ヴォート シコルスキー XF4U-1 コルセア 1/72 タミヤ改造 製作記
2023.2.6初出
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XF4U-1は、時期により外形が変化する。作品は中期、すなわち機首は延び、エレベータのコードはまだ長い。特徴的な胴体アウトラインを見せたいので、キャノピは閉める。そのキャノピはプラバンを絞るが、木型は3DPだ。その他、適宜自作が必要となるパーツも、3Dで作る予定。図面と3Dファイルは、F4U-1のページにまとめて掲載する。
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左舷胴体は、ニコイチの余りを1mmプラバンでつなぐ。ま、要は普通にキットを買ってきた状態に戻すわけだ。 |
胴体先端を切り落とす。本来は3mm切り詰めるが、前述の後部胴体延長分を考慮して1mmだけ切り詰める。 |
後部胴体の背中は、ロンジロンのパネルラインで切り離す。 |
さらに、図面に合わせてコクピット部分を切り取る。 |
コクピット前方の胴体上端は、前下がりの傾斜が量産型より緩い。ここは、キットパーツを曲げ、その分だけ左右接着部分を切り詰める方式。また、カウル直後の胴体は、3DPのカウルに合わせて幅を詰める。
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図面から胴体断面を取り込んで、各断面と側面形をスケッチする。この程度の断面数でざっくり作る。ロフトのレールも描いておく。 |
風防後端で前後に分けて、それぞれロフトする。ガイドレールが通っているので、面はスムーズにつながる。カウルはF4U-1の借り物(外形は同じ)。 |
風防は、風防後端の断面形を回転させ、側面図に合わせて前後に拡大するという手法。実機どおりかどうかは知らない。 |
出来た胴体を、切り取ったキットの胴体に合わせて切り取り、ディテールを加えれば、背中改造パーツの出来上がり。 |
これはキャノピ絞りの木型。単純な回転体がベースの風防は「面をオフセット」で。キャノピは、それがうまく使えず、新たに断面をスケッチしてロフトする。 |
本来の風防とキャノピを薄く表示させると、こんな具合。表面からのオフセットは0.6mm。 |
つうことで、やってみたらFusionでなんとか出来上がる。めでたし、めでたし。
で、Fusionのスケッチを修正する。後端断面(sta.276.5)で1mm、その前の断面(sta.222)で0.5mm太らせ、それより前は変更なし。断面数が少ないので修正作業も楽だ。再度出力すると、今度はばっちり。 続いて、キットの切断部分との接着位置を調整するわけだが、このとき、背中とキャノピを一体に出力したパーツを使うのがポイント。そうすることで、より正確な外形になるわけ。キャノピの高さは、側面図を切り抜いたゲージでチェック。同時に、3DPのキャノピの幅に合わせて、胴体前方の接着部を削って幅を調整する。 その結果、胴体を切り取り過ぎて、キャノピ下端ラインが0.5mmほど下がっていることが判明。ヘタレだなあ。切断部にプラバンを接着して高さを合わせる。並行して主翼と水平尾翼も工作。基本的にF4U-1製作記で書いたことと同じなので、細部は省略。 |
こんな具合に、一体出力の3Dパーツを乗せ、キットパーツの幅と高さを調整する。 |
結果、切断面にプラバンを貼って嵩上げ。 |
エレベータ後端を増積。胴体との調整が面倒なので、今回は付け根の増積はしない。かわりに端部をちょこっとだけ延長。 |
基本パーツが揃う。主翼は、上下を接着し、羽布モールドを瞬間で埋め、翼型を修正。今回は付け根にちゃんと裏打ちしておく。 |
仮り組みする。イメージばっちり。カウルはまだ設計が進んでなく、仮りでF4U-1のものを使う。 |
背中のクローズアップ。 |
ちなみに、キットの後部胴体は上半分が実機より太く(コクピット後端から尾部までずっと)、下半分は細いのだ。なお、下半分については、F4U-1も含めスルー(←またかよ)。
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3Dデータ。サイズ違いで出力して、一番しっくりくるやつを選ぶ。 |
翼下面パーツに組み込んだところ。 |
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印刷した図面をパーツにテープでとめる。スジボリの始点終点にケガキ針で点を打ち、その点をつないでスジボリという算段。 |
直線は、エッチングテンプレートをセロテープで貼って定規にする。 |
さて、コルセアの脚は、どうやってタイヤが水平に収納されるのか? そのカギは、脚柱上端にある前から見ても横から見ても斜め45度のドラム。この斜めの軸で脚柱が回転することにより、90°ひねられる。ヘルキャットの翼折り畳みと同じ原理だ。 |
脚柱上部の斜めのドラムに注目。そのドラムに脚柱がピン結合されている。 |
実物はこう。動画モデルは、ちょい単純化してある。→3/13実物どおりのバージョンに差し替え。なお、静止画は単純化したまま。 |
では、なぜ、斜め45°の軸で回転すると、ひねられるのか。直感的に理解するには、ゼムクリップの端を斜めに折り曲げて、回転させてみるのがいいかも。 |
こんな風に曲げる。横から見て45°。 |
前から見て45°。曲げた端を持ってクリップを回転させる。 |
ただし、それだけでは真後ろには引き込まれず、外側に膨れて回転する(クリップを回してみると解ると思う)。そのため、ドラムと脚柱上端はピンで結合され、ドラムと脚柱のなす角度がフリーになっている。後方のつっかい棒となるリンクは、横への動きを拘束。リンクが結合される脚柱部分は、パイプ状になっていて、脚柱本体はその中で回転する。 |
脚柱は、パイプの中を回転するようになっている。パイプはもしかすると、上下のリンクの結合部だけかも。 |
コルセアの脚で、もう一つ興味深いのは、ジャックナイフ状に折れ曲がる大小の「つっかい棒」リンクの動きだ。このうち小ジャックナイフは、折れ曲がり角度の変化量に対してシリンダーのスライド変化量が非常に小さい(とくに180°近辺)。そのため、脚下げ時の最後の170°あたり(←ジャックナイフの角度のことね)からは、角度を広げようとする力が働きづらくなる。それを補うのがスプリングなんだね。 |
このスプリングで、最後に下に引っ張るわけだ。 |
各部材はそれぞれ別のコンポーネントにしておき、「ジョイント」で結合する。やり方は教則本などを参照されたし。全部結合させたら、適当なジョイントを右クリックして「ジョイントの駆動」で動かしてみる。モデルがちゃんと出来ていれば動く。Fusionのジョイントはいわゆる遊びがない。だから、軸が相互に平行でない、など論理的に間違っていると動かない。一方、実物は各部材が当たるとそこで動きがストップするが、Fusionでは当たっても問題ない。だから干渉しないように作り込む必要はない。 さて、いよいよ動画だ。駆動させるジョイントを選んで「アセンブリ→モーションスタディ」を開く。ウインドウ内のグラフを適当にクリックして数値を入力して、駆動プログラムを作る(詳しくはWEBなど参考に)。で、スタートボタン(右を向いた三角)をクリックすると、モデルが動く。うまく動いたらOKをクリックして保存。次からは、ブラウザからモーションスタディを選択して「編集」する。 Fusion画面が動いたら、それを動画として保存する。各種フリーソフトを試して、とりあえず「FonePaw」を使ってみる。他にもっといいのがあるかも知れない。 |
これが動画のモデル。形状は作り込んでない。 |
モーションスタディのウインドウ。 |
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ちゃらっと設計。F4U-1のデータがあるので、だいぶ楽。 |
プリントして塗装。ベースはチャコールグレイ。ミディアムグレイでドライブラシしてフューチャーを垂らす(小さい奴は無理)。 |
キットパーツから計器盤を切り取る。コクピット内は銀で塗装されている。 |
計器盤を接着。 |
サイドコンソールはキットパーツ。壁のディテールをプラ材でスクラッチ。 |
右側も同様。 |
塗装して、計器盤との位置関係をチェック。 |
右側も同様。 |
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胴体左右を貼り合わせ、背中に3DPを乗せる。整形して、ざっとスジボリ。 |
補強&ゴミ侵入防止として、キットのコクピット後方壁をそのまま接着。キャノピは閉めるので、外界と遮断する。 |
胴体接着後に下から計器盤まわりをはめこむ。コクピットの見え具合はこんな程度。 |
主翼も接着して「丁」の字。胴体側の主翼接着部にはプラバンを貼って位置を調整する(上画像参照)。 |
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F4U-1のデータを加工して出来上がり。銃口後端の盛り上がりがミソ。カウルフラップを開いたのは作ってない。悪しからず。 |
プリントして胴体に仮組み。 |
水平尾翼も接着する。エレベータ後縁と胴体後端が同じ位置となる。ラダー後縁もプラバンで増積。 |
これにて「士」の字(カウルは仮りだけど)。風防の3DPは、イメージ確認のダミー。 |
士の字になったところで一区切り。再びF4U-1に戻る。
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上側転写終了。本来は外翼フラップも羽布張りなんだけど・・ま、いいか。 |
下側終了。一部に欠けがあるのは、あとで追加しよう。 |
サフを吹いて保護。エルロンの羽布張りが試作機っぽくてヨイ。 |
下面。爆弾倉のスジボリとインレタが合わず、インレタを分割してなんとか貼り付ける。 |
スジボリとインレタがちゃんと合うように計算して作ったハズなんだけどなあ・・
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プリントして塗装してウォッシング。ベルトと背当てを先にエアブラシして、銀+クリアを筆塗り。 |
シートを接着して、キャノピ接着準備OKの状態。試作機なので、照準器はない。 |
久しぶりなんで、コツも忘れてるかと思ったけど、自転車や逆上がりと同じで、一度覚えると直ぐに感覚を取り戻せる。6つほど作って、いいのを採用。 今までは木型を手作りしてたので、ヒートプレス→切り出し&胴体合わせの確認→木型修正→ふりだしに戻る、を3サイクルほど繰り返してたんだけど、3dpの木型で、合わせる胴体も3dpだから、一発でOK。簡単過ぎて拍子抜けするくらい。 |
上:絞って余分を切り取ったもの。下:モデルに合わせてトリミング、表裏をペーパーで削って、厚みと凸凹を除去したもの。 |
胴体に合わせると、こんな具合に隙間ができる。これは逆テーパーの形ゆえ仕方ないので、隙間は別途プラバンを接着する。 |
透明プラバンを接着する。上右画像から、どこにどれだけ貼ればいいか分かっているので、割と簡単に出来る。 |
胴体に溶剤系で接着(流し込みは不可)。隙間に濃いめの塗料を流し、内部をシールする。 |
このあと、再度表面をサンディングして、胴体との段差を調整する。当初は完全にツライチにする予定だったが、前側は段差ゼロ、後ろ側に0.2mm程度の段差を残すようにする。
細い窓枠は、0.3mm間隔のダブル針で。いきなり力を入れると脱線するから、最初は弱く、なぞる程度にして、何回も往復して徐々に彫っていく。シートは「カッティング用シート 220mm×10m シルエットカメオ クラフトロボ 」あたりで検索されたし。10mロールで2,000円程度。一生使えるぞ。 |
これが自作ダブル針。手前が0.3mm間隔。奥は0.6mm。他に0.4mmと0.8mmを作ってある。便利だよ。 |
風防とキャノピの境に細切りカッティングシートを貼り、ダブル針でけがく。補助的に普通のケガキ針やエッチングソーも使う。 |
風防上下の湾曲した窓枠は、カッティングマシンでシートを切ってテンプレートを作る。 |
窓枠スジボリの出来上がり。このあと#1500ペーパーをかけてコンパウンドで磨く。 |
テンプレートの作り方解説。マステを貼って鉛筆などで窓枠を下描き。写真をInkscapeに取り込んで版下を作成。ミラーを使えば、左右対称になる。マシンでカット→モデルに貼り付け→形状チェック→版下修正、のサイクルで形を詰める。 |
これがマステに描いた下描き。背景の1cmのマス目にサイズを合わせる。 |
スジボリのコツを聞かれるが、要は事前の準備に手間をかける、ってのが最重要なのかも。その他のコツとしては、あと0.5mmだけ彫り進めたいなんてときは、左手の親指の爪で針先を押す。始点終点に点を打っておくと、均一な太さに彫れるし、オーバーラン防止にもなる。キットのスジボリを深くするときは、最初にケガキ針を寝かせて軽くなぞり、徐々に針を立てていく。 |
事前準備の例。機銃口周囲の円を彫るため、真鍮板に穴を開けたテンプレートを作る。 |
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前回更新で工作済みのシート。ラップベルトの詳細がよく分からず、テキトー。シート形状が違うのは確信犯。 |
尾脚は、実機写真をベースにしているので、サイズ、ディテールともバッチリだ。 |
フラップヒンジは、左右で合計8つもあると、手作業で削るのも大変。形状は、よく分かる写真がないので、テキトーに。 |
車輪カバーは、量産型と内側のディテールが異なる。幸い、よく分かる写真があるので、これを参考にする。 |
車輪カバー補足。外板は三次元曲面の板となるが、弓形の断面形をスケッチして、円弧でスイープして、平面形で切り抜く。補強リブは、同様に厚み違いで作成した曲面板を、それぞれ平面形のスケッチで切り抜く。
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セラミックコンパウンドをつけた綿棒をロータリーツールで回して磨く。天頂後方にゴミががが・・・ |
胴体下面の窓のところにドリルで穴を開け、水を入れてシャカシャカ。穴は最後に塞いでダークグレイで塗る。 |
水洗いでゴミは取れて、一安心。穴を塞いで整形する手間がかかるけど仕方ない。ていうか、最初から尾脚収容部に穴を開けておけばよかったんだよ。
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アンテナ柱を接着。キャノピは、セロテープでマスクして、内部色とサフを吹き付け済み。 |
尾翼まわり。0.3mm真鍮線をペンチでつぶす。 |
写真を見ると、風防の内側は黒、スライドキャノピ内側は銀のようだ。塗り分けが面倒で、全部EDSGにしちゃう。銀にすると、内部色を塗ってない手抜き工作に見えてしまうかも、と日和る。
黄色は、実機カラー写真のイメージでは、オレンジイエローではなく単純な黄色。とはいえクレオスGX4 キアライエローは、レモン色といっていい色調(C4イエローも同様)。そこで赤を微量加え、ほんのり赤味のある黄色にする。
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下地にピンク(GX1+赤微量)を吹く。 |
黄色を吹いてマスク。インレタの上は紙で。 |
さらに銀を吹く。カウルはちょい前にズラす。 |
マスクをはがす。カウル内側はセオリー(下面色と同じ)どおりならば銀だろう。 |
下面はこんな具合。黄色は前縁にオーバーラップする。 |
小物も同じ銀で塗装。ギアケースのオレンジ(GX4+GX3)がポイント。 |
青を塗装して赤のためのマスキング。青と赤は突合せで塗る。黒は白20%混。 |
赤終了。英軍ラウンデルだね。セミグロスクリアを吹いて、段差を軽くならす。 |
ここに、中心をくり抜いた白星を貼り付けるわけ。赤は0.3mmくらいのマージンをとっておく。 |
できあがり。インレタ保護に再びセミグロスクリアを吹いて、段差を軽くならす。 |
プロペラ先端はマスクして塗装。ブレードはプリビアスシルバー+セミグロスクリア。スピナと機銃口はスーパーファインシルバー。 |
2か所のステップはマスクして塗装。風防前の手掛けはベタデカールを切って貼る。キャノピのマスクはまだはがさない。 |
プロペラのハミルトンマークは手持ちデカール。セミグロスクリアを厚めに吹いて、軽く研ぎ出す。画像ないけど、尾部のU.S.NAVYとシリアルは自作インレタ。左翼前縁のアプローチライトは、ベタデカールを切って貼る。
アンテナ線は、極細の透明テグス。現在入手できず貴重品なので、大事な作品にしか使わない。ピトー管は0.6mm洋白パイプに0.3mm洋白線。軽く磨いて無塗装。水シャカシャカした穴は、黒のカッティングシートを貼っておしまい。これスジボリのガイドに切り出していたやつの残り。最後にマスキングをはがして、窓枠のスジボリにウェザマスでスミイレして完成。
ともあれ、ずーっと以前から作りたいと思っていた試作コルセアが出来上がり、非常に嬉しい。大満足。下画像一枚目など、なかなか精悍な姿だ。工作ミスや手抜き箇所は多々あるが、アウトライン形状に関してだけは世界一正確なXF4U-1だと自負する。といっても、これはトミー・トマソン氏に負うところ大で、改めて感謝申し上げる。 本作も3DPが大活躍で、キャノピや後部胴体の形状、寸法の正確さは3DPだからこそ。脚回りやプロペラは、1/72には見えないくらい。クローズアップ画像だと、ホイルのスポークの奥のディテール(リムの段差や内側のスポーク)も見えるな。図面ともども活用いただければ嬉しい限り。 |
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