • エンジンインテイク内端にある上下のスリットは、マニュアルにあるダクトFSから想定するフレームを避けた位置に描く。スペイ型のダクトFSは手元にないが、リベットラインを観察するとC型とは異なる位置となる。


 上面図をC型と重ねてみよう。主翼前桁〜主桁付近での胴体幅が大きく違うことが分かる。このあたり間違えている図面やキット(F社)があるので要注意だ。一方、フラップ付近では差が小さい。そしてノズル付近になるとまた差がでてくるのだ。インテイクの平面形は、ベーン先端から発生するショックコーンを考えれば、広がった分だけ後退するのは理に適っている。




■ F-4Aの風防

 機首レドームの小さいA型の風防は(A型でもB型と同じレドームがある)、正面ガラスが下まで広く、途中に補強の横棒があったりと、それ以降の機体とは色々と違いがある。それだけでなく、胴体との境界線も違う。風防前方の胴体が細いため、境界線も下がるのだ(下図青矢印)。最先端位置もやや前進かな。ガラス部の基本形状は同じで、このあたりはショートノーズとロングの違いとよく似ている。ファントムの風防、奥が深い。







■ 機首平面形のよくある間違い

 ファントムの機首側面は、丸みがあって横に膨らんでいる。そのため、インテイクダクト内側付近の胴体平面形は、下画像の青線のようにS字カーブとなるのが正しい。ところが、ここを真っ直ぐと解釈してる図面やキットが見られる。こういう平面形に無理に合せようとすると、胴体側面が平らになり、後席キャノピの幅が狭くなる。また、ダクト部全体幅と開口部正面形を実機に合わせると、ダクト先端が内側に大きくカーブしてしまう。ベーンとダクトの内壁も折れ曲がらず、真っ直ぐになってたり・・



正しい平面形。図面で見るとウソだと思うかもしれないが、実機写真をよ〜く見てみよう。キャノピ平面形の違いにも注意。

よくある間違い。手持ち某キットと某文献の図はこんな感じ。


 某キットって、あんた手持ちは〇〇しかないと書いてるじゃないか! →いや、だから、いわゆる・・(以下略


■ F-4C 胴体側面図 12/14追加

 ロングノーズに進む前に、C型側/断面図にパネルラインを追加する(注)。参考まで右舷胴体図にA、B型マニュアル記載の胴体FSを図示する。アクセスパネルは、C、D型SRIマニュアル記載の図に従う。その他のパネルラインは現存実機写真の読み取りなので、違うところがあるかも。お気づきの点は連絡願う。

※ 初出時は側/断面図にパネルラインは未記入。



  • FS数値は別表に示す。インテイクの斜めステーションは、インテイク中央の水平なパネルライン位置が基準になっていると思われる。CFS167.60が2つあるのは、誤記でなく、実際に2つあるから。そのうち前方のフレームは、横から見て斜めなだけでなく、平面的にも前進角がついて斜めになる。2つのフレームの付け根は重なる。

  • 既存図面で、このインテイクの水平パネルラインの前方が垂れ下がっているものがあるが、間違い。斜め下方から見るとこう見えるので勘違いしたのだろう。

  • スタビレータは、胴体端の断面を図示。前下がりだけど取付角は0゚。下反角があって胴体端が前広がりだから、側面図に描けば前下がりになるのだけど、このあたりも勘違いしてる図面があるから要注意。

  • スタビレータ基部の半円状パネル。前側の方が半径が大きい。プラモは、スタビレータのパーツにあるピンを中心に回転するけど、実機は違うのはご承知のとおり。半円の上端は、スタビレータ取付角0゚のとき水平(たぶん。このあたり、既存キットはやや怪しげ・・)。

  • B、J型とはパネルラインが違うところがあるので要注意。

  • J79エンジンノズルは精度甘いので絵として見ていただきたい。



 Thomason氏からのご指摘により、前回更新のA型側面断面図を修正して差し替え。A型のインテイクベーン先端は、Bより約1インチ後方になるとのこと。情報感謝。次回はC型上下面パネルラインの予定。


■ キャノピのS字カーブ

 ファントムのキャノピと胴体の境界ラインは、独特のSカーブをしている。前席は上に凸、後席は下に凸。なぜこうなるのか?前から気になっていて、今般図面作成を機にこの件について考えてみる。



前席は上に凸、後席は下に凸のカーブだ(水色線)。

この角度から見ると、上がって、下がって、上がって、下がって、また上がる。


 前席部の上に凸のカーブは、下画像のように考えると説明できるのではないか。テーパーした円筒を平面で垂直に切る状況を想定する。左のように軸方向に切ると、切断線は直線となる。一方、軸に斜めに切ると、切断線は上に凸な曲線となる(右)。これまで縷々説明してきたように、前席キャノピは後広がりで、したがって実機では右のような状況となる・・のかな。あとは、キャノピ自体が上に凸に湾曲したバナナ状というせいもあるか。





 じゃあ、後席部は逆方向斜めに切るから、やっぱり上に凸じゃないの?と考えたくなるが、そうではない。後席付近はキャノピと胴体の交差する角度が浅いので、上画像の垂直に切るという状況でなく、太い円筒に細い円筒が斜めに潜り込む状況が近いだろう(下画像)。この場合は細い円筒の丸みが卓越して、下に凸のカーブになるのだ。





 もちろん、実物の形状は上記説明のような単純化されたものではない。しかし、平面図で解るように、ファントムのキャノピは、後席前端付近を境として、前席の後広がりから後席の後狭まりへと急激に変化する。このため、上記の2つの状況がより劇的に表れるのだろう。

 ついでに、断面図を斜め変形させてズラして並べ、さらに胴体とキャノピに分けてみる。ファントムの機首形状の微妙さが感じられるかな。なお、正確なキャノピ断面形は不明なので、とりあえず円としてある。







■ F-4C 上下面図 12/20追加

 続いて上下面図にパネルラインを追加し、ver.2.0として差し替える。上面図は、左舷では胴体最大幅、右舷は主翼境を表示する。

C型上面図  C型下面図



  • 写真を再度見直し、主脚収容部の位置をやや後方に訂正する。これでマ社図の下面バルジとも位置が整合。主桁基準線より後ろに離れるが、おそらく基準線は桁ウェブの前面側で、桁の厚みがあるのだろう。

  • 主翼に追加記入のピンク色細線は、マニュアル等にある桁、リブの基準線を表す。リベットはこのラインの近傍に打たれることになる。パイロンの取付穴もこの線近傍にあるはず。外翼の下面の桁は上より1本少ない。

  • 主脚収容部の+は主脚柱上端中心を示す。マニュアル等には数値の記載がなく、位置はいろんな要素を突き合わせて推測したもの。ブリやJ型の上面パッチの中心と一致する。

  • エンジンノズルは「図」としては正確でないかも。まあ雰囲気ということで。

  • 背中の空中給油口パネルは左右非対称。給油口の〇パネルは、胴体フレームとの位置を調整してこんなもんか。

  • 後部胴体のパネルラインは、側面図、断面図と位置を整合させている。エンジンインテイクの肩から、ラムエアタービンドアの外端、ジェットノズル上部スリットの上側を通り、尾端に至るラインが読めるよね(側面図と照らし合わせてみよう)。


■ インテイクベーンに関するマニアックな話

 エンジンインテイクダクトの内側外壁(BL29.8)は垂直かつ機軸平行である。ところが、インテイクベーンを前から見ると、先端エッジや、可変ベーンの前後端は垂直ではなくやや内傾して「ハ」の字(下画像黄線)。なぜこうなるのか?



用廃機でコキタナイけど許してちょ。手持ちで一番条件がいいのだ。インテイクの正面形もよく分かる。


 私の推測はこうだ。下画像は左舷ベーンを6方向から見たもの。説明を簡単にするためベーンの形を単純化する。各頂点は外側が大文字、内側が小文字(AとDは共通)。まず、左端の正面図を見ていただく。赤線cfはダクト内壁の前端で、垂直。一方、ベーン先端の線ADはわずかにに内傾している。ベーンの内壁は、ダクト内壁から折れ曲がるが、その折れ方がポイント。上から見ると(赤三角)、ベーン内壁は点cで折れ曲がる。

 このとき、下側(青三角)では点gで折れると考えると、同じ角度でもAc>DgであるためAの方が内側になって先端は内傾する。もし折れ曲がりが点fであればAc=Dfとなるので内傾しない。ADとCFは平行なので、ベーン先端が内傾していればインテイク入口も内傾する。また、Cc<Ffだから、ベーン後端は下側の方が広い。実機写真ではよく分からないので、私の説が合っている保証はない。もしかすると、明確な折れ線でなく面がねじれるように曲がっているのかも。

 模型を作るには、どうでもいい話である。ただ、もし新規キットが開発されるなら、ここまでこだわって設計して欲しいなあと。拙図のベーンは上記説に従って描いている。


■ 続、キャノピの話

 キャノピの話をもう少し続ける。キャノピ平面形は、風防から直線的に後広がりになり、後席キャノピ前端付近で折れ曲がって後狭まりになる。私としては、ファントムの機首造形のキモだと思うんだけど、一部既存図や多くのキットがイマイチなのは前述のとおり。ここをキチンと再現しているのは、エアのブリファンとモノグラムだけ。だから、この2社のは実機「らしい」のだ。ともかく、まず写真を見ていただこう。



まず、上面はブリファンFGR.2だ。後席部の広がりを拙図と見比べられたし。

米空のC型。ややカメラが近く、パースのせいで後広がりが弱く感じられるが、ハイライトで後席前端付近の折れ曲がりが解る。

なんちゃってブルエンのB型。画像は左右反転。胴体境のS字カーブ、風防側面の平行感にも注目。

ドイツのF型。かなり遠方からで、断面図の絵柄に近い。前後キャノピのフレーム幅の違い、胴体の丸み、ボリューム感に注意。

米空のE型。既存キットはキャノピオープンで誤魔化すのがいいかも。もっとも、オープンでも断面のサイズ違いは見て取れる。

ドイツのF。胴体との分割ラインは、後席キャノピ後方部でもう一回「しゃくり」が入る。いやあ、複雑。


 図面と照合してみよう。下左は既出断面図を分かりやすく編集したもの。後席キャノピ前端はピンクのあたり。下右は製造図の断面図をベースに、キャノピ部にぴったりはまる円を描いてズラして並べたもの。直線的に広がり、直線的に狭まる。




 この立体造形イメージは、下画像のように単純化して考えると解りやすいだろう。まず、基本は右側の紙コップ2つが合体したような形。これを横から見たキャノピ上端ラインになるように「むにゅ〜っ」と曲げたのが左の物体。正面窓を面取りしてフレームの線を描くと、かなり実物に近い雰囲気になる・・・かな?





 ポイントは、曲げる前の紙コップ状物体の側面は風防部含め直線(正しくは二次曲面)であること。また曲げ具合も風防付近ではあまり曲がらず直線に近い。一部のキット(アカ・・)では風防部が曲線的に先細りになっていて(例えれば落下タンクの先端)、似てないしカッコ悪いんだな。


■ FG.1 胴体側面図 12/25追加

 ブリファンは、FG.1、FGR.2とも米海J型をベースとしてスペイに換装された。そのため、細部はJ型との共通部分が多い。



  • 垂直尾翼上部のESMフェアリング(エアロガイドによればRWR(passive radar warning receiver)、ブレードアンテナ(同本ではILS localiser)は、FG.1、FGR.2とも1970年代中頃にレトロフィットされた。

  • フェアリングがない場合の尾灯位置は米軍型と異なり、やや下がる。なぜ変更したのかは謎だ。フェアリングありの場合は、胴体後端に移動する。

  • FG.1では、前脚延長に伴い脚取付角が3゚前傾し、車輪中央がFS88.82となる。FGR.2は米型と同じ。主脚カバー形状は米海型と同じ形。長くなったトルクリンクをクリアするため、後端形状が米空型と異なる。

  • スタビレータのスラット断面はマ社LS32-0518の断面図をトレース。C型と同じ翼断面に、前方にスラットを追加したという形。

  • キャノピ後方のブレードアンテナは、後期の少数機に見られる。前脚カバーのアンテナは、当初は細く斜めのタイプ、後に幅広になる。前後席間キャノピ(ちなみに、この部分は犬小屋:doghouseと呼ばれるらしい)の左舷にあるのは前方ペリスコープ。初期の機体には見られない。後部胴体側面の小四角パネルはバリエーションがあるようだが、その使い分け法則は不明。


■ F-4トリビア

 小ネタは続く。トリビア3連発いってみよう。といっても各方面の受け売り。



ラムエアインテイクの胴体側は凹んでいる。ショートノーズは各型みな同じ。

垂直尾翼のインテイクは、大小2種類。細かく見ると内部の仕切りなどさらにバリエーションあり。正面開口部のサイズは同じ。

初期(A、B、C、D、N)は前寄りに開口部があり、中に仕切りが2つ見える。

E、J型以降と英型は境界層を逃がすフェンスが設けられ、入り口が一段高くなり後退する。

フック基部下側には、可動式の整流板のようなものがある。米型ではノズルの陰で見えないが、ブリは丸見え。

フックが下がると、この板もフラップのように下がる。


 ところで、機首ラムエアインテイクの中央に仕切りのようなものがある機体が見られるけど、有無の法則ってあるのだろうか?


■ 訂正と追記 12/28追加

 前回掲載の図面にミスがあり訂正する。後部胴体のスリットは米4本に対し英5本で形も違うのだね。位置は両型同じ。その他にパネルラインも追加訂正。情報感謝。修正作業中にさらに重大な誤りに気づく。英型のエンジンインテイク先端は米より後退しているのだ。ベーン先端位置は同じ。以前の上下面図、C型比較図を直し、従前の関連記述も訂正。メンドクサー。ただし、遠方真横鮮明写真がなく、精度はやや甘い。写真等ご支援お願いする。

 また、インテイク後方の境界層排出スリットは、ブリの場合上下とも幅広&前広がりとなる

 ブリのスタビレータ、世傑には甲板に擦らぬよう下反角0.1゚減少・・との記述があるが、23.25゚で不変が正解。0.1゚じゃ意味ないっちゅうねん(実寸で4mm)。 たぶん23゚15'と23.25゚を違う角度と勘違いしたんだろうな・・・

 機首ラムエアインテイク、J最後期〜S型で仕切りが見られるとのこと。THNX  


■ FG.1 上下面図 1/9追加

 上下面図にパネルラインを描き入れ、ver.2.0として差し替える。

FG.1上面図  FG.1下面図



  • 現存実機では、主尾翼の各所に補強板があるが、どれが当初からでどれが補修によるものか、詳細不明のため全ては図示していない。スタビレータ無塗装部境の差異は図示。

  • 胴体頂部の滑り止めはFG.1のみのようである。艦上給油作業は揺れて危険なのかな?

  • 下面の主脚バルジは、米型よりさらに膨らみ具合が大きいかも??(平面図的には同じ) 詳細不明、情報求む。

  • 英型の主翼は基本的に米Jと同じで、内翼内側前縁フラップは廃止される。

  • 前脚庫後方のブレードアンテナは後期の少数機にのみ見られる。前脚扉の三色灯、カタパルト用フックはFG.1のみ。


■ F-4トリビアその2

 小ネタは続く。



インテイクランプの角は面取りされている。何でだろうと気になってたのだが・・ 画像はS型。

給油ブームをクリアするためのようである。といっても、左舷にもある。空軍型にもある。

カタパルト発艦の際には、ホールドバックという装置にて後方に引っ張られる。ジオラマでは是非再現したいね。画像はFG.1。

機体側はこんな風。場所はFS450付近。



■ C型正面図 1/17追加

 ロングノーズに行く前に、正面図を描いておく。胴体尾端はバリエーションがあるが、変遷など詳細不明。現存機はオリジナリティが疑問だし、記録写真は前からばかりで。ベトナム戦初期のCはこんなんだと思うが・・



  • 正面図、背面図は胴体基準線沿いに見たもの。間にある主翼正面図は主翼基準面(胴体基準線より1゚前上がり)沿いに見たもの。正面図では内翼上面ラインと下面ラインの勾配に差があるが、主翼正面図では上下同じ勾配となる(かつ主翼基準面に対して線対称)。主翼の前縁は赤細線で示す。内外翼で不連続となる。前縁フラップの境界線は、本図のキモの一つでもあり丁寧に位置形状を描出。垂直な一本線ではないことに注意されたし。

  • 正面図、背面図の胴体パネルラインは断面図をベースに描く。ただし、尾部下面の甲冑状耐熱板と着艦フックは一部やや甘。また、一部のパネルラインは図面の煩雑さを避けるため省略する。図面だとパースがないから、後席キャノピの幅が相当広く感じられるね。

  • 脚はC型正面からの写真をベースに、側面図と高さを合わせて描く。主車輪はかなり太く、バルジのついた主翼厚さギリギリ。

  • パイロン、ドロップタンク(中心および外側とも)は、マ社図(53-1217)にあるB型胴体&武装図をトレースしたもの。図中の胴体に縮尺を合わせており、それなりの精度。正面形はちょい甘なので、まあ位置を示したもの程度に見られたし。付随する翼断面図も形状は甘いので位置の参考程度に。外側タンクと空軍型内側パイロンの側面形は写真で形状を補正する。

  • 空軍型の外側武装パイロンは外側に7.5゚開いて取り付けられる。これはMERに爆弾を装着すると脚と干渉するためと考えられる。米海、英、空自は垂直(空自は当国の政治状況からして武装パイロン自体あるのか知らないが。JやUKも脚と干渉するけど垂直なのは、運用に関する思想の違いか)。また外側落下タンクは全型式通じて垂直。いやあ、こんなの知らなかったなあ。

  • 外側落下タンク、内側パイロンのサイドワインダーランチャーは、図面読み取りで胴体基準線に対して約1.9゚前下がり(つまり翼基準線に対しては2.9゚)となる。センタータンクはそれより前下がり角が大きく、図の読み取りで胴体基準線に対して2.9゚。これら数値、もしかして切りよく2.0゚、3.0゚だったりして?

  • 外翼前縁は、内側1/3付近で僅かに折れ曲がり、逆「へ」の字状になる。図面でも表現してるが、この解像度だと分からない。フラップ後端ラインは真っ直ぐ。




米空C?型with MER。遠近法で斜めに見えるのではない。


 次号世傑はロングノーズファントム。私のために出版してくれるなんて。あ、勘違い? 早く図面描けってか? それはそうと、執筆の方々は当頁をご覧になってるのかなあ。(・・多分見てないだろうなあ)


■ キット評 1/18追加

 昨日エア新キット入手。ではお待ちかね?キット評いってみよう。かなり辛口なので、苦労して作った人と血圧の高い人は読まない方がいいかも。

エア 1/72

 遂に出た決定版!? 基本的寸法、形状(側・平・断面)は完璧に正確。まるで私の図面をキット化したみたい。そういえば先日タイムマシンに乗って来たエアの社員に図面渡したっけ・・・ おやじギャグさておき、ワイドな後席キャノピ、コクピット部断面のボリューム感は、これぞファントム。スペイ換装で太くなったインテイク〜ノズルの胴体ラインもばっちり。マ社製造図が正しく反映されてる。これはおそらく3Dスキャンによると思われる。

 さらに、胴体と一体化した風防パーツやインテイク内部のダクト再現もポイント高い。飛行状態、フラップフルダウン&前脚延長の発艦時、外翼&レドーム折り畳みの駐機状態が選択できる(3つ買わせる営業戦略か?)。米型も、他社を修正するより、こっちを改造した方がいい作品になるだろう。とはいえ、手放しではなく、ぬるいモールドと小物はエア通例で、素組みではツラい。ここはモデラーの力量が問われるところ。

 以下重箱の隅。外形では、インテイクベーン内側の折れ方が違う。詳細は製作記参照。また、スペイのノズル後方耐熱板のエラ部分が下に広がった感じが若干不足かな。それほど気にならないからスルー推奨。一方、パネルラインには、各所にミスが散見され、FG.1とFGR.2の違いも無視。レドーム後端の角度違いだけは塗装にも関係するから直したい。その他は拙図と見比べられたし。胴体側面補助インテイクが拙図よりやや下だけど、製造図にWLが記載されてなく、私自身も写真から割り出したので、あまり声高に主張はしないでおこう。

 間違いではないけど不満が少々、いや沢山。一言でいうと「愛」がない。インテイクとノズル付近のスリットが完全無視。そのくせ胴体頂部は無駄に別パーツ化。主翼下面の妙に凝った部品分割もNG。こんなのタミヤだけにしか許されないぞ。自社の部品勘合とモールドの甘さを完全に忘れてる。あと、私ゃどうでもいいけど、飛行状態可なのにパイロットがいないのも、エアらしくないね。・・・だから幽霊か。(これがオチかい)

ハセ 1/72

 細かく見るといろいろあるけど、現時点(2017年)の1/72米型ではモノのC/Jに次いで僅差の2位かな。出来上がりがカッチリ&シャープで、普通に組んだエアよりも上手に見える。だから、初級者(と外形にそれほどこだわらない向き)にはオススメ。重箱の隅をつつけば、機体形状の「線」が細い。よく言えば繊細。これは当機に限らずハセ全般的な癖みたいなもの。機首に関しては前述「よくある間違い」のとおりだが、実は細い機首にバランスするように長さが短く、機首で1ミリ、尾部で1ミリほど短い。

 また、主翼が薄い。上面のカーブは正しいが下面の厚みが足りず、このため関連して機首下面の厚さ不足(これも機首の細さの一因)。各翼平面形もやや不正確。これらは修正しても効果は薄いから、スルーするのが健全だろう。ショートとロングの風防の違いは再現されない。キットはショートに近め。その風防前方のクビレは相当強調されている。ま、実機よりカッコいいっちゃカッコいい。ところで、このキット2代目だと思ってたら4代目だとか。知らなかったなあ。でも、そろそろ5代目どう? いい図面あるで。

ハセ 1/48

 手持ちなく、完成作品の印象。全体的なイメージは同社1/72に近い。ただし、開発時期が72より古いからどこまで共通かは不明。情報求む。機首の細さは72によく似ている。和風だしの薄味ファントムという感じ。このへんはお好みで。

ゾウケイ 1/48

 キットは持ってなく、展示品の印象と識者のコメント。勘違いご容赦。斜め前上方(つまり模型を見るときの一般的角度)から見ると、なかなかカッコいい。メリハリきいてマッシブ。厚切りステーキ、てな感じ。脂身が多くて肉が固いのが・・(←やめれ!) 後部胴体は残念の一言。インテイクの肩からジェットノズルに向かって垂れ下がる部分は、ネット上などで散々議論あるところ(FS450付近が顕著)。

 一方あまり語られてないが、インテイクの肩(FS250〜400付近)が約1〜1.5mm高く、ブリよりさらに盛り上がる。どこがどれだけズレてるかは拙図面と照合されたし。イメージ的にはこの2点を修正すれば、現時点でベストの48ショートノーズになる。中級以上のモデラーなら切った貼った盛った削ったで対処できる。

 ただし、重箱の隅をつつけばいろいろ出てくる。あまり言いたくないけど、J型修正版もしくはE型決定版あるいはその72版を出して欲しいので、あえて指摘する。模型を作るにはスルーされたし。主翼は、取り付け位置が1mmほど低い。たぶんこれはこのあたりの胴体高さが1mmほど高いから。このためインテイクの肩がさらに盛り上がって見える。レドームから胴体下面に至るラインにクビレ感あり。

 風防前のクビレもやや強調気味。風防後端の幅はよい。後席キャノピの幅は1mm不足。インテイクの肩に引きずられ(←視覚的に)キャノピ側面形も盛り上がっており、そのため風防から前席キャノピへの折れ曲がりがない。各キャノピの前後長さもビミョーに違う。ノズル後方耐熱板部は、エアと逆にエッジ部が1.5mmほど低く、ややブリファンが入ってる。

 後から出たロングノーズ型は、散々叩かれた後部胴体断面形が改善された。ただし、完成品画像を見た限り、それ以外の部分は直ってないみたい。私の図面は見てくれなかったようだ。風防の違いもスルーされている。結局決定版にはなれずじまい。残念!(この段落後日追記)

 さらに後日、さる方面よりC型キット入手。主翼下面は、中央の峰が再現されず、胴体端付近に本来ないエッジがある。また主翼上面の車輪バルジはエッジが前方まで延びている。ん? この感じ、どっかで見たぞ。そう、ファイン72と同じだ。ということは、ファインはゾウケイを真似したってことか。罪作りなゾウケイ、何も考えないファイン。(この段落も後日追記)

アカデミ J型

 手持ちは1/72版のみだが、おそらく1/48も同じデータで外形は同じだろう。ハセと比べると寸法的正確さはこちらが上。主翼厚さ、全長は正しい。それなのに、斜め前上から見た印象は、似てないしカッコ悪い。原因は風防(全体に前狭まりで正面窓が幅広)と、レドーム後端(断面1時11時方向の凸がなく、逆にオニギリっぽい。分割面が垂直)あたりかな。後席キャノピの幅はハセと同じ。なぜエア・モノ以外はみな狭いの?

 エンジンインテイクからノズルまでの胴体形状は、私の図面を使ったのかと思う程ぴったり。ということはマ社図(かそれを忠実に反映した誰かの図面)を使ったことは明らか。主翼外形と合わせてこの部分の出来は良い。48ならゾウケイとニコイチで殿様モデリングもありか(接合部が合うかどうかは知らんが)。ただし、主脚庫の位置は後過ぎ。下面トーションボックス部分が異様に広い。尾部がまた問題で、スタビレータ付け根の胴体側面は、垂直であるべきところが下狭まり。垂直尾翼は異様に厚い。

 ということで前後を切り取ると真ん中は使える。問題の根源はこのメーカーが飛行機をよく理解してないこと。これはスタビレータのパネルラインと、胴体の半円形可動部とのズレを見ても明らか。いい食材なのに味付けが不味いビビンバ・・(ヤメレ!)。あるいは、ホットケーキを醤油味にしてニラが入っている・・(チヂミかい!)

独レベ 1/72F型

 手持ちにないが、ハセよりさらに機首が細いという情報がある。ということは・・・・

タミ 1/32

 主翼付近の胴体幅が太く、背中が扁平。ジェットノズルと胴体との段差も目立つ。そろそろ決定版が欲しいなあ。

独レべ 1/32

 胴体幅はタミより狭く、こちらの方が断然良い印象。ただし寸法を測ったわけではない。あの作品(ロングから改造)は相当手が入ってるんだろうなあ・・

モノ 1/48 1/72 C/J型

 先日の展示会で1/48を見た印象では、全体の雰囲気、とくに機首回りは、米ショートノーズでは一番ファントムらしい。主翼後端からエンジンノズルまでが短いという説があるが、検証したところ問題なし。キットを手にしたレビューは
こちら

フジミ 1/72 ブリファン

 レビューはこちら

ファインモールド 1/72 EJ型

 令和の新キットはこちらから。

タミ 1/48 B型

 私の図面に完璧に一致。詳しくはF-4C製作記で。

上記以外

 たぶん全部まとめてダメ。古いからねえ。


 以上、当ページの常として、実機の正しい外形との比較に特化している。それ以外の評価軸はスルーしているので悪しからず。「そんなのどうでもいいじゃん」とか、「俺のファントムはこれだ」とかは全く否定しない。いつも言ってるけど。






次ページ(E型図面)へ



HOME