M5A1 スチュアート 1/48 オリジナル3Dモデル 製作記 その2
2022.7.6初出
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まず、M3A1と同じくロール15°、ピッチ0°でプリント。すると正面に目立つ積層痕が。レジンはエニキュービックのグレイ。 |
そこで、全くフラット(ロール0°、ピッチ0°)にすると、斜め面に「膨れ(※)」が発生。またハッチの緩斜面には積層痕。 |
そこで後方を上げる(ロール0°、ピッチ-15°)。今度は側面下部に斜めの凹みが発生。画像はサフ塗ってサンディング。 |
内部補強部材はこのような形をしている。側面部下端は、装甲板より1mm上げている(プラバンで蓋ができるように)。 |
なぜ、こんな斜めの凹みが発生するんだろう。97戦車は同じエニキュの黒を使っても、このような凹みはなかったのに。 ※ 膨れについては、97中戦車製作記その1「膨れの発生メカニズムと解決方法」を参照。
左画像は、2枚の壁を出力している断面の模式図である。グレイは生成した造形物でできた壁、水色はFEPフィルム、ピンクが露光によって硬化中のレジンだ。硬化によってレジンが収縮すると、赤矢印の圧縮力が働く。FEPに張り付いている間はFEPに固定され、外れるとわずかに収縮するが、個々に働くため目立たない。 右画像は、内部部材が出現した断面。この場合は大きい面積に圧縮力が働き、すでに出力済みの壁が内側に引っ張られる。同じ収縮率でも、面積が大きくなると収縮量は無視できない大きさとなる。次の層は、収縮前のサイズで硬化し、FEPから離れると収縮する。壁同士を連結する内部部材が太くなると収縮に抵抗するので、壁は内側に引っ張られなくなる。 |
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実際の挙動は、たぶんもっと複雑で、収縮と同時に光漏れによる膨れも発生する。ただ、必ずしも相殺される訳ではないため、結果として凹線が現れるのだね。正面装甲板の斜め積層痕も、この収縮が主たる原因だろう。97戦車で発生しなかったのは、出力方向(ロールあり)、造形物の形(垂直面がない)などが要因と考える。
残る方策は、収縮の少ないレジンに変えること。そういえば、Sirayaのメカホワイトを使ったM3A1は、同じような出力条件でも積層痕がほとんど無い。これ、エニキュより収縮が少ないからなのかも。ただ、メカホワイトは伸びやすく曲がりやすい傾向があり、砲身が歪んだ。そこで同じSirayaのFastを試す。色はネイビーだ。
アンチエイリアシングはホワイト同様よく効く(グレーレベル、ぼかしピクセルとも同様に2とする)。また、エニキュと比べると、FEPやビルドプレートへの吸着力が小さい。これは、斜めの部材での歪みの減少に効果があるだろう。一方で、吸着力=レジンの引っ張り強度とも考えられ、すなわち破断強度はエニキュより劣るのかな。 |
写真では分かりづらいが、側面の斜め凹線は全く見られない。上面と側面の角での膨れもほぼなし。正面もきれい。 |
転輪と履帯は、積層痕を消すために0.015mm、2.2sで出力。誘導輪だけでなく上部転輪も履帯と一体出力。 |
補足。細い部材は、設計自体の数値を少し大きくする(手掛けの直径0.3mm→0.35mmなど)。また、ペリスコープガード、尾灯には細いサポートを追加。車体前下部は別パーツで出力する。予備履帯とスコップも別パーツ。あとは極力一体。車体上部下端、フェンダー下端、正面装甲板先端にはマージンを多めに付与。ヘッジローは、厚みを増やすものの、まだ歪みが出る。エニキュは歪まないから、ここだけ(あるいは砲身も)エニキュにするという手はある。
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牽引フック。上の車体出力画像にもチラ見えしてるよ。 |
予備履帯。 |
M3A3の設計も終わったけど、長くなったので次回更新で。
まあしかし、1) M8は当初から予定なしだから、これは正直嬉しい。2) それに私のM5の方がディテールは勝っている。3) タミヤのことだから、M5が出るのは1、2年先のはず。4) 部品割からM3までは発展しない(M3は足回りから新規作り起こしとなる)。よって、M3A1は、当分の間「世界に一つ」の座を保持できる。5) タミヤからはM3A3は100%出ない。以上5点でもって、自分を慰めよう。車体上部のみタミヤM8と交換する「コンバージョンキット」も設計しようかな・・・ ←これは現時点のリソースで簡単に出来る。 さて、気を取り直してM3A3だ。まず、設計の考え方について。本車の最大の特徴は、斜めに張り出した側面装甲板。これは、先のサイトによると、全幅99.4"(サンドシールド含む)、装甲板角度20°、厚さ1"、とされている。これに従うと、上面幅は、M3/M5と同じとなる(厳密には僅かな差がある)。よって、これら数値を採用。正面装甲板の基本的配置と寸法(上端高さ、機銃、直視孔、装甲板分割位置、ライト類)はM5と基本的に同じ。こうすると、両脇の斜め装甲板の位置・角度は自動的に決まる。 車体後方については、斜め装甲板の角度が59°、下側装甲板が20°で、これはM3A1と同じ。ということで、R部分を含めて側面図としての後面装甲板の位置はM3A1と同じと仮定する。上部の垂直部分の幅は、上面からの実車写真がベース。後ろ斜め装甲板の角度が悩ましい。写真によって見え方が違うのだ。ここは何枚もの写真を見て、最大公約数的に最も「らしく」見える角度にする。 車体後方の雑具箱もまた悩ましい。メッシュ部分の下側が丸いタイプもある。ただ、丸いメッシュは設計が大変なので、これは迷わず平面タイプを選択。たぶん底もメッシュだと思うが、出力の都合で平板とする。 |
設計完了。操縦手バイザのブラケットを追加。バイザ本体は設計してない。悪しからず。履帯はT36E6。 |
後方雑具箱を追加。こちらの履帯はT55E1。砲塔は、吊り下げリング、グローサーの配置、上面のディテールがちょこっと違う、というだけだが、新規ファイルとする。 |
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新版T16。修正箇所は、シューとエンドコネクタの間の部分のディテール。 |
こちらはT55E1。 |
T36E6。このタイプも結構見られる。M3A3で装着している車両もある。 |
裏側のボルトも再現。 |
転輪の軸穴とシャシーの軸との隙間は、メカホワイトで出力したM3A1では、設計上で0.08mm(軸直径1.2mmに対して穴直径1.36mm)でピッタリだったけど、今回のファーストネイビーではユルユル。そこで隙間0.03mmにしたのだが、それでもまだ若干の遊びがある(0.015mm 2.2秒)。また、垂直面に針で引っ掻いたようなスジができている。液晶の一部が死んでるのかも。 |
対空機銃を除く全てのパーツを組み立てて、表面の積層痕や歪みをサンディングしたところ。 |
こんなふうに垂直面に本来出現するはずのないスジが現れる。あとでサフで埋める。 |
クレオスのマホガニーサフェーサーで下塗り。テカテカして、私好みでないなあ。次から足回りだけにしよ。 |
サフで現れた不具合をさらに修正して、今度はいつもの自作グレイ(黒サフを少量添加)のサフを吹く。 |
マホガニーサフェーサー、初めて使ってみたけど、表面がテカっている。ということはクリア分が多いのかな。いつもはサフを吹くと急にカッコよくなって、テンション上がるのだが、色味もあって(だってウ〇コ・・)、気分盛り上がらず。
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組み立てて表面をサンディング。車体をピッチ-10°で出力したら、ハッチ上面に目立つ積層痕発生。面倒なのでそのままいっちゃう。 |
荷物箱のメッシュはこの通り抜けている。ちょい歪んでいるのはバトルダメージということにしておこう。 |
ペリスコープガードは一体出力。中央の細棒は、当然あとで切り取る。これがあると上の横棒が真っすぐ同じ太さで出力される。 |
こいつにはT36E6を履かせる。ディテールの出具合もいい感じじゃ。あ、サポート痕の整形忘れてるな。 |
問題:ペリスコープガード中央の細い縦棒があると、何故横棒の太さが均一になるのか? 解答:横棒がフィルムから剥がれる際、フィルムに引っ張られて横棒が歪む。歪んだまま次の層がプリントされると、歪みの分だけ太さが不均一になる。細い縦棒があると歪みが抑制されるので、太さが均一になる。
さて、Kerr氏によるM3初期型北アフリカバージョン「ハニー」が到着したので、早速アップする。これは、従前の初/中期型ファイルにサンドスカートや雑具箱などが追加されたものだ。同時に従前の初/中期型部分にも改良が加えられている。ファイルは、砲塔で一つ、車体で一つ。これらに初期から中期までのバリエーションが詰まっている。 で、自分の欲しい型式に合わせて、バリエーションパーツの表示/非表示を変更すればいいのだが、バリエーションが非常に多く、場所が分かりづらいので(これはこういう展開を予想してなかった私のせい)、初期型、中期型それぞれの砲塔ファイル、車体ファイルを別個にアップロードする。中身自体は同じで、表示のオンオフを変えているだけなので、例えば中期型にサンドスカートを履かせることも可能だ(こういうバージョンも存在する)。 初期型砲塔/車体ファイルは、北アフリカをデフォルトとしている。ここから、「North Africa Parts」というコンポーネントを非表示にして、ボディから「Fender front M3 R/L」「rear fender R/L」「mud flap R/L」をオン、さらにコンポーネント「m3_parts」の中の「雑具箱」をオンにすると、ノーマルな初期型となる(操縦席横の機銃は好みのパターンを選択)。 |
初期型「ハニー」バージョン。 |
後ろ側。 |
初期型は、前照灯が大きく、車幅灯がない。 |
後方雑具箱は、2分割のバージョンもある。 |
右前フェンダー雑具箱のバリエーション。 |
同じく、バリエーション。 |
サンドスカートのバリエーション。前端が延長されている。 |
前端が延長されさらに角型になったバリエーション。 |
参考のため、中期型とノーマル初期型のレンダー画像を再掲。 |
M3中期型。 | ||
M3初期型。画像は改良前のもの。 |
シェーディングのやり過ぎは、基本色で補正。ついでに「の」の字塗り(ハリアーGR7製作記参照)を少々。さらに筆塗りで細部(画像ないけど)。履帯はゴム部がC333 EDSG、エンドコネクタは土地色とDE半々、転輪のゴムは自作タイヤブラック。工具の金属部はEDSG+土地色、木部はC526茶色。日本戦車色は便利なのだ。 |
エアブラシで基本色とシェーディングまで。お嬢らが戻ってきたから、暫し中断。 |
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ウェザマスウォッシュとフラクリまで。←略すな MGも塗装。 |
控えめにチッピング。 |
グローサーの塗装が不明。迷彩色なのか、無塗装なのか、黒か何かで塗られているのか。タミHPの完成品だと黒鉄色のようだが、私ゃ、あそこの塗装指示は信用してないので。情報求む。
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M5の迷彩色(ベト迷DG+白)に黒を混ぜて基本塗装をしたところ。このように色相が違う。黒じゃなくてDGにすればよかったのだ。 |
ダークイエローを上吹きし、ウェザマスのマッドでウォッシュ。スポンジチッピング、ドライブラシまで。 |
こちらのチッピングは強めに。塗料(ここでは土地色)を極薄く溶いて筆でスポンジにつけるのがいいみたい。 |
左上画像より色相改善。フラットクリアを吹いた後なので、左画像と比べると埃のトーンが落ちている。 |
M3A3は、迷わず自由フランス軍だ。パリ凱旋門にまさに凱旋する第12連隊の写真が有名だ。検索してたら、あるサイト(*)に各車の車番と愛称のリストがあり、そこからL2:CERDAGNE(セルダーニュ、各車ともフランスの地方名。搭乗員の出身地なんだろうね)を選択。同車両の写真はなく、フィクションには都合がいいかと。 * https://2db.forumactif.com/t1478-char-de-verdelon |
これがイメージソース。第3装甲師団第33装甲連隊所属、1944年7月マリニー(Marigny:ノルマンディーの都市)で撮影。 |
M3A3はこれで決まりだ。ま、あくまでナンチャッテだけど。同隊のM4A2もやりたいなあ。 |
白黄以外は塗装だ。ちなみに、赤と青は、RLM23と自作ダルブルーにそれぞれセールカラーを3割ほど混ぜる、黒は自作タイヤブラック。写真で見る自由フランス軍の各車両は、通常のT16を履いている。作品はT36E6だけど、フィクションだからいいのだ。(←プリント時はそこまで考えてなかったのじゃ) |
コルセアと一緒にインレタ作成。点線は、英軍機のキャノピ回りによく見られるやつに使えるかと。 |
いつも書くけど、台紙と一緒に切り出し、マステで固定。台紙を抜いて転写。転写後は薄紙の上から再度擦って密着。 |
M5のインレタ貼り付け終了。このあと、フラットクリアを吹いてウェザリング。 |
M3A3は、下地を塗装する。まずマスキング。 |
赤白青黒を塗装。このあと次工程のデカール貼りのためクリアを吹く。 |
インレタ貼り付け終了。国旗のフチなど、位置決めのシビアなヤツはクリアデカールに転写して貼る。 |
タミヤがこんなに早くM8を発売したのは、私に間違いを教えてくれるためだったんだね。うん、きっとそうだ。ちなみに、M3A3は、M3と同様。 |
こちらM3。転輪と誘導輪シャシーとの隙間に注目。 |
これはM5。左とは撮影角度が異なるので隙間の見え方が違う。(M3の方が前寄りから撮っているため実際より大きく見える) |
気づいた以上は直さねばならぬ。幸い、足回りだけ修正パーツに交換してやれば何とかなりそう。ついでにM3A3の履帯をT16にしようかな。でもって、T36E6はM8に履かせよう。つうことで、お持ち帰りファイル一覧にM5用履帯3種(T16、T36E6、T55E1)を追加する。M5A1のハルも、誘導輪シャシーの取付穴の位置を訂正して差し替える。さらによく見ると、誘導輪のサスにも違いがある。M5A1ではないただのM5では、古いタイプが見られる(上右画像)。 |
M3のリアサス(というのか知らんが)。 |
後期のタイプ。上部の履帯ガイドだけでなく、前端部が少し突出している。あとは同じだと思うが・・。 |
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ライト回りと0.50MGの放熱ジャケット、グリップ、弾薬箱 |
グローサー。 |
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交換パーツを出力して、塗装、ウェザマスウォッシュまで。結局、起動輪と誘導輪サスは元のが使えたので不要となる。 |
履帯をニッパーで「バチンバチン」と切っていく。起動輪、転輪と履帯とは接着してないのできれいに外れる。 |
新しい履帯をはめる。外側の起動輪は回転ノコで切り取ってある。乱暴に履帯を切ったため、ボギー上端のD字形のガイドが折れてる。 |
不要になったT36E6履帯。上の白いのは、D形ガイドを調達した予備パーツ。 |
切り取った起動輪を再接着して、T16履帯に交換完了。 |
ついでに、以前折ってしまったペリスコープガードを出力して取り付ける。 |
ペリスコープガードの接着には塗料(車体色)を使う。この程度のものであれば、十分な接着力がある。座りをよくするため、車体側接着部は0.7mmピンバイスで軽く揉んでおく。
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同様に不要部分を切り取ったところ。 |
サス基部の凹みを2mm後方に移動する。前側には0.3mmプラバンを貼り、後ろ側はノミ等で彫る。 |
履帯改修完了。作業中にペリスコープガードが取れて、同様に修復する。 |
改修前。誘導輪サスと転輪との間隔が違うでしょ。 |
新たな履帯パーツの出力に手こずる。どういう訳か、Chituboxでのスライスでバグがでる。特定の層が正しい形にならないのだ。2時間かけて出力してパーツが欠けてると悲しいが、バグの有無は、一旦ctbファイルに出力したあと、再度そのctbファイルを読み込み、左画面の画像を見るか、右画面で各層を表示するかして確認できる。 試行錯誤の末に辿り着いた解決策は、1)Chituboxを最新バージョンにする。2)多数のパーツを一度に出力するのではなく、履帯のみにする。3)右側履帯はスライサーで反転するのでなく、Fusionで反転→stl出力する。4)Fusionで履帯とサポートのボディを1つのボディに結合する(「履歴をキャプチャしない」にして別ファイルで保存がいいかな)。 同様の症状でお困りの場合は参考にしてくだされ。ついでにいうと、Fusionでのファイルの修正もかなり手こずる。以前作ったファイルの履歴を遡って、シューの配置を変更して、またタイムラインを最後まで戻れば、大きな手間なく修正できるはずなのだが、戻るときに原因不明のエラーがでるんだよね。ファイルサイズが大きいのが悪いのか、PCスペックの問題か、Fusion自体のバグか。 そんなこんなで、安静の日々はあっという間に過ぎていく。
あとはアンテナ線を0.2mm真鍮線で追加し(黒く塗ったら画像では全く見えない)、エッジに土地色のドライブラシ少々。M3A3にはサンド系を足回りに薄くエアブラシ、M5A1にはウェザマスマッドを転輪、誘導輪にウォッシュ。最後にフラットベース薄吹きで艶を消して終了。 つうことで、なんとかタミヤからインジェクションが出る前に完成だ。ま、しかし、これだけのディテールなら、タミヤにも十分対抗できるな。インジェクションと3DPの「いいとこ取り」すれば、理想のM5が出来上がるわけだし。 |
大画面で眺める。苦労が報われる瞬間だ。このディテールで1/48だぞ。 |
インレタのマーキングには、極薄のダークグレイやサンドを吹いたりして、トーンを落とす。小さい文字の上にはオリーブドラブのドライブラシ&チッピングも少々。 |
エンドコネクタの側面の凹ディテールは、3Dならでは。タミヤM8の履帯と比較されたし。(ついでにいうと、タミヤはゴム部分の幅が狭い) |
心の目で見れば、ライトのガラスレンズも見えてくる?? 機銃手ハッチのペリスコープガードが取れて、後付けしてるけど、画像でもわからないな。 |
こちらM3A3。この角度から見るM3A3って、カッコイイなあ。なお、画像は、操縦手ハッチの積層痕が目立たないやつを選んでる。見る角度によっては、ほとんど気にならない。 |
インレタによるマーキングの存在感が大きい。データ希望の方はメールで。後部のお荷物は、そのうち作ろう。 |
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さあ次は、M8だ。履帯、グレイス(車体前面)、グローサー、一部小物など3DPで。あとは素組みでサクッと。
body / car body / chassis = hull, starter wheel = drive sproket, guide wheel / induction wheel = idler wheel, rolling wheel = road wheel, upper wheel = return roller, etc. |