ヴォート シコルスキー F4U-1 コルセア 1/72 タミヤ その2

2022.12.1初出

BACK NEXT




最終更新日 3Dデータファイル




■ XF4U-1図面 1/30追加

 トマソン氏からの情報(製造図と写真)による図面修正がようやく完成。ver.2.0とする。従前掲載のver.1.0は削除し、その図面解説文をこちらに移動し、加筆修正して一括掲載する。

 その情報のキモは、一般概要図と胴体の座標テーブル。前者により、機首延長後の全長が389.75"(フック含む)、主翼と尾翼の位置関係が量産型と同じ、ということが明らかになる。さらに、後者により、各フレームの位置、形状、高さ、幅、ロンジロンの位置が判明し、それらを図面に落とし込む。

 最後に残るのが、キャノピの位置。これらの製造図はなく、また胴体フレーム図や一般概要図に描かれたキャノピは、かなりアバウトなため(両者を重ねると全く合わない)、位置が確定しない。そこは後述の方法でなんとか解決。

 そうして出来上がったのが下図だ。渾身の考証なので、たぶん世界で一番正解に近いXF4U-1図面だと思うぞ。それにしても、解説文は長すぎ。


  • 製造図により、防火壁はsta.82(ver.1ではsta.83)、コクピット後端フレームはsta.142。また尾部の縦パネルラインはsta.276.5、胴体後端はsta.358。各フレームのsta.は薄い緑線で表示。主翼リブや胴体フレームの配置は、量産型とかなり異なる。

  • 主翼前端から、ラダーヒンジ及びエレベータヒンジまでの距離は、量産型と同じ。これは、製造図により確認できる。

  • 試作型の製造図では、主翼前端のsta.が明記されていない(量産型では記載)。そこで、防火壁から主翼前端までの距離を、量産型のそれと同じ(33.25")と仮定する。図面で(*)のついた数値は、前述の「仮定」を含んだ推測値という意味である。逆に(*)や(**)のない数字は、製造図に記載された値そのもの。

  • 機首延長前のカウリングの先端は、製造図に記載がありsta.-5/32。機首がどれだけ延長されたかは製造図に記載がないが、機首延長後のスピナ先端から防火壁までの距離が量産型と同じ仮定すると、延長は4.5"となる。図面での(**)は、同様に仮定を含んだ数値という意味。なお、機首延長後のカウル先端、量産型(-1)のカウル先端のsta.は手持ち製造図には記載されていない。

  • 機首延長前の全長は、前述仮定に基づけば、フックを除いて382.81"となり、文献等に記載された383"と整合する。ちなみにフックを含めると385.25"。

  • 胴体断面形は、座標テーブルを再現する。これに、キャノピ前端断面形(この座標はない)を写真から読みとって加える。キャノピ上端はかなり尖っている。キャノピ断面形は、前端では両サイドが直線だが、sta.142付近では丸みがある(断面図参照)。また、その幅はキャノピ前端より後端の方が広い(下端での幅という意味ではなく、同じ高さで比較したときの幅)。

  • 側面図における風防&キャノピの位置、形状については、まずキャノピ後端はsta.142(コクピット後端)とキャノピ後端フレームの見え方から推測する。風防については、コクピット内部の写真からsta.110のフレームと風防後端フレームが同位置にあることが分かる。さらに、写真により風防先端や各フレームの位置を決めていく。

  • 次に、キャノピ下端の位置を決める。胴体前半のロンジロンの位置を図面に落とし込むと(図中緑線)、写真トレースによるキャノピ下端の高さと合わない。何故だ??とさんざん悩むが、コクピット内部の写真をよく見ると、ロンジロンの上に離れてキャノピレールがある。これにて一件落着。なお、試作型と量産型のロンジロン位置は異なる。また、量産型ではロンジロンとキャノピレールは一体化している。

  • キャノピ上端は、機軸に平行ではなく、わずかに前下がりになっているように見える。

  • 最後に、風防、キャノピの側面図を断面図に投影し、風防&キャノピの各部分の幅を算出し、平面図を描く。だから、作れない図面にはなってないはず。

  • キャノピオープン時のキャノピ前下端と胴体との間隔は、平面図でキャノピを平行移動したものより狭く、これはFW190のキャノピのように、オープン時にはレールに沿ってキャノピ幅が狭まるようになっていると思われる。その傍証として、オープン時の前端側面フレームは、わずかに湾曲して見える。

  • 胴体機銃は、エンジンのシリンダーヘッドを避けた位置になる。機銃によるカウルの余計な膨らみはなく、量産型と同じスリムなライン。防火壁はエンジン直径より上に膨らんでいるので、十分に機銃は胴体内に納まる。

  • 後部胴体の下側ロンジロンは、量産型では左右に2本あるが、試作型は中央に1本のみ。下方窓の付近では左右2本になる(翼下面図の胴体部参照)。

  • 主翼のリブ配置はD&Sにいい写真があり、これを再現する。上面のアクセスパネルは、折り畳みヒンジのすぐ外側が0.50機銃、その外側に弾薬箱。その外側は着水時に膨らむ風船が格納される。その外側の下面部は、小型爆弾×10個の格納部。

  • 機銃格納部分の主翼下面は、写真ではパネルラインが見えず、羽布張りではないかと想像する。内翼上下面のパネルラインはよく分からないが、量産型と大きく違わないと思われる。図では省略。

  • フラップは、量産型と異なり、ダブル・スロッテド・フラップとなる。上面側では、外側フラップのスロットが翼固定部後縁から見え、中央及び内側フラップでは、スロット部が翼固定部の下に隠れるようだ。下面側は、量産型と同じようにフラップ前方が上に跳ね上がるが、その面積は量産型より大きい。

  • エルロンはスパンが短く。羽布張りである。タブは左舷のみ。内翼のフラップは金属製。外側フラップはいまいち不明。私の予想は羽布張り。ただしリブテープは明瞭に見られない。

  • エレベータのタブのスパンは、写真から長さを割り出したもの。エレベータのリブは、このタブのスパンに合わせて、量産型より1本少ないものと推測する。タブの端部はリブと同じ位置になるのが一般的だからだ。後に、スパンの短いタブに変更された(このときリブの本数も量産型と同じとなったのだろう)。

  • テイルフックトピックスの記事によると、当初のラダー、エレベータの前方バランス部分は小さく、後にまずラダーが拡大され、次にエレベータが拡大されたとのこと。また、当初のエレベータ後縁ラインは量産型より後方にあり、後に量産型と同じになったとのこと。

  • 翼前縁のエアインテイクの形状は量産型と異なる。詳細は、プロペラブレードの変遷や左翼前縁アプローチライトについても含め、テイルフックトピックスを参照されたし。

  • 初期の短い機首の排気管は、よく分からない。とりあえず延長機首と同じに描く。

  • 主翼インシグニアは直径40インチ。胴体のU.S.NAVYは高さ5.5"、シリアルは3"。


 ナニがアレだが、解説で言及した写真を見ていただこう。



sta.110のフレームと風防後端フレームの位置関係が分かる。右画像でフレームの本数を数えれば、これが110なのは間違いない。

ロンジロンとキャノピレールが別だという写真。なお、ボンベ後方のフレームがsta.142となる(別写真より)。

キャノピ側面形は、この写真によるところ大。

キャノピオープン。キャノピと胴体の間隔に注意。なお、レールは胴体上端よりは後方への狭まり方が弱い。


 第1の説から第2の説、そして今回の最終版ver.2.0まで、作図の経過を側面図でお示しする。不完全な情報で図面を作るとこうなる、という見本として見ていただければ幸い。でも、この経験を踏まえて推測するに、世の中の図面には、この第1、第2のレベルで描かれているもの(あるいはそれ未満)が多いのだろうな。



再掲、第1の説。全長383"に合わせて写真をトレースしたもの。


実機写真(反転)と重ね合わせたところ。そもそもこういう描き方だから、写真とはよく合う。

第2の説。すなわち、ver.1。第1の説の前半をそのまま利用し、尾部だけ後方に延ばし、主翼と尾翼の距離を量産型に合わせたもの。第1の説とも、全長にフックは含まない。





そしてこれが最終版 ver.2.0。比べると、細部もリファインされているのだ(機銃口とか)。全長はフックを含む。フックなしだと387.32"で、第2の説も大きく違わない。


写真と重ねる。ビミョーに合わないのは、遠近法の誤差ということにしておこう。元写真は遠近法の補正はせず、縦横比のみ変えている。写真と図面とは、コクピット付近(このあたりは誤差が少ない)で合わせる。


 それにしても、最終版を写真と重ねると、キャノピと主翼後端の位置関係が合わない。原因は不明。この写真の時の主翼後端は、フラップが違うか何かで位置が異なるのかも。

※2/1追記
 その後、sta.142とキャノピ後端の関係を見直す。ver.2.0は、前掲キャノピ側面写真におけるコクピット後壁の縦の部材の前面をsta.142としたが、別角度の写真からは後面がsta.142とも読み取れる。差は実寸で2cm程度。実際のところどっちが正解か分からないが、後面を正としてキャノピを描き直すと、主翼後端との関係が改善し、ギリギリ許容範囲まで近づく。よってこれをver2.2とし、図面と胴体側面図を差し替える。

 さらに、主翼前端の解釈が違うかも?と思いつき、検証してみる。従前の解釈は、胴体中心線における仮想翼の前端を主翼前端とするもの。当時の飛行機の設計ではこうするのが一般的だ。新解釈は、逆ガルで最下点での断面における前端とするもの。主翼基準面は3°16'後傾しており、胴体中央と最下点との距離約50cmに後傾角のコサインをかければ、前後の位相差は約2.8cmとなる。したがって、この解釈ならば、主翼位置は胴体との境で約2cm後退するわけだ(2.8cmでないのは、胴体中心より胴体境の方が翼が下に位置するため)。

 で、この解釈を加味して描き直すと、前述のキャノピと主翼の位置関係はほぼ解決となる。いやこれでハッピーエンド、かと思ったのだが、こんどは機首延長前でのカウル後端と主翼との距離の辻褄が合わない。ということで、とりあえずこの最下点前端の新解釈は保留、従前の胴体中心前端とする。真相は不明。情報求む。


■ 再開 3/1追加

 XF4Uやらスチュアートに盛り上がって、一か月ぶりに再開。小物を進める。



電気コードの銅線でプラグコード。本当はダブルだけど省略。

#8銀で塗装してスミイレ。ギアカバーはEDSG。

翼端灯も工作。内部は迷彩色(すなわちブルーグレイ)ではないかと思う。少なくともジンクロではない。

主翼と胴体の接合部を0.14mmプラペーパーと0.2mmプラバンで工作。このL字形部材については後程解説。


 コルセアの主翼と胴体の結合方法について気づいたこと。主桁は防火壁にがっちりと結合されるが、後方の補助桁と胴体は結合されない(スピットは結合される。109はどうだったっけ?)。構造設計上は、荷重は全て主桁と防火壁で受ける。しかし、それだけでは翼後端がプラプラして具合が悪い。そこで、翼外板と胴体外板をL字形の帯でリベット止めして、動かないように固定しているのだ。

 主翼って、エルロンやフラップの作動で、結構ねじれ荷重がかかると思う(エルロンリバーサルとか)。だから、このL字帯は、構造上はそれなりに重要な部材といえる。ちなみに、胴体内側に対応するリブはない。日本機のような薄い外板だったら、金属疲労で破断しそうだが、厚板でフレームが密だから大丈夫なのだろう。フラップ部のL字帯は、単に隙間塞ぎだね。


■ フラップ

 勢いで切り飛ばしたフラップを工作する。切り取ったパーツを使って、普通にプラ材工作もいいのだが、ここはやっぱ3Dだな。下面側のヒンジや跳ね上げ板も一体に作り、フラップを切り取った主翼にすっぽりはめ込むようにする。まず、アップ状態でパーツを造形し、それを回転させる。フラップの最大角度は50°。これは製造図にも明記されている。

 フラップ回転軸の位置は、製造図から読み取っているので、ほぼ実機どおりに作動するぞ。ただし、回転軸が描かれた製造図のフラップ正面図は、翼基準面沿いに見て描かれているが、本3D設計では、いわゆる普通の正面図の方向で設計してるので、軸の位置決めがややこしい。



正面図、平面図、翼断面図をベースに、各フラップの端面の断面図を描き、ロフトでつなぐ。

各フラップのヒンジ軸をスケッチ(画像黒線)。この線を軸として、フラップのボディを50°回転させる。

ヒンジは簡便な方法で近似的に造形する。まず、上部を切り取った円錐(円を-50°で押し出し)のエッジを丸める。

横方向に20%縮小してから、前後にカットして折り曲げ、軸を追加。

その他、あれこれ追加して出来上がり。

下面はこんな具合。実機はフラップと主翼との間に隙間があるが、強度確保のため隙間なしとする。

主翼に接着。外翼フラップは別パーツとして出力、接着する(一体だと合わせが大変なので)。

下面はやっつけ仕事。隙間を瞬間パテで塞ぐ。


 キットのフラップを切り取って、この3Dパーツをはめ込めば、誰でもフラップダウンが再現できる、というのを意図して作ったもので、フラップ幅などの寸法は、実機の正確な1/72ではなく、タミヤに合わせてある。活用してもらえれば幸い。ま、しかし、パチピタとは程遠いので、キットパーツを使うのと手間的にはあまり変わらないかも。使用の際は、上面のフラップ境を基準に、下面側の切断面位置を調整するとよいと思う。

 内側フラップの胴体側のヒンジは、胴体内部にあるのだね。前述製造図でそれが分かる。ということは、製造工程では、胴体にフラップなしの主翼を取り付け、その後にフラップを取り付けたわけだ。


■ カウル接着 3/15追加

 リアル模型は微速前進。カウルを接着する。強度と精度をどう確保するかが課題。そこで、カウル内側にプラペーパーを瞬間で貼り、胴体に結合したエンジン(プラ)と溶剤系で接着する。



カウル内側にプラペーパーを貼る。カウルの位置がズレないよう、エンジン外周を慎重にすり合わせる。

エンジンとカウルを接着後にカウル上部と胴体との隙間を埋める。


 これで、基本外形組み立ては終了。スジボリ、たまぐりも概ね終了。次はインレタのリブを貼る。


■ 3D主脚&タイヤ

 キットの主脚は、現代の目で見るとディテール不足。ならば3Dだね。基本的な寸法、リンクの位置は製造図と側面写真で決める。あとは細部写真を見てディテールを作りこんでいく。当初、実物どおりの太さにしたら、強度不足でふにゃふにゃ。見た目にも、か細い。そこでスケールも考慮して太めに作ってやる。人気機種だし、3Dパーツの需要はあると思うので、以下、使用上の注意点。

 3Dパーツは、キットの主脚をそのままそっくり交換するという前提で設計してある。主翼の取付穴に差し込みづらいが、ピンセットなどでつまんで穴にいれてやると、後方のリンクがジャストフィットするはず。脚柱中心の穴には0.6mmの真鍮線を通して接着する。3か所の小穴は挿入後に瞬間を流すためのもの。

 プリントは、内側ホイルと脚柱を一体にして、上を下にすることを推奨。タイヤと外側ホイルはそれぞれ別に最適角度で出力し、塗装後に接着すればマスキング不要だ。脚柱最上部が広いのはサポート受けで、出力後は切り離す。

 タイヤ、ホイルのクリアランスは、私の出力環境下(Mars2、Shiraya Navy、0.05mm 2.6s:脚柱、0.025mm 2.4s:タイヤ&ホイル)で最適にしている。ここは各自お試しプリントして調整されたい。ブレーキラインとオレオ引き上げロッド(脚柱下部の前側にある細い棒)は別ボディとしてあるので、好みで「なし」にできる。1.5倍すれば1/48にも十分使えると思う。ただし、タミヤ48とのフィッティングは未確認。




主脚柱全景。スムーズトレッドのタイヤ、ホイル内外も一緒のファイルに入れておく。

内側。下端の牽引リングが一つのポイント。画像で見えない位置で、脚柱とホイルの間に補強を入れている(非表示可)。

スムーズトレッドのファイルに、ホイルが入っている。ホイルは内側にもスポークがあるよ。

ラダー状のトレッドは、一部のバードケージに見られる。

-1D以降になると、ダイヤモンドトレッドが主流。これはライトニングで作ったやつを加工する。

確信ないけど、多分ひし形はこのように互い違いに横に3こずつ並んでいるのではないかな。

プリントして仮組み。ロッドは「なし」にして伸ばしランナーで再現する。

後方の斜め部材やオレオのトルクリンクのH形断面がポイント。斜め部材の脚庫取り付け位置については後述。


 後方斜め部材の主翼側取付位置は、実機ではもっと奥(翼上面に近い位置)である。しかし、キットは脚庫内の主桁(脚庫前後の仕切り壁)が厚いため、斜め部材の角度を実機どおりにすると、取付位置が下面寄りになってしまうのだ。脚庫内の再現性を重視するか、外から見た時の正確さを重視するかの選択となるわけだが、外形至上主義者の私は迷わず後者を選択する。

 前者重視なら、スケッチ(gear side)を編集して斜め部材の角度を2°ほど立ててやる(角度の数字を変えるだけで、あとは関係する箇所が自動的に変更されるはず。ただし2°を超えると面倒かも)。


■ 3D尾脚

 尾脚も当然3Dだ。こちらも、基本的な寸法は、製造図と写真に合わせる。結果的に、キットとはかなり異なる。キットは全体的に大ぶり。ついでにいうと主脚も大ぶりで、車輪は2まわりほど大きい。カウルが太いので、それにバランスしてるのかな。

 お持ち帰りファイルで表示されているのは、初期の脚柱が短いタイプだが、6インチ延長された長いタイプも設計してある。適宜、表示/非表示を変えてプリントされたし。

 ついでに、フラップのファイルを加工し、-1Dのステップの穴も再現できるようにして、ファイルを差し替える。



設計出来上がり。一応、キットの脚庫にそのまま取り付けられるようにしたつもり。フックは別ボディで「なし」も可。

出力して仮組み。キットで表現されない部材断面の穴がポイント。外からはよく見えず、荷重のかかる部材は太めにしてある。


 フック先端は、Fusionのロフトでテキトーに設計したもの。そもそもフックのロッドは曲がりやすいから3DPには不向きで、金属線に交換が望ましい。であればフック先端もプラパーツを加工するのがよい(3DPのフックを金属棒の先に接着するのはあまり適当ではない)、つうことで悪しからず。


■ 主脚引き込み機構

 以前にXF4U製作記に上げた脚引き込み動画は、リンクを単純化したもの。実際の機構はこうだ。





 支点Aは、主翼側に固定されている。Aのすぐ下に翼下面外板が位置するため、Aは外からは見えない。支点Bは主脚に固定。引き込みアクチュエータは支点Cにつながっており、Cと脚柱はフリー。BとCの間は、短いリンクでつながっている。

 脚を引き込むときは、アクチュエータによりCが右上に引っ張られる。Bは脚柱固定なので、部材BCは反時計回りに回転し、縦のリンクを押し上げ、Aから右下に伸びる斜め部材を押し上げる。Aが固定なので、斜め部材は「へ」の字に折れ曲がり、ロックが解除される。

 一方、脚を降ろすときは、Cに左向きの力がかかり、そのままではCはBを超えて左に行ってしまう。ここは何らかのロック装置が働いて、必要以上にCが左に行かないようになっていると思われる(斜め部材が180°以上曲がらないようになっていれば、Cの動きは制限されるはず)。

 ついでに、オレオ引き上げ機構について。上画像で下側の脚カバー取り付けステイの下に見える逆ヘの字レバーが、引き上げロッドに連結されている(画像ではロッドが少々見づらいが)。このレバーにはワイヤが取り付けられ、その反対端は脚庫の翼下面近く、かつ脚柱より前方に固定されている。地上でオレオが縮んだ状態ではワイヤは弛んでいる。

 離陸するとオレオは伸び、レバーが下がり、ワイヤはピンと張る。脚が引き込まれるとワイヤ取り付け位置と、レバーとの相対距離が長くなるため、ワイヤがレバーを引っ張り、ロッドを介してオレオを引っ張る。シンプルで上手く考えられている。P-47も同じ原理だ(こちらはワイヤでないが)。我が紫電もこの機構を使えば、もうちょっと活躍できたかもね。

 動画も実物と同じ機構のバージョンに差し替える。ただし、オレオ引き上げは再現してない。


■ リブテープ 3/24追加

 リブテープは自作インレタ。スチュアートと一緒に作ってある。数が多いので、結構な作業量だ。



スチュアートと同じ版にした都合で黄色。ちなみに白は白の下地がない分だけ他の色より薄いので、リブ表現には向かない。

下面もたっぷり。

貼り付けてサフを吹く。この控えめな凸がいいのだ(←あくまで個人の感想)。

スパン延長で切った貼ったしても問題なし。後縁もシャープに決まる。



■ プロペラ、シート

 またまた3D。近頃どうもリアル模型よりPC作業の方が比重が大きいな。さておき、キットのプロペラはとてもよい出来で、他のキットの出来の悪いペラへの供給元に使いたいレベル。ただ、根元の細いブレードはXF4Uでも必要で、-1Dのパドルブレードを削ってもいいのだが、3Dで作っておけば他でも使えるだろう。それに、キットも100点満点ではないから、3Dの意義はある。



ブレードは、以前作ったデータをちょいちょいとイジって出来上がり。思った以上に簡単。形もキットには勝ってると思う。

ハブは、キットで凸パーティングラインとなる部分が凹スジボリになってるのがミソ。

シートは、ピクトリアル本の図を参考にする。ベルトは、これくらいオーバースケールにしないと塗り分けが困難。

Mk.8ガンサイトも作る。シートのファイルに入っている。



■ F4U-1側面図

 コルセアに関しては、「正しい姿が知りたければ、タミヤ1/32を見ろ」の一言で済んでしまう。だから、ここで私が精緻な図面を描く意義は薄い。とはいえ、バードケージの写真を見ていると色々と発見があり、それらを図面にしておくのは意味があろう。併せて、これまで平面図と一緒になっていた側面図を、右舷側も描いて独立させる。左舷は中期の一例、右舷は初期の一例を示す。




  • キャノピと後方タートルデッキには2つのバリエーションがある。1つめは、後方の楕円窓が金属で覆われ、その上部にも補強板が取り付けられたタイプ。これは、転覆時の補強とのこと。この場合、可動キャノピ最後端のガラスはそのまま残るようだ(写真不鮮明にて確信なし)。BuNo17494、772機目から生産ラインに導入された。レトロフィットもあり。

  • その次のバリエーションは、楕円窓そのものが廃止になる。要するに胴体部は-1Aと同じなわけ。この場合、スライドキャノピ最後端のガラスは金属板に置き換えられるが、それだけでなく、後端が後方に拡大されている。このキャノピ拡大、今回図面に起こすまで気づかなかったなあ。やっぱ、図面を描くと新たな発見がある。その後縁上部に、新たなアンテナ柱をクリアする切り欠きがあるのか、ないのか(←写真ではよく分からん)。BuNo17532、835機目からの導入。

  • 後部胴体のアンテナ柱は、窓なし後部胴体導入より前に導入された。このアンテナ柱の場合、胴体前方のアンテナ柱は「なし」が多い。ただし、両方ありの機体もある。窓なしでこのアンテナ柱「なし」もあり。

  • アクセサリカウルのファスナにもバリエーションがある。後期になると、上下の辺で当初のファスナの間を埋めるようにファスナが追加され、ピッチが倍になる。変更時期は不明だが、上記の後部胴体の変更よりは前。さらに-1Dになると、前後、さらにカウルフラップ後方のパネルにも追加される(下図参照)。-1Aがどうだかは調査中。

  • カウルフラップが全周にあるのは、初期の一部のみ。BuNo02601、JT194(FAA供与)で全周フラップが確認できる。

  • 33.25"のアンテナマストはBuNo02307からの導入とされる。しかし、写真を見るとそれ以降でも39.25"を装着している機体があるような・・・情報求む。

  • レイアウト上の都合で、脚は右舷に記載している。図面は、中期以降のタイプ。初期生産型は尾脚タイヤが小さい。12.5"の大径タイヤは、BuNo02410から導入。ただし、レトロフィットもあった。

  • BuNo02477より、後部胴体上部の救命いかだが廃止された。右舷の図の赤い四角は、左舷にはあるが右舷では未確認。その上部のパネルラインは両舷にあり(ここにいかだが収納される)。

  • ヘッドレストは、当初なし、BuNo02725、593機目から追加される。

  • 垂直安定板左舷の2つの丸い小アクセスパネルは、後期の一部に見られる。それ以前は、写真では存在が確認できない(から「なし」だろう)。

  • 右翼前縁のスポイラー(くさび形の突起)は、最後期のBuNo17640、943機目らの導入。つまり、大多数のバードケージにはスポイラーがない。

  • 胴体フレームは右舷に細線で記載。各フレームの位置はsta.の数値から計算している。横のリブは製造図から。

  • 垂直安定板のリブも図に追加(ver.1.2)。


 カウルに体育座りの女性のノーズアートがあって、デカールも多く出ているVMF214の「Marines Dream」白の576(BuNo02576)は、写真では補強された後部胴体となっている。ただし、シリアルから、レトロフィットということが分かり、ノーズアートありで後方補強なしの状態も存在した可能性はあるから、窓ありにこのデカールを貼っても間違いとは言い切れない。

 後方窓がないタイプのキャノピ後縁ラインは、おそらく-1Aと同じ。だから、キットを改造して作るなら、-1A用の胴体パーツを使い、キャノピ後方をプラバンなどで延長すればいいだろう。

 では、前述のAカウルのファスナの図を掲載。左右画像の中間の状態もある。-1Aがどうかは気になるところで、タミヤ1/32がどうなってるかも気になるところ。Aカウル以降のファスナ(ネジといったほうが正確かも)も、-1A以降は変化があるみたい。情報歓迎。ファスナのサイズは3種類くらいあって、分かった範囲で図面でも区別して表記する。カウルのファスナが最も大きい。これは一応実物のサイズを縮小して表示。他は雰囲気で。



-1当初のファスナ。-1後期は、側面図の付図に記載のとおり。

-1Dで見られるファスナのパターン。上側のパネルは変更ない(多分)。


 上下面図、断面図は準備中。次回以降で。


■ コクピット 3/28追加

 シートをプリントして塗装。以前、バードケージのコクピットは黒または黒に近い暗色、と書いたが、その後いろいろ調べたりして、ダルダークグリーン(以下DDG)の可能性大。ただしその色調は、後期のサンダーボルトに塗られていたDDGとは異なり、もっと黒に近く、やはり「黒に近い暗色」あるいは「やや緑がかった黒」といった方が近いと思う。

 で、P-47の自作DDG(#15濃緑色、#65インディブルー、#62白を2:3:1程度)と自作タイヤブラックを1:1程度に混ぜる。コクピット内壁も筆の届く範囲で上塗り。塗ってみると、シートベルトはもっとメリハリついたモールドがいいかも。

 後方固定窓の胴体側の凹みが、浅くて小さい。そのままでは窓が浮くし、接着剤が窓枠より内側にはみ出す。彫刻刀などで凹みを深く広く彫る。



3DPシートは最終版の手前で、バックルが足りないがまあいいや。防弾板をプラバンで追加。

0.3mmプラバンの防弾板を追加。ヘッドレストはつけない。後方窓の凹みは彫り込み済み。



■ -1Aのコクピットの塗色

 バードケージのコクピットがインテリアグリーン(以下IG)ではない、というのは間違いないと思うが、-1Aは悩ましい。参考文献-33には、1943年春に海軍はIGの使用を指示したと書かれている。-1Aの試作型は43年2月、量産型の最初の納入は43年夏とのことで、それからするとほぼ全ての-1AのコクピットはIGとも考えられる。

 しかし一方、同文献にある43年12月撮影の-1A BuNo17930(-1Aのおよそ1200機目)の写真は、私にはIGよりもDDGに見える。御上の指示と生産現場には乖離があったことは十分に有り得る話だ。まあ、モノクロ写真の明度はあてにならないので、写真の印象で全てを語るのは危険ではあるが・・・

 いずれにせよ、グロッシーブルー(44年5月以降)の機体では、コクピット内壁がIGなのはカラー写真より確実。また、ベンダーからの供給品(座席やラダーペダルなど)は、44年の遅くになってもDDGが残っていたとのこと。コクピット内壁やキャノピ内側より、シートが暗く写っている写真もある。

 ということで、写真を見ていただこう。出典は同文献。ナニがアレだけど、ご容赦いただければ幸い。



上述-1A BuNo17930のコクピット。コンソール上面の黒と内壁との明度差がほとんどない。外装はトライカラースキーム。

シートがDDGっぽく見える写真の一つ。キャノピ内側を見ればコクピット内壁はIGかな?



■ 調色

 後方窓を接着するため、内側の胴体を塗装する必要があり、そのためには調色する必要がある。退色したブルーグレイはSDEカラーの同色に白を3割程度。下面のライトグレイは、資料によってはFS36440(米海軍ガルグレイ)とされているが、C315(FS16440)を塗ってみると、当時のカラー写真の色調と異なり褐色味が強い。そこで、ミディアムシーグレイC335に白を3割程度とする。


■ キャノピ

 キャノピはキットパーツを使う。シビアな目で見れば、形状に若干気になる所があるが、あえて絞り直すほどでなし。各パーツのフチを内側から薄く削る。表側も、長年の金型使用によるのかウネリがあり、#1500ペーパーで均す。一部スジボリが甘いので、ついでに全部のスジボリを彫り直す。こうしておくと、後でセロテープでマスキングするときに脱線しづらい。

 風防の接着に流し込み系を使ったところ、グレアシールドとの隙間に流れてしまう。これから作る方は要注意だ。あわてて外して磨き直し、グレアシールドのサイドも少し削り、白フタで慎重に接着する。後方窓はメタルプライマーを接着剤代わりに、塗料をパテ代わりに使う。



フチを削って磨き直したところ。後方窓はこのあとダブル針で窓枠を彫る。

胴体に接着し、後方窓の隙間はタイヤブラックで埋める。


 防弾ガラスの設置は悩ましいところ。風防のプラの厚みで正しい位置に取り付けられない。このスケールだと、無理して付けても、総合的な完成度がはたして上がるか疑問。ということで、とりあえずなしで。接着跡を整形したら、いよいよ塗装だ。後方窓の内側は迷彩色で塗装済み。


■ トリビア

 かなりマニアックなトリビア。後方固定窓と胴体の間には3本の細棒(補強のため?)がある。無理すれば1/32なら再現できなくもないか?? ←誰もしないぞ。



後方窓と胴体の間に注目。防弾板手前の板は、ノンスタンダード。



■ F4U-1上下面図

 引き続き、上下面図。断面図は次回以降で。





  • 主翼外翼部は、図面に示したように、翼基準面に垂直方向から見た図を、水平面に投影したものとして図化する。これは、いつもの私の図面と同じルール。

  • 内翼前半はそれによりがたいので、まあ何となく真上あるいは真下から見た姿として描く。これは、タミヤ1/32図面を「参考」にする。内翼後半は両者の折半(真上から見るなら、縦のパネルラインは湾曲して斜めになる)。

  • トリムタブは左舷のみ。バランスタブは、後方窓が廃止された最後期の一部の機体にしか見られない。右翼前縁のスポイラーも、同様に最後期のみだが、レトロフィットはあったらしい(といっても写真では見たことがない)。

  • 下面図の左舷外翼前半と左舷水平安定板は、リブ、ストリンガーの位置(≒リベットライン)を灰色で示す。ストリンガーの配置は製造図から。

  • 外翼後半のsta.は、後の型式(-4以降か?)とは一部異なる。

  • 水平安定板のsta.は図に記入してないが、次のとおり。11.5(斜めの前端と思われる), 19.09, 30.44, 41.72, 54.53, 67.28, 79.98, 80.89, 88.31。

  • エレベータのsta.は次のとおり。2.95(斜めの後端), 5.78(斜めの前端), 12.34, 20.38, 30.06, 41.19, 51.16, 61.13, 71.09, 81.06, 88.81。位置は図中のリブの位置。

  • 主桁位置のパネルラインと、主翼基準線(30%コードライン)との位置関係が不明。製造図を見てもよく分からん。一応、タミヤ1/32図面を「参考」にするが、いまいち確信なし。

  • ピンク線で示す胴体後方の救命いかだは、初期のみ。(BuNo02477以降廃止)

  • 尾脚カバーは、脚柱の短い-1(及び初期の-1A)では、穴の位置が後のものとは異なる。よく考えれば当たり前だが。また、初期の直径8.5インチのソリッドタイヤでは、尾輪は完全に引き込まれ、カバーに穴はない。

  • 外翼下面sta110付近に小さな板状の突起がある。用途不明。



■ 続、キャノピ 4/3追加

 後方固定窓の続編。前回はメタルプライマーで接着したところまで。今度は段差を整形し、スジボリして磨く。スジボリは、パーツの接着境を彫るのだが、フリーハンドでは上手くいく訳がない。マシンでカットしておいたテンプレートを使う。こういうのは、まず現物にぴったり合わないが、そこは想定済みで、大きさ違いでいくつか作って、合うカーブを寄せ集めればよし。ちなみに、元データは図面データ。



#800ペーパーで段差を均し、接着前にダブル針で彫った内側のスジボリを目安に、カッティングシートを貼る。

スジボリしてコンパウンドで磨いたところ。内側に詰めたティッシュは汚れ防止。

セロテープでマスクしてサフを吹く。まずまずの出来具合。スライドキャノピの下なので、この程度で十分。

勢いで、ブルーグレイも塗ってしまう。アンテナやタブロッドが未だなんだけど。


 しつこいようだが、WW2米軍機の場合、後方固定窓から見える内側の胴体は迷彩色で塗られる(無塗装の場合は無塗装)。インテリアグリーンは絶対にない。もしインストの指示がそうなっていたら、それはインストが間違い。該当機種は、本機の他、P-47レイザーバック、P-36、P-40(M型まで。Nはこの例に当てはまらない)。


■ アンテナ、タブロッド

 塗装前の最後の工作は、各種「突起物」。コルセアは結構数が多くてメンドクサ。



アンテナは1.2mm真鍮棒削り出し。長さは39.25"。金属部にはミッチャクロンを筆塗りする。

タブロッドと小アンテナ柱は0.35mm真鍮線。折り曲げて端部をペンチで潰す。

エルロン等の小ブリスターは、プラ細工。0.8mmプラバンを水滴断面の棒状に削り、端部を丸めてナイフで切る。

トリムタブロッドはプラバンで。


 突起物には薄くサフを吹いておく。


■ アンテナ柱

 -1から-1Dまでの胴体前方アンテナ柱について。オリジナルは長さ39.25"のプラスチック製。155機目のBuNo02307より33.25"のプラスチック製。-1Aになって間もなく(BuNo17930から、ヴォート製-1Aとしては280機目ほど)32"の金属製になった。さらにヴォート製-1Aの880機目あたりから24"になり、-1Dに継続した。グッドイヤー、ブリュースターも同様に変更。32"や24"のマストは、しばしばバードケージにレトロフィットされたとのこと。しかし、-1ではもっと後期でも39.25"マストがあるような・・・情報求む。


■ 本格塗装開始

 これで塗装前の準備は全て完了。塗装開始。退色と汚れを強めに表現したいと思っているが、さてさて上手く出来るかな?



ブルーグレイを吹き、シェーディングと退色表現をエアブラシで軽く。のの字吹き(注:F/A18の項参照)も少々。

外翼下面はブルーグレイ。こちらはSDEカラーのビン生。画像では上面と明度が違わなく見えるが・・


 この後さらに、汚れ、退色を追加する。


■ -1の塗色について

 重複もあるが、ここらで塗装についてまとめておく。世間一般の認識と違う部分が多々あるぞ。なお、ヴォート、グッドイヤー、ブリュースター各社の仕様は同じ(たぶん)。

 バードケージの迷彩は、当初は上側面と外翼下面がANA603ブルーグレイで、外翼を除く下面はANA602ライトグレイ。外翼下面が上面迷彩色なのは、翼を折り畳んで甲板上に駐機したときに、敵から空母が視認されにくくするため。カウリングの内側は、以後の型式も通じて下面迷彩色(つまりこの場合ライトグレイ)で、カウルフラップ内側もライトグレイとのこと。後方固定窓の内側は上面迷彩色。

 主脚収容部、主脚ドア内側、尾脚ドア内側、主脚柱、尾脚柱、主車輪ホイル内側は、全てライトグレイ。ホイル表側のみ銀。模型では銀の脚柱をよく見かけるが、トライカラーの-1Aを含め、こういう機体は存在しなかったと思う(←私の旧作-1Aは銀で塗ったけどな。当時は情報が無かったのじゃ。なお、モノクロ写真で銀に見えるものは、ライトグレイだろう)。折り畳んだ主翼の断面は、内翼側がライトグレイでフラップ部のみブルーグレイ、外翼側はブルーグレイ。

 コクピット内はダルダークグリーン。計器盤やコンソールは黒。コクピットとカウル内側を除く機体内部(尾脚収容部、ガンベイドア内側を含む)は、サーモンと呼ばれるジンクロ(イエロー)と酸化鉄を混ぜたくすんだピンク色。機体内部がジンクロになるのは、-1Aになってから以降のようだ。なお、内部がサーモンの場合でも、機体外面のプライマーはジンクロで、翼付け根などの塗装が剥がれた所にはジンクロが顔を出している。

 トライカラースキームは1943年1月5日に導入された。ただし生産現場への反映は遅れた。当初は側面のANA608インターミディエイトブルーが前後につながっていたが、まもなく胴体上面のANA607シーブルーが翼上面につながった。国籍マークは、トライカラーで袖なしの機体があることから、トライカラー導入後すぐに(夏頃?)、白袖とフチが付いたものに変更されたと考えられる。そのフチは、工場塗装では全て赤で(←理由は-1Aで赤フチつきがあるから)、現地に送られた後で、赤フチから青フチへの変更指示(43年秋頃?)に基づき青く塗り直されたのではないか。

 トライカラースキームの場合、カウル内側や脚回りは、下面迷彩色であるANA601ホワイトとなるが、部品供給の関係でライトグレイの脚柱も存在した模様(あるいは、ほとんどがそうかも)。カウルフラップ内側はインターミディエイトブルー。主翼折り畳み断面は、カラー写真より外翼側はインターミディエイトブルーで間違いない。内翼側は不明。

 バードケージの写真を見ていると、袖&フチつきインシグニアでブルーグレイ迷彩に見える機体があるが、その大半は退色したトライカラーではないか。ブルーグレイのままインシグニアを新しいものに描きかえた機体は多くないと思う。フチなしで白袖だけのインシグニア(これもイイよね)は現地塗装だろう。


■ -1Aの塗色について

 関連し-1Aについても。まず-1Aでブルーグレイ/ライトグレイの迷彩は無い。-1Aの出現は43年夏で、トライカラー導入より後だ。コクピット内は、おそらく当初はダルダークグリーンで、のちにインテリアグリーン(ジンクロに黒を混ぜたもの)に変更された。ただし、シートなど下請けから納入された部品の一部には遅くまでダルダークグリーンが残った。また、初期にはキャンディーアップル(ジンクロ+銀)のコクピットもあったらしい(写真を見たことがないが)。その他細部は-1に記載のとおり。

 グロッシーブルーは1944年5月導入。-1Aは同年6月まで(最後の方の-1Aは内翼下面のパイロンあり)だが、グロッシーブルー導入は-Dの極初期のようだ。上部の枠無しキャノピは44年8月以降で、順次レトロフィットされた。コルセアの場合、全面グロッシーブルーでも国籍マークのインシグニアブルーが残された(-4の途中(?)から「なし」、ヘルキャットは最初から「なし」、FM2ワイルドキャットは「あり」)。

 ちなみに、この2色は後者の方が暗く、インシグニアブルーは、ほとんど黒といっていい色調。模型だと逆のパターンをよく見るが、あれは間違い。これ、デカールの色が明るすぎるんだよ。そろそろみんな気づいて欲しいな。てゆうか、実機写真をよく見てチョーダイ。なお、デカールに合わせてシーブルーを明るくすると、出来損ないのレストア機みたくなるからNG。インシグニアブルーを手描きしよう。レシピは黒とシーブルーを半々。

 マーキング、FAA関係については別の機会に。以上出典は、ほぼほぼピクトリアル本。


■ プロペラ 4/6追加

 前回から3日後の更新。さて、プロペラ、スピナを出力する。スピナは前を上、ブレードは先を上にするのがベスト。接合は真鍮線を介して瞬間で。勘合をキツめにして、角度も決まる。出力環境によって勘合は違ってくるので、各自微調整されたし。



左、3DP。右、キット。ブレードの形や幅も違えているが、まあ、自己満足の世界だな。

3DPのアップ。サフを吹いてスミイレ。凹線表現の分割線がポイント。本番塗装までにスピナの積層痕を消しておこう。



■ 続、塗装

 迷彩の境界を塗り分ける。いつもの塗装手順で、まず下面を吹き、次に上面を境界をはみ出すように吹き(ここまでフリーハンド)、境界をMrペタリでマスクして下面色を吹く。狙いよりクッキリめになるので、フリーハンドの細吹きで両側から境界を攻めて、ぼかす。



Mrペタリでマスクしたところ。内外翼の境界はテープのマスクで塗り分け済み。

塗り分け完了。水溶きウェザマスのススとサビで軽くウォッシング。

機首はこんな具合。

尾脚収容部にサーモンを吹く。これは、ジンクロイエローと赤を半々やや赤少な目に混ぜたもの。



■ キャノピ修正

 セロテープでマスクして塗装したスライドキャノピ、左側の窓が1枚マスクされてないのに気づく。オーマイガー!なんてこったい! マスクした記憶はあるので、隣の窓をマスクしたときに不要部分と一緒にはがしてしまったのだな。

 仕方ない。やり直しだ。#1500ペーパーで塗装を磨き落として、コンパウンドで磨き、再度セロテープでマスク。何やってんだか。



ペーパーで塗装を落としたところ。他のマスキングははがさない。

後ろ隣のマスクもはがして、コンパウンドで磨いたところ。まあ何とかリカバリーできたかな。



■ F4U-1、-1A断面図

 断面図が出来上がる。キャノピ部以外は-1と-1Aは共通だから、1枚に両型式をまとめる。これら断面は、作者の単なる想像図ではないことを示したくて、各部の寸法を細かく記入する。ちなみに、世の中の「図面」と称されるものの大半は想像図。防火壁以降の胴体は、全ての断面で寸法が分かっているが、あまりに面倒なので代表断面に留める。模型のチェック用にはこれで十分だろう。




  • 防火壁以降の胴体は、製造図に胴体コンター図があり、それをトレースする。ただしコンター図は微妙な歪みがあり(元図は紙なので避けられない)、そこは座標テーブルの数値に高さと幅を合わせる。

  • 風防後端の断面は、-1、-1Aともに製造図があり、それをトレースする。風防フレームも同様。-1Aのキャノピ中央部の断面形(水色)は製造図になく、写真の印象による推測。また、-1Aの風防高さは、断面形を示す図面はあるものの、数値として明記されていない。拙図ではそれを読み取った値を記載する。

  • 垂直尾翼の厚さは、分かる範囲で製造図を反映させる。そう大きく外れてないはず。

  • 主翼断面図も製造図に基づく。これは、30%コードにある主翼基準線位置において、翼基準面沿いに見た断面形として表示されている。製造図では、胴体中心において、主翼上端が胴体基準線に一致する(ように図面では見える)。

  • 主翼断面図の湾曲部の曲線は、上端、下端、翼基準線ともに同心円となる。そのうち翼基準線のもののみ半径を記載している。一部の数字が潰れて読みづらいが、作図したときに違和感がないので、たぶん合ってると思う。二組の同心円の間は直線。

  • これら数値に基づくと、翼基準線は一意的に決まる。翼上下端は、そこから各位置における翼厚を計算すると、これも一意的に決まる。厳密に言えば、翼基準面は胴体基準線から3°16'傾斜しているが、少なくとも模型製作レベルでは同一と考えて問題ない。

  • 主桁の製造図を改めてよく見たら、翼基準線の30%コードラインから1.75"後方に主桁ウェブがある。以前に平面図で翼基準線とパネルラインが合ってない、と書いたけど、こういうことだったんだね。ちなみに翼基準線sta.の98.25に1.75を足せば100となって、ちょうど後方防火壁のsta.と一致する。めでたしめでたし。


 断面図を重ねて一枚に表示する。-1のキャノピ断面は、前端は直線、後端は曲線であることが分かる。


■ F4U-1側面図修正

 今頃になって、バードケージのスライドキャノピが左右非対称であることに気付く。どこ見てたんだか。右舷側面窓(2枚)は、緊急時に外せるようになっているのだね。そのフレームの分、窓が狭くなる。その後方の窓は左右同じで、下端ラインが段違いになる。この取り外し式のキャノピ窓、そういえばP-40もそうだったな(BからMまで。こちらは左舷)。←他にもあったっけ? で、側面図を修正して差し替える。なお、モケイの方は塗装後に気付いたのでそのまま。ちなみに、キットは両方右舷になっている。



左舷。この2枚の窓以外は左右対称。

右舷。下端に枠が追加された分、窓が狭くなる。


 次回は-1A側面図と平面図。



NEXT


BACK


XF4U-1製作記


Wings Of Pegasus HOME