マクダネル・ダグラス F-4 ファントムII 図面 その1
2017.11.11初出
さてファントム、疾風や隼と同様、既存キットはどれもどこか違うように感じてて、正しい形がずっと気になってたのだ。最近の48はAもZもナニがアレ・・(以下略)。新作エアは真打になれるのか、これは検証するしかない。つうことで、本命はブリファンだけど、まず基本の米ショートノーズから始め、次にブリファン、ロングノーズと進め、元気があればリコン、A型まで。 今回は、各型の変遷、つまり何処が変わって何処が不変か、を踏まえた外形検証を目的として、図面の細部は追及しない方針とする。このあたりは既存図面もあるし、細部をキッチリ描くだけの十分な資料がない。悪しからずご了承を。どなたか提供いただければ頑張って描くかも。→九州方面などより絶大な情報提供があり、頑張って描くことにする(後日追記。頑張りすぎて、ファスナの数まで数えて描くとは・・)。
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エアライナーズ・ネットのF-4Cである。尾翼や車輪の見え方から計算すると、コクピットの真横、距離は150m以上離れており、遠近法の誤差は小さい。胴体基準線に合わせて若干回転。後でロングノーズと比較できるようベースのサイズを揃えておく。 |
胴体高さは、A型配置図からするとWL75.5と読めるが、TailhookTopicsの図では75.3だ。主翼取付高さは、全体配置図でLEMAC(MACすなわち空力平均翼弦における主翼先端)の高さがWL8.59とされており、内翼上反角が0゚だから、LEMACは翼基準線上にあるハズだが、なぜかマ社胴体図にある主翼位置と合わない。胴体断面図も、これまた各図面ごとビミョーに違ったり。さてどうする?
当機の作図においては、写真と製造図面をどう重ね合せるか、が重要なポイント。それが下画像。ちょっと見辛いけど。 |
エンジン排気口付近がズレているのは、斜めから見る誤差を除去した結果。左右スタビレータの見え方(とスタビレータ幅と胴体幅の比率)から、ズレ幅は推測できる。 |
さらに断面コンター図。各色のFS値は側面図を参照。薄青はインテイクリップを正面から見た形状を示す。後部胴体上部の幅、肩の高さ、主翼境の胴体幅、後部キャノピの幅などに注意。
初回ここまで。ファントムマニアの辛辣なるツッコミ熱烈歓迎。拙図面と既存キットとの差がどうかというのも、気になるところ。生憎手持ちはハセ72Cのみ。他キットについて情報頂けると有難い(特に赤とか象とか・・)。個人的感触としては、48、72ではモノが依然として外形ではベストではないか(残念ながら完成作は処分で検証不能)。ただし現在は入手難。入手可な範囲では、やっぱハセかな。
翼型は付け根(基準面):NACA 0004.0-64、先端:NACA 0002.5-64。マ社図にはMODの記載があるが、実際は純粋な対称翼。翼厚比はroot:4.0%、tip:2.5%だから、実際の最大翼厚(1/48)を計算すると、胴体上端部で3.9mm、尾翼上端で0.6mmとなる。これは40%コードにある。上端では驚くほど薄い。ラダーヒンジは80%コードにあり、パネルの後端はそれよりやや前方。ラダー上端はWL132.0、下端は72.0。
J79エンジンのスラストラインは、下に5.25゚、横に0.25゚。高さは記載なく、写真のノズル位置から求める。マニュアルに記載の全長は、基準線沿いではなく、駐機状態(スタティック・レングス)で、その差は約6mm。 主翼翼型は、胴体中心:NACA 0006.4-64MOD、内翼外端(BL160):NACA 0004.0-64MOD、ここから胴体端(BL47.5)における翼厚比を計算すると5.8%(BL0〜BL160間で上下端が直線と仮定)となり、最大厚さは1/48で7.2mm(40%コード、なお、車輪部のバルジは胴体端では「なし」となり、胴体との境界ラインはバルジの有無にかかわらず同一)となる。外翼端は NACA 0003.0-64MOD。内翼上反角0.0゚、取付角+1.0゚、ねじり下げなし。その他の翼関係の詳細は平面図で記述する予定。
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ショートノーズ。風防側面ガラス下部の不透明部分(赤矢印)に注目。また、正面平面部の下端は狭い。 |
こちらロングノーズ。左の不透明部と透明部の境界が、こちらの胴体分割線になっている(青矢印)。平面部の下端は広い。 |
ショート。風防フレームのネジの数を数えても違いが分かる。 |
ロング。前方の胴体が盛り上がっているのだ。 |
補足すると、ショートでも、1960年代頃のBCDSJやブリでは、不透明部がなく胴体境まで透明。この理由は、当初は下まで透明で、ロングが出現して不透明部ありの部品に統一されたためと思われる。これは左右で不透明部の有無が違う機体の存在で裏付けられる。初期モデルで不透明部ありは、改修時に交換したのだろう。 |
不透明部なし。ベトナム戦当時のC型。 |
下端に三日月形の不透明部あり。 |
ショートとロングの違いを図面にするとこうなる。ロングの図面はちょい精度甘い。どうやら、先端のコーンの中心軸は両者同じで、ロングは風防前の凹みがない分だけ盛り上がる。 |
おったまげー。 |
いやこれ、図面描くまで気づかなかったなあ。衝撃の事実だよ。前から知ってた人って、ほとんどいないんじゃない? 既存のキットや図面でも区別されてないし。
今回は、マ社図やマニュアルに記された桁などの基準線、座標を出来る限り図面に記載し、パネルラインの位置を決める(基準線は最新のバージョンでは非表示とする。必要な方には表示バージョンを送るのでメールされたし)。というのも、レシプロ機だとステーション値が分かれば、パネルライン位置も推測できる。しかし本機(というかジェット全般かも)の場合、フランジの幅が広いため、パネルラインと基準線が一致しない場合が多いのだ。 その基準線もいろんな座標軸があってややこしい。ここで各軸を整理しておく。FS(Fuselage Station)軸は胴体基準線そのもの。BL(Buttock Line)軸はFSに直交かつ水平。OWS(Outer Wing Station)軸は外翼基準面(上反角12.0゚)沿いでFSに直交し、原点はBL160.0。OWCS(Outer Wing Canted Station)軸は外翼主桁(41.68%)に直交し、外翼基準面沿い。ただし各数値はFS直交方向に測るというややこしさ。SS(Stabilizer Station)軸はスタビライザ基準面(下反角23.25゚)沿いでFS直交。さらに、XN軸は内翼前フラップヒンジライン沿い(詳細後述)で胴体中心が原点。XF軸は外翼前フラップヒンジライン沿い(同)でBL160.0が原点。WL(Water Line)軸は地面に垂直(水面というべきか)。
C型側面、断面図と重ねて出力すると、違いがよ〜く解る。ノズルより後方は、胴体上半分(塗装部分と無塗装のパネルの一列)の形状は変わらず、その下側の蛇腹状の無塗装部のみが下に膨れる。これも、FS555以降は不変。ノズル直上のスリットは、側面図でも平面図でもC型と同じ位置(形状、ベーンの数は異なる)。なお、当該図面はバージョンが古いので、細部は最新とは異なることに注意。 次に断面コンター図。参考までに既出C型と並べる。取り込んでスライドショーで見ると面白いよ。なお、スペイ型のマ社断面図は、ここまで細かくコンターを切ってなく、そこは適当に補間してある。
上面図をC型と重ねてみよう。主翼前桁〜主桁付近での胴体幅が大きく違うことが分かる。このあたり間違えている図面やキット(F社)があるので要注意だ。一方、フラップ付近では差が小さい。そしてノズル付近になるとまた差がでてくるのだ。インテイクの平面形は、ベーン先端から発生するショックコーンを考えれば、広がった分だけ後退するのは理に適っている。
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正しい平面形。図面で見るとウソだと思うかもしれないが、実機写真をよ〜く見てみよう。キャノピ平面形の違いにも注意。 |
よくある間違い。手持ち某キットと某文献の図はこんな感じ。 |
某キットって、あんた手持ちは〇〇しかないと書いてるじゃないか! →いや、だから、いわゆる・・(以下略
※ 初出時は側/断面図にパネルラインは未記入。
Thomason氏からのご指摘により、前回更新のA型側面断面図を修正して差し替え。A型のインテイクベーン先端は、Bより約1インチ後方になるとのこと。情報感謝。次回はC型上下面パネルラインの予定。
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前席は上に凸、後席は下に凸のカーブだ(水色線)。 |
この角度から見ると、上がって、下がって、上がって、下がって、また上がる。 |
前席部の上に凸のカーブは、下画像のように考えると説明できるのではないか。テーパーした円筒を平面で垂直に切る状況を想定する。左のように軸方向に切ると、切断線は直線となる。一方、軸に斜めに切ると、切断線は上に凸な曲線となる(右)。これまで縷々説明してきたように、前席キャノピは後広がりで、したがって実機では右のような状況となる・・のかな。あとは、キャノピ自体が上に凸に湾曲したバナナ状というせいもあるか。 |
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じゃあ、後席部は逆方向斜めに切るから、やっぱり上に凸じゃないの?と考えたくなるが、そうではない。後席付近はキャノピと胴体の交差する角度が浅いので、上画像の垂直に切るという状況でなく、太い円筒に細い円筒が斜めに潜り込む状況が近いだろう(下画像)。この場合は細い円筒の丸みが卓越して、下に凸のカーブになるのだ。 |
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もちろん、実物の形状は上記説明のような単純化されたものではない。しかし、平面図で解るように、ファントムのキャノピは、後席前端付近を境として、前席の後広がりから後席の後狭まりへと急激に変化する。このため、上記の2つの状況がより劇的に表れるのだろう。 ついでに、断面図を斜め変形させてズラして並べ、さらに胴体とキャノピに分けてみる。ファントムの機首形状の微妙さが感じられるかな。なお、正確なキャノピ断面形は不明なので、とりあえず円としてある。 |
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用廃機でコキタナイけど許してちょ。手持ちで一番条件がいいのだ。インテイクの正面形もよく分かる。 |
私の推測はこうだ。下画像は左舷ベーンを6方向から見たもの。説明を簡単にするためベーンの形を単純化する。各頂点は外側が大文字、内側が小文字(AとDは共通)。まず、左端の正面図を見ていただく。赤線cfはダクト内壁の前端で、垂直。一方、ベーン先端の線ADはわずかにに内傾している。ベーンの内壁は、ダクト内壁から折れ曲がるが、その折れ方がポイント。上から見ると(赤三角)、ベーン内壁は点cで折れ曲がる。 このとき、下側(青三角)では点gで折れると考えると、同じ角度でもAc>DgであるためAの方が内側になって先端は内傾する。もし折れ曲がりが点fであればAc=Dfとなるので内傾しない。ADとCFは平行なので、ベーン先端が内傾していればインテイク入口も内傾する。また、Cc<Ffだから、ベーン後端は下側の方が広い。実機写真ではよく分からないので、私の説が合っている保証はない。もしかすると、明確な折れ線でなく面がねじれるように曲がっているのかも。 模型を作るには、どうでもいい話である。ただ、もし新規キットが開発されるなら、ここまでこだわって設計して欲しいなあと。拙図のベーンは上記説に従って描いている。
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まず、上面はブリファンFGR.2だ。後席部の広がりを拙図と見比べられたし。 |
米空のC型。ややカメラが近く、パースのせいで後広がりが弱く感じられるが、ハイライトで後席前端付近の折れ曲がりが解る。 |
なんちゃってブルエンのB型。画像は左右反転。胴体境のS字カーブ、風防側面の平行感にも注目。 |
ドイツのF型。かなり遠方からで、断面図の絵柄に近い。前後キャノピのフレーム幅の違い、胴体の丸み、ボリューム感に注意。 |
米空のE型。既存キットはキャノピオープンで誤魔化すのがいいかも。もっとも、オープンでも断面のサイズ違いは見て取れる。 |
ドイツのF。胴体との分割ラインは、後席キャノピ後方部でもう一回「しゃくり」が入る。いやあ、複雑。 |
図面と照合してみよう。下左は既出断面図を分かりやすく編集したもの。後席キャノピ前端はピンクのあたり。下右は製造図の断面図をベースに、キャノピ部にぴったりはまる円を描いてズラして並べたもの。直線的に広がり、直線的に狭まる。 |
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この立体造形イメージは、下画像のように単純化して考えると解りやすいだろう。まず、基本は右側の紙コップ2つが合体したような形。これを横から見たキャノピ上端ラインになるように「むにゅ〜っ」と曲げたのが左の物体。正面窓を面取りしてフレームの線を描くと、かなり実物に近い雰囲気になる・・・かな? |
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ポイントは、曲げる前の紙コップ状物体の側面は風防部含め直線(正しくは二次曲面)であること。また曲げ具合も風防付近ではあまり曲がらず直線に近い。一部のキット(アカ・・)では風防部が曲線的に先細りになっていて(例えれば落下タンクの先端)、似てないしカッコ悪いんだな。
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ラムエアインテイクの胴体側は凹んでいる。ショートノーズは各型みな同じ。 |
垂直尾翼のインテイクは、大小2種類。細かく見ると内部の仕切りなどさらにバリエーションあり。正面開口部のサイズは同じ。 |
初期(A、B、C、D、N)は前寄りに開口部があり、中に仕切りが2つ見える。 |
E、J型以降と英型は境界層を逃がすフェンスが設けられ、入り口が一段高くなり後退する。 |
フック基部下側には、可動式の整流板のようなものがある。米型ではノズルの陰で見えないが、ブリは丸見え。 |
フックが下がると、この板もフラップのように下がる。 |
ところで、機首ラムエアインテイクの中央に仕切りのようなものがある機体が見られるけど、有無の法則ってあるのだろうか?
また、インテイク後方の境界層排出スリットは、ブリの場合上下とも幅広&前広がりとなる ブリのスタビレータ、世傑には甲板に擦らぬよう下反角0.1゚減少・・との記述があるが、23.25゚で不変が正解。0.1゚じゃ意味ないっちゅうねん(実寸で4mm)。 たぶん23゚15'と23.25゚を違う角度と勘違いしたんだろうな・・・ 機首ラムエアインテイク、J最後期〜S型で仕切りが見られるとのこと。THNX
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インテイクランプの角は面取りされている。何でだろうと気になってたのだが・・ 画像はS型。 |
給油ブームをクリアするためのようである。といっても、左舷にもある。空軍型にもある。 |
カタパルト発艦の際には、ホールドバックという装置にて後方に引っ張られる。ジオラマでは是非再現したいね。画像はFG.1。 |
機体側はこんな風。場所はFS450付近。 |
米空C?型with MER。遠近法で斜めに見えるのではない。 |